日本と中国の児童におけるう蝕経験と社会経済状況の関係

口腔衛生会誌 J Dent Hlth 66(1), 2016
日本と中国の児童におけるう蝕経験と社会経済状況の関係
劉 安 古田美智子 竹内 研時 山下 喜久
九州大学大学院歯学研究院口腔保健推進学講座口腔予防医学分野
概要:う蝕は多要因性疾患であり,その発症には生活習慣,口腔保健行動,社会経済要因が関与し,個人の要因だけで
なく環境要因も関係する.環境や社会経済状況が異なる国では,う蝕経験は異なることが予想される.本研究では,地域
相関研究によって,日本と中国の児童におけるう蝕経験と社会経済状況の関係について検討した.
う蝕経験は,日本の 2005 年歯科疾患実態調査および 2006 年学校保健統計調査,中国の第三次全国口腔健康流行病学調
査報告(2005 年)の全国調査データから,都道府県単位および省単位で 5 歳児・12 歳児の一人平均の未処置歯数と処置
歯数を用いて評価した.社会経済状況は,日本は内閣府の県民計算から 2006 年一人あたりの県民所得のデータを用い,
中国は国家統計局のデータから 2006 年の一人あたりの年間総収入を省単位で評価した.統計解析として,日本と中国で,
未処置歯数,処置歯数と社会経済状況の相関係数を 12 歳児のデータで求めた.
5 歳児と 12 歳児で処置歯数は中国に比べ日本のほうが多かった.日本では,未処置歯数,処置歯数と社会経済状況の
関係は負の相関であったのに対し,中国では正の相関を示した.つまり,日本では,社会経済状況が良い地域では児童の
未処置歯数や処置歯数が少ないが,中国では未処置歯数や処置歯数が多かった.児童のう蝕経験と地域の社会経済状況の
関係は国によって異なることが示唆された.
口腔衛生会誌 66:32-38, 2016
索引用語:う蝕経験,社会経済状況,地域相関研究,日本,中国
著者への連絡先:山下喜久 〒 812-8582 福岡県福岡市東区馬出 3-1-1 九州大学大学院歯学研究院口腔予防医学分野
TEL:092-642-6353/FAX:092-642-6354/E-mail:[email protected]
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