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2016 年 2 月 2 日
デジタル印刷市場に関する調査結果 2015
【調査要綱】
矢野経済研究所では、次の調査要綱にて国内のデジタル印刷市場の調査を実施した。
1.調査期間:2015 年 11 月~12 月
2.調査対象:国内主要デジタル印刷事業者等
3.調査方法:当社専門研究員による直接面談、電話によるヒアリング、ならびに郵送アンケート調査を併用
<デジタル印刷市場とは>
本調査におけるデジタル印刷市場とは、商業用デジタル印刷機で印刷された印刷物、及び付帯サービスで構
成された市場を指し、印刷業を主な事業として展開している事業者を対象とする。有版の印刷機による印刷物、
及び付帯サービスは含まない。
また、対象分野は一般印刷分野(出版印刷、商業印刷、ビジネスフォーム印刷など)としており、シール・ラベ
ル印刷やパッケージ印刷などの分野は含まない。
【調査結果サマリー】
‹ 2014 年度のデジタル印刷市場は 2,973 億円、前年度比 3.4%増
2013 年度のデジタル印刷市場(事業者売上高ベース)は、前年度比 6.2%増の 2,876 億円となっ
た。経済環境や企業業績の回復傾向を受け、特に金融業の顧客からの DPS
注1
、BPO
注2
案件の受
託が増加した。また、少額投資非課税制度(NISA)関連の需要もあった。2014 年度の同市場規模
(同ベース)も引き続き金融業からの受託案件が増加したことで、前年度比 3.4%増の 2,973 億円とな
った。
‹ 2015 年度のデジタル印刷市場は 3,847 億円、前年度比 29.4%増の見込
2016 年度の同市場規模は 3,115 億円、前年度比 19.0%減と予測
2015 年度のデジタル印刷市場(事業者売上高ベース)は 3,847 億円、前年度比 29.4%増を見込
む。マイナンバー制度関連の通知業務の需要を取り込むことで、大幅な伸びとなる見込みである。
2016 年度の同市場規模(同ベース)は前年度比 19.0%減の 3,115 億円と予測する。マイナンバー
制度関連の通知業務の需要は一過性のものであるため、市場規模は前年度から大幅に減少すると
考える。しかし、マイナンバーの収集業務の需要は今後更に拡大していくものと見られるため、2014
年度と比較すると 2016 年度の市場規模は拡大する見通しである。
◆ 資料体裁
資料名:「2015 年版 デジタル印刷市場の展望と戦略」
発刊日:2015 年 12 月 28 日
体 裁:A4 判 295 頁
定 価:120,000 円(税別)
‹ 株式会社 矢野経済研究所
所在地:東京都中野区本町2-46-2 代表取締役社長:水越 孝
設 立:1958年3月 年間レポート発刊:約250タイトル URL: http://www.yano.co.jp/
本件に関するお問合せ先(当社 HP からも承っております http://www.yano.co.jp/)
㈱矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム TEL:03-5371-6912 E-mail:[email protected]
本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
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2016 年 2 月 2 日
【 調査結果の概要 】
1. 市場概況
2013 年度のデジタル印刷市場(事業者売上高ベース)は、前年度比 6.2%増の 2,876 億円となった。
経済環境や企業業績の回復傾向を受け、特に金融業の顧客からの DPS(データプリントサービス、以
下 DPS)注 1、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング、以下 BPO)注 2 案件の受託が増加した。また、少
額投資非課税制度(NISA)関連の需要もあった。一方商業印刷分野においても、回復が見られた。
2014 年度のデジタル印刷市場規模(同ベース)も、引き続き金融業からの受託案件が増加し、市場を
牽引しており、前年度比 3.4%増の 2,973 億円と成長率は減少したものの、市場規模は拡大している。
注1:請求書や明細書等の通知物制作において、データ処理から印刷、封入封緘、発送(局出し)まで一連の作業を一括
して請け負うサービスを指す。
注2:通常企業内部にて行われている主として間接業務に関して、発注企業から業務委託を受けて代行するサービスを
指す。ここではDPS業務と合わせて、主にシステム運用や通知関連業務に付随した不着処理業務、コールセンター業務
等を含めたサービスを指す。
図 1.デジタル印刷市場規模推移と予測
(単位:百万円)
400,000
384,650
350,000
311,500
300,000
287,595
275,514
251,783
259,506
297,317
270,894
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
2009年度
2010年度
2011年度
2012年度
2013年度
2014年度 2015年度見込2016年度予測
矢野経済研究所推計
注3:事業者売上高ベース
注4:2015 年度は見込値、2016 年度は予測値
注5:商業用デジタル印刷機で印刷された印刷物、及び付帯サービスで構成された市場を指し、印刷業を主な事業として
展開している事業者を対象とする。有版の印刷機による印刷物、及び付帯サービスは含まない。
また、対象分野は一般印刷分野(出版印刷、商業印刷、ビジネスフォーム印刷など)としており、シール・ラベル印刷やパッ
ケージ印刷などの分野は含まない。
2. 各分野の動向
DPS 分野では、案件単価の減少や Web 化に伴う紙需要の喪失、案件の小ロット多品種化など、市
場環境が厳しさを増す中で、フルデジタル印刷によってコストメリットや新たな付加価値を顧客に提案
することで、紙出力案件の確保、引いては売上の確保を推進する動きが、売上上位の DPS 事業者を
中心に目立ってきている。また、上位の事業者では、DPS から受託業務内容を拡大させた BPO の実
績も増加傾向にある。
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2016 年 2 月 2 日
カタログ・パンフレットや教材、製品マニュアル、POP などの品目におけるショートラン(小ロット・短納
期)印刷においても、異業種からの参入企業を巻き込んだ小ロット需要を巡る熾烈な価格競争が起き
ている中で、デジタル印刷による印刷物の受注だけにこだわらず、その周辺のアウトソーシングニーズ
を取り込み、ワンストップでサービスの提供を目指す方向にシフトし始めている。同様に、オフセット印
刷を主力とする事業者においても、デジタル印刷単体だけではなく、オフセット印刷案件やその付帯
サービス、またはそれらに IT 技術を付加させた複合的な提案をすることにより、顧客の業務をワンストッ
プで請け負うことで、自社の売上拡大に繋げている事業者が増加している。
また、出版印刷分野におけるデジタル印刷の活用に関しては、コストと品質という 2 つの大きな課題
は依然として残っているものの、出版社が自らデジタル印刷機を活用し始めたことで、出版社の意識
に変化が現れ始めており、出版業の従来のビジネスモデルにデジタル印刷の入る余地が生まれてい
る。現在、出版社やデジタル印刷機メーカーも含めた各事業者では出版業の新たなビジネスモデルの
実現に向けた提案が活発化している。
その他でも、バリアブル印刷注 6 を活用し、顧客のマーケティング活動に直接繋がる戦略的な活用を
目指したバリアブル DM についても、基幹システムの大規模改修により、化粧品や健康食品など専業
通販企業を中心にユーザー情報の整備が急速に進む中で、マーケティングオートメーション
注7
の有
用性も認知されてきており、市場では One to One マーケティングの実現に向けた機運が高まっている。
その状況下で、印刷品質の向上とコストの低減を両立できる可能性がある高解像度のフルカラーイン
クジェット印刷機が上市されたことを受け、市場は本格的な立ち上げを迎える可能性が出てきている。
注6:個々に異なるデータを別々に処理し、書類 1 枚毎に違った内容を印刷する、可変印刷を指す。
注7:参考資料「DMP(データマネジメントプラットフォーム)サービス市場/MA(マーティングオートメーション)サービス市場に関する調査結果
2015」(2015 年 12 月 14 日発表)
http://www.yano.co.jp/press/press.php/001481
3. 将来予測
2015 年度のデジタル印刷市場(事業者売上高ベース)は 3,847 億円、前年度比 29.4%増と大幅な
伸びとなる見込みである。この拡大要因としてマイナンバー制度関連の需要の取り込みが挙げられる。
具体的にはマイナンバーの通知業務に関する受託案件とその後に発生するマイナンバーの収集業務
に関する受託案件となる。個人番号通知カードは日本国内の全世帯に送付されるため、特に通知業
務に関する受託案件は、これまでにない大規模なアウトソーシング需要となり、これが大幅拡大の主な
要因となると考えられる。
2016 年度のデジタル印刷市場規模(同ベース)は前年度比 19.0%減の 3,115 億円と予測する。マイ
ナンバー制度関連の通知業務の需要は一過性のものであるため、2016 年度の市場規模は大幅に減
少すると考えるが、一方で、マイナンバーの収集業務の需要は、今後更に拡大していくと見られるため、
2014 年度と比較すると 2016 年度の市場規模は拡大する見通しである。これらマイナンバー制度関連
の需要がもたらす好影響は 2017 年度~2018 年度あたりまで続くものと見られ、今後数年も市場規模
を押し上げる要因になると考える。
近年デジタル印刷市場は拡大傾向にある。ただここ数年、市場では二極化の傾向も見られており、
全ての参入事業者が市場拡大を実感しているわけではない。市場環境も依然厳しさを保ったままであ
り、今後もマイナンバー制度関連の需要を主要因として、市場は拡大する見通しであるが、この恩恵に
与れる事業者も一部となると見られる。
しかし、印刷業界の現状が厳しさを増す中で、各事業者の危機感も増しており、試行錯誤を繰り返
しながら、従来の印刷ビジネスからの脱却を図る動き自体は強まっている。その中でデジタル印刷のメ
リットを活用したソリューションサービスへの志向は高まっており、デジタル印刷市場は確実に変容を遂
げている。デジタル印刷がソリューションサービス提案におけるアウトプットとなり得ている今、この流れ
にいかに付いていけるかが今後の印刷事業者の成長を左右するだろう。
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