『ライ王のテラス』製作発表会見レポート

速報!
『ライ王のテラス』製作発表会見レポート
いよいよ開幕が約1カ月後に迫るなか、『ライ王のテラス』製作発表会が開かれました。すでに読み合わせなどの稽古も
始まり、キャストの皆さんも気合い十分。日本とカンボジアの共同製作により、カンボジアから来日したダンサーたちによる
伝統舞踊のパフォーマンスも披露されました。
まずはホリプロ代表取締役社長 堀 義貴より、「以前からこの作品を上演したいと希望されていた宮本亜門さんの熱が
こもった作品になると思います。TBS さん、国際交流基金アジアセンターさんのお力もいただき、より深くアジアと日本との
交流に役立つ公演になれば」とご挨拶をさせていただきました。
続いて国際交流基金 安藤裕康理事長より、「日本と外国が共同製作を通して新しい芸術作品を創造し、新しい形態
を模索するお手伝いをさせていただけることを光栄に思います。カンボジアの伝統的な素晴らしいダンス、またブロードウ
ェイではトニー賞にもノミネートされた宮本亜門さんの感性に優れた演出により、日本とカンボジアの合作による舞台が出
来上がることを楽しみにしています」とご挨拶をいただきました。
そして演出の宮本亜門、鈴木亮平をはじめとするキャスト陣が、作品にかける意気込みを語ります。
【演出:宮本亜門】
大学時代からこの作品が好きで、長年演出をしたいと思い続けてきた念願がかない、興奮しています。カンボジアでオ
ーディションもさせていただき、日本人とカンボジア人による国際プロジェクトチームとして、いずれ世界にも持って行きた
いと思っています。そして三島由紀夫さんの最後の作品と言ってもいいこの台本をあえて今開封し、若い人たちにも伝え
ていきたいです。ぜひ劇場に足をお運びください。
【ジャヤ・ヴァルマン七世王:鈴木亮平】
今までの作品も全部本気でやってきたつもりですが、今回は一番本気です!(笑)なぜならクリアしなければいけないハ
ードルが多すぎるから。まず三島由紀夫さんが美しいと感じる世界観を表現し、カンボジアの王様として説得力を持たせ
なければならない。さらに完璧な肉体を持った王だと褒めちぎられるだけの肉体を作り上げなければいけない。と同時に、
病の進行も見せていく必要があります。その肉体と精神が対立するお話なので、肉体に見合った精神も極限まで高めな
ければいけません。個人的には世界遺産が大好きなので、アンコール遺跡のバイヨン寺院を作り上げた王様の熱量に
負けない熱量で臨みたいと思っています(笑)。たくさんの方に観にきていただきたいです。
【第二王妃:倉科カナ】
三島由紀夫さんの戯曲は、演技をする者であれば通らなければならない道だと思っていました。今回、三島さんの世界
を心で感じ、身で感じ、表現できる場を与えていただいたことにとても感謝しています。とてもユニークで素敵なキャストの
皆さんと一緒に、いい作品を作っていきたいと思っています。
【王太后:鳳 蘭】
王太后について、戯曲には「情けが残酷、涙が殺人、優しい心が無慈悲」だと書かれています。私のような凡人には三
島由紀夫はわかりません(笑)。でも、宮本亜門さんに料理していただいて、ついていこうと思っています。
【第一王妃:中村 中】
亜門さんから、第一王妃は三島さんが書き残したノートに「美に絶対の自信を持っている人」と書かれていると言われま
した。美しいものや夢というものは、手に入らない時が美しく輝くのではないかと考えると、ロマンを感じます。ジャヤ・ヴァ
ルマン七世王は、第一王妃の強さと第二王妃の優しさを手にしているのに、さらにロマンの世界を求めるという、どこまで
欲の深い人なのかと思わされます。でも、追いかけることが一番美しいとこの台本に描かれているとしたら、それも頷けま
す。とてもしたたかな王妃の役なので、全力で追い求めようと思います。
【宰相:神保悟志】
高校生の頃から憧れていた三島由紀夫さんの作品に出られるだけでも感動していますが、さらに宮本亜門さんに演出し
ていただける幸せを感じています。三島さんのノートには宰相は「悪の権化」と書かれているそうですので、徹底して悪に
なり切りたいと思います。また、宝塚出身の妻から「鳳蘭さんにくれぐれも無礼のないように」と言われておりますので、無
礼のないよう頑張ります(笑)。
【石工のちに若棟梁:吉沢 亮】
石工は心から王様を尊敬し、とても素直にエネルギーにあふれた役です。僕自身はまだ経験が浅いのですが、亜門さん
のご指導を受け、皆さんの素敵なお芝居を見ながら、たくさん吸収させていただきたいと思っています。また会場の赤坂
ACT シアターに立つのは二回目で、前回は個人的にすごく悔しい思いもしているので、今回はそういった点でも克服出
来るように精一杯頑張りたいと思っています。
【村娘クニュム:大野いと】
私は初めて舞台に立たせていただくので、とても緊張しています。素晴らしいキャストの方々に囲まれて、そして宮本亜
門さんに優しくご指導いただきながら、毎日が濃い日々を過ごさせていただいています。心から頑張りたいと思っていま
す。また私は大学一年生の時に三島由紀夫さんの戯曲を1年間研究していたので、そうしたご縁、魂を感じながら挑み
たいと思っています。
また、オーディションで選ばれたカンボジア人キャストによるパフォーマンスは2曲披露されました。1曲目は「天女」を意
味する踊り「アプサラ」で、きらびやかな衣裳を身につけた三人の女性舞踊手が、手首、指先を弓なりに反らせた独特の
動きでたおやかに舞います。宮本亜門より「彼女たちの手の動きひとつひとつが、全て自然を表しています。自然の恵み
の中で自分たちが生きていることを喜ぶナンバーです」と解説がありました。
続いて、男性舞踊手二人による「猿の踊り」では、猿のマスクを被り、跳んだりはねたり、身体のあちこちをかく仕草をした
りと、コミカルな動きで会場を沸かせました。劇中ではこれらの踊りが登場し、いにしえのカンボジア王朝の雰囲気がより
濃密に醸し出されることでしょう。
今回、カンボジアでオーディションを行った宮本亜門は、「ポル・ポト時代の惨劇で、カンボジアでは芸術家たちがほとん
ど殺されてしまいました。だからこそ、生き残った芸術家たちから細い糸をつむいで次代を担おうとしている彼らの、伝統
に対する思いは日本人の想像を超える熱さがあります。ほかにサーカス・カンパニーも登場しますので、カンボジアのエ
ネルギーを楽しんでいただければ」と語りました。
〈質疑応答〉
Q:カンボジア人役を演じることについて。
【鈴木亮平】
カンボジアキャストの方に気づいたことがあれば何でも言ってほしいと話していますが、あまりカンボジア人役であることの
リアリティーにとらわれすぎず、三島由紀夫さんが考えるカンボジアのお話として、バランスを取っていきたいと思っていま
す。
【倉科カナ】
今は自身の役の気持ちを考えていく作業をしています。清らかで、王の幸せを自分の幸せとするという第二王妃ですが、
きっと心の中にある嫉妬や憎悪を抱えているのでは、とも思っています。カンボジアの設定についてはこれから考えてい
きますが、カンボジアの風が舞台に吹くようなお芝居ができたらと思っています。
【鳳 蘭】
台本を読んで自分が考えていた見方が、亜門さんとのディスカッションでまったく覆され、ショックを受けました(笑)。三
島由紀夫さんの深さをつくづく感じています。台本の裏の裏の裏まで読みとれるように頑張ります。
【中村 中】
第一王妃は民を「卑しい者」などと言ったりします。「人の上に立ちたい」などという卑しさは皆が持っているものだと思うの
で、(カンボジア人とはいえ)あまり(自分と)変わらないものではないかと思います。やはりカンボジアキャストの方々にいろ
いろとヒントをいただこうと思っています。
【神保悟志】
これから立ち稽古にも入りますので、皆さんの意見を聞きながら、徐々に練っていきたいと思います。
【吉沢 亮】
僕の役は後に若棟梁としてアンコール・トムのバイヨン寺院を造る人間なので、バイヨンのディテールを資料で見たりして
います。また、当時のカンボジアの人たちがどうやってものを食べていたのかといった、暮らしについて少し調べたり。これ
からもっと詰めていかなければと思います。
【大野いと】
私もパソコンや本で写真などを見て、どんな木が生えていたのか、風景や匂い、当時の暮らしを想像している段階です。
やはり来日されたカンボジアの方達に触れると、日本の若者とは雰囲気も違うし、強い芯がある方たちだと感じます。舞
台の上でカンボジアの風を感じられるように頑張りたいです。
Q:台本を読んで自分と似ているところがあるか。
【鈴木】
ジャヤ・ヴァルマン七世は、それまでの階級社会であったバラモン教やヒンズー教が支配していた国から、仏教に変えた
王様です。全ての民に同じように慈悲が降り注ぐと考えた王なので、繊細な優しさがあったと思います。良くも悪くも人に
気を遣う繊細なところは僕自身にも似ているところがあるので、芝居の最初の段階ではそんな自分の性格も取込みつつ、
爽やかな若い王様でいられればと思っています。その王様がどう変わっていくのかを見せられれば。また王様を初めて
やるにあたって、王様をたくさんやられている吉田鋼太郎さんに王様役に何が一番必要かを相談したところ、「大きい
声!」と言われました(笑)。さらに「誰にでも〈お前、死刑!〉と言えること」とも言われたので、そのマインドも忘れないよう
にしたいです(笑)。
そう話す鈴木亮平に、宮本亜門が「その教えは忘れてください(笑)」と突っ込む場面もあり、終始なごやかなムードの中、
発表会は盛況のうちに終了しました。一人一人の作品にかける思い、カンボジアとの共同製作による国際色豊かな雰囲
気、そしてカンパニーのチームワークの良さも印象づけられる機会となりました。これからさらに熱い稽古を重ね、3月4
日の開幕を目指します!
(文:市川安紀)
そのほかの写真も近日アップ予定です。
続報をお楽しみに!