NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE Title JMLA研究助成 China Medical Boardと戦後日本の医学図書館の発展 Author(s) 松村, 悠子 Citation 医学図書館, 62(2): 151-156 Issue Date 2015-06 URL http://hdl.handle.net/10069/36164 Right This document is downloaded at: 2016-02-15T13:36:58Z http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp I D l ! l l i 盟理・・論文 ChinaM e d i c a lBoardと戦後日本の医学図書館の発展 松村悠子・ 長崎大学附属図書館 産党により PUMCが固有化され,中国への助成が不可能 I . はじめに となった。そのため,助成先をアジア地域の医学 ・看護 昭和 21 ( 1946)年 6月 28日から 29日に かけて,京都 学教育に広げ,ちょうど戦後復興期にあった日本も助成 府立医科大学中央図書館で,太平洋戦争後初となる第 7( 1952 )年から の対象となった。 日本への助成は昭和 2 四回医科大学附属図書館協議会が開催された。協議会 49 ( 1974)年 にかけて,のべ 4 0校以上の医学部や医科 2館の戦争被害状況について,各 では,当時の参加館 1 大学を対象に行われた。図書館以外にも,医師や看護師 館から報告があり,原子爆弾により甚大な被害を受けた の米国への留学や,大学における研究施設の建設に対す 長崎医科大学附属図書館(現在の長崎大学附属図書館医 1 9 81 ) る助成等を行った。なお中国への助成は昭和 56( 学分館)をはじめ,戦災により多くの医学図書館は被害 。 を受けた 1) 年に復活し,現在も中国や東南アジア諸国の医療政策研 『日本医学図書館協会六十年略史』掲載の協議会の協 CMBによる極東の医学図書館への助成に関し ては, 究や医学教育への助成を行っているい 6) 。 議事項および承合事項によれば戦中における外国雑誌 ,福留の論文は極東全域を概 福留による論文があるが 7) の未着,戦災による資料の消失など,当時の日本の医学 説したものであり,日本への助成が行なわれている昭和 1 961 ) 図書館は様々な課題を抱えていた。 また,昭和36( 4 3( 1 968)年に発表されたものである 。本稿では国内 年および 38 ( 19 6 4)年には,日本学術会議が政府に対 の事例に焦点を絞り,現在の各館における痕跡について して大学図書館に関する勧告を行っており ),医学図 2 )3 書館のみならず, 日本の大学図書館自体が欧米諸国に比 べて未整備・未発達であった。 も報告する 。 I I . CMBの医学図書館への助 成 このような状況の中,戦後日本の医学図書館界はロッ 当時の CMBの AnnualRe p o r t sによれば, CMBの医 クフエラ ー財団, CIE (GHQ民間情報教育局), ABCC 学 図書館への助成は, Fellowshipprogram, Booksand (原爆傷害調査委員会),オレゴン大学など海外の団体 j o u r n a l s ,C o n s t r u c t i o na n de q ui pmentの大きく 3つに分類 i na から助成を受けた。本稿はその中の一つである, Ch できる。それぞれについて,概要と個別に調査した館や M e d i c a lBoard ( 以下, CMB)による助成について,当 人物に関して詳細を述べる。 時の資料や,助成を受けた図書館を訪問し,それをまと 1. Fellowshipprogram ( 表 1) めたものである 。 CMBは大正 3 ( 1 914 )年にロックフ エラー財団の一部 Fe l l ow s h i pprogramでは 8名が助成を受け, 7名がアメ 門 ChinaM e d i c a lBoardとして設立された。 その名称か リカに 4∼ 24ヶ月, 1名が圏内に 1年間留学 した。7名の ら中国の組織と誤解されがちだが,CMBはアメリカの 中には,当時東京大学教育学部図書館学講座担任助教授 1 9 2 8)年に財団から独立し, China 団体である 。昭和 3 ( であった裏田武夫を含めたが,裏目は留学ではなく後述 M e d i c a lB o a r d ,I n c.と名称、を変更した。CMBは 当 初 する東大医学図書館建設のための視察旅行であ ったへ PekingUnionM e d i c a lCole g e (以下, PUMC)への助 1 )前田正三 6( 1 9 51 )年に中国共 成等の事業を行っていたが 昭和 2 長崎大学の前田正三は長崎大学附属図書館医学部分館 に籍を置いたまま,慶臆義塾大学文学部図書館学科へ 1 ・ Y u k oMATSUMURA:ヘルスサイエンス情報専門員(基礎) 干8 5 2 8 5 2 3長崎県長崎市坂本 1 丁目 m a t s u y@ n a g a s a k i u . a c . jp 1 2 4. ( 2 01 5 年 3月3 1日 受理) 年間留学した。同学科では昭和 37年度からロックフエ ラー財団による生物科学図書館員特別養成 プログラム 01 5;6 2( 2 ):1 51 1 5 6 . 医学図書館 2 松村悠子 表1 . 留学した図書 館関 係 者 期 間 1 9 5 7年 1 0月から 3ヶ月 1 9 6 3年 6月から 4ヶ月 1 9 6 4年 4月から 1 2ヶ月 1 9 6 4年 9月から 2 4ヶ月 1 9 6 6年 4月から 6ヶ月 1 9 6 6年 7月から 6ヶ月 1 9 6 8年 3月から 6ヶ月 1 9 6 8年 1 1月から 6ヶ月 東京大学 九州大学 長崎大学 度目堅義塾大学 留 学 先 等 医学図書館視察 コロンビア大学 慶応義塾大学図書館学科 コロンピア大学 慶磨、義~大学 NLM 神戸医科大学 東 北大学 東泉大学 ワシントン大学 ワシン卜ン大学 ワシントン大学 所属(当時) 対象者 裂回武夫 沙藤隆茂 前田正三 福留孝夫 津田良成 渋谷喜雄 長尾公司 今村鹿之助 が 3年計画で実施されており, 前田は最終年度に相当す る昭和 39年度の生物科学図書館現職者研修の研修生で あった。この研修で前田は「慶応義塾大学北里記念医 学図書館にお ける文献情報調査活動について」という実 ( J i f to f 習論文を同学科に提出している 9) 。 C H I N AM E D I C A LB O A l l i 2)今村慶之助 東京大学医学図書館の今村慶之助は,ワシントン大学 医学部図書館および米国国立医学図書館における図書館 学と医学文献についての研究・研修のためアメリカへ 6ヶ月間留学した川。今村氏が保管 していた当時の資料 によれば,留学中には, Lib ra r yo fC o n g r e s s ,N a t i o n a l I ns t i t u te so fHe a lt h,NewYo rka c ademyo fm e d i c i n e 図1 .寄贈図書に貼付 されたラベル や Me di c a ll i b r a r yc e n t e ro fNewY o r k , ArmedForces i n s ti t u teo fp a t h o l ogy research l i b r a r y , Count way た複数の図書館で確認できた。よって,出版社から発送 l i b r a r yo fm e d i c i n eなども訪問している。 される際に貼付されたと考えられる 。 寄贈を受けた 図書館の内,札幌医科大学は CMBカ 〉 ら の寄贈図書の 目録を発行している 14) 2. Booksandj o u r n a l s11-131 Bo ok sandj o u r n a l sでは,国内の医学図書館へ新刊書・ 1)京都大学医学図書館保管の新刊リスト どのような図書が寄贈されたのか。京都大学医学図書 学術雑誌等が寄贈された。 特に新刊書については,継続的な寄贈が行なわれた。 寄贈の方法は,まず各医学図書館へ CMBから新刊リス 館が保管していた昭和 31 ( 1 956)年 9月1日付 けの新刊 リストを例にとる。この新刊リストは 175タイトル190 冊, ト“Sel e ct e dl i s to fr e c e n tm e d i c a lpu b l i c a t i o n s ”が送付 合計 $ 2 , 2 21 .25の図書が掲載されている。図書の出版社 されて来る 。各館はその中から寄贈する図書を一定金額 を多い順に挙げると, Sa unde r s , Blakiston-McGraw, 以内で選択し,後日その図書が直接出版社から各館へ送 Thomas, Yearbook publ i sh in g , Hoeber, Academic f 医学図書館』に p r e s sであり,アメリカ国内の著名な出版社が参加してい よれば, 1956-57年度の新刊リストから $ 3 5 0 , 1957- たことが分かる。出版年を見ると その名前の通り,発行 4 0 0 ,1 957-59年度は $400が選択できた。 58年度から $ 3年以内の図書が半分を占めていた。単価は最も安いも 付されるというものであ った。当時の 寄贈を受けた図書館は,札医大,東北,新潟,群馬, ので $ 0 . 2 5,最も高いものは $1 1 6 . 0 0であった。 東大,慶応,慈恵,横浜,新潟,京大,阪大,京府,岡 山,徳島,鳥取,九大,久留米,長崎,熊本 13)などであっ た。寄贈対象館は,地理的条件および大学図書館活動を 3.C o n s t r u c t i o nandequipment (衰の 19 56∼ 63年にかけて,国内 7館の建築, 2館の増築 において,建設費・設備費の助成があ った。この時に医 参考にして選定 された。 寄贈された図書の折返し部分には,“G i f to f China , ,と印字されたラベル M e d i c a lBoardo fNewYork ,I n c . 学図書館が設置された大学や,全面開架式 ・中央管理方 式へ移行した図書館も多い。 。こ のラベルは,寄贈 を受け が貼付されている ( 図 1) 1 5 2 医 学 図書 館 2 01 5;V o l .62 No. 2 C h i n aM e d i c alBo a r dと戦後日本の医学図書館の発展 表2 .助成を受けた図書館 25-29) 学 大 九州大学(図 2 ) ) 東京大学(図 3 大阪大学(図 4) 神戸医科大学(図 5 ) 慶感義塾大学 ) 長崎大学(図 6 札幌医科大学 京都大学(図 7) 岡山大学(図 8 ) 助成年 1 9 56・5 9 助成額 計$ 7 5 , 0 0 0 1 957 1 9 5 8 1 9 60 1 9 61・6 3 1 9 61 1 9 61 1 963 1 963 $ 2 5 0 , 0 0 0 $ 5 0 , 0 0 0 $ 1 0 0 , 0 0 0 計$ 6 5 , 0 0 0 $ 5 0 , 0 0 0 $ 1 0 , 0 0 0 $1 0 0 , 0 0 0 $12 0 , 0 0 0 廿 r 内 医学部分館建設・増築 中央医学図書館建設 中之島図書館建設 附属図書館建設 北里記念医学図書館増改築 医学部分館建設 図書館増築 医学図書館建設 医学部分館建設 』 備 考 医学部関学 5 0周年記念 医学部 1 0 0年記念 大阪大学医学伝習 8 5周年記念 0 0周年記念 医学部創立 1 1)東京大学中央医学図書館建設 15) 16) も言及しており,近代的な医学図書館としての在り方につ Cons t r u c ti onandequi pmentにおいて最も金額が大き いて明確な方針を持って助成を行っていたことが分かる。 かったのが東京大学中央医学図書館(現:医学図書館) この提言を受けて建設された中央医学図書館は,昭和 36 である。東京大学の医学図書館は,それまで各教室に分 )年 11月3日に開館した。同日の竣工式では, CMB ( 1 9 61 散していたのを,医学部創立百年の記念事業のーっとし を代表してChandl e rMcC.Brooks 博士も祝辞を述べている。 て,組織化した近代的医学図書館が建設された。この図 中核となる図書館専用部分のほかに個人研究室 ・大小 書館は,圏内のモデル図書館としての役割も期待されて 会議室・セミナ一室・ラウンジ等が設けられた。図書館 いた。CMBはその建設費用の約半分担50,000を助成す 専用部分は,全面開架式の採用や書庫内のスタディレッ るにあたり,以下の提言を示している。 ジ(同館書庫に現存する壁面に備え付けの机と考えられ 1 . 独立棟である乙と 。 る),保存書庫の設置など当時としては新しい設備が採 2.当座必要な参考図書を除き ,全ての図書を中央化 用された。また,それまで各所に分散していた図書 ・雑 誌の管理や事務組織も統ー された。 すること。 3 . 学部の職員として教授会に出席し,発言しうる資格を 有する,訓練された司書によって指揮運営されるとと。 4 . 書籍も雑誌も,いずれも 学生も 使用しうるように この図書館は,改築を経て現在も医学図書館として運 用されており,図書館の入口の壁面には,以下の文面が 記載されている 。 運営すること 。 この医学図書蕗は 1958年 5月 7日に迎えた東京大学医 ( 1)放課後数時間は開館すること 。 na 学部創立百年を記念するために建設したもので℃hi ( 2)学生の使用にともないその世話をする十分な職 m e d i c a lboardofNew Yorkから模範的な中央医学図 書館の建立のため建設費の半額寄贈の申し入れのあっ 員をもつこと 。 たのが類縁となり国費のほかに学部関係者と有志から ( 3)学生の使用のための場所を提供すること 。 5. CMBは建物ならびに内部施設にたいし 50:50の の寄贈金を加えて完成した 。 ) 比(同額)で 25万ドルまでの寄付を考慮する 17 この医学図書館を涯学部総合中央館とも称するのはこ 上記の提言では,単に図書館の施設としての機能だけで の館の理想をあらわしたものでその使命の達成を期待 はなく, 資料の管理の方法や職員,サービス 内容に関して 医 学図 書 館 してのことである 2015;V o l .62 No.2 1 9 6 1年 1 1月3日文化の日開館 15 3 松村 悠 子 2)大阪大学中之島図書館建設 18 26 ( 1 9 51 )年に鉄筋コンクリー卜 3階建ての基礎医学 20 ) 大阪大学では,昭和 2 9( 1 9 5 4 )年の大阪大学医学伝習 教室 3棟の中に図書館も整備されることが文部省で承認 8 5周年を記念し,医学図書館の建設を計画し拠金を集め されていた。 しかし,昭和 32 ( 1 9 5 7)年に文部省の方 ていた。これに対するロックフエラー財団・ CMBによる医 針が変わったために図書館が整備される前に基礎医学教 理学合同図書館の設置のアドバイスを受け,中之島地区に 室の工事が打ち切りとなってしまった。そこで,医学部 分館を統合した中之島分館が建設された。 あった医理学系6 5 は文部省へ工事再開の要請を続けるとともに,昭和 3 平成4( 1 9 9 2)年4月に吹田の生命科学図書館に移転し, ( 1 960)年 8月に CMBへ医学図書館建設への助成を要請 現在は中之島図書館の建物は残っていないが,生命科学 I . 謝絶されたものの,文部省から当初案 した。要請は−E 図書館には中之島図書館に掲げられていた銘板が保管さ 通りに図書館が整備されることを条件に,書架等の内部 れている 。銘板の文章を以下に挙げる 。 5 0 , 0 0 0の助成を受けることとなった。その後, 設備費 $ 大阪大学医学伝習85 局年 ( 1 9 5 4 )を記念して医学 日本政府より昭和 3 7年度予算で図書館建築が承認され, 部・歯学部・敏生物病研究所並びに医学部学友会は匿 昭和 38 ( 1 9 6 3)年 3月に医学部分館が竣工した。同年 4 学 図書 館 建 設 を 計 画 し 拠金を始 め 1958年 3月に 月の落成式には CMBの C o n n e l l博士夫妻を招いている 。 この図書館の入口には以下のような銘板が掲げられて は800万円に達した この熱意は文部省を動かし 同年 5月医学図書館建設 費として国費658万円が指定配布された これに加う るに周年 1 1月 R o c k e f e l l e rF o u n d a t i o nより 10万ドル いた。 乙の図書館の書庫及び閲覧室の内部設備は China M e d i c a lBoardより寄贈されたものである 1963年 3月 C h i n aM e d i c a lBoardより 5万ドルの寄付をうけ 理 学 部・蛋白質研究所を加え共同で運営するととにな った 着 工 1959年 2月 延面積 2503m2419 竣工 同 年1 1 月鉄筋コンクリ ート造5 階建(書庫6 層) 銘板にある通り,大阪大学に対しては,ロックブエラー 財団が CMBの倍以上の金額を助成している 。昭和 35 新図書館は,昭和 5 4( 1 9 7 9 )年に独立した建物として 医学部分館が完成するまで,利用に供された 。 CMBによ る内部設備費で購入した木製の閲覧机や書架の一部は, 現在 も長崎大学附属図書館医学分館の閲覧室で使用され ており,入口にあった銘板は貴重資料室で保管されている。 ( 1960 )年 3月 2日に中之島図書館の開館式が開催され, 4)慶麿義塾大学北里記念医学図書館改築剖 d e r s o n博士が来賓 その際にはロックフ エラー財団理事 An 昭和 1 2( 1 9 3 7 )年 1 0月7日に竣工した慶臆義塾大学北 2 3 ) 里記念医学図書館は,過去 2回の増改築で CMBの助成を として出席し,テープカットを行っている 。 3)長崎大学附属図書館医学部分館建設 21) 受けた。昭和 3 6( 1 9 6 1 )年に内部の大改装を行い,サービ 原子爆弾により甚大な被害を受けた長崎大学附属図書 ス改善 ・業務効率化を実現した。この改装では医学図書館 館医学部分館も,新図書館を建設する際に, CMBから 0( 1 9 6 5)年 4 員教育のための講義室も設置された。昭和 4 内部設備費の助成を受けている 。 月には,地階を改修し プオート ・フィルムセンタ ーを開設し この図書館は独立棟ではなく, 医学部基礎医学教室の た。センターではマイクロリーダーやテープレコーダ一等の 一部に増築された。 そもそも,長崎大学医学部は昭和 機材を購入し, 学内に散逸していたフィルムやテー プ等の 議選麗量 一一輪開− A 議選 軍基 量量 5B Ii 図4 . 大阪大学図書館中之島分館 医学図書館 .19 70: 17(4 ) : 表紙より 1 5 4 医学図書館 2 0 15:Vo l .6 2 No .2 C h i n aM e d i c a lB o a r dと戦後日本の医学図書館の発展 図6 . 長崎大学医学部基礎医学教室(左手) 2階の一部が医学部分館。 . 京都大学医学図書館 図7 医学図書館. 1 9 6 9 ; 1 6 ( 4 ):表紙より 視聴覚資料を集中化し,学内外の利用に供していた。 ついて,勤務館をはじめ複数の図書館で調査を行なっ m.おわりに た。図書館史において各館の事務文書は基礎的な史料と なるが,過去の事務文書の扱いは大学によって異なる。 戦後 1 2館ではじまった日本医学図書館協会の加盟館 今回の調査でも,そのことを実感させられた。勤務館で は,その後多くの医学部・医科大学が新設されたこと は , 2度の引越しを経験しており,事務資料は一定期聞 1 9 7 0 )年度には 50館まで増加した。 に伴い,昭和 45 ( が経過すれば廃棄することもできるため,当時の資料で 加盟各館における 蔵書数・総面積 も増加し, 「日本医 o n s t r u c t i o na n de q u i p m e n tに関する資料以外はあま もC 5年 学図書館統計」によれば,特に総面積平均は昭和 2 り残存していなかった。書庫の狭随化により,図書館資 度から 45年度の 20年でほぼ倍増している 。 これには, 料の保存スペースすら確保が難しい場合は,過去の事務 Booksa n dj o u r n a l sや Con s t r u c ti o na ndequipmentによる 資料を保管することは現実的ではない。だが,自館史の ものも含まれていることは言うまでもない。 記録 ・継承という視点に立って事務資料を整理 ・保存す F e l l o w s h i pprogramの 8名の内,裏目・津田・長尾は ることも重要ではないかと筆者は考える。 後に JMLA名誉顧問にもなった。 また,福留と津田を除 最後に, CMBが助成し た医学図書館は 20館 を下らな 964年に神戸医科大学は国立移 いた全員が国立大学( 1 いにも関わらず,今回筆者が現地調査を実施したのは半 管)の所属である。そのため,多 くが異動により医学系 分にも満たない。 以外の図書館や他大学へ異動し,彼らが留学で習得した 戦後 70年を迎え,戦後史に対する関心も高まってい 知識やスキルは,医学図書館のみならず大学図書館界全 る。今回調査できなかった館を中心に,今後も機会を見 1( 1956 )年から医学薬学図書館講 体に広まった。昭和 3 つけて調査を継続したい。 1( 1966 )年か ら医学図書館員研究集会,昭 習会,昭和 4 1974 )年から は医学図書館員セミナーが開催され, 和 49( 現職者の研修や研究活動が活発に行われるようになった。 謝辞 本研究は, 2014年度 JMLA研究助成によるものです。 以上のとおり, 1970年代に日本の医学図書館は戦後復 現地調査では,東京大学医学図書館,慶庭、 義塾大学信濃 興と近代化を成し遂げたと言えよう 。その成長に CMBも 町メディアセンター,京都府立医科大学附属図書館,京都 一役買ったことは明らかである。 大学医学図書館,大阪大学附属図書館生命科学図書館(訪 CMBの日本への助成は,昭和 49 ( 1 974 )年で終了し 問順)の職員の皆様のご協力をいただきました。また,尾 1 972 )年初頭に,東邦大学が た。その 2年前の昭和 47 ( 崎聖太郎氏(麻布大学附属学術情報センター)を通じて, 医学部図書館建設へ助成の要請を行ったが,“貴国の国 今村慶之助氏(元東大医学図書館)から資料を借用する 運は隆盛で、,もはや外国より援助を受ける立場ではない とp う幸運にも恵まれました。山崎藤子氏(元長崎大医学 ように思う” )との理由により謝絶されている。昭和 43 24 分館)には, CMBに興昧を持っきっかけをはじめ,当時 ( 1968)年に,日本の GNPは資本主義国ではアメリカに の体験談などをお聞かせいただくなど多くの示唆をいただ 次ぐ世界第 2位となっている 。 ここまで経済成長を遂げ きました。この場を借りて御礼申し上げます。 た日本に対して, CMBが助成を打ち切るのも納得できる 。 本研究で は,約 5 0年前の 医学図書館をめ ぐる活動に 医 学図書館 最後に,本学医学分館のスタッフの皆様の支えなしで は本稿は完成できませんで した。記 して感謝します。 2 0 1 5;Vo. l6 2 No. 2 1 5 5 松村悠子 主要参考文献 1)戦災被害状況 対処協力ノ問題.医科大学附属図書館協 9 4 6 ; 1 6 : 6 l l . 議会議事録.1 2)日本学術会議.大学図書館の整備拡充について(勧告). 1 961 .[ i n t er n e t ] .h t t p : / / w w w . s c j . g o . j p / j a / i n f o / k o h y o / 0 2 / 051 8 k . p d f[ a c c e s s e d2 0 1 50 5 2 0 ] 3)日本学術会議.大学における図書館の近代化について(勧 9 6 4 .[ i n t e r n e t ] .h t t p : / /www . s c j . g o ・ j p / j a /i n f o / k o h y o / 告). 1 0 3 / 0 6 2 4 k . p d f[ a c c e s s e d201 50 5 2 0 ] 4) LoucksHH.Chi n aM e d i c a lBoardo fNewY o r k ,I n c .J MedE d u c .195 9 ; 3 4 : 8 4 56 . 5)F o s d i c kRB,井本威夫,大沢三千三 ロックフエラー財 9 5 6 . 団:その歴史と業損.東京:法政大学出版局;1 6) L a u r i eN o r r i s .Thec h i n am e d i c a lb o a r d :5 0y e a r so f p r o g r a m s ,p a r t n e r s h i p s ,a ndp r o g r e s s ,1 9502 0 0 0 .New Y o r k : C h i n aM e d i c a lBoardo fNewY o r k ,I n c . ; 2 0 0 3 . 7 ) FukudomeT .TheC h i n aM e d i c a lB o a r da n dm e d i c all i b r a r i e s i nt h eFarE a s t .B u l lMedL i b rAs s o c .1 9 6 8 ; 5 6 ( 2 ) : 1 5 06 . 8)裏田武夫. 再びアメリカの図書館をめぐって. 東洋大学図 95 8 ; 2 : l 5. 書館学研究会会誌. 1 i b r a r ys c i e n c e . 9)慶慮義塾 大学図書館学科学事 報告. L 1 9 6 5 ; 3 :1 3 5 . 1 0)今村慶之助.米国における図書館業務の機械化について. 医学図書館. 1 9 6 9 ; 1 6( 2 ): 1 0 3 1 1 . 1 1 )野口通子.私の図書館つれづれ( 1 ).医学図書館.1 9 9 1 ; 3 8 ( 2 ) : 1 6 0“6 . 1 2 )臨時提案. 日本医学図書館協会総会議事録. 1959 ; 第 30 回 :3 9 4 0 . 1 3 )C h i n aM e d i c a lBoardから図書寄贈.医学図書館. 1 9 5 7 ; 4 ( 4 ) : 2 4 6 7 . 1 4 )L i b r a r ySMC.L i s to fb o o k sd o n a t e db yt h eC h i n aM e d i c a l Boardo fNewY o r k ,I n c .1 9 6 1/1 9 6 3 .S a p p o r o : S a p p o r o M e d i c a lC o l l e g eL i b r a r y . 15 )東京大学医学部.東京大学医学部百年史:東京大学医学 部創立百年記念会.東京東京大学出版会; 1 9 6 7 . )永井克孝.医学図書館.東京医学 : 東京大学大学院医学 1 6 系研究科・医学部年報. 1 9 8 7 ; 9 4 ( 1 ) : 1 5 4 5 . 1 7 )今村鹿之助.私の図書館人生.医学図書館. 1 9 9 1 ; 3 8( 3 ) : 3 0 5 -1 1 . 1 8 )士出郁子.「中之島分館j のころ: 『 NAKA TONEWS J の記事を中心に医学図書館. 2 0 1 1 ; 5 8 ( 4 ) : 2 9 2 6 . 1 9 )浅野次郎.大阪大学中之島図書館. 医学図書館. 1 9 6 3 ; 1 0 ( 1 2: )1 3 6 . )スマートな五階建 阪大の中之島図書館開館式.産業経 20 960年 3月23日 . 済新聞. 1 2 1)名島仙次郎.長崎大学医学部図書館.医学図書館.1 9 6 3 ; 1 0( 6 ): 1 7 5 8 . 2 2 )谷口真弓. ( I I)慶応義塾大学北里記念医学図書館 医 9 6 3 ; 1 0( 1 2 ) : 512 . 学図書館.1 23)上釜喬. ブオート・フィルムセンターについて. きたさと. 1 9 6 6 ; 5 (1 ) :1 8 2 1 . 24 ) 井 上 英 新 移 転,新 築 , 再 移 転 医学図書館. 1 9 8 2 ; 2 9 ( 3 ) : 2 3 24 5 . 25 )回遜文子. 1960年代を回顧して.医学図書館の近代化と 共に歩んだ日々.医学図書館. 1 9 9 3 ; 4 0 ( 3 ) : 3 0 8 1 4 . 26 )江崎正. (N)神戸医科大学附属図書館.医学図書館. 1 9 63 ; 1 0 (1 2 ) :1 7 2 2. 27)木田橋喜代償. V I . 札幌医科大学付属図書館一旧聞・図 書館建築始末記ー.医学図書館. 1 9 6 3 ; 1 0 ( 4 ) : 7 7 8 4 . 28 )入江昭彦,伊達恭子,中院武夫.京都大学医学図書館に 9 6 7 ;1 4 ( 4 ) : 3 2 7 3 3 . ついて.医学図書館. 1 2 9 )岡山大学医学部百年史編集委員会.岡山大学医学部百年 史.岡山:岡山大学医学部創立百周年記念会大学;1 9 7 2 . TheC h i n aM e d i c a lBoardandP o s t W a rDevelopmentsi nJ a p a n e s eM e d i c a lL i b r a r i e s YukoMAτ'SUM URA NagasakiU n i v e r s i t yL i b r a r y .1 1 2 4, Sakamoto, Nagasaki8 5 2 8 5 2 3 ,Japan A b s t r a c t :Fromt h e1 9 5 0 st ot h e1 9 7 0 s, J a p a n e s em e d i c a l l ib r a r i e sr e c e i v e dgrant sfromt h eChinaMedicalBoar d . Thegr a n t sfromt h eboardcou l dberough l yd i v i d e di n t o3 c a t e g o r i e s .I nt h e“ F e l l o w s h i pprogram ” , 6l i b r a r i a n swe n tt o Americanun i v e r s i t i e st os t u d yl i b r a r ys c i e n c e ,and1l i b r a r i a n wentt oK e i oU n i v e r s i t yl i b r a r ys c h o o lf o r1y e a r . I nt h e“ Bo o ks andj o u r n a l s "g r a n tc a t e g o r y ,manybooksandj o u r n a l swere s u p p l i e dt om e d i c a ll i b r a r i e s .Manyp u b l i s h e r sd e l i v e r e dnew m e d i c a lbooksd i r e c t l yt ot h el i b r a r i e sa te a c hl i b r a r y’ sr e q u e s t . , “ G i f to fC h i n aM e d i c a lBoardo f Thesebookswerel a b e l e d NewYork ,I n c . "I nt h e c a t e g o r y ,9l i b r a r i esr e c e i v e dg r a n t s企omt h ebo a r dt ob u i l d 1 5 6 newl i b r a r i e sort or e n o v a t e .Somel i b r a r i e sc r e a t e dme m o r i a l p l a t e se x p l a i n i n g出 eg r a n t sf r o mt h eb o a r da n dd i s p l a y i n gt h e i re n t r a n c e s .Oneo ft h e m ,t h eU n i v e r s i t yo fTokyo p l a t e sa t出 e me d i c a ll i b r a r y ,r e c e i v e d$ 2 5 0 , 0 0 0企o m 出 eb o a r dt ob u i l dt h e 出a n n i v e r s a r yo f出eF a c u l t y c e n t r a lm e d i c a ll i b r a r yf ort h e1 0 0 o fM e d i c i n e .百1 eb o a r dmadeac o n t r i b u t i o nt or e c o v e r ya f t e r t h ewar叩 dt o出 em o d e r n i z a t i o no f ] a p a n e s em e d i c a ll i b r a r i e s . Keywords:m e d i c a ll i b r a r yh i s t o r y ,p o s t W o r l dWarI I ,C h i n a me d i c a lb o a r d ,J a p a nM e d i c a lL i b r a r yAs s o c i a t i on ( LakuT o s h o k a n .2 0 1 5 ; 6 2( 2 ) : 1 51 15 6 ) 医学図書館 2 015;V o l .62 No. 2
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