2016年度の大分県経済の見通し

2016年度の大分県経済の見通し
緩やかな持ち直しの動きが続くなか、消費税増税前の
駆け込み需要もあり、プラス成長
要
旨
○2015年度の大分県の実質経済成長率は、0.
7%増とプラスになる見通しである。
○県内経済は、生産活動は円安により上期前半は堅調に推移したが、上期後半は中国経済減速の影響により一
部に弱さがみられ、公共投資は前年度大型工事の反動から減少した。一方、個人消費は円安に伴う物価上昇
が下押し要因となったものの所得環境の緩やかな改善を受け底堅く推移し、また、住宅投資は持ち直しの動
きとなり、雇用環境は有効求人倍率が高水準で推移した。2015年度は、一部に弱さがみられるものの緩やか
に改善することが見込まれる。
○2016年度の大分県の実質経済成長率は、1.
2%増と2年連続でプラスになる見通しである。
○県内経済は、所得環境の緩やかな改善が続くことに加えて2017年4月に予定されている消費税増税を前に駆
け込み需要の発生が予想され、個人消費や住宅投資は前年度を上回る見通しである。また、生産活動も、堅
調さが続く米国経済に支えられた輸出の増加や、消費税増税前の駆け込み需要に対応するための生産増など
から、緩やかに増加することが見込まれる。
図表 2015・2016年度の大分県の経済成長率見通し(固定基準年方式、前年度比増減率)
2012年度
実
績
2013年度
推
計
2014年度
推
計
2015年度
予
測
2016年度
予
測
6
▲0.
1.
5
▲1.
8
0.
7
1.
2
0.
4
1.
3
▲1.
5
0.
4
0.
9
▲0.
4
1.
4
0.
4
1.
1
0.
8
11.
2
11.
2
▲18.
8
6.
5
3.
7
▲4.
2
▲1.
2
4.
1
▲3.
3
0.
0
10.
4
8.
9
▲10.
6
▲6.
7
▲2.
1
鉱工業生産指数
99.
2
98.
4
96.
7
99.
5
100.
5
消費者物価指数
99.
7
100.
6
103.
6
104.
5
105.
5
有効求人倍率
0.
74
0.
80
0.
94
1.
07
1.
10
実質経済成長率
民間最終消費支出(個人消費)
政府最終消費支出
民間住宅投資
民間企業設備投資
公的総固定資本形成(公共投資)
注)鉱工業生産指数、消費者物価指数、有効求人倍率は年度平均値で、2012・2013・2014年度は実績値、2015・2016年度は当研究所予測値。
おおいたの経済と経営
2016.
2
1
Ⅰ 2015年度県内経済見通し
生産活動 鉱工業生産指数は前年度比2.9%増の見通し
県内経済は、上期は円安に伴う物価上昇が下押し要
生産活動は、上期前半は為替環境が円安に振れて安
因となったものの、所得環境の緩やかな改善を受け、
定し輸出関連産業の競争力が回復したことから、堅調
個人消費は底堅く推移した。生産活動は円安が輸出関
に推移した。上期後半は中国の景気減速や同国での化
連産業にプラスの効果をもたらし上期前半は堅調に推
学工場の爆発事故が、鉄鋼業や化学製品工業を中心に
移したが、上期後半は中国経済減速の影響を受け一部
マイナスに作用した。また、情報通信機械工業ではス
に弱さが見られた。公共投資は前年度大型工事の反動
マートフォンの普及が一段と進みデジタルカメラの需
から減少し、設備投資は大手製造業での前年度大規模
要が国内・海外ともに減少、生産水準の低迷が続いた
設備更新の反動などから減少した。一方、住宅投資は
ほか、電子部品・デバイス工業では主力工場を持つ企
消費税増税の影響が一巡したことから持ち直しの動き
業の構造改革による影響から、一部に弱さがみられ
となり、有効求人倍率は高水準で推移した。
た。
下期は、所得環境は引き続き緩やかに改善し、個人
下期は、円安や原油価格の低下に伴い、輸出関連産
消費は力強さに欠けるものの徐々に改善する見通しで
業や業務用機械では一定水準の生産が続くものの、中
ある。生産活動は円安が引き続き輸出関連産業に追い
国の景気減速や企業の在庫調整に伴う生産調整実施に
風となる一方、中国をはじめとした新興国経済の減速
より一部で弱い動きが続く見込みであり、生産活動全
による影響もあり、前年度並みで推移するであろう。
体では横ばい圏内で推移する見通しである。
公共投資は減少傾向が続くものとみられ、設備投資は
業種別に通期の見通しをみると、鉄鋼業では、中国
中国経済減速や建設費高騰の影響から弱含みで推移す
の景気減速に伴い収益面では悪化が見られるが、円安
ることが予想される。一方、住宅投資は緩やかな持ち
に伴い国内造船メーカーからの受注が堅調に推移して
直しの動きが続く見通しであり、雇用環境も有効求人
おり、高操業が継続した。下期も高い生産水準が続く。
倍率は高水準で推移することが予想される。
2015年度の大分県の経済成長率は、0.
7%増のプラ
ス成長となる見通しである。
電子部品・デバイス工業では、汎用製品は一定水準
で推移しているものの、主力工場を持つ企業が部門の
撤退を発表した高品位の製品では、下期以降受注の減
少が見込まれるため、生産は弱含む。
図表
大分県の経済成長率に対する項目別寄与度
(%)
4
その他(純移輸出等)
公共投資
2
民間設備投資
民間住宅投資
政府最終消費支出
0
個人消費
経済成長率
-2
-4
2012
2 おおいたの経済と経営
2013
2016.
2
2014
2015
2016
(年度)
2016年度の大分県経済の見通し
化学・石油製品工業では、昨年度行った定期修理が
なく、上期は生産増がみられた。下期は、化学製品工
業で生産調整を今年度中実施するため、生産は弱含
む。
個人消費 前年度比0.4%増の見通し
個人消費は、上期の4、5月は消費増税前の駆け込
鉱工業生産指数推移の前年度比
(2015年度は4−9月の前年同期比)
(%)
15
大分県
全国
10
5
0
み需要の反動減からの回復の動きがみられたものの、
6月から7月後半までは天候不順を主因として低調な
▲5
動きとなった。梅雨明け後の猛暑やプレミアム商品券
▲10
の効果等により一時的な回復感はみられたが、円安に
伴う物価の上昇が下押し要因となった。
2010
2011
される。ただし、所得環境の改善が緩やかなことか
ら、回復ペースも緩やかなものとなるであろう。
大型小売店の販売動向をみると、上期は消費増税の
2013
2014
資料)大分県企画振興部統計調査課
下期は、ガソリン価格の値下がり等もあり物価上昇
の影響が一巡し、個人消費は上向きとなることが想定
2012
2015
(年度)
2010年=100
大型小売店販売額
(全店舗、 前年度比伸び率%、2015年度は4−10月の前年同期比)
(%)
6
大分県
全国
4
2
反動減からの回復の動きがみられたが、夏場にかけて
は天候不順の影響を受け、衣料品、季節商品を中心に
総じて低調に推移した。下期は、所得環境改善の遅れ
やそれによる節約志向に加えて暖冬の影響もあり、年
0
▲2
▲4
度末にかけても弱含みで推移する見込みである。
専門量販店の販売動向は、総じて堅調に推移する見
通しであり、家電販売については、上期は天候不順の
▲6
2010
2011
10の提供開始によるパソコンの買い替え需要や、エコ
ポイント制度導入時期やアナログ停波の際に購入され
2013
2014
2015
(年度)
資料)九州経済産業局
影響を受けてエアコン等の動きが鈍かったものの昨年
の消費増税の反動増がみられた。下期はウィンドウズ
2012
乗用車新車販売台数推移
(前年度比伸び率% 2015年度は4−11月の前年同期比)
(%)
15
大分県
全国
10
た製品が徐々に買い替えの時期を迎えることが需要を
下支えするとみられる。
乗用車販売の動向をみると、上期は乗用車では消費
5
0
増税前の駆け込み需要の反動減からの回復がみられた
が、軽自動車は4月からの軽自動車税増税の影響によ
▲5
る落ち込みが続いた。下期は、新型車投入効果により
乗用車は堅調に推移するが、軽自動車販売は引き続き
弱い動きとなるとみられる。
▲10
2010
2011
2012
2013
2014
2015
(年度)
資料)日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会、県自動車販売店協会
おおいたの経済と経営
2016.
2
3
住宅投資 前年度比6.5%増の見通し
住宅投資の動向を新設住宅着工戸数の推移でみる
3%の大幅増と
と、上期は3,625戸で前年同期比+10.
新設住宅着工戸数の推移
(前年度比伸び率%、2015年度は4−10月の前年同期比)
(%)
25
なった。利用関係別にみると、持家は前年とほぼ同水
20
準であった。一方、貸家は消費税増税前の駆け込み需
15
要の反動減がおさまったことや、2015年1月の相続税
基礎控除引き下げに伴う節税対策としてのアパート建
設需要などにより増加、分 譲 住 宅 は JR 大 分 駅から
2㎞程度以内の地域を中心にマンション着工が相次い
だことから増加した。
下期は、貸家については引き続き節税対策としての
アパート建設需要が一定程度見込まれ、全体としては
大分県
全国
10
5
0
▲5
▲10
▲15
2010
2011
2012
2013
2014
2015
(年度)
資料)国土交通省
緩やかな持ち直しの動きとなるであろう。
民間設備投資動向の推移
(前年度比伸び率%)
設備投資 前年度比3.3%減の見通し
(%)
150
製造業
非製造業
全産業
設備投資は、非製造業が増加する一方で製造業が減
少し、全体では前年度より減少する見通しである。
100
製造業は、石油化学で2014年度の定期修理時に大規
模な設備更新が行われた反動があることや、鉄鋼が既
50
存設備の維持補修にとどまることなどにより、前年度
を下回る見通しである。非製造業は、電気・ガス・熱
0
供給・水道事業では前年度比減少が予想されるもの
の、運輸倉庫業での船舶更新などがあり、前年度を上
回る見通しである。
▲50
2010
2011
2012
2013
2014
2015
(年度)
資料)当研究所アンケート調査
公共工事請負保証金額の推移
公共投資 前年度比6.7%減の見通し
公共投資の動向を西日本建設業保証の保証取扱状況
でみると、上期は、東九州自動車道関連工事や県立美
(前年度比伸び率%、2015年度は4−10月の前年同期比)
(%)
30
大分県
全国
20
術館建設工事といった大型工事の終了や、統一地方選
の影響による発注の遅れなどから、請負金額は前年同
0%減となった。
期比6.
10
0
下期についても、前年度は下期に発注された大分川
ダム工事が今年度は上期にすでに発注済みであること
▲10
から下期の発注はなく、前年度下期との比較ではマイ
ナスとなることが予想される。このため、年度ベース
でも前年を下回る見通しである。
4 おおいたの経済と経営
2016.
2
▲20
2010
2011
資料)西日本建設業保証
2012
2013
2014
2015
(年度)
2016年度の大分県経済の見通し
観光動向 前年度を上回る見通し
観光動向をみると、4∼10月の県内宿泊客数(169
施設計)は前年同期比2.
6%増、レジャー施設の入場
宿泊客数・レジャー施設入場者数推移
(前年度比伸び率% 2015年度は4−10月の前年同期比)
(%)
15
者数(大分・別府周辺地区7施設計)は同13.
5%増で
12
あった。3月の東九州自動車道の県内全線開通や観光
9
レジャー施設の新施設オープン、さらには7∼9月の
「おんせん県おおいたデスティネーションキャンペー
ン」の実施など、同期間中の県内観光を取り巻く環境
は良く、入込客数の増加につながった。
また外国人観光客については訪日旅行人気や円安基
調の継続、査証免除・要件緩和などから全国的に増加
傾向である。県内においても同様に、外国人宿泊者数
宿泊客数
6
3
0
▲3
▲6
▲9
2010
2011
1%増、台湾が同27.
0%増と、軒並み増加
香港が同70.
傾向にある。
2012
2013
2014
2015
(年度)
注)2014年度以降の宿泊客数は速報値
資料)宿泊客数は大分県観光統計調査、レジャー施設入場者数は当研究所調べ
は前年同期比70.
6%増と前年を大きく上回った。国籍
別にみると、中国が同196.
5%増、韓国が同80.
0%増、
レジャー施設入場者数
有効求人倍率推移
(原数値 2015年度は4−10月の平均)
(%)
1.4
大分県
全国
1.2
下期は、旅行会社による大分県と宮崎県を対象とし
た観光キャンペーンの実施に加え、東九州自動車道の
県内全線開通及び観光施設のオープン効果の継続によ
1.0
0.8
り、国内観光客の増加が期待される。また引き続き外
国人観光客の増加が予想されることから、総じて前年
0.6
度を上回る入込水準となる見通しである。
0.4
労働需給 有効求人倍率は1.0倍台後半で推移する見通し
2010
2011
求人倍率(原数値)も2015年11月には前年同月比0.
12
ポイント増の0.
80倍となり、上昇傾向にある。
しかし、業種や職種によって有効求人倍率にばらつ
2013
2014
2015
(年度)
資料)大分労働局職業安定部
労働需給は改善傾向が続いている。有効求人倍率
(季節調整値)は3月以降1倍を超え、正社員の有効
2012
企業倒産件数推移
(前年度比伸び率% 2015年度は4−11月の前年同期比)
(%)
80
大分県
全国
60
40
きがみられる。医療・福祉や宿泊業・飲食サービス業
では求人は増加しているものの、製造業では輸送用機
械器具製造業で求人が減少している。
下期は、医療・福祉や運輸業・郵便業を中心に人手
20
0
▲20
不足感が強まっており、有効求人倍率(季節調整値)
は1.
0倍台後半で推移する見通しである。
▲40
2010
2011
2012
2013
2014
2015
(年度)
資料)東京商工リサーチ
おおいたの経済と経営
2016.
2
5
企業倒産状況 小康状態が続く見通し
企業倒産状況は、2015年11月時点の倒産件数は50ヵ
2016年度の大分県の経済成長率は、1.
2%増と2年
連続のプラス成長となる見通しである。
月連続1ケタ台を維持しており、小康状態が続いてい
る。しかし産業別にみると、5月以降、建設業におけ
生産活動 鉱工業生産指数は前年度比1.0%増の見通し
る倒産が毎月発生しており、建設業界を取り巻く環境
生産活動は、引き続き中国経済の減速の影響は受け
や他社・他業種への波及には注視する必要がある。
倒産件数(負債総額1千万円以上)が平成以降最少
となり、負債総額も4年ぶりに100億円を下回る低水
準であった前年度と比較すると、本年度(4∼11月の
累計)は件数・負債総額ともに増加している。しかし、
依然として低水準であり、今後の経済環境は大幅に悪
化するとは予想し難いため、引き続き小康状態が続く
見通しである。
るものの、2015年度中に行われた在庫調整の反動増
や、米国経済の回復に伴う輸出の増加を受け、緩やか
ながら回復していく見通しである。
業種別にみると、情報通信機械工業は商品市場の縮
小から引き続き低調な推移が見込まれる。
化学・石油製品工業では、化学製品工業での在庫調
整の終了から生産が上向く見通しである。
鉄鋼業では中国経済減速の影響はあるものの、米国
経済の回復や円安など輸出環境が好調なことから、引
Ⅱ 2016年度県内経済見通し
き続き生産水準は堅調に推移する見込みである。
県内経済は、所得環境の緩やかな改善が続くことに
はん用・生産用・業務用機械工業や医療用機械器具
加え、2017年4月に予定されている消費税増税をにら
製造業などでは需要が好調に推移する見通しであり、
んだ駆け込み需要が、個人消費は2017年1月頃から、
高水準の生産が見込まれる。
住宅投資は2016年度初めから半ば頃にかけて発生する
ことが予想され、個人消費や住宅投資は前年度を上回
個人消費 前年度比0.9%増の見通し
る見通しである。また、生産活動も堅調さが続く米国
個人消費は、原油価格下落等の押し上げ要因はある
経済に支えられた輸出の増加や消費税増税前の駆け込
ものの、所得環境の改善が緩やかなこと等により節約
み需要に対応するための生産増などから緩やかに増加
志向が弱まることがないことから、年度半ばまでは横
し、雇用情勢についても有効求人倍率は高水準を維持
ばい圏内で推移すると思われる。
することが予想される。一方、設備投資は前年度並み
年度後半には、2017年4月に予定されている消費増
となり、公共投資は前年度をやや下回る見通しであ
税を前にした駆け込み需要により、2017年1月から3
る。
月の個人消費は上向くと予想される。ただし、前回の
2016年度の県内経済は、力強さには欠けるものの緩
消費税引き上げから3年しか経過しておらず、また、
やかな持ち直しの動きが続くなか、年度末にかけて個
食料品は軽減税率の対象となることから、駆け込み需
人消費を中心として回復テンポが高まることが予想さ
要の規模は前回の引き上げ時には及ばないとみられ
れる。
る。
また、東九州自動車道の県内全線開通、JR 大分駅
前年度低迷した自動車販売に関しても、新型車効果
ビル開業、県立美術館オープン、観光レジャー施設の
やエコカー減税が下支えして年度半ばまでは堅調に推
新施設オープンなどによる人流の増加に伴うプラスの
移し、その後は消費増税の影響もありやや上向くと思
効果が、観光面を中心として2016年度も続くことが期
われる。
待される。
6 おおいたの経済と経営
2016.
2
2016年度の大分県経済の見通し
住宅投資 前年度比3.7%増の見通し
え、東九州自動車道の北九州∼宮崎間が全線開通とな
住宅投資は、前年度を上回る見通しである。
り、宮崎方面だけでなく、北九州及び下関・山口方面
消費税率は2017年4月に10%への引き上げが予定さ
からの観光客の増加が期待される。
れており、年度初めから半ば頃にかけて駆け込み需要
が見込まれる。
ただし、次回の消費税率引き上げは前回より小幅で
インバウンドに関しては、近隣諸国の経済問題が懸
念材料ではあるものの、訪日旅行人気及び円安基調が
継続されれば、引き続き増加することが予想される。
あること、また、前回引き上げ前の駆け込み需要から
期間がそれほど経過していないことから、駆け込み需
要の規模は前回より小規模にとどまるであろう。
労働需給 有効求人倍率は1.1倍前後で推移する見通し
労働需給は、少子高齢化に伴う労働人口の減少を背
景に、人手不足が続くことが予想される。ただし、こ
設備投資 前年度比±0.0%の見通し
れまで人手不足が顕著であった建設業においては、現
設備投資は、前年度並みとなる見通しである。
時点では大型公共工事の動きは見えず、求人は落ち着
業種別にみると、製造業では収益面で円安の好影響
く見込みである。
を受けているものの、中国をはじめとした新興国経済
求職者数は減少傾向が続き、雇用情勢は高水準で推
の減速に伴う先行き不透明感から、設備投資の積極的
移する見通しであるが、一部大手製造企業の動向に影
な実施を躊躇する動きも予想され、前年度並みとなる
響を受ける可能性もある。
であろう。非製造業についても、前年度と同程度とな
る見通しである。
2016年度の有効求人倍率(季節調整値)は1.
1倍前
後で推移する見通しである。
投資目的では、過去の投資抑制により老朽化が進ん
だ設備の更新投資が中心になると予想される。
企業倒産状況 件数・負債総額ともに前年度と同水準となる見通し
企業倒産状況は、前年度と同様に小康状態が続く見
公共投資 前年度比2.1%減の見通し
通しである。外部環境をみると、大型公共工事の終了
公共投資は、前年度をやや下回る見通しである。
等により、建設業界を取り巻く環境が悪化することが
東九州自動車道の県内全線開通や県立美術館建設工
予想されるほか、円安や物価及び賃金などのコスト上
事の完了に伴う関連工事の減少による影響が一巡し、
昇に伴う企業の収益悪化が懸念される。
また、大分川ダム工事や大分大学医学部付属病院の外
一方、原油価格の下落は、物流コストや原材料価格
来棟改修工事などの大型継続工事が下支えとなる。た
の低下に繋がり、企業収益にプラスに寄与する可能性
だし、公共事業費の増額は見込みにくく、公共投資は
があることから、2016年度の企業倒産件数及び負債総
前年度をやや下回る見通しである。
額は前年度と同水準で推移すると予想される。
観光動向 底堅く推移する見通し
観光入込客数は、底堅く推移する見通しである。
2015年度に実施された観光キャンペーンの反動減など
が予想されるものの、国内観光客については、観光レ
ジャー施設における新施設オープン効果の継続に加
おおいたの経済と経営
2016.
2
7
2016年度の大分県経済の見通し
図表 2015・2016年度の大分県の経済成長率見通し(固定基準年方式、前年度比増減率)
2012年度
実
績
2013年度
推
計
2014年度
推
計
2015年度
予
測
2016年度
予
測
6
▲0.
1.
5
▲1.
8
0.
7
1.
2
0.
4
1.
3
▲1.
5
0.
4
0.
9
▲0.
4
1.
4
0.
4
1.
1
0.
8
11.
2
11.
2
▲18.
8
6.
5
3.
7
▲4.
2
▲1.
2
4.
1
▲3.
3
0.
0
10.
4
8.
9
▲10.
6
▲6.
7
▲2.
1
鉱工業生産指数
99.
2
98.
4
96.
7
99.
5
100.
5
消費者物価指数
99.
7
100.
6
103.
6
104.
5
105.
5
有効求人倍率
0.
74
0.
80
0.
94
1.
07
1.
10
実質経済成長率
民間最終消費支出(個人消費)
政府最終消費支出
民間住宅投資
民間企業設備投資
公的総固定資本形成(公共投資)
注)鉱工業生産指数、消費者物価指数、有効求人倍率は年度平均値で、2012・2013・2014年度は実績値、2015・2016年度は当研究所予測値。
図表
全国の経済見通し(連鎖方式)
2012年度
実
績
2013年度
実
績
2014年度
実
績
2015年度
予
測
2016年度
予
測
0.
9
2.
0
▲1.
0
1.
0
1.
5
民間最終消費支出(個人消費)
1.
7
2.
3
▲2.
9
0.
5
1.
6
政府最終消費支出
1.
5
1.
6
0.
1
1.
3
0.
9
民間住宅投資
5.
7
8.
8
▲11.
7
3.
4
4.
1
民間企業設備投資
0.
9
3.
0
0.
1
1.
3
3.
8
公的総固定資本形成(公共投資)
1.
0
10.
3
▲2.
6
▲0.
5
▲2.
1
2012年度
実
績
2013年度
推
計
2014年度
推
計
2015年度
予
測
2016年度
予
測
9
▲0.
2.
8
▲1.
3
1.
0
1.
8
民間最終消費支出(個人消費)
0.
7
2.
8
▲4.
1
0.
2
1.
0
政府最終消費支出
1.
1
1.
4
0.
4
1.
1
0.
8
10.
5
12.
9
▲10.
3
2.
0
6.
5
民間企業設備投資
0.
0
4.
8
0.
1
1.
5
4.
2
公的総固定資本形成(公共投資)
4.
2
10.
8
▲0.
3
▲7.
7
▲3.
3
実質経済成長率
注)2015、2016年度は民間17機関予測値の平均。
図表
九州の経済見通し(固定基準年方式)
実質経済成長率
民間住宅投資
資料)九州経済調査協会
8 おおいたの経済と経営
2016.
2