公的土地評価に関して こんにちは。不動産鑑定士の若杉と申します。 2012 年末に、自民党に政権が交代してからの、大規模金融緩和を主体とするいわゆるア ベノミクス効果により、リーマンショック後から継続的に下落してきた地価の全国平均は、 住宅地、商業地ともに下落率が縮小傾向になってきています。 また、三大都市圏(東京圏・大阪圏・名古屋圏)では住宅地は上昇に転じ、商業地につい ては、場所によってはかなりの上昇率を見せるなど、地域によって、不動産市況は転換点を 迎えつつあるようにも見えます。 一方で、あるリサーチ会社が発表した調査レポートによりますと、企業の経営者や役職者 は、自社が管理、所有している不動産の所在については、ほとんどの方が把握されていると いう結果が得られましたが、物件の時価や簿価については、半数程度しか把握されていない という結果が得られました。 永らく、不動産価格の低迷が続いてきたことから、企業不動産への関心が薄れることは当 然でもありますが、経営の基盤である不動産価格について把握しておくことにより、遊休不 動産の活用や処分等を含め、経営方針や経営活動に役立つ可能性は十分にあると思われま す。 そこで、今回は、企業の経営者様ご自身で、公的評価制度を基に、自社の概ねの土地価格 を把握する方法をお示ししたいと思います。 ①公的評価制度について 一般に、公的土地価格については、概ね下記の 4 つが代表的であり、いずれもその評価に は不動産鑑定士が関与しておりますが、これらは、その目的等に応じて、性格や内容が異な るため、その利用には注意が必要となります。 地価公示 地価調査 路線価 固定資産税評価 国土交通省 都道府県 国税庁 市町村 適正な地価形成 適正な地価形成 課税基準 課税基準 価格時点 1月1日 7月1日 1月1日 1月1日 公表時期 3 月下旬 9 月下旬 7 月初旬 4 月初旬 発表主体 目的 ■神戸ビジネスメールマガジン ― KCCI■ <地価公示> 全国の都市計画区域内のおおよそ 2 万 3 千地点(一都道府県で平均約 500 地点)につき、 毎年 1 月 1 日時点の価格が公表されます。地域における標準的な地点が対象となっており、 取引における指標となることが求められています。公表される価格は概ね時価水準です。 <地価調査> 地価公示とほぼ同じ趣旨ですが、価格時点は、地価公示より半年後の 7 月 1 日時点であ り、対象地点のほとんどは地価公示の対象地点とは異なります。公表される価格は概ね時価 水準です。 地価公示と地価調査につきましては、国土交通省の「標準地・基準地検索システム」より 全国のすべての地点につき、容易に検索が可能です。 <路線価> 国税庁が主体となって、全国の市街化区域内の道路につき、毎年 1 月 1 日時点の価格が 公表されます。対象地が面する前面道路に価格が付されていますので、非常に具体的であり、 概ねの相場を把握するのに優れています。但し、目的は、相続税及び贈与税算出の課税基準 とすることであり、公表される価格は公示価格の概ね 80%の水準です。 路線価につきましては、国税庁HPから「路線価図・評価倍率表」にアクセスすれば、過 去数年間を含めて、全国の路線価が閲覧可能です。 <固定資産税評価> 市町村が主体となって、市区町村全域につき、毎年 1 月 1 日時点の価格が定められます。 個々の土地建物につき、評価額が定められますので、概ねの価格水準を一目で把握すること ができますが、目的が、固定資産税や都市計画税を徴収するための基準価格とするためであ り、査定が画一的であること、また、各種減免措置等の政策的意図もあることから、必ずし も適正な時価が付されているとは限らず、その利用には注意が必要です。土地についての価 格水準は公示価格の概ね 70%の水準とされています。 個別的な価格については、市町村の固定資産税課などで閲覧可能ですが、土地所有者の 承認を得ないと資料を閲覧することはできません。 但し、評価の基準となる固定資産税路線価等につきましては、一般財団法人資産評価シス テム研究センターが提供しています「全国地価マップ」により検索が可能です。 以上、ご紹介させて頂きました、評価指標により、概ねの土地価格の把握をして頂ければ と思います。 ■神戸ビジネスメールマガジン ― KCCI■ 但し、土地は、形状や高低差など非常に個別性が強いものであり、先述しました通り、路 線価や固定資産税評価につきましては、課税目的で算出されていること、また、地価公示や 地価調査は対象地とは異なる個別地点の時価水準であることに注意が必要です。 公的評価の指標を使用するにあたっての注意点、また、不動産鑑定士にご相談される方が 好ましいケースなどにつきましては、次回でご紹介したいと思います。 有限会社旭不動産鑑定所 不動産鑑定士 若杉 和宏 〒651-0084 神戸市中央区磯辺通 3 丁目 2 番 4 号 藤和シティホームズ三宮 102 号 TEL 078(232)0650 FAX 078(232)0658 E-mail [email protected] http://www.asahikantei.com/ ■神戸ビジネスメールマガジン ― KCCI■
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