連合会だより - 地方公務員共済組合連合会

2016
188
No.
January
連合会だより
太宰府天満宮(福岡県太宰府市)
年頭のご挨拶
PAL ひろば
年頭所感
“共済”南北
今回は
福岡県
謹賀新年
主要 項 目
2015∼2017年度日本経済見通し
スチュワードシップ活動の報告について
2016
No.188
January
188/2016.01
CONTENTS
3
年頭のご挨拶 理事長 板倉 敏和
4
年頭所感
総務省自治行政局長 渕上 俊則
5
謹賀新年
地方公務員共済組合連合会
6
主要項目
17
宿泊施設の
紹介
PALひろば
“ 共 済 ”南 北
147
2015~2017年度日本経済見通し
ニッセイ基礎研究所 経済調査室長 斎藤 太郎
スチュワードシップ活動の報告について
資金運用部企画管理課
22 博多サンヒルズホテル
警察共済組合福岡県支部
23 待っとうけん福岡・博多 ~泊まる・観る・食べる~
警察共済組合福岡県支部
21 共済年金制度の日誌
公的年金制度に関連した会議等の開催状況
業務等の状況
会議開催状況/会議開催予定
人事異動
地方公務員共済組合連合会理事長 板倉 敏和
明けましておめでとうございます。
皆様方におかれましては、健やかな新春をお迎えのこととお慶び申し上げます。
また、
旧年中は、格別のご支援、
ご協力を
賜りまして、
心から厚くお礼申し上げます。
私ども地方公務員共済組合連合会は、地方公務員共済組合の連合組織として昭和59年に設立されて以来、関係各位
のご理解、
ご協力をいただきながら、長期給付に要する費用の算定や長期給付積立金の安全かつ効率的な管理運用、年
金給付に関する標準システムの提供等の事業を進めてきたところであります。
昨年10月に「被用者年金一元化法」及び「年金払い退職給付法」が施行されました。
これにより、
公務員等も厚生年金に
加入し、
共済年金は厚生年金に統一されました。
また、
共済年金の職域部分廃止後の新たな年金として、
「年金払い退職給
付」が創設されました。
これに伴うシステム開発につきましては、標準システムの厚生年金仕様への対応や年金払い退職給付に係る管理システ
ム及び数理システムの開発を行った他、被用者年金一元化に伴う厚生年金保険のワンストップサービスに対応した情報共
有化システムの開発を行い、
稼働しているところです。
「社会保障・税番号制度」
(マイナンバー)
につきましては、
個人番号を管理するための「個人番号管理システム」及び平成
29年7月の情報提供ネットワークシステムを利用した情報連携開始に向けて、
「地方公務員共済組合番号システム」の開発
を進めているところです。
この他、現在、社会保障審議会年金部会において、
マクロ経済スライドによる将来世代の年金給付水準の在り方の見直
しや被用者保険の適用拡大等が検討されており、
これら公的年金関連の情報収集に努めていくとともに、必要に応じ適切
に対処して参りたいと考えております。
資金運用につきましては、地方公務員共済全体の積立金は、平成26年度末で約42兆8千億円となっております。
そのう
ち連合会が管理いたしております積立金も約21兆1千億円規模となり、
その的確な資金運用について、
連合会の受託者責
任はますます重くなってきております。
昨年10月の被用者年金一元化により、地方公務員共済の積立金は、厚生年金部分と旧職域部分に仕分けられるととも
に、
新たに年金払い退職給付に係る積立が開始されました。
連合会においては、
それぞれの積立金の資産運用について、地共済全体の基本的ルールである管理運用の方針、連合
会の基本的ルールである基本方針を制定しました。今後、
これらの方針に基づき、地共済全体の積立金の運用状況の管理
及び連合会の積立金の管理運用を適切に行っていくとともに、
その状況について、
わかりやすい情報提供に努めて参りたい
と考えております。
昨年の市場動向は、
日経平均が15年ぶりに20,
000円を上回るなど、年初より堅調に推移しておりましたが、
中国に端を
発する世界経済の減速懸念や、
米国の利上げ開始時期を巡る不透明感から夏場以降に急落する場面もありました。
しかし
ながら、
日欧中の継続的な金融緩和や米国経済の力強さを背景に、
底堅い展開となっております。
委託運用におきましては、
超過収益の獲得やリスク分散等の観点から運用機関の新規公募を行っています。
国内株式につきましては、
ESG投資(環境、社会、
ガバナンスに配慮している企業を重視・選別して行う投資)
に対する社
会的要請の高まりなどを踏まえ、運用機関の新規公募を行ったほか、国内債券につきましても、運用機関の新規公募を行っ
ております。
運用を巡る環境は、景気の動向や国内外の金融政策、地政学リスクなど引き続き不透明な要素も多く、金利、株価、為替
の動向を注視しながら、
年金積立金の運用が長期的な観点から安全かつ効率的に実施されるよう、
適切に対応して参る所
存です。
本年も皆様方の格段のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げますとともに、益々のご健勝とご活躍をご祈念申し
上げ、
年頭のご挨拶とさせていただきます。
連合会だより PAL 188号 2016.1
3
総務省自治行政局長 渕上 俊則
平成28年の年頭に当たり、
謹んで新春のお慶びを申し上げます。
地方公務員共済組合制度は、昭和37年の地方公務員等共済組合法の施行以来、本年で54年目を迎えることとなりまし
た。
この間、幾多の制度改正を経ながら年金制度である長期給付、医療保険制度である短期給付及び健康診断その他の
健康増進事業等の福祉事業を通じて、
地方公務員制度を支える重要な役割を担ってきたところであります。 地方公務員共済組合連合会におかれましては、昭和59年の設立以来、
これまで7度にわたる財政再計算の実施、年金
積立金の管理及び運用、
さらに、
加入共済組合の年金業務の支援などの事業を行い、
年金財政基盤の安定化を図り、
地方
公務員共済組合の長期給付に係る業務の適正かつ円滑な運営を図るうえで多大な御貢献をいただいているところであり、
ここに、
改めて関係各位の皆様に深く感謝申し上げる次第でございます。
現在、我が国においては、平均寿命の伸長や出生数の減少により少子・高齢化が進行しており、
こうした高齢化等が一層
進んだ社会においても、社会保障の機能の充実と給付の重点化、制度運営の効率化を同時に行い、社会保険料を納付す
る者の立場に立って、
負担の増大を抑制しつつ、
持続可能な制度を実現することが大きな課題となっております。
被用者年金一元化法及び退職等年金給付の創設に係る地方公務員等共済組合法等の改正法は、
いずれも平成24年
度に公布されたところですが、
昨年9月末に公布された関係政省令と合わせ、
昨年10月1日に施行を迎えました。
本制度改正により、
公務員も厚生年金に加入することとなり、
共済年金と厚生年金の制度的な差異については、
基本的に
厚生年金に揃えて解消されました。
また、
公的年金としての職域部分は廃止されましたが、
公務員の新たな退職給付の一環
として民間の企業年金に相当する退職等年金給付が導入されたところです。
地方公務員共済組合連合会及び各組合等の皆様方におかれましては、制度の開始にあたり、関係システムの整備や厚
生年金のワンストップサービスへの対応、組合員への制度の周知等新制度の開始に向けた各種準備作業に精力的に取り
組んでいただいたところであり、
この場を借りて御礼申し上げます。
引き続き被用者年金一元化後の制度の円滑な運用が図
られるよう、
ご協力をお願い申し上げます。 社会保障・税番号制度につきましては、本年1月から順次、
マイナンバーの利用が開始されます。医療・年金の分野におい
て、
マイナンバーは、
資格の取得・確認や給付を受ける際の手続き等に利用することとされており、
平成29年7月からは、
情報
連携が本格的に開始される予定となっています。各共済組合におかれましても、
マイナンバーを取り扱うに当たっての安全管
理措置の実施や各種システム改修等、
制度開始にあたり、
遺漏のないよう準備を進めていただくようお願いいたします。
昨年1月の社会保障審議会の年金部会では、
「短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大」、
「高齢期の就労と年
金受給の在り方」、
「年金額の改定(スライド)
の在り方」等の検討課題に関するこれまでの議論と改革の方向性について整
理が行われ、
「社会保障審議会年金部会における議論の整理」
としてとりまとめられました。今後は、
この年金部会の整理も
踏まえ、制度改正に向けた議論が進められていくものと承知していますが、
引き続きその動向を注視してまいりたいと考えて
います。
このように引き続き公的年金制度の改革に向けた取組が進められる中にあって、地方公務員共済組合制度が組合員又
はその遺族に対して、組合員の退職又は死亡後における安定した生活の維持を図るため、重要な制度であるということに
何ら変わりはありません。
組合員の皆様はじめ関係各位におかれましては、地方公務員共済組合制度につきまして、一層の御理解、御協力を賜り
ますようお願い申し上げるとともに、
皆様方の御健勝と御発展を心からお祈り申し上げまして、
新年の挨拶といたします。
4
連合会だより PAL 188号 2016.1
平成28年元旦
地方公務員共済組合連合会
[役員]
[運営審議会委員]
理 事 長
板 倉 敏 和
会 長
秋 山 俊 行
理 事
満 田 誉
須 田 秀 志
加 藤 良 輔
川 本 淳
河 野 栄
小 谷 隆 亮
玉 井 日出 夫
吉 村 博 人
会 長 代 理
大 門 正 彦
横 尾 俊 彦
監 事
千 葉 義 弘
岡 村 清 治
鈴 木 洋 一
委 員
上 田 清 上 野 正 三 大久保 雅 一 小 澤 利 野 小 陳 武 志 園 田 一 裕 中 井 敬 三
二階堂 健 男 西 川 晋 司 兵 谷 芳 康 藤 本 渡 松 本 毅 森 田 勝 也 山 根 徹 夫 吉 田 寿 樹 和 田 明
和 田 英 浩 渡 辺 巧 教 渡 邊 春 彦 [事務局職員]
事
務
局
長
寺 田 文 彦
上 席 審 議 役 今 井 比呂志
上 席 審 議 役 荒 井 寛 光
総
務
部
長
星 野 光 男
資 金 運 用 部 長 大 森 康 宏
年 金 業 務 部 長 浅 妻 郁 夫
総 括 投 資 専 門 員 寺 岡 直 輝
総 括 投 資 専 門 員 藤 原 亮 一
投 資 専 門 員 髙 濱 晃 造
投 資 専 門 員 山 縣 紀 夫
総
務
課
長
山 中 学
企
画
課
長
村 上 秀 明
企 画 管 理 課 長 津 田 正 法
運 用 第 一 課 長 秋 和 孝 志
運 用 第 二 課 長 馬 場 敏 幸
年
金
課
長
安 東 修 次
数
理
課
長
大須賀 康 敏
調
整
課
長
大 澤 誠 治
情報システム課長 後 藤 禎 一
連合会だより PAL 188号 2016.1
5
主要項目
2015~2017年度日本経済見通し
ニッセイ基礎 研 究 所
経済調査室長 斎藤 太 郎
ご紹介
連合会だよりPALでは、例年、年初に「日本経済の見通し」等に関する記事をご寄稿頂き、掲載しております。
今年は、公益社団法人 日本経済研究センターの実施しているESPフォーキャスト調査(2014年度)の予測評価において、総
合成績が特に優秀なフォーキャスターの一人でいらっしゃいますニッセイ基礎研究所 経済調査室長の 斎藤 太郎氏にご寄稿頂き
ました。
主要項目
※このレポートは、
2015年12月14日時点で利用可能な情報に基づいて執筆されています。
2015~2017年度日本経済見通し
景気は2015年度入り後に足踏み状態に
日本経済は2014年4月の消費税率引き上げ後に急速に落ちこんだ後、夏場以降は緩やかに持ち直していたが、2015
年度に入ると足踏み状態となった。実質GDP成長率は2015年1-3月期には前期比年率4.4%の高成長となったものの、
2015年4-6月期に同▲0.5%と3四半期ぶりのマイナス成長となり、7-9月期も同1.0%とマイナス成長の後としては低
い伸びにとどまった(図表1)。
図表1 実質GDP成長率の推移
また、景気との連動性が高い鉱工業生産は2015年4-6月期の前期比▲1.4%に続き7-9月期も同▲1.2%と2四半期
連続の減産となった。新興国経済の減速や在庫調整の動きから輸送機械、はん用・生産用・業務用機械などの主要業種が軒並
み落ち込んだ。
6
連合会だより PAL 188号 2016.1
一方、上昇が続いていた在庫指数は2015年7-9月期に前期比▲0.9%と7四半期ぶりの低下となり、10月も前月比▲
1.9%と大きく低下した。特に、輸送機械は駆け込み需要の反動減、増税に伴う軽自動車の販売不振などから消費税率引き
上げ後、在庫指数の高止まりが続いていたが、7月以降は4ヵ月連続の低下となり、その間の低下幅は20%以上となっている
(図表2)。他産業への波及効果が大きい輸送機械の在庫調整が大きく進展したことは景気の先行きを見るうえで明るい材
料といえる。
また、7-9月期の実質GDPの内訳をみると、2014年度補正予算の効果一巡から公的固定資本形成が前期比▲1.5%の
減少となる一方、4-6月期に減少した民間消費(前期比0.4%)、設備投資(前期比0.6%)がいずれも緩やかながら2四半期
ぶりに増加した。日本経済は2015年度入り後足踏み状態が続いていたが、持ち直しの動きも見られるようになっている。
図表2 輸送機械の生産、在庫動向
主要項目
2015~2017年度日本経済見通し
個人消費を左右する家計の所得環境
個人消費は駆け込み需要の反動を主因として消費税率引き上げ後に急速に落ち込んだ後、一進一退の動きを続けてい
る。2015年7-9月期の民間消費は前期比0.4%と2四半期ぶりに増加したが、4-6月期の落ち込み(同▲0.5%)を取り戻
すには至らず、その水準は消費税率引き上げ前の駆け込み需要が本格化する直前の2013年10-12月期を2%以上下回っ
ている
(図表3)。
図表3 消費増税前後の実質民間最終消費支出の動き
106
1995 =100
105
2012 =100
104
103
102
101
100
99
1
2
3
4
1
2
3
4
1
2
1996
1997
1998
2013
2014
2015
3
連合会だより PAL 188号 2016.1
7
個人消費低迷の主因は物価上昇に伴う実質所得の低下である。名目雇用者報酬は 2013 年度の前年比0.8%から
2014 年度は同 1.9%まで伸びを高めたが、消費税率引き上げの影響もあり消費者物価上昇率(総合)が 2013 年度の
0.9%から 2.9%へと高まったため、実質雇用者報酬は 2013 年度の前年比0.1%から2014年度は同▲1.0%の減少へ
と転じた。
2015年度に入ると、消費税率引き上げの影響一巡と原油価格下落に伴う物価上昇率の低下によって、物価高による実
質所得の押し下げ圧力は緩和されている。2015年夏のボーナスは前年比▲2.8%(毎月勤労統計ベース)
と期待外れに終
わったが、2年連続のベースアップを反映し、賃金総額の約4分の3を占める所定内給与(基本給)は増加している。相対的に
賃金水準が低いパートタイム労働者の割合が高まることにより労働者一人当たりの賃金水準が押し下げられる傾向は続い
ているが、一般労働者、パートタイム労働者それぞれの賃金上昇率が明確なプラスとなっている。このため、労働者一人当た
りの所定内給与の伸びは2015年4~10月の平均で前年比0.3%と2014年度の同▲0.2%から着実に高まっている。
また、少子高齢化を背景とした企業の人手不足感の高まりもあって、労働市場は消費増税後も良好な状態を維持してい
る。雇用者数(労働力調査ベース)は前年比1%程度の伸びを続けており、マクロベースの雇用者所得の押し上げに寄与して
いる。
実質雇用者所得(一人当たり実質賃金×雇用者数)は円安による物価上昇を主因として2013年後半に前年比マイナスと
主要項目
なった後、消費税率引き上げで物価上昇率が大きく高まった2014年度入り後はマイナス幅が大きく拡大したが、所定内給
与を中心とした名目賃金の上昇と物価上昇率の低下から2015年7-9月期には9四半期ぶりにプラスに転じた(図表4)。先
行きは実質ベースの雇用者所得の増加が個人消費を下支えすることが見込まれる。
2015~2017年度日本経済見通し
図表4 実質雇用者所得の伸びは水面上に
3%
2%
1%
0%
1%
2%
3%
4%
5%
1201 1202 1203 1204 1301 1302 1303 1304 1401 1402 1403 1404 1501 1502 1503 1504
2016年度の個人消費の動向を左右するのは2016年春闘の賃上げ率である。失業率、有効求人倍率が約20年ぶりの
水準まで改善するなど労働需給面からの賃金上昇圧力は引き続き強い。また、円安、原油安による追い風もあって企業収益
は過去最高を更新しており、2014年度に始まった賃上げを継続するための経済の好環境は継続していると考えられる。一
方、中国をはじめとした新興国経済の減速懸念、足もとの物価上昇率の低下など賃上げを抑制する要因も見られる。
当研究所では2016年度の春闘賃上げ率は2.60%と2015年度の2.38%(厚生労働省「民間主要企業春季賃上げ要
求・妥結状況」ベース)を上回ることを想定しており、雇用所得環境のさらなる改善が個人消費の回復を後押しすることを見
込んでいる(図表5)。
ただし、連合は2016年春闘の基本方針で、賃上げ要求水準を「2%程度を基準(定期昇給分を除く)」としており、2015
年要求の「2%以上」からやや後退している。物価上昇率は2015年度のほぼゼロ%から2016年度は1%程度まで高まるこ
とが見込まれるため、実際の賃上げ率が2015年度を下回るようなことになれば、実質所得の伸びが大きく低下し、個人消費
の低迷が長引く恐れがあるだろう。
8
連合会だより PAL 188号 2016.1
図表5 春季賃上げ率と所定内給与
主要項目
2015~2017年度日本経済見通し
インバウンド消費のインパクト
円安の進行、ビザの発給要件緩和、消費税免税制度拡充を背景とした訪日外国人旅行者数の急増が続いている。2014
年の訪日外国人旅行者数は前年比29.4%増の 1,341 万人となり、
この3年間で2.2倍となった。2014年10月に免税対
象から外れていた食品、化粧薬品等の消耗品も含め全ての品目が免税対象となったこともあり、2015年に入って伸びがさ
らに加速している。
当研究所が毎月の訪日外国人旅行者数に季節調整をかけたところ、2015年7月以降は2,000万人超となり、瞬間風速
では東京オリンピックが開催される2020年までに年間2,000万人としていた政府目標をすでに上回っている
(図表6)。
図表6 訪日外国人旅行者数は政府目標の年間2000万人へ
2,500
('"#$
2,000
(!"#$
1,500
(%"#$
1,000
(&"#$
500
100%
0
80%
),""$
60%
)(+"""$
40%
)(+,""$
20%
)&+"""$
0%
)&+,""$
20%
)*+"""$
40%
)*+,""$
0701 0703 0801 0803 0901 0903 1001 1003 1101 1103 1201 1203 1301 1303 1401 1403 1501 1503
60%
連合会だより PAL 188号 2016.1
9
訪日外国人旅行者数の急増は小売業、宿泊業、旅行業などに大きな恩恵をもたらしている。日本百貨店協会によれば、外国人観光客
の売上高は免税制度が拡充された2014年10月以降は約2~4倍の急増となっており、百貨店売上高全体に占める割合も2014年
初め頃の1%弱から2015年度入り後は3%台まで急上昇している
(図表7)。
ただし、その一方で外国人(非居住者)の日本国内における消費額が国内の消費額全体に占める割合は1%、
GDP比では0.5%程度
にとどまっている。ここで、外国人による日本国内での消費(GDP統計では個人消費ではなくサービスの輸出に計上される)が実質G
DP成長率をどれだけ押し上げたかを試算すると、15年7-9月期は前期比0.06%(前期比年率0.22%)であった。過去最大となった
2014年10-12月期でも前期比0.08%(前期比年率0.32%)
にとどまっている。訪日外国人旅行者数の急増が一部の業界に大きな
恩恵をもたらしていることは確かだが、日本経済全体に与える影響は現時点では限定的といえるだろう。
図表7 インバウンド消費の割合
4.0%
3.5%
3.0%
主要項目
2015~2017年度日本経済見通し
10
2.5%
2.0%
1.5%
1.0%
0.5%
0.0%
1001
連合会だより PAL 188号 2016.1
1003
1101
1103
1201
1203
1301
1303
1401
1403
1501
1503
設備投資回復の条件
企業収益が好調を続け、設備投資計画も強めとなる中で、実際の設備投資は出遅れが目立っていた。GDP統計の設備投
資は2015年11月に公表されたGDP1次速報では2015年4-6月期の前期比▲1.2%に続き7-9月期も同▲1.3%と
なっていた。この際には、海外経済の先行き不透明感の高まりなどから企業が投資計画を先送りする動きが出ている可能性
も指摘されていた。しかし、12月に公表された法人企業統計の設備投資が2015年4-6月の前年比5.6%から7-9月期に
同11.2%へと加速し、この結果を反映したGDP2次速報では7-9月期の設備投資が前期比0.6%へと上方修正され、計画
と実績の乖離が縮小する形となった。設備投資はようやく持ち直しの動きがはっきりしてきた。
また、日銀短観12月調査では2015年度の設備投資計画が9月調査の前年度比6.4%から同7.8%(全規模・全産業)へ
と上方修正され、12月調査時点としては過去5年間で最も高い伸びとなった(図表8)。
図表8 設備投資計画(全規模・全産業)
10
2015
主要項目
8
6
4
0
-2
-4
-6
2011
3
6
2012
9
2013
2014
12
ただし、企業収益が過去最高水準を更新していることを考えれば、設備投資の回復は依然として力強さに欠けるものと
なっており、企業の設備投資意欲がここにきて急速に高まったとはいえない。
「設備投資/キャッシュフロー比率」は50%台半
ばの低水準で推移しており、企業の設備投資に対する慎重姿勢は崩れていない(図表9)。
図表9 設備投資とキャッシュフローの関係
連合会だより PAL 188号 2016.1
2015~2017年度日本経済見通し
2
11
企業収益が好調を続けているにもかかわらず設備投資の伸びが高まらない理由のひとつには、最近の企業収益の増加が
円安やコスト削減に依存する部分が大きく売上高の増加を伴っていないことがあるだろう。法人企業統計で経常利益、売上
高と設備投資の関係をみると、設備投資との連動性が高いのは経常利益よりも売上高のほうである
(図表10)。
法人企業統計の経常利益は大幅増益を続けているが、売上高は2015年1-3月期が前年比▲0.5%、4-6月期が同
1.1%、7-9月期が同0.1%と横ばい圏の推移が続いている。また、日銀短観12月調査では2015年度の経常利益計画が9
月調査の前年度比3.3%から同5.4%へと上方修正される一方、2015年度の売上高計画は9月調査の前年度比0.4%か
ら同▲0.5%へと下方修正された。設備投資の回復が本格化するためには個人消費を中心とした国内の売上高が着実に増
加することが条件となろう。
図表10 設備投資の伸びは経常利益よりも売上高に連動
120%
100%
主要項目
2015~2017年度日本経済見通し
12
80%
60%
40%
20%
0%
20%
40%
60%
9501
9701
4
連合会だより PAL 188号 2016.1
9901
0101
0301
0501
0701
0901
1101
1301
1501
実質GDP成長率の見通し
消費税率引き上げ後の6四半期のうち3四半期でマイナス成長となるなど、実質GDPは低調な動きが続いているが、その
一方で原油価格下落に伴う交易利得の改善、円安による海外からの所得拡大が続いているため、実質GNI
(国民総所得)は
堅調に推移している
(図表11)。直近(2015年7-9月期)の実質GDP、実質GNIの水準を消費税率引き上げ直前(2014年
1-3月期)
と比較すると、実質GDPは▲0.9%下回っているが、実質GNIは逆に1.2%上回っている。
図表11 実質GNIと実質GDP
7%
6%
5%
4%
3%
2%
主要項目
1%
0%
2%
3%
1001
1003
1101
1103
1201
1203
1301
1303
1401
1403
1501
1503
現時点では交易利得の改善、海外からの所得拡大が企業収益の大幅増加をもたらす一方、国内の支出拡大に十分つな
がっていないが、先行きは家計の実質購買力の向上を通じて個人消費の回復に寄与することが見込まれる。また、企業の慎
重姿勢が崩れていないこともあり設備投資の本格回復は当面期待できないが、個人消費を中心とした国内需要の回復に
よって売上高の伸びが高まれば、企業の設備投資意欲が回復し、潤沢なキャッシュフローを設備投資に振り向ける動きが徐々
に顕在化するだろう。
一方、大幅な円安にもかかわらず横ばい圏の動きが続いている輸出は、先行きも円安による下支えはあるものの、回復
ペースは緩やかにとどまる公算が大きい。中国をはじめとした新興国経済の減速という循環要因に加え、国際競争力の低下
や生産拠点の海外シフトといった構造要因が引き続き輸出の下押し要因となるためである。企業は海外生産シフトを進める
一方で国内の生産能力を落としているため、円安や海外経済の回復によって輸出環境が改善しても国内生産の拡大によって
輸出を伸ばすことが難しくなっている
(図表12)。
図表12 上昇する海外生産比率と低下する国内生産能力
25
110
2015~2017年度日本経済見通し
1%
108
20
106
104
15
102
100
10
98
96
5
94
92
0
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15
15
90
15 10
連合会だより PAL 188号 2016.1
13
過去の円安局面では、企業は契約通貨ベースの価格を引き下げて輸出数量を伸ばすことにより海外市場シェアの拡大
を図ったが、最近は輸出数量を伸ばすよりも価格を維持することで金額ベースの収益を確保する傾向を強めている。また、
2016年度末にかけては2017年4月に予定されている消費税率引き上げ前の駆け込み需要に伴う国内需要の拡大から輸
入の伸びが高まることが見込まれる。外需による成長率の押し上げは当分期待できないだろう。
公的固定資本形成は2014年度補正予算の効果が一巡しつつある中、2015 年度末にかけて編成が予定されている補
正予算ではTPPや子育て支援策が中心となり、公共事業の大幅な積み増しは見込めない。このため、公的固定資本形成は減
少傾向が続く可能性が高い。
2016年度は外需、公的需要の押し上げが期待できない中で、個人消費、設備投資を中心とした国内民間需要が経済成長
の主役となりそうだ。実質GDPは2016年に入ってから年率 1%台前半の伸びを続けた後、2016年度後半は2017年4
月に予定されている消費税率引き上げ(8%→10%)前の駆け込み需要によって成長率が大きく高まるが、2017年度は消
費税率引き上げの影響からゼロ成長となるだろう。実質GDP成長率は2015年度が1.1%、2016年度が1.6%、2017年
度が0.0%と予想する
(図表13)。
図表13 実質GDP成長率の推移
主要項目
2015~2017年度日本経済見通し
14
なお、当研究所では2014年4月の消費税率引き上げ前後の駆け込み需要とその反動の規模を実質GDP比で0.6%程
度と試算しているが、現時点では2017年4月の税率引き上げ時の駆け込み需要とその反動は実質GDP比で 0.3%程度と
前回よりも小さくなることを想定している。これは税率の引き上げ幅が前回よりも小さいこと、駆け込み需要が発生しやすい
住宅、自動車など買い替えサイクルの長い高額品については、前回の税率引き上げ時にすでに前倒しで購入されている割合
が高いと考えられるためである。
連合会だより PAL 188号 2016.1
消費者物価の見通し
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は2013年4月以降、前年比で上昇を続けてきたが、原油価格下落に伴
うエネルギー価格の低下を主因として 2015 年 8 月に前年比▲0.1%と2年4ヵ月ぶりのマイナスとなった後、3ヵ月連続
の下落となっている。一方、物価上昇がある程度継続してきたこともあり、かつてに比べ企業の値上げに対する抵抗感は小さ
くなっている。実際、食料、日用品、サービスなど幅広い品目で値上げが行われており、消費者物価指数の調査対象品目を、
前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、上昇品目数の割合が 7 割近くなっている
(図表14)。
コアCPI上昇率がマイナスとなる中で、物価上昇の裾野はむしろ広がっている。
図表14 消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)
-下落品目数(割合)」
主要項目
に高まっていくことが見込まれる。コアCPI上昇率は2015 年度末までには再びプラスとなり、原油価格下落の影響一巡と
駆け込み需要に伴う高成長が重なる2016年度後半には 1%程度まで伸びを高めるだろう。ただし、2017年度入り後は消
費税率引き上げに伴う景気減速によって需給面からの物価上昇圧力が弱まるため、コアCPI 上昇率は 2%に達する前に鈍
化し始める可能性が高い。
コアCPI上昇率は2015年度が前年比0.1%、2016年度が同 0.9%、2017年度が0.8%(消費税率引き上げの影響を
除く)
と予想する
(図表15)。
図表15 消費者物価(生鮮食品を除く総合)の予測
連合会だより PAL 188号 2016.1
2015~2017年度日本経済見通し
また、原油価格下落の効果もあって先行きは潜在成長率を上回る成長が続くため、需給面からの物価押し上げ圧力も徐々
15
日本経済の見通し
(単位,%)
15/
7-9
実績
16/
4-6
予測
16/
7-9
予測
17/
1-3
予測
17/
4-6
予測
17/
7-9
予測
2016
年度
予測
2017
年度
予測
▲1.0
1.1
1.6
0.0
▲0.1
▲0.5
0.7
0.3
1.0
1.6
0.2
0.8
1.3
0.3
1.3
0.6
0.4
1.4
1.2
0.4
1.4
1.2
0.5
2.1
1.5
0.9
3.8
2.3
▲1.3
▲5.0
0.5
0.1
0.4
0.2
0.3
1.2
0.0
0.3
1.4
▲0.5
内需寄与度 (▲1.6)
(1.0)
(1.7)
(▲0.6)
(0.1)
(0.1)
(0.2)
(0.4)
(0.4)
(0.4)
(0.6)
(1.2)
(▲2.0)
(▲0.0)
(0.1)
(0.3)
内、民需 (▲1.5)
(0.8)
(1.6)
(▲0.8)
(▲0.1)
(0.2)
(0.2)
(0.4)
(0.3)
(0.4)
(0.6)
(1.1)
(▲2.1)
(▲0.1)
(0.1)
(0.2)
内、公需 (▲0.1)
(0.1)
(0.1)
(0.2)
(0.2)
(▲0.0)
(▲0.1)
(▲0.0)
(0.1)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
(0.1)
(0.0)
外需寄与度
(0.6)
(0.1)
(▲0.2)
(0.7)
(▲0.2)
(0.1)
(0.0)
(▲0.1)
(0.0)
(▲0.1)
(▲0.1)
(▲0.3)
(0.7)
(0.1)
(0.2)
(0.1)
民間最終
消費支出
▲2.9
0.5
2.1
▲1.7
▲0.5
0.4
0.4
0.6
0.3
0.4
0.7
1.7
▲3.6
0.2
0.1
0.2
民間住宅
投資
▲11.7
3.2
4.6
▲6.4
2.5
2.0
▲0.8
0.6
1.8
2.3
0.8
0.1
▲6.6
▲2.0
0.7
1.1
民間企業
設備投資
0.1
2.0
4.7
1.5
▲1.3
0.6
1.1
1.0
1.0
1.3
1.5
1.7
▲1.5
0.4
0.5
0.8
政府最終
消費支出
0.1
1.2
0.6
0.7
0.4
0.3
0.2
0.1
0.2
0.1
0.2
0.2
0.2
0.1
0.2
0.2
公的固定
資本形成
▲2.6
▲1.3
▲0.8
1.1
3.3
▲1.5
▲2.4
▲1.8
1.2
0.4
0.3
0.2
0.2
0.4
0.4
0.3
輸出
7.8
1.6
4.4
4.2
▲4.3
2.7
1.2
0.7
1.1
0.9
1.1
0.9
1.3
0.8
1.2
1.1
輸入
3.3
1.4
6.0
0.5
▲2.6
1.7
1.1
1.3
1.2
1.5
1.9
2.6
▲3.1
0.2
0.4
0.7
名目GDP
1.5
2.3
1.6
1.0
0.2
0.4
0.2
0.3
0.8
▲0.0
0.4
0.9
0.2
▲0.3
0.3
0.2
15/
10-12
予測
16/
10-12
予測
17/
10-12
予測
主要項目
2015~2017年度日本経済見通し
(注)実質GDPの上段は前期比、中段は前期比年率、下段は前年比。その他の需要項目はすべて前期比。
<主要経済指標>
(単位,%)
16/
1-3
16/
4-6
16/
7-9
17/
1-3
17/
4-6
17/
7-9
18/
1-3
2014
年度
2015
年度
2016
年度
2017
年度
15/
4-6
15/
7-9
▲0.4
▲0.4
3.7
▲0.1
▲1.4
▲1.2
0.8
1.3
1.0
0.8
1.3
1.4
▲2.3
0.1
0.4
0.5
国内企業物価
(前年比)
2.8
▲2.7
▲0.4
2.3
▲2.2
▲3.6
▲3.5
▲1.8
▲1.8
▲0.9
0.6
0.8
2.5
2.5
2.3
2.1
消費者物価
(前年比)
2.9
0.3
0.9
2.1
0.5
0.2
0.2
0.3
0.7
0.8
1.0
1.1
2.2
2.1
2.0
2.0
消費者物価
(生鮮食品除き)
2.8
0.1
0.9
2.1
0.1
▲0.1
0.0
0.3
0.6
0.8
1.0
1.1
2.2
2.1
2.0
2.0
(0.8)
(0.1)
(0.9)
(0.8)
(▲0.0)
(▲0.1)
(0.0)
(0.3)
(0.6)
(0.8)
(1.0)
(1.1)
(0.9)
(0.8)
(0.7)
(0.7)
7.9
17.1
15.5
17.8
16.9
14.8
17.5
19.1
18.9
15.0
14.4
13.5
19.0
15.8
17.7
18.4
(名目GDP比)
(1.6)
(3.4)
(3.0)
(3.5)
(3.4)
(2.9)
(3.5)
(3.8)
(3.7)
(3.0)
(2.8)
(2.6)
(3.7)
(3.1)
(3.5)
(3.6)
失業率(%)
3.5
3.3
3.1
3.2
3.3
3.4
3.2
3.2
3.1
3.1
3.1
3.0
3.1
3.2
3.3
3.4
住宅着工戸数
(万戸)
88
92
94
85
95
92
89
90
92
94
96
93
86
84
84
85
10年国債利回り
(店頭基準気配)
0.4
0.4
0.5
0.7
0.4
0.4
0.3
0.3
0.4
0.5
0.5
0.6
0.6
0.7
0.7
0.8
為替
(円/ドル)
110
123
128
132
121
122
122
125
126
127
128
129
131
132
133
132
原油価格
(CIF,ドル/バレル)
91
52
52
58
59
59
47
44
48
51
53
55
56
58
59
60
経常利益
(前年比)
5.9
11.5
15.8
0.8
23.8
9.0
4.6
8.9
3.9
16.2
19.3
24.5
0.5
1.7
3.2
▲1.9
鉱工業生産
(前期比)
(消費税除き)
経常収支
(兆円)
15/
10-12
16/
10-12
(注)10年国債利回り、為替、原油価格は期中平均値
(資料)内閣府経済社会総合研究所「四半期別GDP速報」、経済産業省「鉱工業指数」、総務省「消費者物価指数」、財務省「法人企業統計季報」他
16
18/
1-3
予測
2015
年度
予測
実質 GDP
15/
4-6
実績
16/
1-3
予測
2014
年度
実績
連合会だより PAL 188号 2016.1
17/
10-12
スチュワードシップ活動の報告について
【 資 金運用部企画管理課 】
1 運用受託機関とのヒアリング
本年9月に従前より委託していた運用受託機関12社に昨年度新規採用した11社を加えた23社とのヒアリングを実施した。運用
受託機関に対しては、日本版スチュワードシップ・コードの受入れ表明状況、企業とのエンゲージメント(目的を持った対話)の状況、
議決権行使の体制及び議決権行使の状況について確認した。また、日本版スチュワードシップ・コードの受入れ表明状況については、
全ての運用受託機関において受入れを表明していることが確認された。
2 企業とのエンゲージメントの状況
施していたことが確認された。一方、数社においては、その受入れを表明しているものの、企業とのエンゲージメントは未実施となっ
○ 運用受託機関とのヒアリングで確認された点
実効性のあるエンゲージメントについて
対話の内容が企業の経営トップに伝わることが重要と考えられる。エンゲージメントの成果が確認された事例では、経営トップ
と対話している或いは対話の内容が経営トップに伝わっていることについて確証が得られている。
社外取締役について
株主のために経営を監督するという取締役会の実効性を高めるため、社外取締役の一層の活用が求められるという考えが確
認された。
同一企業へのエンゲージメントについて
複数の運用受託機関が同一の企業に同様のエンゲージメントを行った結果、企業の行動に改善が見られたケースが確認され
た。また、逆に、同一の企業に対して、運用受託機関の間で評価が異なり、異なる内容のエンゲージメントを行っているケースも確
認された。
<アクティブファンドにおける事例 ー 今年度の新しい事例>
新たに確認した事例の一部を以下に記載する。アクティブファンドにおいては、更なる企業価値の向上を目指したエンゲージメン
トが多く実施されており、次の事例同様と併せて今後もフォローを継続していく。
企業
東証一部
運用受託機関
H社
情報・通信業
東証一部
銀行業
○余剰資金の活用、事業戦略における企業との対話
余剰資金がある一方、収益性の低い事業を抱える企業と継続的に意見交換を実
施してきた。 余剰資金については、成長性の高い分野での M&A を検討していく
一方、収益性の低い事業については、現在が先行投資時期であることが確認され
ており、今後の収益改善状況をモニタリングしていく。
G社
電気機器
東証一部
対話内容
スチュワー ド シップ 活 動の 報 告 について
ていたため、これらの運用受託機関に対して、今後の取組みを求めた。
主要項目
○ 概況
運用受託機関23社については、その多くにおいて日本版スチュワードシップ・コードの受入れ表明以前からエンゲージメントを実
○収益性の改善状況に関する開示における企業との対話
経営改革が進められている中、収益性の改善状況が把握できない状況であるた
め、部門別投下資本利益率(ROIC)の開示を企業に求めた。 その後の中期経営
計画において、部門別の ROIC 目標が開示された。
Q社
○政策保有株式の保有方針における企業との対話
コーポレートガバナンス・コードにも記載がある政策保有株式の保有方針につい
て議論、政策保有株式の議決権行使方針も含めて、対話を継続していく。
連合会だより PAL 188号 2016.1
17
<パッシブファンドにおける事例 ー 今年度の新しい事例>
新たに確認した事例の一部を以下に記載する。パッシブファンドにおいては、ガバナンスに問題がある企業、或いは、反社会的行為
を行った企業など、問題意識が持たれる企業に対するエンゲージメントが多く実施されている。
企業
運用受託機関
東証一部
E社
鉄鋼
対話内容
○取締役の人数が多い企業との対話
取締役の人数が多く、迅速な意思決定に支障が生じている懸念が持たれるため、
意見交換を行った。 本年、当該企業は執行役員制度を導入し、ガバナンス体制の
見直しを実施した。
東証一部
D社
輸送用機器
○反社会的行為が発生しており、かつ、情報開示が不十分な企業との対話
製品のリコール問題について、経営トップからの十分な説明がなされていないこ
とについて指摘した。 当該企業からは、情報開示のあり方について再検討する旨
の回答を得た。
主要項目
3 国内株式議決権行使の状況
スチュワー ド シップ 活 動の 報 告 について
株主議決権行使状況(対象:平成26年4月~平成27年3月末決算企業等)
議案内容
総計
合計
構成比
(%)
賛成
賛成比率
(%)
反対比率
反対
(%)
前年度の
反対比率
(%)
81,804
100%
62,217
76.1%
19,587
23.9%
21.9%
2,505
3.1%
53
2.1%
2,452
97.9%
97.6%
内訳
81,804
100%
62,217
76.1%
19,587
23.9%
21.9%
取締役会・取締役に関する議案
21,281
26.0%
10,999
51.7%
10,282
48.3%
36.1%
監査役会・監査役に関する議案
18,979
23.2%
15,534
81.8%
3,445
18.2%
17.9%
8,949
10.9%
7,460
83.4%
1,489
16.6%
19.8%
15,409
18.8%
14,696
95.4%
713
4.6%
4.9%
1,575
1.9%
875
55.6%
700
44.4%
41.4%
384
0.5%
383
99.7%
1
0.3%
0.3%
2,094
2.6%
1,575
75.2%
519
24.8%
24.7%
13,133
16.1%
10,695
81.4%
2,438
18.6%
25.6%
(うち、株主提案に関するもの)
役員報酬等に関する議案
剰余金の処分に関する議案
資本構造に関する議案
事業内容の変更等に関する議案
役職員のインセンティブ向上に関する議案
その他議案
「資本構造に関する議案」の内訳
議案内容
敵対的買収防衛策に関するもの
構成比
(%)
賛成
賛成比率
(%)
反対
反対比率
反対比率
(%)
(%)
1,001
1.2%
376
37.6%
625
62.4%
48.4%
増減資に関するもの
60
0.1%
58
96.7%
2
3.3%
0.0%
第三者割当に関するもの
16
0.0%
16
100.0%
0
0.0%
0.0%
156
0.2%
84
53.8%
72
46.2%
38.9%
自己株式取得に関するもの
18
合計
連合会だより PAL 188号 2016.1
○ 議決権行使の対象となった企業及び議案の総数
今回、議決権行使の対象となった企業は、委託先の運用受託機関23社、46ファンドが株式を保有する平成26年4月~平成27
年3月末決算の企業延べ20,704社であった。また、対象となった議案は、これらの企業の株主総会における提案議案であり延べ
81,804議案であった。
○ 行使状況の概要
全議案81,804議案のうち、反対行使は23.9%(前年度比+2.0%)、19,587議案(うち株主提案議案は2,452議案)であった。
○ 取締役会・取締役に関する議案
反対行使比率は48.3%となった(前年度比+12.2%)。以下は主な反対理由である。
社外取締役が複数名選任されていない取締役会
主要項目
独立性に問題があると判断される社外取締役の選任
十分な説明のない社内取締役の増員
兼務数が多く、取締役会への出席率も低位の社外取締役の選任
東証一部
運用受託機関
E社
水産・農林業
反対理由
○社外取締役が複数名選任されていない取締役会
社外取締役が複数選任されていないことから、取締役候補者全員の選任に反対
した。
D社
○社外取締役が複数名選任されていない取締役会
社外取締役が2名未満であるため、代表取締役に反対した。
東証一部
M社
情報・通信業
東証一部
○独立性に問題があると判断される社外取締役の選任
所属先もしくは出身母体と当該企業の関係性から独立性に疑問が残るため反対し
た。
B社
小売業
○兼務数が多い社外取締役の選任
当該社外取締役候補者については、兼任が当該企業を含めて5社を超えている
ため反対した。
○ 監査役会・監査役に関する議案
スチュワー ド シップ 活 動の 報 告 について
企業
反対行使比率は18.2%となった(前年度比+0.3%)。以下は主な反対理由である。
独立性に問題があると判断される社外監査役の選任
取締役会や監査役会への出席率が低水準の監査役の選任
企業
東証一部
運用受託機関
O社
化学
東証一部
ガラス・土石製品
反対理由
○独立性に問題があると判断される社外監査役の選任
社外監査役が顧問契約のある法律事務所の所属であるため反対した。
J社
○取締役会や監査役会への出席率が低水準の監査役の選任
社外監査役候補者であるが、取締役会・監査役会への出席率に問題があること
から反対した。
連合会だより PAL 188号 2016.1
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○ 役員報酬等に関する議案
反対行使比率は16.6%となった(前年度比▲3.2%)。以下は主な反対理由である。
社外取締役や監査役に対する退職慰労金の贈呈
反社会的行為に責任があると判断される取締役への役員報酬支給
企業
東証一部
運用受託機関
K社
情報・通信業
JASDAQ
○社外取締役や監査役に対する退職慰労金の贈呈
支給対象者が社外取締役や監査役を含むため、退職慰労金支給に反対した。
P社
小売業
主要項目
東証一部
反対理由
○反社会的行為に責任があると判断される取締役への役員報酬支給
不祥事に対する監視責任から退職慰労金贈呈は適切と認められないため反対し
た。
L社
医薬品
○業績に比して過大と考えられる役員報酬支給
多額の損害賠償の和解金が発生し、 業績、 財務に与える影響が大きかった中、
1人あたり多額に上る役員賞与支給は是認できないと判断し、反対した。
スチュワー ド シップ 活 動の 報 告 について
○ 剰余金の処分に関する議案
反対行使比率は4.6%となった(前年度比▲0.3%)。以下は主な反対理由である。
配当性向が低いなど株主還元が不十分な企業の剰余金処分議案
企業
東証一部
運用受託機関
Q社
電気機器
東証一部
反対理由
○配当性向が低いなど株主還元が不十分な企業の剰余金処分議案
前期比大幅増配だが、利益やキャッシュフロー水準に比して更なる増配の余地が
あるとみている為、反対した。
F社
化学
○配当性向が低いなど株主還元が不十分な企業の剰余金処分議案
市場からの評価が低くかつ内部留保過大にもかかわらず、更なる内部留保の積
み増しを伴う剰余金処分案は望ましくないため反対した。
○ 資本構造に関する議案
反対行使比率は44.4%となった(前年度比+3.0%)。以下は主な反対理由である。
敵対的買収防衛策に関する議案における株主価値の向上に資すると判断されない内容
企業
東証一部
運用受託機関
D社
小売業
反対理由
○敵対的買収防衛策に関する議案における株主価値の向上に資すると判断
されない内容
買収防衛策の導入及び継続を取締役会のみで決定するため、反対した。
東証一部
F社
陸運業
○敵対的買収防衛策に関する議案における客観的な運営に疑念が残ると判
断される内容
取締役会に独立した社外取締役が少なく、独立委員会はあるが、取締役会の恣
意性を十分に排除する仕組みとは判断し難く、少数株主の立場に立った客観的な
運営に疑念が残るため、反対した。
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連合会だより PAL 188号 2016.1
共済年
人金事制異度動の日誌
公 的 年 金 制 度に関 連した会 議 等 の 開 催 状 況
年月日
事項
H27.11.30
社会保障審議会年金数理部会(第67回)
H27.12.8
社会保障審議会年金部会(第31回)
業務等の状況
会議開催状況
11月19日
○場所 東京グリーンパレス(全国市町村職員共済組合連合会施設)
年金問題
セミナー
○内容 各共済組合の幹部職員を対象に、年金制度等について理解を深めることを目的と
して開催しました。当日は、総務省自治行政局公務員部福利課から「地方公務員
共済年金をめぐる動向」と題して、慶應義塾大学経済学部教授の駒村康平氏から
「2014年年金財政検証と年金制度の課題」と題して、内閣官房社会保障制度改革
担当室(兼)内閣府大臣官房番号制度担当室 内閣参事官の三橋一彦氏から「マイナ
ンバー制度の概要について」と題して、特定個人情報保護委員会事務局 総務課課
長補佐の上田紘嗣氏から「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(行
政機関・地方公共団体等編)の概要」と題して、それぞれご講演をいただきました。
会議開催予定
2月17日
○場所 地方公務員共済組合連合会特別会議室
第116回
役員会
○議事 平成28年度事業計画及び予算(案)の大綱(案)について
2月26日
○場所 地方公務員共済組合連合会特別会議室
第117回
運営審議会
○議事 平成28年度事業計画及び予算(案)の大綱(案)について
人事異動
連合会
「※当該項目は、ホームページではご覧になれません。
」
総務省
「※当該項目は、ホームページではご覧になれません。」
各組合
「※当該項目は、ホームページではご覧になれません。」
連合会だより PAL 188号 2016.1
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連合会だより PAL 188号 2016.1
連合会だより PAL 188号 2016.1
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http://www.chikyoren.or.jp/
地方職員共済組合 http://www.chikyosai.or.jp/
公立学校共済組合 http://www.kouritu.go.jp/
警察共済組合 http://www.keikyo.jp/
東京都職員共済組合 http://www.kyosai.metro.tokyo.jp/
全国市町村職員共済組合連合会 http://www.shichousonren.or.jp/
指定都市職員共済組合/市町村職員共済組合/都市職員共済組合
表紙の写真
太宰府天満宮
(福岡県太宰府市)
天 神さま
(菅原 道 真 公 )をお祀りする全国
12,000社 の 総 本 宮と称えられ「 学 問・至
誠・厄 除け 」の 神 様としてご崇 拝を集 めて
連合会だより・第188号
います。天 満 宮は菅 原 道 真 公 の 上に御 社
殿 を 造 営し、そ の 御 神 霊 を 永 久にお 祀り
平成28年1月発行
している神社で年間に約七百万人の参拝
編集・発行 地方公務員共済組合連合会 総務部 企画課
者が訪れています。
〒107-0052 東京都港区赤坂8-5-26
TEL 03(3470)9711(代)
警察共済組合福岡県支部