電 機 - JEMA 一般社団法人 日本電機工業会

2016
Vol.781
,
THE JAPAN ELECTRICAL MANUFACTURERS ASSOCIATION
(1 月 26 日発行)
<表紙の言葉>
誌名のローマ字表記である “DENKI” をメインビジ
ュアルとすることで、電機産業の発展が社会や人々
に貢献し続けた歴史を振り返るとともに、より安心
で便利な未来のために、これからもますます進化し
続けたい、
という想いを表現しています。
05
06
08
11
12
会 長 年頭所感
経済産業大臣 年頭所感
経済産業省 製造産業局長 年頭所感
経済産業省 商務情報政策局長 年頭所感
IEC・CIGRE(国際大電力システム会議)
合同シンポジウム出席報告
標準化活動紹介
最近の規制動向
電機・電子業界の事業に関連する環境問題の国際標準化
ISO 14001(環境マネジメントシステム)
2015年改正について
ISO/TC207/SC1 対応国内委員会 委員長・日本代表委員
13
吉田 敬史
スマートシティー/スマートコミュニティー・インフラに
関するISO国際法準規格の概況について
ISO/TC268 SC1、IEC/TC111 国際議長
市川 芳明
19
環境問題を巡る国内外の動向と電機・電子業界の取組み
23
一般社団法人 日本電機工業会 環境部
64
第79回IEC大会
(ミンスク大会)
の概要
一般財団法人 日本規格協会 加藤 洋一
IEC/SC17C/MT19
(高圧スイッチギヤの過酷な条件における階級)
エルランゲン会議 出席報告
IEC/SC17C TF 委員、IEC/SC17C/MT19 エキスパート
桑水流 宝
(防爆機器)
ミンスク会議 出席報告
IEC/TC31
(TC31 国内対応委員会)
第31 小委員会
野田 和俊、谷部 貴之
IEC/SC59A/WGs
(食洗機の性能)
ミンスク会議 出席報告
食器洗い乾燥機技術専門委員会 池島 衛
IEC/SC59D
(家庭用洗濯機器の性能評価法規格改定会議)
ミンスク会議 出席報告
洗濯機技術専門委員会 洗濯機性能WG 藤井 裕幸
IEC/TC61/SC61C
(冷蔵機器の安全性)
ウェリントン会議 出席報告
第59/61/116 小委員会 WG3/電気冷蔵庫安全規格分科会
小林 敏和
(太陽光発電システム)
IEC/TC82/WG1,2,3,6,7,JWG1,Plenary
南アフリカ会議 出席報告
一般社団法人 日本電機工業会 吉田 功、出口 洋平
IEC /TC116 WG7/WG8/WG9/WG10
(電動工具の安全性)
ロンドン会議 出席報告
第59/61/116 小員会WG5 成田 正己
ハイライト
30
システム コントロール フェア実行委員会
IEC/SC121A/MT9
(低圧遮断器、配線用遮断器、漏電遮断器)
上海会議 出席報告
IEC/SC121A 国内対応委員会 山縣 伸示
IECRE WE-OMC WG501
(再生可能エネルギー機器規格試験
認証制度WG501)
オーランド会議 出席報告
トピックス
2015 年度 中堅企業海外調査(米国・西海岸)視察概要
36
SolarPACES 2015(太陽熱発電システム)出席報告
太陽熱発電システム国際標準化委員会 石山 卓弘
風力発電システム標準化委員会 石山 卓弘
IECRE WG001
(再生可能エネルギー機器規格試験
認証制度 WG001)
オーフス会議 出席報告
風力発電システム標準化委員会 石山 卓弘
41
フラッシュニュース
ハノイ真贋判定セミナー参加報告
知的財産保護専門委員会 神尾 恵司
43
韓国電子情報通信産業振興会との第 8 回定期交流会報告
一般社団法人 日本電機工業会 江藤 一哉
新会員紹介(正会員)
88
89
ソーラーフロンティア株式会社
50
日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
55
統計
編集後記
高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた
研究開発の取組み ~ JAEA 幌延深地層研究センター視察~
原子燃料サイクル専門委員会 深澤 哲生
60
(可変速駆動システムのエネルギー効率)
IEC/SC22G/WG18
ブレア
(アメリカ)
会議 出席報告
可変速駆動システムIEC 対応分科会
佐藤 以久也、横井 修
IEC/SC22G 国内委員会 川上 和人
一般社団法人 日本電機工業会 阿部 倫也
特集 環境対応への国際標準化と
一般社団法人 日本電機工業会 2015 年度 中堅企業海外調査団
業界報告
一般社団法人 日本電機工業会 目黒 雅也
2016年 年賀交歓会
年頭所感
システム コントロール フェア 2015 開催結果報告
電機
90
92
3
謹賀新年
2016 年 元旦
一般社団法人 日本電機工業会
4 電 機 2016・January
一般社団法人 日本電機工業会
2016 年 年賀交歓会
一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)は、1 月 5 日 ㈫ 、「ANA インターコンチネンタルホテル東京」において
2016 年 年賀交歓会を会員、来賓など、約 900 名の参加を得て開催した。
まず、津田純嗣会長の挨拶にはじまり、室町正志副会長の発声により乾杯が行われ、ご来賓を代表して林 幹雄
経済産業大臣殿よりご挨拶をいただいた。
津田純嗣 会長
林 幹雄 経済産業大臣
室町正志 副会長
謹賀新年/ 2016 年 年賀交歓会 5
年 頭 所 感
一般社団法人 日本電機工業会
会 長
津田 純嗣
新年、あけましておめでとうございます。
の具体的施策の議論が進捗しており、電機業界として
経済産業省をはじめ、関係省庁、関連団体、会員の
もこの実現に対ししっかり取り組んで参ります。
皆様には、日ごろより当工業会の活動に多大なるご支
援、ご尽力を頂き、心より御礼申し上げます。
2016 年の年頭にあたり、謹んで所感を申し上げます。
最大限の導入を進める再生可能エネルギーについて
は、固定価格買い取り制度見直しに向けた意見提言、
太陽光・風力・燃料電池等各システムの性能向上やコ
昨年の日本経済は、夏以降の中国経済減速及びその
スト低減の推進に加え、蓄電池・電気自動車等含め運
影響を受けた新興国向け輸出の伸び悩み等から景気全
用多様化する技術的課題にも引き続き取り組んで参り
体としては横這い状態で推移してきているものの、7
ます。今後も大きな役割を担う火力発電については、
~ 9 月期の実質 GDP 成長率が前期比+ 0.3%とプラス
世界最高レベルの高効率かつ環境負荷低減技術を更に
成長に転じております。
飛躍的に向上させる次世代火力の開発・実用化を加速
今年は、中国、新興国の経済減速の影響は今しばら
させて参ります。原子力発電につきましては、昨年東
く続くと思われますが、円安傾向、原油安は継続する
日本大震災後初めて新規制基準をクリアした原子力発
見込みであります。世界経済を昨年末利上げを実施し
電所の再稼働が実現し大きな前進を果たしました。引
た米国が牽引し、日本経済として着実に景気回復に向
き続き福島第一原子力発電所の廃炉、汚染水対策、及
かい、来年 4 月に予定される消費増税をしっかり実施
び産業界としての安全対策に継続して取組むとともに、
して頂き、東京オリンピック・パラリンピックに向か
核燃料サイクル維持の重要性、放射性廃棄物処分の解
い更に上向いてゆくよう、大いに期待しているところ
決、競争環境下における原子力事業の在り方等に対す
であります。
る意見発信、そして原子力導入を進める海外各国への
日本技術の提供を進めて参ります。
このような経済見通しの中、今年の電機業界の課題
であるエネルギー・環境問題への具体的推進、電機産
地球温暖化対策については、昨年末 COP21 におい
業としてのイノベーション創出、国際標準化、グロー
て、全ての国が参加する 2020 年以降の新たな枠組み
バル展開についてお話し申し上げます。
である「パリ協定」が採択されました。電機業界と致
しましても、産業界の一員として電機・電子業界の
エネルギー・環境問題については、昨年大きな進展
自主行動計画である「低炭素社会実行計画」の中で、
として我が国の 2030 年における「エネルギー長期需
「生産プロセスにおけるエネルギー原単位改善」、及び
給見通し」及び「温暖化ガス削減目標」が決まり、そ
製品貢献として発電プラント、又は昨年 4 月に新たな
6 電 機 2016・January
年頭所感
省エネ基準が適用されたモータ、今年省エネ基準見直
通商問題に関しては、昨年 TPP 大筋合意が実現し、
しが予定されている冷蔵庫等トップランナー制度も活
参加国内での貿易円滑化や大幅な関税削減効果が見込
用した CO 2 排出削減を進めて参ります。
まれ、電機業界にとって大きな一歩となりました。今
後、TPP の速やかな発効に向けて各国の国内手続き
次に、電機産業の成長戦略を実現する上で、イノ
が円滑に進むよう、また、これを契機に交渉中の日中
ベーションの創出が最も重要と考えております。課題
韓 FTA や RCEP 等が早期に締結することを期待して
先進国としての我が国において、エネルギー・環境問
おります。電機業界としては、公的資金支援の継続が
題以外に、自然災害テロ脅威に対する強靱な安全・安
世界的に合意された高効率新設石炭火力発電を含め、
心な社会、高齢化・人口減少が進む中で健康で快適な
官民で連携してインフラシステム輸出を強化し日本の
ライフスタイルをサポートする社会の実現に向け、世
高性能・高品質な製品・システムのグローバル展開を
界に先駆けた高い付加価値の電気製品を創出し、お客
拡大して参ります。
様の価値を最大化するサービス事業としての展開も進
めていきたいと考えております。そのなかで、昨年は
このように電機業界として、これらの課題にしっか
新たなモノづくり、サービス産業の革命として欧米で
り取組んで参る所存であり、関係省庁や関係機関との
先行して進められている「IoT」
、
「CPS」そして「イ
連携のもと会員の皆様と一丸となり、電機産業の発展、
ンダストリー 4.0」に関する動きが国内でも一気に活
そして、日本の経済成長を確固とする年にしたいと思
発化致しました。昨年 12 月に当工業会が主催したシ
います。
ステムコントロールフェアにおきましても「スマート
最後になりますが、この一年の皆様方のご発展と一
マニュファクチャリング」をテーマに様々な企画を盛
層のご活躍を祈念致しまして、私の新年のご挨拶とさ
り込みましたが、前回を 30%以上上回る来場者を記
せて頂きます。
録し、大変活発な意見発信・議論の場を提供すること
本年も、どうぞよろしくお願いいたします。
ができました。今年は、これら議論をベースに、多く
の業界を跨がる広い連携でのプラットフォーム構築、
様々なユースケースの創出、国際標準化等の課題に対
し具体的施策を推進して参ります。
成長戦略を実現する上で、国際標準化・グローバル
展開も重要な課題です。当工業会では、電機に関する
国際標準化活動並びに世界に通用する認証基盤強化の
実現に向けた取組みを積極的に推進しております。例
えば白物家電では昨年 2 月に冷蔵庫の消費電力試験方
法に関する日本提案が採用された IEC 規格が発行され、
また ASEAN 各国での IEC 規格の採用を広げる活動に
も取り組み、着実に普及拡大しております。
年頭所感 7
年 頭 所 感
経済産業大臣
林 幹雄
平成28 年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。
新年を迎えるにあたり、経済産業政策の諸課題と意気込
の来年度からの実現」と、史上初の「固定資産税の投資
促進減税の創設」を決めました。
企業の皆様には、これらの措置を活用した設備・技術・
みについて一言申し上げます。
人材に対する投資への点火と、3巡目の賃上げに向けた
福島の復興
最大限の努力、あわせて、取引先企業に対する仕入れ価
はじめに、福島第一原発の廃炉・汚染水対策と福島の
復興は、経済産業省が担うべき最も重要な課題です。
東日本を襲った大震災から3月で丸5 年となります。昨
なら は まち
格の上昇等を踏まえた価格転嫁を改めてお願いします。
強い経済を生み出すためには、企業の生産性を抜本的
に高めることが必要です。世界に先駆けた第 4 次産業革
年 9月には全町避難となっていた楢葉町の避難指示が解
命の達成に向け、イノベーションを加速し、それを支え
除されました。今後も被災事業者の事業再開に向けた官
る人材への未来投資を拡大してまいります。
民合同チームによる支援、イノベーション・コースト構
昨年から、自動走行、ロボット・ドローン、医療・健
想の着実な具体化、企業立地による雇用創出などを、関
康などの幅広い分野で産業の未来像を議論し、
「IoT 推
係者一丸で進めてまいります。
進コンソーシアム」で先駆的事業を後押ししてまいりま
福島第一原発の廃炉・汚染水対策については、昨年 9
した。本年は、産業構造や働き方の変化の方向性を提示
月にサブドレンが運用開始、10月には海側遮水壁の閉合
した「新産業構造ビジョン」の議論を通じ、大胆な変革
が完了しました。引き続き、中長期ロードマップに則り、
に取り組んでまいります。
国も前面に立って安全かつ着実に対策を進めてまいります。
産業を支えるサイバーセキュリティの確保も重要な課
題です。情報処理推進機構(IPA)の知見を活用し、独
「希望を生み出す強い経済」の実現
第二に、
「希望を生み出す強い経済」の実現です。
法等の対策強化や電力等の重要インフラ産業における対
策強化に取り組んでまいります。
政府が掲げる「一億総活躍社会」は、日本の構造的
イノベーションを加速するためには、技術・人材の流
な課題である少子高齢化に真正面から挑む、未来を見据
動化に加え、海外トップ人材や投資の呼び込みによっ
えた新たな国づくりです。中でも、戦後最大となる名目
て、世界に開かれた拠点を形成することが必要です。例
GDP600兆円の達成に向け、
「希望を生み出す強い経済」
えば、再生医療の分野では、世界最先端の研究開発と大
を生み出すことは経済産業省の大きな使命です。
胆な規制緩和により、世界中から人材が集まってきてい
我が国はデフレ脱却までもう一息のところまで来てい
ます。研究者のみならず、起業家、IT 等の高度人材の大
ます。昨年末に取りまとめた税制改正大綱では、経済の
胆な獲得に向け、アジアの教育機関と連携した人材育成
好循環を確実なものとするため、
「法人実効税率20%台
を進めるとともに、対日直接投資の促進により「内なる
8 電 機 2016・January
年頭所感
国際化」を進めます。
行客は、我が国経済の起爆剤となる存在です。眠れる観
また、こうした施策による研究開発の成果を市場開拓
光資源を開発し、世界に売り込む強靭な観光産業を育成
に繋げるべく、知財戦略の強化や、我が国発の国際標準
するため、ファイナンスやまちづくり等の在り方について
獲得に努めてまいります。
検討を進め、観光消費額の増加につながる外国人目線で
これらに加え、全国津々浦々の中堅・中小企業の皆様
の観光拠点形成を行います。
にも地域経済を牽引していただく必要があります。サー
今後も日EU・EPAを始め、RCEP、日中韓 FTAなど
ビス業等の事業分野ごとに生産性向上のための指針を
の経済連携交渉と多国間・複数国間の取組を果敢に推進
策定し、きめ細やかに支援する仕組みを新たに作ります。
し、海外市場の成長を積極的に取り込んでまいります。
なお、消費税の軽減税率制度の導入にあたっては、事業
者の円滑な準備に向けて全力を尽くします。
責任あるエネルギー・環境政策の推進
第四に、責任あるエネルギー・環境政策を推進してま
通商交渉の果実を活かした経済発展
第三に、通商交渉の果実を最大限に活かした経済発展
の実現です。
いります。
昨年末、COP21で「パリ協定」が採択されました。先
進国と途上国が立場の違いを越え、全ての国が参加する
昨年10月には、長期に及ぶ交渉の末にTPP 協定が大
形で公平で実効的な枠組みが得られたことは、歴史的な
筋合意し、12月には日本が議長国となり、先進国と途上
転換です。今後、春までに地球温暖化対策計画を策定
国が参加する21世紀初の大型関税交渉であるITA 拡大
するとともに、エネルギー・環境分野における革新的な
交渉が妥結しました。これらの通商交渉による巨大な自
技術開発の強化を進め、我が国の強みを活かしたアジア・
由貿易圏の誕生は、多くの企業に新たな成長の機会を提
太平洋地域等での国際貢献を進めます。
供します。
また、今年は我が国がG7の議長国です。G7 北九州エ
特に、TPPを追い風に市場開拓・事業拡大を目指して
ネルギー大臣会合を5月に主催し、世界のエネルギー安
がんばる中堅・中小企業をあらゆる段階で支援するため、
全保障と持続可能な発展に向けた議論をリードしてまい
JETRO・中小機構等の支援機関を幅広く結集した「新
ります。
輸出大国」コンソーシアムの構築、コンビニエンス・ス
トアとJETROの連携強化等を進めてまいります。
国内では、本年 4 月から電力小売が全面自由化され、
全ての家庭や事業所で、自由に電力会社や料金メニュー
TPPによって広がる市場獲得に向け、農商工が連携し
を選べるようになります。
「電力取引監視等委員会」の意
て取り組むことも重要です。
「攻めの農業」への転換に向
見も踏まえつつ、引き続き「電力システム改革」を着実
け、農商工連携による新商品開発や、物流の効率化、販
に進めます。
路開拓等の取組を、関係省庁の叡智を結集して強力に進
めてまいります。
インフラシステム輸出も海外市場獲得に向けた重要な
電力システム改革の実行、エネルギーミックスの実現
に当たっては、エネルギーへの投資を大胆に拡大し、経
済成長とCO 2 排出抑制を両立していくことが重要です。
取組です。先般、抜本的な制度拡充を行った「質の高い
このため、徹底した省エネと再エネの導入拡大を柱とす
インフラパートナーシップ」を着実に実施し、2020 年ま
る「エネルギー革新戦略」を今春までに取りまとめ、そ
でに約30兆円のインフラシステムの受注を目指します。
の後の成長戦略や地球温暖化対策計画の策定に貢献し
海外展開だけではありません。急増する訪日外国人旅
てまいります。
年頭所感 9
再生可能エネルギーについては、国民負担を抑制しつ
年来の資源価格低迷ゆえ、我が国企業による投資が
つ最大限導入を進めることが基本方針です。固定価格
厳しさを増しております。積極的な資源外交とともに、
買取制度の開始以後、3 年間で導入量が倍増した一方で、
JOGMECを通じた我が国企業への投資資金供給を進め
顕在化してきた様々な課題に対応するため、制度の見直
てまいります。
しを進めてまいります。
原子力発電所についても、引き続き、エネルギー基本
計画に従い、いかなる事情よりも安全性を全てに優先さ
おわりに
今年は、申年となります。猿は「魔が去る」に通じ、
せ、原子力規制委員会により新規制基準への適合を認め
古来より病や悪いことが去り、縁起がよいとされていま
られた発電所の再稼働を進めてまいります。また、自由
す。また、申の字にイ(にんべん)を加えると、
「伸」と
な競争の下でも使用済燃料の再処理等を着実に進めるた
いう字になります。デフレが去り、人の力が加わることで
め、制度の見直しを進めてまいります。
高レベル放射性廃棄物の最終処分については、国が前
「伸」びていく、今年一年の日本経済にそのような期待を
しております。
面に立って取り組むとの方針の下、国民や地域に冷静に
「希望を生み出す強い経済」の創出に向け、経済産業
受け止められる環境を整えた上で、科学的有望地の平成
省で総力を挙げて取り組んでまいります。皆様のより一
28 年中の提示を目指します。国民や自治体との対話を丁
層の御理解と御支援を賜りますよう、よろしくお願い申
寧に重ね、着実に進めてまいります。
し上げます。
石油・天然ガスなど資源の開発と確保については、昨
10 電 機 2016・January
平成28 年 元旦
年頭所感
年 頭 所 感
経済産業省 製造産業局長
糟谷 敏秀
年頭に寄せて
具体的には、第一に、少子高齢化への対応やものづく
平成 28 年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。
り現場の生産性向上のため、ロボットの活用を支援しま
安倍政権発足以来、機動的に積み重ねてきた政策の
す。昨年 2 月に日本経済再生本部で決定した「ロボット
結果、雇用・企業収益は改善し、経済の好循環が生まれ
新戦略」の推進のため、産学官から成る「ロボット革命
つつあります。
イニシアティブ協議会」を昨年 5 月に設立いたしました。
我が国製造業の事業環境については、経済連携協定
2020 年までを「ロボット革命集中実行期間」と位置づけ、
への対応の遅れ、行きすぎた円高など「六重苦」が指
ロボットの市場規模を2.4 兆円に拡大することを目指して、
摘されてきました。行きすぎた円高が是正されたのに続
官民での総額 1000 億円のロボット関連プロジェクトへの
き、今般 TPP 協定が大筋合意したことは、我が国製造業
投資や、ロボットバリアフリー社会に向けた規制改革等
の競争力強化に向けた大きな一歩となります。TPP 協定
を推進してまいります。
に参加する11か国への工業製品輸出額(約 19 兆円)の
第二に、IoT 等の新しい技術を活用し、生産性を高め
99.9%について関税が撤廃されることにより、国内で質
たり、新たな収益源を創出する意欲的な取組を支援しま
の高いものづくりを行う我が国企業の輸出の増加に大き
す。生産現場や経営の状態の見える化により、改善が容
く貢献することが期待されます。
易になるだけでなく、データを起点とした新たな製品や
過去 3 年間のアベノミクスにより、我が国はデフレ脱
サービスの創出により、稼ぐ力の向上に貢献します。こ
却までもう一息のところまで来ています。昨年末の政府
うした動きに対応した新たな製造業の姿を模索していく
の税制改正大綱では、経済の好循環を確実なものとす
ため、
「ロボット革命イニシアティブ協議会」の中で、そ
るため、
「法人実効税率 20%台の来年度からの実現」と、
の課題や方向性につき議論を始めています。また、昨年
史上初の
「固定資産税の投資促進減税創設」
を決めました。
10 月に設立した「IoT 推進ラボ」において、製造業と非
企業の皆様には、これらの措置も活用しつつ、設備・
製造業、大企業とベンチャー企業、日本企業と外国企
技術・人材に対する未来に向けた投資と、3 巡目の賃上
業といった、様々なプレーヤーによる業種を超えた企業
げに向けた最大限の努力、あわせて、取引先企業に対す
連携を促進し、資金・規制両面から集中支援することで、
る仕入れ価格の上昇等を踏まえた価格転嫁を改めてお願
これまでになかったイノベーションを生みだしていくこと
いします。
を目指します。
政府としても、強い経済を生み出すために、人材開発、
末筆ながら、本年の皆様の御健康と御多幸を、そして
先端的な研究開発等を進めます。企業の生産性や収益力
我が国製造業の着実な発展を祈念いたしまして、新年の
の向上に向けて、新たな技術を活用した、我が国製造業
御挨拶とさせていただきます。
の意欲的な取組を支援します。
平成 28 年 元旦
年頭所感 11
年 頭 所 感
経済産業省 商務情報政策局長
安藤 久佳
新年明けましておめでとうございます。昨年は、
IoT、ビッグデータ、人工知能といった技術革新によ
り、産業・社会全体の進展を実感する一年でした。
経済指標をみても、アベノミクスによって、企業
収益は過去最高、有効求人倍率は 23 年ぶりの高水準、
賃上げ率は過去 17 年間で最高となるなど、経済の好
循環は着実に回り始めています。
我が国においても、IoT を活用した先進的プロジェ
クトを創出するため、新たな産学官の枠組みとして
「IoT 推進コンソーシアム」が設立されました。当省
としても、規制改革やルール形成、立ち上がりの資金
支援など多様な側面から取り組んで参ります。
他方、温暖化対策への取組やエネルギーを巡る国内
外の状況の変化により、世界的に省エネへの関心が高
今後も経済の好循環を実現するには、3 巡目の賃上
まっております。昨年末にはパリにおいて「国連気候
げも必要です。自社の賃上げに最大限の努力をしてい
変動枠組条約第 21 回締結国会議(COP21)」、「京都議
ただくとともに、取引先企業に対しても、仕入れ価格
定書第 11 回締結国会合」等が開催され、「パリ協定」
の上昇などを踏まえた価格転嫁をしていただきたいと
が採択されました。これに先立ち、我が国は、2030
思います。
年度に対 2013 年度比で 26%削減という約束草案を提
また、経済産業省としても、アベノミクス新三本の
出しました。これは、非常に野心的な目標であり、皆
矢で掲げている「希望を生み出す強い経済」で定めら
様におかれましても、「省エネトップランナー制度」
れた 2020 年に GDP600 兆円達成という目標に向けて、
による更なる製品の省エネ化や、工場における省エネ
官民で連携して未来投資を推進していきます。
設備の導入など多角的に取り組まれることを期待しま
さて、国内の白物家電市場の状況について見ますと、
昨年は、
「爆買い」が流行語大賞を受賞するなど、イ
す。政府と致しましても、可能な限り支援していく所
存です。
ンバウンド需要が旺盛な年となりました。この「爆買
最後になりましたが、日本経済再生のためには「成
い」の中心には高級炊飯器等の家電製品であり、秋葉
長戦略」を成功させることが必要不可欠でございます。
原をはじめとした電気街の様子は連日ニュース報道さ
そのため、今後も皆様の創意工夫あふれる新しい挑戦
れるまででした。今後とも魅力的で安全な製品で、日
を、政府として引き続き支援して参りたいと決意を強
本だけでなく世界を驚かせていただきたく存じます。
くしているところです。皆様におかれましても、本年
当省としても、2020 年オリンピック・パラリンピッ
を日本経済再生に向けた飛躍の年としていただきます
ク東京大会に向けた準備を加速する中で、インバウン
よう、お願い申し上げます。
ド需要の更なる喚起に向けた施策を実行して参ります。
また、IoT・ビッグデータ・人工知能が進展する中、
12 電 機 2016・January
平成 28 年 1 月
特集
環境対応への国際標準化と
最近の規制動向
昨年 12 月に開催された COP21(国連気候変動枠組条約第 21 回締約国会議)では
「パリ協定」が採択され、地球環境問題への関心がますます高まっています。
そのような中、今号では、
「環境対応への国際標準化と最新の規制動向」をテーマとし、
有識者や当会環境部による特集記事を掲載することとしました。
電機・電子業界の事業に関連する環境問題の国際標準化
ISO 14001(環境マネジメントシステム)2015 年改正について
ISO/TC207/SC1 対応国内委員会 委員長・日本代表委員
吉田 敬史
1.改正の趣旨
環境マネジメントシステムの国際規格 ISO 14001の
2015 年改正版が 2015 年 9 月15日に発行され、その国際
一致規格であるJIS Q 14001:2015は2015 年 11 月20日
に公示された。
ISO 14001は1996 年に 発 行され、2004 年に1996 年
版の要求事項の明確化とISO 9001との整合性の向上に
◇
ISO 14001を所管するISO/TC207/SC1では2011 年総
会においてISO 14001 改正の枠組を定めた改正指示書が
合意され、ISO 14001 改正の決議が採択された。改正指
示書では、今次改正の2つの基本条件が明記されている。
① MSSの共通要求事項と共通用語の定義に基づく。
②‌環境マネジメントシステム(EMS)スタディグループの
次期改正に関する勧告事項を考慮する。
目的を限定したマイナー改正が行われた。初版発行後 20
EMSスタディグループは、2008 年にTC207/SC1内
年近く経ち、気候変動などグローバルな環境問題の深刻
に設置され、改正で考慮すべき内容について勧告事項
化に伴い企業の環境マネジメントは90 年代中頃とは比較
を取りまとめ、2010 年のSC1 総会で報告が承認された。
にならないほど拡大・高度化し、企業の経営戦略的観点
EMSスタディグループの勧告事項の要点を表 1に示す。
からの重要性も増している。こうした背景に加え、品質、
環境に続いて食品安全、情報セキュリティ、エネルギー
といった多様な分野にマネジメントシステム規格(MSS)
が拡大したため、MSS間の整合性を確実にすべく、2011
年にMSS 共通要求事項が定められた。
MSS 共通要求事項は、2012 年にISO 規格策定のルー
ルブックであるISO/IEC 専門業務用指針・ISO 補足指針
の中に附属書 SLとして包含され、以降全てのMSS 規格
の策定及び改正において適用することが義務付けられた
(以降このMSS 共通要求事項及び共通用語の定義を附属
書 SLと呼称する)
。
表 1 EMS スタディグループの改正に関する勧告事項の要点
主 題
持続可能な発展・
CSR 観点の重視
勧告事項
・持続可能な開発への貢献
・‌ISO 26000 6.5(環境)の概念との整合
経営戦略とのリンクの強化 ・環境マネジメントの戦略的考慮
・中核事業との関係強化
環境パフォーマンスの重視 ・‌環境パフォーマンス改善に関する要求事
項の明確化
・指標の要求事項の導入
法令順守の徹底
・法令順守を達成するメカニズムの明確化
・順守状況に関する知識及び理解の実証
製品・サービスへの対応強化 ・ライフサイクル思考の導入
・バリューチェインの観点の拡充
コミュニケーションの拡充 ・利害関係者との協議
・‌コミュニケーションのための体系的なア
プローチの導入
◇合同会社グリーンフューチャーズ 社長
年頭所感/特集:環境対応への国際標準化と最近の規制動向 13
日なので、2018 年 9 月14日までに2015 年 版 に 基 づく
これらの勧告事項を確実に改正規格に反映させるべく、
附属書 SLの共通要求事項とISO 14001:2004の要求事
認証に移行することが求められる。この期限を超えると
項を統合し、その細分箇条毎に検討すべきStudy Group
2004 年版は廃止され、それに対する認証も国際的に無効
の勧告事項を割り当てた文書を出発点(第一次作業原案:
となる。従って認証を継続する組織は、この3 年の移行
WD 1)として改正作業を進めた。この結果、要求事項
期間内に改正規格による新たな要求事項に対応しなけれ
の変更は、そのほとんどが Study Groupの勧告事項を反
ばならない。
映したものとなった。
3.改正の主なポイント
2.改正の経緯
ISO 14001:2015の目次構成を表 3に示す。目次の中
で網掛けした部分が 2004 年版には対応箇所が無い新規
改正決議から改正規格発行までの経緯を表 2に示す。
改正には10回のWG 会合、実働 48日を要した。改正プ
要求事項である。本稿では、紙面の制約から改正における
ロセスの中で、3回の投票が行われたが、作業が進むに
特に重要なポイントを以下の10 項目に整理して解説する。
つれて “反対” が減り、最終国際規格案に対する投票は
賛成 62、反対 1、棄権 5の圧倒的多数で承認され、2015
3.1 戦略的な環境マネジメントへ
年改正の内容が確定した。
ISO 14001の適用は製造業の事業所から始まったこと
認証制度側では、ISO 14001の国際的な認証制度を統
もあり、現在でも現場管理レベルでの適用が多い。一方
括する国際認定フォーラム(IAF)が、2015 年 2 月27日
環境問題の深刻化に対応するには、企業の戦略レベル
に「ISO 14001:2015 認証の移行計画の指針(IAF ID
での対応が不可欠である。附属書 SLの共通要求事項は
10:2015)
」と題する文書を公表し、ISO 14001の2004
「組織の状況」の認識を求めること(箇条 4)から始まり、
年版から2015 年版への認証の移行期間を、改正規格発
EMSが意図した成果を達成するために経営戦略的に考慮
行時点から3 年とすることが規定された。この文書の邦訳
すべき「リスク及び機会」の決定を求めている(細分箇
版は、公益財団法人 日本適合性認定協会(JAB)で 3 月
条 6.1)
。これらの要求事項は、ハイレベル(経営戦略的)
3日に公表されている。
な視点での課題の認識と取組みの決定を求めるものであ
すなわち、ISO 14001:2015の発行は2015 年 9 月15
る。
表 2 ISO 14001 改正の経緯
時 期
イベント
結 果
2011 年 6 月
TC207/SC1 ISO 14001 改正決議
2011 年 8 月~ 11 月
ISO 14001 改訂の新業務項目提案(NWIP)投票
賛成 45、反対 0、棄権 4 で承認
2012 年 2 月
第 1 回 WG:ベルリン(ドイツ)
第 1 次作業原案(WD1)
2012 年 6 月
第 2 回 WG:バンコク(タイ)
第 2 次作業原案(WD2)
2012 年 9 月
第 3 回 WG:ロチェスター(米国)
第 3 次作業原案(WD3)
2013 年 2 月
第 4 回 WG:ヨーテボリ(スウェーデン)
第 1 次委員会案(CD1)
2013 年 6 月
第 5 回 WG:ガボローネ(ボツワナ)
中間文書
2013 年 10 月
第 6 回 WG:ボゴタ(コロンビア)
第 2 次委員会案(CD2)
2013 年 10 月~ 2014 年 1 月
第 2 次委員会案(CD2)投票
賛成 45、反対 6、棄権 5 で承認
2014 年 2 月
第 7 回 WG:パドヴァ(イタリア)
中間文書
2014 年 5 月
第 8 回 WG:パナマ市(パナマ)
国際規格案(DIS)
2014 年 8 月~ 11 月
国際規格案(DIS)投票
賛成 54、反対 5、棄権 7 で承認
2015 年 2 月
第 9 回 WG:東京(日本)
中間文書
2015 年 4 月
第 10 回 WG:ロンドン(英国)
最終国際規格案(FDIS)
2015 年 7 月~ 9 月
最終国際規格案(FDIS)投票
賛成 61、反対 1、棄権 5 で承認
2015 年 9 月
ISO 14001:2015 発行
9 月 15 日発行
2015 年 11 月
JIS Q 14001:2015 公示
11 月 20 日公示
14 電 機 2016・January
電機・電子業界の事業に関連する環境問題の国際標準化
表 3 ISO 14001:2015 と ISO 14001:2014 の対照(要求事項部分)
ISO 14001:2015
ISO 14001:2004
4. 組織の状況
4.1 組織及びその状況の理解
4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解
4.3 EMS の適用範囲の決定
4.1 一般要求事項
4.4 環境マネジメントシステム
4.1 一般要求事項
5. リーダシップ
5.1 リーダシップ及びコミットメント
5.2 環境方針
4.2 環境方針
5.3 組織の役割、責任及び権限
4.4.1 資源、役割、責任及び権限
6. 計画
6.1 リスク及び機会への取組み 6.1.1 一般
6.1.2 環境側面
4.3.1 環境側面
6.1.3 順守義務
4.3.2 法的及びその他の要求事項
6.1.4 取組みのための計画策定
6.2 環境目標及びそれを達成するための計画策定
6.2.1 環境目標
4.3.3 目的、目標及び実施計画
6.2.2 環境目標を達成するための取組みの計画策定
4.3.3 目的、目標及び実施計画
7. 支援
7.1 資源
4.4.1 資源、役割、責任及び権限
7.2 力量
4.4.2 力量、教育訓練及び自覚
7.3 認識
4.4.2 力量、教育訓練及び自覚
7.4 コミュニケーション
7.4.1 一般
4.4.3 コミュニケーション
7.4.2 内部コミュニケーション
4.4.3 コミュニケーション
7.4.3 外部コミュニケーション
4.4.3 コミュニケーション
7.5 文書化した情報
7.5.1 一般
4.4.4 文書類
7.5.2 作成及び更新
4.4.5 文書管理
4.5.4 記録の管理
7.5.3 文書化した情報の管理
4.4.5 文書管理
4.5.4 記録の管理
8. 運用
8.1 運用の計画及び管理
4.4.6 運用管理
8.2 緊急事態への準備及び対応
4.4.7 緊急事態への準備及び対応
9. パフォーマンス評価
9.1 監視、測定、分析及び評価
9.1.1 一般
4.5.1 監視及び測定
9.1.2 順守評価
4.5.2 順守評価
9.2 内部監査
9.2.1 一般
4.5.5 内部監査
9.2.2 内部監査プログラム
9.3 マネジメントレビュー
4.6 マネジメントレビュー
10. 改善
10.1 一般
10.2 不適合及び是正処置
4.5.3 不適合並びに是正処置及び予防処置
10.3 継続的改善
(注 1)ISO 14001:2015 の目次において、下線ありは環境固有の、下線なしは附属書 SL どおりの細分箇条を示す。
(注 2)網掛け部は、2004 年版に対応する細分箇条がないものを示す。
特集:環境対応への国際標準化と最近の規制動向 15
改正 ISO 14001では、
「リスク及び機会」というフレー
ズを「潜在的な有害な影響(脅威)及び潜在的な有益
3.3 事業プロセスへの統合
附属書 SL由来の要求事項に、
「組織の事業プロセスへ
な影響(機会)
」と定義したうえで、
「リスク及び機会」
の環境マネジメントシステム要求事項の統合を確実にす
には3つの発生源、すなわち細分箇条 6.1.2で特定され
る」という規定があり、これは5.1(リーダシップ及びコ
る「環境側面」
、細分箇条 6.1.3で特定される「順守義務
ミットメント)の中でトップマネジメントが実証しなけれ
(2004 年版の法的及びその他の要求事項と同じ意味)
」及
ばならない事項の一つとして要求されている。
び細分箇条 4.1 及び 4.2で特定される「組織の状況や利害
この要求事項の背景を理解するうえで、JABが 2007
関係者のニーズ及び期待」があることを明確にした。
「リ
年 4 月13日付で公表した「マネジメントシステムに係る
スク及び機会」は附属書 SLに準拠して、①環境マネジメ
認証制度のあり方」と題したコミュニケがよい参考となる。
ントシステムが、その意図した成果を達成できるという確
コミュニケでは、組織のマネジメントシステムについて次
信を与える、②外部の環境状態が組織に影響を与える可
のように述べている。
能性を含め、望ましくない影響を防止又は低減する、③
継続的改善を達成する、という3つの目的に照らして決定
するもので、環境に対する「リスク及び機会」ではなく、
組織経営に対する「リスク及び機会」である。
なお、
「著しい環境側面」と「順守義務」は「リスク及
び機会」に関連しなくとも、従来通りEMSの中でマネー
ジすべき対象であることは言うまでもない。
本来、組織のマネジメントシステムは、組織のビジネス
及び組織が社会の一員として行う付帯業務をマネージす
るただ一つのシステムである。
MSSの要求事項は、各々の段階で第三者認証を受ける
か否かではなく、組織のビジネスの流れに基づいた一つの
マネジメントシステムの中に組み込まれ、統合一体化され
て、初めて有効に機能する。
「事業プロセスへの統合」は、MSSを適用する組織に
3.2 プロセスの概念の導入
附属書 SLでは「プロセス」の確立を求める包括的な要
とって有用なだけでなく、MSSの認証制度の社会的信頼
性を確保するためにも不可欠である。
求事項が細分箇条 4.4(環境マネジメントシステム)と8.1
(運用の計画及び管理)に規定されており、必要なプロセ
スは組織が決めるという立場をとっている。また、
「手順」
という用語は無い。
3.4 経営者のリーダシップ・責任の強化
EMSを経営戦略レベルで展開するには最高経営層の
リーダシップとコミットメントが不可欠である。このため、
附属書 SLも改正 14001も、ISO 9001のような「プロ
箇条 5で最高経営層に対する要求事項が詳細に規定され
セスアプローチ」を要求するものではないとしているが、
ており、トップ自らが積極的関与を実証すると共に、組織
適用する上では従来の「手順」と「プロセス」の違いは
の中間管理者層に対する指導、支援を行うこと等が規定
認識しておかなければならない。
「プロセス」は「インプッ
された。
トをアウトプットに変換する、相互に関連する又は相互に
「事業プロセスへの統合」もトップの実証項目の一つで
作用する一連の活動」と定義されており、ここでいう「変
あり、これこそトップ主導で推進しなければ実現できない。
換」が計画通り安定して実施されるためには、変換を行
トップに対する要求事項は、必ずしもトップ自らが実施し
う方法、すなわち「手順」などが必須であるとともに、変
なくとも適切な担当役員や部門長に実行を委任できるが、
換に必要な経営資源を投入し、計画通りに変換が実施さ
「説明責任」は委任できない。他者に委任した内容の実施
れていることを確認するためのプロセス内の監視や測定
状況を確認し、トップ自らがその状況について説明できる
項目とその判断基準、プロセスの責任者などの事項を決
ことが求めれる。
めておかなければならない。すなわち、従来の「手順」
は「プロセス」の一構成要素に過ぎず、
「手順」があって
3.5 対処すべき環境課題の拡大
も必要な資源や、手順の実行管理が伴わなければ計画し
従来規格は「汚染の予防」へのコミットメントを求め
た結果を得ることはできない。
「プロセス」をしっかりと
ていた。2010 年に発行されたISO 26000(社会責任に
確立することで EMSの有効性が向上する。
関する手引)では、環境課題を「汚染の予防」
、
「持続可
16 電 機 2016・January
電機・電子業界の事業に関連する環境問題の国際標準化
能な資源の利用」
、
「気候変動の緩和と気候変動への適
守義務への適合」も規格の意図する成果の一つとして強
応」
、
「環境保護・生物多様性及び自然生息地の回復」の
調されており、環境方針での順守義務に適合することへ
4 課題に整理し対応の指針を提示した。スタディグルー
のコミットメントが、確実に果たされるように、2004 年版
プの勧告事項の一つとして、ISO 26000との整合が揚げ
と比べはるかに多くの細分箇条で順守義務への適合に関
られており、改正 14001の環境方針によるコミットメント
係する要求事項が規定されている。
も26000に規定された4つの環境課題に拡大された。4つ
例えば、組織内の全ての人々が「順守義務を含む、
の環境課題との係りは、業種、立地などの要因で変わる
EMS 要求事項に適合しないことの意味」を認識すること
ため企業に一律 4つの課題への対応を求めるのではなく、
が求められる(7.3)
。順守評価(9.1.2)では、
「順守義務
状況認識(細分箇条 4.1 及び 4.2)に基づいて企業がどの
への適合状況に関する知識及び理解を維持する」と規定
課題にコミットするか選択するものとなった。
され、従来の手順要求ではなく、順守評価で実現すべき
「対処すべき環境課題の拡大」には環境問題のカテゴ
状態が規定されている。
リーの拡大に加えて、
「組織」と「環境」との関係を双方
向で捉えるという概念の拡大もある。
従来、EMSは、
「組織が環境に与える影響」をマネー
ジする仕組みであった。これに対して改正 14001では、
3.8 ライフサイクル思考に基づく取組み
改正 14001では、環境マネジメントを組織の上流(サ
プライチェイン)と下流(流通チャネル、顧客、リサイク
「環境が組織に与える影響」も、4.1(組織の状況)で要
ル・廃棄物処理)に拡大することを指向している。環境
求される「外部の課題」の一つとして認識し、それによ
側面を特定するに当たって、
「ライフサイクルの視点」を
る「リスク及び機会」の決定が求められる。
考慮することが要求される。また、運用管理においても
「環境が組織に与える影響」には、最近世界各地で頻
「ライフサイクルの視点」に従って、アウトソース先を含め、
発する異常気象や資源の希少化の影響などが考えられる。
組織の上流及び下流に対する要求事項の決定や伝達、設
そうした影響は組織にとって脅威となるだけでなく、事業
計段階での環境上の要求事項の考慮が要求されている。
機会にもなり得るのである。
3.9 コミュニケーションの戦略的計画と実施
3.6 環境パフォーマンスの重視
利害関係者のニーズ及び期待の理解(4.2)にはコミュ
継続的改善に関して、マネジメントシステムの改善か
ニケーションが不可欠である。組織には戦略的なコミュ
ら環境パフォーマンスの改善に重点が移っている。改正
ニケーション計画を立案し実施することが求められる。改
14001では、規格の意図する成果として3 項目、①環境
正 14001では法令などで求められる行政への環境報告な
パフォーマンスの改善、②順守義務への適合、③環境目
ども外部コミュニケーションとして管理しなければならな
標を満たすこと、が明記された。
い。また、外部にコミュニケートする環境情報とその信頼
組織は、EMSの有効性(計画した活動を実行し、計
性もEMSによって管理することが要求される。
画した結果を達成した程度)
、すなわち環境パフォーマン
スを継続的に改善しなければならない。
3.10 文書・記録等の電子化の促進
また、環境目標に対しては指標の設定が求められ、監
共通要求事項では、文書、記録という用語は使用され
視及び測定の対象となる環境パフォーマンス全般に対し
ず全て「文書化した情報」という用語に統一された。こ
て、適切な指標を用いて、組織が環境パフォーマンスを
れは企業のビジネスプロセスのIT 化が加速しており、遠
評価するための基準の決定が要求される。
からず EMSなどに必要な文書などは全て電子化されるこ
とを想定したものである。7.5(文書化した情報)ではマ
3.7 順守義務のマネジメントの強化
ニュアル等を求める要求はなく、組織は自ら必要と判断
「順守義務」という用語は従来の「法的要求事項及び
する文書化した情報を整備すればよい。今次改正を契機
組織が同意するその他の要求事項」という表現を、意味
に企業にはEMSに必要な文書、記録類を全面的に電子
は変えずに簡潔に置き換える用語として採用された。
「順
化することを推奨したい。
特集:環境対応への国際標準化と最近の規制動向 17
4.おわりに
する形でわが国の主たる大企業で ISO 14001の導入が急
速に進んだのである。
開発着手から既に20 年を超え、初版発行と企業での
改正 14001は従来と同様、世界のどの地域でも、どの
適用が始まって15 年以上が経過した。当初から規格開発
ような業種でも、またどのような規模の組織でも適用でき
に携わった人々、企業で初めてEMSの構築を推進した
る “ミニマム・コア・スタンダード(最小限の中核となる
人々や、その認証審査を行った人々は既にほとんど退任
標準)
” であって、ベストプラクティスを規定しているわ
し、2 代目、3 代目へと世代交代が進んでいる。時間の経
けではない。ISO 14001は法令順守を越えて(Beyond
過の中で規格開発の意図や当初の熱気が徐々に風化し忘
compliance)自主的な取り組みを実行するための仕組み
れられてゆくのは致し方ないことであろう。しかし今回の
である。
全面抜本大改正に対処するうえで、ISO 14001とはそも
1993 年にスタートしたISO 14001 策定作業に初めから
そも何を目的として開発されたのか、改めてその原点を確
参画し、以来 20 年以上に渡ってこの規格について国際的
認しておく必要があるだろう。
に議論を続けてきた筆者にとっては、改正 14001は今後
ISO 14001は産業界が自ら必要不可欠な規格であると
20 年に渡って環境経営を推進するためのインフラとして
して開発を主導したものである。外圧で策定され、仕方
有効な機能を具備した規格になったと考えている。この
なく対応するという受け身のものでは決してない。この基
規格を適用する組織と、その認証機関が今次改正の意図
本的認識は今後とも決して忘れてはならない。
とその内容を正しく理解し、トップ主導による戦略的環境
TC207 設立以降、わが国産業界も経団連地球環境部
会の下に専門ワーキンググループを設置し、国内での議
論を深めるとともに国際会議への代表委員(ISOではエ
キスパートと呼ばれる)を産業界から多数派遣し、その
費用負担を含めて全面的な支援を行った。
1996 年 7 月、ISO14001の初版発行の2か月前、経団
連は “経団連環境アピール – 21 世紀の環境保全に向け
た経済界の自主行動宣言” を公表した。
この中で “環境管理システムの構築と環境監査” とい
うテーマが 4 大テーマの一つとして明記され、次のように
述べられている。
環境管理システムの構築と環境監査
環境問題に対する自主的な取り組みと継続的な改善を
担保するものとして、環境管理システムを構築し、これを
着実に運用するため内部監査を行う。さらに、今秋制定さ
れるISOの環境管理・監査規格は、その策定に当たって日
本の経済界が積極的に貢献してきたものであり、製造業・
非製造業を問わず、有力な手段としてその積極的な活用
を図る。
(環境アピールの全文は日本経団連のホームページに今
でも掲載されている)
経団連は1997 年から京都議定書によるわが国の削減
義務に貢献するため温室効果ガス削減の自主行動計画を
発足させ、自主的な取組みを実行する仕組みとしてISO
14001を位置付けている。経団連の環境アピールに呼応
18 電 機 2016・January
経営が推進されることを期待したい。
電機・電子業界の事業に関連する環境問題の国際標準化
‌
スマートシティー/スマートコミュニティー・インフラに関する
ISO 国際法準規格の概況について
ISO/TC268 SC1、IEC/TC111 国際議長
市川 芳明
1.はじめに
2015 年 9 月27日に、北京で「北京国際デザインウィー
◇
2.スマートコミュニティー・インフラ
標準化の成果
ク都市復興 2050シンポジウム」が開催され、その講演に
ISO TC 268 SC 1は、2012 年設立後、ほぼ 3 年目が
招待された。この会議に国連開発計画(UNEP)の方も
経過している。その間に参加国は20か国に増え、活動の
参加しており、つい先日SDGが合意されましたと発表の
種類も増えてきた(図2)
。アドホックグループ(AHG 2
中で述べていた。このSDGとは、Sustainable Develop-
とAHG 3)は2016 年に新しいWG(作業部会)に昇格
ment Goalsのことで、2015 年から2030 年までに世界で
することが見込まれている。WG 2は既に活動を開始し、
達成すべき目標を国連として合意したものである。今年
近々、最初の成果である技術報告書 ISO TR 37152「ス
は、過去の15 年間で取り組んできたMDG(Millennium
マートコミュニティー・インフラストラクチャ −開発と運
Development Goal)がほぼ達成された年でもあり、次
用の共通枠組み」が発行される予定である。
の15 年間の議論が進んでいた。MDGとの大きな違いは、
SC 1の中でも、最も古くから活動しているWG 1「評
MDGが貧困、飢餓、伝染病撲滅など途上国中心の基本
価指標」では、2015 年の5 月にISO TS 37151「性能評
的人権問題を解決することに主眼が置かれていたことに
価指標の一般原則と要求事項」を発行した。この規格は
対して、SDGはより発展した人類の将来課題を解決する
ことにシフトしたことである。
そのSDGには17 項目の目標があるが、その11 項目目
が、
「サステナブル・シティーとコミュニティー」である。
ISO/TC 268/SC 1
“スマートコミュニティー
インフラ”
ISO TC 268 SC 1「スマートコミュニティー・インフラス
ISO/TC 268/SC 1/TG 1
“ロードマップ”
ISO/TC 268/SC 1/AHG 2
トラクチャ」
(図1)における我々の標準化活動が国際的
“スマートコミュニティー
交通”
な大目標に整合していることになる。
ISO/TC 268/SC 1/AHG 3
“スマートコミュニティー
データ共有”
ISO/TC 268/SC 1/WG 1
“評価指標”
図 1 2015 年 6 月(英国グラスミア)の TC 268 SC1 WG 1
会合(筆者左端)
ISO/TC 268/SC 1/WG 2
“インフラ間の統合と
相互作用を
取り扱う枠組み”
図 2 TC ISO268 SC1 の内部構成
◇株式会社 日立製作所 知的財産本部 国際標準化推進室
特集:環境対応への国際標準化と最近の規制動向 19
使い方次第では将来の都市インフラ投資の「質の改善」
様々な分野の方々と会話を重ねてきた。筆者がお会いし
に重要な貢献が期待されるものであり、この記事でその
たオランダのロッテルダムの副市長は、
「我々がスマート
要点を解説したい。
シティーを目指すのは、情報通信技術が欲しいからでは
3.ICT を使いさえすればスマートと
言えるわけではない
ない。今後も靴下が乾いた状態でいたいということだ」と
いうメッセージを発信していた。つまり、オランダは海面
よりも土地が低く、気候変動と海面上昇のもたらす洪水
に対処できるインフラこそスマートだと言っているのであ
国際標準規格の重要な役割の一つは言葉や概念の定義
る。そして見逃せないのが鉄道の整備。その性能はICT
である。これまでスマートシティー、あるいはスマートコ
にも助けられていることは言うまでもないが、その他の技
ミュニティーという言葉が世界中で多用されてきたが、明
術の貢献が大きい。
確な定義はなされていない。我々も「シティー(都市)
」
日本では、スマートシティーは「環境配慮都市」を意
を定義するのはさすがに出過ぎたまねとわきまえ、
「イン
味する。都市の経済成長とそれに伴う環境負荷の増加を、
フラ」を定義することにした。
スマートな工夫で解消できている都市こそ、スマートシ
まず、インフラとは何を指すのかということが肝心だ。
ティーだという認識がある。単にITを使えばよいという
広く捉えると社会のルール(法律)などのソフトインフラ
ものではなく、
「持続的開発」
、つまりサステナビリティに
をはじめ、道路などの基礎構造物も「インフラ」であろう。
貢献することを必須としたのである。この考えが多くの方
しかし、ISO TS 37151では、①エネルギー、②輸送/
の共感を呼び、国際合意としてこの定義を獲得したと言っ
交通、③上下水道、④廃棄物/リサイクル、⑤ IT /デー
てよいだろう。
タ、の5つのインフラを基本的な対象としている。
結論として、上記のように、ISOによる公式の定義で
ISO TS 37151では、国際合意のもと、下記の定義が
は「持続的開発とレジリエンスに貢献するために」という
規定された。これはスマートシティーに関連する概念とし
キーワードと、
「高度な技術的性能を備えた」というキー
ての国際標準における定義としては世界で初めてのもの
ワードのANDを取ることになった。単に高度技術だけの
になる。
導入に熱心なあまり、都市問題(持続的開発とレジリエ
スマートコミュニティー・インフラストラクチャとはコミ
ュニティーの持続的開発とレジリエンスに貢献するために
設計され、運用され、維持される高度な技術的性能を備
えたコミュニティー・インフラストラクチャのことである。
ンス)を無視しがちな傾向にくぎを刺したかったからだ。
TC268 SC 1の副議長(万博士)が行政施策において
も規格化においても中核で活躍している中国では、
「知恵
城」をスマートシティー、
「電子城」をディジタルシティー
と呼んで概念的に区別しているとのこと。この区別はまこ
この定義のポイントは下線部である。歴史を振り返る
とに的を射ている。もちろん ICT 技術がスマートシティー
と、スマートシティーブームの台頭の裏には常にICT(情
を実現する有力な手段であることには違いが無いが、こ
報通信技術)がある。米国では「都市のIoT(Internet
れからの都市開発には目的と手段を混同しない慎重さが
of Things)がスマートシティーの全てだ」と言い切る
求められる。
IT 企業関係者もおり、欧州では技術総局(Directorate
General for Communications Networks、Content and
Technology)という、名称から見てもICTをプロモート
4.スマートシティーのインフラに
求められる14 のニーズ
する役所(日本では「省」相当)がスマートシティーの
テーマに巨額の予算をつぎ込んでいる。つまり、スマート
ISO TS 37151では、
「評価基準(Metrics)
」として、
シティーはICT 産業を拡大するための絶好の政策ツール
次の3つの視点と14のニーズに基づく評価の枠組みを下
として位置付けられてきたのである。
表 1のように規定した(日本語訳は筆者による。また、わ
しかし、
「これでよいのか?」という疑問がある。ここ3
年の間、ISOのこの委員会メンバーは都市のリーダーや
20 電 機 2016・January
かりやすさを優先して、具体例については意訳と選別を
行った)
。
電機・電子業界の事業に関連する環境問題の国際標準化
表 1 ISO TS 37151 のスマートシティー評価のための枠組みの
概要(網かけ部分は必須要求事項であり、追加は可能)
視 点
ニーズ
住民の視点
アベイラビリティ
(エンドユーザー、
受益者、消費者含む)
地域運営者の視点
環境の視点
具体例
時間的範囲
(24 時間運行など)
地域的範囲
人的範囲(住民の何割など)
アクセシビリティ
高齢者なども使える
アフォーダビリティ
手頃な価格設定
安全・安心
情報セキュリティと
プライバシー
物理的セキュリティ
安全性
サービスの品質
サービスの容量・規模
理解と利用の容易性
明朗会計
情報提供
運営効率
適切な設備規模
相互運用性
需要変動への適応性
経済効率
ライフサイクルコスト
投資効率
性能情報の入手可能性 利用者との情報交換
保守性
メンテナンスの適切性
メンテナンスの効率
レジリエンス
頑健性
冗長性
持続性
回復の迅速性
資源有効利用
エネルギー消費効率
資源効率
廃物量
気候変動の対策
GHG の排出量
汚染の防止
汚染物質の排出量
騒音・振動の発生
生態系保全
緑地の量
表面流出の制御と流域
健康および公衆衛生への
貢献
電気料金による取引を可能とし、ピーク時には単価を高
めることによって需要を抑えたり、リモートコントロール
によって家庭のエアコンの温度設定を自動的に変えたり
する技術)
。
特に、環境負荷と住民の利便性の相反性は重要な課題
である。2050 年には世界の人口の70%以上が都市に住
むと言われている。誰もが快適な生活を送りたいと願え
ば、現状の延長線上には地球が許容できる環境フットプ
リントは達成できないだろう。例えば、
「低炭素都市(Low
carbon cities)
」を実現することが人類生き残りの必須条
件である。公害問題や、資源、あるいは生態系の保全も
同様だ。スマートシティーのインフラはこのような目的を
実現するインフラでなくてはならない。
単なる便利さや経済性の追求からだけでは何も生まれ
てこない。ISO TS 37151は「 都 市 化(Urbanization)
」
という人類の発展に不可避な方向性に対する有益な指針
を与えた最初のISO 文書だと自負している。
5.今後のさらなる展開へ
ISO TS 37151は上記のような観点での国際合意の最
初のスタートだと考えている。今後、ISO TC 268/SC1
では、この規格をベースとして、次のような発展形が進
行中である。
ここで重要なことは、これらの3つの視点は必ずしも互
まず、インフラの成熟度モデルがある。14のカテゴリー
いに両立しないということである。むしろ相反するといっ
に基づき、都市のインフラをスマートシティーという観点
ても良いだろう。単純に住民の視点でよいものを提供し
から5 段階評価するための基準を定める。いわば、都市
ようとすれば、エネルギーや資源を使いすぎて環境視点
インフラの成績表を作るための指針である。
でマイナスとなるだろう。あるいはコミュニティー管理者
一方で、一つの種類のインフラに絞り込んだ規格も議
の都合を優先すれば、住民にとって単価の高すぎるもの
論されている。一つは「交通」である。
「シティー(都
や、過疎地で利用できない交通サービスのようなケース
市)
」のみならず「広域」のコミュニティーも含むので、
になるかもしれない。ともすれば、相反するこのような視
高速鉄道のようなものも視野に入る。しかし、単に「早
点をバランスよく満たす「工夫」が「スマート」と呼べる
い」というだけではなく、
「環境にやさしい」
、
「老人にや
条件だと規定しているのである。
さしい」など、地域の抱える都市問題に回答を与える交
例えば、電力インフラを例にとれば、
「スマートグリッ
通システムの要件を規定すべく頑張っている。いま着目
ド」というものがある。これは設備の規模を最小限にし
を集めている「自動運転」も、シーズからのアプローチ
て、電力事業者の経済効率を高めながらも、停電の頻度
(技術標準、安全基準、試験方法等)だけではなく、14
を減らして住民の利用できる度合いを高める特別な工夫
のニーズに照らし合わせてどのように導入したら、この技
である。そのために、ピーク電力を平準化する「Demand
術が都市化の問題に貢献できるかを示す文書ができれば
Response」というスマートな技術が導入された(リアル
有益な成果だろう。
タイムのテレメーターの導入によって時々刻々の異なる
また、都市計画、あるいは都市における水道、電気/
特集:環境対応への国際標準化と最近の規制動向 21
通信、地下鉄などの建設と運用時に、関係者で共有すべ
きデータがある。従来はインフラ毎に自治体の政策担当
6.活用方法への提言
者が異なることから、これらの情報が十分に共有されて
我々が ISOで作る規格が、単なる「読み物」であって
いなかったという指摘がある。調べてみるとどうやら世界
は意味がない。どのように活用していけばよいのかがカギ
共通の課題らしいということも分かってきた。実は中国政
となる。一方で、企業が大規模な事業を創出するための
府がこの点を問題視していると共に、改善のための施策
きっかけは社会課題である 1)。この二つをつなげることが
でも世界の先端を行っている。このために国際合意でき
ISO TC 268 SC1の活用方法の一つである。
るガイドラインを策定して、公共調達や途上国の都市開
政府の新しい政策のキーワードは「質の高いインフラ
発への指針を与えたいという、中国政府のメンバーから
の輸出促進」である。さらに2015 年末になって円借款制
提案があり、規格化を進める計画が進行している。
度を改革して新興国のインフラ整備をより支援しやすくす
加えて、筆者の私見として述べさせていただければ、
るという発表もあった 2)。いま、インフラ輸出に絡む ODA
重要な潜在的テーマがある。公式な活動としてはまだス
は旬を迎えていると言ってよいだろう 3)。しかし、ODAは
タートしていないが、クリーンなエネルギー供給である。
Untied(ひも付きでない)という制限がある。仮に(こ
この議論は前出のスマートグリッドと関連が深く、IEC
れも従来よりも割合を増やすと政府が言っている)STEP
Systems Committee on Smart Energy や IEC TC 111
(本邦技術活用条件)を適用するにしても、インドネシ
(環境規格)などとの密な協力関係が不可欠である。ス
アで供与されたジャカルタ都市高速鉄道事業の案件に
マートグリッドの規格化はどちらかというと、インターオ
見るように、何らかの公平な標準規格に準拠しているこ
ペラビリティの確立など技術的テーマが多いが、TC 268
とが望ましい。この時は、STRASYA(Standard urban
SC 1 や IEC TC 111と共同で作業すれば、地域の課題、
Railway System for Asia)という規格が使われた。ISO
とりわけ環境課題としてエネルギー供給を捉えることが
規格が使えればより望ましいことだろう。
できる。ベストプラクティスガイド等の発行により、後述
これからは、
「都市インフラ丸ごとのパッケージ」
、すな
する「質の高い電力インフラ」の概念の一つとして提唱
わちスマートシティー・インフラという大規模なODAが
できれば今後のビジネスに大きな好影響をもたらすだろ
可能になるのではないかと考えている。仮にそこまで大規
う。 図3は2015 年 9 月に 筆 者 が ISGAN(International
模ではなくても、住民/地域運営者/環境の3 視点から
Smart Grid Action Network)の国際会議において発表
バランスの取れた14のニーズを配慮することにより、鉄
したコンセプトである。現在、とりわけ火力発電所は温
道、水、電力、ICT、廃棄物/リサイクルなどの個々の
室効果ガスの発生やコミュニティーの大気汚染等を懸念
インフラを「質の高いインフラ」としてODA で支援する
して敬遠される傾向にあるが、IoT 技術などを応用すれ
ために、本規格 TS37151を活用していきたい。
ば、環境効率の高い運用と運転を実現するための方策が
あるはずだとの思いから提案した。今後このような議論を
<参考文献>
行う場を設けたいと考えている。
1)‌三宅 孝之、島崎「3000 億円の事業を生み出す『ビジ
ネスプロデュース』戦略」
、2015 年 5 月発刊、PHP 研
究所
2)‌
「円借款改革、インフラ支援」2015/11/21 付日本経済
新聞 夕刊
3)‌山田純一著「新興国のインフラを切り拓く 戦略的
ODAの活用」2015 年 11 月4日発刊、廣済堂出版
図 3 筆者が ISGAN 会合で提案した環境効率の高い発電プラン
トのアイデア(遠隔運用を含め、5 つの視点を定義している)
22 電 機 2016・January
環境問題を巡る国内外の動向と電機・電子業界の取組み
環境問題を巡る国内外の動向と電機・電子業界の取組み
一般社団法人 日本電機工業会 環境部
1.はじめに
いで決定され、更に、約束草案は国連・気候変動枠組条
約事務局にも提出された。
環境問題は、持続可能な社会の実現のために、地球
国際的には、12 月12日まで協議が行われた国連・気
的規模で解決すべき重要課題の一つである。電機・電子
候変動枠組条約パリ会議(COP21)において、世界の平
業界を取り巻く環境問題は日々多様化し、かつグローバ
均気温上昇を産業革命前と比較して2℃未満に抑えると
ルな対応が必要となっており、一般社団法人 日本電機工
いう(気候変動に脆弱な国々への配慮から、1.5℃以内に
業会(JEMA)では、生産プロセス、製品・サービスの
抑えることの必要性にも言及)全体目標に向けて、すべ
*1
両面から関連の他団体とも協力し(電機・電子 4団体)
、 ての国が参加して温室効果ガス排出量の削減等に取り組
鋭意取り組んでいる。
む「パリ協定」が採択された。
「パリ協定」は、各国が国
本稿では、環境問題を巡る国内外の政策動向に関連し
連に提出している2025 年/ 2030 年の排出量削減等の目
て、
「エネルギー・地球温暖化防止」
「化学物質管理」
「循
標を含め、2020 年以降、5 年ごとにそれを見直し・提出
環型社会構築」
「生物多様性保全」をハイライトし、業界
していく(その際、原則、各国はそれまでの目標よりも高
による自主的な取り組みを中心に、その進捗状況や課題
い目標を掲げる)こと、定期的な計測・報告と検証の仕
などを紹介する。
組みを設けることで、実質的に各国の取組みの遵守を促
(* 1 環境関係の委員会活動の中で、JEMA 取扱製品固有の課題を検討する
専門委員会〔環境技術専門委員会〕以外の取り組みは、JEMA の他、一
般社団法人 電子情報技術産業協会〔JEITA〕
、一般社団法人 情報通信ネッ
トワーク産業協会〔CIAJ〕及び一般社団法人 ビジネス機械・情報システ
ム産業協会〔JBMIA〕の電機・電子 4 団体が共同で関連委員会の活動を
運営している。なお、地球温暖化防止については、電機・電子 4 団体以外
の関連工業会も含め、6 団体〔+3 オブザーバ団体〕で電機・電子温暖化
対策連絡会を組織し、その活動を運営している。
)
2.エネルギー・地球温暖化防止への
取組み
す内容となった*2。日本政府は、同協定の採択を踏まえ、
2016 年春までに提出済みの目標を実行に移す「地球温暖
化対策計画」
、革新的エネルギー・環境技術の開発強化
に向けた「エネルギー・環境イノベーション戦略」を各々
策定する方針を発表し、年末から関係する審議会等での
議論を加速させ、その取りまとめの準備を開始している。
以上のように、エネルギー・地球温暖化防止への取組
みに、国内外で大きな柱が建ったことにより、中長期的
にその対応と共に掲げた省エネルギー等の目標の実現が
2.1 国内外の政策動向
問われる。その中で、産業部門の取組みとして、産業界
エネルギー・地球温暖化防止の問題については、昨年
(経団連及び傘下の加盟団体)は、京都議定書を踏まえ
(2015 年)
、国内外共に大きな進展があった。まず、国内
た自主取組み「地球温暖化防止自主行動計画(1997 年
では、7 月16日に「長期エネルギー需給見通し(2030 年
度~ 2012 年度)
」をさらに発展させ、既に、中長期的な
度のエネルギーミックス)
」
、翌 17日には、同見通しと整
取組みとして「低炭素社会実行計画(2013 年度~ 2020
合的となるように、技術的制約・コストなどを考慮して実
/ 2030 年度)
」
(以下、実行計画)を開始している。実
現可能性のある対策・施策や技術で積み上げた我が国の
行計画は、環境と経済が調和する低炭素社会の実現に向
地球温暖化防止「約束草案(2030 年度に2013 年度比▲
けて、その対策が現実的かつ効果的なものであるために
26.0%(2005 年度比▲ 25.4%)の水準にする)
」が相次
も、産業界自らが主体的かつ自主的な取組みを進め、イ
特集:環境対応への国際標準化と最近の規制動向 23
ノベーションを推進し、優れた省エネ・低炭素技術によ
し、現在、60グループ 285 社に参加いただいている。2
り地球規模で貢献することを表明し、政府に先んじて計
年間の取組み実績は図2の通りで、2014 年度の生産プ
画を推進する中で、電機・電子業界もその一翼を担って
ロセスのエネルギー原単位改善率は前年度比 3.82%の改
いる 。
善、目標の年平均 1%以上の改善を超過して達成する結
*3
(* 2 協定の発効は、批准した国が 55 か国以上に達し、それらの国の温室効
果ガス排出量が世界全体の 55%以上になることが条件。また、各国の現
時点での目標等を 2018 年に点検することも確認された。
)
(* 3 経団連及び傘下の加盟団体が取り組む「低炭素社会実行計画」は、2015
年 10 月現在で 57 業種〔団体〕
・企業がフェーズⅠ〔2020 年度〕の目標を
策定し、内、54 業種〔団体〕
・企業がフェーズⅡ〔2030 年度〕の目標も策
定している。これら各業種〔団体〕
・企業の取り組み実績は、経団連におい
てもフォローアップ結果として取りまとめられ、2013 年度実績〔2014 年度
調査結果〕から WEB サイトにて公表されている。http://www.keidanren.
or.jp/policy/vape.html)
果となった(基準年度〔2012 年度〕比では、10.63%の
改善)
。また、取組みのもう一つの柱である発電・家電製
品・ICT 製品・ソリューション等の、製品・サービスによる
CO 2 排出抑制貢献の結果は2014 年度において国内:591
万 t-CO 2、海外:1,116 万 t-CO 2(合計:1,707万 t-CO 2)
となり、生産プロセスからのCO 2 排出量 1,335万 t-CO 2 以
上の貢献を示す結果となった。このうち、生産プロセス
のエネルギー原単位改善率について、計画開始の直後で
既に大きく改善する結果となったが、省エネルギー投資・
2.2 電機・電子業界「低炭素社会実行計画」の
進捗と課題
取組みの継続といった努力に加え、リーマンショックや震
電機・電子業界「低炭素社会実行計画」は、
「電機・
災等の影響で生産活動が低調であった状況(~ 2012 年)
電子産業の活力を維持・向上しつつ、事業活動に伴う環
から、2013 年度は金融面の政府諸施策、為替レート改善
境負荷低減を推進すると同時に、ライフサイクル全体で
等もあり生産活動が急回復したこと、2014 年度もエネル
の環境配慮製品を創出する」という基本理念に則り、“も
ギー使用量が大きい「電子部品・デバイス分野」の生産
のづくり” のエネルギー効率改善と、お客様(電気電子
活動が好調を維持したことが、エネルギー原単位の改善
製品のユーザー)の使用段階でのCO 2 排出割合が大きい
を引続き牽引したものと考えている。
実行計画は中長期的なものでもあり、毎年度の進捗を
業界の特徴から、それら製品・サービスによる削減貢献
フォローする中で、業界としてはさらに参加いただく企
を重点取組みとして、図1の内容を推進している。
実行計画は2013 年度実績からフォローアップを開始
◇経団連
低炭素社会実行計画
※
業界
「低炭素社会実行計画」
重点取り組み
実行計画
(方針)
▶ライフサイクル的視点
による CO2 排出削減
▶革新的技術の開発
2013 年度から実行計画を開始
参加
◇電機・電子業界
▶国際貢献の推進
業を増やす努力を続けていくと共に、計画の期間中にお
●生産プロセスのエネルギー効率改善
-エネルギー原単位改善率年平均 1% ※※
<目標達成の判断>
フェーズⅠ
(2020 年度):基準年度 (2012 年度 ) 比で 7.73% 以上改善
フェーズⅡ
(2030 年度)
:基準年度 (2012 年度 ) 比で 16.55% 以上改善
●製品・サービスによる排出抑制貢献
-排出抑制貢献量の算定方法確立と、毎年度の業界全体の実績公表
-発電、
家電製品、ICT 機器及びソリューションの計 22 製品の方法論制定)
業界の取り組み内容の把握・公表
参加 業界共通目標へのコミットと進捗状況の報告
A社
B社
C社
図 1 電機・電子業界「低炭素社会実行計画」
(2013 年 1 月公表)
出典:電機・電子温暖化対策連絡会
※ 電機・電子温暖化対策連絡会の構成団体の内、電機・電子 4 団体(一般社団法人 電子情報技術産業協会、JEMA、一般社団法人 ビジネス機械・情報シ
ステム産業協会、一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会)が運営主体として取り組んでいる。
※※ 省エネルギー法に準拠した、活動量(生産高・個数・面積等)当たりのエネルギー使用量の改善を示す指標。目標達成を社会へのコミットメントとして推進。
24 電 機 2016・January
環境問題を巡る国内外の動向と電機・電子業界の取組み
実質生産高
エネルギー原単位
参加企業で統一した活動量
(実質生産高)当たりの
エネルギー使用量
指数
100
電機・電子業界
エネルギー原単位
の推移
省エネ法指標
エネルギー原単位
年平均約3% 改善
2013 年度
年平均約2% 改善
80
7.08% 改善
(12 年度比 )
年平均約1% 改善
自主行動計画
(1997 ~ 2012 年度)
1997
2000
2002
2004
2006
2014 年度
3.82% 改善
(13 年度比 )
10.63% 改善
(12 年度比 )
60
1990
各社が省エネ法で申請した
活動量
(生産高・個数・面積等)
当たりのエネルギー使用量
目標
( 年平均 1% 改善 )
7.73% 改善
低炭素社会実行計画
(2013 ~ 2020 年度)
2008
2010
2012
2012
2013
2014
2020 年度
出典:電機・電子温暖化対策連絡会
図 2 電機・電子業界「低炭素社会実行計画」-生産プロセス エネルギー原単位改善率の推移-
いて、生産プロセスの目標も含めて適切な内容となるべ
セスの明確化、適合証明のためのCEマーキング貼付義
くP-D-C-Aを回しながら、実効性と透明性のある計画を
務等が盛り込まれた。電機・電子業界では、関連 4団体
推進していくことが課題である。実際、実行計画は、政
の専門委員会を中心として対応に注力してきたが、まず、
府が 2017 年春までに策定する新たな「地球温暖化対策
制限物質の全ての適用除外用途が原則 2016 年 7 月に廃
計画」にも組み込まれ、産業部門の取組みとして、その
止されることを受けて、欧州の関連工業会とも連携して、
進捗は政府の関係審議会等でも毎年チェックされ、今後、
継続希望 5 項目(特殊目的ランプ中の水銀、合金中の鉛、
より厳しくフォローアップされることになる。電機・電子
高融点はんだ中の鉛、電子部品中の鉛、ガラス/フィル
業界には、事業の成長と環境貢献の両立を図り、グロー
タ中の鉛に関連する内容)の延長を2015 年 1 月に申請し
バル規模で地球温暖化防止に積極的に取り組むとした実
た*6。また、6 月には、新たにフタレート類 4 物質(DEHP、
行計画について、具体的にその努力の内容を社会へ説明
BBP、DBP、DIBP)を制限物質に追加することが官報
していくことが求められる。多くの課題はあるものの、引
で公示された(2019 年 7 月より制限開始。このうち、カ
き続き、運営を担う工業会の関係者や参加いただいてい
テゴリー 8,9は2021 年)が、これらは可塑材で、塩ビ
る会員企業の協力を得て、着実に歩を進めていく所存で
ケーブル等で使用される。電気・電子業界からは、従前
ある。
に意見提出を行い、制限開始前に上市されたスペアパー
3.化学物質管理への取組み
ツは適用対象外となった。今後は、代替に関する管理上
のリスク情報をサプライチェーンに公開し、注意喚起を
行っていくことが課題である。その他、REACH 規則にお
3.1 製品含有物質に係る国内外の政策動向と
業界の取組み
けるSVHC(高懸念物質)や、中国 RoHS 他各国のRoHS
規制の動向もフォローが必要で、電機・電子業界として
*4
、REACH 規則*5
欧州の改正 RoHS 指令(RoHS Ⅱ)
は、欧州委員会へは制限物質追加に係る科学的根拠に基
や、いわゆる中国 RoHSなど、製品に含有する化学物質
づく選定を、
各国のRoHS 規制へは規制内容の国際整合を
に関する法規制はグローバルに厳しさを増しており、電
求めるロビー活動を展開している。
機・電子業界においてもより一層の対応強化が求められ
ている。
もう一つ、2015 年における大きな動きとして、国際的
*7
な「水銀条約(水銀に関する水俣条約)
」の国内担保
2011 年に施行された欧州の改正 RoHS 指令では、製品
措置に関する対応がある。政府は、水銀条約の批准に向
範囲の順次拡大、2014 年までの第 1 次制限物質見直しと
けて国内法制の準備を進めてきたが、2015 年 3 月に「水
その後の制限物質追加の規定、適用除外項目の更新プロ
銀汚染防止法」を閣議決定し、6 月にそれが国会で可決・
特集:環境対応への国際標準化と最近の規制動向 25
成立した。さらに、産業構造審議会/中央環境審議会合
同会合での第二次答申案パブリックコメントを経て、批
3.2 事業所で扱う揮発性有機化合物(VOC)の
排出抑制
准に必要な政令等も11 月には閣議決定された。表 1に、
電機・電子 4団体では、事業所で扱う揮発性有機化合
合同会合による第二次答申案を踏まえた我が国における
物(VOC)の排出抑制に関する自主的取組みを進めてい
特定水銀使用(添加)製品の製造及び輸出入の禁止に係
る。2010 年度までに取組みを進めてきた自主行動計画で
る内容の概略を示す(国内法においては、一部で、条約
は、基準年度(2000 年度)からのVOC 排出量を2010
からの基準深掘や廃止期限の前倒しあり)
。電機・電子
年度に3 割削減することを目標として取り組み、実際に、
業界としても、この間、関係省庁からのヒアリングや審議
5 割強の削減を達成することができた。電機・電子業界
会等の場でも意見発信をするなどの対応に努めてきたが、
では、2013 年度に新たな排出抑制の方向性として、
「2015
政府は、更に、今後の検討課題として、水銀使用
(添加)
製
年度に少なくとも2010 年度比で悪化しない」とするこ
品の適正な分別回収のための方策を検討するとしている。
とを自主的取組みとして会員企業へのフォローアップ調
今後、関係する業界には、水銀使用(添加)製品の表
査を継続しているが、2014 年度実績は使用量:92,724t
示ガイドラインの策定などが要請される見込みで、それ
(前年比▲ 1,968t)
、排出量:7,988t(前年比+11t)とな
を踏まえた合同会合による第三次答申案が 2016 年春に取
り、2010 年度の排出量以下の水準を維持することができ
りまとめられるスケジュールになっている 。
ている(図3)
。VOCの排出は、主に塗装・洗浄工程が
*8
(*4 RoHS 指令:DIRECTIVE 2011/65/EU on Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment)
(*5 REACH 規 則:REGULATION〔EC〕No 1907/2006 on Registration、
Evaluation、Authorization and Restriction of Chemicals)
(*6 延長申請を既に欧州委員会へ申請中であるが、除外延長の決定は 2016
年 3 月頃になる見込み。除外延長を獲得した場合、最長で 5 年の継続〔項
目の内容により延長期間も異なる〕が、今回、延長の申請がなかった除外
用途は官報公布後 1 年~ 1 年半後に廃止される。
)
(*7 水銀条約〔水銀に関する水俣条約〕は、2013 年 10 月に、熊本で開催さ
れた外交会議で採択され、水銀の一次採掘から貿易、水銀添加製品や製
造工程での水銀利用、大気への排出や水・土壌への放出、水銀廃棄物に
至るまで、水銀が人の健康や環境に与えるリスクを低減するための包括的
な規制を定める条約。2016 年の条約発効を目標としている。
)
(*8 産構審化学物質政策小委員会制度構築 WG/ 中環審水銀に関する水俣条
約対応検討小委員会合同会合の審議資料は WEB サイトに公開されてい
る。http://www.meti.go.jp/committee/gizi_1/31.html#seido_wg)
全体の約 5 割を占め、2000 年度比で約 7 割を削減してお
り、会員企業の努力が伺える。こうした産業界の顕著な
努力がみられるものの、政府の審議会において、光化学
オキシダント環境基準達成率は依然として極めて低水準
にあることが報告されている。電機・電子業界としては、
経団連や他の業界とも連携して、政府に対して、引き続き、
産業界の努力は適切に評価いただくことを要望すると共
に、産業界からの排出以外の他の要因分析や対策の早急
な検討が必要と申し入れている。これに対して、環境省
では、2018 年度までに科学的知見収集と生成機構解析
を行うとしている。
表 1 特定水銀使用(添加)製品の製造・輸出入に係る規制の概要
出典:JEMA 理事会資料
■特定水銀使用
(添加)
製品の製造・輸出入:2020 年までに廃止
品目
(水銀使用
(添加)製品)
条約上の適用除外
日本の基準深掘
日本の廃止期限
乾電池
なし
(添加禁止)
-
2017 年(前倒し)
ボタン形酸化銀電池
水銀含有量 2%未満
1% に深掘り
2017 年(前倒し)
ボタン形空気亜鉛電池
水銀含有量 2%未満
なし
2017 年(前倒し)
(例)
ボタン形電池
ランプ類
(HPMV 以外) コンパクト蛍光ランプ (CFLs)
⇒水銀含有量 5mg 以下で 30W 以下
電子ディスプレイ用冷陰極蛍光ランプ (CCFL)・外部電極蛍光ランプ
(EEFL)*電球の長さと水銀含有基準が別途あり
⇒実現可能な代替製品がないもの
高圧水銀蒸気ランプ
(HPMV)
スイッチ・リレー
一般照明用以外
(一般用は添加禁止)
なし
(LED への
転換に注力)
2017 年(前倒し)
なし
2020 年(条約通り)
なし
2020 年(条約通り)
(例)
ランプ類(HPMV 以外)
高精度を要求される含有量 20mg までのもの並びに
実現可能な代替製品がないもの
※既存の水銀使用(添加)製品はリストアップされ、同リストに無い新たな用途の水銀使用(添加)製品は、健康保護・環境保全に寄与する製品以外は開発禁止、評価と届け出が必要
26 電 機 2016・January
環境問題を巡る国内外の動向と電機・電子業界の取組み
な削減を達成(1990 年度実績から約 91.5%減)
4.循環型社会構築の取組み
・既に大幅な削減を達成し、引き続き、業種の特性等
に応じて循環型社会形成に向けて取組みを推進して
4.1 循環型社会形成推進基本計画の進捗点検
いくが、今後の見通しについては以下の課題もある。
政府は、循環型社会形成推進基本法に基づき、循環
型社会の形成に関する施策の総合的かつ計画的な推進を
– 現在の技術や法制度の下では、産業廃棄物の最終
図るために定めるものとして、
「循環型社会形成推進基本
処分量のこれ以上の削減が難しい業種が多い。
計画」
(以下、基本計画)を閣議決定している。基本計
– 企業が廃棄物処理やリサイクルをより効率的に取
画は、概ね 5 年ごとに見直しを行うとされており、直近で
り組みやすい環境整備に向けて政府による規制改
は、2013 年 5 月に第三次基本計画が閣議決定され、環境
革が必要。
省の中央環境審議会循環型社会部会で施策の進捗状況
– 過度なリサイクルの推進はエネルギーコストを増
を点検している 。第三次基本計画では、
「リデュース・
加させる傾向があり、地球温暖化対策との関係に
リユースの取組強化」
「有用金属の回収」
「安心・安全の
留意すべき。
取組強化」
「3R国際協力の推進」を柱として、資源生産
また、電機・電子 4団体は、家電製品を例に環境
*9
配慮設計の取組みとして以下の内容を説明した。
性を始めとする物質フロー目標の中で、最終処分量につ
いて、2015 年度に23 百万 tとする現行目標(2000 年度:
(2)家電リサイクル等の取組みにより、自己循環システム
‌
56 百万 t、2007 年度:19 百万 t)に加え、更に、2020 年
の確立(家電製品等由来の再生資源の高付加価値化)
度に17 百万 tとする目標を設定している。
による “実効性ある環境配慮設計” の推進を目指し、
2015 年度もその進捗状況を点検するために産業界にも
製品アセスメントマニュアル開発 、資源再利用指標
ヒアリングが行われ、経団連、日本建設業連合会、電機・
やプラスチック部品・識別表示のJIS 規格化、B to
電子 4団体、全国清涼飲料工業会がその取組み内容を説
C の環境情報提供の仕組み作りに取り組んでいる。
明した。経団連からは、経団連及び傘下の加盟団体で推
進している産業廃棄物最終処分量削減等の自主行動計画
の取組みと進捗状況が説明された。
コメントを経て2016 年春を目途に最終的な取りまとめが
(1)産業界全体の産業廃棄物最終処分量は2013 年度実
績で約 484 万 t。
・2000 年度実績(約 1,822 万 t)から約 73.5%と大幅
30
排出量(千t)
実績
55%削減
24,984t
20
11,345t
11,024t
55%
2005 2006 2007 2008 2009
年度 年度
年度 年度 年度
55%
2010
年度
10,373t
58%
●2014年度実績
使用量:92,724t(前年比▲1,968t)
排出量:7,988t(前年比+11t)
塗装工程・洗浄工程が排出量全体の5割を
占め、2000年度比で約7割を削減している。
8,610t
66%
11,024t
7,977t 7,988t
68% 68%
新目標
45%
目 標
10
(*9 循環型社会形成推進基本計画とその進捗状況の点検結果は、環境省の
WEB サイトに公開されている。http://www.env.go.jp/recycle/circul/keikaku.html)
新たな目標
2010年を
超えない
17,489t
13,635t
33% 33%
行われるスケジュールとなっている。
目標
30%削減
18,018t
16,843t
16,692t
28%
ヒアリング結果を含む点検結果は、今後、パブリック
2011 2012 2013 2014 2015
年度 年度
年度 年度 年度
2000
年度
2014
年度
塗装
洗浄
接着
その他
24,984t
7,988t
10
20
排出量(千t)
出典:電機・電子 4 団体
図 3 電機・電子業界 揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制自主的取り組み - VOC 排出量の推移-
特集:環境対応への国際標準化と最近の規制動向 27
4.2 産業廃棄物最終処分に係る自主行動計画の
進捗と今後の目標
電機・電子 4団体は、経団連及び傘下の加盟団体と共
5.生物多様性保全の取組み
5.1 国内外の政策動向
に循環型社会形成に向けて産業廃棄物最終処分等に係る
2010 年の「生物多様性条約第 10回締約国会議(CBD-
自主行動計画を推進している。2015 年度に「最終処分
COP10)
」では、
「生物多様性条約戦略計画 2011-2020
量を3.6 万 t 以下、最終処分率を2%以下」とする目標に
(通称、愛知目標)
」が採択された。その目標の達成に
対して、2014 年度の実績は図4に示す通り、最終処分量
は、国・政府だけではなく地方自治体や研究機関、企
が 1.5 万 t、最終処分率が 1.2%となり、目標を達成できる
業、そして市民団体などあらゆる層が活動することが求
見込みにある。経団連では、引き続き、自主行動計画を
められており、我が国でも「生物多様性国家戦略 2012
2016 年度以降も継続し、政府の基本計画にも呼応して
-2020」において愛知目標の達成に向けたロードマップ
2020 年度目標を設定する方向で検討を進めているが、電
が示されている。一方で、愛知目標の目標年である2020
機・電子 4団体においても、今年度に関連委員会等で検
年まで残すところ5 年となり、2014 年のCBD-COP12で
討した結果、新たに2020 年度に向けた目標を以下の内容
は、愛知目標の達成状況の中間報告として、地球規模生
とすることを決定した(表 2)
。
物多様性概況第 4 版(GBO4)において、
「全ての目標で
電機・電子業界も、実際、最終処分量等は既に大幅な
新たな行動が生まれているが、目標達成には不十分」と
削減を実現しているが、新たな目標の設定を踏まえ、引
いう報告がされている。GBO4の報告では、現状の取組
き続き、会員企業の協力を得て、事業活動の効率向上を
みの延長では目標の達成は難しいとされ、更なる行動推
目指した施策の実施と、資源循環の質を高めていく努力
進のための優先行動リストも取りまとめられている。その
を継続していく所存である。
他、COP10で同時に採択された「遺伝資源へのアクセス
表 2 電機・電子業界 産業廃棄物の排出抑制自主行動計画
- 2020 年度に向けた新目標の内容-
産業廃棄物最終処分量
2020年度見込み値
2020年度目標値
2.5 万 t
(2000年度実績の14万 t から約82%の削減)
1.8%
(2000 年度実績の 6.1%から約 30%の削減)
出典:電機・電子 4 団体
最終処分量
(万t)
する議定書(通称、名古屋議定書)
」について、我が国
は2012 年 9 月に環境省が「国内措置のあり方検討会」を
2.6 万 t
産業廃棄物最終処分率(最終処分量 ÷ 発生量 ×100)
2020年度目標値
と利益配分(ABS:Access and Benefit Sharing)に関
設置して以降、批准を視野に入れた検討を継続して議論
している。
こうした中で、2015 年 度の 動きで 特 筆すべきこと
としては、環境マネジメントシステムの国際標準規格
棒:最終処分量(万t)
最終処分率
(%)
折線:最終処分率(%)
2000年度実績
72%削減を目標
基準
年度
出典:電機・電子 4 団体
図 4 電機・電子業界 産業廃棄物の排出抑制自主行動計画 -産業廃棄物最終処分量等の推移-
28 電 機 2016・January
環境問題を巡る国内外の動向と電機・電子業界の取組み
ISO14001の2015 年改正版が発行される中で、
「生物多
支援として、名古屋議定書批准を想定した影響因子の
様性及び生態系の保護」が、5.2 環境方針等の検討項目に、
特定、評価検討のためのプレスタディや改正 ISO14001
「汚染防止」
、
「気候変動」
、
「持続可能な資源の利用」と並
んで盛り込まれたことが挙げられる。
における生物多様性評価に係る有識者を招聘してのセ
ミナー開催も実施している。生物多様性保全の取組み
は、電機・電子業界の中でも、実際の事業活動との関係
5.2 業界における生物多様性保全への取組み
性がわかりづらく、目標設定が難しいなどの声も多く聞か
電機・電子 4団体では、業界の内外で生物多様性保
れていたが、行動指針の取りまとめにより、会員企業が
全への取り組みについて普及啓発を推進する中で、2011
取り組む際に参考としていただけるように、ようやく業界
年~ 2014 年にかけて、生物多様性保全事例集の作成・
としての方向性を提示することが出来たものと考えている。
公開、生物多様性保全に関する社内教育・啓発ツール
LSB や行動指針は、
「国連生物多様性の10 年日本委員会
」が推奨する連携事業としても認定され、環
「Let's Study Biodiversity(LSB)
」の開発・公開、さらに、 (UNDB-J)
愛知目標と電機・電子業界の関連性評価を踏まえた「電
境省「事業者団体向取組ガイドライン」案の中でも取組
機・電子業界における生物多様性の保全にかかわる行動
みのモデル事例として非常に高い評価をいただき、電機・
指針」を策定した*10(図5)
。
電子業界のプレゼンスも大きく向上している。引き続き、
2015 年度は、この行動指針に基づき、電機・電子業界
としての進捗状況を把握するため、会員企業へのアンケー
ト調査を実施し、合わせて会員企業の取組み事例データ
ベース構築を検討するなど、ボトムアップ活動の充実を
めざした取組みを継続している。また、フロントランナー
会員企業各社と連携を図りながら、電機・電子業界とし
て今後も更なる取組みの推進を図っていく所存である。
(*10 事例集、教育・啓発ツール「Let's Study Biodiversity(LSB)
」
、生物
多様性保全行動指針はいずれも JEMA の WEB サイトに公開している。
https://www.jema-net.or.jp/Japanese/env/biodiversity.html)
出典:電機・電子 4 団体
図 5 愛知目標と電機・電子業界の関連性を踏まえた生物多様性保全行動指針
※行動指針は愛知目標 20 項目の中から当業界との関連が高く積極的に推進する項目として、目標 1、4、5、8、9、11、14、
19 の 8 項目を抽出するとともに、それぞれの目標に対して会員企業が貢献していくための方向性を取りまとめている。
特集:環境対応への国際標準化と最近の規制動向 29
ハイライト
システム コントロール フェア 2015
開催結果報告
システム コントロール フェア実行委員会
コンセプトとして打ち出した。
1.はじめに
今回も前回と同様に「計測展 2015 TOKYO」と西館全
第 18 回「システム コントロール フェア(SCF)2015」
ホールを使用して、同時・同一会場での開催となり、
「第
は、一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)と一般社団
4 次産業革命 -つながる化」をコンセプトに IoT,M2M を
法人 日本電気制御機器工業会(NECA)の共催により、
意識して開催した。
経済産業省、環境省、東京都、日本商工会議所、日本貿
「計測展 2015 TOKYO」との共同企画としては、“つな
易振興機構、東京ビッグサイトのご後援、一般社団法人
がる化” や “IoT/M2M” をテーマにした基調講演会、特
日本機械工業連合会をはじめとする多数の関連団体のご
別講演/セッションをはじめ、有力企業によるスポンサー
協賛を得て、2015 年 12 月 2 日 ㈬ から 4 日 ㈮ までの 3
ドセッション、出展各社のキーパーソンによる出展者セミ
日間、東京ビッグサイトにて開催した。
ナーなど 119 の講演会、セミナーを開催した。
今回は、2014 年 4 月の消費税率引き上げによって一
また、西館 1 階のアトリウムでは女子アナとリケジョ
時的に消費マインドが低下したが、出展募集時期の 2014
(理系女子)によるトークショー、最新ロボット紹介など
年後半にかけて回復し、2015 年は円安基調や原油安など
を背景に企業収益が改善したことにより設備投資が持ち
出展各社のゲストによるトークショーを毎日上演した。
さらには、主催者による主催者特別展示として「第 4
直し、日本経済は緩やかな回復基調にある中での開催と
なり、SCF 過去最高となる 178 社・団体、787 小間のご
出展をいただき、来場者(出展者を除く)も前回を大幅
に上回り、各社ブースへの来場者数も増加して盛況裡に
終了した。
今回のシステム コントロール フェア(SCF)は、
『技
術がつながる、未来が拓ける、ものづくりイノベーション』
をテーマに掲げ、2014 年 12 月の開催発表会において、
欧米の製造業回帰を今後の日本の産業界の行方を左右す
る大きな潮流と捉え「第 4 次産業革命-つながる化」を
開会式テープカット
30 電 機 2016・January
津田会長挨拶
次産業革命-つながる化」へ向けた日本の政策や世界の
潮流について分かり易く解説した。
⑤ 会 場:東京ビッグサイト(有明:東京国際展示場)
西 1・2・3・4 ホール、アトリウム
その他には、次世代を担う学生による展示発表、最新
⑥ 主 催:一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)
のオープンネットワーク機器・技術・サービスの集中展
一般社団法人 日本電気制御機器工業会(NECA)
示ゾーン、グローバル化の情報発信・交換・共有の場と
⑦ 後 援:経済産業省、環境省、東京都、日本商工会
して海外パビリオンの併催事業を開催した。
なお、東ホールで同時に開催される「2015 国際ロボッ
議所、日本貿易振興機構(ジェトロ)
、東京ビッグサイト
⑧ 協 賛:以下の 24 団体(順不同)
ト展」との相互入場を実施し、ロボット展から多くの皆様
一般社団法人 日本ロボット工業会
にご来場いただいた。
一般社団法人 日本産業機械工業会
一般社団法人 日本工作機械工業会
初日の開会式は計測展 2015 TOKYO と 2015 国際ロ
一般社団法人 日本電気計測器工業会
ボット展の 3 展合同で開催し、来賓に経済産業大臣政務
一般社団法人 日本電気協会
官 星野剛士殿を迎え、JEMA 及び一般社団法人 日本ロ
一般社団法人 日本計装工業会
ボット工業会(JARA)津田会長(株式会社 安川電機)
、
一般社団法人 電気学会
NECA 曽禰会長(アズビル株式会社)
、一般社団法人 日
一般社団法人 日本電子回路工業会
本電気計測器工業会(JEMIMA)小野木会長(アズビル
一般社団法人 日本配電制御システム工業会
株式会社)
、システム コントロール フェア実行委員会 川
一般社団法人 日本食品機械工業会
野会長(株式会社 日立製作所)他 13 氏によりテープカッ
一般社団法人 日本機械工業連合会
トが行われた。
一般社団法人 電子情報技術産業協会
また、初日の 17 時 30 分から東京ビッグサイト レセプ
一般社団法人 日本機械学会
ションホールにて、2015 国際ロボット展、計測展 2015
一般社団法人 日本自動車工業会
TOKYO の 3 展合同によるレセプションを開催し、多くの
一般社団法人 日本鉄鋼連盟
ご来賓、出展者様の出席を得て盛大に開催した。
一般社団法人 日本化学工業協会
一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会
公益社団法人 計測自動制御学会
公益社団法人 自動車技術会
一般財団法人 製造科学技術センター
一般社団法人 研究産業・産業技術振興協会
一般財団法人 省エネルギーセンター
システム制御情報学会
日本液晶学会
レセプション鏡割り
⑨ 入場料:一般 1,000 円 学生 無料
⑩ 展示規模:178 社 787 小間
2.本フェアの概要
(1)SCF2015 開催概要
(一般:176 社 785 小間、新聞雑誌:2 社 2 小間)
⑪ 展示内容:最適な制御システムやソフトウェアからコン
ポーネント技術まで、ものづくりの最先端技術が出展
①名 称:システム コントロール フェア 2015(第 18 回)
● ICT 全般
②テーマ:
『技術がつながる、未来が拓ける、ものづくり
● IoT/M2M
イノベーション』
●ビッグデータ活用
③ 統一テーマ:
『オートメーションと計測の先端技術が集う』
● FA コントロールシステム・機器
④ 会 期:2015 年 12 月 2 日 ㈬ ~ 4 日 ㈮ 3 日間
●通信機器・情報伝送装置
[ハイライト]
31
ハイライト
⑤ 計測展 2015 TOKYO との共同企画として「学生テク
● FA 用ソフトウェア・コンフィグ
●自動認識装置・自動検査装置
ニカルアカデミー研究発表」を設け、未来を担う学生
●駆動制御装置・アクチュエータ
の研究発表や業界研究の場を提供した。
⑥オープンネットワークゾーンや海外パビリオンを設け、
●センシングシステム・機器
来場者の利便性向上とグローバル化を図った。
●制御コンポーネント
⑦ 2015 国際ロボット展と来場者の相互入場など連携を強
●電源装置・機器
化して、来場者の増員及び出展効果の向上を図った。
●配電および分電装置・機器
●安全制御機器
●省エネ・新エネ・環境関連機器
(3)来場者数
今回、計測展と同時・同一会場での開催、ロボット展
●その他関連システム・機器
との相互入場を実施したことから海外を含め多くの来場
者を迎えることができた。
(2)主な取組み
来場者数
① 2014 年 12 月、欧米の製造業回帰を世界の大きな潮流
来場者数
前回来場者数
曇り
12,296 人
8,984 人
12 月 3 日 ㈭
雨のち曇り
16,678 人
11,925 人
12 月 4 日 ㈮
晴れ
20,510 人
15,862 人
49,484 人
36,771 人
と捉え「第 4 次産業革命-つながる化」をコンセプト
として打ち出した。
② 2015 年 5 月、
「第 4 次産業革命が向かう先」と題して
プレセミナーを開催、会期中は主催者特別展示を設け、
開催日
天 候
12 月 2 日 ㈬
合 計(出展者を除く)
IoT・M2M の情報の発信を行った。
(バーコードによる集計) (バーコードによる集計)
③ SNS 等 Web 媒体を積極的に活用、
「第 4 次産業革命
-つながる化」の情報発信を行った。
(4)主な出展内容
④ 各界の第一人者による各種講演やセッション、トーク
①「現場と経営」
「機器と機器」
「人と機械」
「機器と情報」
ショーを、計測展 2015 TOKYO と合同で企画して来
場者の増員を図った。
など“つながる”“つなげる”を実現する各種ソリューション
② IoT、Industry4.0、Industrial Internet など新しいもの
づくりの実現シナリオ・ソリューション
その他 2.3%
職種分類
学生 0.8%
官公庁・団体 0.9%
研究・開発
未回答 0.6%
情報システム 2.7%
設計
生産技術
経営・管理
8.1%
宣伝・企画
7.6%
研究・開発
14.5%
製造
資材・購買
品質管理・検査
設計
16.6%
営業・販売
宣伝・企画
営業・販売
30.0%
経営・管理
生産技術
8.3%
情報システム
官公庁・団体
その他
学生
製造 3.8%
資材・購買 2.1%
品質管理・検査 1.8%
職種別別来場者内訳
32 電 機 2016・January
未回答
③自動化・品質管理・保全管理等を支援する設備管理・
n=3342
点検管理最新ソリューション及びオープンな産業用
0
10
20
30
40
50
FA コントロールシステム・機器
ネットワーク技術
通信機器・情報伝送機器
21.9
FA 用ソフトウェア・コンフィグ
④ 産業用モータドライブ・サーボシステム・パワーシステ
11.3
自動認識・自動検査装置
ムの最新技術・製品
13.8
駆動制御装置・アクチュエータ
15.2
センシングシステム・機器
11.1
制御コンポーネント
(5)講演会/セミナー
13.3
電源装置・機器
講座数(SCF /計測展合計)
:119 講座(前回 17 講
座)
聴講者数:7,607 人(前回 2,432 人)
8.9
配電及び分電装置・機器
7.2
安全制御機器
6.6
省エネ・新エネ・環境関連機器
その他関連システム・機器
今回は、基調講演(1 講演)
、特別講演(3 講演)
、特
17.7
2.2
設計・製造ソリューション
別セッション(1 セッション)
、技術講演会(10 講座)を
7.5
ICT 全般
5.6
IoT/M2M・ワイヤレス
はじめ、新たにスポンサードセッション、テーマセミナー、
AR
IoT セッションを行った。
14.9
1.2
ビッグデータ活用
その他
さらに出展者セミナーは前回を大幅に上回るセミナー
無回答
数になった。
60
54.8
6.3
0.7
7.1
来場者アンケート結果:興味のあった展示品(複数回答)
講演会プログラム SCF2015 関連主な講演プログラム
講演名
基調講演
講演者
日立製作所 執行役副社長 情報・通信システムグループ長 兼
情報・通信システム社社長
齊藤 裕 氏
閣参事官 栁島 智 氏
講演テーマ
現場と経営・社会をつなぐモノづくりの革新
−日立が考える第 4 次産業革命−
特別講演
内閣官房 内閣サイバーセキュリティセンター内 特別講演
東京大学大学院 経済学研究科 ものづくり経営研究センター
特任研究員 吉川 良三 氏
日本型ものづくり第 4 次産業革命
~日本産業復活のカギは IoT ~
特別セッション
法政大学 未来調達研究所
武州工業 第 4 次産業革命で工場が変わる、
社会が変わる
特別講演
日本 GE IoT セッション
ドイツ電気・電子工業連盟(ZVEI)
Automation Division Managing Director Gunther Koschnick 氏
Industrie. 4.0 は、バリュー・ネットワークを
形成する
IoT セッション
Industrial Internet Consortium
Chief Technical Officer Stephen Mellor 氏
Industrial InternetConsortium のお取組み・
製造業をとりまく最新事情
テーマセミナー
IEC/TC65 国内委員会+
日本電機工業会 スマートマニュファクチャリング特別委員会
Industrie 4.0 Smart Manufacturing
ワークショップ
テーマセミナー
日本電機工業会 スマートマニュファクチャリング特別委員会
日本電気制御機器工業会 第 4 次産業革命検討ワーキンググループ
製造業の将来像検討の中間報告
テーマセミナー
横河電機 MK 本部 知財・標準化戦略センター
IEC SG8 日本代表
小田 信二 氏
SCF 技術講演会
東芝 技師長 社会インフラシステム社
高橋不二男 氏
SCF 技術講演会
明電舎 研究開発本部 基盤技術研究所 SCF 技術講演会
アズビル アドバンスオートメーションカンパニー マーケティング部
制御管理 2 グループ グループマネージャー 豊田 英輔 氏
センサー、コントローラーの新しい方向性/
産業用製造装置向け診断パラメータの創出
SCF 技術講演会
富士電機 技術開発本部 技術統括センター 技術戦略部 主席 小高 秀之 氏
富士電機のワンストップ IoT ソリューション
SCF 技術講演会
三菱電機 名古屋製作所 FA システム一部 次長 可知 祐紀 氏
iQ Platform で繋ぐ Factory Automation
SCF 技術講演会
IDEC システムズ&コントロールズ アグリシステム部 部長 小川 隆宏 氏
オートメーション / システム化技術による
環境保全型農業の実現に向けて
SCF 技術講演会
パナソニックデバイス SUNX センシングコントロール事業部 商品企画部
部長 田中 陽一 氏
PLC における情報系アプリケーション強化
について
SCF 技術講演会
安川電機 技術開発本部 開発研究所 パワーエレクトロニクス技術部
部長 原 英則 氏
アンプ一体モータを実現する要素技術
SCF 技術講演会
オムロン コントローラ事業部 開発センタ コントローラ開発部
部長 宗田 靖男 氏
SYSMAC の進化が制御を変える。
SCF 技術講演会
日立製作所 インフラシステム社 大みか事業所 経営戦略本部
担当本部長 入江 直彦 氏
共生自律分散で実現するつながる工場と
新産業ソリューション
教授 西岡 靖之 氏
坂口 孝則 氏
代表取締役 林 英夫 氏
専務執行役員 田中 豊人 氏
副所長 小玉 貴志 氏
政府のサイバーセキュリティ戦略について
GE のインダストリアル・インターネット戦略
IoT を支える制御システムセキュリティ
東芝二次電池 SCiBTM 製品ラインアップと
将来の展望
高効率・小型化に向けた高圧インバータの
技術開発
[ハイライト]
33
ハイライト
のとおりの受賞校となった。
(6)学生テクニカルアカデミー研究発表
展示会を通じた産学交流の場として、学生テクニカル
アカデミー研究発表を設け、全国の大学・高専の研究室
から 14 校(研究室)の出展があり、その内 13 校(研究室)
で研究発表コンテストを実施して大いに盛り上がった。
コンテストでは、新規性、独創性、市場性、SCF /計
測展との適合性・親和性などをポイントに評価し、下表
テクニカルアカデミーコンテスト表彰式
3.おわりに
今回、関係各位のご協力により、盛況裡に無事終了す
ることができ、実行委員会一同、深く感謝申し上げる次
第です。
なお、本フェアに関する結 果 報 告は、Web サイト
(http://scf.jp/)にて掲載しております。
次回開催は 2017 年 11 月下旬に、JEMA と NECA と
の共同主催により東京ビッグサイトにて「システム コント
ロール フェア 2017」を開催する予定であります。
従来同様ご出展・ご来場を賜わりますよう何卒宜しく
お願い申し上げます。
研究発表コンテスト 受賞校
表 彰
所 属
神奈川工科大学
最優秀賞
工学部 電気電子情報工学科
板子研究室
長岡技術科学大学
優秀賞
カオス・フラクタル情報数理工学研究室
慶応義塾大学
奨励賞
(計測自動制御学会提供) 理工学部 システムデザイン学科 桂研究室
東京工業大学
理工学研究科 電気電子工学専攻 千葉研究室
特別賞
新居浜工業高等専門学校
電子制御工学科 出口研究室
発表テーマ
太陽光発電システムのリアルタイムホットスポット計測システム
光電融合型スマートセンシングを用いた BAI 技術の開発
温熱感覚呈示のためのサーマル制御技術
長寿命・メンテナンスフリーを目指したベアリングレスファンの研究開発
マイコンによる計測・制御を応用した学校教材の開発
大学・高専テクニカルアカデミー研究発表
小間番号 受付番号
A-1
1
A-2
2
A-3
3
A-4
4
A-5
5
A-6
6
A-7
7
A-8
8
A-9
9
A-10
10
A-11
11
A-12
12
A-13
13
A-14
14
学校名
学部・学科
久留米工業高等専門学校 制御情報工学科
研究室名
知能機能システム研究室
津山工業高等専門学校
谷口研究室
※ コンテスト不参加
電子制御工学科
愛知工業大学
三重大学
工学部 電気学科
生産資源学部
共生環境学科
新居浜工業高等専門学校 電子制御工学科
東京工業大学
理工学研究科
電気電子工学専攻
長岡技術科学大学
工学部 エネルギー・
環境工学専攻
電気通信大学
知能機械工学専攻
鶴岡工業高等専門学校・ 創造工学
全国 KOSEN ICT
農業研究会
千葉大学大学院
工学部 電気電子工学科
大学院工学研究科
電気電子系コース
慶應義塾大学
理工学部システム
デザイン工学科
神奈川工科大学
工学部 電気電子
情報工学科
群馬工業高等専門学校
機械工学科
長岡技術科学大学
34 電 機 2016・January
工学部
電力システム研究室
生産環境システム学
研究室
出口研究室
千葉研究室
伊東研究室
新・澤田研究室
神田研究室
研究テーマ
鏡面物体表面の三次元位置および面法線方向を
多点同時に測定する方法の開発
筋リラクゼーションと関節可動域訓練を両立する
拘縮予防リハビリ装置の開発
風力発電の発電効率向上に向けた PCS の最適化
設備診断のための巡回点検ロボットシステムおよび
最新設備診断技術
マイコンによる計測・制御を応用した学校教材の開発
長寿命・メンテナンスフリーを目指した
ベアリングレスファンの研究開発
低炭素社会を実現する革新的な高効率電源技術
〜スマートグリッド向け高性能電力変換技術の紹介〜
組み込みシステム向けモデルベース計測制御技術の
開発
農業 ICT 化に向けた低価格センサー開発と実証試験
パワーシステム
教育研究分野
移動体への電力伝送を想定した非接触給電システム
桂研究室
温熱感覚呈示のためのサーマル制御技術
板子研究室
太陽光発電システムのリアルタイムホットスポット
計測システム
平社研究室
最適制御を用いた自律型マルチロータ機の任意方位
誘導
カオス・フラクタル情報 光電融合型スマートセンシングを用いた BAI 技術の
数理工学研究室
開発
SCF2015 出展者一覧
(順不同)
アールエスコンポーネンツ 株式会社
スリーエムジャパン 株式会社
村田機械 株式会社
IDEC 株式会社
セーフティネットワークジャパン
株式会社 明電舎
株式会社 アイファ電気商会
株式会社 ソルトン
MECHATROLINK 協会
旭化成 EIC ソリューションズ 株式会社
株式会社 第一エレクトロニクス
株式会社 安川電機
アズビル 株式会社
大電 株式会社
安川シーメンス オートメーション・ドライブ 株式会社
アスプローバ 株式会社
株式会社 たけびし
株式会社 YOODS
株式会社 アドバンテック
DEGSON ELECTRONICS CO.,LTD.
ラティス・テクノロジー 株式会社
アラクサラネットワークス 株式会社
株式会社 テクノ
リタール 株式会社
株式会社 アルゴシステム
株式会社 デジタル
株式会社 リンクス
アルファテック 株式会社
デルタ電子 株式会社
ロックウェル オートメーション ジャパン 株式会社
EtherCAT Technology Group
東亜無線電機 株式会社
ワゴジャパン 株式会社
イープラン ソフトウェア アンド サービス 株式会社
東海ソフト 株式会社
株式会社 ワコム
株式会社 イマジオム
東京電気技術工業 株式会社
渡辺電機工業 株式会社
イルメジャパン 株式会社
株式会社 東芝
eWON 株式会社
Weintek Labs. Inc
東芝産業機器システム 株式会社
HMS インダストリアルネットワークス 株式会社
ウェリンテック・ジャパン 株式会社
東芝 IT コントロールシステム 株式会社
ODVA, Inc.
HMS インダストリアルネットワークス 株式会社
東芝シュネデール・インバータ 株式会社
ガイロジック 株式会社
ABB 株式会社
東芝三菱電機産業システム 株式会社
Sercos アジア 日本事務所
SUS 株式会社
株式会社 東電社
SECOMEA
株式会社 エニイワイヤ
東朋テクノロジー 株式会社
softing
NKK スイッチズ 株式会社
東洋技研 株式会社
ターク・ジャパン 株式会社
エフェクター 株式会社
東洋電機製造 株式会社
日本 AS-i 協会
株式会社 MHPS コントロールシステムズ
ナダ電子 株式会社
株式会社 日本電機研究所
株式会社 エム・システム技研
株式会社 ニチフ
一般社団法人 日本電機工業会
LS 産電 株式会社
株式会社 ニック
NPO 法人 日本プロフィバス協会
遠藤工業 株式会社
株式会社 日恵製作所
日本モレックス 合同会社
大阪自動電機 株式会社
株式会社 日新システムズ
ハーティング 株式会社
オーム電機 株式会社
日鉄住金テックスエンジ 株式会社
ヒルシャー・ジャパン 株式会社
株式会社 オサダ
日鐵住金溶接工業 株式会社
Motionnet 協会
オムロン 株式会社
日東工業 株式会社
株式会社 ユニテック
オリエンタルモーター 株式会社
日本パルスモーター 株式会社
ルネサス エレクトロニクス株式会社
春日電機 株式会社
日本 OPC 協議会
ワゴジャパン 株式会社
河村電器産業 株式会社
日本ダイレックス 株式会社
DINKLE ENTERPRISE CO., LTD.
関西積乱雲プロジェクト
日本マイクロソフト 株式会社
FON CHANG ELECTRICAL CORP.
株式会社 関東エルエンジニアリング
ネットワンパートナーズ 株式会社
GI FAR TECHNOLOGY CO., LTD.
共立継器 株式会社
ネットワンシステムズ 株式会社
HIGHLY ELECTRIC CO., LTD.
株式会社 ケーメックス
バーチャル エンジニアリング コミュニティ
Korea Electrical Manufacturers' Cooperative
ケプウェア・ジャパン 株式会社
株式会社 パトライト
Hanyang Electric Co., LTD.
光洋電子工業 株式会社
パナソニック 株式会社
Samkwang Solar Energy Solution Co., LTD.
コージェントリアルタイムシステムズ
パナソニックデバイス SUNX 株式会社
Seo Jin Electric Co., LTD.
国際電業 株式会社
バルーフ 株式会社
Pasetech Co., LTD.
株式会社 コスモテックス
B&R Industrial Automation 株式会社
株式会社 木幡計器製作所
PLCopen
Good Will Instrument Co., Ltd.
Taiwan Electrical and Electronic Manufacturers’ Association
株式会社 サーテック
ビージェーソフト 株式会社
Highly Electric Co., Ltd.
一般社団法人 産業サポート白河
株式会社 日立製作所
Fon Chang Electrical Corp.
株式会社 サンミューロン
株式会社 日立産機システム
Dinkle Enterprise Co., Ltd.
山洋電気 株式会社
株式会社 日立ハイテクソリューションズ
Gi Far Technology Co., Ltd.
CC-Link 協会
日立造船 株式会社
ドイツ電気電子工業会(ZVEI)
株式会社 シーズウェア
ピルツジャパン 株式会社
IoT Asia 2016
株式会社 シーティーケイ
株式会社 ピーアンドエフ
オートメーション新聞
株式会社 シーティーケイ EAST
フエニックス・コンタクト 株式会社
株式会社 インコム
株式会社 シーティーケイ WEST
株式会社 Puerto
日経 BP 社
シーメンス 株式会社
株式会社 フォトロン
愛知工業大学
ジェイティエンジニアリング 株式会社
フジコン 株式会社
神奈川工科大学
株式会社 ジェイテクト
富士通 株式会社
久留米工業高等専門学校
株式会社 指月電機製作所
富士電機 株式会社
群馬工業高等専門学校
システムメトリックス 株式会社
profichip Gmbh
慶應義塾大学
シュメアザール日本支社
ベッコフオートメーション 株式会社
千葉大学 大学院
株式会社 ジョブル
株式会社 ベルチャイルド
津山工業高等専門学校
白河電産 株式会社
北陽電機 株式会社
鶴岡工業高等専門学校・全国 KOSEN ICT 農業研究会
スカイネット クラウド システムズ
本多通信工業 株式会社
電気通信大学
株式会社 図研
マルチ計測器 株式会社
東京工業大学
図研エルミック 株式会社
三菱電機 株式会社
長岡技術科学大学(伊東研究室)
スズテック 株式会社
三菱電機エンジニアリング 株式会社
長岡技術科学大学(カオス・フラクタル情報数理工学研究室)
スズデン 株式会社
三菱電機システムサービス 株式会社
新居浜工業高等専門学校
株式会社 ステップテクニカ
三菱日立パワーシステムズ 株式会社
三重大学
[ハイライト]
35
TO P IC S トピックス
2015 年度
中堅企業海外調査(米国・西海岸)視察概要
一般社団法人 日本電機工業会
2015 年度 中堅企業海外調査団
当会の中堅企業の経営者で構成する海外調査団は、昭
ヨタ自動車の合弁企業 NUMMI(ヌーミ:New United
和 28 年以来、経営者の国際情勢把握のために海外調査
Motor Manufacturing)のフリーモントの工場を買収し
を企画・実施してきた。今年度は、昨年に引続き、調査
て、2012 年 6 月から EV の生産拠点「テスラ ファクト
団(団長:山田信三 大洋電機株式会社 代表取締役
リー」として稼働させた。
社長)を編成し、10 月 25 日から 30 日にかけて、世界的
テスラの EV は、2014 年では、7 人乗りセダン「モデ
な IT 関連企業が拠点を構える米国・シリコンバレーの企
ル S」を年間約 34,000 台生産し、現在では、秋に量産を
業を視察すると共に、著名な IT 企業の施設を訪問し、起
始めたばかりの 3 車種目の多目的スポーツ車(SUV)の
業家精神とイノベーションを支える社会的風土に触れた。
「モデル X」を若干加え、週に約 1,000 台生産している。
また、調査団は、米国の代表的なワイン産地として世
受注ペースは「モデル S」と「モデル X」の両方で加速し、
界的に認知されるようになったナパバレーを訪れ、ワイン
2015 年通期の納車台数は、少なくとも 5 万台に上る見通
産業と他産業とが密接に結びつき、産業の垣根を超えた
しを示しており、10 月 2 日に公表した第 3 四半期(7 ~
事業の多角化及び高度化によって成長・発展した実情を
9 月)の販売台数は、11,580 台、四半期では過去最高の
探った。
前年同期比 149%と大きく伸長し、6 期連続で増加した。
1.シリコンバレー企業視察
Intel をはじめ多くの半導体メーカーが集まっていたこ
とに由来して呼ばれているシリコンバレーには、世界中
からスタートアップを目指す技術者や、投資家、経営者
(1)パフォーマンスで高い評価を得るテスラの EV
「モデル S」は、45 分のフル充電で最高 300 マイル(約
483km)走行可能で、3 秒で時速 100km に達するポル
シェ並の加速性能を有する。
車体は、シャシーとアッパーボディにアルミを全面的に
が 集 ま り、 ま た、Apple、Google、Yahoo、YouTube、
採用して軽量化を図っており、スチール材も強度、剛性
Twitter、Adobe、Facebook、Oracle、Cisco Systems
を確保するために一部採用している。また、重量のある
などがオフィスを構え、世界に名だたるソフトウェア・イ
バッテリーやパワートレイン(動力伝達装置)などは、床
ンターネット関連企業の一大拠点となっている。調査団
下に収納して重心を低くすることによって運転性能を向
は、シリコンバレーでは数少ない生産拠点を持つ 2 社を
上させており、自動運転機能を追加できるハードウェアも
訪問し、工場視察を行った。
装備し始めている。
テスラ ファクトリー(TESLA FACTORY)
価格は、米国内では 7 万~ 10 万ドル(約 840 万円~
約 1,200 万円)で販売されているが、何よりも一滴のガ
交流誘導電動機の特許を取得したニコラ テスラを社
ソリンも使わない排気量ゼロの環境対応をアピールする
名の由来とするテスラ モーターズは、2003 年にシリコン
テスラ車は、高級欧州車以上のステータスシンボルとなっ
バレーのエンジニア数名によって設立され、2008 年に最
ており、IT 成功者や有名俳優が所有しているという。
初の EV(電気自動車)のスポーツ車「ロードスター」を
なお、テスラ モーターズは、EV をより多くのメーカー
販売した。2010 年には、最盛期に年 50 万台以上のガ
に生産してもらい、世界中に普及拡大させる取組みとし
ソリン車を生産していた GM(ゼネラル モーター)とト
て、2014 年に EV に関する特許を公開した。
36 電 機 2016・January
(2)EV 工場としてのこだわり
また、EV は、ガソリン車など内燃機関を動力とする自
テスラ ファクトリーでは、部品の内製化を重視してお
動車に比べて圧倒的に部品点数が少ないため製造工程も
り、ダイキャストの設備で金型に溶融したアルミを圧入し
少なくて済み、部品の共有化もし易くモデル S とモデル
て作る主要部材や、ほとんどのプラスチック部品などは素
X の 6 割に同じ部品が使われて、効率よく生産ができる
材から製造し、協力会社から部品を調達して組立を主体
という。
とするガソリン車の工場との違いを出している。
北米最大とされるプレス機と 8 台の移送用クレーンに、 (3)従業員のモチベーション維持などに配慮した工場
160 台以上のロボットを用いた生産ラインで、部品の投
テスラ ファクトリーでは、事務職を含めて 4,000 ~
入、プレス成型、溶接・車体組立、塗装、最終組立まで
5,000 人が 2 交代制勤務で活発な受注に対応しており、
1 台あたり 5 日間で完成させるという。人手による作業は、
そのほとんどは NUMMI から引き続いて採用されている。
部品の投入やロボット・工具のメンテナンスなどにほぼ限
2014 年 7 月には、生産能力増強と効率化のため工場
られ、生産ラインは、高度に自動化されている。車体の
を全面的に改造したが、その際、省エネ化と従業員のモ
持ち上げやラインの移動、バッテリーの組み込みを行う
チベーションを維持する職場環境づくりのため、照明の
大型ロボットには、米コミック「X-Men」のキャラクター
LED 化や天候の変化が感じられる天窓の採用、植物の
の名が愛称として付けられており、日本製のロボットも最
配置、壁の明るい色への塗装など、従業員の要望を多く
終組立ラインに使われていた。
汲み入れた改善を図っている。
完成車の最終的な検査で行う様々な走行テストも、工
また、シリコンバレーの多くの IT 企業と同様、休憩す
場内で行っているが、排気ガスを出さないため、換気装
るためのカフェを工場内に設け、飲み物、スナック類を
置を必要としない。
無償で提供している。
なお、テスラは、プレス機や移送用クレーン、塗装機
なお、調査団の工場内の視察では、連結した専用カー
械などは、NUMMI から安価で譲り受けて活用しており、
トで各生産工程のラインを巡り、テスラで働くことに高い
コストを抑えて、早く工場を立ち上げることに成功してい
誇りを持っていることを感じさせられる社員から熱心な説
る。
明を受けた。
[トピックス]
37
TO P IC S トピックス
(4)テスラの考えられる今後の課題
果の高い製品・サービスを提供している。
EV を普及拡大するためには、充電のための機器の標
視察時には、1995年に誕生したWeb通販最大手アマゾ
準化とパワーステーションの設置拡大、車輌とバッテリー
ン(Amazon)から受注した、1 億種といわれる商品の出
の価格低減等、様々な課題が挙げられている。
品、予約受付、配送、決済などを行う処理システムに使
テスラは、2017 年に、小型で安価な普及型の「モデル
われる装置類が工場内を埋めており、活況を呈していた。
3」の発売を計画しているが、現在、受注生産方式をとっ
ている「モデル X」は、予約から納車まで 1 年近く要し
ており、今後、普及型の販売に向けた量産体制の構築が
課題となるとみられる。
2.ナパバレーの地域活性化の実情
米国は、フランス、イタリア、スペインに次ぐ世界第 4
また、車輌価格の半分近くを占めると言われるバッテ
位のワイン生産国であり、その 9 割をカリフォルニア州が
リーについては、ネバダ州に総額 50 億ドルを投じて、日
生産しているが、最も認知度が高い高級ワインを産出す
本の電機メーカーと共同で大規模なリチウムイオン電池
るナパバレーのワイン生産量は、州全体のわずか 4%に
工場「ギガファクトリー」を建設して(2017 年稼働予
しかすぎない。この生産量の少ないナパバレーが、米国
定)
、スケールメリットによるコスト低減を目指している
の代表的なワイン産地として世界的にも認知されるように
が、投資回収には他メーカーなどへの外販が必要となっ
なった理由を探った。
てくると考えられている。
ハイブ ソリューション(Hyve Solutions Corporation)
ナパバレーは、サンフランシスコの北のやや内陸に向
かって車で約 1 時間半の距離にあり、両側を山に挟まれ
ハイブ ソリューションは、世界中で 55,000 人以上の
て北西の方向に約 50km、幅は約 8km ~ 1.6km の細長
従業員を擁し、パソコンとその周辺機器のハードウェ
い地域である。欧州の銘醸地と似た地中海性気候で、夏
ア、ソフトウェア、IT 関連製品等の卸売・販売や関連
と秋は雨が少なくて日照量が多く、内陸性気候のため昼
サービスを提供する 1980 年設立のシネックス(Synnex
夜の寒暖差が大きいうえに、夜にはアラスカ海流の影響
Corporation)の生産子会社で、大規模なデータセンター
を受けた海風と霧が十分な涼しさと湿度がブドウの実を
のサーバー、ストレージ(記憶装置)
、ネットワーク機器
引き締まらせる。また、起伏に富む火山性の痩せた土壌
などを製造している。
が複雑に作用して、豊かでバランスのよい多種多様なブ
シリコンバレーの工場では、顧客の設計、エンジニア
ドウを生み出している。
リング、サプライチェーン、大量生産、物流などの全体
のプロセス処理を最適化するためのカスタマイズされた
ナパバレーで最初にブドウの木が植えられたのは 1830
装置の開発・製造を行って、エネルギー効率と費用対効
年代(天保年間)まで遡るものの、この地域は 1960 年
38 電 機 2016・January
代までは寒村だったようで、ナパワインを世界的に認知
なお、昨年、訪問したフランスのブルゴーニュでは、
されるレベルに高めた第一人者とされるロバート・モン
地方→地区→村→畑と区域が狭くなるに従い上級とされ
ダヴィたちによって、質の高いワインづくりを目指して品
ていたが、AVA が地域内で複合的に指定されて重複して
種改良と技術革新が進められた。併せて戦略的なマーケ
いることも多く、米国ではラベルでこのようなワインの格
ティングでワイン・ツーリズムを展開したことで、世界的
付けの見方はできない。
なワイン集積地へと発展した。
良質なワイン造りに必要な様々な条件を備えたこの地
生産者名
域では、カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、メルロー
収穫年
の品種が広く栽培されているが、ワイン愛好家が求めるピ
AVA 名ワインは 95%以上、
それ以外のワインは 85%以上
の同一収穫年度のブドウを使用
ノ・ノワールなどの品種も多く植えられ、家族経営が 95%
を占める約 400 のワイナリーで高級ワインを醸造・販売し
品種名
ている。なお、欧州に起源をもつ赤ワイン用の品種のジン
同一品種のブドウを 75%以上
使用
ファンデルは、カリフォルニア以外にはほとんど存在せず、
産地名
カリフォルニアワインを代表する品種の一つとなっている。
州・郡名:75%以上(加州名は
100%)
、AVA 名(ex.“ナパバレ
ー”):85%以上、畑名:95%
以上の同一地域内で収穫された
ブドウを使用
(1)米国のワインの原産地保護
米国にはフランスの AOC 法(アペラシオン・ドリジー
米国のワイン法によるラベル表示規制
ヌ・コントロレ)のように、ラベルに産地名を表記する際
のブドウの品種や栽培方法、醸造条件などについての細
(2)ナパワインへの高い評価
かい規定と管理機関はないが、生産者と消費者の保護を
1976 年、パリ万博でのフランスの著名ワイナリーやレ
目的に 1978 年にワイン法が制定され、ラベルに、産地
ストランのオーナー、ワイン雑誌の編集長など、9 人のフ
名、ブドウの品種、収穫年、アルコール度数等を記載す
ランス人審査員によるブラインド・テイスティングでは、
る場合の条件が定められた。
無名だったナパワインが、赤・白の両部門で、ボルドー
また、質の高いワインを産する原産地を保護・保証す
やブルゴーニュの名だたるワインを押さえて第 1 位とな
るため AVA(American Viticultural Areas:米国政府公
り、その後 30 年が経過した熟成赤ワインに対する 2006
認ブドウ栽培地域)が指定された。AVA は全米で約 230
年のリターンマッチでもカリフォルニアワインが 5 位まで
存在し、ナパ郡内では 16 の地域が指定されているが、
を独占し、無個性な安ワインというイメージを劇的に変え
「ナパバレー」地域は、カリフォルニア州で最初に AVA
に指定された。2007 年には、EU によって AVA 指定の
る結果になった(なお、1976 年に第 1 位になったワイン
は、スミソニアン博物館にも保管されているとのこと)
。
「ナパバレー」地域が、欧州以外で初めてワイン産地とし
ての地理的呼称が認められ、欧州全体でも商標侵害など
に対して法的に保護されることとなった。
米国のワイン法では、ラベルに原産地を表示する場合
は、その地域内で収穫されたブドウの使用量が、州名・
郡(County)名で 75%以上(加州表示は独自に州法で
また、ナパバレーで行われた 2015 年の流通業者向け
100%)
、AVA 名で 85%以上、畑(Vineyard)名で 95%
オークションでは、落札額の総額が 2012 年に記録した
以上となっている。また、品種名は、同一品種のブドウを
310 万ドルの約 2 倍の 600 万ドルと過去最高となり、1
75%以上、収穫年は、当該年に収穫されたブドウを AVA
ロット(750mL×60 本)の最高落札額は 11 万 5,000 ド
ワインで 95%以上、それ以外のワインは 85%以上、それ
ル(1 本当り約 1,900 ドル:約 23 万円)で、米国の好景
ぞれ使用した場合にラベル表示できる。
気を加味してもナパワインの大幅な価格上昇がみられた。
[トピックス]
39
TO P IC S トピックス
なっている。
(3)事業の多角化・高度化にみるナパバレーの
地域発展
このようなワイン・ツーリズムは、米国、英国、豪州な
ナパバレーは、ワイナリーにツーリストを受け入れる
どの大学で観光学の研究対象にもなっている。
「ワイン・ツーリズム」の発祥地でもあり、全米の旅行に
また、ナパバレーのワイナリー協会は、流通業者・一
関する調査では、
「食を主な目的として思い浮かべる旅行
般向けのオークションや試飲会などのイベントに加え、海
先」として 5 位にランキングされている。
外へのマーケティングも活発で、日本にも、東京に拠点
2014 年の統計によると、カリフォルニア州では、ディ
ズニーランドに次いで多い年間 330 万人がナパバレーを
を置いて、レストランとの提携イベントや東京・大阪での
試飲会なども頻繁に企画・運営しているようである。
訪れ(米国外からは 13.6%)
、約 16 億 3,000 万ドル(約
1,960 億円)を消費しており、現地のアンケート調査で
ナパバレーは、ブドウ栽培者、ワイン醸造家、ホテル
は 93%が再訪したいと回答している。
(データ出所:Napa
やレストランなどの異なる産業の知識や技術が融合し、
Valley Administrative Offices)
事業の多角化・高度化、新たな事業の創出によって、国
内外から多くのツーリストが訪れ、地域全体が活況を呈
ブドウ畑の風景と、落ち着いた雰囲気で格調のあるワ
し発展した成功事例とされている。
イナリーでの試飲や醸造工程の見学、ホテル・レストラ
わが国の第一次産業を取り巻く国際的な競争環境が厳
ンでの料理と洗練されたサービスの提供をはじめ、セミ
しくなる中、いわゆる六次産業化といわれるように、加工
ナーや展示会の開催など、ワインとワインを育む風土を
産業、流通販売の第二次・第三次産業と一体化させ、さ
満喫するため、ツーリストがより豊かな時間を過ごすため
らにナパバレーのような貴重な地域資源を活用しながら、
の仕掛けが用意されている。特に、ブドウ畑の中を改装
第一次産業の付加価値を高めて産業の高度化を目指すと
されたアンティーク車輌で時間をかけて走るワイントレイ
いう一つの方向性について一行は示唆を受けた。
ンは、列車自体がレストランになっており、人気の的と
ナパバレーを縦断するワイントレイン
2015 年度 中堅企業海外調査団名簿
団 長
40 電 機 2016・January
(敬称略・順不同)
山
田
信
三
大洋電機㈱
代表取締役社長
山
本
茂
生
山洋電気㈱
代表取締役兼社長
戸
上
信
一
㈱戸上電機製作所
代表取締役社長
福
地
裕
文
㈱日本電機研究所
代表取締役社長
姫
野
泰
宏
㈱ケー・シー・シー・商会
代表取締役社長
本
郷
辰
也
冨士端子工業㈱
代表取締役社長
海 老 塚 清
一般社団法人 日本電機工業会
専務理事
事務局
松
博
一般社団法人 日本電機工業会
企画部長
〃
七
晃
一般社団法人 日本電機工業会
企画部担当次長
本
俊
海 (企画部)
SolarPACES 2015(太陽熱発電システム)
出席報告
太陽熱発電システム国際標準化委員会
石山 卓弘
◇
1.概 要
続可能なエネルギー供給を行う。
開催会議
SolarPACES 2015(太陽熱発電システム)
3.2 SolarPACES のミッション
開催期間
2015 年 10 月 13 日㈫~ 10 月 17 日㈯
開催地
南アフリカ・ケープタウン
とにより、集光型太陽熱の技術進歩、市場の発展および
参加者
38 カ国 551 名(日本からは 12 名)
持続可能で信頼性がありかつ高効率でコスト競争力もあ
加盟国の国際ネットワークがリーダシップを発揮するこ
るエネルギーパートナーシップの構築を推進する。
2.背景および目的
3.3 SolarPACES 加盟国
一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)では、JISC
SolarPACES には OECD 加盟国及び非加盟国合せて
(日本工業標準調査会)承認のもとで 2012 年 8 月から
以下の 19 カ国・地域が参加。アルジェリア、オーストラ
IEC/TC117(太陽熱発電システム)の国内審議団体
リア、オーストリア、ブラジル、中国、エジプト、EC、フ
を引き受けており、国際標準化戦略に沿って「太陽熱
ランス、ドイツ、イスラエル、イタリア、韓国、メキシコ、
発電システムの国際標準化事業」を実施している。一
モロッコ、南アフリカ、スペイン、スイス、UAE、USA。
方、SolarPACES(Solar Power and Chemical Energy
上記の他インド、ポルトガル、チリ、ヨルダンなども加盟
Systems)は、IEA(国際エネルギー機関)の再生可能
に関心を示している。なお、日本は太陽光発電(PV)や
エネルギー作業部会の中の実施協定の一つであり、太陽
風力などの実施協定には参加しているが、SolarPACES
熱発電と太陽熱による燃料製造の普及と発展を目指すも
には非加盟。上記のように、ドイツのように日射は無いが
のである。IEA の作業部会であることから、SolarPACES
技術でリードして技術輸出を目指す国や、米国やスペイ
は基本的に国単位の加盟であるが、年に一回開催される
ンのように技術も市場もある国、また技術はあまりないが
カンファレンスは非加盟国(日本)でも参加できる。本
導入ポテンシャルは大きい国々が参加している。これら
年、IEC TC117 集光型太陽熱発電システムの国際標準・
の国々で研究・開発や新たなプラント建設の話し合いを
技術委員会とのリエゾンも決定されたこともあり、本会議
しているのが実情である。日本も SolarPACES に加盟し
に出席した。
このような話し合いに参加できるのが望ましい。
3.成 果
3.4 SolarPACES の活動状況
SolarPACES 2015 に参加して、国際的な取組みの状
況、情報収集を実施した。
3.1 SolarPACES のビジョン
集光型太陽熱の技術を通して、世界中にクリーンで持
SolarPACES の活動は以下の TASK に分かれて行われ
ている。
TASK I: Solar Thermal Electric Systems
TASK II: Solar Chemistry Research
TASK III:Solar Technology and Advanced Applications
◇一般社団法人 日本電機工業会 新エネルギー部 技術課課長
[トピックス] 41
TO P IC S トピックス
TASK IV:Solar Heat Integration in Industrial
Processes
TASK V: Solar Resource Assessment and Forecasting
TASK VI:Solar Energy and Water Processes and
Applications
各タスクでは参加国が資金を出し合い共同研究などを
行っている。成果は SolarPACES 加盟国で共有され、外
部には非公開のことも多い。燃料製造と化学蓄熱につい
ては TASK II の中で行われている。
究を行っている。日本国として再生可能エネルギーを利
用した水素製造を行っていることを示すことにより、日本
の太陽熱のプレゼンスが上がるのではないかと思われる。
また、海外での実証事業やその後の展開も容易になるも
のと思われる。
4.今後の課題
国際標準 IEC TC117 議長について 2015 年春、イスラ
エルからドイツに交代、Fraunhofer に所属する Dr.Platzer
氏が就任している。SolarPACES 2015 では、基調講演の
一つとして Dr.Platzer 氏の発表もなされ、IEC 国際標準
3.5 カンファレンス
毎年秋に行われており、加盟国、非加盟国に係らず研
の活動の動向を説明、標準化活動に対しても各国エキス
究発表が可能。また、各国や各分野の政策等に関する報
パートの更なる貢献・参加の要請がなされた。日本とし
告もある。通常、参加者の規模は 1,000 名程度で、世界
ても、日本企業の実力を活かせる分野で、貢献が求めら
中の太陽熱に係る主要人物が参加。会議中は世界中の政
れる。
策担当者を含めたキーパーソンすべてに会うことができ
また、DOE(アメリカ合衆国エネルギー省)の講演で
る。したがって、個々の国を訪ねるよりも会議に参加し
は、将来的には太陽熱発電システムでも 6 セント /kWh
て各国のキーパーソンに会うほうが短期間で様々な成果
を目指すとの発言があった。今後、商用ベースでの導入
や情報が得やすい。日本からは数十名が参加しているが、
においては、コスト削減は重要な課題であり、その実現
すべて大学や企業の研究者等である。
に向けた研究開発も望まれると考える。
3.6 日本からの発表の意義
日本は一部の大学が中心となって太陽熱に関連する研
Helio100 central receiver pilot system 見学(南アフリカ製)
42 電 機 2016・January
ハノイ真贋判定セミナー参加報告
一般社団法人 日本電機工業会
知的財産保護専門委員会
委員長 神
1.はじめに
安定した経済成長を続け白物家電の大きな市場として
期待されるアセアン地域(ASEAN)に対して、多くの日
本企業が事業展開(拡大)を図っているが、模倣品をは
じめとする知的財産保護対策に関する情報は中国から比
べるとまだまだ少ない状況にある。
一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)の知的財産
保護専門委員会では、2012 年度にインドネシアとタイ、
2014 年度にベトナムにて、白物家電の模倣品の現地調
査、および知財や模倣品対策に関係する政府機関などと
意見交換を行い、各国の模倣品対策の取組みや課題など
を知ることができた。今後の ASEAN 統合によって各国
間の商品の流通が活発になり、模倣品による被害が拡大
することが懸念されるため、我々日本企業にとっては効
果的な模倣品対策を早期に実行することが重要になると
考える。
尾 恵司
◇
2.調査団 参加者とスケジュール
団長 神尾 恵司 日立アプライアンス株式会社
(筆者)
家電・環境機器事業部 多賀家電本部
知的財産権部 部長
久山 秀人 東芝ライフスタイル株式会社
HA 技術企画部 知的財産担当
グループ長
吉田 伸
パナソニック IP マネジメント株式会社
アプライアンス知財部 部長
荻島 盟一
三菱電機株式会社
リビング・デジタルメディア技術部
知的財産グループ
グループマネージャー
田中 智
一般社団法人 日本電機工業会
家電部長
清水 進
一般社団法人 日本電機工業会
家電部 調査統計課長
そこで、今回ハノイで開催された経済産業省主催、日
本貿易振興機構(JETRO)共催の真贋判定セミナーや、
国際知的財産保護フォーラム(IIPPF)による現地知的
財産関連政府機関他の訪問・意見交換会に参加し、前回
(2014 年 6 月)調査で入手したベトナムの知財制度、模
倣品対策に関する知見を深めるとともに、より具体的な
模倣品対策の方法について調査を行った。
日程 2015年 10 月 29 日 ㈭ ~ 11 月 5 日 ㈭
1 日目 10 月 29 日 ㈭ 成田、関空→バンコク
(DIP)
訪問
2 日目 10 月 30 日 ㈮ タイ知的財産局
JEMA 家電海外課題専門
委員会 タイ分科会
3 日目 10 月 31 日 ㈯ バンコク→ハノイ
護活動の中心であるタイ知的財産局(DIP)を訪問して
4 日目 11 月 1 日 ㈰ 休日
意見交換を行った。 さらに会員各社の現地法人を中心に
5 日目 11 月 2 日 ㈪ ハノイ真贋判定セミナー
運営している JEMA 家電海外課題専門委員会家電タイ
ベトナム税関総局との
意見交換会
ベトナム市場管理局との
意見交換会
また、前回訪問できなかった ASEAN における知財保
分科会に出席し、各社が持つ知財に関する課題等につい
て意見交換を行い、現地のネットワーク作りに繋げること
ができたので、その内容を報告する。
◇日立アプライアンス株式会社 家電・環境機器事業部 多賀家電本部 知的財産権部 部長
[トピックス] 43
TO P IC S トピックス
6 日目 11 月 3 日 ㈫ ベトナム 389 委員会との
意見交換会
次に、JETRO ハノイ事務所 所長 川田敦相氏より、
「本
セミナーにより模倣品取締りが強化され、日本とベトナム
ベトナム ネット事業者
Vatgia 社訪問
のビジネス活動が充実していくことを願っている。
」との
ベトナム経済警察との
意見交換会
続いてベトナム政府を代表し、商工省市場管理局副局
挨拶があった。
長 Do Thanh Lam 氏、ベトナム税関総局密輸防止局知
7 日目 11 月 4 日 ㈬ 中越国境ランソン省
タンタイン
(辺境)
ゲート視察
的財産権保護部副部長 Tran Viet Hung 氏、科学技術省
市場調査
(タンタイン市場)
れ挨拶があり、本セミナーの重要性と今後の模倣品取締
中越国境ランソン省
ヒューギ
(国際)
ゲート視察
り強化、及びセミナー開催継続の要望があった。
ランソン省各政府機関と
意見交換会
の電気製品(電池、
電気ケトル、
炊飯器など)で、洗濯機、
深夜 ハノイ→成田、関空
容易にするため模倣対策ステッカーを採用している企業
8 日目 11 月 5 日 ㈭ 早朝 成田、関空着
監査局知的財産監査課課長 Le Thi Loan 氏からそれぞ
各社から紹介された模倣品の多くは、
部品や衣類、
小型
冷蔵庫などの大型白物家電はなかった。模倣品の判別を
が多く見受けられたが、その模倣対策ステッカーは各社
の全商品に採用されるまでに至っていない。各社とも模
倣対策ステッカーの費用対効果を見極めた結果であろう。
3.ハノイ真贋判定セミナーへの参加
主 催:日本政府経済産業省
共 催:JETRO、後援:ベトナム政府知財取締機関
参加者:ベトナム政府知財取締機関、日本側真贋判定セ
ミナー関係者 計約 200 人
真贋判定セミナープレゼン
プレゼンする東芝 LS・久山委員
真正品、模倣品展示ブース
市場管理局との意見交換会
日本企業 10 社が本セミナーに参加し、各社より真贋
判定ポイントのプレゼンを行った。JEMA 知的財産保護
専門委員会を代表して東芝ライフスタイル 久山委員より
「ベトナムにおける模倣品の取締り状況及び乾電池の模倣
品の見分け方」の説明が行われた。
セミナー開催に先立ち、セミナー会場後方に設置され
た「真正品、模倣品」展示ブースをセミナー参加者(ベ
トナム政府知財取締機関)が巡覧し、セミナー参加各社
より真正品と模倣品について現物での説明を行った。
セミナー開催に当たり、主催者を代表して経済産業省
4.税関総局との意見交換会
<参加者>
①ベトナム側 3 名
模倣品対策室 専門官 脇野俊二氏より、
「模倣品は誤って
税関総局密輸防止局知的財産権保護部部長 購入した消費者が被害を受けるだけでなく、健康被害に
Nguyen Van Thuy 氏、他
なることもあり、取締りが重要であり、①消費者の保護、
②日本側 20 名
②市場への健全商品供給が必要となる。中国との国境を
接しているベトナム・ハノイでの取締りを強化していくた
昨年、税関総局密輸防止局と JETRO ハノイ事務所と
めにも本セミナーにより相互理解を深め、模倣品対策を
は、水際取締りにおける知的財産権保護強化に向けた協
お願いしたい。
」との挨拶があった。
力同意書(以下、MOC)を締結した。
44 電 機 2016・January
今後、税関による水際取締りが強化されて行く中で、
各税関へ MOC に即した運用を徹底していくためには、
6.1 組織・活動内容について
ベトナムでは、密輸、不正取引、模倣品が深刻な問題
JETRO や日本企業が何をすべきかについて、意見交換
となっている。以前は、商工省傘下に 127 委員会を設置
した。
して、密輸品、模倣品の取締りを行っていたが、127 委
税関側より日本企業に税関登録を行うよう要請があり、
員会は、商工省傘下の機関であったため、権限が十分で
日本側も引続き登録推進の努力をすること、模倣品取締
なく、有効な活動を行うことができなかった。そこで、内
りを促進できるよう情報提供の用意があることを伝えた。
閣直轄の機関に格上げした 389 委員会を設置し、権限の
また、日本側より税関に提供した情報をベトナム国内税
強化を図った。現在、389 委員会の委員長はベトナム副
関各支局に周知するよう依頼した。
首相が務めている。
今回の会議では、時間的な制約もあり、細かい議論に
389 委員会の主要な構成委員は、Nguyen Xaun Phuc
は至っていないが、JETRO・日本企業からの問題点の提
副首相(委員長)
、財政省大臣(常任副委員長)
、商工省
示や依頼事項を税関総局に伝えることが出来た。今後も
大臣(副委員長)
、公安省副大臣(副委員長)
、国防省副
具体的な課題について、定期的な打合せを実施していく
大臣(副委員長)の 5 人である。
必要性を感じた。
また、地方でも 389 委員会のネットワークが形成され、
人民委員会傘下の部局長から構成される地方委員会が設
5.市場管理局との意見交換会
<参加者>
①ベトナム側 4 名
市場管理局副局長 Do Thanh Lam 氏、他
②日本側 28 名
置されている。さらに、郡・区レベルでも、389 委員会
のネットワークが根付いている。
模倣品被害、知的財産権侵害の問題を担当している
389 委員会は、設置されてまだ 1 年しか経っていないが、
密輸および模倣品対策に一定の成果を挙げている。389
委員会の事務局では、健康、経済に悪影響を与える模倣
品、具体的には、薬、健康食品、農薬、肥料などの模倣
ベトナム国内の主要な模倣品取締り機関である市場管
品を重点的に取り締まっている。
理局と、今後どういう協力関係を続けていけるのかにつ
いて意見交換した。
6.2 模倣品被害の実態、動向
日本側から、市場管理局、市場経営者、知的財産権権
ベトナムと中国との国境線は、6 つの省にわたり、約
利者が一体となって、市場から模倣品を排除するキャン
1,400km の長さがある。国境線沿いで生活している両国
ペーン活動を行いたい旨提案した。
の住民は、両国間を行き来しているため、その際に、模
ベトナム側から、キャンペーンの申請・効率的な展開
倣品、密輸品が中国からベトナムに入ってくる。海に囲ま
について、市場管理局は市場のパトロールおよび不正行
れた日本であっても模倣品が入ってきている現状を考え
為の是正を担当、商工局は市場のコントロール、プロジェ
れば、中国と陸続きのベトナムでの模倣品侵害は非常に
クトの申請に対する承認を担当しているとの役割分担に
深刻である。中国との国境線は模倣品の侵入ルートになっ
ついて説明があった。
ているが、カンボジアおよびラオスとの国境線は密輸品
の侵入ルートになっている。
6.389 委員会との意見交換会
<参加者>
①ベトナム側 5 名
389 委員会副事務局長 Tran Hung 氏、他
②日本側 25 名
ベトナムでは、日本の製品(健康食品、化粧品、自動
車・バイクの部品など)の人気が高く、多くの模倣品が
出回っている。昔は模倣品を製造する技術が低く、一般
消費者でも真正品と模倣品の識別が容易であった。しか
し、最近は、模倣品製造業者の技術レベルが上がり、権
利者でなければ真正品と模倣品の識別が困難になってい
る。この間、食品と医薬品を対象とした模倣品の取締り
[トピックス]
45
TO P IC S トピックス
を 3 カ月連続で行ったが、健康食品と化粧品の模倣品が
ている。具体的な取組みとしては、メーカーから偽物の
非常に多く、そのほとんどは中国から入ってきたもので
指摘があった場合は即座に HP から削除している。ただ
あった。この取締りについては、ベトナム国内でも大きく
し 100%偽物であることが判明しないと削除できないた
報道された。
め、全てに対応しきれていない状況とのことであった。
389 委員会の発足後、数々の模倣品取締りの成果を挙
なお、模倣品とは異なり密輸(脱税)品については、
げているが、それ以上に、国民の信頼を得られたことが
本物であると共に脱税品であることを証明できないため、
大きく、最近では、国民から直接、模倣品被害の告発電
削除することはできていないとのことであった。
話がかかってくるなど、国民の協力が得られるようになっ
たとのことである。
日本側からは、中国タオバオ、アリババでの模倣品削
除方法のデータを送付するので継続して模倣品への対応
をお願いした。
企業から直接同社に依頼
6.3 日本側の提案
日本側より、ベトナムの重要な市場であるハノイのドン
して、模 倣品出展 者を HP
スアン(Dong Xuan)市場の浄化活動を、市場管理局、
から削除してもらうことが可
市場経営者、権利者が一体となって行い、市場から模倣
能であり、真贋判定の情報
品を排除するとういうキャンペーン活動を提案した。
を同社に提供することが必要
さらに 2 つ目の提案として、中越国境での模倣品・密輸
であると感じた。
ネット事業者 Vatgia 社訪問
品の流通実態が分からないので、ベトナム側と中国側で、
日系企業各社へのヒアリング、模倣品取扱い業者の調査、
国境付近の市場調査、輸入・輸出業者の調査を行い、国
境での検査を有効化して、ベトナム国内に運び込まれる
模倣品削減を提案した。
8.経済警察との意見交換会
<参加者>
①ベトナム側 10 名
ベトナム側からはキャン
経済警察副局長 大佐 Hoang Van Truc 氏、他
ペーン活動の手順について、
②日本側 24 名
もう少し現実的な進め方をす
るようアドバイスがあった。
389 委員会との意見交換会
7.ネット事業者・Vatgia 社訪問
<参加者>
①ベトナム側 1 名
CEO-Founder Nguyen Ngoc Diep 氏
②日本側 23 名
公安省中央の経済警察局の組織は 14 の課から構成さ
れており、
中央以外に63の省にも郡部にも経済警察がある。
模倣品はベトナム製造品より中国製造品の方が多く、
真正品のサンプルを中国に持って行き、模倣品を発注す
るというのが実態だそうで、最近は模倣製造業者の技術
も高度化しており、高度な技術を要する模倣品も出回っ
ているとのことであった。
白物家電については日本製がベトナムでは人気がある
が、日本メーカーの模倣品は中国製造品がほとんどであ
ベトナムのネット販売代行サイトのトップ企業である
る。日本製のような高度な技術、特に電子機器が必要な
Vatgia社を訪問し、CEOのNguyen氏と意見交換を行った。
模倣品はベトナムでは製造できないので中国で製造して
同社は、2007 年に創業し、現在は 700 人のスタッフで
いるとのことであった。
運営されており、80 万人/日のアクセスがある大手ネッ
また中国の模倣品製造業
ト販売代行サイトである。売れ筋商品の携帯電話、バッ
者は国境エリアの広西、広
グ、化粧品、キッチン用品などが多く売れている。
東にあるようで、上記の高度
毎日模倣品と戦っており、模倣品の出展に対しては、
専門スタッフ 35 人を配置し、サイト(HP)内を監視し
46 電 機 2016・January
な技術を有する模倣製造業
者は上海等にある。
経済警察との意見交換会
9.中越国境視察
密輸・模倣品の取引が盛んに行われている。ランソン省
からハノイまで約 160km の距離であり鉄道、道路を介し
ベトナム北部には、約 1,400km に及ぶ中国との国境が
あり、中国とは陸路により繋がっている。ベトナム北部の
一地域であるランソン(Lang Son)省にも国境があり、
て密輸・模倣品が運ばれ、中国からの模倣品が ASEAN
地域に流れる玄関口になっていると思われる。
ランソン省では、
密輸・模倣品の活動を生計のために関
複数の国境ゲート(出入国地点)がある。今回はタンタ
わっている人が多く、
模倣品については中国からの経由地
イン(Tan Thanh)
、ヒューギ(Huu Nghi)の各国境ゲー
になっており、
ほとんどが中国製造品である。模倣品は国
トを視察した。ランソン省は首都ハノイの北東部に位置
際ゲートではなく辺境ゲートから夜に運び込まれることが
している関係もあり、陸路による中国との貿易が盛んに行
多く、
摘発のためには偵察部隊を配置して対応している。
われている。この国境を行き交いするベトナム側の大型ト
模倣品の取締りは元で対応しなければ根絶はできない
ラックが中国国内の国境付近の町まで移動し、中国とベ
ため、そのためにも重要なものは情報であり、真贋判定
トナムとの物流を担っている。
の情報だけでなく、模倣品業者などの情報を提供して欲
国境ゲートが設置されている場所は山に囲まれている
ので、大型トラックは国境に設けられたトンネルを通行し
しいとの依頼があった。
日本側から提供できる情報は限られており、真贋判定
ているが、国境ゲートから外れた国境にあっては人が通
の情報であれば提供可能で
行する山道などもあり、
人力で模倣品を運搬することは可
あるが、模倣品業者などの
能である。したがって、
国境
情報がわかっていればわざ
のどのエリアで人力運搬する
わざベトナム現地機関に取
かを特定することはきわめて
締りを依頼する必要もなく、
難しく、
人が運搬する模倣品
ベトナムとして真摯に取締り
を国境エリアで取締ることは
を行って欲しいと感じた。
難しいという実態が伺えた。
ランソン省現地政府との
意見交換会
タンタイン国境(辺境)ゲート
11.市場調査(ランソン省タンタイン
〔Tan Thanh〕市場)
タンタイン市場は、ランソン省のタンタイン国境ゲー
トから歩いて数分の場所に立地する賑わいのある国境市
中越国境(タンタイン)
ヒューギ国境(国際)ゲート
場である。この市場を視察した理由は、中国製の商品を
満載した多くの大型トラックが、タンタイン国境ゲートを
10.ランソン省政府機関との
意見交換会
<参加者>
①ベトナム側 10 名
ランソン省商工課副課長 Nguyen Trong Nghia氏、
他
②日本側 22 名
通ってベトナム国内に入ってきており、ゲートに隣接した
タンタイン市場であれば、真正品に混ざって模倣品も多
く販売されていると考えたからである。
2 階建てのビル全体がタンタイン市場であり、ビルの
中に小規模な店舗が多数集まっていた。衣類やバッグ、
時計類、日用品関係の商品など多くの販売コーナーがあ
り、ブランド品も数多く見受けられた。
近隣に大きな街がないため、どの様な顧客向けに販売
中国と隣接するランソン省の政府機関である、上記代
表者らとの意見交換を行った。
ランソン省は、中国長安自治区と約 230km の国境線で
接しており、多数の国際ゲート、辺境ゲートを有しており、
しているのか、よく分からなかったが、恐らく、国境を通
過するトラック業者が、大量に商品を買い込み、街で卸
しているのではないかと感じられた。
我々の調査対象が白物家電であったため、白物家電を
[トピックス]
47
TO P IC S トピックス
扱う店舗を中心に視察を行った。大型の白物家電の展示
法、著作権法、営業秘密法、地理的表示法など 7 つの法
はなかったものの、小型の白物家電(炊飯器、マルチクッ
令を所轄している DIP は、今年、著作権法と商標法の法
カー、ドライヤー、卓上 IH 調理器など)は所狭しと展示
改正を進めているとのことであった。
されていた。また、模倣品と判断しかねるが、携帯電話
著作権法では、インターネット上での著作物の保護に
「iPhone」がいたる所で展示、販売されていた。小型白
ついて、商標法ではマドリッドプロトコル加入のための対
物家電では、日本メーカーのドライヤー、マルチクッカー
応と音の商標の保護を改正ポイントとしている。マドリッ
の模倣品が販売されていた。わずか 30 分足らずの視察
ドプロトコルへの加入により、タイの企業が海外で商標
であったが、当初の狙い通り、多数の模倣品を発見する
登録を受けるのが容易になるといったメリットがある。
ことができた。
次に、特許法では、①ヘーグ協定への対応、②特許出
今回は、国境ゲートの視察がメインであったため、タ
ンタイン市場の調査を十分に行うことはできなかったが、
腰を据えて調 査を行えば、
願業務などの業務の効率化、③ドーハデコレーションへ
の対応についての改正を予定している。
また、出願公開制度では、公開時期を 18 カ月以内と
もっと多くの模倣品を発見で
し、審査請求制度では審査請求期間を出願から 3 年以内
きたのではないかと思う。次
とする改正について検討している。
回以降は、十分に時間を取っ
て市場調査を行いたい。
模倣品対策および侵害防止対策は、タイでは大変重要
タンタイン市場
視している施策であり、DIP の中にも、知財権侵害防止
鎮圧事務局といった部署があり、知財権侵害に関わるファ
12.タイ知的財産局(DIP)との
意見交換会
シリテーターやコーディネーターといった役割を担っている。
<参加者>
関又は法執行機関である警察、検察、裁判所、関税局と
①タイ側 10 名
副局長 Auramon Supthaweethum 氏、他
②日本側 7 名
(JETRO バンコク知的財産部長 高田元樹氏、知的
但し、知財権侵害防止鎮圧事務局では、知財権侵害の取
締りは行っていないため、DIP では、知財権侵害の取締機
緊密な連携を取って、模倣品対策および侵害防止対策を
行っている。権利者から情報の提供があれば、これらの
対策を促進することができるので、今後とも、日本政府、
JEMA 調査団と連携を深めていきたいとの要望があった。
財産権専門家 澤井容子氏含む)
Auramon 副局長より、タイと日本は友好関係にあり、
今回の JEMA 調査団の訪問は DIP の取組みに関心が高
いことの表れで大変喜ばしく、タイにおける知的財産権
の出願・権利化について活発な議論を期待する旨挨拶が
タイDIPとの意見交換会
タイ DIP との記念写真
あった。
タイ政府は知的財産権政策として、DIP の業務効率改
善による早期権利化を推進しており、①内部の業務の効
13.JEMA 家電海外課題専門委員
会タイ分科会への参画
率化、②国際標準への対応、③国のイメージの向上の 3
JEMA 家電海外課題専門委員会タイ分科会は、タイ現
点の組織改革に着手している。具体的な組織改革として
地会社(シャープ、東芝、パナソニック、日立、三菱)
は、①人材(特許、商標担当審査官の増員)と、②マネ
5 社から構成されており、JEMA 家電部からの各種情報
ジメント(IT 関係のインフラ整備〔e ファイリング、オン
共有が年に 2 回のペースで開催されている。
ライン対応〕
)の面で計画しているとのことであった。
タイの知的財産権法制度の動向として、特許法、商標
48 電 機 2016・January
今回、知的財産保護専門委員会調査団はタイ DIP を
訪問する機会があったので、上記タイ分科会のメンバー
であるタイ現地会社の方々とお会いし、現地における知
て商品の形状、デザイン、ブランド等の判別方法につい
財課題、活動等について情報を共有化したいと考えた。
て地道にベトナム取締り職員に対し継続して教育してい
上記タイ分科会では JEMA 家電部の知的財産保護専
門委員会の設立目的、活動内容を報告し、タイ現地会社
の各社に対し委員会活動について理解を願った。
第 4 回となる今回の海外調査は、ベトナムにおける模
倣対策ツールであるハノイ真贋判定セミナー参加を通し、
く必要性を感じた。
また、セミナーでのプレゼンは、多くの参加者に理解
してもらう為に現地の言葉で行う方が有効であり、一方
で通訳を使う場合はプレゼンの時間配分に注意すること
が分かった。
模倣品情報・対策を委員会調査団メンバー各社に展開す
今回、ベトナムと中国との国境ゲートを視察し、国境
ることを主目的としている。さらに、2012 年に訪問でき
ゲートにおける大型トラックや人の往来、商品を満載し
なかったタイ DIP へ赴き、タイの最新法改正、行政動向
た多くの大型トラックが中国からベトナムに連なって通り
等につき意見交換を行うことでタイにおける知財・模倣
抜けていくのを目の当たりにした。中国と隣接するベトナ
対策活動に役立てることを報告した。
ムは陸路および海路を通して盛んに貿易が行われており、
中国から流入する模倣品を根絶するには、ベトナム政府
の行政機関(389 委員会、市場管理局、経済警察など)
の組織を超えた連携が必要であり、特に、各行政機関を
巻き込むような大掛かりな模倣品対策の提案については
トップダウンでなければ各行政機関を動かすことは困難
であると感じた。さらに、模倣品製造業者の多い中国か
らの流入を防止する点から中国政府とベトナム政府の連
携が必要と感じた。
タイ DIP の訪問では、直近のタイ当局が、実施しよ
JEMA 家電海外課題専門委員会タイ分科会
うとしている仕組み、制度についての説明があり、今
後、特許に対するタイへの取組みが参考になった。また、
14.おわりに
DIP から知財制度の法改正に関して、かなり詳しい説明
を受けることができた。これらが改正されれば、タイの出
今回、
「ハノイ真贋判定セミナー、ベトナム政府機関と
願と先進国の出願を一元的に管理することができるように
の意見交換会、中越国境視察」に参加することにより、
なる。グローバルに出願を管理する立場としては、非常
前回の「JEMA ベトナム模倣品調査」の調査結果に加え
に歓迎できる改正内容なので、早期に法改正が行われる
て、より確かで多くの情報を得ることができた。
ことを期待したい。
ベトナムの模倣品対策に対する、日本経済産業省、
タイ現地日系企業の組織責任者と知財状況につき意見
JETRO の考え方・進め方を知ることが出来て、今後の取
交換ができたことも有意義であった。洗濯機、冷蔵庫な
組みに対して、知的財産保護専門委員会としての対応、
どの大型家電を製造販売している日本企業においては、
知
課題の見直しを考える必要性を感じた。
財課題としては、
現地開発による知財体制、
知財リスク対
セミナー参加企業を通じて、模倣品対策に苦慮してい
応などにも関心があること、
現地の声を聞き、
現地の実態
る日本の異業種メーカーとの意見交換が出来たことは大
に即した知財対策を進めることの重要性を改めて感じた。
変有効であった。また、各社とも模倣品においては同じ
模倣品対策におけるベトナムへの取組みは、今後も経
ような問題を抱えており、今後の対策の進め方について
済産業省、JETRO の進め方を参考にして活動すると共
非常に参考になった。
に、ASEAN 地域については、全体の纏めを実施するた
オーソドックスではあるが、日本企業として、一度に多
めに ASEAN で未調査のマレーシア、シンガポールの模
くの政府機関などに対して模倣品被害とそれに対抗する
倣品状況、さらには ASEAN から流出していると考えら
姿勢をアピールすることができる真贋判定セミナーを通し
れるインド、中東にも調査を進めていく必要性を感じた。
[トピックス]
49
TO P IC S トピックス
韓国電子情報通信産業振興会との
第 8 回定期交流会報告
一般社団法人 日本電機工業会
家電部次長 兼 企画業務課長
江藤 一哉
1.はじめに
(2)輸出・輸入
2014 年の韓国家電産業の輸出は前年比 0.3%減少し
一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)と韓国電子
情報通信産業振興会(KEA)は、グローバル化の一環と
た 148 億ドル、輸入は 10.5%増加した 53 億ドル、貿
易収支は 5.5%減少した 95 億ドルであった。
して 2008 年に友好協力協定を締結した。その後、毎年
2015 年 上 半 期の 韓 国 家 電 産 業の輸 出は 前 年 比
度交流会を開催しているが、今年度は、第 8 回目の交流
18.0%減少した 61 億ドル、輸入は 11.9%減少した 25
会を 12 月 3 日 ㈭ に日本で開催した。
億ドル、貿易収支は 21.7%減少した 36 億ドルである。
今回は、南仁錫副会長はじめ 4 名の KEA メンバーが
来日された。交流会の場では、両国の家電製品の動向、
全産業の輸出(2,686 億ドル)に占める家電産業の
輸出は 2.3%であった。
海外戦略、廃家電からの冷媒回収を中心に意見交換が実
施され、KEA との交流を深める大変有益な機会になった。
2.2 大型家電市場の現状
(1)2014 年
概略は以下のとおり。
輸出は 4.6%増加した 36 億ドル、輸入は 17.8%増加
【韓国電子情報通信産業振興会側出席者】
副会長(CEO)
南 仁錫
環境エネルギー Center 次長
鄭 美淑
特許支援 Center 課長
朴 ハナ
国際通商 Team 課長
金 智惠
した 4 億ドルであった。米国向けは 5.0%減少、イラン
向けは 6.8%減少、中国向けは 64.4%増加した。
(2)2015 年上期
輸出は 9.7%減少した 16 億ドル、輸入は 6.6%減少
した 2 億ドルであった。米国向けは 0.1%減少、中国向
2.韓国家電機器市場の現状
2.1 韓国家電機器市場の現状
(1)生産
韓国家電産業の生産は、2014 年が 47.4 兆ウォンで
前年比 0.9%増加、2015 年上半期が 22.7 兆ウォンで
2.6%減少した。
スマート家電(モバイル/高効率/高性能など)及
びプレミアム製品(UHD / OLED など)を中心に増
けは 10.0%減少、イラン向けは 24.6%減少した。
2.3 主要関連会社の製品動向
次のような製品を開発・販売している。
(1)サムスン電子
①シェフ・コレクション冷蔵庫(図 1)
ミシュラン三ツ星のシェフらと共同企画・開発した専門
フードケア冷蔵庫。最適の温度で食材の保管が可能。
②アッド・ウォッシュ洗濯機(図 2)
加したが、韓国国内ではテレビ等の部分品の生産が増
世界初でドアに小さい窓を付け、洗濯機が動いてい
加し、完成品の生産が減少した。
ても洗濯物の追加が可能。
2015 年上半期で増加した品目とそれらの前年同期
③アクティブ・ウォッシュ洗濯機(図 3)
比は、エアコン 187.4%、洗濯機 122.8%、電熱機器
給水台と洗濯板が一体型で洗濯槽のカバーに取付け
122.0%、乾電池及び蓄電池 119.5%であった。
られ、下洗い専用の水噴射システムを搭載。
50 電 機 2016・January
2.4 大型家電 2015 年の市場見通し
2015 年の大型家電の世界市場は、前年比 4.3%減少し
た 347 百万台の見通し(富士キメラ)
、韓国からの輸出
は、14.1%減少した 31 億ドルと見通している。
図 1 シェフ・コレクション
冷蔵庫
図 2 アッド・ウォッシュ
洗濯機
2.5 質疑応答
JEMA:生産でエアコンが飛び抜けて伸びているのはな
ぜか。
K E A:今年の夏が暑かったためである。
JEMA:天候でかなり変動があるのか。
K E A:これだけの増加は異常である。一昨年に売れな
かった反動もある。
図 3 アクティブ・ウォッシュ
洗濯機
JEMA:韓国の国内市場出荷はどのような傾向か。
K E A:韓国内向けは、白物家電ではプレミアム品は殆
ど国内生産である。一般家電品は、中国からの
輸入品もある。
(2)LG 電子
① 上は冷蔵、下は冷凍の 2 ドア冷蔵庫(図 4)
欧州の最高エネルギー効率等級の A+++ より約 20%
多く省エネできるプレミアム冷蔵庫。
②センタム洗濯機(図 5)
3.韓国電子・IT企業の海外進出の現状
3.1 韓国電子・IT 企業の海外進出の概要
洗濯槽の振動を減らし、耐久性とエネルギー効率が
向上する一方、騒音も低減。
韓国の電子・IT 企業の海外進出は、1980 年代の北米
進出を機に始まり、中東アフリカに至るまで世界全域に
③トロム・ツイン・ウォッシュ洗濯機(図 6)
洗濯機での分離洗濯がしたいユーザーのためにドラ
拡大した。
2000 年代の半ばをピークに次第に減少傾向である。
ム洗濯機と渦巻き式のミニウォッシュを統合。
3.2 主要企業の海外進出の現状
(1)サムスン電子
海外の生産法人 34 ヶ所、販売法人 62 ヶ所、R&D
センター 19 ヶ所などを運営中である。
(2)LG 電子
海外の生産法人 31 ヶ所、販売・マーケティング法
図 4 上は冷蔵、下は冷凍の
2 ドア冷蔵庫
図 5 センタム洗濯機
人 60 ヶ所などを運営中である。
(3)東部大宇
全世界に生産法人 3 ヶ所、販売法人 32 ヶ所を運営
中である。
3.3 特徴
① 韓国の家電企業の海外進出における変化
北米→ 西欧州→ 東南アジア→ 社会主義経済圏→
図 6 トロム・ツイン・ウォッシュ
洗濯機
南米→中東アフリカ
[トピックス]
51
TO P IC S トピックス
② 地域毎の進出理由
大量排出事業者に温室効果ガスの削減目標を設定し
北米、西欧州:アンチダンピングの回避、現地市場
管理する制度。2014 年時点で 560 事業者が対象と
の需要に迅速な対応。
なっている。
東南アジア:先進国の輸入規制対象の迂回輸出、価
② 排出権取引制度(2015 年~)
格競争力強化に向け人件費削減。
企業に排出許容量を割当、排出権の取引を通じ削減
社会主義経済圏の開放により生産・販売基地を構築。
義務を達成するようにする市場基盤の政策。
③ 合弁投資より単独投資が中心。
第 1 次計画期間(2015 ~ 2017 年)は、525 事業者
④ 本社中心の中央集権型経営方法。
が対象となっている。
3.4 質疑応答
JEMA:2014 年の投資金額が急激に減少したのはなぜか。
K E A:常時、前年が急激に伸びるとその反動がある。
2013 年にベトナムに大規模投資があり、その影
響とも考えられる。
JEMA:東部大宇は、第 3 位の家電メーカーか。
K E A:従来大宇は、サムスン電子、LG 電子に並んで
いたが、その力は無くなって東部に買収された。
(4)電気・電子業種における温室効果ガスの削減目標
電気・電子業種の削減目標:2020 年エネルギー
7.9%、非エネルギー 83.9%。
非エネルギーの削減手段は、
家電製品の冷媒(HFCs)
及び重電機器の絶縁剤(SF 6)の回収で回収率目標は、
2017 年 44%、2020 年 64%となっている。
「電気・電子製品及び自動車のリソースサイクルに関
する法律」の施行を通じ達成するという計画である。
第 3 位は取り戻していないが、そのために努力
している。中南米などでは大宇ブランドが残って
いる。
4.家電製品フッ素系ガス規制現況
4.2 韓国のフッ素系ガス管理法制度
(1)韓国の冷媒関連法体系
“オゾン層保護のため
の特定物質の製造規
制等に関する法律”
2012 年時点で世界 7 位の温室効果ガス排出国であ
り、約 100 年間(1900 〜 2011 年)の累積排出量は世
界 16 位である。
“低炭素グリーン成長
基本法”
“大気環境保全法”
“温室ガス排出権の
割当及び取引に
関する法律”
“電気・電子製品
及び車の資源循環に
関する法律”
4.1 フッ素系温室効果ガス規制の背景
(1)国際社会における韓国の位置付け
“廃棄物管理法”
温室ガス・
エネルギー
目標管理制
特定物質の
製造輸入許可制
環境性保障制
特 定 物 質(HCFC)
(冷媒、発泡剤、エアロ
大型機器
(冷蔵庫、エ
アコン、自販機など)、
充電容量 50kg 以上
空調機(高圧ガス法管
ゾール、溶剤、消火薬
剤など)
通信事務機器、中型
機器(電気浄水器な
ど)
、小型機器、移動
電話端末、
車
理対象)
*2017年まで100kg
空調機
冷媒管理制度
管理業社
(ODS 代替
物質消費)
グリーン成長
5 カ年計画
電気・
電子業種
温室ガス
排出権取引制
割当対象業社
(2)2020 年自主的な温室効果ガス削減目標の設定及び
法制度的基盤
2009 年 11 月に国から温室効果ガス削減目標の発表
が初めてあり、2020 年までの温室効果ガス排出量の見
込み(776.1 百万トン)に比べ 30%を削減することと
なった。
法制度的基盤は、2011 年に低炭素グリーン成長基
本法、2013 年に温室効果ガス排出権取引及び割当に
関する法律を制定している。
(3)温室効果ガス削減制度の導入・運営
① 温室効果ガス · エネルギー目標管理制度
(2012 年~)
52 電 機 2016・January
(2)フッ素系ガス関連法律の管理領域
区 分
管理領域
生産
使用
廃棄
低炭素グリーン成長
基本法
○
○
○
温室ガス排出権取引法
○
○
○
大気環境保全法
○
備 考
温室ガス発生の全段階の
間接的管理
(該当企業が自主的に温室
ガスの削減を履行)
*空調機に限定
廃棄物管理法
○
*家電製品の冷媒
資源循環法
○
*車、家電製品の冷媒
オゾン層保護法
○
高圧ガス安全管理法
○
* ODS に限定
○
*高圧力ガス物質に限定
(3)電気・電子製品及び自動車の資源循環に関する法律
目的:電気・電子製品及び自動車の有害物質の使用抑
制、リサイクルしやすく製造して、その廃棄物を適切
4.3 家電製品フッ素系温室効果ガス排出現況
(1)家電製品冷媒の使用現況
区 分
種類
にリサイクル(2008 年 1 月施行)
。
管理対象:フッ素系温室効果ガス(法第 27 条及び施
HFC、SF 6、PFC)
主要内容:廃電気・廃電子製品・廃自動車の廃冷媒を
適正回収して、廃自動車の場合、廃ガス類業者が関連
基準に従って適正に処理する。
炭素系列
備考
モントリオール
議定書規制物質
(使用禁止)
CFC
−
−
HCFCs
R-22
エアコン
先進国は 2030 年
まで全廃計画
R-134a
エアコン、
冷蔵庫
R-22 代替物質
R-410A
エアコン、
冷蔵庫
R-22 代替物質
電気・電子製品:冷蔵庫の CFC などの冷媒物質(冷
自動車:気 候 生態系変化誘 発 物質(CFC、HCFC、
使用先
塩素系列
行令 27 条、施行規則別表 1)
蔵庫、エアコン、自販機、電気浄水器)
冷媒
HFCs
自然冷媒 イソブタン R-600a
冷蔵庫
漸進的に使用拡大中
(2)家電メーカーの冷媒使用及び管理現況
① 製品別冷媒使用現況
施行規則別表 1 製品別リサイクルの方法と基準(第 4 条関連)
リサイクルの方法
リサイクルの基準
解体・圧縮・破砕・切断などの中
間処理過程を経てリサイクル可能
な部品を再使用したり素材別に分
離してリサイクル
2. 冷 蔵 庫 は 塩 化 フ ッ 化 炭 素
(CFC)などの冷媒物質(オゾン
層破壊指数が 0 である物質は除
外する)を安全に別途回収しなけ
ればならない。
冷蔵庫は R-134a、エアコンは R-410A を主に使用し
ている。
・冷蔵庫は徐々に自然冷媒(R-600a)に切り替えつ
つある(現在約 50%)
。
・エアコンは自然冷媒仕様の難しさ(安定性)で、
R-410A の占める割合が 80%以上、一部 R-22 を
使用している。
(4)温室効果ガス排出権の割当及び取引に関する法律
目標管理制運用ガイドラインの改定を通じ、ODS 代
② 貯蔵・製造段階での HFCs 使用管理記録の現況
製品別、モデル別、月別の HFCs 使用関連記録を管
替物質の使用による排出量明細書の提出を義務化して
理している。
いる。
・貯蔵と製造段階で製品別、月別購買量、使用量、
在庫量に関する最近 5 年間の資料確保が可能。
・一部の事業所は貯蔵段階で工場別購買、在庫管理
(5)国内外フッ素系ガス管理制度の現況
E U
米 国
韓 国
管理方法
直接規制
直接規制
直接規制
管理段階
製造段階
製造及び使用段階
廃棄段階
履行主体
メーカー
メーカー及び
ユーザー
メーカー/
ユーザー
規制内容
主要関連法令
その他
ラベリング表記/ 回収及びリサイク 廃家電冷媒の適正
HFCs 段階的削減 ル/冷媒漏出防止 回収処理/廃棄時
/ラベリング規定 にステッカーを貼
/
って排出
Regulations
842/2006
Section 608/
Section 611
F-Gas 使用製品別 州ごとに自主的な
販売禁止
冷媒管理(カリフ
2015 年より施行 ォルニア、ミネソ
タ州等)
資源循環法/
廃棄物管理法
廃棄段階の
処理費用
メーカーが負担
が行われるため、貯蔵タンク在庫量の正確な継続
ができない。
(3)資源循環法を通じる温室効果ガス排出規制のネック
① 廃家電回収インフラ構築が不足
a.冷媒回収インフラの構築が必要
・冷媒回収、焼却処理及びリサイクル企業のインフ
ラが大幅に不足している。
・家電リサイクリングセンターの冷媒回収に関する基
準及びマニュアルなどがない。
b.非制度圏の廃家電回収の監督
・非制度圏で行われる廃家電冷媒回収に関する政府
の徹底した監督が必要。⇒管理監督及び関連法の
不在により家電メーカーの負担が一方的に増加す
る。
[トピックス]
53
TO P IC S トピックス
② 主体別責任の明確化が必要
めの関連制度の整備が必要
a.冷媒回収インフラ構築の主体
・体系的な冷媒回収のインフラ構築が必要であるが、
構築主体及び責任所在の明確化が必要。
b.段階別、主体別排出量に対する責任
・メーカーの責任は製造段階に限定することが必要。
・使用、廃棄段階の排出量の測定が難しい。
c.フッ素系ガス供給業者の管理
a.温室効果ガス排出規制のためには、資源循環法な
ど関連制度の補完及びインフラの構築が必要
・製造現場の脱漏排出量は統制できるが、使用段階、
廃棄段階は現況把握及び統制ができない。
b.環境にやさしい代替冷媒の研究開発に対する政策
的支援及び環境にやさしい冷媒使用に対するイン
センティブを提供する。
・用途別使用による排出量の算定が難しいので、供
給業者の管理に対する方策も考慮する必要がある。
4.4 質疑応答
JEMA:対象は、韓国国内生産品か。
(4)対応案
K E A:製造、使用、廃棄の 3 段階に適用されるので、
① 排出量の算定のための効率的な産業界インベント
使用・廃棄段階では、輸入品も対象。輸入品の
リーの構築体系を作る
使用・廃棄の責任をどう負担させるか、輸出品
インベントリー構築、事業所固有排出係数の開発、
はどうするかについて議論が行われている。
不確度算定などは多くの時間と費用が必要である。
・政府の政策の正しい伝達や事業所で前もって準備
する期間の確保が必要であり、企業の対応能力を
考慮した制度として企業の誠実な義務遂行を担保
する。
5.JEMA からの説明
JEMA からは、日本の白物家電産業の動向、日本の白
物家電のグローバル展開動向(概括)
、廃家電からの冷
②フッ素系ガス温室効果ガスの排出規制及び削減のた
媒回収について説明した。
交流会出席者
前列右側から KEA・南副会長、JEMA・海老塚専務理事
54 電 機 2016・January
高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた
研究開発の取組み
~ J AE A 幌延 深 地 層 研 究センター視察~
一般社団法人 日本電機工業会
原子燃料サイクル専門委員会
委員長 深
1.はじめに
わが国においては、原子力発電に伴い発生する使用済
澤 哲生
◇
処分法に基づく基本方針の改定案」が閣議決定された。
改定された基本方針では、高レベル放射性廃棄物の最終
処分は、将来世代に負担を先送りしないよう、現世代で
燃料を再処理し、取出したウランやプルトニウムを再度
取り組むべき問題として、国民や地域の理解を得ながら、
燃料として有効利用しつつ、放射性廃棄物の減容化や有
国が前面に立って取り組んでいくことが明示され、全国
害度低減を可能とする「核燃料サイクル」の推進を基本
シンポジウムの開催等、地層処分に係わる全国的な理解
方針としている。また、再処理の際に生じる高レベル放
活動が展開されている。
射性廃棄物(ガラス固化体)については、2000 年に成
かかる状況を踏まえ、一般社団法人 日本電機工業会
立した「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」
(最
(JEMA)原子燃料サイクル専門委員会では、地層処分
終処分法)に基づき、人間の生活環境から安全に隔離す
に係わる研究開発の動向等の理解を深めるべく、JAEA
るため、深い地層が本来持つ「物質を閉じ込める」性質
幌延深地層研究センターを視察することとした。
を利用し、地下 300m 以深の安定した地層に処分(地層
処分)する方針となっている。
更に、2014 年 4 月に閣議決定された「エネルギー基
本計画」において、
「地層処分の技術的信頼性について
最新の科学的知見を定期的かつ継続的に評価・反映する」
との方針が示された。
2.JAEA 幌延深地層研究センター
について
JAEA 幌延深地層研究センターは、19 万 m2 の広大な
敷地に、地上施設(図 1)と深度 350m を超える地下施
地層処分に係わる研究開発については、国立研究開発
設(図 2)を有し、地下水や岩盤など地下深部の地質環
法人 日本原子力研究開発機構(以下 JAEA)を中心とし
境を把握するための「地層科学研究」と、実際に地下深
て、深地層処分技術の信頼性向上や安全評価手法の高度
部で地層処分システムの設計・施工が可能かを確認する
化等に向けた基盤研究が進められている。JAEA は、実
ための「地層処分研究開発」等が行われている。当セン
際の深地層を用いた研究開発の拠点である東濃地科学セ
ターで得られた成果は、他の研究機関、研究施設の成果
ンターと幌延深地層研究センターにおいて、関連機関と
と合わせ、国の安全基準等の策定や NUMO が進める最
協力して今後の最終処分地選定調査で必要となる調査研
終処分事業の基盤情報として活用される。
究を行っている。
わが国の地質は、堆積岩(泥岩)と結晶質岩(花崗岩)
一方、地層処分の実施主体である原子力発電環境整備
とに大別され、JAEA 幌延深地層研究センターでは、塩
機構(以下 NUMO)が、2002 年から処分地選定調査を
水系の地下水と、地下水が主に岩石の粒子の間を流れる
受け入れる自治体を公募してきたが、現在に至るまで処
堆積岩の地質環境における地層処分技術に関する研究を
分地選定調査(文献調査)に着手できていない状況にあ
行っている。一方、JAEA 東濃地科学センターの瑞浪超
る。このため、国において最終処分に関する政策の抜本
深地層研究所では、淡水系の地下水と、地下水が主に岩
的な見直しに向けた議論が行われ、2015 年 5 月「最終
石の割れ目を流れる結晶質岩の地質環境における研究を
◇日立 GE ニュークリア・エナジー株式会社 日立事業所 燃料サイクル部 技術参事
[トピックス]
55
TO P IC S トピックス
行っている。
NUMO が段階的に進める最終処分地の選定に先立ち、
所を放射性廃棄物の最終処分を行う実施主体へ譲渡し、
又は貸与しない。
」こと等が約束されており、研究終了後
その各段階で必要となる技術を実際の地質環境に適用し
は地上の研究施設を閉鎖し、地下施設を埋め戻すことに
て評価することが必要であること、また、わが国の地質
なっている。
環境は、海外とは異なり、海外の技術や知見だけでは不
十分であることから、日本の代表的な 2 つの地質環境に
おいて研究を進めている。
3.地層処分とは
地層処分とは、天然の岩盤と人工物を組み合わせた多
重バリアシステム(図 3)によって、高レベル放射性廃
棄物を人間の生活環境から隔離する概念で、火山活動や
地殻変動などの影響の少ない安定的な地下深部(日本で
は、300m 以深)に、適切に設計した人工のバリアに閉
じ込めた廃棄物を埋設処分することである。
埋設する高レベル放射性廃棄物の形態は、使用済燃料
を再処理せずにそのままの形で埋設する「直接処分方式」
図 1 幌延深地層研究センター
(出典:幌延深地層研究センター HP)
と、再処理の際に生じる放射能の高い廃液をガラス原料
と溶かし合せて、ステンレス製容器の中で固形化した「ガ
ラス固化体の形で埋設する方式」とに大別される。わが
国は資源の有効利用の観点と高レベル放射性廃棄物の減
容化、有害度低減の利点から再処理を基本方針としてい
るため、幌延深地層研究センターで行われている調査研
究も、国の方針に基づき、ガラス固化体の処分を念頭に
置いたものとなっている。
図 2 地下施設概要図
(出典:幌延深地層研究センター HP)
JAEA 幌延深地層研究センターが幌延町において調
図 3 わが国の地層処分の概念(出典:JAEA HP)
査研究を行うにあたっては、2000 年 11 月に北海道、幌
延町及び核燃料サイクル開発機構(当時)の間で、
「幌
地層処分を実現するためには、最終処分地(天然バリ
延町における深地層の研究に関する協定書(三者協定)
」
ア)の選定が不可欠であるが、選定に先立つ調査では、
が締結された。本協定では、
「研究実施区域に、研究期
確立された技術を用いて信頼性の高いデータを取得する
間中はもとより研究終了後においても、放射性廃棄物を
評価技術が必要となる。調査・評価技術を事前に検証す
持ち込むことや使用することはしない。
」
、
「深地層の研究
るための深地層の研究施設として設立されたのが、JAEA
56 電 機 2016・January
幌延深地層研究センターである。
・換気立坑:掘削深度:380m
・西立坑 :掘削深度:365m
4.幌延深地層研究計画について
調査坑道掘削状況
幌延深地層研究計画は以下の研究テーマで構成され
・深度 140m 調査坑道:掘削長 186.1m
ており、全体の調査研究期間は 20 年程度となっている。
・深度 250m 調査坑道:掘削長 190.6m
(図 4)
・深度 350m 調査坑道:掘削長 757.1m
[第 1 段階]
地上からの調査研究段階
今回、西立坑より入坑し、深度 350m の調査坑道及び
地表からの調査により地下深部の地質環境
坑道での調査研究の状況を視察した。
350m の調査坑道までは、
「人キブル」と呼ばれる工事
モデルを予測・構築
[第 2 段階]
坑道掘削(地下施設建設)時の調査研究
用エレベータ(図 5)を利用し、約 4 分半かけて移動した。
段階
地下施設を建設しながら、第 1 段階の予測
の検証と工学技術の有効性を確認
[第 3 段階]
地下施設での調査研究段階
地下施設において地層処分システムの性能
確認、物質移動に関する研究
図 5 西立坑の人キブル(左)と人キブル深度表示盤(右)
2015 年度は第 3 段階の調査研究が進められている。
項目
年度
H12
H17
H22
調査研究
第 1 期中期計画
H26 H27
第 2 期中期計画
H30
第 3 期中長期計画
第 1 段階
H13.
3
調査開始
深度 350m の調査坑道は、3 本ある立坑を結び、更に
立坑から離れて水平方向に延び、深度 350m の地下空間
を構成する全長が 757.1m の横坑である。
(図 6)
第 2 段階
第 3 段階
地下施設
施設建設
地上施設
研究管理棟・試験棟:H18.
5.
31 竣工
ゆめ地創館:H19.
6.
30 開館
国際交流施設:H21.
10.
17 開館
H17.
11 掘削開始
図 4 幌延深地層研究計画スケジュール
(出典:幌延深地層研究センター HP)
5.地下施設及び地下施設における
調査研究について
幌延深地層研究センターの地下施設は、3 本の立坑と
それを結ぶ水平の調査坑道で構成されており、調査坑道
にて地層処分に関する具体的な調査研究が行われてい
る。
図 6 350m 調査坑道での主な調査研究実施場所
(出典:幌延深地層研究センター HP)
掘削後の壁面は、鉄骨の梁(支保)が等間隔で設置さ
れ、壁面全体にコンクリートが吹き付けられ、強度が保
5.1 地下施設の状況
たれている(図 7)
。立坑を通して常に新鮮な空気が供給
立坑掘削状況
されていることから、地上と同様の活動が可能な状態に
・東立坑 :掘削深度:380m
ある。
[トピックス]
57
TO P IC S トピックス
(2)水平坑道掘削影響試験
水平坑道を掘削した際の周辺岩盤と地下水への影響
を把握することを目的として、試験坑道(図 9)掘削前
に、周辺に観測孔を設け、坑道掘削前後の水圧・水質
と透水性の変化を観測する試験。
図 7 350m 調査坑道
坑道から染み出る地下水の排水は、近隣の北るもい漁
協との協定に基づき、脱ホウ素・脱窒素処理の後、河川
下流に放流し、定期的に水質調査を行っている。
掘削工事における湧水抑制対策としては、岩盤に孔を
あけ、水みちとなる岩盤の割れ目にセメント等の固化剤を
図 9 試験坑道 2
圧入・充てんするグラウト工法が採られ、適切な工事が
施工されていた。
また、掘削時には、地下水にメタンガスが溶存する堆
(3)オーバーパック腐食試験
ガラス固化体に地下水が接触することを防止(抑止)
積岩(泥岩)であるため、メタンガス検知器を設置し、
するための金属容器であるオーバーパックの模擬体を、
濃度を観測しながら防爆仕様の電動掘削機器を使用する
緩衝材とともに埋設し地下水に接触させて、緩衝材中
等、メタンガスへの万全な安全対策と細心の注意が払わ
に設置した電位計等で腐食の様子をモニタリングする
れ、調査研究が進められていた。
試験(図 10)
。
5.2 地下施設における調査研究
350m 調査坑道では、以下の調査研究の実施状況を視
察した。
(1)原位置トレーサー試験(物質移行試験)
岩盤内の物質の移動(移流・分散や拡散・収着)を
評価するため、実際の岩盤中で様々なトレーサーを用
いて、その移動に関するデータを取得する試験(図 8)
。
図 8 原位置トレーサー試験装置
58 電 機 2016・January
図 10 オーバーパック腐食試験概要図
(出典:幌延深地層研究センター HP)
(4)人工バリア性能確認試験
試験坑道床面の直径 2.4m、深さ 4.2m の竪孔に実規
模の人工バリア(模擬オーバーパック、緩衝材)を埋
6.おわりに
使用済燃料の再処理で生じる高レベル放射性廃棄物
設し、
は、ガラス固化体として 30 年から 50 年間程度貯蔵・冷
・処分概念が実際の地下環境で構築できることの実証
却した後、順次、安全性を確認しながら地層処分される
【施工】
計画となっている。
・設計フローの最適化手法の例示【設計】
・熱・水・応力・化学連成現象を評価するための検証
データ取得【計測】
地層処分の対象となるガラス固化体は、2014 年 12 月
末時点で、既に国内に 2,167 本存在し、
「2014 年 12 月
末までの国内原子力発電の運転に伴って生じた使用済燃
の各項目の確認・計測を目的として行う試験(図 11)
。
料を全て再処理し、ガラス固化体にすると、約 24,800 本
になる(含む原子力発電所において装荷中の燃料の燃焼
分)
」
(出典:NUMO HP)と予想されている。既に発生
している以上、
「高レベル放射性廃棄物」の最終処分は、
将来世代に先送ることなく解決しなければならない問題
であり、
「国が前面に立って取組む」との新たな方針の下、
地層処分に対する全国的な理解活動と並行し、科学的に
適正の高い地域(科学的有望地)の提示に向けた検討が
進められている。
このような状況のもと、最終処分地の選定や施設の
建設・操業の実現に向けた技術基盤の確立のために、
JAEA 幌延深地層研究センターでは、坑道を安全確実に
整備していく技術、岩盤や地下水の性質を効率よく調査・
図 11 人工バリア性能確認試験概要図
(出典:幌延深地層研究センター HP)
観測する技術、
人工材料の長期的な性能を合理的に評価
する技術等、
地層処分に必要な技術の信頼性を確認するた
めの調査研究が着実に進められている。今回の視察を通
じて研究状況を確認できたことは、非常に有意義であった。
図 12 入坑前 ゆめ地創館にて
[トピックス]
59
業界報告
IEC・CIGRE(国際大電力システム会議)
合同シンポジウム出席報告
一般社団法人 日本電機工業会
重電部長 目
1.はじめに/CIGRE とは
黒 雅也
3.サブサハラ地域とは
CIGRE(国際大電力システム会議)は、発電機や変
アフリカのサハラ砂漠以南の地域がサブサハラと呼ば
圧器・開閉装置といった電力向け機器やシステムの性能
れている。アフリカでは人口が急増しており、経済が成
向上及び、メンテナンスに関する諸課題の解決に向けて、
長するにつれて、電力需要も拡大していくことが想定さ
技術的検討及び情報交換することを目的に 1921 年にパ
れている。一方、アフリカの国々の多くがそうであるよう
リで設立された国際会議体である。CIGRE は「IEC(国
に、資金難という状況のもとで、この電力需要の伸びに
際電気標準会議)における規格化の前段階において、実
対応するインフラを建設するため、比較的小さなコストで
践的に技術的検討を深める」という意味合いを持った会
設置できる再生可能エネルギー(主に太陽光発電や風力
議体であり、
「送変電を扱う世界で唯一の技術者による集
発電システム)への投資が、優先的に行われている状況
団」とも位置づけられている。
である。
なお、CIGRE では 2 年に 1 回( 西 暦 偶 数 年 )
、創
国際エネルギー機関(IEA)によれば、サブサハラ地
設の地パリにて世界規模での大会(パリ大会と呼ばれ、
域においては現状、人口の 3 人に 2 人が電力のない生活
3000 人超が出席する)を開催しているが、西暦奇数年に
を送っており、家庭用のエネルギーとしては、薪や炭など
はパリを離れた都市で、地域のトピックス性を反映した
の木質燃料に依存しているとのことである。
テーマを選んで、いわば地域大会(規模によって、シンポ
また、経済協力開発機構(OECD)によれば、アフリ
ジウムあるいはコロキュームと呼ばれる)を開催している。
カでは今後も年平均 5%前後の経済成長が続くと予定さ
2015 年には、IEC と合同のシンポジウムが南アフリカ
れており、人口も現在の 9 億 4 千万人から、2040 年には
共和国 ケープタウン市で開催された。市場ニーズやプ
ロジェクト情報の把握を目的に出席したので、以下に概
要を報告する。
17 億人を超えるとされている。
つまりは、経済成長や人口増で、電力需要の大きな伸
びが見込まれている中で、電力インフラを建設するため
の十分な資金が投入されていない地域ということも言え
2.概 要
シンポジウムの概要は以下の通りである。
開催会議
IEC・CIGRE 合同シンポジウム
タイトル
Development of Electricity Infrastructures
in Sub-Saharan Africa
(邦題:サブサハラ地域における電力インフ
るであろう。また、後に紹介するように、十分な解決策
が分からない中で、暗中模索的な開発が進められている
とも言えそうである。
4.IEC・CIGRE 合同シンポジウム
前述の通り、今般開催されたシンポジウムでは、検討
ラの開発)
のタイトルとして、
「サブサハラ地域における電力インフ
開催期間
2015 年 10 月 27 日 ㈫ ~ 30 日 ㈮
ラの開発」が掲げられ、それを出発点に 4 日間のシンポ
開催地
ケープタウン市(南アフリカ共和国)
ジウムが開幕した。大会 3 日目の 29 日には主要な検討
参加者
約 500 名(うち、日本からは 7 名が出席)
委員会(SC:Study Committee)と技術委員会(TC:
60 電 機 2016・January
Technical Committee)の委員長から、討議した内容に
ついての総括が行われる形がとられた。
4.2 シンポジウム概要
このような冒頭の方向付けのあと、20 か国を超える
国々から約 500 人の出席を得てシンポジウムが開幕した。
4.1 CIGRE 会長 開会挨拶
将来を見据えて、今後の標準化・規格化につながるよう、
CIGRE 会長であるフローリッヒ氏(前・スイス連邦工
15 のセッションで総計 90 本の論文が紹介され、各種の
科大学〔ETH〕教授)は、10 月 27 日に開催された開会
課題が論議の俎上に挙げられたが、先進国では実用段階
式の挨拶の中で、サブサハラ地域における電力インフラ
にある技術であっても、途上国では、まだまだ利活用さ
の開発について、以下に箇条書きしたような内容に言及
れていないと感じられた。
している。
正式な発表はないが、地元の南アフリカ共和国の電力
同氏は、アフリカ市場へのアプローチを考える時、下
会社(Eskom 社)からの出席者が一番多く 120 名程度
線を付けたキーワードに代表されるような点への配慮が
が出席。その他、欧州勢(電力会社やコンサルタント主
必要であるということを述べている。別の言い方をすれ
体だが、メーカも参画)やブラジル(コンサルタント)
ば、それぞれに各種・個別の制約があるなかで、それら
からの出席者が目についた。最近、サブサハラ地域でプ
の制約に気配りをしつつ、電力を供給する機器やシステ
レゼンスを上げている中国からの出席者は 7 ~ 8 名程度
ムの開発・実用化・建設を進めていかなければいけない
と思われるが、国家電網(SGCC)総裁が IEC 副会長の
ということであろう。
立場で出席された関係で、その同行者が多かったように
●
保守が容易・いらない:課題を方向づけできる技術者・
感じた。日本からは 7 名(電源開発株式会社:2 名、電
技能者がいない。自分だけでは動けない。現状を変化
力中央研究所:1 名、株式会社 東芝:1 名、日立製作所:
させるためにどうすれば良いかについてアイディアがで
2 名、JEMA:1 名〔筆者〕
)が出席していた。
ない。
●
●
●
特筆すべきは、IEC TC122(UHVAC システム)の検
低コストで建設:ともかく、インフラを建設する資金
討に関連して、電力中央研究所と株式会社 東芝からの
がない。信頼性の高いネットワークを建設したとして
各 1 名が TC122 の国際幹事団を代表して出席、800kV
も、支払い能力を超えた高い電力料金は設定できない。
を超える交流送電系統の国際規格化に関する活動の概要
従って、回収を考えると、どうしても低コストでの建設
紹介を通じて、サブサハラ地域における高電圧・大容量
しか許容できない。
送電の必要性について強調していた点であろう。因みに、
大規模なネットワークから切り離された系統:どうある
Eskom 社では、765kV の交流系統を 30 年程前に既に建
べきかの知見がない。大規模なネットワークに支えられ
設・運用開始しており、すでに 7 つの 765kV 変電所が
た系統ではなく、トラブルが起これば、すぐに停電する
商用運転されている。7 つの内のアルファ(α)
、ベータ
ような脆弱な系統でありながら、住民にとって最適な性
(β)と呼ばれる変電所ではフル GIS が商用系統に適用
能を持った電力系統とする必要がある。
されており、765kVAC システムに関する豊富な運転実績
遠隔地への送配電敷設:系統の安定化技術が必須。ど
を持っていることから、同社の関係者には TC122 関連の
う送電ロスを低減するかについての知見もほしい。
●
HVDC(高電圧直流送電)/ AC 国際連系:長距離
大容量送電システムが必須。国家間・地域間で系統を
連系し、各国がリソースを共有することで資金の最小
化を図ることが必要だが、リーダシップを採れる人材
がいない。
●
再生可能エネルギー適用最優先での技術開発:ともか
く、初期投資が安い電源が必須。CAPEX(初期費用)
が最小となるようなシステムを提案するソリューション・
プロバイダーが求められている。
セッション 3(システム開発と系統の拡張)
で講演の紹介を
受ける東芝 上原氏(着席者右から 2 人目)
[業界報告] 61
業界報告
講演は身近なものとして受け止められた様子であった。
チが必要不可欠であり、その意味で、今回のこのシンポ
シンポジウムを通して得られた感覚を手短に表現すれ
ジウムは成功と評価できる。特に、アフリカからの参加者
ば、納入実績のある自社の標準的システムをできるだけ
にとっては、今後の検討に資するネットワーキングづくり
適用したい欧州の製造者と国際規格に則って製作された
を可能にする何かをつかんだはずであり、それを最大限
世界に通用する製品・システムを受け入れたい使用者の
に活用してほしい」という主旨の全体総括があり、シンポ
「ハザマ」で開催されたシンポジウムと位置づけられるこ
ジウムは成功裏に閉幕した。
とにもなろう。そのような状況の下で、日本製品の信頼性
に関する印象は非常に良く、今後の新技術の適用・開発
に際して交流したいとのニーズもあるように感じられた。
とりわけ、技術的な課題を一緒に考えてくれるという姿勢
に期待がかかっているようである。
4.3 検討委員会/技術委員会委員長による総括
最終日(29 日)には、CIGRE において検討の中心と
なる SC の主要委員長及び、全体で 16 ある SC(今回の
シンポジウムではその内、7 つの SC が参画)を束ねる
TC 委員長から、各分野及びシンポジウム全体での論議
の総括が行われた。紙面の都合もあることから、以下に
は、総括時に提示された内容から、キーワード/フレー
ズのみを紹介することとしたい。
会場の一部では欧州メーカが展示を行い、顧客の質問に答えていた
5.テクニカルツアー
最終日 10 月 30 日にはテクニカルツアーが提供された。
今後、サブサハラ地域の顧客への提案に際しては、以
当方は 765kV 変電所の建設現場及び風力発電所(ウイ
下の内容を加味したものであることが強く求められるよう
ンド・ファーム)訪問のコースを選択した。以下に概要を
になると感じた。
紹介する。
委員会名
総括でのキーワード
・‌情報の共有が重要/豊富な経験は既にある
B3
(変電所)
・‌地域の特殊性に配慮した解決策の立案
・‌将来のニーズをできるかぎり想定した上での計画立案
・‌非常時の復旧計画立案/意思決定方針と具体的な手順の
確認・訓練
・‌安全性に配慮した最小コストでの解決策の立案
・‌標準化
・ファイナンス付与を伴った技術的検討
C6
(分散電源と ・‌遠隔系統であることを念頭においたガイドラインの策定
遠隔地電化) ・‌柔軟性に富んだ強靱な配電系統建設(インフラが建設さ
れると需要が急激に増え、容量が追いつかなくなる)
・‌電力系統の必要性の再確認:建設によってどんな利便性
が得られるか
・‌相互接続とそれによる複合化・集積化
・‌地域性を加味したフレキシブルな系統
・‌ファイナンス、技術標準の準備
TC
(技術委員会) ・‌安全性の確保/持続可能性への配慮
・‌身に釣り合っていること/ほどほどであること
・‌今日までと異なる試みをおこなってみること/気づき
最後に、TC の Waldron 委員長(英国)からは、
「い
5.1 765kV 変電所建設現場訪問
Sterrekus 変電所建設現場を訪問した。セキュリティー
上の理由から、用地近くに寄ることができず、建設現場
を遠目に見るような形での見学となった。
この変電所は、近隣で建設されている原子力発電所の
電力を 765kV 系統に乗せ、南アフリカ共和国の北部系統
に送るために建設されているとのことであった。
(原子炉
形は PWR で、900MW×2 基との説明があった。
)相手
端のカッパ(κ)変電所までは 180km あり、変電所間に
は標高が 900m を超える山岳地帯があるため、送電線路
の設定・建設に際しては、最先端の知見も交えて、各種
の工夫がされているとの説明があった。
変 電 所 に 適 用され る 機 器 に つ い ては、 製 品 認 定
(Qualification)制度が取られており、765kV 側の遮断
ずれの報告も、将来につながるディスカッションが行わ
器はデッドタンク(金属タンク密閉)形で ABB 社製、
れた旨を示すものである。アフリカの電力システムの成長
400kV 側の遮断器はライブタンク(碍子)形で Siemens
には、規格化と標準化の観点からの系統だったアプロー
社製とのこと。リスク分散の意味合いからも、765kV を
62 電 機 2016・January
400kV に降圧する変圧器は Alstom 社製が適用されてい
るとのことであった。敷地上の制限がないことから、単線
結線図をそのまま展開したような形の変電所になっている
のが印象的であった。
6.おわりに
IEC と CIGRE の合同シンポジウムに出席することがで
きた。サブサハラ地域では、鉱物資源が豊富にあり、今
後とも、それらを活用した言わば「国興し」がされようと
5.2 Umoya 風力発電所(Wind Farm)訪問
Umoya 風力発電所を訪問した。この風力発電所は、
再生可能エネルギーの適用拡大を図るため、エネルギー
している。道路、鉄道などの物流インフラ等の整備も行
われているが、経済を動かすためには電力インフラの整
備が必須であろう。
省が制度設計したプログラム(REIPPPP:Renewable
サブサハラ地域における電力インフラの整備は、地
Energy Independent Power Producer Procurement
熱発電や、LNG を活用したクリーン火力発電システム
Program)で建設された第一号案件となるとのこと。2 年
(GTCC:ガスタービンコンバインドサイクル発電システ
ほど前に事業者選定のための入札がおこなわれたが、事
ムを適用したもの)
、二酸化炭素の排出量が低い高効率
業者として選定されて着工して以降、順調に建設が進み、
USC(超々臨界)石炭火力発電システムなど、日本の技
何とか運転にこぎ着けられたとの紹介があった。
術が必要とされる領域に向かっているように感じられる。
年平均で 6.3m/ 秒の風が吹き続ける見渡す限りの大地
また、電力流通機器・システムの領域でも、シンポジウ
で、3.1MW 級風車を含めて 30 台以上がゆっくりと回っ
ムに出席していた、ある Eskom 社幹部は「将来の首都
ていた(合計容量は 66MW 程度とのこと)
。得られた電
圏(Johannesburg 市)の人口集中に備えた電力供給網
力は 132kV に昇圧され、Eskom 社の系統につながって
の整備や防災性に優れた設備形成も我々の課題」と発言
いる。事業者は変電所の設備構成に慣れていないことか
しており、課題の解決に向けて、各種のベストプラクティ
ら、Eskom 社からはいろいろなアドバイスをもらってい
ス(成功事例)の提示が求められていると感じた。
1980 年代後半に有利な為替環境を背景に納入された
るとのことであった。
風車はベスタス製。風車の単機容量/全体の台数、価
日本製品も運転開始後 30 年を経過し、数十年先を見据
格、メンテナンス体制の充実度などを総合的に評価し、
えた保全や更新を実施する時期を迎えている。我々、日
ベスタス社に決定したとのことであった。事業者からみて
本の電機産業としても、実績のあるベストプラクティスを
メーカを評価する際のポイントは ①資本が充実してい
提示する中で、また、保全・更新に関する情報を提供す
るか ②サービスの体制を含めた能力がどれ程あるか る活動を通じ、いろいろな形でサブサハラ地域の成長や
③スペアパーツの供給力がどれ程あるか ④ローカルに
発展に資することができるのではないかと感じている。
サービス拠点を持っているかどうかであり、この観点で、
今後のこの地域へのアプローチについては、当会重電
製品シリーズがどうであるにせよ、日本勢が出ていくとす
業務委員会やインフラ・システム輸出促進検討 WG など
れば、ローカル業者とのチームアップが必須と感じた。
の活動の場において、当会会員企業の方々としっかりと
この発電所は周りに人家も無いが、自然保護にはそれ
なりの配慮をしているということで、無人の大地に「小動
検討していくこととしたい。ご関係の皆様のご理解と一層
のご支援をお願いいたします。
物がいます。注意しましょう」という内容の掲示が至る所
にあり、微笑ましかった。
Eskom 社 765kV 変電所(765kV ヤード側)
[業界報告] 63
業界報告
標準化活動紹介
第79回IEC大会(ミンスク大会)の概要
大会期間中に、総会(Council:C)をはじめ、評議会
(Council Board:CB)
、標準管理評議会(Standardization Management Board:SMB)
、適合性評価評議
一般財団法人 日本規格協会
IEC 活動推進会議 事務局
会(Conformity Assessment Board:CAB) な ど、 市
加藤 洋一
場戦略評議会(MSB:Market Strategy Board)以外の
1.はじめに
IEC 上層の委員会が開催された。また、NC(National
Committee)Presidents’ Workshop、NC Secretaries’
Forum、TC/SC Secretaries’ Forum、Asia Pacific
ベラルーシという国をご存知だろうか。旧ソ連時代は
白ロシア共和国(ベロルシア)と呼ばれ、1991 年に独立
した、ロシア、ウクライナ、ポーランド、リトアニアなど
に囲まれた人口 950 万人、日本の半分ほど 207,600 平方
Steering Group(APSG)会合など、各種の会議・イベ
ントが実施された。
本稿では、IEC の最高意思決定機関である総会(C)
を中心にミンスク大会の概要を報告する。
キロの国土を有する共和国である。そのベラルーシ共和
国の首都ミンスクで、第 79 回 IEC 大会が 2015 年 10 月
12 日㈪から 16 日㈮まで(TC/SC 等の技術ミーティング
は 10 月 5 日から 16 日まで)開催された。
ミンスクの National Olympic Committee(図 1)を
IEC 上層会議の会場とし、Vicoria Olimp Hotel(図 2)
や Olympic Minsk Arena(図 3)
、これらと他会場やホ
テル間がシャトルバスで結ばれた。
登録参加者数は 1,289 名(同伴者を除く)
。これは昨
年の東京大会 2,367 名の約半数であるが、規模的には
2013 年のニューデリー大会 969 名を上回り、2012 年の
2.概況
2.1 主要会議日程
ミンスク大会での主要な会議・イベントの日程を表 1
に示す。
表 1 ミンスク大会での主要な会議・イベント
日程
10 月 11 日 ㈰
10 月 12 日 ㈪
オスロ大会 1,177 名とほぼ同規模の大会となった。招致
された TC/SC の数は 24 であり、これも昨年の東京大会
53 の半分以下である。TC/SC の数は近年最もコンパク
10 月 13 日 ㈫
トな大会であったニューデリーの 22 と同程度となった。
10 月 14 日 ㈬
10 月 15 日 ㈭
図 1 National Olympic
Committee
図 2 Victoria Olimp
Hotel
10 月 16 日 ㈮
10 月 17 日 ㈯
会議名
・ExCo1
・PASC/SMB
・SMB
・CAB
・Young Professionals’ Workshop
・Opening Ceremony/Welcome Reception
・Young Professionals’ Workshop
・Affiliate Forum
・Asia Pacific Steering Group(APSG)会合
・‌Workshop; Regional and national adoption of
IEC International Standards
・PASC Reception
・CB
・Young Professionals’ Workshop
・Workshop; Energy efficiency in industry
・NC Presidents and Secretaries Dinner
・NC Presidents’ Workshop
・NC Secretaries’ Forum
・‌Workshop; IEC Conformity Assessment
System
・TC/SC Secretaries Forum
・Council Statutory Session
・Council Discussion Session
・Council Open Session
・Farewell Party
・ExCo2
表 1 の主要 会 議・イベント以外に、公式 行事では
ないが、ドイツや米国などの主要国 NC とのバイ会議
図 3 Olympic Minsk Arena
64 電 機 2016・January
(Bilateral Meeting) や CCMC(CEN - CENELEC
Management Centre)との会合が開催され、各々共通の
関心事項について意見が交わされた。
Council Statutory Session では、野村会長のスピーチ
の後、財務監事からの財務報告、事務総長からの IEC
活動実績報告などがなされ。また、総会に先立ち実施さ
れた選挙の結果報告により、2016 年から開始される次期
2.2 日本からの参加状況
参加者の国別内訳では、開催国ベラルーシが 242 名で
最多なのは当然として、日本は 110 名で 2 番目に多い。
IEC マスタープランの策定に向けた新体制が発表された。
以下に総会での承認・報告事項の主なものを紹介する。
ドイツ 92 名、中国 71 名、韓国 66 名、米国 60 名、英国
32 名と続く。
3.1 IEC マスタープラン
今回、参加登録数 4 位の中国は昨年の東京大会では
開催地日本に次ぎ第 2 位であった。また、その前年 2013
次期 IEC マスタープランについて、2016 年から議論
を開始して、2017 年の総会で承認を得ることになった。
年のニューデリー大会においても、インド、日本、ドイツ
に次ぐ人数が参加しており、IEC においてその存在感を
確固たるものにしている。
2014 年の財務について報告され承認された。
総会(C)を始めとした上層委員会対応の日本派遣団
を含む日本からの参加者は、表 2 に示すとおりである。
表 2 上層委員会対応の日本派遣団
(注:IEC 日本人幹部を含む)
JISC 事務局
IEC 上層委員
IEC-APC
3.2 財務関係
・星野審議官
・松本連携室長 他
・野村 IEC 会長
・木村 CB 委員
・平川 SMB 委員
・橋本 SMB オルタネイト委員
・平田 CAB 委員
・梶屋 CAB オルタネイト委員
・石隈 ACEE 委員(※1)
・池田 ACTAD 委員(※2)
・上野 SEG1 委員(※2)
・下地運営委員長
・加藤事務局長、濱岡事務局員
※1:Council Open Session で講演
※2:SMB 会議で報告
2016 年の予算である(2,250 万スイスフラン;内分担
金 1,050 万スイスフラン)について報告がなされ、承
認された。
2016 年予算は 2015 年予算(2,190 万スイスフラン;
内分担金 1,020 万スイスフラン)に対して、前年比 3%
増となっている。
3.3 活動実績報告
(1)地域センター関係
APRC(Asia-Pacific Regional Centre)
、および
LARC(Latin America Regional Centre)
、NARC
(North America Regional Centre)の各 地 域セン
ターの活動報告とともに、ケニアのナイロビに今年
11 月 2 日開所する IEC の 4 箇所目の地域センター
3.第79回 IEC総会(Council)概要
総会は、National Olympic Committee を会場に、10
である AFRC(Africa Regional Centre)について
報告された。
(2)MSB(市場戦略評議会)関係
月 16 日 ㈮ の 午 前 中に、Council Statutory Session が、
MSB におけるプ ロジェクトの 活 動 成 果として、
また、同日午後に Council Open Session が開催された。
“Strategic asset management of power network”
および “Factory of the future” の白書が発行された
ことが報告され、白書が総会の会場前で配布された。
(この白書は IEC のサイトで公開され、ダウンロード
が可能である)
(3)システム標準関係
近年 IEC が戦略的に取り組んでいるステム標準化に
おいて、技術の融合およびイノベーションのスピー
図 4 総会 Council Statutory Session の様子
ドを上げるため、他の標準化機関やステークホルダー
との連携の強化を一層進めていくことが表明された。
[業界報告] 65
業界報告
この方針のもと、2016 年 7 月 13 日にシンガポール
において World Smart Cities Forum を開催すること
が報告された。
(4)CAB(適合性評価評議会)関係
表 4 2016 年以降の IEC 大会開催予定国
開催年
2016 年
2017 年
CA(適合性評価)活動の全般的な紹介やガバナン
ス強化の取組み報告に加え、2013 年に設置された
IECRE(IEC 再生可能エネルギー機器規格適合試
験制度)はじめ、IECEE(IEC 電気機器・部品適
合性試験認証制度)
、IECQ(IEC 電子部品品質認
2018 年
2019 年
2020 年
2021 年
2022 年
2023 年
国(都市)
ドイツ(フランクフルト)
[開催期間:10 月 10 日〜 14 日]
ロシア(ウラジオストック)
[開催期間:10 月 9 日〜 13 日]
韓 国
[開催期間:10 月 22 日〜 26 日]
中国
スウェーデン
UAE
アメリカ
エジプト
総会 Open Session は近年の重要課題について意見
証制度)
、IECEx(IEC 防爆機器規格適合試験制度)
交換を行うセミナーである。本年は “エネルギー効率
の紹介と活動状況が報告された。
性:IEC 国際標準と適合性評価により理論から実践へ
-Energy efficiency:from theory to reality with IEC International Standard-” をテーマに講演会が Schomberg
3.4 選挙結果
新体制に向けた選挙の結果は、表 3 に示すとおりで
氏の進行によって実施された。
ある。今年は日本の上層委員に関連する選挙はなかっ
講演では、IEC 国際標準がどのように製品のエネル
た。野村会長の後任である次期会長(2017 年~ 2019
ギー効率性改善に寄与するか、また省エネの標準となる
年)に Shannon 氏(米国)が選出され、また、現第
アーキテクチャが必要であることやエネルギー効率性を
三副会長の Shu 氏(中国)の再任を確認した。
高めるための新技術や要件等について報告され、また、
アジア、欧州、ベラルーシにおける事例がケーススタディ
表 3 選挙結果(任期 2016 〜 2018)
委員会
氏名(国)
備 考
[自動選出国 1]
Xu ZENGDE(China)
[選挙選出国 4]
CB
Valerio BATTISTA(Italy)
落選:Australia
Günter IDINGER(Austria)
Peter LEONG WENG KWAI(Singapore)
Ed TYMOFICHUK(Canada)
[自動選出国 1]
Hong DAI(China)
SMB [選挙選出国 2]
Kim CRAIG(Australia)
Tony CAPEL(Canada)
落選:Sweden
[自動選出国 2]
Messrs Weijun LIU(China)
Simon BARROWCLIFF(United Kingdom)
CAB
落選:India
[選挙選出国 2]
B.-K.LEE(Korea)
Fredric WENNERSTEN(Sweden)
として紹介された。日本から石隈徹 IEC/ACEE(エネル
ギー効率性諮問委員会)委員(アズビル)が、システム
全体でのエネルギー効率性向上へ向けた取組みの重要性
を訴求するプレゼンを行った。
4.トピックス
ミンスク大会でのトピックスを以下に紹介する。
4.1 トーマスエジソン賞
本年は日本からは、TC100 国際幹事の江﨑正氏(ソ
ニー)が受賞され、SMB 会議の席上にて表彰された。
また、今後の IEC 大会の予定として、次回大会である
フランクフルト大会の再確認がなされ、紹介ビデオの上
映とともにドイツ NC 代表の Bent 氏のスピーチがあった。
続いて、2017 年 IEC ウラジオストック大会(ロシア)の
確認と、2018 年 IEC 釜山大会(韓国)の承認が発表さ
れ、ロシア NC 代表、韓国 NC 代表がそれぞれスピーチ
を行った。
総会で発表された 2016 年以降の IEC 大会の開催予定
図 5 トーマスエジソン賞受賞の江﨑氏と J. MatthewsSMB 議長
を表 4 に示す。昨年の東京大会から、エジプトが 2023
2010 年のシアトル大会からスタートした表彰制度であ
年開催予定国として新たに加わった。
66 電 機 2016・January
り、今年で 6 回目となる。昨年は日本から受賞者を出す
ことができなかったため、今回で 5 人目の日本人受賞で
う人材育成のため、IEC が注力している施策のひとつ
ある。本年のトーマスエジソン賞受賞者を表 5 に示す。
である。これまで、44 ヶ国から累計 336 名が大会で
(※ 印の 4 名がミンスクで大会 SMB 会議での授賞式に
臨んだ)
の Workshop に参加しており、ミンスク大会でも 35 の
NC から 67 名の参加があった。日本からは 3 名が参
加した。2012 年のオスロ大会から、ワークショップ参
4.2 Opening Ceremony
(開会式)
/Welcome Reception
加者と自国 NC 幹部の朝食会が設定されており、本大
ミンスク大会の初日となる 10 月 12 日に、Opening
会でも、JISC 事務局長の星野審議官、橋本 IEC 課長
Ceremony と Welcome Reception が、“BelExpo”
(共に経済産業省)と日本からの参加者が朝食をとりな
National Exhibition Centre を会場に開催された。
がら懇談した。
ベラルーシの Kobyakov 首相が冒頭に挨拶し、野村
IEC 会長、ベラルーシ NC 代表 Nazarenco 氏の 挨拶
で Opening Ceremony が開会した。IEC 大会で一国の
5.おわりに
首相が挨拶をするケースは珍しいと思われるが、本大
大会開催の参考にしたいと、ベラルーシ NC が東京大
会期間中、ミンスク市内では IEC 大会を歓迎する垂れ
会の資料を IEC 中央事務局に要請したところ、
「東京大
幕が見られるなど、国を挙げて国際的なイベントを歓
会は特殊なため、あまり参考にならない」とのコメントが
迎する雰囲気が感じられた。
返ってきた、との話を聞いた。安全かつ清潔でインフラ
の整った街に近代的な施設の会場、また緻密なプログラ
ムをもとにした細心の運営、さらに “おもてなし” のここ
ろ配りまで加わった東京大会を、1991 年に独立したばか
りのベラルーシが目標とするのは酷と思ったのであろう。
筆者も、木目細かい大会運営や高いサービスが期待で
きないのではないか、という先入観を持っていた。しかし、
図 6 開会式で挨拶する Kobyakov 首相
訪れてみると、ミンスクの街は清潔で美しく、また会場も
旧ソ連時代の立派なオリンピック施設を活用して、特に
レジストレーション時にベラルーシの民族衣装風 T
大きなトラブルや混乱もなく整然と運営されていた。現
シャツ(?)を手渡され、開会式には着用して出席する
地のスタッフは国際イベント慣れしていないのが幸いして
ように要請されたため、Opening Ceremony/Welcome
か、フレンドリーで親切であり、自国で国際大会が開催
Reception では、ほぼ全出席者がベラルーシの民族色
されることを喜び、それに携わることを楽しんでいるかの
を漂わせることとなった。
ようであった。
最後に、ミンスク大会参加にあたっては、経済産業省
4.3 Young Professionals’ 2015 Workshop
本ワークショップは、2010 年のシアトル大会からス
や各審議団体、IEC 上層の日本委員の方々、IEC 活動推
進会議関係者からの多大なご支援、ご協力を頂戴しまし
たこと、この場を借りて御礼申し上げます。
タートし、本年で 6 年目を迎えた。
Young Professionals Program は 次 代 の IEC を 担
表 5 トーマスエジソン賞受賞者
氏 名
BURK, Margie M.
※CHEN, Bo
※CHA, Cheolung
DI VITA, Pietro
※EZAKI, Tadashi
※LEE, Jae-Young
NERKE, Reinhard
WIGG, Ralph
貢献 TC/SC CA system
TC 61, TC 72, TC 108
TC 85
TC 47
SC 86C
TC 100
TC 100 TA 4
SC 3D
IECEx
タイトル
Assistant Secretary
Secretary
Secretary
Chair
Secretary
Technical Area Manager
Secretary
Vice Chairman ExPCC
推薦国
United States
China
Korea
Italy
Japan
Korea
Germany
Australia
[業界報告] 67
業界報告
IEC/SC17C/MT19(高圧スイッチ
ギヤの過酷な条件における階級)
エルランゲン会議 出席報告
応方針は会議での審議によって決定されるため、日本意
見として多様な設置環境への対応に対して、今後、詳細
に議論していく必要性を主張するとともに、他国の意見
及び対応方針を情報収集し、国内盤メーカのグローバル
IEC/SC17C TF 委員
IEC/SC17C/MT19 エキスパート
桑水流
宝
◇
【概 要】
開催会議 IEC/SC17/MT19(高圧スイッチギヤの過酷
市場での競争力の向上につなげる。
(* 1 High-voltage switchgear and controlgear - Part 304:Design classes for
indoor enclosed switchgear and controlgear for rated voltages above 1
kV up to and includuing 52 kV to be used in severe climatic conditions.)
【成 果】
会議の場で各国から “過酷な環境である基準” に関す
な条件における階級)
る意見が多数あり、その場で最新動向及び内容を把握で
開催日
2015 年 10 月 29 日 ㈭
きたので意義があった。各国からは 18 の意見を提出し、
開催地
エルランゲン(ドイツ)
そのほとんどが採用され、完成度の高い規格作成に貢献
参加者
5 カ国 9 名(日本含む)
した。コメントの中でも審議の中心になった内容は以下の
通り。
【背 景】
(1)スイッチギヤ室内の過酷な条件を明確にするために、
温度・湿度・標高等のパラメータを設定する必要が
IEC/SC17/MT19 は、1kV-52kV スイッチギヤの過酷
ある。本会議では IEC 62271-1 * 2 にある項目を呼び
な条件における階級の IEC 規格開発を担当している。一
合い、パラメータを設定する方針で考慮する。次回
般社団法人 日本電機工業会(JEMA)は、IEC/SC17C
の会議で引き続き審議を継続させる。
TF を設置しており、筆者は MT19 のエキスパートメン
バーであることから、今回、これらの情報の入手と審議
(*2 High-voltage switchgear and controlgear - Part 1:Common
specifications)
に参加した。今回の MT19 は初回審議のため、各担当者
(2)スイッチギヤ室内が劣悪な環境であることを証明す
の職種紹介をした後に、改正に先立って提出された各国
るために、チェックリストに基づいて管理するべきで
からのコメントに対する審議が行われた。
ある。
(例えば結露や汚染の証拠が判明できれば、ス
【目 的】
本会議では、発行された IEC/TS 62271-304 * 1 に対す
る各国意見へのコメント審議が主要議題である。日本と
しては意見をすでに提出済であったが、規格としての完
成度を高めるために IEC/SC17C TF にて事前検討し、本
会議の場で追加意見を提案した。また、各国意見への対
図 1 チェックリスト(ABB 社)
◇三菱電機株式会社 受配電システム製作所 海外エンジニアリングセンター 海外受配電システム 技術課
68 電 機 2016・January
イッチギヤ室内は劣悪状態であると位置づけられる。
)
この意見に対しては満場一致であったため、確認項
目について次回以降も審議していく。図 1 に ABB 社
IEC/SC22G/WG18(可変速駆動
システムのエネルギー効率)ブレア
(アメリカ)会議 出席報告
が提案してきたチェックリストの項目を示す。
また室内の結露や汚染の状態は年間を通じて異な
可変速駆動システム IEC 対応分科会
るため、試験は最低でも 1 年間は実施されるべきで
主査 佐藤
以久也
◇2
委員 横 井 修
あり、温度、湿度、結露や騒音、コロナ放電等の物
理的な数値を監視するためのセンサを設置する必要
IEC/SC22G 国内委員会
性を議論すべきである。
幹事 川
(3)タイトルを見直す必要がある。IEC/TS 62271-304 は
ではなく “Classification of” と表記した。本意見は
置環境が区分されているが、実際の設置環境は温度、
◇3
阿部 倫也
日本側の提案として受け入れられた。適切な文言へ
(4)現在の IEC/TS 62271-304 は、汚損と湿度だけで設
上 和人
一般社団法人 日本電機工業会
技術部技術課
階級を確立するためにあるため、“Design classes for”
の修正に関しては他国との審議によって決定された。
◇1
【概 要】
開催会議 IEC/SC22G/WG18(可変速駆動システムの
標高、腐食性ガスなど多様な要素に影響される。こ
エネルギー効率)
のため、これらの要素を加味した詳細検討の必要性
開催期間 2015 年 11 月 3 日 ㈫ ~ 5 日 ㈭
を主張したところ、他国からも賛成の声があがり、承
開催地
UL, LLC(ブレア/アメリカ)
認された。結果として TF1;Service Conditions と
参加者
WG18:11 カ国 19 名(日本含む)
TF2;Test Procedure Conditions に分担し、MT19
のエキスパートメンバー内で振り分けられた。
【今後のアクション】
【出席背景・目的】
IEC/SC22G/WG18 では、モータ、インバータ、及び
それらの附属機器を含む可変速駆動システム(PDS)の、
次回審議は 2016 年 2 月にフランクフルトにて開催予
エネルギー効率についての基準値及び算定方法に関す
定。必要に応じて上記の各議論への対応や WG への
る規格を策定している。一般社団法人 日本電機工業会
積極的な参加など、国内対応委員会で審議する。また
(JEMA)では、経済産業省からの委託を受け、2013 年
SC17C/MT19 のエキスパートメンバーで TF1 Service
度から PDS に関するエネルギー効率の基準値及び算定
Conditions と TF2 Test Procedure に分かれ、各項目に
方法の国際標準化事業を行っており、これまでに、海外
おいて担当間で議論体制を確立したので継続してコミュ
方式に比べ、より簡便で低コストとなる日本方式の効率
ニケーションを取っていく。
【所 感】
当方は SC17C/MT19 の審議は初回であったため、各担
当者の業務内容の把握の他に顔合わせの意味が大きいと感じ
た。本審議会に参画することで IEC 原案は海外盤メーカによ
図 1 UL 会議室内のロゴと建物外観
って自由に記載されることと肌で感じることができ、今後、日
本メーカが海外メーカと対等に渡り合うために、規格原案の
作成を監視するとともに最新情報を入手する重要性を知った。
◇ 1 富士電機株式会社 パワエレ技術開発センター共通技術開発部
◇ 2 東芝シュネデール・インバータ株式会社 開発・設計グループ 主幹
◇ 3 東芝三菱電機産業システム株式会社 ドライブシステム部 技術主幹
[業界報告] 69
業界報告
算定方法を提案し、日本方式であっても海外方式と同様
アドホックグループとして検討する方針となった。これ
の十分な精度が得られることを、実機による検証試験で
を受けて、次回改正において日本提案が覆される可能性
示している。
が出たことから、2016 年 4 月に開催される第 1 回のアド
今回のブレア会議では、6 月 5 日に発行された IEC
ホックグループを東京で開催し、そこで改めてカナダ提
61800-9-2 の投票用原案(CDV)に対する各国コメント
案に対して反論する方針とした。測定回路、測定器の使
について審議を行った。CDV では、検証試験に基づき、
用法に関する詳細な審議になることが想定され、一般社
JEMA 可変速駆動システム IEC 対応分科会から、算定
団法人 日本電気計測器工業会(JEMIMA)とも協力し
方法や日本が使用する電源電圧(200V 級)での効率基
て対応していく。
準値緩和などを過去に提案した結果が反映されている。
一方、SC22G 国内委員会において、大型 PDS をもつ
メーカから汎用的な PDS でなく装置ごとに個別設計する
3.適用範囲の変更について
この規格の主目的は、使用量の多い汎用モータ(誘導
要素のある PDS を規格から除外する意図の意見があり、
機)を駆動する汎用インバータの効率基準を標準化する
これを提案し、日本からは反対投票した。
ことである。規制時に抜け道とならないように幅広い適用
範囲となるように規定する必要があるが、特殊なケース
【成果及び審議結果】
1.規格の投票結果及び今後の審議段階について
では適用除外とする必要がある。
今回、日本が反対投票する理由となった適用除外範囲
の拡大については、CDV 時点で適用除外となっていた
IEC 61800-9-2 の CDV 投票結果が公開され、日本を
サーボに対する規定を拡張し、界磁弱め領域又は過負荷
除く全投票国の賛成により可決された。この結果を受け
領域での運転が主となる用途の場合は適用除外とするこ
て次は最終原案段階(FDIS)に進み、2016 年の 3 月上
とが認められた(図 2 参照)
。また、複数台のモータを運
旬に FDIS 発行、投票で可決されれば 2016 年 6 月頃に
転する PDS(例えば、1 台のインバータに複数台のモー
発行される見込みである。経済産業省の委託事業では、
タ又は 1 台の整流器に複数台のインバータを接続する構
CDV 発行までを目標としていたが、前倒しで達成するこ
成)は CDV において既に適用除外であることを確認し
とになった。CDV 投票に合わせて、①参照インバータの
た。これらにより、多くの大形 PDS は適用除外になるこ
損失を低く(インバータの効率基準を高く)するかどう
とが想定され、大形 PDS メーカにとっても対応可能な規
か、②新たに IE3 クラスのインバータ効率クラスを設け
格となった。
る、の二つのアンケートが実施され、日本を含む多くの国
の反対により現状どおりとする方針となった。
なお、適用除外を提案していた発電制動や直流制動を
用いる PDS については、汎用インバータでも該当するた
め、不適切に除外範囲が広がる可能性があり、規格の趣
2.従来から提案していた試験方法について
経済産業省の委託を受けて日本から提案していた、2
電力計法、トーションバー方式のトルクメータの使用、
旨から受け入れられなかった。
ただし、電源回生できる PDS は、IE クラス適用除外
可能であることが、CDV に記載されている。
電磁両立性に対応していない通常のケーブルの使用につ
いては、CDV から内容変更せず、規格の第 1 版では日
本提案を採用することになった。しかし、従来から日本
の 2 電力計法に反対してきたカナダのエキスパートから、
第 1 版制定後、直ちに第 2 版作成の検討を開始し、測定
精度の検証の上、2 電力計法を使用できない規定とする
よう提案があった。ドイツを中心とした欧州勢は、欧州エ
コデザイン指令の効率規制での規格採用を見据え、すぐ
に改正を行うことに難色を示し、正式な改正作業でなく、
70 電 機 2016・January
図 2 サーボの特性
少しでも弱め界磁領域を用いるインバータを作れば効
率規制を逃れられるということを避けるため、単に弱め界
【背 景】
磁領域で運転すれば除外されるわけではないこと、PDS
この会議は、石油・化学プラント等の爆発性雰囲気が
ユーザからの要求によって適合が求められる可能性があ
生成される場所で使用する、電気機械器具等の防爆技術
ることに注意が必要である。
の IEC 規格を担当している。一般社団法人 日本電機工
業会(JEMA)が国内の審議団体である。年次会議は、
傘下にある規格審議組織(WG など 50 程度の組織)か
4.その他の日本コメントについて
(1)日本から、Active Infeed Converter(AIC)の入出力
の考え方が欧米と異なっているため、input、output
ら規格審議等の年間報告と審議が行われるため、網羅的
な情報の入手・審議への参加を目的として参加した。
の表現を用いないように提案したが、欧米では AIC
の output は交流端子側であるという認識が強く、変
更は認められなかった。
(2)タイトルの「Eco design」は欧州での用語であり、一
【成 果】
次の審議概要に示す国際レベルの規格審議状況・課
般的にはなじみがないと主張し、タイトルを分かりや
題・今後の方向性などの情報を入手することができた。
すく一部変更する提案を行い、認められた。ただし、
また、決議事項に関し、国内品の仕様に対してネガティ
SC22G 幹事(セクレタリ)に FDIS でのタイトル変
ブな影響はないとの判断で賛成の意思表明をした。
更が可能かを問い合わせて判断することになった。
(3)本規格で IEC 61800-5-1 の適用を要求事項としてい
た点を指摘し、要求事項ではなく推奨とすることに
なった。
【審議概要】
(共通事項)
(4)それ以外のエディトリアルな指摘については、ほぼ
認められた。
(1)IEC/CAB(適合性評価)のサイバーセキュリティの
活動に対して、爆発リスク低減に寄与できるサイバー
セキュリティ関連の新規格の必要性が提示され、賛
成多数で可決された。傘下に検討組織を設け、次回
IEC/TC31(防爆機器)ミンスク会議 出席報告
第 31 小委員会(TC31 国内対応委員会)
委員長 野
田 和俊
◇2
事務局 谷 部 貴 之
◇1
【概 要】
開催会議 IEC/TC31(爆発性雰囲気で使用する機器-
防爆機器)
以降の TC31 会議で報告を行うこととなった。
(2)IECEx システム(防爆機器・技術の認証システム)
において、規格(規定)の解釈検討が行われている。
具体的には、Type n 防爆技術(IEC 60079-15)の
電気的接続は、“工具の使用が必須である” との見
解(案)がまとめられているが、規格作成組織であ
る TC31 としては、規格(規定)上、工具の使用の
言及が確認できないため、“工具での接続は必須で
はない” として伝えることとなった。
全般論として、IEC 規格を運用する IECEx シス
テムにおいて規格(規定)の解釈検討がなされてい
開催期間 2015 年 10 月 14 日 ㈬ 〜 10 月 16 日 ㈮
る点は、規格(規定)の誤用につながる可能性があ
開催地
ミンスク(ベラルーシ共和国)
り、規格作成組織の TC31 に対して正式に見解を求
参加者
20 カ国 69 名(日本含む)
める要望提出など、TC31 と IECEx システムとの連
携を今以上に実施することとなった。
◇ 1 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 環境管理研究部門 環境計測技術研究グループ 主任研究員
◇ 2 一般社団法人 日本電機工業会 技術部 標準化推進センター 主任
[業界報告] 71
業界報告
(3)IECEx システムにおいて、防爆機器の組合せ品の
(電気設備関連)
認証システムの検討が開始されているが、具体的な
(9)防爆関連の設備基準・配線基
IEC 規格が存在していない状況である。設備基準・
準 で ある IEC 60079-14 に つ
配線基準の規格(IEC60079-14)はプラント・工場
いて構成の見直しをすべく検
などを対象としおり、数個の機器の組み合わせには
討開始が決定された。右図の
対応していないとの意見もあり、TC31 として新規格
ように、設備の設計(design)
、
の開発が決定された。
選定(selection)
、施工(installation)
、確認(verification)の
(変圧器、電動機)
ステージで規格を分割するこ
(4)油入防爆技術(変圧器などに活用の防爆技術)は、
とによって、設計者・工事者など読者に利便性を与
IEC 規格上の 15kV までの適用である。この電圧を
えるほか、IECEx システムにおける認証に際しての
超える範囲の検討を開始した。炭鉱、洋上石油掘削
利便性向上も一つの観点となっている。また、この
リグにおいて、36kV 変圧器など規格の範囲を超え
構成見直しに合わせて、弱電・通信関連の配線要件
る防爆技術の規格化ニーズがある。154kV までを規
の本質安全防爆システム(IEC 60079-25)
、電気設
格の範囲とすることが決定された。
備の保守点検(IEC 60079-17)などの要求事項の
(5)インバータ(INV)のサージなどが安全増防爆モー
取り込み、プラント・工場等の防爆設備の設計、選
タの防爆性能(特に絶縁劣化)にどう影響を与える
定、施行、保守・点検に至る範囲を対象とする規格
か、新旧 INV の等価性(Comparable Converters)
として見直すことが決定された。
の検証、モータ熱的保護に関するサーマルリレーの
要件(Motor Protection)
、モータシャフトの接地・
(その他)
ボンディング(Shaft Earthing and Bonding)の要
(10)IEC 60079-15:2010 の防爆技術 “nA”* 1 は、IEC
件、-20℃を下回る極低温雰囲気など過酷な環境用
60079-7:2015 に防爆技術 “ec” として移管された
のモーター(AdverseConditions)の要件が現在議
が、一時的に “nA” と “ec” とが併存するため、次
論されているとの情報提供があった。
の規格間の齟齬の是正を行うこととなった。
(電池、照明、ガス検知)
(6)主に電子機器に活用される本質安全防爆技術(IEC
60079-11)に関して、新たにリチウムイオン電池の
(* 1 “nA”、“ec”:Non-Sparking Device 通常運転時に点火源にな
るような火花を発生させない技術であり、安全増防爆技術に類似
〔そのため、IEC 60079-7 に移管された〕
。
)
・‌“nA” では “card edge connector” の使用が可能で
活用に向けた防爆技術の導入が決定された。特に、
あるが、“ec” においては使用不可と読める規定が
短絡、熱暴走、ガス放出への防爆を観点とした安全
あり、“ec”(IEC 60079-7)を是正(使用可能)す
対策について議論が行われる予定である。
る方向で調整することとなった。
(7)LED 防爆照明の IEC 規格がなく、防爆技術(防爆
・‌“nA” に対し、端子箱の密閉度合いのレベル(保護
技術 “nR” に規定導入の予定)の検討が行われ、
等級)の解釈が発行(予定)であるが、“ec” に対
近々規格案として発行すること、また、新たに LED
しても同様の解釈を適用することとなった。
照明の “End of life” 時の状態(防爆性能の維持)
について議論中である旨の情報提供があった。
(11)TC31 として、IECEx システムの OD 233 案(認
(8)産業用ガス検知に関しては、応答時間、電磁両立性
証手引き:operational document)に対して、特殊
(EMC)
、低濃度ガス検知について議論中であり、ま
防爆技術の Group I(メタン)の要件が欠落してお
た、人体保護の観点から、新たに毒性ガスや酸素濃
り、追加するべき意見をしたが、考慮されず OD233
度の検出を検討開始する旨の情報提供があった。
が発行となった。今後、TC31 と IECEx システムと
の連携を今以上に実施することとなった。
72 電 機 2016・January
(12)メチルエチルケトンの特性を再確認し、現状のグ
ループの IIB から IIA へ、移管が決定された。
(13)防爆技術の領域における ISO9001 の適用を具体化
した規格
*2
に対して、ISO 9001:2015 が発行され
【背景・目的】
SC59A では、食洗機の評価方法に関する規格の改定
を行っており、現在日本からは MT2 に登録し、委員を輩
たことを受けて、規格の見直し作業開始が決定され
出している。今回の GM では上記 4 つの委員会に出席し、
た。
規格改定についての意見交換・情報入手を行った。
(*2 ISO/IEC 80079-34:Explosive atmospheres- Application of quality systems
for electrical and non-electrical equipment)
食器洗い乾燥機技術専門委員会としては、2014 年の
東京会議から参画しており、IEC60436(食洗機性能評
価方法)において、食器セット方法の検討を実施し、日
本の小さいサイズの食器洗い乾燥機に適応した食器セッ
トの提案を行い、採用に至った実績がある。
【審議の概要および成果】
1.SC59A/AG6(食洗機性能評価方法の世界中への
適用について)
1.1 グローバルで共通で使える評価方法の検討
・各国の評価方法の比較(IEC /オーストラリア/日
TC31 出席者全体写真
本〔JEMA 自主基準〕
)を行い、比較表にてメンバー
間で確認
IEC/SC59A/WGs(食洗機の性能)
ミンスク会議 出席報告
一般社団法人 日本電機工業会
食器洗い乾燥機技術専門委員会
池島 衛
◇
→ 各国・各基準で様々な汚れ・食器があり、統一
が難しいとの意見あり
1.2 省スペースでの妥協のない食洗機について議論
1.3 実際の家庭での食洗機の使用状況・使い方の検証
・ビデオを家庭に持ち込み、食器セット状態・仕上り
状態・食器取り出し動作等の確認
→・食器セット状態は整然としておらず乱雑で、食
【概 要】
開催会議 IEC/SC59A
開催日
2015 年 10 月 7 日㈬~ 10 月 9 日㈮
開催地
ミンスク(ベラルーシ)
参加者
16 名 8 カ国
器だけでなく、おもちゃも洗う場合あり
・乾燥状態も良くない(濡れているものをペー
パータオルで拭いて片付ける)
(考察)
・IEC 規格としては今まで欧州を中心とした規格で
あったが、これからの方向性としてグローバルに使
える統一規格を模索し始めている。しかしながら、
1.SC59A/AG6(食洗機テスト方法の世界中への適用に
ついて)
2.SC59A/AG5(評価の基準機と材料について)
3.SC59A/WG4(未確定の評価について)
4.SC59A/MT2(食洗機性能評価方法について)
世界中には様々な食器・汚れがあり、直ちに統一は
難しく、現在どう適用させるかを検討中であるが、
この動きには日本として注視する必要がある。
※日本での評価は JEMA 自主基準を運用しており、
IEC 規格とは異なる。
◇パナソニック株式会社 キッチンアプライアンス事業部 食洗機事業総括
[業界報告] 73
業界報告
2.SC59A/AG5(評価の基準機と材料について)
2.1 標準食器について
・食器のオーダーナンバー変更の対応については、
IEC のウェブサイト上で変更することで合意
2.2 オーブンの設定についての議論
・バラツキを平準化させるために、5 〜 8 回のテスト回
数を規定しているが、オーストラリアからの提案で
各国のローカルルールがある場合、そのルールを優
先して適用させることの提案あり
→ 合意があり、次回改正予定
2.3 RRT(ラウンド・ロビン・テスト)の再現性について
・現状ではバラツキが大きいため、牛乳・ほうれん草
の評価について継続検討(次回検討課題)
・補完する確認手段として、
「洗浄スコア」-「汚れ残
りスコア」=での数値化の提案あり
(考察)
・
「Ring test 2015」ワークショップについては、今後
の中国の動向を知るためにも、日本として継続して
参加を検討すべき。
・前回(東京会議)でオーストラリア/ニュージーラ
・評価の具体的内容については、日本の JEMA 自主基
ンドから課題提起のあった「冷凍ほうれん草」の変
準の評価と異なるため、特に意見を出せるものでは
更について、ボン大学から「フリーズドライほうれん
ない。
草」の提案あり
4.SC59A/MT2(食洗機性能評価方法について)
(考察)
・これらの変更の検討内容については、日本として特
に意見を出せるものではないと思われる。
※現時点では日本は JEMA の評価方法に基づいてお
り関連性が薄いが、
「冷凍ほうれん草」の変更につい
ては、日本での入手が困難なため賛同できる内容で
ある。
3.SC59A/WG4(未確定の評価について)
3.1 「Ring test 2015」のワークショップについて
4.1 IEC60436_ed4(FDIS)について内容確認
・評価結果のバラツキを抑え込むために、様々な項目
で不明確な箇所の再定義を検討(試験方法/評価
方法/汚れ材料の中身等)
→ 明確に定義されていないものについて継続検討
4.2 IEC60704_2-3(騒音)について
・各国からの意見集約作業を今後実施
(考察)
・
「評価バラツキを抑え込む」ための検討内容であり、
・アジア地域のワークショップに対して、日本として参
内容は理解できるものの、文化に根ざした評価方法
加するかどうかの打診あり。ワークショップの目的は
ということもあり、議論の背景までの深堀した理解は
世界中で IEC 規格に基づいた性能評価をバラツキな
難しいと思われる。例えば日本での食器洗い乾燥機
く行えるようにすることであり、各国の評価認証機関
の使い方としては毎食後に使用する場合が多いが、
で評価トレーニングを行い、IEC 規格を欧州だけで
欧州では数日分食器をためて、一気に洗う使い方が
なく、その他の地域に適用させることである。
一般的であり、使い方が異なるものに対応した評価
→ 参加の意向ありと回答するものの、日本に IEC 規
方法をベースにしているため、検討内容の本質の理
格での性能評価ラボがないため、中国で実施のワー
解まではできておらず、今後 IEC 規格の検討に深く
クショップに参画することとした(中国・美的社で実
参画するのであれば、そのあたりの文化の違いも理
施:10 月 20 日~ 10 月 23 日)
解した上での対応が必要であると思われる。
※ボン大学からの派遣者が IEC 規格での性能評価ト
レーニングを実施(参加費用:10,000 人民元〔ドイ
ツからの招聘費用分担〕
)
3.2 おかゆ/オートミールの汚れの影響、運転サイク
ル終了の定義などについて議論
3.3 評価の回数について
74 電 機 2016・January
5.全体を通しての考察/今後の課題
・SC59A は、これまで主な活動として欧州中心の性能
評価の規格改定を行ってきたが、活動の幅を広げよ
うと、アジアを始め他の地域も対象に加えようとし
ている。その背景の中で今後の継続参加にあたって
は、日本としてスタンスを明確にする必要があると思
われる。例えば上記の「Ring test」に参画するもの
【背景・目的】
の、IEC の性能規格を日本に採用する意向があるの
IEC SC59D は、洗濯機、乾燥機の性能に関して規格
か?などの日本としての今後の対応を明確にしていく
検討を行っている委員会であり、家庭用洗濯機器の洗濯
必要がある。また継続参加するのであれば、今後各
性能評価法(IEC60456)のグローバル適用に向けて、
種評価を各国で分担して担当するようになる可能性
2008 年に Edition5 を発行した。しかしながら、Edition5
があり、日本として IEC 性能規格に対しての理解の
では、グローバル適用という観点で、課題を残したまま
深堀が必要である。
となっている。
特に今後 AG6 の WG では日本市場に対応した汚
現在は 2020 年に制定予定の Edition6 に向けて、各課
染や食器の検討・評価を依頼される可能性が十分に
題に対応すべく改定作業が行われており、以下の 5 つの
あるため、評価の基準機や食器、各種設備を揃える
サブワーキングと 2 つの規格メンテナンス会議が活動中
必要があり、どこまで対応していくか日本側での意
である。
思表示が必要である。
〈サブワーキング〉
併せて、日本の食文化・食器文化に鑑みて発展さ
① WG20(すすぎ性能評価ワーキング)
せてきた一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)の
② WG18(試験精度向上ワーキング)
自主基準ではなく、IEC の評価基準を採用するかど
③ WG19(標準機とプログラム策定ワーキング)
うかは、日本の食器洗い機としての戦略的な観点か
④ AG17(規格のグローバル適用化検討ワーキング)
らも十分に議論していく必要がある。
⑤ WG13(試験用マテリアル検討ワーキング)
〈規格メンテナンス会議〉
① MT14(乾燥性能規格メンテナンス会議)
6.次回開催
② MT15(洗濯性能規格メンテナンス会議)
・オークランド(ニュージーランド)
:2016 年 3 月
・フランクフルト(ドイツ)
:2016 年 10 月(IEC GM)
を予定
日本としては、今後改定されていく試験条件や採用さ
れる試験材料が不利益とならないよう、積極的に意見反
映を行うことを目的として、
年二回の会議に参画している。
IEC/SC59D(家庭用洗濯機器の
性能評価法規格改定会議)ミンスク会議
出席報告
一般社団法人 日本電機工業会
洗濯機技術専門委員会 洗濯機性能 WG
藤井 裕幸
◇
今回の会議では、特に以下の 3 点について、日本とし
ても関連する変更点が提案されたので、その内容につい
て報告を行う。
【会議の内容】
MT15(洗濯性能規格メンテナンス会議)において、
IEC60456、Edition6 の進捗状況報告が行われた。
【会議の概要】
IEC60456、Edition6 は 2020 年の改定発行を目指し
ており、そのために 2017 年 10 月までに関連する各種試
開催会議 IEC/SC59D
験を実施し、2018 年には試験結果をまとめて行くことが
開催日
2015 年 10 月 12 日㈪~ 16 日㈮
決定されている。そのために 2016 年の予定としては、第
開催地
ベラルーシ、ミンスク
一次テストの確認会議を 3 月 7 日~ 11 日のバンドルミー
参加者
12 ヶ国 24 名(日本含む)
ティング(ニュージーランド、オークランド)で実施し、
◇パナソニック株式会社 アプライアンス社 ランドリー・クリーナー事業部 先行開発部 商品ソフト研究課 課長
[業界報告] 75
業界報告
第一次テストの方向性決定会議を 10 月 10 日~ 15 日の
今後、すすぎ性能評価ワーキング(WG19)の取組み
ジェネラルミーティング(ドイツ、フランクフルト)で行
として、2016 年度に以下の内容で縦型洗濯機でのラウン
うように計画されている。それらの会議に向けて今回、以
ドロビンテストを実施することが提案、確認された。
下の 4 項目について、進捗状況の報告確認と今後の予定
についての協議が行われた。
① アジテーター式やインペラー式のような異なるタイプ
での性能や使用量の調査のため、縦型洗濯機に関する
1.すすぎ性能評価法の新提案について(① WG20)
ラウンドロビンテストを実施する
すすぎ性能の新しい評価法に関しては、2014 年 10 月
② 全ての洗濯機の性能検討に適用できる Edition6 の策
のドイツ、ボンでのバンドル会議でドラム式洗濯機を用
定に向け、すすぎ評価の有効性測定と再現可能な試験
いた具体的な取組みが提案・実施された。今回の会議で
方法の確立にむけて異なる手段を比較する
は、その概要と結果について以下の報告がなされ、出席
③ 洗浄性能や使用量に関する不確実性を見つけて比較
メンバーで質疑が行われた。
する。例としては、横型と縦型の差異、硬水と軟水の
・居住用の洗濯機の LAS 方法のための最初のラウンドロ
差異、など
ビンテストの実施
バンドルテストの推進状況としては、現在 50 の試験所
・家庭用としての洗浄プログラムによってテストを実施
へのテスト参加招待に対し、34 の試験所がテストへの参
・LAS 法に関する再現性と反復可能性をチェックして、
加を表明している。非公式ではあるが、日本に対しても
現行のアルカリ度法と比較する
・注射器型フィルタによるサンプル液の濾過工程を外す
参加の呼びかけを頂いたので、持ち帰り検討することとし
た。
可能性を評価・判断する
・異なった試験所で校正された基本負荷でデータ取りを
実施
・以下の 8 機関で実施
2.新試験布の採用検討について(⑤ WG13)
将来的に洗濯性能評価、乾燥性能評価のどちらにも使
用可能な試験布の制定を目的として、新しい試験布の検
① Arcelik / ② BSH / ③ Electrolux / ④ TÜV
討が進められている。新試験布の検討状況については、
Rheinland LGA / ⑤ Miele / ⑥ Uni Bonn /
試験布の素材を綿 50%、ポリエステル 50%の混紡とする
⑦ VDE Offenbach / ⑧ Whirlpool
こと、試験布のサイズを、小・中・大の 3 種類とし、こ
の 3 種類の組み合わせであること、試験法は、AHAM
試験の結果、新提案の LAS 法はばらつきが ±10%
であるのに対し、現行のアルカリ法は試験所によって ±
30%もしくはそれ以上のばらつきを生じることが報告され
に準じて行うことなどが報告された。
また、メンバーから、CENELEC のワーキング状況に
ついても詳細説明がなされた。
(今回報告では省略)
た。
会議では、この結果を踏まえて、今後、縦型洗濯機に
① 試験布の種類(案)
おいても LAS 法での評価を進めていくことが提案され、
以下の内容が確認された。
・縦型洗濯機に関して、性能、使用量を調査するため、
IEC60456 による性能試験を実施
・縦型洗濯機(インペラー、アジテーター)を含めた結
果の比較を実施
・縦型洗濯機の不確実性な要因の発見
・ドラム式洗濯機と共に縦型洗濯機の不確実性の比較を
実施
76 電 機 2016・January
Discription of the textile items
DOE Energy Test Cloth small panels
polyester/cotton
25 x 25cm; 20g (approx.)
Product order code: 99118
DOE Energy Test Cloth medium panels
polyester/cotton
56 x 86cm; 105g (approx.)
Product order code: 99117
また、この試験法の制定により洗濯機の Edition6 に影
響がでてこないかについても確認していくことが提案され
た。
【その他の関連事項】
中国の洗濯機メーカーより、新形態の洗濯機の性能評
価に関して、意見交換の申し入れがあった。
新形態洗濯機では、1 台で二つの槽を持っており、現
状では性能評価を行うための適用規格がないことが発端
である。
中国メーカーからは、洗濯機の特徴と開発背景が説明
され、決定しなければいけない項目が具体的に提案され
た。一つは、定格容量の見方で、二つの槽の洗濯容量を
足したものでよいかという内容、また、一つは、運転時
間、洗浄性能、すすぎ性能等は二つの槽の良いほうを採
用するのか、あるいは平均化するのかなどについてであ
る。
large panels
polyester/cotton
188 x 176cm; 665g
(approx.)
上記の課題については、公正性を保つような規格にす
る必要があるということから、提案したメーカーが原案を
持ち込むものとし、ワークショップにて検討することが確
認された。今後新形態の洗濯機を提案する場合のひとつ
の取組み事例となるものと思われるので、経緯を監視し
3.Liquid detergent(液体タイプの標準洗剤)
ていく。
現在、洗濯性能評価では、標準洗剤として粉末タイプ
の洗剤が使用されている(IEC-A *)
。洗剤の普及実態を
見た場合、国によっては、粉末より液体洗剤が主に使用
されている国がある。日本においても液体洗剤の構成比
が 7 割を占める状況になっている。そのような背景から、
【課 題】
今回の会議では、Edition6 の改正発行に向けた変更点
の進捗報告と今後の進め方について確認がなされた。
IEC60456 でも液体タイプの標準洗剤を制定する提案が
すすぎ性能評価法の見直しに関しては、2015 年の 3
なされ、具体的な進め方・詳細内容が、サブワーキング
月に開催されたボン大学での合意内容を踏まえ、ラウン
で検討が開始されている。今後の検討の進捗状況に関し
ドロビンテストの詳細な結果報告と 2016 年に実施予定で
ては、監視を継続していく。
あるグローバル規模のラウンドロビンテストの進捗に関し
て着目していく。
4.IEC61121(乾燥性能試験法)のEdition5の新規点
衣類乾燥機のラウンドロビンテストを IEC61121 に関
して実施するため、機体は、MIELE、BSH 製の商品を
なお、この縦型洗濯機でのラウンドロビンテストの対
応に際しては、中国から来られていたメンバーのほとんど
が積極的にテストへの参加を表明していた。
用い、1 試験所で 4 ~ 6 週間かけて試験を実施し、2 週
新すすぎ性能評価法と新試験布の導入、液体洗剤の
間かけて次の試験所に輸送することが報告された。測定
標準化の 3 つのうち性能評価に関しては重要な要素であ
結果は 2016 年 3 月のオークランド会議にて報告を予定
るため、日本としても今後、積極的に確認会議に参画し、
している。
情報収集と意見反映を進めていく。
[業界報告] 77
業界報告
IEC/TC61/SC61C
(冷蔵機器の安全性)ウェリントン会議 出席報告
など、一部修正を加えた上で可決された。ただし、
現行規格に記載の “similar dissimilar metals” は奇
異に感じるとして “similar different metals” に修正
する日本提案は、英語圏では逆に日本提案が奇異と
第 59/61/116 小委員会 WG3 委員/
電気冷蔵庫安全規格分科会
主査 小
林 敏和
◇
いう意見があり、現行のままとした。
2 .特にインバータ方式の冷凍冷蔵庫で複雑な挙動
を示すプルダウン(製品据付け時の初期運転)時
の入力電力変化の測定代表区間(第一部:通 則
【概 要】
〔IEC 60335-1〕10 項で規定される “representative
period”)の決定方法について、日本からの安全サイ
開催会議 IEC/TC61/SC61C(冷蔵機器の安全性)
ドでの評価を考慮した起動時及びデフロスト(除霜
開催期間 2015 年 11 月 9 日 ㈪ ~ 11 月 12 日 ㈭
運転)区間を除く最大値出現時間までを代表区間と
開催地
ウェリントン(ニュージーランド)
する案、それに対抗してオーストラリアから出され
参加者
11 カ国 27 名(日本含む)
た 6 時間に固定する案が同時に審議された。日本は、
入力電流平均値がオーストラリア提案に対して高い
【背景・目的】
IEC/SC61C は、家庭用冷凍冷蔵庫、業務用機器を含
値となるため安全サイドでの評価となるという主張を
したが、わかり易く時間を具体的に決めたいという各
国の意見が強く、否決された。しかしながら、結果
む冷蔵機器及びその電動圧縮機の安全規格を審議してお
的に、オーストラリア提案と日本提案の折衷案となり、
り、今回、ウェリントンで IEC 安全規格の改訂提案の審
6 時間経過前にデフロストが発生する場合にはデフロ
議が行われた。日本からは、主に要求事項の明確化を目
スト発生直前までを代表区間とする案にまとめ可決さ
的として、家庭用冷蔵庫(IEC 60335-2-24)について 5
れた。この件に関しては、通則規格の測定方法に記
件、電動圧縮機(IEC 60335-2-34)について 2 件の提案
されている代表区間の平均入力電流あるいは最大入
を行った。特に、昨年(2014 年)に発行された “ IEC
力電流の決定方法が複雑で難解であるため、インター
code of conduct for delegates and experts” に記載して
プリテーションシートなどで明確化することが望ましい。
ある “non-native English speaking countries” の規格に
3 .上記 2 件については再度 DC(各国意見募集文書)
対する解釈のばらつきを避ける意味も含めた提案内容を
を国際幹事が作成することとなった。他の 3 件の日
含んでいる。
本提案は残念ながら否決された。
【成果および課題】
(家庭用冷蔵庫に関する 5 件の日本提案)
1 .アルミと銅のようにイオン化傾向の差が大きい異種
(電動圧縮機に関する 2 件の日本提案)
4 .日本からの電動圧縮機に関する提案は、1 件は否決、
1 件の一部は不採用となったが、圧縮機保護方式の
試験適用範囲に関する明確化についてはドイツ、ア
金属の接触による電界腐食を防止するという要求事
メリカなどの賛同国があり、採用可決された。また、
項の適用範囲を、冷媒漏洩の直接原因となるアルミ
一般的に圧縮機供給者(圧縮機メーカ)と、圧縮機
冷媒管に限定し、冷媒配管以外に使われる部品など
駆動回路及び制御回路供給者(製品メーカ)が異な
適用除外範囲を明確化する日本提案は、明確化のた
るケースが多いインバータ圧縮機に関する認証方法
めに提案した注記の適用除外部品の記載部分を本文
案について日本からプレゼンを行い、一部参加国か
の要求事項とし、中国からの提案で部品を追加する
ら共感を得られた。
◇シャープ株式会社 コンシューマーエレクトロニクスカンパニー 健康・環境システム事業本部 メジャーアプライアンス事業部 第 1 技術部 主事
78 電 機 2016・January
(その他)
参加者
5 .日本から“non-native English speaking countries”に
も理解し易い記載にしたい旨を発言したが、
前 TC61
アメリカ、中国、ドイツ、イギリス、韓国、
日本等からのべ約 220 名が参加
日本からは 27 名が WG 会議、Plenary 会議
国際議長 Johns 氏より規格の序文の紹介があり、こ
に参加
の 規 格 は“appropriately qualified and experienced
persons” が対象との発言があった。規格利用者は理
解できて当然というニュアンスが感じられた。参加国
【出席背景・目的】
も中国、日本のみがアジア圏からの出席であり、他は
国際電気標準会議(IEC)の TC82 は、太陽光発電の
米国、ブラジル、オセアニア及び欧州からの参加で
国際標準化を審議する最上位の委員会である。ここで審
あり、我々が英語で表現しようとした感覚?は伝わら
議される太陽光発電システムの構成や性能・品質評価、
ない様相であった。英語圏からの歩み寄りに期待し
安全性評価に関わる国際標準は、日本の国内規格の基準
過ぎてはならないようである。
になるとともに、日本メーカにとって市場拡大に向けた
ビジネスプランや安全性、信頼性設計方針の構築のため
に極めて重要である。そこで、太陽光発電に関する国際
標準の審議の場で日本側の規格提案や意見反映を行うと
ともに、標準化に関する最新情報を入手し、国内規格立
案の円滑化と効率的な審議の推進による太陽光発電の普
及拡大に資する標準化を進めるべく本委員会および関連
WG 会議に参加した。
【審議・調査結果】
IEC/TC82/WG1,2,3,6,7,
JWG1,Plenary(太陽光発電システム)
南アフリカ会議 出席報告
一般社団法人 日本電機工業会
新エネルギー部 技術課 課長
吉 田 功
新エネルギー部 技術課 主任
出口
洋平
【概 要】
開催会議 WG1( 用 語 )
、WG2( セ ル・ モ ジ ュ ー
11 月 1 日に JWG1、11 月 2 日 ~ 4 日に 5 件 の WG
会 議 が 並 行 開 催され、11 月 5 日〜 6 日には TC82 の
Plenary 会議が開催された。
1.WG 会議
用語関連規格(WG1)では、改正が遅れていた用語
規格(IEC 61836 TS)のプロジェクトリーダを交代し、
2 段階のステップで順次改正作業を加速して進めることと
なった。
セル・モジュール関連(WG2)では、40 件を超える
規格について審議状況報告と一部の内容審議が行われ
た。出力評価(IEC60904 シリーズ)に関しては、ソー
ラーシミュレータの新規性能ランク(A+)の追設の決定、
ル)
、WG3(アレイ)
、WG6(システム・機
両面受光型に対する新規提案があった。両面受光型に関
器)
、WG7(集光型)
、JWG1(村落電化)
、
する今後の詳細議論には日本からは菱川氏(産業技術総
Plenary(全体)
合研究所)が参加する。また、モジュールの性能認証関
開催期間 2015 年 11 月 1 日 ㈰ ~ 11 月 6 日 ㈮
連(IEC61215 シリーズ)では、IEC 61215-1-3 への日
開催地
プレトリア
(南アフリカ)
:WG1, 3, 6, 7, JWG1,
本コメント(hot spot 試験後の白点等の扱い)の追加反
Plenary、ケープタウン(南アフリカ)
:WG2
映、IEC 61215-1-4 に関するソーラーフロンティアからの
[業界報告] 79
業界報告
試験方法提案を、国内対応委員会(NC)である一般社団
JWG1 では村落電化用小規模再生可能エネルギーとそ
法人 日本電機工業会(JEMA)から改めて正式提案する
のハイブリッドシステム(IEC62257 シリーズ)が議論さ
ことが確認された。なお、今後 IEC61215 Amendment
れている。本 JWG は他の WG や TC(8:電力供給に関
として今後議論すべき項目が抽出され、日本からも参加
わるシステムアスペクト、21:蓄電池、34:ランプ類及
を表明した。モジュールの安全性基準(IEC61730-1,-2)
び関連機器、57:電力システム管理及び関連する情報交
では、従来のモジュール設置環境温度(−40℃〜+40℃)
換、64:電気設備及び感電保護、88:風力発電、120:
が世界の設置環境をカバーしきれないため “at least” を
電力貯蔵システム 等)との関連も強く、今後 IECRE
付けることで対応する(必要条件とする)こととなった。
とのリエゾン、IRENA(国際再生可能エネルギー機関)
、
また、太陽光発電(PV)の長期信頼性に係わる樹脂材の
UNIDO(国際連合工業開発機構)及び ICTSD(貿易と
耐候性試験(IEC62788-7-2)では、紫外線(UV)照射
持続可能な開発の国際センター)といった他機関との連
試験時の試料温度を 70℃にする条件が承認された。この
携も進められる。
UV 試験温度は IEC61730 にも関連する重要案件であり、
その Amendment 議論には日本からエキスパート 2 名が
参加する。その他新規提案として、色素増感型太陽電池、
建材一体型関連の提案があり、今後議論が進められる。
2.Plenary(全体)会議
11 月 5 日〜 6 日に開催された Plenary 会議では、各
WG 会議の総括とともに TC82 の現状について報告され
PV アレイ関連(WG3)では、オフグリッド(独立形
た。再生可能エネルギー関連の発行規格、審議中のプロ
電源)の審議形態について議論され、TC120 など他の委
ジェクトにおいては太陽光発電に関するものが群を抜い
員会との連携の必要性が指摘された。この中で、エネル
て多い状況が示され、近年の太陽光発電に対する関心の
ギー貯蔵付きの PV システム、PV システムの性能低下、
高さがうかがえた。さらに今後注力すべき標準化として、
発電予測といった項目が新規に提案された。その他、対
“Quality” と “Bankability” をキーワードに Smart Grid
雷保護、アレイの設置方法(集光型にも一部適用可)に
等への寄与にも取り組む方針が示された。これに関連し
ついての新規提案もあった。
てシステム認証に関わる IECRE の動向について報告さ
PV システム関連(WG6)では、パワーコンディショ
れ、TC82 における従来の製品レベルの規格・標準化に
ナを含む系統連系関連が新規提案も含めて活発に議論さ
加えて、システムという考え方が重要になることから、他
れている。EMC 関連(IEC62920)では、直流側伝導妨
の WG や TC とのリエゾンの重要性が示された。
害波については CISPR 11 Ed.6 で規格化されているもの
を参考にし、交流側は IEC61000 シリーズを参考にしな
がら、日本人プロジェクトリーダを中心に審議が進められ
【所 感】
る。また、アーク放電検出(IEC63027)に関しては、日
製品の性能、安全性、信頼性に関わる規格は新規提
本のエキスパートから PV アレイの接地状況、ブロッキ
案や現規格の改正が急ピッチで進められている。特に耐
ングダイオードの有無の影響について指摘した。この他、
候性試験や気候区分ごとの試験規格など太陽光発電の信
系統擾乱を模擬するための BTB(AC 側)電源および
頼性にかかわる議論が活発化しており、太陽光発電の世
DC 模擬電源に関し、その基本要求仕様について日本の
界的な普及拡大を反映しつつあるものと思われる。一方、
エキスパートから新規提案が行われ、今後 TS 化に向け
今後の継続的な普及拡大のためには、Bankability といっ
て審議を進めることが承認された。
た投資家の視点にも応えられるシステム評価とそれに必
集 光型関連(WG7)では、安 全関連(IEC62920)
、
光学技術(IEC62989)
、シミュレータ(IEC60904-9-1)
要な製品規格の開発がますます重要になる。
今回の南アフリカ会議では、日本から行った新規規格
等について議論された。集光型は太陽光発電の中でも比
提案が承認され、また、認証などの重要規格の改正議論
較的プラント色が強いため、IECRE 性能保証やシステム
への参加表明を行った。今後も関係機関・メンバーと協
出力(IEC61724-3)など、投資家視点から要求の広い議
力し、科学的な根拠に基づく審議を行い、IEC に対して
論が多くを占めた。
説得力のある有意義な提案・議論を展開していく。
80 電 機 2016・January
月に発行した。
IEC /TC116 WG7/WG8/WG9/
WG10(電動工具の安全性)
ロンドン会議 出席報告
また従来規格の個別規定の数は全部合わせると 40 に
及 ぶ(IEC60745-2-1 ~ -2-23、IEC61029-2-1 ~ -2-11、
IEC60335-2-77、-2-91、-2-92、-2-94、-2-100、-2-107)
。
第 59/61/116 小員会 WG5 主査
成田 正己
◇
【概 要】
開催期間 2015 年 10 月 26 日㈪~ 11 月 6 日㈮
現在 TC116 の上記委員会において IEC62841-1 の一般
規定に整合したこれらの個別規定を順次作成中。
これらの規格が電気用品安全法の整合規格の元となる
ため、将来日本の規格として採用する上で問題となるよ
うな要求事項について事前に日本からの提案を行い、国
際規格と日本の規格の整合を図る。
開催会議 IEC/TC116/WG9(IEC62841-3-XX 可搬形
電動工具の安全 個別規定)
(10 月 26 日〜
27 日 午前)
IEC/TC116/WG8(IEC62841-2-XX 手持ち
形電動工具の安全 個別規定)
(10 月 27 日
1.IEC/TC116/WG7 会議(IEC62841-1:手持ち
形電動工具の安全)
午後〜 10 月 28 日)
1.1 SCF(電子回路を使用した安全機能)評価のた
IEC/TC116/WG7(IEC62841-1 手持ち形電
動工具、可搬形電動工具、園芸工具の安全
【主な審議内容】
めのガイドライン(116/226/DC、116/239/INF)
電動工具に使用する SCF の評価のガイドラインに
一般規定)
(10 月 29 日〜 10 月 30 日 午前)
ついて、今回で審議が終了した。完成したガイドライ
IEC/TC116/WG10(IEC 60335-2-XX
ンは INF(参考文書)として発行される。
〔IEC62841-4-XX〕園芸工具の安全)
(11 月
2 日〜 11 月 6 日 午前)
1.2 IEC 62841-1 バッテリ電 圧 上 限 値 変 更に 伴う
Annex C, K, L の改定(116/245/DC、
116/255/INF)
開催地
ロンドン市(英国)
参加国
米国(7)
、カナダ(2)
、英国(3)
、ドイツ
(直流)に制限されていたが、これを 250 V DC に変更
(5)
、ベルギー(2)
、オーストリア(2)
、ス
する。今回第 2DC(コメント用審議文書)の審議が
従来 Annex K, L のバッテリ電圧が上限 75V DC
ウェーデン(1)
、南アフリカ(1)
、日本(2)
、
完了した。この内容は今後審議する IEC 62841-1 の
事務局(1)
(9 カ国 26 名)
Amendment 1 に統合し改定する予定。
日本からの出席者:
第 59/61/116 小員会 WG5:
成田正己(WG5 主査/株式会社 マキタ)
、
山城直人(WG5 委員/日立工機株式会社)
1.3 電動工具用スイッチの個別規定 IEC61058-2-6
(23J/394/CDV)
JWG 6(SC 23J、TC 116 のジョイント WG)で審
議されている電動工具用スイッチの個別規定。TC116
からコメントを提出するため、審議したが特に大きな
【出席背景、目的】
手持ち形電動工具、可搬形電動工具、園芸工具は製品
変更となる提案はなかった。2016 年に発行予定。
の構造、試験方法が類似していることから、従来それぞ
2.IEC/TC116/WG8 会議(IEC62841-2-XX:手
持ち形電動工具の安全)
れ IEC 60335(園芸工具)
、IEC 60745(手持ち形電動
2.1 ドリルIEC 62841-2-1
(116/100/DC、
116/113A/INF)
工具)
、IEC 61029(可搬形電動工具)に分かれていた
長らく懸案となっていた反動トルクの測定方法が決
一般規定を一つにまとめ、IEC62841-1 として 2014 年 3
着した。トルク測定の際にアングル角 30 度~ 60 度
◇株式会社 マキタ 開発技術本部 開発技術企画部 規格管理課 主事
[業界報告] 81
業界報告
のジョイントを使用し、ハンドルの長さの測定位置は
スイッチの上端から 80mm となった。
今回で DC の審議が終了、反動トルク測定方法を
盛り込み、CDV(投票用委員会原案)を発行する。
2.2 攪拌機 IEC 62841-2-10(116/221/DC、
116/237/
INF)
反動トルクの測定時のハンドルの長さの測定方法に
関する図が追加された。この図を盛り込み CDV へ進
む。
2.3 シャー、ニブラ IEC 62841-2-8(116/229/CDV、
116/2xx/RVC)
CDV の審議を行った。大きな変更はなく、FDIS
4.2 手押し式芝刈り機(ローンモア)IEC62841-4-XX
(委員会草案)
前回の続きで、委員会草案審議を行った。ラフな
たたき台草案を基に ISO 5395-1,-2、IEC/EN 603352-77、UL1447、ANSIB71.1、の要求を参照しながら、
一つのまとまりのある規格草案の形に編集する作業を
行っている段階。
現在行っている作業はまだたたき台作りの段階であ
るため、WG10 ではなく、もっと少人数のエキスパー
トで集中的に行った方がよいという意見が出され、今
後は小委員会メンバーでより完成度の高いたたき台を
行っていくこととなった。
(最終国際規格案)へ進む
2.4 グラインダ、ポリッシャ、ディスクサンダ IEC
62841-2-3(委員会草案)
前回に引き続き委員会草案の審議を行ったが、今
回は時間が足らなかったため、次回また審議の続きを
行う。
【今後の課題】
規格の改定よりも市場のバッテリの高電圧化の方が先
行しており、規格の改定を早める必要がある。
バッテリの高電圧化、その他の改定を統合し Amendment 1 として発行する予定。
(変更箇所が多いため、
3.IEC/TC116/WG9 会議(IEC62841-3-XX:可
搬式電動工具)
Ed.2 となるかもしれない。
)
3.1 可搬式ドリル(ボール盤)IEC62841-3-XX(116/
業を早く進めたいという要望が強く、次回プレトリア会議
227/DC、116/251/INF)
DC 草案から大きな変更はなく審議終了。CDV と
市場のバッテリ高電圧化に対応するためにこの改定作
では集中的にこの 62841-1 の改定案の審議を行うために、
予定を変更してこの審議に 4 日間使う予定。
NP(新業務項目提案)を発行する。
3.2 IEC62841-3-10( 切 断 機 )IEC62841-3-9( マ イ
ターソー)の Technical Corrigendum
既に発行済みの上記規格に誤記が見つかったため、
Technical Corrigendum を発行することとなった。
3.3 可搬式バンドソー IEC 62841-3-5(委員会草案)
時間の都合で最後まで審議することができなかった
ため、次回また委員会草案の審議の続きを行う。
【今後の会議開催予定】
1月25日㈪~29日㈮:WG7/8
南アフリカ
(プレトリア)
2月 1日㈪~ 5日㈮:WG10
南アフリカ
(プレトリア)
4月 4日㈪~ 8日㈮:WG7/8/9 米国予定
4月11日㈪~15日㈮:WG10
7月11日㈪~15日㈮:WG7/8/9 ベルリン予定
7月18日㈪~22日㈮:WG10
4.IEC/TC116/WG10 会議(IEC 62841-4-XX:
園芸工具の安全)
4.1 ロボチックローンモア IEC 60335-2-107 Amd.1
(116/233/CDV、116/2xx/RVC)
IEC62841 に移行する前に、一旦現行の IEC603352-107 を IEC60335-1 の第 5 版に合わせて改定を行う。
今回は時間が足らず、委員会草案の審議を途中まで
しかできなかったため、次回引き続き審議を行う。
82 電 機 2016・January
米国予定
10月10日㈪~14日㈮:WG10
ベルリン予定
カナダ
(詳細未定)
10月17日㈪~21日㈮:WG7/8/9 カナダ
(詳細未定)
IEC/SC121A/MT9(低圧遮断器、
配線用遮断器、漏電遮断器)上海会議 出席報告
①漏電遮断器 Type B、②アルミニウム導体接続、
③電磁両立性(EMC)性能規定整合化など
(2)中国の遮断器の標準化について
IEC/SC121A 国内対応委員会
山縣 伸示
◇
【概 要】
【成 果】
今回、次の通り、IEC60947-2 の改正審議に参加する
と共に、意見提出、情報入手を行った。
開催会議 IEC/SC121A/MT9(低圧遮断器、配線用遮
断器、漏電遮断器)
開催期間 2015 年 10 月 27 日 ㈫ ~ 29 日 ㈭
開催地
上海(中国)
参加者
7 カ国 12 名(日本含む)
1.IEC60947-2 Ed.5.0 最終規格案(FDIS)発行
遅延について
FDIS は、今年の 8 月には発行予定であったが遅延し、
11 月末の発行が予定された。遅延理由は、FDIS 発行直
前に、IEC 中央事務局から FDIS への IEC の体裁ルール
【背景など】
1.製品:低圧遮断器、配線用遮断器、漏電遮断器(以
下、総称して遮断器という。
)
の採用相談があり、採用すると箇条番号・表番号の変更
を余儀なくされるため、MT9 の採否議論が必要であった
ためである。今回、規格読者(認証機関など)
・規格審
議者にとっては、急なこれらの変更は不都合が多くあり、
議論した結果、今回の FDIS(Ed.5.0)は、これらは変更
2.IEC規格:IEC60947-2:Low-voltage switchgear and
controlgear - Part 2:Circuit-breakers
3.対応 JIS:JISC8201-2-1:低圧開閉装置及び制御装
置-第 2-1 部:回路遮断器(配線用遮断器及びその
他の遮断器)
せずとし、次の Edition(Ed.6.0)で体裁ルールに従うこ
ととした。
2.IEC60947-2 次期改定作業項目審議
Ed.5.0 Amendment.1 案(次期改定)の作業項目につ
いて審議した。
JISC8201-2-2:低圧開閉装置及び制御装置-第 2-2
部:漏電遮断器
2.1 Type B(交流回路の直流成分漏洩電流とインバー
タ〔INV〕からの地絡電流の検出)の漏電遮断器の
4.背景(全般)
:輸出品は IEC 規格適合、国内品は JIS
規格適合。
IEC 60947-2 附属書 B への導入検討
ドイツから、IEC 60947-2 附属書 B へ Type F を含
IEC 規格の変更は、JIS の規定・製品設計に影響す
めるかについて、Type F は単相 INV からの地絡電
る。
流の検出であり、直流地絡の検出は含んでおらず、ま
IEC 規格の動向把握と、IEC 規格への一般社団法人
た、IEC60947-2 附属書 B は産業用途であることか
日本電機工業会(JEMA)意見に対するフォローを行
ら、Type F のカテゴリーは不要との意見が出された。
う。
JEMA も同様な意見である旨を伝え、ドイツ意見をサ
ポートした。結果として、IEC60947-2 附属書 B は、
5.審議アイテム
(1)IEC60947-2 次期改定項目審議
Type F のカテゴリーは不採用として、Type F の合成
周波数特性を、Type B に包含させることとなった。
◇三菱電機株式会社 福山製作所 遮断器製造部
[業界報告] 83
業界報告
2.2 アルミニウム導体接続の新規附属書の作成検討
この新規附属書は、個別製品規格(IEC 60947-2
など)に導入するのではなく、通則(IEC60947-1)
(自動再投入装置)は、分離した GB 規格として発行予定
である。また、風力向け遮断器の要求事項を開発する計
画がある。
に入れるべきとの意見もあるが、まずは個別製品規格
の IEC60947-2 に導入し、その後に IEC60947-3(低
圧の開閉器・断路器等)への導入を行い、最終的に
通則に入れることとした。
【今後のアクション】
1.IEC60947-2 Ed.5.0 今後のスケジュール
最 終 規 格 案(FDIS)が 11 月末 に 発 行 され、2016
2.3 電磁両立性(EMC)性能基準の整合化の検討
IEC60947-2 の EMC の規定が IEC60947-1 などに
年 3 月の MT9 会 議(フランス)で 最 終 審 議を行う。
IEC60947-2 Ed.5.0 の発行は、2016 年 4 月を予定した。
比べて厳しい基準であるとの指摘があり、整合化の検
討が行われた。遮断器の基準を下げることは電気設
備の安全性の点から難しいとの意見もあり、今後、基
準の引き下げに関して調整することとした。
2.IEC60947-2 Ed.5.0 Amd.1 改定作業 今後のス
ケジュール
掲題の Amendment.1 発行に向けて次回以降の MT9
会議で議論を行うため、改訂内容をまとめた文書(DC
2.4 QR コード
*1
による名板表示について
表示スペースが小さい遮断器について「QR コード」
文書)を 2015 年 12 月に発 行する。文書への意見を
2016 年 3 月の MT9 会議で実施する。
によって代替したいとの提案が事例提供と共にあっ
た。今後、どの項目が「QR コード」への代替えが可
能か継続検討を行う。各委員に次回の会議に実例の
3.今後の課題
(1)IEC60947-2 Ed.5.0 Amd.1 改定作業(特に、附属書
提出が求められた。
B への Type B 特性の新規導入)への対応・協力が
(* 1:QR コードは株式会社 デンソーウェーブの登録商標です。
)
必要である。
2.5 通電部保持絶縁部材のグローワイヤ試験温度につ
いて
(2)IEC60947-2 へも影響がある通則:IEC60947-1 の改
正検討(リスクアセスメント、電子回路部品の故障
IEC60947-2 は通電部保持絶縁部材のグローワイヤ
試験、電気/電子制御回路の絶縁距離・エネルギー
試験温度は 960℃としているが、二次回路(補助回
/電流制限、CO 2 タスクフォースなど新たな規定導
路)の同部材に限定して、960℃から 850℃に改定す
入)への対応・協力が必要である。
ることした。
2.6 Surge Protective Device(SPD)に組み合わされ
る遮断器のサージ耐量について
委員から、遮断器のサージ耐量の具体的な事故事
例が示されたが、今後、更に市場の情報を共有して、
規格化について審議することが確認された。
3.中国の遮断器の標準化についてのプレゼンテー
ション(中国メンバーからの紹介)
IEC60947-2 Ed.5.0 は、2016 年に GB14048.2 規格に
導入される予定である。
IEC60947-2 の附属書 P(PV 用の遮断器)と附属書 R
84 電 機 2016・January
会議風景
IECRE WE-OMC WG501(再生
可能エネルギー機器規格試験認証制度
WG501)オーランド会議 出席報告
6
7
8
9
風力発電システム標準化委員会
石山 卓弘
◇
【概 要】
Continue work on -22 / OD 501 focussing on project
certification
Comment on draft ODs which were received from SGs
prior to meeting
Review and finalization of list of OD's
Definition on what is a certificate to determine on
what the fees are charged upon(input from SGs
expected)
2.RoP については、WE-OMC/007/DC 各国からのコ
メントの確認を実施した。日本からのコメントも含め
て、一国一票に加えて Stakeholder Group の Voting
Right 付与の是非を問うものが多い。2015 年 9 月の
開催会議 IECRE WE-OMC WG501
東京会議で決定の通り、Stakeholder Group の投票
開催期間 2015 年 11 月 10 日 ㈫ ~ 11 月 12 日 ㈭
権は与えられず、コメント発信のみ可能という決定事
開催地
Siemens 社 オーランド(米国)
項を再確認し、RoP 文章の修正も行うこととした。
参加者
6 カ国 11 名(デンマーク、ドイツ、スイス、
米国、韓国、日本)
3.WG001 で作成した HBR(Harmonized Basic Rule)
は 2017 年に改訂される予定とのこと。このスケジュー
【背景・目的】
ルを考 慮し、それまでは既 存の IECRE 01(Basic
Rule)を参照することとした。
IECRE WE-OMC 傘下に WG501 が発足し、第 4 回
会議(SCA 時代からカウントして第 7 回会議)が開催さ
4.Clarification Sheet の 位 置 づけに つい て 審 議 が あ
れた。IECRE システムは、IEC を適用規格とした再生可
り、その結果、標準管理評議会(SMB)が発行する
能エネルギー機器の分野における国際的な試験認証制度
IEC 規格のグレーゾーンの解釈の明確化のみが目的
であり、ME(海洋)
、PV(太陽光)といった異なる分野
で、規格の内容変更まではできないと位置づけられる
の製品認証スキームとも協調した新しいスキームへの変
との見解が示された。なお、100%コンセンサスが得
更が求められる。まずは、既存の IEC61400-22 規格(風
られなくとも、会議出席者の 80%以上の賛同により、
車の認証)を IECEX ベースのフォーマットに落とし込む
Clarification Sheet の発行を可能にしたいとの意見が
作業&内容のブラッシュアップを推進し、既に風車認証
あった。これについては、Clarification Sheet の性質
手続きの規則(RoP)Rules of Procedure 本文の原案は
上、迅速かつ次回改訂までの暫定的な文章となるた
作成している。今回、この RoP の付属資料としての OD
め、簡易的に発行できるようにしたいとの意見であっ
(Operational Document)策定の作業会があり、内容の
た。
確認と日本意見反映のため、出席した。
5.List of ODs に つ い て、 番 号 だ け で な く、 名 称、
【審議事項】
バージョンも判るようにファイル名称の付け方に
ついて決定する方針が示された。
1.会議の Agenda に従い、以下の審議がなされた。
Item
1
2
3
4
5
Description
Approval of agenda
Approval of MOM of 25-26 June 15, DONG
Decisions and reflections from Tokyo
Review and status of Action Items list - General
Actions
Finish RoPs based on received comments
6.OD の承認ルートについて、戦略グループ(SG)
→ WG501 → WE-OMC(最終決済)としたいとの
意見があった。
7.OD501(旧 IEC61400-22)について、SMB 側に残
◇一般社団法人 日本電機工業会 新エネルギー部 技術課 課長
[業界報告] 85
業界報告
す文書(技術標準)と CAB IECRE へ移行する文書
(認証手続き)について、見直しが始まった。なお、
ここでは、プロジェクト認証を中心に審議を行うこと
IECRE WG001(再生可能エネルギ
ー機器規格試験認証制度 WG001)
オーフス会議 出席報告
となった。風力分野でのプロジェクト認証は、売電の
予測・ファイナンスの視点というよりは、環境に適合
風力発電システム標準化委員会
した設計荷重の確認が主な目的。適切に安全率を下
石山 卓弘
◇
げるためには、設置環境(特に乱流強度やウィンドシ
アなど)を正確に計測・把握するものである。
8.型式認証の有効性を継続するためには、現状、定期
【概 要】
開催会議 IECRE WG001
的な Surveillance が必要であるが、もう製造を終了し
開催期間 2015 年 12 月 1 日 ㈫ ~ 12 月 2 日 ㈬
ている場合の取り扱いについて、問題提起があった。
開催地
オーフス(デンマーク)
参加者
7 カ国 10 名(米国、カナダ、スイス、スペ
9.Finance に関連して、各社の負担金を計算する上でど
イン、ハンガリー、デンマーク、日本)
のように証書の枚数をカウントすべきか、どのように
IECRE へ支払われるべきかとの疑問について、審議
がなされた。風車販売の宣伝のためには、また、認証
【背景・目的】
の有効性を示すためには、IECRE の WEB サイトに
IECRE システムは、2014 年 6 月に適合性評価評議会
認証が取得され次第、順次アップロードすることが必
(CAB)承認にて正式発足したばかりの、IEC 規格を適用
要であるようにして、WEB アップロード数でカウント
規格とした再生可能エネルギー機器の分野における国際
したらどうかとの意見が出された。また、部品認証や
的な認証システムである。2014 年 9 月に米国ボルダーで
Conformity Statement の数も同様にカウントできるよ
IECRE Management Committee のキックオフ会議が開
うにしたいとの意見がなされた。
催され、その際、WE(風力)
、ME(海洋)
、PV(太陽光)の
3 分野の OMC(運営管理委員会)に共通に適用される基
【今後の予定】
本ルールを策定する WG001 作業部会も発足している。
IECRE の参加には、Member Body として加盟登録(有
1.WG501 では、引き続き、風 車 認 証 手 続きの規 則
償)が必要となるが、日本も経済産業省が主導して JISC
(Rules of Procedure〔RoP〕
)の OD の作成、修文を
(日本工業標準調査会)が Member Body(現在 16 ヵ国)
推進する予定である。
として加盟しており、また、一般社団法人 日本電機工業
会(JEMA)が日本の国内審議団体を務めている。
2. 次 回 WG501 は、2016 年 2 月 17 日 ㈬ 〜 18 日 ㈭ 、
スペイン・ガメサのホストにて開催される。
今回の WG001 作業会は第 3 回会議であるが、2015
年 9 月に日本ホスト開催の IECRE Management Committee(REMC)の決定事項も踏まえた重要な作業会で
3.2015 年 12 月 31 日 ㈭ メンバーボディに対して RoP
の最終版を提示して投票予定。
ある。WG001 で原案作成、IECRE 東京大会で了承され
た HBR(Harmonized Basic Rule)は CAB WG11 での
承認待ちの状況であるが、今回の主な作業としては、各
4.2017 年 7 月 1 日 ㈯ IEC61400-22 は 廃 止 し て、
WE-OMC RoP へ移行完了する予定。
セクターの比較をした上で、IECRE Rules of Procedure
(IECRE 02)の原案作成である。そのため、日本意見の
フォローや今後の動向把握のために出席した。
◇一般社団法人 日本電機工業会 新エネルギー部 技術課 課長
86 電 機 2016・January
【審議事項】
1.前回 WG001 議事録(2015 年 6 月:ミシサガ会議)
レポートが主流になるとの説明があった。
6.PV では、Testing Laboratory の用語が見当たらず、
の承認。また、IECRE 加盟国数が 18 ヵ国→ 16 ヵ国
Inspection Body の用語が使用されているため、考え
へ減少(ポルトガルとスウェーデンが脱退)した旨の
方について質問した。その結果、IECEE では Testing
報告があった。
Laboratory の用語があり、そちらと重複を避けるため
に IECRE では Inspection Body とされているとのこと。
2.HBR(Harmonized Basic Rule)については、WG001
また、Inspection Body では、パネル単体ではないが、
の提案どおり REMC で 9 月に了承され、CAB WG11
プロジェクトレベルでの検査をする。経年劣化による
の承認待ちである報告があった。
性能の低下、製品単位で初期性能のばらつきが、PV
では問題となることがあるようで、その検査を担当す
3.WG 番号の整合性について協議した。RE レベルでは、
WG006:Finance, WG004:Promotion & Market-
るとのこと。風車の IECRE 認証制度とは、基本的な
考え方に違いがあることが判明した。
ing と WG 番号を管理している。これに対して、各セ
ク タ ー の レ ベ ル で は WG306( 海 洋 の Finance)
、
7.IECRE Rules of Procedure(IECRE 02)の原案作成
WG506(風力の Finance)が立ち上がっている。太
のため、目次案について確認。また、執筆の方向性、
陽光においても、WG406(太陽光の Finance)を立
執筆の役割分担(7 章を担当)を決定した。
上げるべきとの問題提起があった。これに対し、ハン
ガ リー か ら は Finance は Business Plan す な わ ち
TABLE OF CONTENTS
WG404 の 活 動 とリン ク す る の で、WG404 が Fi-
1.Scope(Jonathan)
nance も対応する旨の回答があった。今後、各セク
2.Normative references(Sumanth + Shawn)
ター間でどのように Harmonize させるか(WG の横
3.Definitions and Abbreviations(Sumanth + Shawn)
串)
、検討事項となった。
4.Organizational Structure(Bence + Jonathan)
5.Requirements for Participation in the IECRE
4.各セクターの Terms of Reference に関して、PV(太
陽光)
、WE(風力)
、ME(海洋)で比較を実施した。
各セクターの違いに対する方針を協議した結果、各セ
クターの裁量を尊重すべきではないか、WG001 の活
動を通してアライメントをもっと推進すべきではない
か、議論となった。現状、3 セクターの製品のステー
ジや製品の特徴が違いすぎるので、まずは、それを把
System(Frank)
6.Deliverables of the IECRE System(Christer +
Bence)
7.Rules – Description of IECRE Procedures(Takahiro
+ Jonathan)
8.Peer Assessment Programme(Frank〔RETLs〕+
Christer〔RECBs〕
)
握した上で、Harmonize できる範囲を広げていく方針
となった。
5.各セクターの Rules of Procedure に関して、WE(風
力)
、PV(太陽光)
、ME(海 洋)で比較を実 施し
た。その結果、WG501(風力)については、技術事
項が多い、型式認証・部品認証が主流となっている。
WG401(太陽光)については、信頼性にフォーカス
されていて、プロジェクト認証のみを対象としている。
【今後の予定】
1.2016 年 1 月 15 日 ㈮ :上述の RoP 執筆分担に従いコ
ンビナーへ提出。
2.2016 年 1 月 25 日 ㈪ :RoP のレビュー会として WEB
会議の開催予定。
3.2016 年 3 月 1 日 ㈫ 〜 2 日 ㈬:WG001 会議
(Phoenix,
AZ, USA)
、RoP ドラフトの継続審議予定。
WG301(海洋)については、未完成ながら、テスト
[業界報告] 87
ュ
フラッシス
ニュー
新会員紹介(正会員)
ソーラーフロンティア株式会社
代表取締役社長 平野 敦彦
(2015 年 11 月入会)
い CIS 薄膜太陽電池の開発・生産・販売を一貫して手掛
【会社概要】
けるソーラーカンパニーです。
会 社 名 ソーラーフロンティア株式会社
当社は、親会社である昭和シェル石油が 100 年以上に
代 表 者 代表取締役社長 平野 敦彦
わたって蓄積したエネルギー産業に関する知見と、30 年
設
立 2006 年 8 月
以上の太陽電池に関する研究開発の歴史を受け継いでい
資 本 金 351 億 2,073 万円
ます。1970 年代のオイルショックを機に、業界の先駆者
従 業 員 約 1,500 名
と共同で太陽電池技術の開発を始め、その後 1993 年に
本
CIS 技術の将来性の高さに着目し CIS 薄膜太陽電池の研
社 〒135-8074
東京都港区台場二丁目 3 番 2 号
台場フロンティアビル
究開発に特化、2005 年に事業化を決定しました。
2007 年より CIS 薄膜太陽電池の商業生産を開始し、
研究開発 〒 243-0206 拠点
神奈川県厚木市下川入 123-1
成功。事業化の決定からわずか 6 年で国内生産量ナン
生産拠点宮崎工場(宮崎県)
・国富工場(宮崎県)
・
バーワンの地位を確立し、メイド・イン・ジャパンの品質
2011 年には世界最大規模となる国富工場の商業生産に
を世界中のお客様に提供しています。
東北工場(宮城県)
販売拠点本社・東北(宮城県)
・中部(愛知県)
・
近畿(大阪府)
・九州(福岡県)
また、2015 年 4 月には、厚木リサーチセンターで開発
された最先端の技術と、国富工場で培った生産技術を導
海外拠点 アメリカ・ドイツ・サウジアラビア
入した東北工場が稼働を始めました。同工場はソーラー
U R L http://www.solar-frontier.com/
フロンティアの海外展開に向けた礎として、また海外生産
体制の構築に向けたモデル工場としての役割を担い、さ
【事業内容】
CIS 薄膜太陽電池の研究開発、生産、販売、並びに同
製品を使った発電システムの販売、発電所プロジェクト
の開発・遂行、発電事業の運営・保守サービス
「太陽による快適でクリーンな暮らしをすべての人に」
ソーラーフロンティアは、経済性に優れ、環境に優し
88 電 機 2016・January
ソーラーフロンティアは、太陽光発電におけるグローバ
ルリーダーとして、エネルギーの将来をしっかりと見据え、
太陽による快適でクリー
【事業概要】
厚木リサーチセンター
らなる CIS 薄膜太陽電池の生産の強化を進めます。
国富工場
ンな暮らしをすべての人
に提供してまいります。
CIS 薄膜太陽電池▶
新会員紹介(正会員)
日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
CEO フランツ サーウィンカ
(2015 年 11 月入会)
造に従事しています。ジョンソンコントロールズと日立は
【会社概要】
それぞれ長い歴史があり、ジョンソンコントロールズが有
会 社 名 日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
する「業界トップクラスの専門性とグローバルネットワー
代 表 者 CEO フランツ サーウィンカ
ク」
、日立の「豊富な経験と革新的な技術」が融合された
設
会社です。
立 2015 年 10 月 1 日
従 業 員約 2,500 名(連結約 14,000 名)
(2015 年 10 月 1 日現在)
当社は、ジョンソンコントロールズの広範な販売チャ
ネルに加え、双方の技術力および研究開発基盤をもと
所 在 地 〒 105-0022
に、グローバルなプレゼンスと最強の HVAC(Heating,
Ventilation, Air Conditioning)製品ポートフォリオを
東京都港区海岸一丁目 16 番 1 号
拠
点 栃木、清水、土浦等 24 拠点(海外含)
U R L http://www.jci-hitachi.com
有する会社であり、ジョンソンコントロールズの業界を
リードする HVAC およびビルオートメーションソリュー
ションに加え、日立が持つ世界有数の VRF(Variable
Refrigerant Flow)システム、家庭用エアコン、高効率
【事業内容】
冷凍・空調機器の設計、製造および販売
チラー、最先端ロータリーおよびスクロール圧縮機など、
多様で幅広い空調関連製品について両社のシナジーを最
大限に発揮し、
「より快適に、安全にそして持続可能な世
【事業概要】
日立ジョンソンコントロールズ空調は、2015 年 10 月 1
界」を創造していきます。
日に、日立空調製品のグローバル展開を加速するために
世界のHVAC 市場は成長を続け、先端技術を活用した
米国ジョンソンコントロールズ社と日立の合弁会社として
高効率な空調システムに対するニーズはますます高まっ
誕生した新しい会社です。日立家庭用ルームエアコン “白
ています。日立グループの研究所とも連携を取り、多様
くまくん” から、業務用、産業用までをカバーする総合空
な技術を応用して、環境負荷低減のための省エネ性向上、
調機器設計の開発から製造をおこなっています。グルー
含有化学物質の削減など、グローバルな顧客ニーズに
プ全体では、約 14,000 名が、アジア、欧州、南米をはじ
合った既存製品について、世界有数の VRF 技術・先進
めグローバルな製造拠点で設計、エンジニアリング、製
的なインバータ技術を基盤にものづくりを進めています。
ルームエアコン
パッケージエアコン
[フラッシュニュース] 89
統計
■ 電機・電子産業の生産額
(経済産業省「生産動態統計調査」による)
(単位:百万円,%)
2015 年 8 月分
機 種
金 額
2015 年 9 月分
前年同月比
金 額
2015 年 10 月分
前年同月比
金 額
前年同月比
発電用原動機計 ※
26,062
80.0
91,270
127.4
17,598
29.1
回転電気機械計 ※
63,163
85.2
76,538
84.1
74,717
84.3
静止電気機械器具計 ※
49,948
81.0
70,262
86.0
61,701
95.1
開閉制御装置・開閉機器計 ※
97,378
107.0
136,415
102.7
105,629
98.6
民生用電気機械器具◎
68,319
128.9
76,735
119.4
75,830
107.8
エアコンディショナ、フリーザ、除湿機◎
54,675
102.5
59,614
110.8
76,388
109.0
76,865
96.7
107,832
103.0
77,667
89.2
417,103
96.8
551,593
102.8
523,735
101.1
49,048
110.0
57,303
104.2
61,270
98.1
電子計算機及び関連装置
電子管・半導体素子及び集積回路
民生用電子機械器具
197,102
113.0
228,343
115.4
223,049
112.0
通信機械器具及び無線応用装置
電子部品
68,670
99.9
111,844
95.9
80,331
107.6
電球、配線及び電気照明器具
76,475
108.3
86,787
110.8
101,297
110.7
電池
54,442
100.4
69,564
102.1
63,181
91.8
4,385
116.9
5,044
120.2
5,327
121.9
88,325
96.7
123,315
101.2
88,421
101.1
1,391,960
100.6
1,852,459
104.2
1,636,141
98.9
事務用電子機器
電気計測器及び電子応用装置
合計
* 1:太字は JEMA 取扱い製品
* 2:※ の和は重電機器の合計、◎の和は家電機器の合計
■ JEMA 取扱い製品(重電機器・家電機器)の生産・輸出入実績
生 産
(経済産業省「生産動態統計調査」による)
2015 年 8 月分
2015 年 9 月分
2015 年 10 月分
金額(百万円) 前年同月比(%) 金額(百万円) 前年同月比(%) 金額(百万円) 前年同月比(%)
重電機器
236,551
91.2
374,485
99.3
259,645
80.9
家電機器
122,113
115.3
135,532
115.3
151,430
108.5
358,664
98.2
510,017
103.1
411,075
89.2
【 合 計 】
輸 出
(財務省「日本貿易月表」による)
2015 年 8 月分
2015 年 9 月分
2015 年 10 月分
金額(千円) 前年同月比(%) 金額(千円) 前年同月比(%) 金額(千円) 前年同月比(%)
重電機器
176,084,284
原子炉およびその部分品
家電機器
輸 入
92.8
194,983,624
95.5
208,697,743
89.2
1,711,604
87.1
520,138
75.2
466,377
31.4
22,173,351
105.8
24,656,006
106.4
26,026,477
100.8
(財務省「日本貿易月表」による)
2015 年 8 月分
2015 年 9 月分
2015 年 10 月分(注)
金額(千円) 前年同月比(%) 金額(千円) 前年同月比(%) 金額(千円) 前年同月比(%)
重電機器
原子炉およびその部分品
核燃料要素
家電機器
(注)輸入の 2015 年 10 月分は速報値
90 電 機 2016・January
98,623,529
115.1
103,358,440
96.2
105,164,328
105.6
2,373
17.4
10,722
4.5
6,916
60.4
0
−
0
−
0
−
70,239,399
109.2
75,493,446
106.8
75,249,441
96.4
品目別の詳細な統計データーは、JEMA ウェブサイトで
公開しております(ダウンロード可能)
。
www.jema-net.or.jp
■ 電気機器生産実績の推移
重電機器・家電機器 合計
億円
%
140
7,000
130
6,000
120
5,000
110
4,000
100
3,000
90
2,000
80
1,000
70
0 ,
14/10
11
12
,
15/1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
前年同月比(右目盛)
生産額
(左目盛)
8,000
0
年/月
重電機器
億円
%
140
7,000
130
6,000
120
5,000
110
4,000
100
3,000
90
2,000
80
1,000
70
0 ,
14/10
11
12
,
15/1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
前年同月比(右目盛)
生産額
(左目盛)
8,000
0
年/月
家電機器
億円
%
140
7,000
130
6,000
120
5,000
110
4,000
100
3,000
90
2,000
80
1,000
70
0 ,
14/10
11
12
,
15/1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
前年同月比(右目盛)
生産額
(左目盛)
8,000
0
年/月
[統 計]
91
電機
2016 年は、ブラジルのリオデジャネイロで夏季オリンピック・
パラリンピックが開催されます。各種競技で日本の出場枠がど
2016 January 第781号
んどん確定されてきました。果してどれだけのメダル奪取にな
頒価540円(本体500円)
るか、日本人選手の活躍に熱い声援を贈りたいと思います。ま
2016年1月26日発行
た、ブラジルでは 6 月に地上アナログテレビ放送が地上デジタ
ルテレビ放送へ全面移行を予定しているようで、夏季オリンピ
ック・パラリンピックの開催に合わせて大いに賑わうのではない
発 行
でしょうか。一方、5 月にはフィリピン大統領選挙、11 月には
アメリカ合衆国大統領選挙がそれぞれ行われ、2016 年は各国
,
THE JAPAN ELECTRICAL MANUFACTURERS ASSOCIATION
で様々な変革の年になるのではないでしょうか。このように世界
編集兼発行人 松本 俊博
情勢が変わっていくなかで、5 月に三重県伊勢志摩で主要国首
脳会議(G8 サミット)が開催されますが、ホスト役の日本がど
のようなおもてなしが出来るのか、いろいろな意味で期待したい
■本 部・〒102-0082 東京都千代田区一番町17番地4
(電機工業会館)
と思います。
電話03-3556-5882 ファクシミリ03-3556-5891
(本誌編集部)
ところで、毎週日曜日の夕刻に放映されているサザエさんは
今年で何と生誕 70 周年を迎えますし、ちびまる子ちゃんも今
年で生誕 30 周年を迎えます。いつまでも若々しく無邪気なキ
ャラクターで日本国民に愛され続けているお二人ですが、意外
にも高齢となっているのです。サザエさんやちびまる子ちゃんに
登場するキャラクターは何年経っても変わりませんが、声優の
皆さんは変わってきており、アニメの世界でも若さをキープする
■大 阪 支 部・〒530-0004 大阪市北区堂島浜2-1-25
(中央電気倶楽部4階)
電話06-6344-1061 ファクシミリ06-6344-1837
■名古屋支部・〒460-0008 名古屋市中区栄2-10-19
(名古屋商工会議所ビル6階)
電話052-231-5211 ファクシミリ052-231-5610
■福 岡 支 部・〒810-0004 福岡市中央区渡辺通2-1-82
(電気ビル北館10階)
電話092-761-4778 ファクシミリ092-751-2094
ためには苦労しているようです。サザエさんやちびまる子ちゃん
のように、いつまでも若々しく過ごしたいものです。
大妻通り
酒屋
の繰り返しは脳の一部しか使っておらず、必ずしも脳の活性化
郵便局
麹町学園
女子高・中
系、伝達系、理解系、聴覚系、記憶系、視覚系の 8 つの機能
GS
3 番出口
があるといわれています。個人の暮らし方によってその機能の
20
発達の度合いが変わってきますので、敢えて自分の生活習慣と
性化に繋がるのです。
4 番出口
麹町小
には繋がっていないようです。脳には、感情系、思考系、運動
は全く違う事に的を絞って、新たな物事を始めることが脳の活
コンビニ
農済会館
新宿通り
麹町 4 丁目
至新宿
半蔵門線 半
蔵門駅
ていないのが実情です。会社や家庭で忙しく動いている方は、
さぞかし脳も活性化していると思いがちですが、実は同じ作業
駅
り
麹町
ビ通 楽町線
有
億を超える細胞が集まっていますが、この細胞は有効に使われ
テレ
せんか? 身体は年を重ねるたびに衰えていきますが、脳は鍛え
れば 100 歳を超えても生き続けていくそうです。脳には 1,000
一番町
日本
最近は、テレビで脳トレ番組をよく見かけますが、まずは脳を
活性化し若さをキープすることを今年の目標の一つにしてみま
至九段下
女子学院高・中
至市ヶ谷
麹町 1 丁目
麹町 3 丁目
至永田町
パン屋
至内堀通り
至永田町
■地下鉄半蔵門線 半蔵門駅下車 4番出口徒歩3分
ですが、生活習慣を変えるのは容易ではありません。一切家
■地下鉄有楽町線 麹町駅下車 3番出口徒歩7分
事をやらない男性の皆さんが、急に家事をやり始めたりすると家
庭内で妙な疑いを持たれてしまうこともあるのでは。家庭内での
理解を得るための行動もある意味、脳の活性化に繋がるかもし
れません。いずれにしても男性の皆さんのご苦労は、今年も続
きそうですね。
(matsumo.)
印刷所
港北出版印刷株式会社 〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-7-7
JEMAウェブサイト www.jema-net.or.jp
92 電 機 2016・January
(JEMA会員については会費中に本誌頒価が含まれています。)[2016 ⓒ 禁無断転載]