2016年度大学入試センター試験概況分析 - Kei-Net

2016年度入試情報
2016年度大学入試センター試験概況分析
2016/2/5
このほど、大学入試センターから 2016 年度大学入試センター試験(以下、センター試験)の実施結果が発表され、
受験者数、科目別平均点などが判明した。今年度は、昨年の数学と理科に続き、外国語、国語、地歴・公民も新学
習指導要領に対応した出題となった。
以下、今年度のセンター試験の概況を振り返る。
■志願者数・受験者数は前年並み
【図表1】 センター試験 志願者数・受験者数推移
2016 年度センター試験は 1 月 16・17 日
受験者数
の2日間にわたり、全国 693 の試験会場で
年度
志願者数
受験率
総数
本試験のみ 追試験のみ 本+追・再
実施された。
2007
553,352
511,272
511,105
77
90 92.4%
2008
543,385
504,387
504,136
65
186 92.8%
一部の会場で試験時間の繰り下げや、照
2009
543,981
507,621
507,345
125
151 93.3%
明の不具合などのトラブルが確認された
2010
553,368
520,600
519,707
453
440 94.1%
2011
558,984
527,793
527,405
204
184 94.4%
ものの、その他大きな混乱はなかった。全
2012
555,537
526,311
525,838
129
344 94.7%
日程終了後、大学入試センターは試験中の
2013
573,344
543,271
542,943
233
95 94.8%
不正行為が東京や静岡などの5都県で7
2014
560,672
532,350
531,987
158
205 94.9%
2015
559,132
530,537
530,177
280
80 94.9%
件あったと公表した。これまで試験中の不
2016
563,768
536,828
536,659
106
63 95.2%
正行為については公表しておらず、今年度
※大学入試センター資料より
※受験率は志願者数に対する割合
より公表するとしていた。不正の内容はス
マートフォンの使用やカンニングペーパ
ーの持ち込みなどで、受験生7人の成績は
【図表2】 センター試験 現役・既卒別志願者数推移
全科目無効とされた。
(万人)
(万人)
<現役>
<既卒>
16
48
今年度の志願者数は 563,768 人(昨年
559,132 人:前年比 100.8%)
、受験者数は
46.2
46.0
536,828 人 ( 昨 年 530,537 人 : 前 年 比
14
46
45.5
101.2%)といずれも前年から大きな変化
44.3
44.2
44.0
44.0
はなかったが、受験率は過去最高の 95.2%
12
44 43.4
11.3
43.1
11.2
11.011.0
10.9
42.8
となった【図表1】。大学入試センターが
10.8
10.610.7
9.9 9.6
発表した志願者数の現卒別の内訳をみる
10
42
と、現役生は昨年から約7千人増加(前年
比 101.5%)
した。18 歳人口の減少により、
40
8
2007 08 09 10 11 12 13 14 15 16
2007 08 09 10 11 12 13 14 15 16
この3月に卒業する高校生の数は減少が
(年度)
(年度)
見込まれる。そのなかでセンター試験の志
※大学入試センター資料より
願者数が増加しているのは、大学志願率も
しくはセンター試験の利用率が上昇して
いると考えられる。利用率が上昇している
とすれば、私立大のセンター利用の増加に加え、国公立大の推薦・AO入試でセンター試験の成績利用が拡大して
いることも要因ではなかろうか。一方で既卒生は約3千人減少(前年比 97.7%)
、対照的な動向となった【図表2】。
■英語、国語、地歴・公民が新課程へ移行
新課程へ移行した英語、国語、地歴・公民については、出題傾向に変化がみられるかが注目された。この3教科
は昨年の数学や理科のように出題分野や実施方法に変更がなく、出題内容もすでに数年前から新課程を意識した出
題が取り入れられていたこともあり、結果として今年度のセンター試験で大きく傾向が変わることはなかった。
それでも、一部で目新しい内容がみられた。「英語(リスニング)
」では、第4問Bで3人の討論を聞いて質問に
答える新しい形式の出題があった。音声を聞き取る能力だけでなく、3人の意見の類似点と相違点を整理する必要
-1© Kawaijuku Educational Institution.
があり、思考力・判断力がより求められる出題であった。また、
「地理B」では、新課程の教科書で取り上げられて
いる2国間の比較地誌が出題された。
2年目を迎えた数学、理科でも新傾向の出題がみられた。例えば、
「数学Ⅰ・数学A」では、n進法、条件付き確
率が扱われ、必答問題が3題から2題へと形式にも変更がみられた。また、
「物理」の薄膜による光の干渉の問題で
は問い方に工夫がみられたほか、
「化学」では単位格子の断面図を選ぶ問題など従来とは切り口の異なる出題がなさ
れた。
■科目別の実施状況
【図表3】は大学入試センターが公表 【図表3】 センター試験 主要科目平均点・受験者数(本試験)
平均点
受験者数
教科・科目名
した主な科目の平均点と受験者数の一
15 年度 16 年度
差
15 年度
16 年度
差
筆記
116.17
112.43
-3.7
523,354
529,688
+6,334
覧である。今年は数学、理科において旧
英語
リスニング
35.39
30.81
-4.6
516,429
522,950
+6,521
課程科目の出題がなくなり、それぞれ受
数学Ⅰ
32.38
36.48
+4.1
5,277
5,981
+704
数学①
験者数が大きく増えている。
-6.0
数学Ⅰ・数学A
61.27
55.27
338,406
392,479
+54,073
23.83
27.76
+3.9
4,944
5,782
+838
「英語」は筆記、リスニングともに前 数学② 数学Ⅱ
+8.6
数学Ⅱ・数学B
39.31
47.92
301,184
353,423
+52,239
年から平均点がダウンした。リスニング
国語
119.22
129.39
+10.2
501,415
507,791
+6,376
については前述の第4問Bが難問であ
物理基礎
31.52
34.37
+2.9
13,289
18,304
+5,015
35.30
26.77
-8.5
88,263
105,937
+17,674
ったことが影響している。
「数学Ⅰ・数 理科① 化学基礎
生物基礎
26.66
27.58
+0.9
116,591
133,653
+17,062
学A」でも平均点が6点ダウンと難化し
※大学入試センター資料より
地学基礎
26.99
33.90
+6.9
41,617
47,092
+5,475
物理
64.31
61.70
-2.6
129,193
155,739
+26,546
た。「数学Ⅱ・数学B」の平均点は、昨
62.50
54.48
-8.0
175,296
211,676
+36,380
年度が過去最低であったため大きく上 理科② 化学
生物
54.99
63.62
+8.6
68,336
77,389
+9,053
昇しているが、それでも5割を切ってお
地学
40.91
38.64
-2.3
1,992
2,126
+134
世界史B
65.64
67.25
+1.6
84,053
84,131
+78
り決して高い平均点ではなかった。
「国
地理
日本史B
62.01
65.55
+3.5
155,273
160,830
+5,557
歴史
語」は平均点が大幅に上昇した。古文が
地理B
58.59
60.10
+1.5
146,846
147,929
+1,083
例年になく易しい出題であったことが
現代社会
58.99
54.53
-4.5
76,698
80,240
+3,542
倫理
53.39
51.84
-1.6
30,740
26,039
-4,701
要因であろう。
公民
政治・経済
54.79
59.97
+5.2
45,300
49,184
+3,884
地歴・公民では平均点の大きな変化は
倫理,政治・経済
59.57
60.50
+0.9
48,659
48,709
+50
みられなかった。受験者の多い地理歴史 ※大学入試センター資料より
B科目でいずれも昨年度の平均点を上
回っており、一様に6割を超えた。
理科②では、受験者の最も多い「化学」 【図表4】 センター試験 理科基礎受験科目組み合わせの内訳
が難化し平均点が8点ダウンした。「物
理」でも平均点がダウンしており、理科
で目標とした得点が取れなかった理系
生が多かったのではないか。なお「生物」
と「地学」の間に 20 点以上の得点差が
みられたが、「地学」の受験者数が1万
人未満であるため得点調整は行われな
かった。
理科①では「化学基礎」で平均点が大
きくダウンしている。ここで、理科基礎
2科目の選択科目内訳の変化をみてみ
よう【図表4】。組み合わせの中心は「生
※大学入試センター資料より作成
物基礎」となっており、今年も「化学基
礎」との組み合わせが約6割を占めた。
ただし「生物基礎」
「地学基礎」の組み合わせは、昨年度両科目の平均点が低かったこともあり、選択者の割合が減
少している。一方、昨年度平均点が高かった「物理基礎」「化学基礎」の組み合わせの割合が増加している。
-2© Kawaijuku Educational Institution.
■総合型平均点-文系で上昇、理系はダウン
【図表5】は河合塾が推定するセンター試験の7科目型の
【図表5】 センター試験 総合型平均点推移
平均点推移である。今年度の平均点は7科目文系型(900 点
満点)を 548 点(前年差+5点)、7科目理系型(900 点満点)
を 562 点(前年差-5点)とした。
文系では理科①の「化学基礎」で難化がみられたものの、
「国語」「世界史B」「日本史B」などの文系科目で得点し
やすかったことから総合型の平均点は上昇した。理系では、
受験者の多い「物理」
「化学」で難化した影響から、文系と
は対照的に平均点はダウンした。
【図表6】は河合塾が実施した自己採点集計「センター・
リサーチ」参加者の得点分布である。
文系では平均点の上昇もあり、今年の分布はやや右へと
シフトしている。500 点付近(得点率6割弱)から増加がみ
られ、とくに旧帝大を中心とした国公立難関大合格の目安
となる8割以上の成績層は前年比 116%と大きく増加した。
理系では、文系とは対照的に分布は左へシフトし、得点率8割以上の高得点者層は約1割減少している。
こうした状況が国公立大の志願動向にも影響している。
【図表6】 センター・リサーチ 7科目型受験者の得点分布
※センター・リサーチ集計結果より作成
-3© Kawaijuku Educational Institution.