「がんと共に生きる」講演の概要

「江東区がん対策推進計画策定記念シンポジウム」
講演の記録
国民の2人に1人ががんになる今、がんのことを知ってもらおうと、昨年12月、東京都現代美術館にお
いて江東区がん対策推進計画策定記念シンポジウムを開催し、江東区民約200名が参加しました。
シンポジウム第一部では、大腸がんを経験したジャーナリストの鳥越俊太郎氏が「がんと共に生きる」と
題して基調講演を行い、第二部では、がん研有明病院長の門田守人氏を座長にパネルディスカッションを行
い、行政や専門医、診療所の医師、がん経験者等様々な立場からの講演の後、がんとどう向き合うか話し合
い、早期発見のための検診の大切さを訴えました。
【第一部】 基調講演「がんと共に生きる」
講師
鳥越俊太郎 氏
(講演会より抜粋)
私は大腸がんだったが、自分ががんになるとは思ってもいなかった。がんはかなり長い年月を経てだんだんと
育っていくが、その間自覚症状が全くない。だから自分で検診に行って、見つけるしかない。私の場合は検便
によって見つかった。手遅れになったらいくら日本の医者が優秀でも助からない。早いか遅いか時間の問題な
ので、私の話を聞いたからにはぜひがん検診に行ってほしい。
鳥越俊太郎さん
1940 年 3 月 13 日生まれ。毎日新聞社「サンデー毎日」編集長を経て、
1989 年に退職して以降、テレビ朝日系列「ザ・スクープ」
「サンデージ
ャングル」でキャスターを務めるなど、テレビメディアに活動の場を移
した。2005 年、ステージ 4 の大腸がんが発覚、肺や肝臓への転移を経て
4 度の手術を行った。2010 年から始めたスポーツジムに加え 2012 年に
はホノルルマラソン完走を果たすなど健康的なライフスタイルを貫いて
いる。現在もさまざまなメディアで「ニュースの職人」として活躍中。
【第二部】パネルディスカッション「誰もががんになりうる時代を生きるために」
座長
門田守人
パネリスト 鳥越俊太郎、山口俊晴、岡本克郎、桜井なおみ、福内恵子
(敬称略)
座長挨拶
がん研究会有明病院長 門田守人 氏
(要旨)最近の国のがん対策の動きについて話した後、第二部の流れを説明し、登壇者を紹介。
「がん対策推進計画の策定と区の取り組み」
江東区健康部長 福内恵子
(要旨)江東区は国や都に比べてがんで亡くなる人が多い。本計画の基本理念に沿って、区は具体的には
予防のためのがん教育・減塩教室や、早期発見のためのがん検診のほか、がんの医療相談等について、今
後さらに展開していくための会議を行っている。
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「がんという病気・治療について」
がん研究会有明病院副院長兼消化器センター長 山口俊晴 氏
(要旨)がんは珍しいことではなく人生の一部くらいに理解して、何をやるかが大切。たとえば
胃がんの原因はピロリ菌・塩分・たばこだが、予防のためにまず禁煙をお勧めする。がんになっ
ても、早期のがんであれば内視鏡や腹腔鏡手術等で治せる。そのために検診は必須。治療になっ
たときはチーム医療で患者を支えているので、安心してがんの医療を受けてほしい。
「がんとかかりつけ医の役割」
江東区医師会会長
岡本克郎 氏
(要旨)江東区はがん研有明病院等の大きな病院もあり、診療所は440所ほどで、医科と医科、
薬科、歯科、訪問看護等が連携している。かかりつけ医はがん医療の際、何か症状が出た際にが
ん専門病院にすぐに行くかどうかの判断等をするためにも、日ごろから経過を観察して患者個人
の傾向を知ることが任務だ。また、病気に付随して起こる問題の相談乗ることも、役割のひとつ
だ。
「がん患者が働くこと」
キャンサー・ソリューションズ株式会社 桜井 なおみ 氏
(要旨)独自の調査の結果、がんと宣告された時より退院した直後が一番落ち込みやすいことが
わかった。また、落ち込んだ後、がんの進行具合に関係なく、落ち込み続ける人とがんを肯定的
に捉えるようになる人がいる。気持ちの好転には職場の人や家族の支えが大きな意味を持つ。今
はいかに持病を持ちながら健康に働くかという時代。周囲の人は手術で終わりと思わず、これか
ら一緒に頑張ろうと声をかけてほしい。
パネルディスカッション
(発言要旨)
鳥越俊太郎氏
がんは自覚症状がないことと、命を奪う病気であることを強調したい。早め早め
の対策が大事。江東区のように小学校のうちからがん教育をすることは大切。ま
た性教育の際も子宮頸がん等の病気のリスクについても教えた方がいいと思っ
た。
桜井なおみ氏
2020年はオリンピックがある。未来のことを考え、がんのことを子供たちに
伝えていき、次世代のことも考えたがん対策をしていきたい。
岡本克郎氏
桜井氏の話を聞いて、ポジティブかネガティブか、自分の心の持ち方で自分をコ
ントロール下におくことができることを知ってよかった。
山口俊晴氏
孫ができて妻が検診を受けるようになった。このように、がんが全てではないの
でとらわれ過ぎず、楽しみを見つけ、他の事に目を向けることも大事だと思う。
福内恵子氏
検診を受けない理由は「忙しいから」が多いが、大切な体のことなので優先順位
を高めて、ぜひ検診に行ってほしい。
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会場からの発言
江東区がん対策推進計画策定協議会
区民委員 井上
晃次 氏
(要旨)計画策定後、精力的な活動を続けているようで喜ばしい。鳥越氏の話は丁寧で楽しく聞いた。
検便の重要性を改めて感じた。がんについての情報はテレビや新聞でも取り上げられているので、注
視していきたい。区へのお願いとしては、受動喫煙防止の政策を進めてほしい。
平成25年度“がんを知る!”サマーセミナー修了生
城東高校(参加当時)
中村 友香梨 氏
(要旨)病院は無機質で冷たいイメージを持っていたが、サマーセミナーに参加して、緩和ケアやチ
ーム医療のことを知って暖かいところなんだと思った。今後医療に携わる仕事に就きたいと思ってい
るが、同じような高校生や大学生のためにもこういう機会があるといいと思った。
まとめ
がん研究会有明病院長 門田守人 氏
(要旨)予防はある意味難しいが、できることを日常的に考えるしかない。チーム医療の主人公は患
者であり、医療は受けるだけではなく参加するものだと考えて、予防も発見も取り組んでほしい。
第一部基調講演
パネリストによる講演
第二部パネルディスカッション
((鳥越s
▲山口俊晴氏
▲鳥越俊太郎氏
▲会場の様子
パネリスト①
パネリスト②
▲左から、門田氏、山口氏、鳥越氏
▲左から、桜井氏、岡本氏、福内氏
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かみて
上手に手話通訳者
シンポジウムに参加して
感想(アンケートより抜粋)
○江東区がこんなにがん患者が多いとは知らなかった。
○がんは自覚症状がないのはよく言われている。私もそうだった。早期発見の大切さ改めて感じた。
○がん治療に頼もしい専門病院、そして医師会の協力・理解が江東区は充実し、がん対策も進んでいること
を感じた。小中学校におけるがん教育は今後ぜひ進んでいくべきと感じる。がんに対する正しい知識と検診
の大切さを児童・生徒の頃から啓発することが検診受診率の向上につながると思う。
○今日のような参加しやすい企画をたびたびしてほしい。自分ががんになってみて今まではひとごとであっ
たが、2人に1人、3人に1人が死亡という事実を実感している。前向きに生きたい!!良い刺激になった。
○食生活での塩分を控えることに重点を置いて料理と食事を楽しみたい。タバコは受動喫煙にも注意したい
と思う!
○ぜひがん検診を1人でも多い人が受けてがんで死なない社会にしてほしいと思う。原因を取り除くために
タバコの対策を強めてほしい。
回答者123人
「自覚症状が全くないのが、がん。ぜひがん検診を受けてほしい。」
(鳥越俊太郎さんの講演より)
平成27年度江東区がん検診実施期間
平成27年6月21日~平成28年2月20日
※平成26年度がん検診は終了しました。
▼江東区実施のがん検診
▲平成26年度江東区がん検診ポスター
7か所) 所定はがきまたは電話で申込み
検診機関に直接電話で予約申込み
を区内実施医療機関に提出して受診
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