2015・2016・2017年度 日本経済の見通し(改訂)

平成28年2月18日
2015・2016・2017年度
~
日本経済の見通し(改訂)
1~3月期以降、ゼロ近傍の成長を辿る ~
富国生命保険相互会社(社長 米山 好映)は、2015・2016・2017年度の経済見通しを改訂しました。
【実質GDP成長率予測】
2015年度 +0.6%(前回+0.9%)、2016年度 +0.6%、2017年度 ▲0.1%
○ 10~12月期は2四半期ぶりのマイナス成長
2015年10~12月期の実質GDP成長率は、前期比▲0.4%、年率▲1.4%と2四半期ぶりのマイ
4~6月期の実質GDP成長率は、前期比年率▲1.3%と3四半期連続でマイナス成長となった。
ナス成長となった。食料品などの値上げによる家計の節約志向が続くなか、暖冬の影響で
日本経済は、震災後の落ち込みから急速に立ち直っていることで、想定されたよりもマイ
冬物衣料の販売が低迷したことなどにより、個人消費は2四半期ぶりに減少したほか、住
ナス幅は小幅となった。サプライチェーンの修復につれて、自動車を中心に生産活動は上
宅投資も4四半期ぶりに減少に転じるなど家計部門が弱い動きとなった。一方、設備投資
向き、それに伴い、輸出も前月比で増加に転じている。また、自粛ムードが和らぐにつれ
は、新興国の減速など世界経済の先行き不透明感はあるものの、企業収益の改善を映した
て、薄型テレビなどの耐久消費財にも動きがみられ、個人消費についても上向いている。
既往の受注増が顕在化したことで2四半期連続の増加となった。輸出は、訪日外国人消費
は下支えとなったが、米国向けなどの財輸出が振るわず小幅な減少となった。
○ リバウンド局面となる7~9月期は、大幅なプラス成長が見込まれ、その後も、日本経済は
1~3月期以降、ゼロ近傍の成長を辿る
上向きの動きが続くだろう。想定を上回る早さで生産活動は正常化に向かい、懸念してい
1~3月期以降は、海外経済の鈍化や年初からの金融資本市場の混迷などにより景気の牽引
た雇用環境の悪化は回避できると考えている。その中、復旧・復興に係る需要も引き続き
役を欠き、ゼロ近傍の成長を辿ると見込んでいる。海外経済については、構造改革を進め
顕在化することで、内需は堅調に推移すると見込んでいる。一方、金融資本市場の混乱に
る中国の減速傾向が続き、長引く原油安もあって資源国の回復も見込み難く、ドル高など
より、欧米を中心に海外経済は減速感が強まるとみられ、海外需要は減退すると見込まれ
により成長ペース鈍化を見込む米国が牽引することも期待できない。こうした状況下、輸
る。それにより、輸出は供給制約がほぼ解消するものの、年度下期に停滞するだろう。こ
出は当面横ばい推移が続くだろう。また、海外経済の先行き不透明感から企業の期待成長
のように足元の内需が急回復する一方、外需の先行きには陰りがみられるため、2011年度
率は高まらず、慎重姿勢が続くことで、設備投資は伸び悩むだろう。家計部門においては、
の実質GDP成長率の予測を+0.3%と5月時点の前回予測を据え置いた。
良好な雇用環境や原油安による実質購買力の改善が下支えとなるが、日銀のマイナス金利
導入による預金金利の引下げや株価低迷が消費者心理の悪化につながることで家計の節
約志向は継続し、個人消費は力強さを欠く動きが続くだろう。ただし、2016年度末にかけ
ては、2017年4月の消費増税を睨んだ駆け込み需要が成長率を高める要因となる。なお、
円高・株安の進行や米国経済見通しの下方修正などを踏まえ、2016年度の実質GDP成長率
は前年比+0.6%と前回予測から0.7ポイント下方修正している。2017年度については、駆
け込み需要の反動減や増税による実質可処分所得の減少などによりマイナス成長となる
だろう。
○お問い合せ
富国生命保険相互会社
もりざね
担当:財務企画部 森実 潤也、大野 俊明
〒100-0011東京都千代田区内幸町2-2-2
TEL (03)3593-6813
(090)6493-3334
http://www.fukoku-life.co.jp
[email protected]
図表1.2015・2016・2017年度 経済見通し
(前年比、%)
2014
2015年度見込み
年度
実績
下期
上期
上期
(前期比)
名目国内総生産(兆円)
実質国内総生産(兆円)
内
需
2017年度予測
2016年度予測
上期
下期
(前期比)
下期
(前期比)
489.6
500.3
499.3
501.3
508.1
505.5
510.6
511.6
510.9
512.2
1.5
2.2
1.2
0.4
1.6
0.8
1.0
0.7
0.1
0.3
524.7
528.0
528.4
527.5
531.0
528.5
533.4
530.6
529.4
531.5
▲ 1.0
0.6
0.3
▲ 0.2
0.6
0.2
0.9
▲ 0.1
▲ 0.8
0.4
▲ 1.6
0.5
0.5
▲ 0.4
0.7
0.3
0.9
▲ 0.4
▲ 1.1
0.5
0.5
要
▲ 1.5
0.3
0.4
▲ 0.4
0.6
0.2
0.8
▲ 0.6
▲ 1.2
民
間
最
終
消
費
▲ 2.9
▲ 0.4
▲ 0.5
▲ 0.4
0.9
0.4
1.4
▲ 1.1
▲ 2.2
0.7
民
間
住
宅
投
資
▲11.7
1.8
4.2
▲ 1.7
1.6
0.4
4.2
▲ 4.9
▲ 6.5
▲ 0.6
民
間
設
備
投
資
0.1
1.9
0.6
1.7
1.0
▲ 0.2
0.6
1.3
0.7
0.7
要
▲ 0.1
0.2
0.1
▲ 0.0
0.2
0.1
0.1
0.2
0.1
0.1
費
0.1
1.3
0.7
0.7
1.1
0.5
0.5
1.0
0.5
0.5
民
間
公
需
的
政
府
需
最
終
消
公 的 固 定 資 本 形 成
▲ 2.6
▲ 1.4
0.8
▲ 3.7
▲ 1.6
0.2
▲ 0.6
▲ 0.6
▲ 0.4
0.0
財貨・サー ビス の純 輸出
0.6
0.0
▲ 0.3
0.1
▲ 0.2
▲ 0.2
0.0
0.3
0.4
▲ 0.1
財貨・サービ スの 輸出
7.8
0.0
▲ 2.4
0.1
1.2
▲ 0.3
3.0
3.4
0.5
2.8
財貨・サービ スの 輸入
3.3
▲ 0.3
▲ 1.0
▲ 0.7
2.4
1.0
3.3
1.9
▲ 1.8
4.2
注1.実質値は2005暦年連鎖価格
注2.内需、民間需要、公的需要、財貨・サービスの純輸出はGDPに対する寄与度
(主な経済指標と前提条件)
鉱 工 業 生 産 指 数
▲ 0.4
▲ 0.3
▲ 1.3
1.1
1.4
0.3
1.3
0.3
▲ 1.1
1.5
国 内 企 業 物 価 指 数
※
2.8
▲ 2.9
▲ 2.9
▲ 3.0
▲ 1.2
▲ 1.5
▲ 1.0
0.2
▲ 0.1
0.6
消 費 者 物 価 指 数
※
2.9
0.3
0.3
0.2
0.3
0.2
0.5
2.1
2.1
2.1
消費者物価(除く 生鮮 ) ※
2.8
0.0
0.0
0.0
0.2
0.1
0.4
2.0
2.0
2.0
( 除 く 消 費 税 の 影 響 )
0.8
0.0
0.0
0.0
0.2
0.1
0.4
1.0
1.0
1.0
貿 易 収 支( 兆 円)
▲ 6.6
0.8
▲ 0.4
1.3
6.1
3.3
2.8
5.0
2.7
2.2
経 常 収 支( 兆 円)
7.9
18.2
8.7
9.5
23.2
12.1
11.1
23.0
12.0
11.0
名
目
賃
金 指
数
※
0.5
0.1
▲ 0.1
0.4
0.5
0.4
0.5
0.3
0.3
0.3
完 全 失 業 率 ( % )
3.5
3.3
3.4
3.3
3.1
3.2
3.1
2.9
3.0
2.9
住 宅 着 工 戸 数 ( 万 戸)
88.0
90.9
93.7
88.2
91.4
91.6
91.1
86.1
85.9
86.4
為替レート(¥/$)
109.9
120.0
121.8
118.2
114.9
114.1
115.6
117.9
117.1
118.6
( $/b)
90.7
49.0
58.9
39.1
32.9
31.4
34.4
38.9
37.4
40.4
米国実質成長率(年率)
2.4
2.4
1.8
2.1
2.1
1.9
2.2
2.3
2.4
2.4
中 国 実 質 成 長 率
7.4
6.9
7.0
6.8
6.6
6.7
6.5
6.3
6.4
6.1
原油価格
※
注1.原油価格は円ベースの入着価格を為替レート(月中平均、インターバンク中心相場)でドル換算
注2.米国・中国GDPは暦年ベースの成長率
注3.※印がついた指標の半期は原系列(前年比伸び率)、それ以外は季節調整値(前期比伸び率)
-1-
◇日 本 経 済 の現 状 と見 通 し
図表2.実質GDP成長率の寄与度分解
○10~12月 期 の実 質 GDP
2 月 15 日 に 発 表 さ れ た 2015 年 10
~ 12 月 期 の 一 次 QE に よ る と 、 実 質
GDP 成 長 率 は 前 期 比 ▲ 0.4% ( 年 率 換
算 ▲ 1.4% )と 2 四 半 期 ぶ り の マ イ ナ ス
(前期比、%)
4.0
3.0
少に転じたことを主因に国内需要の寄
-2.0
与 度 が 同 ▲ 0.5 ポ イ ン ト と な っ た 。 一
-3.0
方 、輸 入 の 減 少 に よ り 、外 需 は 同 + 0.1
-4.0
名目ベースでも 2 四半期ぶりのマイナ
1.0
0.3
0.6
0.0
-1.0
は 同 ▲ 0.3% ( 年 率 換 算 ▲ 1.2% ) と 、
1.0 0.7
0.5
1.0
成 長 と な っ た( 図 表 2)。個 人 消 費 が 減
ポ イ ン ト と な っ た 。 名 目 GDP 成 長 率
1.2
2.0
-0.4
-0.6
民間最終消費
民間在庫投資
公的需要
実質成長率
-5.0
民間設備投資
純輸出
民間住宅投資
-0.3
-0.4
-2.0
-6.0
08
09
10
11
12
(暦年四半期)
13
14
15
(資料)内閣府「四半期別GDP速報」
ス 成 長 と な っ た 。実 質 GDP を 需 要 項 目 別 に み る と 、民 間 最 終 消 費 は 同 0.8% 減 と 暖 冬
の影響による冬物衣料の販売低迷などで、2 四半期ぶりの減少となった。住宅投資は
同 1.2% 減 と 4 四 半 期 ぶ り に 減 少 し た 。設 備 投 資 は 同 1.4% 増 と 既 往 の 受 注 増 が 顕 在 し
たことで 2 四半期連続の増加となった。公的需要については、公的固定資本形成が同
2.7% 減 と 減 少 幅 が 前 期 か ら 拡 大 し た 一 方 、 政 府 消 費 は 同 0.5% の 増 加 と な っ た 。 外 需
に つ い て は 、輸 出 が 同 0.9% 減 、輸 入 が 同 1.4% 減 と と も に 減 少 し た が 、輸 入 の 減 少 幅
が大きかったことで、外需はプラス寄与となった。
前回予測から足元までの金融資本市場の動向をみると、一時日経平均株価で 1 万 5
千 円 を 割 り 込 み 、為 替 は 1 ド ル 110 円 台 ま で 急 激 に 円 高 が 進 行 す る な ど 不 安 定 化 し た 。
昨 年 12 月 に 米 国 が 利 上 げ に 踏 み 切 る な か で 、 先 行 き 不 透 明 感 が 再 び 強 ま っ た 中 国 の
需要鈍化が懸念され、原油をはじめとした資源価格が一段と下落した。原油価格につ
い て は 供 給 面 で 調 整 弁 を 担 う OPEC( 石 油 輸 出 国 機 構 ) の 減 産 見 送 り も あ っ て 、 需 給
改 善 の 目 途 が た た ず 、 WTI 原 油 価 格 は 1 バ レ ル 30 ド ル を 割 り 込 ん だ 。 こ の よ う な な
か 、日 本 経 済 は 直 近 4 四 半 期 の う ち 2 四 半 期 が マ イ ナ ス 成 長 と な る な ど 、景 気 の 持 ち
直しが足踏みしている。今後の日本経済については、海外経済の鈍化や年初からの金
融資本市場の混迷などにより景気の牽引役を欠き、ゼロ近傍の成長を辿ると見込んで
いる。海外経済については、構造改革を進める中国の減速傾向が続き、長引く原油安
もあって資源国の回復も見込み難く、ドル高などにより成長ペース鈍化を見込む米国
が牽引することも期待できない。こうした状況下、輸出は当面横ばい推移が続くだろ
う。また、海外経済の先行き不透明感から企業の期待成長率は高まらず、慎重姿勢が
続くことで、設備投資は伸び悩むだろう。家計部門においては、良好な雇用環境や原
油安による実質購買力の改善が下支えとなるが、日銀のマイナス金利導入による預金
金利の引下げや株価低迷が消費者心理の悪化につながることで家計の節約志向は継続
し 、個 人 消 費 は 力 強 さ を 欠 く 動 き が 続 く だ ろ う 。た だ し 、2016 年 度 末 に か け て は 、2017
年 4 月の消費増税を睨んだ駆け込み需要が成長率を高める要因となる。なお、1 月に
日銀が企業マインドや物価の基調に対する悪影響を懸念し、マイナス金利導入に踏み
切 っ た こ と で 金 利 は 大 き く 低 下 し 、10 年 国 債 利 回 り は 一 時 水 面 下 ま で 低 下 し た 。日 銀
は貸出金利の更なる低下を通じて投資の増加などを図るものの、先行き不透明感が強
まるなかで、追加的な需要を生む効果は限定的と考えている。
-2-
なお、主要な需要項目については以下の通り。
○個 人 消 費 は、当 面 は力 強 さを欠 く動 きに
雇 用 環 境 は 改 善 傾 向 と な っ て い る 。 12 月 の 有 効 求 人 倍 率 は 前 月 比 + 0.02 ポ イ ン ト
の 1.27 倍 と 求 人 数 が 求 職 者 数 を 大 き く 上 回 り 、約 24 年 ぶ り の 高 水 準 ま で 上 昇 す る な
ど 労 働 需 給 は 引 き 締 ま っ た 状 況 が 続 い て い る( 図 表 3)。ま た 、就 業 者 数 や 雇 用 者 数 は
振れを伴いながらも増加基調となっており、景気の持ち直しが足踏みするなかでも雇
用環境の改善傾向は続いている。今
図表3. 求人倍率(新規・有効)の推移
後も雇用環境は緩やかに改善するだ
ろう。雇用の先行指標である新規求
人数は増加基調を維持しており、ま
2.00
新規求人倍率
1.60
1.40
みると、製造業、非製造業ともに人
1.20
手不足感は強く、将来を見据えて企
1.00
1.27
0.80
0.60
とみられる。また、高齢者の定年後
0.40
の継続雇用や女性の労働参入により
0.20
非正規社員についても増加基調が続
1.91
1.80
た 、 日 銀 短 観 の 雇 用 人 員 判 断 DI を
業は正社員を確保する動きを続ける
(倍)
有効求人倍率
0.00
05
10
11
(月次)
(資料)厚生労働省「一般職業紹介状況」
くだろう。生産年齢人口が減少する
06
07
08
09
12
13
14
15
なか、今後も労働需給は一層引き締まっていくだろう。このような労働需給の引き締
ま り を 映 し て 、所 得 は 増 加 基 調 と な っ て い る 。12 月 の 一 人 当 た り 現 金 給 与 総 額 の う ち 、
基 本 給 に 当 た る 所 定 内 給 与 は 、前 年 比 0.7% 増 と 2015 年 春 闘 の ベ ー ス ア ッ プ を 反 映 し
10 ヵ 月 連 続 の プ ラ ス と な る な ど 増 加 傾 向 と な っ て い る 。一 方 で 、現 金 給 与 総 額 全 体 で
は 冬 季 賞 与 等 を 含 む 特 別 給 与 が 減 少 し た こ と で 同 0.1% 増 と 低 い 伸 び に と ど ま り 、 夏
季賞与同様に弱い結果となった。要因としては、賞与支給対象外のパートタイム労働
者が増加したことに加え、サンプル事業所の入替も少なからず影響していると考えら
れ る 。今 後 に つ い て は 、現 金 給 与 総 額 は 前 年 比 プ ラ ス で の 推 移 が 続 く と 想 定 し て い る 。
パートタイム労働者の比率上昇が引き続き一人当たりでみた現金給与総額の下押しと
なることが見込まれるものの、労働需給がひっ迫するなか、パートタイム労働者の時
給上昇や一般労働者のベースアップ
図表4.名目・実質賃金指数の推移
が見込まれ、全体でも緩やかな増加
傾 向 が 続 く だ ろ う 。注 目 さ れ る 2016
年春闘については、労務行政研究所
が 公 表 し た 2016 年 賃 上 げ 等 に 関 す
るアンケート調査によれば、自社の
ベースアップ実施予定を経営側に聞
2.0
(前年比、%)
名目賃金指数
1.0
0.3
0.0
0.0
-1.0
い た 設 問 で は 、 30.1% が 「 実 施 す る
予定」と回答したが、その割合は昨
年 の 35.7% か ら 5.6 ポ イ ン ト 低 下 し
-2.0
特別給与
所定外給与
-3.0
所定内給与
た。また、賃上げ率の見通しについ
て は 2.12% と 昨 年 の 回 答 ( 2.18% )
から低下するなど、企業収益の伸び
実質賃金指数
-4.0
12
13
14
(暦年四半期)
(資料)厚生労働省「毎月勤労統計調査」
-3-
15
鈍化や世界経済の先行き不透明感の強まりにより、経営側は固定費増加に慎重になっ
て い る 。も っ と も 2% を 超 え る 賃 上 げ 率 が 見 込 ま れ て お り 、2014 年 か ら 続 い た ベ ー ス
ア ッ プ の 流 れ が 途 切 れ る こ と は な い と 想 定 し て い る 。 な お 、 実 質 賃 金 に つ い て は 、 10
~ 12 月 期 は 前 年 比 横 ば い に と ど ま っ て い る も の の 、消 費 者 物 価 は 当 面 弱 い 動 き が 見 込
ま れ る こ と か ら 、 今 後 の 実 質 賃 金 は 前 年 を 上 回 っ て 推 移 す る だ ろ う ( 図 表 4)。 ま た 、
雇 用 者 数 の 増 加 も 加 わ り 、 実 質 総 賃 金 ( 実 質 賃 金 ×雇 用 者 数 ) は 緩 や か に 増 加 し て い
くだろう。
個 人 消 費 は 、暖 冬 の 影 響 も あ り 、減 少 に 転 じ た 。10~ 12 月 期 の 民 間 最 終 消 費 支 出 は
前 期 比 0.8% 減 と 2 四 半 期 ぶ り の 減 少 と な っ た 。 家 計 最 終 消 費 支 出 の 内 訳 を み る と 、
半 耐 久 財 が 同 3.7% 減 と 、暖 冬 に よ る 冬 物 衣 料 な ど の 販 売 低 迷 が 下 押 し 要 因 と な っ た 。
また、テレビなどの耐久財も振るわなかったほか、食品などの非耐久財、サービスも
減 少 し た 。今 後 の 個 人 消 費 に つ い て は 、当 面 は 力 強 さ を 欠 く 動 き が 続 く も の の 、2016
年度末にかけては駆け込み需要によって伸びが高まるだろう。雇用・所得環境が良好
さを維持するなか、原油安による電気代、ガス代の値下げなどにより家計の実質購買
力は回復している。また、所得環境の改善の恩恵を直接受けない年金受給者において
は 、2015 年 度 補 正 予 算 で 計 上 さ れ た 低 所 得 の 高 齢 者 向 け の 年 金 生 活 者 等 支 援 臨 時 福 祉
給 付 金 が 2016 年 度 に 順 次 支 給 さ れ る こ と が 下 支 え 要 因 と な る だ ろ う 。 一 方 で 、 日 銀
のマイナス金利導入に伴う預金金利の引下げや年初からの株価低迷が消費マインドの
下 押 し と な り 、家 計 の 節 約 志 向 が 続 く こ と で 、当 面 の 個 人 消 費 は 伸 び 悩 む だ ろ う 。2016
年 度 末 に か け て は 、2017 年 4 月 の 消 費 税 率 引 上 げ に 伴 う 駆 け 込 み 需 要 が 個 人 消 費 を 押
し上げる要因となる。ただし、前回の消費増税で自動車を含めた耐久財は需要の先食
いが一定程度生じたと考えられること、外食を除く食料品などに対する軽減税率が導
入されることから、今回の駆け込み需要の規模は前回ほど大きくはならないと想定し
て い る 。2017 年 度 に つ い て は 、駆 け 込 み 需 要 の 反 動 減 と 増 税 に よ る 実 質 可 処 分 所 得 の
減少で個人消費は落ち込むだろう。
○新 設 住 宅 着 工 戸 数 は駆 け込 み需 要 により緩 やかに持 ち直 し
住 宅 投 資 は 鈍 化 し て い る 。10~ 12 月 期 の 住 宅 投 資 は 前 期 比 1.2% 減 と 4 四 半 期 ぶ り
の 減 少 と な っ た 。住 宅 投 資 に 先 行 し て 動 く 新 設 住 宅 着 工 戸 数 は 4~ 6 月 期 を ピ ー ク に 2
四 半 期 連 続 で 減 少 し 、10~ 12 月 期 は 同 5.3%減 の 年 率 86.8 万 戸 と 、消 費 増 税 後 の ボ ト
ム で あ る 2014 年 7~ 9 月 期 に 迫 る 水
図表5.新設住宅着工戸数の推移
準となっている。利用関係別にみる
(年率、万戸)
(年率、万戸)
と、貸家は高い水準を維持している
50
も の の 10~ 12 月 期 は 同 10.3% 減 と
45
大幅に減少しており、相続税対策と
40
80
しての貸家建設は一旦ピークアウト
35
70
した感がある。また、持家について
30
は、下支えとなった省エネ住宅に関
25
す る ポ イ ン ト 制 度 が 10 月 に 終 了 し
20
た こ と も あ り 、足 元 は 減 少 し て い る 。
15
分 譲 住 宅 は 4~ 6 月 期 に マ ン シ ョ ン
10
を中心に大幅増となった後は力強さ
110
100
90
60
50
40
30
持家
貸家
分譲住宅
住宅着工(右目盛)
20
10
0
10
11
12
13
(暦年四半期)
(資料)国土交通省「住宅着工統計」
-4-
14
15
に欠ける動きが続いている。今後の新設住宅着工戸数は、駆け込み需要が加わること
で、緩やかに持ち直していくと見込んでいる。雇用・所得環境が良好さを維持するな
か 、政 府 の 住 宅 購 入 支 援 策 の 一 つ で あ る フ ラ ッ ト 35S の 金 利 引 下 げ 幅 拡 大 措 置 が 1 月
をもって終了した一方で、日銀のマイナス金利導入により住宅ローン金利は引下げが
見込まれ、良好な借入環境は続く。こうした状況のもと、前回増税時に一部需要の先
食いが生じたため前回より小規模にとどまると想定しているものの、駆け込み需要が
住 宅 着 工 の 押 上 げ 要 因 と な る 。2016 年 9 月 末 ま で の 請 負 契 約 な ど に つ い て は 住 宅 の 引
き渡しが増税後であっても旧税率が適用されることから、これに向けて着工は緩やか
に増加していくだろう。その後は、駆け込み需要の反動減により水準を落とすと見込
んでいるものの、贈与税の非課税枠拡大措置や低金利環境などが支えとなり、大幅な
落ち込みは避けられるだろう。
○設 備 投 資 は増 加 を見 込 むものの、伸 びは限 定 的
設 備 投 資 は 、底 堅 く 推 移 し て い る 。
図表6.設備投資計画(大企業全産業)
10 ~ 12 月 期 の 実 質 設 備 投 資 は 前 期
比 1.4% 増 と 、 既 往 の 受 注 増 が 顕 在
12
化したことで 2 四半期連続の増加と
10
なった。もっとも、企業収益が過去
8
最 高 を 更 新 す る な か 、 日 銀 短 観 12
6
月 調 査 に よ る 2015 年 度 の 大 企 業 の
設 備 投 資 計 画 が 前 年 比 10.8 % 増 と
4
2
0
高水準となっていたことを鑑みると、
-2
低 い 伸 び に と ど ま っ て い る( 図 表 6)。
-4
中国をはじめとした新興国経済の先
(前年比、%)
-6
2008
2010
2011
2012
2013
2014
2015
-8
行き不透明感や国内景気の停滞感を
背景に、計画の執行を先送りするな
2007
3月
6月
9月
12月
実績見込
実績
(調査時期)
(資料)日本銀行「日銀短観」
(備考)2009年度は大幅マイナスのため除いている
ど企業の慎重な姿勢が影響したとみ
られる。今後については、当面、設備投資は伸び悩むと見込んでいる。年初から金融
資本市場が不安定化し、世界経済の先行き不透明感も強まっていることから、企業は
投資に対してより慎重になるとみられ、製造業を中心に不急の投資を先送りするだろ
う。また、企業収益の増加や極めて低い貸出金利水準と好条件がそろっていながら、
企業の期待成長率が高まらず、設備投資が活発化しない現状を鑑みると、日銀のマイ
ナス金利導入による貸出金利の一段の低下も追加的な需要を生み出す効果は限定的と
考えている。もっとも、先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)の動きを
み る と 、 7~ 9 月 期 に 大 幅 減 と な っ た 後 、 10~ 12 月 期 が 同 4.3% 増 と 増 加 に 転 じ 、 1~
3 月期についても増加の見通しとなっている。こうした受注が今後顕在化するとみら
れ 、特 に 、10~ 12 月 期 は 非 製 造 業 が 伸 び て お り 、消 費 の 多 様 化 や 訪 日 外 国 人 の 増 加 な
どを背景に物流施設や商業施設関連の投資の増加が見込まれる。また、マイナンバー
制度の導入に伴う中小企業のソフトウエア関連投資も増加が期待できることから、設
備投資の水準は概ね維持できると見込んでいる。
-5-
○公 的 固 定 資 本 形 成 は、2015 年 度 補 正 予 算 が押 し上 げるも緩 やかな減 少 が続 く
公 的 固 定 資 本 形 成 は 減 少 傾 向 と な っ て い る 。10~ 12 月 期 の 公 的 固 定 資 本 形 成 は 前 期
比 2.7% 減 と 2 四 半 期 続 け て 減 少 し た 。 公 共 工 事 の 進 捗 を 映 す 公 共 工 事 出 来 高 の 推 移
を み る と 、2014 年 度 補 正 予 算 の 効 果 が 顕 在 化 し た 2015 年 春 頃 を ピ ー ク に 、水 準 を 切
り 下 げ て い る( 図 表 7)。今 後 に つ い
て は 、 公 的 固 定 資 本 形 成 は 、 2015
年度補正予算の効果が下支えとなる
ものの、緩やかに水準を落としてい
くと見込んでいる。先行指標である
公共工事請負金額についてみると、
図表7.公共工事請負金額・出来高の推移
1.6
1.4
1.2
1.0
0.8
り下げている。震災復興需要につい
0.6
既にピークアウトしており、今後の
公共投資を牽引するほどの力はない
だ ろ う 。一 方 で 、2015 年 度 補 正 予 算
公共工事出来高
1.8
振れを伴いつつも緩やかに水準を切
ても被災 3 県の公共工事請負金額は
(兆円)
2.0
0.4
公共工事請負金額
0.2
0.0
11
12
13
14
15
(月次)
(資料)国土交通省、各保証会社資料により富国生命作成
(備考)公共工事出来高、公共工事請負金額は富国生命による季節調整値
で は 、災 害 復 旧 関 連 の 公 共 工 事 費 が 計 上 さ れ て お り 、こ れ が 執 行 さ れ る 段 階 に な る と 、
公 共 投 資 を 押 し 上 げ る 要 因 と な る 。も っ と も 、2014 年 度 補 正 予 算 よ り も そ の 規 模 は 小
粒 に と ど ま っ て お り 、2016 年 度 当 初 予 算 に お け る 公 共 事 業 関 係 費 が 前 年 比 ほ ぼ 横 ば い
と な っ て い る こ と を 鑑 み れ ば 、公 的 固 定 資 本 形 成 の 前 年 割 れ は 避 け ら れ ず 、2015 年 度 、
2016 年 度 と 2 年 続 け て 減 少 す る と 想 定 し て い る 。 2017 年 度 は 東 京 五 輪 に 向 け た 投 資
が増加することで、マイナス幅は縮小するだろう。
○輸 出 は横 ばいでの推 移 に
輸 出 は 海 外 需 要 の 低 迷 を 映 し て 、弱 い 動 き と な っ て い る 。10~ 12 月 期 の 実 質 輸 出 は
前 期 比 0.9% 減 と 2 四 半 期 ぶ り の 減 少 と な っ た 。 訪 日 外 国 人 消 費 の 増 加 が サ ー ビ ス 輸
出の下支えとなったものの、米国向け
図表8.輸出数量指数の推移
の輸出が振るわなかったことなどから
小幅に減少した。仕向地別に輸出数量
120
指 数 に つ い て み る と 、 10~ 12 月 期 は
115
EU、ア ジ ア 向 け が 増 加 に 転 じ た こ と で 、
110
前 期 比 + 1.7% と な っ た ( 図 表 8)。 米
105
95
車販売を映して自動車関連が増加した
90
80
75
た 。 ア ジ ア 向 け に つ い て は NIEs 向 け
70
けが増加に転じた。伸び悩んでいたス
輸出計
EU
アジア
85
響から一般機械などは弱い動きが続い
が 減 少 し た も の の 、 中 国 、 ASEAN 向
米国
100
国向けについては、同国の好調な自動
ものの、エネルギー関連投資減少の影
(2010年=100)
中国
10
11
12
13
(月次)
14
15
(資料)財務省資料より富国生命作成
(備考)データは後方3ヵ月移動平均、各地域の季節調整は富国生命
マートフォン関連の電子部品が新商品発売に伴う需要増によって持ち直した。今後に
ついては、輸出は横ばい推移にとどまるだろう。海外需要については、構造改革を進
める中国の減速、長引く原油安による資源国の低迷が続くなか、ドル高などにより成
-6-
長 ペ ー ス 鈍 化 を 見 込 む 米 国 が 牽 引 す る こ と も 期 待 で き ず 、鈍 い 動 き に と ど ま る だ ろ う 。
ま た 、一 定 の 下 支 え の 役 割 を 果 た し て き た と み ら れ る 為 替 動 向 に つ い て も 、2016 年 度
は前年比でみると円高を想定しており、輸出の後押しは限られる。なお、新興国経済
の減速にもかかわらず、アジアを中心に訪日外国人は大幅な増加を続けており、サー
ビス輸出に分類される旅行収支の受取は改善傾向を辿っている。先行きについても、
東京五輪・パラリンピックを見据えた観光客誘致政策などもあって訪日外国人の増加
傾向は続き、旅行収支の受取増加は輸出の下支えとなるだろう。
【米 国 経 済 】
米 国 経 済 は 、回 復 が 続 い た も の の 、一 部 に 弱 さ が み ら れ た 。10~ 12 月 期 の 実 質 GDP
成 長 率 ( 速 報 ) は 、 前 期 比 年 率 + 0.7% と な っ た ( 図 表 9)。 個 人 消 費 の 伸 び が や や 鈍
化 し た こ と に 加 え 、 設 備 投 資 や 輸 出 な ど 企 業 部 門 の 弱 さ が 影 響 し 、 7~ 9 月 期 の 同 +
2.0% か ら 大 き く 減 速 し た 。個 人 消 費 に つ い て は 、自 動 車・同 部 品 が マ イ ナ ス に 寄 与 し
た ほ か 、 暖 冬 に よ る 暖 房 需 要 の 減 少 や 12 月 の 冬 物 衣 料 の 販 売 が 低 迷 し た こ と な ど が
影 響 し 、 同 2.2% 増 と 7~ 9 月 期 の 同 3.0% 増 か ら は 伸 び が 鈍 化 し た 。 住 宅 投 資 は 、 同
8.1% 増 と 7 四 半 期 連 続 の 増 加 と な り 、堅 調 に 推 移 し た 。こ の よ う に 個 人 消 費 は 鈍 化 し
たものの、総じてみれば家計部門は底
堅く推移している。一方、企業部門に
ついては、製造業を中心に弱い動きが
図表9.米国実質GDP成長率の推移
(年率換算前期比、%)
8.0
続 い た 。 設 備 投 資 は 同 1.8% 減 と マ イ
6.0
ナスに転じた。原油価格の下落を映し
4.0
たエネルギー関連投資の減少が引き続
き重石となっている。在庫投資は海外
4.6 4.3
3.9
2.0
2.1
0.6
0.7
2.0
0.0
-2.0
経済の先行き不透明感など外部環境の
-4.0
悪化を映して慎重な姿勢がみられ、2
-6.0
個人消費
設備投資
住宅投資
四半期続けてマイナス寄与となった。
-8.0
在庫投資
政府支出
純輸出
外 需 に つ い て は 、 輸 入 が 同 1.1% 増 と
-10.0
な っ た 一 方 、輸 出 が 同 2.5% 減 と な り 、
-0.9
08
09
(資料)米商務省
10
11
12
13
14
15
(暦年四半期)
同 0.5 ポ イ ン ト の マ イ ナ ス 寄 与 と な っ た 。 輸 出 は 、 ド ル 高 に よ る 価 格 競 争 力 の 低 下 や
新興国を中心とした需要の弱さが影響している。
今 後 に つ い て は 、緩 や か な 回 復 が 続 く と 想 定 し て い る も の の 、前 回 か ら 見 通 し を 下
方修正した。年初からの株価下落など金融資本市場の混迷などにより消費が下押しさ
れることや、ドル高による企業収益の鈍化により設備投資が引き続き伸び悩むとみて
いることが主な要因である。もっとも、雇用の改善が続くなか家計部門を中心とした
景気の回復基調は途切れず、景気後退にまでは至らないとみている。1 月の失業率が
4.9% と 労 働 需 給 が 引 き 締 ま る な か 、賃 金 の 伸 び が 次 第 に 高 ま る と み ら れ 、雇 用・所 得
環境は良好な状況が続くだろう。また既往の原油価格の下落による実質的な可処分所
得増加が下支えとなり、個人消費は底堅さを維持するものの、株価低迷の持続が消費
者マインドの低下につながり伸びがやや鈍化すると見込んでいる。住宅投資について
は、モーゲージローン金利の上昇が限られるなかで、底堅い推移が続くだろう。一方
で 企 業 部 門 に つ い て は 、先 行 指 標 で あ る ISM 製 造 業 景 況 感 指 数 が 10 月 以 降 4 ヵ 月 続
け て 節 目 と な る 50 を 割 り 込 む な ど 製 造 業 で 厳 し い 状 況 が 続 い て い る 。 輸 出 は 引 き 続
-7-
きドル高や新興国の減速を映して弱い動きが見込まれる。また、ドル高による収益鈍
化やエネルギー関連投資の低迷を背景に、設備投資は低い伸びにとどまるだろう。こ
う し た な か 、 FRB( 米 連 邦 準 備 制 度 理 事 会 ) の 追 加 利 上 げ に つ い て は 、 年 2~ 3 回 に
とどめざるを得ないだろう。緩やかな利上げペースの下、日欧などグローバルに緩和
的 な 金 融 環 境 が 続 く な か で 、米 国 長 期 金 利 の 上 昇 は 緩 や か に と ど ま る と 想 定 し て お り 、
実 体 経 済 へ の 影 響 は 限 ら れ る と み て い る 。 2016 年 の 米 国 の 実 質 GDP 成 長 率 は 、 前 年
比 + 2.1% に と ど ま る と 予 測 し て い る 。
【欧 州 経 済 】
欧 州 経 済 は 、 緩 や か な 持 ち 直 し が 続 い て い る 。 10~ 12 月 期 の ユ ー ロ 圏 の 実 質 GDP
成 長 率 は 前 期 比 + 0.3% と 11 四 半 期 連 続 で プ ラ ス 成 長 と な っ た ( 図 表 10)。 国 別 に み
る と 、 け ん 引 役 が 期 待 さ れ る ド イ ツ は 同 + 0.3% と 7~ 9 月 期 ( 前 期 ) と 同 じ 伸 び が 続
いた。シリアなどからの難民受入れへの対応から政府支出が増加したことや、暖冬を
背景とした建設投資の活発化が成長率を押上げる要因となった。フランスは同時多発
テロの影響で観光産業が不振であったことなどから前期から鈍化したものの、同+
0.2% と プ ラ ス 成 長 を 維 持 し た 。イ タ リ ア
図 表 10.ユ ー ロ 圏 実 質 G D P 成 長 率 の 推 移
も 同 + 0.1 % と 緩 や か な が ら 成 長 が 続 い
た ほ か 、ス ペ イ ン は 同 + 0.8% と 引 き 続 き
2 (前期比、%)
堅調に推移し、ユーロ圏全体としては内
1
需を中心に緩やかな持ち直しの動きが続
0.4
いている。個人消費については、原油価
0.5
0.4 0.4
0.3
0.3
0.2 0.2 0.3
0.3
0
格の下落を受けた実質的な購買力の高ま
-0.2
0.1
-1
りなどにより消費者マインドは良好さを
維 持 し て い る も の の 、11 月 の フ ラ ン ス 同
-2
時 テ ロ の 影 響 が 下 押 し と な り 、 10 ~ 12
月 期 の 小 売 売 上 数 量 指 数 は 同 ▲ 0.2 % と
-3
8 四 半 期 ぶ り に マ イ ナ ス に 転 じ た 。一 方 、
08
09
10
11
12
13
14
15
(暦年四半期)
(資料)Eurostat
輸出については、ユーロ安の下支えはあ
るものの、中国向けの低迷が続いたほか、米英向けも伸び悩んだ。
今後についても、内需を中心に緩やかな持ち直しの動きが続くと見込んでいる。個
人消費については、同時テロの影響により一時的に減速がみられたが、雇用環境の改
善が続くなか、既往の原油安による実質購買力の高まりなどを背景に消費者マインド
は良好さを維持しており、緩やかな増加基調となるだろう。また、銀行貸出調査によ
ると、企業向けの貸出基準は小幅ながら緩和方向となっている。そのなか、企業の資
金需要も回復傾向を辿っており、企業のマインドも良好さを維持していることから、
徐々に投資も上向くだろう。シリアなどからの難民問題については、国内世論の反発
で 混 乱 も み ら れ る が 、2016 年 も 多 く の 難 民 申 請 が 見 込 ま れ て お り 、短 期 的 に は 難 民 対
策 に 伴 う 財 政 支 出 拡 大 が 引 き 続 き 成 長 率 を 下 支 え す る 要 因 と な る だ ろ う 。 ECB( 欧 州
中 央 銀 行 )は 2015 年 12 月 に 追 加 緩 和 を 実 施 し た 後 、さ ら に 3 月 の 追 加 緩 和 を 示 唆 す
るなど、原油安に伴う物価下押し圧力を懸念し、緩和的な金融政策を継続している。
そのため、為替がユーロ安水準で推移するとみられることが下支えとなり、輸出につ
いては、緩やかに持ち直すと見込んでいる。ただし、中国など新興国の需要鈍化が引
-8-
き続き重石となり、その伸びは緩やかにとどまるだろう。インフレ動向については、
原油安の影響が一巡するにつれて、徐々に前年比でみたプラス幅が拡大すると見込ま
れるものの、景気の持ち直しが緩やかにとどまるなかでインフレ圧力は高まらず、
ECB の 目 標 を 下 回 る 伸 び が 続 く だ ろ う 。
【中 国 経 済 】
中 国 経 済 は 、減 速 し て い る 。10~ 12 月 期 の 実 質 GDP 成 長 率 は 前 年 比 + 6.8% と 、第
2 次 産 業 の 伸 び 率 が 高 ま る 一 方 で 、 第 3 次 産 業 が 金 融 を 中 心 に 鈍 化 し た こ と で 、 7~ 9
月 期 よ り 伸 び 率 が 縮 小 し た ( 図 表 11)。 こ れ に よ り 2015 年 ( 暦 年 ) で は 同 + 6.9% と
1990 年 以 来 の 低 い 伸 び に と ど ま っ た 。月 次 の 経 済 指 標 を み る と 、固 定 資 産 投 資 は 、11
月 に イ ン フ ラ 投 資 が 一 旦 増 加 し た も の の 、1~ 12 月 累 計 で は 同 10.0% 増 と 不 動 産 投 資
の低迷により伸び率が縮小している。また、輸出は海外需要の低迷を映して前年割れ
が続いており、1 月は同二桁減と大幅減となった。こうした動向を映して、生産活動
も 弱 含 ん で い る 。10 月 の 小 型 自 動 車 向 け 減 税 に 伴 う 販 売 増 に よ り 自 動 車 生 産 は 持 ち 直
しているが、鉄鋼やセメントなどの過剰生産業種の低迷が続いている。それにより、
製 造 業 の 景 況 感 は 悪 化 傾 向 と な っ て お り 、1 月 の 製 造 業 購 買 担 当 者 指 数 は 49.4 と お よ
そ 3 年 半 ぶ り の 低 水 準 と な っ て い る 。一 方 、個 人 消 費 は 、10 月 以 降 の 消 費 小 売 総 額 が
同 11% 台 の 伸 び を 維 持 す る な ど 底 堅 く 推 移 し て い る 。減 税 効 果 に よ る 自 動 車 販 売 の 好
調に加え、娯楽用品や家電製品などの販売が堅調である。
今 後 に つ い て は 、 6% 台 半 ば を 中 心
図 表 11. 中 国 実 質 G D P 成 長 率 の 推 移
とした成長が続くと想定している。固
定資産投資主導から消費主導へと構造
転換を目指しているが、現状はその端
16
(前年比、%)
14
境期にあり、成長鈍化は避けられない
と考えている。また、過去に実施した
4 兆元の景気対策によって生じた地方
実質GDP成長率
12
10
政府の過剰債務、過剰生産設備、過剰
不動産が重石になる状況が続くだろう。
とりわけ過剰な設備を抱える業種では
8
6.8
6
成長率目標
企業収益が悪化するケースもみられ、
もはや国有企業改革は先送りできなく
なっており、政府もその調整に本腰を
4
07
08
(資料)中国国家統計局
09
10
11
12
13
14
15
(暦年四半期)
入 れ る と 想 定 し て い る 。そ の 一 方 で 、12 月 の 中 央 経 済 工 作 会 議 で 示 さ れ た 積 極 的 な 財
政 政 策 や 1 月 の 銀 行 融 資 の 大 幅 増 な ど が 、調 整 の 痛 み を 緩 和 す る 要 因 に な る と 考 え て
いる。そうしたなか、インフラ投資などの公共投資が大幅に増加するものの、製造業
や不動産の投資抑制が続くことで、固定資産投資の伸び鈍化は続くだろう。また、輸
出は、先進国向けが下支えするものの、新興国の減速を映して輸出額の水準回復には
時間がかかると見込んでいる。このような要因に加え、国有企業改革が実施されるこ
とで生産活動も鈍化が避けられないだろう。一方、個人消費は、製造業の悪化などを
受けて多少鈍化するものの、引き続き底堅く推移すると見込んでいる。政策対応によ
る住宅市場の持ち直しに伴う家具や家電の需要増に加え、減税効果により小型車の販
売 好 調 は 続 く と み ら れ る 。な お 、2016 年 の 成 長 率 目 標 は 、3 月 の 全 人 代 で 示 さ れ る が 、
-9-
政 府 高 官 の 発 言 に よ れ ば 6.5~ 7.0% に 幅 を 持 た せ る こ と も 検 討 さ れ て い る 模 様 で 、政
府 は そ の 範 囲 内 で の 着 地 を 目 指 し 政 策 運 営 を 行 う と 見 込 ん で い る 。 2016 年 の 実 質
GDP 成 長 率 は + 6.6% と 前 年 の 伸 び を 下 回 る と 想 定 し て い る 。
○今 後 の伸 び率 などについて
日 本 経 済 は 、 海 外 経 済 の 鈍 化 や 年 初 か ら の 金 融 資 本 市 場 の 混 迷 な ど を 受 け て 、 1~ 3
月 期 が ゼ ロ 近 傍 の 成 長 に と ど ま る と み て い る こ と か ら 、2015 年 度 の 実 質 GDP 成 長 率
は + 0.6% で の 着 地 を 見 込 ん で い る 。
2016 年 度 の 実 質 GDP 成 長 率 は + 0.6% と 前 回 予 測 か ら 0.7 ポ イ ン ト 下 方 修 正 し た 。
2015 年 10~ 12 月 期 実 績 の 下 振 れ を 受 け て 2016 年 度 に か け て の 成 長 率 の ゲ タ が 縮 小
したことに加え、円高・株安の進行や米国経済見通しの下方修正を踏まえて個人消費
や 設 備 投 資 、輸 出 の 見 方 を 弱 め た こ と に よ る 。四 半 期 毎 の 成 長 率 に つ い て は 、4~ 6 月
期までゼロ近傍の成長にとどまり、その後は年度末にかけて駆け込み需要が加わるこ
と で 、 2017 年 1~ 3 月 期 は 同 + 3% 程 度 に ま で 伸 び 率 が 高 ま る と 見 込 ん で い る 。
2017 年 度 の 実 質 GDP 成 長 率 は ▲ 0.1% と 予 測 し て い る 。駆 け 込 み 需 要 の 反 動 減 の 影
響 に よ り 4~ 6 月 期 に 個 人 消 費 や 住 宅 投 資 を 中 心 に 大 き く 落 ち 込 ん だ 後 、 そ の 影 響 が
薄れるにつれて、緩やかに持ち直していくと想定している。
○消 費 者 物 価 と金 融 政 策 の見 通 し
2015 年 12 月 の コ ア CPI( 生 鮮 食 品 を 除 く 消 費 者 物 価 総 合 )は 前 年 比 + 0.1% と ゼ ロ
近 傍 で の 推 移 が 続 い て い る( 図 表 12)。
図 表 12. 消 費 者 物 価 上 昇 率 の 推 移
日銀が公表する生鮮食品及びエネルギ
(前年比、%)
ー を 除 く 総 合 指 数 に つ い て は 12 月 に
2.0
同 + 1.3% ま で 上 昇 幅 が 拡 大 す る な ど 、
1.5
エネルギー以外の物価は上昇傾向にあ
1.0
る一方で、原油価格の大幅な下落によ
0.5
るエネルギー価格の下押しが相殺する
0.0
形となっている。エネルギー以外の物
-0.5
価についてみると、円安による原材料
-1.0
価格上昇で増加したコストを価格転嫁
-1.5
する動きが広がったことで、生鮮食品
を除く食料、テレビや白物家電などの
消費者物価(除く生鮮食品)
その他
生鮮食品を除く食料
エネルギー
12
13
14
15
(月次)
(資料)総務省「消費者物価指数」より富国生命作成
(備考)消費者物価指数は消費税率引上げの影響を除いている
耐久消費財については、プラス幅を拡大する傾向が続いた。一方、ガソリンや灯油な
どの石油製品の前年比マイナスが続き、電気代についても、原油価格の下落が燃料費
調 整 額 に 反 映 さ れ て 物 価 を 押 し 下 げ る 要 因 と な っ て い る 。 今 後 に つ い て は 、 コ ア CPI
上昇率は、当面は前年比ゼロ%近傍の推移が続き、前年比でみた原油安の影響が薄れ
て い く こ と で 2016 年 度 後 半 頃 か ら プ ラ ス 幅 が 拡 大 し て い く と 想 定 し て い る 。 企 業 は
人件費上昇などのコスト増分を価格転嫁する動きを続けるとみられるが、昨年続いた
円安による原材料高を価格転嫁する動きは一服し、エネルギーを除く物価については
押上げ圧力が徐々に弱まっていくだろう。また、携帯通信会社が携帯電話端末代や通
信 料 金 体 系 を 見 直 す 方 針 で あ る こ と や 、 2016 年 4 月 以 降 の 電 力 小 売 自 由 化 に 伴 う 電
気料金引き下げの影響も物価を下押しする可能性がある。そうしたなか、原油価格を
- 10 -
起因とする物価変動については、原油価格は緩やかながらも上昇すると想定している
こ と か ら 、2016 年 度 後 半 頃 か ら マ イ ナ ス 幅 が 縮 小 す る と 見 込 ん で い る 。こ れ を 映 し て
コ ア CPI は 前 年 比 プ ラ ス 幅 を 拡 大 す る と み ら れ る が 、既 往 の 円 安 に よ る 物 価 押 上 げ 効
果 が 減 退 し て い く も と で 、物 価 全 体 の 上 昇 幅 は 限 定 的 な も の と な る だ ろ う 。そ の た め 、
2016 年 度 の コ ア CPI は 前 年 比 + 0.2% 、2017 年 度 も 同 + 1.0%( 消 費 税 の 影 響 を 除 く )
にとどまると想定している。
なお、日銀が 1 月に発表した展望レポートでは、物価の基調は着実に改善している
と の 見 方 は 維 持 し た も の の 、政 策 委 員 の コ ア CPI の 見 通 し の 中 央 値 は 、原 油 価 格 の 想
定 の 引 下 げ を 主 因 に 、2016 年 度 が 0.8% へ と 下 方 修 正 さ れ た 一 方 、2017 年 度 は 1.8%
を 維 持 し 、 物 価 目 標 の 達 成 時 期 を 「 2016 年 度 後 半 ご ろ 」 か ら 「 2017 年 度 前 半 ご ろ 」
へ後ろ倒しした。
○リスク要 因
日本経済は、当面ゼロ近傍の成長で推移するとの見方が当社のメインシナリオであ
るが、下振れリスクも高まっている。最大のリスク要因は政府の舵取りが困難になっ
ている中国経済の動向である。不動産バブル崩壊や地方政府の過剰債務などの火種が
あり、想定以上に景気が落ち込む可能性がある。米国では、更なるドル高の進行など
で製造業の輸出や企業収益への下押しが強まり、その悪影響が家計部門にも広がりを
みせると景気後退につながるリスクがある。また、欧州では、銀行の収益悪化懸念な
どから金融システム不安が再燃し、企業や消費者のマインドを悪化させる可能性があ
る。このような海外要因の不安材料が顕在化すると、外需が先導する形で日本経済は
リセッションに陥る可能性もあろう。
以
- 11 -
上
図表13.デフレーターの伸び率(2005暦年連鎖価格)
(前年比、%)
2012年度
国内総支出
▲
0.9
民間最終消費
▲
民間住宅投資
2013年度
▲
2014年度
2015年度
0.3
2.5
1.0
0.2
2.1
▲
0.6
2.9
3.6
民間設備投資
▲
0.2
1.0
1.5
政府最終消費
▲
0.7
0.2
2.0
公的固定資本形成
▲
0.2
1.9
3.1
財貨・サービスの輸出
0.6
8.5
2.4
▲
1.2
財貨・サービスの輸入
0.9
11.3
0.6
▲
8.6
▲
2016年度
1.5
▲
▲
2017年度
0.9
0.8
0.0
1.3
0.2
0.5
1.5
0.8
0.8
0.8
0.2
1.6
0.4
1.3
▲
3.7
1.0
▲
8.9
3.9
0.2
0.2
▲
▲
0.4
予測
図表14.需要項目別の寄与度
(%)
2012年度
2013年度
2014年度
2015年度
2016年度
2017年度
実質国内総支出
0.9
2.0
▲
1.0
0.6
0.6
▲
0.1
民間需要
1.4
1.7
▲
1.5
0.3
0.6
▲
0.6
民間最終消費
1.0
1.4
▲
1.8
0.2
0.5
▲
0.6
民間住宅投資
0.2
0.3
▲
0.4
0.0
0.0
▲
0.1
民間設備投資
0.1
0.4
0.0
0.3
0.1
0.2
0.3
0.8
0.1
0.2
0.2
0.2
政府最終消費
0.3
0.3
0.0
0.3
0.2
0.2
公的固定資本形成
0.0
0.5
公的需要
財貨・サービスの純輸出
▲
0.8
財貨・サービスの輸出
▲
0.2
財貨・サービスの輸入
▲
0.6
▲
▲
▲
▲
0.1
▲
▲
0.1
▲
0.1
▲
0.2
0.3
0.2
0.6
0.5
0.6
0.0
0.7
1.3
0.0
0.7
0.0
1.2
▲
注1.四捨五入の関係上、内数の合計は必ずしも合計項目に一致しない
- 12 -
▲
予測
0.4
▲
▲
0.0
0.3