吉野川のかなめ 池田ダム 40周年を迎えて

特集
吉野川のかなめ
池田ダム 40周年を迎えて
吉野川総合開発計画
池田ダムがある吉野川は、利根川(板東太郎)
、
う
は降雨量が少なく、河川の流域は狭く急峻であ
るため、降雨は鉄砲水となり、平時の流量が少
筑後川(筑紫次郎)と並び四国三郎と呼ばれる日
なく溜め池を作るなどして水確保はしている
本を代表する河川で、四国 4 県にまたがり経済
ものの慢性的な水不足に悩まされ、吉野川の分
社会への影響はきわめて大きなものがあります。
水が望まれていました。
吉野川の水源地帯は多雨地域であり台風常襲
そのような状況の中、四国にも日本経済の高
地域でもあるため、古くから洪水による被害は
度成長の波が押し寄せ、工場誘致のための産業
大きなものでした。また、豊富な水資源を有して
立地が強く望まれるようになりました。このた
いるものの、河川は起伏が大きく急峻となって
め、吉野川の水資源開発の必要性が高まり、四
おり、自然状態における利用可能水量は小さな
国地方開発促進計画の柱として早期実現が掲
ものでした。
げられ、昭和 41 年に吉野川総合開発計画が決
N
吉野川流域図
4
●
ま
一方で、瀬戸内側の香川県・愛媛県宇摩地方
水とともに 水がささえる豊かな社会
0
5
10
15
20km
吉野川のかなめ 池田ダム 40周年を迎えて
定されました。その後、吉野川水系は水資源開
発水系に指定され、昭和 42 年には吉野川水系
における水資源開発計画が決定されました。
同年 4 月には、水資源開発公団(現水資源機構)
さ め う ら
が建設省(現国土交通省)から早明浦ダム事業を
しんぐう
承継して逐次、池田ダム・香川用水・新宮ダム・
とみさと
旧吉野川河口堰・高知分水及び富郷ダムの各施
設を建設してきました。これらの施設と関連し
やなせ
て、既存施設(柳瀬ダム:国土交通省)の有効利
用を図ることにより、吉野川の洪水調節及び流水
の正常な機能を維持するために必要な流量の確
池田ダムは、堤高 24m、堤長 247m の重力式コ
ンクリートダムで、次の 4 つの目的があります。
①洪水調節:大雨による洪水の一部をダムに貯
留し、ダム下流の洪水被害を軽減。
②ダム下流の既得用水の安定した取水、河川環
境の保全。
③吉野川北岸用水や香川用水を取水するために
最低水位 EL.87.5m を確保。
④ダムから放流される水を利用した、四国電力
株式会社による最大 5000kW の発電。
保、新規用水の供給、電源開発を行ってきました。
吉野川総合開発計画は、
「四国はひとつ」の理
念から始まり、平成 13 年の富郷ダムの完成に
さらには、ダムカード収集を目的に遠方から
の来訪者も増えています。
より完了しました。この結果、吉野川沿岸は洪
池田ダムは管理開始以来、吉野川の水を最
水被害が軽減されるとともに吉野川の流況は
大限に利用するため、交替勤務により 24 時間
良くなり、四国 4 県への用水供給と合わせて四
365 日態勢で、きめ細やかな水管理を実施して
国の発展に大きく貢献してきました。
います。交替勤務者は、河川等の監視はもちろ
んのこと、貯水池からの取水と下流既得用水へ
の放流安定化のため、池田ダム地点において低
池田ダムの完成
水時の流量を確保し水位の変動を EL.87.5m か
ら 88.1m の 間、わ ず か 60cm で 維 持 し て い ま
池田ダムは当初、吉野川水系が電源開発株式
す。流量が不足する場合は、流水が早明浦ダム
会社の調査河川に指定され、発電専用施設とし
から到達するまでに約 12 時間を要することを
て吉野川河口から約 80km の中流部に当たる徳
念頭に置いて、確保流量を満足させるように河
島県三好市池田町で着工の準備を進めてきま
川自流に上乗せする早明浦ダム補給量を決定
した。その後、吉野川総合開発計画がまとまり、
しています。
計画の要として池田ダムが位置づけられ、事業
ま た、池 田 ダ ム の 流 域 で は 年 間 平 均 約
主体も水資源開発公団に移行し、多目的ダムと
2,600mm もの降水量があり、管理開始以降洪
して昭和 46 年に着工されました。
水調節(※ 流入量 5,000m3/s 以上の流入時)を
このような経過を経て、池田ダムは昭和 50
年に完成しました。
お お ぼ け
こ
ぼ
け
徳島県三好市には、
「大歩危 ・ 小歩危の絶景」、
い や け い
52 回実施してきました。そのうち、計画最大流
入量(11,300m3/s)を超える洪水が 2 回発生し
ています。平成 16 年には管理開始以来最大の
平家落人伝説が残る祖谷渓の深山幽谷や「祖谷
年間降水量約 4,400mm を記録し、最近では平
のかづら橋」など数多くの観光名所があります
成 26 年 8 月に池田ダム流域において 1,583mm
が、今では池田ダムもその一つに数えられ、一
もの降雨があり、ひと月に 25 日もの防災態勢
年を通じて多くの方がダムを訪れます。
が敷かれました。
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特集
池田ダム
こうした洪水調節は、国土交通省吉野川ダム
統合管理事務所との連携により対応していま
い、ダムの機能を生かして下流の洪水被害の軽
減に努めています。
すが、予測の難しい自然現象を相手とするた
め、困難な局面での操作になります。そのため、
職員はダム操作室に結集し、気象や河川の情報
収集・自治体や関係機関への情報提供・貯水
池周辺やダム下流の住民等への注意喚起を行
積極的な地域交流
池田ダム周辺には、イタノ水際公園や吉野川
運動公園等の周辺施設があり、スポーツや散
策、釣り、イベント等様々な形態で地域住民に
利用されています。
ダム湖の利用については、ジェットスキーや
水上バイクなどの利用もあるためダム湖利用
協議会を立ち上げ、地域の方と一緒にダム湖の
利用について議論し、多くの住民の方から支持
される湖面利用を目指しています。
一方、ダムの位置する徳島県三好市では、環
い よ が わ
境保全活動として「伊 予川芋炊き会」主催の河
川清掃や、イルミネーションが池田町内の至
る所で幻想的な輝きを見せる「池田冬のオブ
吉野川のかなめ 池田ダムの碑
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水とともに 水がささえる豊かな社会
ジェ」等のイベントが行われ、職員も参加して
吉野川のかなめ 池田ダム 40周年を迎えて
香川県の中学生を対象にした「水源巡りの旅」
地域と積極的に交流を深めています。
池田ダムでは毎年、香川県が主催する「香川
用水の水源巡りの旅」という行事で多くの中
「伊予川芋炊き会」での機構職員による環境学習会
問合せが多く、平成 26 年分については受付時
間前に車両約 30 台の行列ができ、配布先が決
まってしまうほどの人気ぶりでした。
学生を迎え、水資源の貴重さやダムへの理解
を深めて頂いています。それとともに地元漁
業協同組合の協力を得て、近隣の小学生を招
き環境学習会を開き、吉野川のことについて
職員も一緒になって勉強をしています。
きめ細かな管理を引き続き
池田ダムは、地域の皆様や下流の皆様のご支
さらに、ダム湖に漂着した流木を集め、それ
援・ご協力により、管理開始から 40 年を迎え
を有効活用して作った薪やチップを無料配布
ることができました。吉野川流域では、過去に
する取組を行っており、地元の方には大変好評
幾度となく洪水被害を受けてきましたが、池田
を得ています。これには配布前から事務所への
ダムが完成してからは上流ダム群と連動した
洪水調節を行い、下流域の洪水被害の軽減に寄
与してきました。
利水にあっては、河川環境の保全等のための
流量を確保し、下流沿川の取水を安定化させ、
吉野川北岸用水や香川用水に農業用水や水道
用水などを安定供給し、さらには発電など、徳
島県・香川県の産業発展及び生活の向上に重
要な役割を担うとともに、数多くの渇水を経験
する中で、その影響緩和に努めてきました。
今後も引き続き、関係の皆様のご理解 ・ ご協
力のもと、洪水被害の軽減や利水の安定供給な
流木を有効活用した薪配布
どきめ細かな管理に努めてまいります。
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