株価下押し要因継続、但し既に割安な面も

リサーチ TODAY
2016 年 1 月 27 日
株価下押し要因継続、但し既に割安な面も
常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創
2016年1月後半になり、米国主要企業の2015年10~12月期の決算発表が本格化している。下記の図表
に示すように、7~9月期に続き、ドル高や原油安、新興国経済の減速影響懸念から、S&P500指数採用企
業全体のEPS(1株当たり利益)は5%程度の減益となることが予想される1。アナリストによる予想は決算発表
前に保守的になる傾向があり、予想を上回る決算が相次げば株式市場に一定の安心感が広がるものの、
米国企業は原油安・ドル高の業績への影響に対する警戒感を強めているため、株式市場の低迷も続くと
考えられる。また、こうした株式市場の環境は米国の金融政策における利上げ継続の判断の変更を余儀な
くさせるものとなろう。ただし、米国株式のバリュエーションは従来のように割高ではなくなり、海外環境が安
定すれば、落ち着きを示すと展望される。また、日本株は海外環境から大きな売り圧力を受け、企業業績
の下方修正が生じやすい状況にあるが、日本株のバリュエーション上は既に割安な水準にまで低下してい
ることも認識すべきだ。
■図表:S&P500採用企業のEPS(1株あたり利益)前年同期比の予想と実績の推移
12
(%)
10
8
実績
予想
6
4
2
0
-2
-4
-6
13/1Q 13/2Q 13/3Q 13/4Q 14/1Q 14/2Q 14/3Q 14/4Q 15/1Q 15/2Q 15/3Q 15/4Q
(年/期)
(注)予想は決算発表シーズン直前の予想。2015 年 10~12 月期の予想は直近(1/20 時点)の予想。
(資料)Thomson Reuters よりみずほ総合研究所作成
米国の企業業績を圧迫するのは海外環境である。中国・資源ブームの終焉によって、カナダや中南米と
いった、いわば米国の「裏庭」でストック調整が進んでいる2。裏庭経済の困難は、ドル高と相まって米国の
輸出悪化の主因となっている。裏庭経済でのストック調整が長期化すれば、米国の輸出持ち直しが遅れて
しまう。さらに、2015年終盤から、裏庭経済以外に向けた輸出も芽に見えて悪化し始めており、輸出の先行
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2016 年 1 月 27 日
きに懸念が高まっている。加えて、懸念されるのは昨年12月の利上げを決定づけた雇用環境の良好さが
失われるのではないかとの点である。足元、インフレ期待に下方屈折が生じており、さらに企業の先行き期
待の低下も気掛かりである。今年になってからの世界的な株安は、このような企業の業績予想の低下や先
行き見通しの屈折を背景にしている。日本においても今週以降、日本企業の第3四半期決算発表が本格
化するが、アナリストによる今期の業績予想には下方修正が目立っている。この背景には、米国同様、日本
にも近隣の中国等新興国経済の減速が企業に与える影響への懸念の高まりがある。また、年末以降の円
高を踏まえた為替の影響も懸念されている。
一方、日米の株式市場に過度な悲観は禁物だろう。それは、年初来の大幅な株式市場の下落を受けて、
TOPIXの予想PERは13倍台、S&Pは15倍台に低下しているからだ。米国株では一時台頭していた高値警
戒感が後退し、日本株については割安感が意識される水準となっている。企業業績の観点からは依然とし
て株式市場に下押し圧力がかかりやすいが、海外環境が安定し、ボラティリティが正常化すれば、次第に
買い戻しが生じよう。
■図表:日米株価の予想PERの推移
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(倍)
日本(TOPIX)
米国(S&P500)
20
18
16
14
12
10
12/01
12/07
13/01
13/07
14/01
14/07
15/01
15/07
16/01 (年/月)
(資料)Bloomberg よりみずほ総合研究所作成
日本株は、バブル崩壊後の1990年頃も、ITバブルの2000年頃も世界的に見て常にPER等のバリュエー
ション上、明らかに割高だった。だから、海外のヘッジファンド等から日本株の割高さを狙った売り圧力が加
わった。その後、日本株は「ジャパンパッシング」と言われて見向きもされない状況が続いた。しかし、アベノ
ミクスが始まった2012年末以降、日本に対する海外の評価が正常化に向かい、過去のように割高な日本株
だけに売り圧力が加わる状況ではない。今年の日本株は大きく売られたが、世界全体の株式市場が変調
するなか、海外の動きと歩調を合わせた下落にとどまっている。しかも、図表にも示されるように、日本株は
バリュエーションから既に割安なゾーンに低下している。今年の海外要因の変動、日本企業の業績下振れ
を展望すれば、日本株のもう一段の下押しが懸念される。ただし、既に割安なゾーンにあることも認識すべ
きであり、過度な悲観は禁物であろう。
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「今週の注目チャート」(みずほ総合研究所 『金融市場ウィークリー』 2016 年 1 月 15 日)
「トピック:中国・資源ブーム終焉で進む裏庭のストック調整」(みずほ総合研究所 『みずほ米国経済情報 2016 年 1 月号』
2016 年 1 月 22 日)
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