SURE: Shizuoka University REpository

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IIC-2 生ごみのコンポスト化 (『人間と地球環境』研究報
告 : 地球環境保全とエコシステム)
中崎, 清彦
静岡大学学内特別研究報告. 2, p. 74-75
2000-03
http://doi.org/10.14945/00008240
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Ⅱ C-2
生 ごみ の コ ンポス ト化
工学部 中崎清彦
た 。 検 定 の 結 果 ,大 腸 菌群 は全 く検 出 され な
[研 究 目的 ]
人 間活動 ,生 産活動 に よ る資源 ・ エ ネ ル ギ ー
の 消費 とそれ に伴 って 排 出 され た物質 によ って
か った。
1-2 コ ンポス ト化を担 う微 生 物
地域 および地球規模 で の 環境 問題 が深刻化 し
我 々人類 お よび地球上 の 生 態系 の生 存 基盤 を脅
かす まで に至 って い る。排水・ 廃棄物処 理 にお
装 置 か ら取 り出 した コ ンポス ト中 に存在す る
微生物 の 種類 と濃度 を測定 した。 菌体 濃度 は
常 温 性 微 生 物 ,好 熱 性 微 生 物 の い ず れ もが
105cellS/g― dsと 低 濃度 で ある こ とがわか った。 コ
,
け る莫大 な資源・ エ ネ ル ギ ーの 消費を低減 し
地球環境 へ の 汚濁負荷 を低減す るために も,人
間活動・ 生産活動 のゼ ロエ ミッシ ョン化 をめ ざ
した新 たな物 質循環を含 む社会 システ ム を構築
,
,
ンポ ス ト化 の過程 で 有機物 が 良好 に分解 され
よ く腐 熟 した コ ンポ ス トが で きて い る ときに
は, これ らの微 生 物 は ともに 108cellS/g― ds以 上 の
,
す るこ とが急がれて い る。
ゼ ロエ ミッシ ョ ンを考 え る とき,業 種 間ある
いは産業 間で ネ ッ トワー クを形成 し,あ る業種
高濃 度 に存在す る こ とが知 られ て い る。今 回の
測定結 果 は コ ンポ ス トと しては微 生 物数 が 極 め
て 少 な いことを示 して いるが , これ は有機物 の
の 廃棄物 を他 の業種 の 原料 と して利用す る方法
を有効な手段 とす る こ とが で きる。 また,こ の
分解 が 十分 に進む前 に過度 の 乾燥 が お こ ったた
ためには廃 棄物を原料 に 変換 す るため の 要素技
術 の 開発 が 不可欠 であ る。 コ ンポ ス ト化 は人 間
1-3 接 種 した β菌 の 役 割
活動や生産活動 の 廃棄 物 を ,農 業 や公 園 の 緑化
な どに利用す ることに よ ってゼ ロエ ミッ シ ョ ン
の 実現を支援す る技術 と して注 目を集 めて きて
い る。本 学 キ ャ ンパ ス に お いて も,生 協 や カ
め と考 え られた。
生 ごみ に種菌 と して接種 して い る β菌 の役割
につ いて検討 した。 なお , β菌 は純 粋 培 養 され
た単 一の微生物 で はな く,複 数 の 微 生 物 を含む
市販 の 微生物資材 で あ る。 β菌 中 に は ,常 温性
フ ェテ リア,あ る いは 学 生 寮 な どで生 ごみが排
出され て い るが ,こ れ らは コ ンポス トと して適
微生物 ,好 熱性微 生 物 の いずれ もが 108cellS/g― ds
の 濃 度 で 存在 した。 コ ンポス ト中の 微 生物 は上
述 した通 りβ菌 中の 菌体濃度 に比べ て3桁 程度低
正 に処理す る こ とで , リサ イ クルす る こ とが可
能 である。本研究 では,大 谷キ ャンパ ス第 1食 堂
い こ とか ら,接 種 した微生物 は コ ンポ ス ト化 の
過程 で 増殖 できて いな いことを示 して い る。 ま
に設置 され た コ ンポス ト化装置 の性能 を評価す
るとともに生 ごみか ら植 物病害を防除す る機能
た ,寒 天平板 上の コ ロニーの 形態 か らも,コ ン
ポス ト中の微 生物 と β菌 に含 まれ る微 生 物 は異
な る こ とが 確 かめ られ た 。本 コ ンポ ス ト化 シス
性 コ ンポ ス トを製 造 す る こ とを 目的 と して い
テ ム にお いては, β菌 は種菌 と して の 効果を十
分 に 発 揮 して い る とは 考 え に く い 結 果 とな っ
る。
た。
[研 究成果 ]
1.コ
ンポス ト中の微 生 物相解析
1-1 大腸菌群 の検定
コ ンポス ト化装置は大谷 キ ャ ンパ ス第 1食 堂裏
に設置 されてお り,食 堂か ら排 出 され た生 ごみ
4
分子 生物学 的手法 の応用
β菌 とそれを種 菌 と して作製 した コ ンポ ス ト
の 微 生 物 相 を分 子 生 物 学 的手 法 を 用 いて比較
1¨
に種菌 と して β菌を接 種 し,温 度 80° Cで 数 時間
処理す るシステ ム とな って い る。装 置 か ら取 り
し, コ ンポス トの 微 生 物相 が β菌 の 微 生 物相を
反 映 して いるか 否 か を検討 した。 β菌 ,お よび
コ ンポ ス トに存在 す る菌体 由来 のDNAの うち
出 した コ ンポス ト中に大 腸 菌群 が 存在 す るか確
16S IDNA領 域をPCRで 増 幅 させ ,制 限酵素Hae
かめ るために,デ スオ キ シ ヨー レイ ト培地 (大
腸 菌群 検 索 用培 地 )上 で 培 養試 験 を お こ な っ
IIIで
,
切 断 して,ゲ ル 電気 泳 動 のパ タ ー ンを観察
した。 β菌 と コ ンポ ス トで泳動 パ タ ー ンは,大
―-74-一
き く異 な って いた。 この 結果 ,コ ンポ ス ト中で
優 勢 な 微 生 物 は β菌 由来 で はな い と考 え られ
て ,生 ごみ コ ンポ ス トの二 次発酵 過 程でN4-1株
を増殖 させ 機 能性 コ ンポ ス トを作 成 で きるか確
た。 したが って,コ ンポ ス トの 微 生 物相 に与 え
る β菌 添加 の 効 果 は極 め て 小 さ い と考 え られ
かめた。大谷キ ャ ンパ ス第 1食 堂 の 装置か ら取 り
出 した コ ンポ ス トの一 次発酵製 品 に,N4-1株 を
接種 し,N4‐ 1株 を増殖 。胞 子化 させ るため に
た。
,
2.コ
まず 40℃ 等 温 で 5日 間 コ ンポス ト化 し,引 き続
いて ,有 機物分 解 を促進 させ るため に60° c等 温
どの程 度分解 され た もの な のか ,研 究室 内の 試
験装 置を用 いて検定 した 。 コ ンポ ス トを試験装
で さ らに 5日 間 コ ンポス ト化 した。
ンポス トの腐熟度検定
装 置 か ら取 り出 した コ ンポス トは ,有 機物 が
炭素変化率 は40° Cに 維持 した始 め の5日 間で28
%,そ の後 の 5日 間で39%の あわせ て約 67%付
置 中 に充填 し,底 部 よ り通 気 しなが ら再 コ ンポ
ス ト化 して ,炭 酸 ガ スの 累積 発 生 量 を計 算 し
近 の 値 とな り,腐 熟度を大幅 に改善 す る こ とが
た。 また,コ ンポ ス ト中 に含 まれ る炭素 の 内
再 コ ンポ ス ト化期 間 中 に炭酸ガ ス と して揮 散 し
で きた。 また , 同 じ 5日 間 で も60℃ に温度 を上
げ て後 の 分解率 の 方 が大 き いことか ら,60℃ に
た炭 素 と定 義 した炭 素 変化率 で有機 物分解程度
を定量 した。対照 試験 と して,第 1食 堂か ら排 出
され た生 ごみ その ものの 炭酸ガ ス発 生量 を測定
維 持 す る こ とで 有機物分解 を高速化 で きる こ と
が わか った。
用 いた一 次発酵製 品の コ ンポス トは常温性細
すれ ば ,両 者 の 比較か ら装置か ら取 り出 した コ
ンポ ス トの有機物分解量を推定できる。
菌が 106cFU/8-dS程 度存在 し,そ の 後 40℃ に維持
され ている二次発酵 の期間 に101° CFU/3-dS程 度 に
生 ごみ その もの と装 置 か ら取 り出 した コ ンポ
まで増殖 して一 定 とな った。 一 方 ,N4‐ 1株 は 初
ス トの 炭酸 ガス発 生量 と炭 素変化率 の 経 時変化
を比較 した と こ ろ,両 者 はよ く類似 した 。 コ ン
期 に 107cFU/g¨ ds程 度 の濃度 で接種 され たが ,二
次発酵 で40℃ にあるときに2桁 程増殖 した。温度
を60℃ に制御す る と常温 性細菌 もN牛 1株 もわ ず
,
ポ ス トが ,有 機物 の よ く分解 され た もの であれ
ば ,生 ごみを用 いた試験 に比べ て 炭 酸ガ ス発 生
量 も炭素変化率 も格段 に小 さ くな らなければ な
らな い 。 ここで得 られ た結果は,装 置 か ら取 り
か に減少す るが ,N4… 1株 濃度 は二 次発酵終 了 ま
で 109CFU/g_dS程 度 の 高濃度 に保 たれ た。なお
,
出 した コ ンポ ス トは有機 物 が 十分 に分解 され た
もの で は な く,未 熟 で あ った こ と を 示 して い
この ように して生 成 した二 次発酵 の 製 品 コ ンポ
ス トを用 いて 植物 病原 菌 に対す る抑 制試験をお
こな った とこ ろ,抑 制効果 の あ る こ とが 確 か め
る。
られ た。
3.機 能性 コ ンポス トの作成
大谷 キ ャンパ ス第 1食 堂 に設置 した コ ンポス ト
化装 置 で生 成 した コ ンポ ス トは十 分 に腐熟 した
[ま とめ ]
もの とは いえな いの で ,こ の コ ンポ ス トは土壌
へ の 施 用量が 多過 ぎなければ 良好 な肥料 の 効果
大谷キ ャンパ ス第 1食 堂 に コ ンポ ス ト化装置を
設置 し,そ の 性能 を評価 した。 この 装置 か ら取
り出 した コ ンポ ス トは大腸 菌群 な どの心 配 の な
が 期待 で きるものの ,よ く腐熟 した コ ンポ ス ト
を用 い る ときの よ うに土壌改良材 と して 農地 に
い衛 生 的な もの で あ る こ とが 確 か め られ た。 ま
た,種 菌 と して加 えて い るβ菌は この条件 では
大量 に施 用すれば ,作 物 の生 育 に 阻害 的な影響
が でで くる こ とが ′
Lヽ 配 され た 。 そ こ で ,腐 熟度
十分 に能力を発揮 で きて いな い こ と,β 菌以外
を改善す るために二 次発酵をお こな う こ とと し
いことが わか った。 なお,コ ンポ ス ト化装置の
有機物分解率は十分 とはいえず ,装 置の運転条
件 で あ る高温 ,通 気 の 条件 で過 度 の 乾燥が起
こっていた もの と考え られたが ,コ ンポス ト化
装置 でで きた コ ンポス トを一次発酵 品 と考 え
た。 また ,二 次発酵 で は腐熟度を 改善す るの み
な らず ,植 物病害を 防除す る機能性 コ ンポス ト
に加 工 しなおす こ とが 可能 か につ いて も検討 し
た。
の コ ンポス ト化 に働 く微生物 も極 めて数が少な
,
3,J口 bffrisN4… 1株 は当研 究室 で単離 した植 物病
原菌 に対す る抑制細 菌 で ,芝 の 葉腐 病 ,メ ロン
のつ る割病 ,キ ュウ リの 褐斑病 に有 効 であ る こ
とを 確 か めて い る 。 ここ では N4‐ 1株 を 接 種 し
-75-
引き続 く二次発酵 と組み合 わせ る こ とで生ごみ
か ら植物病害を防除す る機能性 コ ンポス トの作
成が 可能 であることが確かめ られた。