気象電文を用いた手話CG自動生成システム

気象電文を用いた
手話CG自動生成システム
当所では,聴覚障害者に手話で情報をお伝えするために,CG(Computer Graphics)を用いた手話の映像(以下,手話
CG)を自動生成する技術の研究を進めている。生まれつき耳の不自由な方にとって,手話は母語であり,手話による情報
提示は重要である。一方で,放送局が手話通訳士を常に確保することは難しく,手話通訳付きの放送番組は多くない。そこ
で,手話サービスの拡充を目指し,気象庁が提供する気象情報の電文(気象電文*1)を用いて,気象情報の手話CGを随時
自動で生成するシステムを開発した。
このシステムでは,気象電文のように定型化された外部データをインターネット経由で受信し,対応する手話CGと日本
語字幕を自動的に生成する。気象情報に合った手話CGを確実に生成するために,地域名や数字などの可変部分を含んだ形
式の定型文をあらかじめ作成しておき,受信した電文を解析することにより,可変部分に入る手話を穴埋め方式で決めてい
くことで,全体の手話表現を決定する(1図)
。
一方,定型文をそのまま使用するだけでは不自然な手話表現になることがあるため,受信電文の解析において,使用する
単語やフレーズを適切に自動変更し,自然な手話表現にすることを目指している。例えば,今日明日と雨が2日続く内容の
電文は,
「今日の天気は雨,明日は雨でしょう」と表現するのではなく,
「今日の天気は雨,明日も雨が続くでしょう」と手
話表現することで,より自然な手話CGを生成することが可能である。
今回開発したシステムでは,全国の都道府県庁所在地の最新の天気予報を手話CGで見ることができる。今後は,本シス
テムを用いて生成した気象情報の手話CGを,インターネット上で閲覧できる実験的なサイトを構築し,多くの方に評価し
ていただきながら,早期の実用化を目指していく。
*1 気象庁の防災情報をXML(Extensible Markup Language)形式で記述した電文。
気象電文(模式図)
201406041603
1,4410,100,200
地域
天気
降水確率
今日 明日
2,4410, 030, 050, 070
午前
午後
夜
3,4410, +10, +20
予想
最低
外部
システム
(気象庁)
予想
最高
気温
定型文
(地域)
の気象情報です。
今日の天気は
(今日の天気),
明日は
(明日の天気)
でしょう。
下線部分(可変部分)
に挿入
降水確率です。
今日午前中は
(午前降水確率)%,
午後は
(午後降水確率)%,夜は
(夜降水確率)%となっています。
気温の予想です。
電文解析
手話決定
定型文
データベース
手話単語・フレーズ
データベース
手話CG
1図 手話CG自動生成システム
NHK技研 R&D/No.154/2015.11
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