新ヒラリ ズム 4の 14 聴く 陽羅 義光 五感の うち 最後に 残るの は聴覚 だと い われる。 そのせ いか 重病患 者にと って、 一番 の 癒しは聴 くこ とであ ろう。 優しい 看護 師の声 を聴く 。 懐かし い友 の声を 聴く。 可愛い 孫の 声を聴 く。 (尤も 耳の 不自由 な人は 、お そらく 肌 の触れ合 いに よって 相手の 声を 聴くにち がい ない) だが重 病患 者でも 、ほと んど誰 も声 を 聴かせて くれ ない場 合もあ る。 看護師 はや っかい な患者 だから と、 あ まり声を かけ てくれ ない。 たまに 声を かけて くれて も、 点滴す る とか血を とる とか業 務上の 言葉 のみ。 特に長 く入 院して いると 、看護 師に も 飽きられ ると いうこ ともあ る。 もとも と友 だちが いない 。 友だち に先 立たれ てしま った。 年取っ て若 い友だ ちなん かでき やし な い。 孫どこ ろか 家族が いない 。 家族と 別れ てしま った。 家族が 外国 にいる 。 だがそ れで も病人 には音 楽を聴 くと い う楽しみ があ る。 クラシ ック でもポ ピュラ ーでも ジャ ズ でも歌謡 曲で もいい 。 最近は 落語 や小説 もCD 化され てい る 。 そうい うも のを何 気なく 聴い ている と 、昔のこ とを 自然と 想い出 すも のだ。 認知症 にな りかか ってい ても、 かな り 鮮明に想 い出 すこと がある 。 そうい うと きに「 過去」 は光り 輝く 。 光り輝 く半 生を送 ってき たわけ でも な いのに、 光り 輝くも のだ。 苦しか った こと悲 しかっ たこ とは想 い 出さず に 、な ぜか嬉 しかっ たこ と楽しか った ことば かり想 い出す もの だ 。 そのと おり 。 「過去 」は 年取っ て病気 になっ た人 の ために存 在す るのだ 。 いま存 在す るとい ったが 、む ろんま だ 年寄りで はな く重病 でもな い人 にとって は、「過 去」は 存在は しない 。 どころ か、 いずれ 「過去 」が存 在す る というこ とを 予見で きない 。 ヒラリ ズム でたび たび引 用する アラ ン のプロポ をこ こでも 引用す る。 【荷馬 車に 乗せら れてギ ロチ ンに行 く 人はあわ れで ある。 しかし なが らその男 が別 のこと を考え てい るとし た ら、荷馬 車の 中にあ っても 、現 在のぼく 以上 には 不 幸では ないだ ろう 】 「現在 のぼ く」に 就いて は今後 の研 究 になるだ ろう が。
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