人民元国際化の現状と展望

資料2
外国為替等分科会
人民元国際化の現状と展望
2016年2月2日
中国営業推進部
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1.「⼈⺠元の国際化」の動き
2.⼈⺠元国際化に向けた⾦融インフラ整備
3. オフショア⼈⺠元取引の拡⼤
4.規制緩和の動き
5.⼈⺠元国際化の今後の⾒通し
6.⽇本にとっての⼈⺠元国際化
2
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人民元の国際化の背景
2008年リーマンショック・金融危機
【中国政府】
中国経済の米ドル依存体質からの脱却
を企図し、人民元決済を解禁
米ドルの下落
(億ドル)
40,000
輸出企業
「世界の工場」となった中国
には巨額の経常黒字がある
ため、実需に沿えば人民元
高が進行。
中国人民銀行
【中国・日本の外貨準備高推移】
中国の外貨準備高と世界の外
貨準備に占める中国の割合
40%
33,304
31.2%
30,000
30%
日本の外貨準備高と世界の外
貨準備に占める日本の割合
人民元を放出
20,000
為替市場
20%
外貨を吸収
12,332
10.1%
輸入企業
経常黒字による元高圧力を
打ち消すため、為替介入を
実施し人民元を発行。その
対価として外貨準備が増加。
10,000
外貨準備高
10%
-
0%

近年、中国の人民元国際化に関する一連の動きは、より大きな国家戦略の位置づけに拡大。

単なるクロスボーダー人民元決済の規制緩和に留まらず、中国及び中国経済の世界における重要度の高まりとともに、
一帯一路、通貨スワップ協定、クリアリングバンク、RQFII、自由貿易試験区金融改革、上海‐香港ストックコネクト、
CIPS、為替レート政策変更、SDR構成通貨への採用等を通じ、着実に世界での存在感を高めつつある。
(資料)PBOC, World Bank Data
3
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人民元の対外開放 ~オフショア人民元市場の成立~

2009年7月、中国政府は中国と香港・マカオ及びASEAN10ヶ国との間で、一部企業による人民元建て貿易決済を解禁。
以後、国外地域制限撤廃(2010年6月)、国内地域制限撤廃し(2011年8月)及び企業制限撤廃と段階的に開放。

中国・香港間貿易で人民元利用が進み、中国から香港への人民元支払先行の結果、香港に人民元滞留、オフショア
人民元市場が成立。

中国本土で流通する「オンショア人民元(CNY)」に対し、香港を中心とした中国本土以外で流通する人民元は「オフ
ショア人民元(CNH)」と呼ばれ、人民元の「二重相場」を形成。

中国政府は、二重相場を維持することにより、オフショア人民元市場(CNH)における資本取引の自由化、金融商品の
多様化を進めつつ、中国国内市場の開放と金融改革を段階的に進展させてきた。
【中国の人民元建て貿易決済額(貨物・サービス) 】
(億元)
25,000
20,000
15,000
2015年:
2014年:
2013年:
2012年:
2011年:
2010年:
2009年:
【香港における人民元預金残高】
7兆2,343億元
7兆2,343億元
6兆5,539億元
6兆5,539億元
4兆6,298億元
4兆6,298億元
2兆9,382億元
2兆9,382億元
2兆808億元
2兆808億元
5,063億元
5,063億元
36億元
36億元
8,642億元(2015年11月末)
10,000
5,000
0
1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
(資料)香港金融管理局 貨幣統計数字より
(資料)中国人民銀行より
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活発化するオフショア人民元建て資本取引
(億元)
【香港における点心債発行額の推移】
3,805
4,000
【人民元建て債券発行事例とRQFII付与状況】
国名
3,684
3,100
3,000
2,372
2,000
1,467
1,000
2011
2012
2013
2014
2015.8
RQFII
付与時期
金額
香港
2007.6
中国国家開発銀行
2011.12
2,700億元
イギリス
2012.4
HSBC
2013.10
800億元
台湾
2013.3
中国信託商業銀行
2013.1
1,000億元
シンガポール
2013.5
HSBC
2013.10
500億元
オーストラリア
2014.4
中国銀行
2014.11
500億元
ルクセンブルグ
2014.5
中国銀行
2015.4
500億元
ドイツ
2014.5
中国農業銀行
2014.7
800億元
フランス
2014.7
中国銀行
2014.6
800億元
2014.10
中国工商銀行
2014.7
800億元
スイス
2014.6
中国建設銀行子会社
2015.1
500億元
日本
2015.6
三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行
-
-
韓国
0
人民元建て債券の主な発行体
発行時期
発行体
(資料)HKMA(2015年は8月まで)
(資料)各種発表より
 香港市場では潤沢なオフショア人民元資金を背景に人民元建オフショア債券(点心債)をはじめ、人民元建ファンド、
不動産投資信託(REIT)等の金融商品も登場。
 RQFII(人民元適格外国機関投資家)の投資枠は、香港を含めて16カ国、計1兆2100億元へと拡大(2015年12月末)。
 2014年にはイギリスが人民元建て国債(30億元、期間3年)を発行。一方、中国も2015年10月に中国人民銀行がロ
ンドン市場で短期債(50億元、1年)発行。
 フランス、インドネシア等も人民元建て国債の発行を検討中。
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香港オフショア人民元市場の流動性について
総取引量
(1日当たり)
RMB・・・人民元
通常の取引量
(1取引当たり)
最大取引量
(1取引当たり)
スポット取引
フォワード取引
マネー取引
RMB 37,000M - 49,000M
(USD 6,000M - 8,000 M)
RMB 160,000M – 255,000M
(USD 25,000M-40,000M)
RMB 3,000M - 5,000M
(equiv. USD 480M - 800M)
RMB 30M - 120M
(USD 5M-20M)
RMB 60M – 480M
(equiv. USD 10M-80M)
RMB 100M - 500M
(equiv. USD 16M-80M)
Roughly RMB 500M
(USD 80M)
Possible over RMB 1,600M
(over USD 250M)
RMB 500M
(USD 80M)
2年までが大宗
流動性
流動性豊富
(1~24ヶ月が最大)
5年程度まで取引可能
<参考>
市場規模比較
1日あたり
国内 USD 15,000M
(Spot & Forward)
国内 USD 15,000M
(Spot & Forward)
1年までが大宗
(1~6ヶ月が最大)
国内 USD 15,000M
※本データは、2015年12月時点において みずほ銀行が市場規模等を推定したものですが、上記金額の取引を保証するものではありません。
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【ご参考】オフショア人民元決済の仕組み(①オンショアCNY利用の場合)
日 本
中 国
貿易貨物(CNY10)
送金依頼人
送金受取人
CNY10
借方
CNY購入+送金依頼
【真実性確認】
貸方
依頼人預金
JPY200(-)
売渡外為(仮受)
CNY10(+)
売渡外為(仮受)
CNY10(-)
CNY預け(X)
CNY10(-)
借方
BANK
仕向銀行 A
CNY預け(X)
CNY10M(+)
JPY 預り(X)
JPY200(+)
貸方
中銀預け
CNY10(+)
未払外為(仮受)
CNY10(+)
未払外為(仮受)
CNY10(-)
受取人預金
CNY10(+)
CNY入金通知
BANK
【真実性確認】
被仕向銀行 B
SWIFT支払指図(P/O)
SWIFT 銀行間トランスファー指図
BANK
BANK
決済銀行 X
借方
中央銀行
CNAPS
中国人民銀行
PBOC
貸方
JPY預け(A)
JPY200(+)
CNY預り(A)
CNY10(+)
CNY預り(A)
CNY10(-)
中銀預け
CNY10(-)
CNAPS
借方
貸方
中銀預り(X)
CNY10(-)
中銀預り(B)
CNY10(+)
(CNAPS: China National Advanced Payment System 中国国内決済システム)
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【ご参考】オフショア人民元決済の仕組み(②オフショアCNH利用の場合)
日 本
送金依頼人
英 国
CNH10
送金受取人
出資・貸付 等
借方
CNH購入+送金依頼
貸方
依頼人預金
JPY200(-)
売渡外為(仮受)
CNY10(+)
売渡外為(仮受)
CNY10(-)
CNY預け(X)
CNY10(-)
BANK
仕向銀行 A
CNY預け(X)
CNY10M(+)
JPY 預り(X)
JPY200(+)
借方
貸方
CNY預け(Y)
CNY10(+)
未払外為(仮受)
CNY10(+)
未払外為(仮受)
CNY10(-)
受取人預金
CNY10(+)
CNH入金通知
BANK
被仕向銀行 B
SWIFT支払指図(P/O)
SWIFT 為替売買+銀行間トランスファー
BANK
BANK
決済銀行 X
借方
CNY預り(A)
CNY10(+)
CNY預り(A)
CNY10(-)
BOCHK預け
CNY10(-)
借方
BOCHK 預り(X)
CNY10(-)
SWIFT
BANK
SWIFT
中国銀行(香港)
BOC(HK)
貸方
JPY預け(A)
JPY200(+)
香 港
オフショア人民元
クリアリングバンク
SWIFT
入金通知
決済銀行 Y
借方
貸方
BOCHK預り(Y)
CNY10(+)
BOCHK預け
CNY10(+)
貸方
CNY預り(B)
CNY10(+)
(SWIFT:Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication が運営する 国際決済システム)
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オンショア人民元市場とオフショア人民元市場の二重相場
◆ クロスボーダー人民元取引は、貿易決済等の実需取引に限られ、自由な資金移動が制限され、加えてオンショア市場は
当局規制要因で動くこともあり、両市場間のアービトラージ(裁定取引)が働きにくく、二重相場となりやすい。
◆ 2013年末のオン‐オフ市場間人民元売買枠撤廃、オフショア市場での金融派生商品の拡大等もあり、金利・為替相場の
歪みによって低利資金調達等の効果を持つ取引が成り立つ場合も。
◆ 中国金融当局は、貿易決済等に擬装した投機的取引を防ぐべく、銀行にモニタリングや書類確認等の徹底を求めている。
オフショア市場(海外市場)
一部規制の壁(実需原則)
オンショア市場(中国国内市場)
BANK
BANK
貿易決済等(エビデンス確認要)
円
円
BANK
BANK
人民元
【CNH】
米ドル
人民元
【CNY】
投機的取引(エビデンス無し)
BANK
米ドル
BANK
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【ご参考】オンショア人民元市場とオフショア人民元市場の動き
【オンショア人民元(CNY)とオフショア人民元(CNH) 対米ドル為替レート推移】(2015年1月~2016年1月)
人民元安
(8/11 PBOCがオンショア人民元の基準仲値を大幅切り下げ)
人民元高
(Data: Bloomberg)
 2015年1月~8月上旬、オンショア人民元(CNY)は、中国人民銀行(PBOC)公表の基準仲値から値幅下限近くの元安水準で推移、香港市場等で
のオフショア人民元(CNH)も略同水準で推移。
 2015年8月11日~13日、PBOCは基準仲値を3日間で10日対比4.7%切り下げるとともに、以後、国内オンショア市場では過度の元安を防ぐ目的で
市場介入のほか、為替予約等デリバティブを利用した顧客の『人民元売り外貨買い』を実質的に制限する等、CNY人民元相場を買い支え。
 一方、オフショア人民元(CNH)市場では、中国経済減速、資金国外流出懸念等からオンショア人民元(CNY)相場以上に元が売られることに。
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1.「⼈⺠元の国際化」の動き
2.⼈⺠元国際化に向けた⾦融インフラ整備
3. オフショア⼈⺠元取引の拡⼤
4.規制緩和の動き
5.⼈⺠元国際化の今後の⾒通し
6.⽇本にとっての⼈⺠元国際化
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人民元の国際化に向けたインフラ整備
●外貨準備組入国 (2015年11月24日時点で10カ国・地域)
▲通貨スワップ協定締結国 (2015年12月末時点で33カ国・地域計3.3兆元超)
■人民元直接取引開始国 (2015年11月24日時点で米・香港含め13カ国・地域)
▲ウクライナ
●▲■ロシア ★人民元クリアリングバンク設置国 (2015年11月24日時点で16カ国・地域)
アイスランド▲
★ルクセンブルグ
イギリス●▲■★
▲モンゴル
▲ベラルーシ
▲カザフスタン
▲★カナダ
フランス★
(▲)ウズベキスタン
▲★ハンガリー
ECB ▲■
★ドイツ
▲■★韓国
■アメリカ
スイス▲ ■
▲アルメニア
(▲)■日本
アルバニア▲
▲トルコ
▲ベトナム
●■★台湾
カタール▲★
UAE(▲)
ガーナ●
ナイジェリア●
スリナム▲
パキスタン▲
スリランカ▲
タイ● ▲ ★
マレーシア● ▲ ■★
シンガポール▲■★
インドネシア▲
南アフリカ▲
▲ ■★香港
★マカオ
●フィリピン
▲ブラジル
●カンボジア
▲アルゼンチン
●▲■★オーストラリア
▲ ■ニュージーランド
※「 (▲)」は期限が到来しているもの。
※外貨準備組入国は報道ベース。IMFレポートによれば38カ国。
※カタール、カナダは2014年に自国通貨と人民元の直接取引開始合意済。UAEは2015年末に人民元決済機関設立検討表明。
※上記のほか、ジンバブエは2016年より自国の法定通貨に人民元を採用すると表明。
12
▲★チリ
(資料)PBOC,CFETS,IMF,各種報道より
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オフショア人民元センターの発達
人民元預金残高
指定クリアリング行
主要な
人民元サービス
•
•
•
•
•
主なマーケット
その他
※1 2015年11月末時点
※2 2015年9月末時点
シンガポール
台湾
ロンドン
東京
8,642億元※1
2,250億元※2
3,182億元※3
200億元※4
N.A.
BOCHK(中国銀行(香港))
香港
小売・商業銀行業務
為替
証券業務
貿易金融
金融プロダクト
ICBC(中国工商銀行)
シンガポール
BOC (中国銀行)
台湾
CCB(中国建設銀行)
ロンドン
なし
あり
(2014年11月、4000億元)
二国間スワップ
主な強み
香港
•
•
•
•
伝統的な中国へのGateway
商業・金融で密接な結びつき
人民元国際化の先駆け
強固・自由な金融インフラ
•
•
•
•
小売・商業銀行業務
為替
貿易金融
金融プロダクト
•
•
•
•
あり
(2013年3月、3000億元)
小売・商業銀行業務
為替
貿易金融
金融プロダクト
―
(協議中)
•
•
•
•
小売・商業銀行業務
為替
貿易金融
金融プロダクト
あり
(2013年6月、2000億元)
(2015年10月、3500億元)
―
(2013年9月期限到来
(30億米ドル))
• 欧米タイムゾーン
• 密な貿易関係
• 世界有数の金融センター
• ASEAN地域の金融ハブ
•自由な金融インフラ
• 大規模な預金
• 強固・自由な金融インフ
• 強固・自由な金融インフラ
•厚みのある日中貿易
(決済実需に基づく) ラ(20時間/日の決済サー
ビスなど)
• 大中華圏、アジア
• 新スキーム/ 新商品
• 点心債市場
• 東南アジア圏
• コモディティ市場
• プライベートバンキング
• 国内市場
• 中台間取引
• RQFII枠※5あり(約2,700億元)
• RQFII枠あり(500億元)
• RQDII枠※6協議中
• RQFII枠あり(1,000億
• RQFII枠あり(800億元)
元)
※3 2015年12月末時点
※4 2014年12月末時点
•為替
•貿易金融
•金融プロダクト
※5 RQFII:人民元適格海外機関投資家(海外投資家による中国市場への投資)制度
※6 RQDII:人民元適格国内機関投資家(中国内投資家による海外市場への投資)制度
• グローバル金融市場
• 欧米圏
• 資産運用
•日中間取引
•なし
(出典)HKMA, Monetary Authority of Singapore, 台湾中央銀行,
City of London, PBOC,CFETSなど
注)上記は2016年1月末時点情報に基づく概略であり、あくまで当行認識に基づいて各地域状況をイメージ化したものです。
13
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オフショア人民元指標金利(CNH HIBOR)
 香港オフショア人民元市場では、従来、指標金利といえるものが存在せず、スワップレート等のプライシング困難な状況。
 2013年6月24日より、TMA(Treasury Markets Association:財務市場協会)が16行の提示金利に基づき “ CNH HIBOR
FIXING ” を毎営業日11時15分(香港時間)に公表開始。
 CNH HIBOR FIXINGの公表により、変動金利のインデックスが確立されることとなり、金利スワップ市場が本格化。また、
オフショア人民元建てローン需要の拡大等により、金利市場の流動性も増加。
 なお、為替市場同様、中国国内との自由な人民元の資金移動が制限され、資金需給バランスも異なることから、香港市
場のCNH HIBOR と中国国内の人民元指標金利とされるCNY SHIBORとの間で乖離が発生する。
【CNH HIBOR とCNY SHIBOR レート推移】(2015年1月~2016年1月)
3ヶ月物 CNH HIBOR (香港銀行間金利)
3ヶ月物 CNY SHIBOR (上海銀行間金利)
2015年1月
2015年6月
2015年12月
14
2016年1月
(Data: Bloomberg)
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オフショア人民元市場における各種金融商品
商品名
特徴や制約など
CNH 為替取引(スポット)
中国国内取引開始時間(9:30)にあわせて本格的に取引が開始される。
マーケットは24時間開いているものの、NYクローズから中国国内取引開始時まで流動性は減少。
また、中国休日の際は流動性が低下。その他は通常の為替取引と同様の取引が可能。
CNH為替取引(フォワード)
取引開始時刻はスポット同様。立ち上がり当初は 1年以内の受渡が主流であったが、中長期為替
リスクヘッジの高まりとともに取引の幅も広がり、最長取引年限が延長されつつある。
また、スポットとフォワードを組み合わせた為替スワップ取引も可能。
CNH通貨スワップ
元本交換を含む、異通貨間の変動金利-固定金利交換ツール。
CNH 通貨オプション
TMAが毎営業日11:00に香港 Fixing レート(為替)を公表しており、行使/非行使判定は他の通貨
と同様に行うことが出来る。人民元対米ドルのほか、円やユーロといった他の主要国通貨との組み
合わせでも取引可能になりつつある。ヘッジニーズも増加しており、市場は拡大傾向。
CNH 金利スワップ
CNH HIBOR Fixingレート(短期金利)の公表開始を受けて取引スタート。変動の大きい人民元金利
のヘッジが可能に。TMAはCNH HIBOR Fixingレートを毎営業日11:15に公表。
デリバティブ内在ローン
仕組預金
通貨スワップや金利スワップを組み合わせることにより、金利上昇リスクヘッジを可能にするローン。
人民元の二重相場環境等、市況によっては比較的低利の人民元調達が可能となる。
通貨オプションや通貨スワップを内在させることにより、特定の市況下において通常よりも高い利
回りが得られる可能性がある仕組み預金
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決済システム CIPS (RMB Cross-Border Interbank Payment System)

2015年10月、中国人民銀行はクロスボーダー人民元決済システムCIPS(第一期)を正式リリース。

当初参加銀行は19行(中資系11行、外資系8行(日系は含まれず))。1行1接続、集中決済、RTGS方式採用。

第一期の主な機能はクロスボーダー人民元決済(貨物貿易、サービス貿易、直接投資、融資及び個人送金等)にかかる顧
客送金及びインターバンク決済。稼働時間は中国時間20:00まで(欧州時間にも重なる)。

電文フォーマットはISO20022準拠。英語・中国語の伝送が可能、SWIFT電文との変換も可能。

香港等のオフショア人民元クリアリングバンク決済と当面併存。
CIPSを利用したクロスボーダー人民元決済の例(イメージ)
X行
【海外】
BANK
間接参加行(海外)
直接参加行:CIPS内に専用口座を有し、直接CIPSにアクセス
間接参加行:直接参加行を通じてCIPSに参加
送金依頼人
【中国国内】
BANK
A行
BANK
PBOC及びCIPS運営機構
B行
BANK
Y行
BANK
X行
CIPS口座
直接参加行
CIPS
A行
CIPS口座
クリアリング
CIPS口座
CIPS
B行
CIPS口座
無利息、オーバードラフト無し、RTGS決済、日次バランスはゼロ
CIPS
Y行
CIPS口座
間接参加行(中国内)
受取人
直接参加行
中国人民銀行「人民元跨境支付系統業務暫行規則」等に基づきみずほ銀行作成
16
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香港・上海市場の取引時間延長
 2012年1月より香港、2016 年1月より上海の各取引終了時間が23:30まで延長。欧州市場取引時間を概ねカバー。
 欧州オフショア人民元市場からも香港・上海市場へのアクセスが容易となり、市場活性化を後押しする形に。
【24時間取引のイメージ】
TOKYO
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
01
02
03
04
05
HK・SH
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
01
02
03
04
LONDON
21
22
23
24
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
NEW YORK
16
17
18
19
20
21
22
23
24
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
ウェリントン
シドニー
フランクフルト・チューリッヒ
東京
ロンドン
香港(旧)・上海(旧)・SPO 等
香港・上海
NY
(取引時間延長)
NY
17
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1.「⼈⺠元の国際化」の動き
2.⼈⺠元国際化に向けた⾦融インフラ整備
3. オフショア⼈⺠元取引の拡⼤
4.規制緩和の動き
5.⼈⺠元国際化の今後の⾒通し
6.⽇本にとっての⼈⺠元国際化
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世界における中国の貿易取引
 中国の最大貿易相手国はアメリカであるが、地域別ではアジア(日本・韓国・台湾・香港を含む)が50%超。
 香港向けの輸出貨物の中には、香港を中継して欧米やアジアに輸出されているものも多いと見られる。
【中国の輸出入構造】
【中国の輸出相手国】
(単位:ドル)
2000年
2014年
1位
アメリカ
521億
20.9%
アメリカ
3,961億
16.9%
2位
香港
445億
17.9%
香港
3,632億
15.5%
3位
日本
417億
16.7%
日本
1,494億
6.4%
4位
韓国
113億
4.5%
韓国
1,003億
4.3%
5位
ドイツ
93億
3.7%
ドイツ
727億
3.1%
【中国の輸入相手国】
(単位:ドル)
2014年
2000年
1位
日本
415億
18.4%
韓国
1,902億
9.7%
2位
台湾
255億
11.3%
日本
1,630億
8.3%
3位
韓国
232億
10.3%
アメリカ
1,590億
8.1%
4位
アメリカ
224億
9.9%
台湾
1,520億
7.8%
5位
ドイツ
104億
4.6%
中国
1,448億
7.4%
※輸入統計における「中国」のうち、8割は「香港からの中国産品の輸入」
出所:中国国家統計局
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クロスボーダー人民元決済の多国間利用の拡大
 中国から海外への決済(流出)は全体の1割 、海外から中国への決済(流入)も全体の1割 強(但し、SWIFT利用分のみ)
 第三国向けの支払シェア : ①香港(27.1%)、②英国(17.6%)、③中国(10.1%)、④米国(7.5%)、⑤フランス(6.7%)
 第三国からの受取シェア : ①香港(40.8%)、②シンガポール(13.8%)、③中国(13.0%)、④英国(6.3%)、⑤台湾(4.5%)
 『アジア域内』(4,220億米ドル)と『欧米⇔アジア間』(4,395億米ドル)は略拮抗、『欧米域内』でも639億ドルを超える。
国別人民元クロスボーダー決済取扱高状況(参考値 2015年1月~12月)
From
中国
ア
ジ
ア
台湾
シンガポール
日本
韓国
ドイツ
米国
欧
米
ルクセンブルク
英国
フランス
その他
総計
香港
460
4.0%
欧米
747
6.5%
400
3.5%
31
0.3%
75
0.7%
31
0.3%
3
0.0%
30
0.3%
1
0.0%
53
0.5%
1
0.0%
126
1.1%
1,499
13.0%
200
1.7%
415
3.6%
10
0.1%
238
2.1%
305
2.7%
616
5.4%
142
1.2%
1,106
9.6%
447
3.9%
749
6.5%
4,688
40.8%
台湾
シンガポール
231
225
2.0%
2.0%
246
612
2.1%
5.3%
6
0.1%
4
0.0%
0
0
0.0%
0.0%
0
4
0.0%
0.0%
0
13
0.0%
0.1%
0
116
0.0%
1.0%
0
0
0.0%
0.0%
11
417
0.1%
3.6%
0
79
0.0%
0.7%
29
116
0.3%
1.0%
523
1,587
4.5%
13.8%
③
①
⑤
中国
香港
(単位:億米ドル)
アジア
To
日本
64
0.6%
45
0.4%
0
0.0%
0
0.0%
0
0.0%
0
0.0%
0
0.0%
2
0.0%
0
0.0%
0
0.0%
0
0.0%
112
1.0%
韓国
20
0.2%
156
1.4%
0
0.0%
0
0.0%
0
0.0%
0
0.0%
0
0.0%
0
0.0%
0
0.0%
0
0.0%
0
0.0%
181
1.6%
ドイツ
10
0.1%
237
2.1%
0
0.0%
5
0.0%
0
0.0%
0
0.0%
1
0.0%
0
0.0%
109
1.0%
21
0.2%
15
0.1%
398
3.5%
米国
ルクセンブルク
19
8
0.2%
0.1%
151
42
1.3%
0.4%
0
3
0.0%
0.0%
0
4
0.0%
0.0%
0
0
0.0%
0.0%
0
1
0.0%
0.0%
0
5
0.0%
0.0%
7
0.1%
0
0.0%
132
18
1.1%
0.2%
75
5
0.6%
0.0%
13
33
0.1%
0.3%
389
127
3.4%
1.1%
②
英国
4
0.0%
267
2.3%
51
0.4%
115
1.0%
0
0.0%
0
0.0%
77
0.7%
58
0.5%
1
0.0%
56
0.5%
94
0.8%
722
6.3%
④
20
フランス
5
0.0%
123
1.1%
0
0.0%
8
0.1%
0
0.0%
0
0.0%
13
0.1%
2
0.0%
0
0.0%
59
0.5%
20
0.2%
230
2.0%
その他
120
1.0%
484
4.2%
7
0.1%
39
0.3%
0
0.0%
16
0.1%
26
0.2%
27
0.2%
18
0.2%
118
1.0%
91
0.8%
87
0.8%
1,033
9.0%
総計
1,164
10.1%
3,111
27.1%
667
5.8%
623
5.4%
86
0.7%
290
2.5%
441
3.8%
857
7.5%
164
1.4%
2,025
17.6%
775
6.7%
1,286
11.2%
11,489
100.0%
③
①
地域別サマリ ー
To
From
アジア
欧米
アジア
4,220
37%
3,342
29%
欧米
1,053
9%
639
6%
④
②
⑤
( SWIFTデータよりみずほ銀行作成)
(備考)
本集計はSWIFT経由分のみ。
中国⇔香港間のクリアリング
バンクCNAPS経由決済額は含
まない。
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【ご参考】人民元の世界決済通貨取引シェア
RMB as world payment currency in value

SWIFT 社の発表によれば、人民元はここ数年で世界決済
通貨取引シェアが徐々に上昇(2012年1月20位/0.25%、
2013年1月13位/0.63%、2014年1月7位/1.39%、2015年3
月5位/2.03%)、2015年8月には2.79%に達し、初めて日
本円2.76%を抜いて世界第4位に。
(直近2015年12月ランキング)
第4位 日本円2.78%、 第5位 人民元2.31%

また、利用される地域も、従来、人民元決済の約8割が中
国―香港間で占められていたが、徐々にシンガポール、
台湾、イギリス、アメリカ、フランス、オーストラリア、韓国、
ドイツなど世界各地に広がりつつある。
RMB payments in the world split per countries Value sent and received with the rest of the world Top 10 RMB countries by weight ‐ February 2015 Payments value sent and received with the rest of the world Information Source:SWIFT ‘SWIFT RMB Monthly Tracker 2015’
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【ご参考】ドキュメンタリー取引での人民元利用状況
 世界における信用状取引の使用通貨では、人民元は米ドル(80.1%)に次ぐ第2位(9.1%)の存在感。
 但し、人民元建て信用状が使われているのは、アジア・パシフィック地域内が太宗。
『中国⇔香港』(53.9%)、『中国 ⇔ シンガポール』 (28.5%)
(資料) SWIFT RMB Tracker 2015 Sibos Edition
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【ご参考】IMFの特別引出権(SDR)構成通貨への組み入れについて

2015年11月30日のIMF理事会にて、人民元がSDR構成通貨として認められた。

構成比率は10.92%と英ポンド、円を上回り第3番目の地位を確立。

SDRの規模は約2,800億ドル。世界の外貨準備(2014年末時点11.4兆ドル)に占める割合は少ないものの、「主要通貨」の
地位を得たことで、各国の準備通貨として採用されていくことが見込まれる。

なお、中国政府は人民元のSDR構成通貨入り決定を受け、今後、相場への介入の極小化を長期的な目標とするものの、
資本移動の大きな変動時などには介入することも示唆。
IMF加盟国に対する準備通貨アンケート
SDR構成通貨比率
〔 現行 〕
〔 2016年10月以降 〕
ポンド
11.3%
人民元
10.92%
円
9.4%
ポンド
8.09%
米ドル
41.9%
ユーロ
37.4%
米ドル
41.73%
円
8.33%
ユーロ
30.9%
(資料)IMFより、みずほ総合研究所作成
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1.「⼈⺠元の国際化」の動き
2.⼈⺠元国際化に向けた⾦融インフラ整備
3. オフショア⼈⺠元取引の拡⼤
4.規制緩和の動き
5.⼈⺠元国際化の今後の⾒通し
6.⽇本にとっての⼈⺠元国際化
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人民元預金金利の自由化
○ 2015年10月23日の追加金融緩和と同時に国内人民元預金金利の上限規制も撤廃。
○ 2014年11月以降の預金金利の上限の段階的な引き上げや2015年5月の預金保険条例公布など、預金金利自由
化に向けた取り組みが順調に進められてきた。
○ 2015年11月のSDR構成通貨見直しに合わせ、金融改革の進展を印象付ける狙いも。
【 預⾦⾦利⾃由化の歩み 】
1993年12⽉
中国⼈⺠銀⾏が⾦利⾃由化を⻑期⽬標に設定
1996年6⽉
銀⾏間コール⾦利⾃由化
1997年6⽉
銀⾏間レポ⾦利⾃由化
1998〜1999年
⾦融機関の貸出⾦利変動幅を3回に分けて拡⼤
1999年10⽉
2004年1⽉
2013年12⽉
⾦融機関に対する⼤⼝の譲渡性預⾦(CD)解禁
2014年11⽉
預⾦⾦利の上限を基準⾦利の1.2倍に引き上げ
2015年3⽉1⽇
預⾦⾦利の上限を基準⾦利の1.3倍に引き上げ
⼊札⽅式による国債発⾏開始
2015年3⽉12⽇
中国⼈⺠銀⾏の周⼩川総裁が、「預⾦⾦利上限規制
の年内撤廃の可能性は⾮常に⾼い」と発⾔
商業銀⾏・都市信⽤社の貸出⾦利の上限を基準⾦利
の1.7倍に引き上げ、農村信⽤社の貸出⾦利の上限を
2倍に引き上げ
2015年3⽉31⽇
「預⾦保険条例」公布
2015年5⽉1⽇
「預⾦保険条例」施⾏
2015年5⽉11⽇
預⾦⾦利の上限を基準⾦利の1.5倍に引き上げ
2015年6⽉2⽇
個⼈・企業に対する譲渡性預⾦(CD)解禁
2015年8⽉26⽇
期間1年超の定期預⾦⾦利の上限規制撤廃
2015年10⽉24⽇
預⾦⾦利の上限規制撤廃
2004年10⽉
貸出⾦利の上限規制撤廃。下限は基準⾦利の0.9倍の
まま。預⾦⾦利の下限規制撤廃
2012年6⽉
貸出⾦利の下限を0.8倍に引き下げ、預⾦⾦利の上限
を1.1倍に引き上げ
2012年7⽉
貸出⾦利の下限を0.7倍に引き下げ
2013年7⽉
貸出⾦利の下限規制を撤廃。⼿形割引⾦利を⾃由化
(出所)みずほ総合研究所『みずほ中国経済情報』(2015 年 10 ⽉号)より
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海外金融機関に対する中国国内金融市場開放の動き
海外金融機関の中国国内オンショア人民元市場への参入について、部分的、段階的に開放の動き
○ 2015年8月13日、 中国人民銀行は、海外銀行のオンショア人民元為替が利用可能な取引範囲、取引種類を拡大。
(従来) 貨物貿易(期間3カ月以内)のみ。
(開放) 貨物貿易(全期間)、サービス貿易、直接投資プロジェクト
一方、国内外取扱銀行に対し、顧客の人民元売買ニーズの真実性確認とモニタリングの一層の強化を求めている。
○ 2015年11月25日、中国人民銀行は海外中央銀行及び政府系金融機関の中国オンショア人民元為替市場への参入を
認め、第一陣7機関を公表。
香港金融管理局(HKMA)、豪準備銀行(RBA)、ハンガリー国立銀行(HNB)、国際復興開発銀行(IBRD)、
国際開発協会(IDA)、世界銀行信託基金、シンガポール政府投資公社(GIC)。
○ 2015年12月21日、中国人民銀行及び国家外貨管理局は、一定条件を満たす国外銀行に対し、中国国内インターバンク
外為市場への参入を開放。
・ 外貨取引システム(CFETS)で取引されている全種類(直物、為替予約、為替スワップ、通貨スワップ及び
通貨オプション)が取引可能
・ 従来、中国オンショア人民元為替市場への海外からのアクセスは中国国内の会員銀行を経由した間接取引
に限られていたが、海外銀行にも市場参入を認め、直接取引を開放するもの。
・ 従来の実需原則には変更ないものの、中国オンショア人民元市場開放の一環ともいえる。
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上海自由貿易試験区における金融改革(全体感)
 上海自由貿易試験区において更なる規制緩和が進展する可能性
 中国当局は、安定成長の実現に向け、資本市場の機能発揮による、①円滑な資金循環の枠組み形成と、②産業
の健全な新陳代謝の促進を重視、上海自貿区への期待は大きく、同区においては、内外投資自由化による資産
運用ビジネスの拡大など、規制緩和による新たな金融サービスが進展する見込み
上海自貿区における「投融資の利便化」方針
ⅰ
リスクコントロール可能な範囲内での資本項目の自由兌換
ⅱ
一定の条件に合致する個人による国外投資(含証券投資)
ⅲ
一定の条件に合致する国外個人の国内投資(含証券投資)
ⅳ
区内企業による証券取引・先物取引への参入
ⅴ
区内企業の親会社によるパンダ債発行
ⅵ
区内企業(ノンバンク含む)による経営の必要に基づく外債借入
ⅶ
実際の通貨種類・期限に対応するリスクヘッジ手段多様化
ⅷ
区内企業(条件合致)による国外証券投資・デリバティブ投資
日本企業の金融ビジネスへの主な取り組み
SBIホールディングス
上海陸家嘴集団・新希望集団と業務提携(2013.10)
3メガバンク
上海自貿区に拠点を開設(2014.1~3)
野村ホールディングス
上海陸家嘴集団と合弁会社設立(2014.5)
(出所)みずほ銀行作成
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上海自由貿易試験区における金融改革①
自由貿易口座(FTA口座)
 人民元と外貨、経常取引と資本取引のすべてを一つの口座で取り扱えるよう設計された自由貿易試験区内専用口座。
 既存の銀行勘定と分離され、上海自貿区専用の独立した銀行勘定系システム「自由貿易勘定(FTU)」。
 FTA口座とオフショア口座(国外口座、及び国内非居住者口座(NRA口座))との間の自由な資金振替が可能。
 一方、FTA口座と国内の既存の銀行口座との資金移動をクロスボーダー扱いとしている。
自由貿易口座を使った資金移動
自由貿易口座で取扱可能な業務
第一線
第二線
【国内区外】
【上海自貿区】
【国外】
国内区外
の口座
FTA口座
(A社)
国外の
口座
 経常取引の決済や直接投資資金の入金・使用
 新しい管理モデルに基づく国外資金(外貨・人民元)の
調達
自由貿易口座での取扱が期待される措置
NRA口座
従来口座
(A社)
 区内個人による国外投資(証券投資等)の開放
FTA口座
(B社)
 区内外国人による国内投資(証券投資等)の開放
 区内企業による証券取引・先物取引の解禁
FTA口座
(国外企業)
自由に振替可
 区内企業の親会社による人民元債券(パンダ債)発行
規定の範囲内で人民元のみ振替可
 区内企業による国外証券・デリバティブ投資の解禁
(みずほ銀行(中国)有限公司作成)
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上海自由貿易試験区における金融改革②

クロスボーダー人民元プーリング
 グループ内の上海自貿区企業を通じ、国内外グループ企業間で双方向のクロスボーダー人民元プーリングが可能。
 国内不足資金の海外グループ企業からの調達、国内グループ企業間資金融通(国内プーリング)、中国内余剰資金の
海外での利用等、企業グループのグローバルな資金管理に中国国内の人民元を組み込むことが可能に。
 但し、クロスボーダーでの資金流出入限度額あり、また、融資借入等による外部調達資金の注入は当面不可。
海 外
中 国
上海自由貿易試験区
区内企業
国外企業
専用口座
参加企業
親口座
中国国内決済・貿易決済 等
参加企業
参加企業
(資料)2014/2/20「中国(上海)自由貿易試験区における人民元クロスボーダー利用拡大に関する通達」等に基づきみずほ銀行作成
(実際の取扱・スキーム運営に際しては中国関係当局への確認も必要)
29
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上海自由貿易試験区における金融改革③
クロスボーダー集中決済・ネッティング
 中国のクロスボーダー決済の原則は、原取引と決済の1対1対応、グロス決済。
 上海自貿区では、区内企業に設けた専用口座を通じて、各々商流関係ある国内外複数企業との間でのクロスボーダー
集中決済・ネッティングが可能に。決済業務の集約と簡素化、効率化、決済資金の調達・管理の効率化等が期待される。
原則的なクロスボーダー決済
海 外
上海自貿区クロスボーダー集中決済・ネッティング
海 外
上海自貿区
参加企業
参加企業
参加企業
区内企業
参加企業
専用口座
参加企業
参加企業
参加企業
参加企業
各取引の貿易等原取引の
真実性確認等は必要
参加企業
参加企業
参加企業
参加企業
(資料)2014/2/20「中国(上海)自由貿易試験区における人民元クロスボーダー利用拡大に関する通達」(中国人民銀行)等に基づきみずほ銀行作成
(実際の取扱・スキーム運営に際しては中国関係当局への確認も必要)
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1.「⼈⺠元の国際化」の動き
2.⼈⺠元国際化に向けた⾦融インフラ整備
3. オフショア⼈⺠元取引の拡⼤
4.規制緩和の動き
5.⼈⺠元国際化の今後の⾒通し
6.⽇本にとっての⼈⺠元国際化
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人民元の国際化を目指す動き(イメージ)
人民元建て資本市場の発展
RQFII制度の解禁
2014
滬港通(香港・上海間の株式相互売買制度)開始
2015
IMFが人民元をSDR構成通貨に採用
2009
一部資本取引で人民元利用を許可
2011
中国企業による海外直接投資を解禁
・
・・ ・
・・
2012
・・
・
・・ ・
資本取引の解禁
国際通貨としての
「人民元」の
地位確立へ
海外からの人民元建て直接投資を規範化
人民元出所証明の廃止⇒海外からの直接投資は外貨とほぼ同様の手続きで取扱可能に。
※ただし外債管理モデルには相違点あり
2014
貨物・サービス貿易決済の解禁
2009
上海、広東‐香港ASEAN間での人民元建て決済開始
2010
国外地域制限撤廃、試行地域拡大、試行企業拡大
2011
中国国内地域制限撤廃
2012
対象企業制限撤廃⇒全面解禁へ
2013
手続き大幅簡素化⇒外貨と同様の手続きで取扱可能に。
人民元の周辺化
人民元の地域化
人民元の国際化
(みずほ銀行作成)
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【ご参考】中国金融制度改革のロードマップ~2つの100年に向けて~
1921年
中国共産党
結党
1949-76年
毛沢東時代
1949年
中華人民
共和国建国
1978-89年
鄧小平時代
「改革開放」
1990-02年
江沢民時代
「3つの代表」
2002-12年
胡錦濤時代
「科学的発展論」
2012-22?
習近平時代
「4つの全面」
① 結党100年(2021年)までの目標:
小康社会の全面的実現
2013年第18期11月
三中全会コミュニケ:
“2020年までに重要領
域と重要段階における
改革において、決定的
な成果を上げる”
② 建国100年(2049年)までの目標:
富強・民主・文明的で調和のとれた社会主義現代国家の実現
2009年
2015年
2つの100年
→2021年
→2049年
2020年の構想
対中直接投資などの
重点目標として人民元クロス
上海を“国際”金融センターに
資本取引を一部緩和
ボーダー資本取引を推進
(2009年4月国務院発表の構想)
経常取引の解禁
経常取引は外貨並みに
経常取引の更なる拡大?
資本取引は原則認可制
資本取引認可の柔軟化
資本取引の自由化?
為替変動幅は±0.5%
為替変動幅の拡大
変動為替相場?
人民元の変動幅拡大は、資本取引の規制緩和と歩調を合わせて進むと考えられる。
2020年迄には大幅な資本取引の緩和と為替市場の変動化が進む可能性。
(各種資料よりみずほ中国、みずほ銀行作成)
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【ご参考】第13次五カ年計画における人民元の国際化
 人民元の国際通貨化に向けた多元的な金融改革プランを示す
「周小川解読“十三五”:深化金融体制改革」(『財新网』2015年11月9日)
四 開放発展理念を堅持し、金融業の双方向の開放新体制を構築する
① 金融業の双方向開放の拡大
○ 内陸地域と香港、マカオ、大陸、台湾との金融協力の深化
○ 株式・債券マーケット等資本市場の開放拡大
○ 香港の世界的なオフショア人民元業務センターの地位の強化
② 秩序ある人民元資本項目の兌換の実現
○ 対外投資、企業・個人の外貨管理、多国籍企業のクロスボーダー資金管理に対する制限の緩和
○ 外貨準備制度の完善化による多元的な外貨準備の運用
○ 一帯一路建設の進展やアジアインフラ投資銀行(AIIB)やBRICS銀行(国家新開発銀行)の設立に参加することで、国際資金を引き
つけるとともに多元的でウィン‐ウィンな金融協力プラットフォームを設立
③ 人民元のSDR入りを推進し、兌換可能で、自由に使用できる通貨とする
○ 周辺国と新興地域における人民元利用の利便性を拡大
○ 人民元と他通貨の直接交換市場、クロスボーダー人民元決済業務の発展に向けたサポートを展開
○ 第13次五カ年計画の終わり(2020年)には、人民元クロスボーダー収支は中国全体の外貨クロスボーダー収支の3分の1を超え、
人民元は国際的な通貨の1つとなる
④ グローバル経済金融ガバナンス体系への積極的な参加
○ 発展途上国も国際経済金融ガバナンスに平等に参加することを支持
○ 国際通貨体系と国際金融監督管理改革を促進
(資料) 「周小川解読“十三五”:深化金融体制改革」(『財新网』2015年11月9日)より、みずほ銀行作成
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人民元の国際化に関する展望とその影響
○ 人民元の国際化は、昨年11月末のSDR構成通貨入りに向けた、金融インフラ整備をはじめとする中国政府の各種施策
が前倒しで進められたことや、欧州諸国はじめ世界各国政府の呼応(各国でのオフショア人民元市場創設、人民元
建て債券発行等)もあいまって、一般的に予想されていた以上に順調かつグローバルに拡大している。
○ 今後も、「走出去」政策による中国有力企業の海外進出の拡大、「一帯一路」(新シルクロード)構想に基づく同ルート
周辺 国でのインフラ投資の活発化、アジアインフラ投資銀行(AIIB)及び中国系銀行の海外インフラ関連ファイナンス
でのプレゼンスの高まり等、中国を軸とする一連の動きは人民元の国際化にとって更なるプラス材料。
○ 本邦金融機関及び日本企業にとっての人民元の国際化は、他国に勝る厚みを持つ日中貿易という実需および巨大
な中国消費市場でのビジネスチャンス拡大を考えれば、事業・財務戦略上の新たな通貨選択肢として人民元利用が
増えるものと見込まれる。また、「一帯一路」インフラ事業での中国企業との協業まで展望した場合、人民元を使い
こなすことが事業成功につながる可能性も。
○ 将来的には各企業グループのグローバルな資金管理体系のなかに人民元も組み込まれ、グループ全体での資金
の有効活用、資金効率の向上が期待できる。本邦金融機関もこれらのニーズにこたえられるグローバルな人民元
決済のプラットフォーム整備、サービス・商品の開発に注力。
○ 人民元国際化の残る課題は、「安全・安心・自由」という国際通貨としての信任を高めるための資本取引自由化、市場
自由化、中国経済の安定かつ持続可能な成長に向けた経済構造改革の推進。
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1.「⼈⺠元の国際化」の動き
2.⼈⺠元国際化に向けた⾦融インフラ整備
3. オフショア⼈⺠元取引の拡⼤
4.規制緩和の動き
5.⼈⺠元国際化の今後の⾒通し
6.⽇本にとっての⼈⺠元国際化
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日中金融協力:日中双方の金融市場の発展に向けて

2012年6月1日、東京と上海において、人民元と日本円の銀行間直接交換市場スタート。
(2011年末の日中首脳会談で締結した「日中両国の金融市場発展に向けた相互協力の強化」に基づくもの)
《日中双方の狙い》
【日本】: 成長著しい中国経済の勢いを取りこむことによる国内経済や金融市場の活性化
【中国】: 貿易取引決済や外貨準備の米ドル依存度の低下、域内利用通貨としての人民元のプレゼンス向上、
人民元オフショア市場建設の促進
【両国】: 円―元間のスプレッド縮小により拡大する日中間貿易における取引コスト削減 等

2015年1月、財務省主催で日中金融協力・日本側会合開催。日中双方の金融市場の発展に向けた対話の進展を期待。
【日中金融協力5分野 】
 円元直接取引開始後、人民元―日本円の
取引コストは低下し、日本企業の人民元建
て取引拡大に寄与。
① 両国間のクロスボーダー取引における円・人民元の利用促進
 人民元送金取扱高・件数は、2010年以降、
経常取引、資本取引ともに順調に増加中。
② 円・人民元間の直接交換市場の発展支援
③ 円建て・人民元建て債券市場の健全な発展支援
絶対ボリュームではまだ拡大余地ありか。
④ 海外での円建て・人民元建て金融商品・サービスの民間部門に
よる発展慫慂
⑤ 上記分野における相互協力を促進するため、「日中金融市場の
発展のための合同作業部会」の設置
(資料)2012/12/25財務省「『日中両国の金融市場の発展に向けた相互協力の強化』ファクトシート」より
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 今後は、クロスボーダー取引における円・人
民元の相互利用拡大、東京における人民
元建て債券市場発展や金融商品の拡充、
RQFII取得、中国資本市場等の一段の開放
等を期待。
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日中間の人民元決済 ~ 過去2 年間で2 倍以上に増加 ~
 日本と中国・香港間の決済額のうち、人民元建て決済額が占める割合は過去2 年間で3%から7%(シェア2 位)に。
日中間の人民元活用状況の推移
日中間の決済で使用される通貨トップ5
対中国・香港の送金額と送金受取額
対中国・香港の送金額と送金受取額
日本円
人民元
7%(2015年10月)
3%(2013年10月)
香港ドル
米ドル
(資料) SWIFT RMB Tracker
(資料) SWIFT RMB Tracker
日中間の決済額における人民元シェア
日本⇒中国:資本送金における通貨別シェア
対中国・香港の送金額と送金受取額
2013年10月
2014年10月
2015年10月
(資料) SWIFT RMB Tracker
(資料) みずほ銀行
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日本における人民元国際化への取組について
日中金融協力における取組事項の実現と更なる市場発展に向け、日中政府間での更なる議論と施策の実
現を期待。
決済
資金調達
投資運用
 東京での人民元クリアリングバンク設置
 主要金融機関のCIPS加入
 クロスボーダー人民元プーリング制度(自貿区版・全国版)の利便性向上
 中国現地法人向けオフショア人民元ファイナンス自由化(中国の外債規制撤廃)
 東京での人民元建て日本国債発行
 RQFII取得による中国オンショア債券市場投資
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みずほの取り組み
1.日本及び世界各地での人民元取引インフラの整備
 東京オフショア人民元市場でのインターバンク円・元直接交換市場サポート、人民元建て債券発行等、東京にお
ける人民元取引市場育成をリード。
 日本・中国のほか、香港、シンガポール、台湾、欧米・ASEANなどの各海外拠点でも人民元を取扱可能(現地規
制により一部拠点で取り扱えないサービスあり)。
 企業のグローバル資金管理および人民元取引のニーズに応えるため、預金、ローン、為替・決済ほか順次取扱
商品を拡充。
2.中国ビジネスに関する情報提供・サポート体制の充実
 2014年に人民元取引に関する専用サイトを立ち上げ(日本語・英語)。
(日) http://www.mizuhobank.co.jp/corporate/world/info/cndb/rmb/index.html
(英) http://www.mizuhobank.com/service/global/cndb/index.html
 みずほ銀行(中国)有限公司が発信するビジネス・エクスプレスや、為替相場
など、人民元取引に関する情報発信体制を充実。
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