採用面接時にしてはいけない質問とは?

関係部署にご回覧ください
編集・発行 三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング株式会社
2015.4.20 第 1469 号
SMBC経営懇話会
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【採用のためのチェックポイント】
採用面接時に し て は い け な い 質問と は ?
安西法律事務所
弁護士 荻谷 聡史
1. 採用面接では応募者に対して無制限に質問できるわけではなく、当該企業が行う業務の目的を達成
するために必要な範囲内に限られます。
2. 厚生労働省は、採用選考時に配慮すべき事項を例示しており、参考になります。
企業は採用選考において、応募者のうち誰を採用するか原則として自由に決定することができ、また採否
の決定のために、応募者について調査し情報を収集することができます(最高裁大法廷 昭和 48 年 12 月 12
日判決)が、以下の通り一定の制約を受けますので注意が必要です。
1.情報収集の範囲
(1)業務の目的の達成に必要な範囲内で質問すること
企業が、採用面接で応募者に対して質問し情報収集できる範囲は、当該企業が行う業務の目的を達成
するために必要な範囲内に限られ(職業安定法 5 条の 4)、これに違反した場合には、行政からの指導、助
言及び改善命令の対象となります(職業安定法 48 条の 2、48 条の 3)。
特に以下の①~③の情報について原則として質問してはならず、例外的に認められるのは、業務の目
的の達成に必要不可欠であり、収集目的を示して本人から収集する場合に限られます(※1)。
①人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項
(例:家族の職業、収入、本人の資産等の情報(税金、社会保険の取り扱い等労務管理を適切に実施する
ために必要なものを除く)など)
②思想および信条(例:人生観、生活信条、支持政党、購読新聞・雑誌、愛読書など)
③労働組合への加入状況(例:労働運動、学生運動、消費者運動その他社会運動に関する情報など)
※1 職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、募集受託者、労働者供給事業者等が均等待遇、労働条件等の明示、求職
者等の個人情報の取扱い、職業紹介事業者の責務、募集内容の的確な表示等に関して適切に対処するための指針
(平成11年11月17日 労働省告示第141号)第四、一、(一)
(2)性別により異なる質問をしないこと
募集及び採用時に性別を理由に差別することは、男女雇用機会均等法第5条及び指針(※2)により禁
じられています。このため、面接時に一定の事項について男女で異なる質問をすることはできず、たとえば
女性の応募者に対してのみ、結婚の予定の有無や、子どもが生まれた場合の継続就労の希望の有無等
について質問することはできません。
※2 労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための
指針(平成18年10月11日 厚生労働省告示614号)第二、2、(2)、ハ
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(3)精神疾患の罹患歴についての質問は慎重に
新入社員が入社直後に精神疾患により欠勤・休職に至り、事情を聞くと入社前から精神疾患を発症して
いたというケースが最近見られます。そこで企業としては、採用面接時に精神疾患の罹患歴について質問
する必要がある一方で、プライバシーへの配慮から、どのような点に留意すべきかが問題になります。
この点について、採用を決めるための健康診断で本人の同意なくB型肝炎ウイルス感染検査を行ったこ
とが問題となった事案において、裁判所は、「企業は、特段の事情がない限り、採用に当たり、応募者に対
し、B型肝炎ウイルス感染の血液検査を実施して感染の有無についての情報を取得するための調査を
行ってはならず、調査の必要性が存在する場合でも、応募者本人に対し、その目的や必要性について告
知し、同意を得た場合でなければ、B型肝炎ウイルスについての情報を取得することは、できない」(東京
地裁平成 15 年 6 月 20 日判決)と判断しており、参考になります。
この点、精神疾患の場合、ケースによって症状がさまざまであるものの、広く職種を問わず労務の提供
に影響を生じさせる可能性があり、したがって罹患歴の調査を行う必要性があるものとして、採用面接時に
質問すること自体は可能と考えます。しかし質問に際しては、応募者に対し採否の判断に利用する旨を告
げて、その同意を得た上で質問する必要があります。また質問内容も、病名や治癒の時期、現在の職務遂
行への影響など、あくまで採否の判断に必要な合理的範囲に限るべきです。
2.厚生労働省による指導
厚生労働省は、公正な採用選考のため、(1)応募者の基本的人権を尊重すること、(2)応募者の適性・能
力のみを基準として行うことが大切だとし、応募者の適性・能力に関係のない事柄について、応募用紙に記入
させたり、面接で質問することなどによって把握しないようにすることが重要であると指導しています。
その上で、採用選考時に配慮すべき事項として、以下の事項を挙げており、参考になります。
【採用選考時に配慮すべき事項】
次の a や b のような適性と能力に関係がない事項を応募用紙等に記載させたり面接で尋ねて把握することや、
c を実施することは、就職差別につながるおそれがあります。
a.本人に責任のない事項の把握
・本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることは
これに該当します)
・家族に関すること(職業、続柄、健康、地位、学歴、収入、資産など)(注:家族の仕事の有無・職種・勤務
先などや家族構成はこれに該当します)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること
b.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合・学生運動など社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
c.採用選考の方法
・身元調査などの実施 (注:「現住所の略図」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性が
あります)
・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
出典:厚生労働省「公正な採用選考について」(http://www2.mhlw.go.jp/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm )
【本稿に関するご照会窓口】 SMBCコンサルティング・経営相談部 TEL:0120-874-809
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