中国東北三省の経済について 上海駐在員事務所 藤光 雅之 中国の経済が「新常態(ニューノーマル)」(中高速成長)にある中、特に中国の東北三省 の経済が低迷しています。その要因はどこにあるのか見ていきます。 【東北三省】とは 中国の東北に位置する地域を指し、歴史的には満州と呼ばれた地域のこと。 現在では「遼寧省」、「吉林省」、「黒竜江省」の三省を東北三省といい、三省合わせた 人口は 109 百万人で中国の総人口の約 8%を占める。 1970 年代末の改革開放政策以降、沿岸部、 GDP成長率(2015年上半期) 特に広東省・福建省・江蘇省・浙江省等の 12.0% 南方地方は顕著な発展を遂げた一方で、長 10.0% 年この国の経済を重工業中心に支えてきた 8.0% 東北三省は、ここへきてその発展が足踏み 6.0% 状態にあります。 4.0% 2015 年上半期の中国各省市の GDP と比べ ても、遼寧省 2.6%(最下位) ・黒竜江省 5.1% 11.0% 9.4% 7.0% 6.1% 5.1% 2.7% いることがわかります。 また、この三省の 2015 年上半期の財政収 0.0% 全国平均 重慶市 貴州省 天津市 吉林省 黒竜江省 山西省 遼寧省 財政収入増減率(2015年上半期) 10.0% 6.6% 5.0% 0.9% 0.0% -5.0% 入の増減率についても前年同期比で、遼寧 -10.0% 省▲22.7%、黒竜江省▲20.1%と大幅に減少、 -15.0% 吉林省も+0.9%に止まる等、厳しい状況とな 2.6% 2.0% (ワースト 3)、吉林省 6.1%(ワースト 4) となる等、この三省の経済が特に低迷して 10.7% 全国平均 遼寧省 吉林省 黒竜江省 -20.0% -25.0% っています。 -20.1% -22.7% かつてこの三省には、 「中国最大の鉄鋼企業」 、「中国で最初の自動車企業」、「中国最大の 油田」などと称される企業や資源が多く存在し、この国の象徴でもありましたが、それも 過去のこととなってしまいました。中国政府も早くからこの三省の経済活性化を問題視し、 2003 年に東北振興計画を実施し、地域経済の発展を支えてきましたが、以下の理由により 他の省と比べ経済が低迷していると考えられます。 1.資源(石炭・石油)への過度な依存 2.経済を担う国有企業の非効率性 3.第一次・二次産業の割合が高く、産業構造の転換が図れていない 現在、中国政府は新たな東北振興策を検討中ですが、この地域がかつての発展を取り戻 すためには、長期的な視野に立ち、ハイテク・多方面に亘る流通・高付加価値品・ソフト サイエンス等の新産業を導入し、産業構造を転換していく必要があるものと考えます。 (2016 年 1 月) 201601 広告審査済
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