Kobe University Repository : Kernel

 Kobe
University Repository : Kernel
Title
婦人用スニーカーにおけるソール腫部の形状の遣いが歩
行動作に及ぼす影響
Author(s)
神園, 雄也 /前田, 正登
Citation
体育・スポーツ科学, 22: 49-56
Issue date
2013-06
Resource Type
Journal Article / 学術雑誌論文
Resource Version
publisher
URL
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/90002692
Create Date: 2015-04-16
体育・スポーツ科学
2
2:4
9-5
6,2
0
1
3
(研究資料〉
婦人用スニーカーにおけるソール腫部の形状の遣いが歩行動作に及ぼす影響
神 園 雄 也 1) 前 田 正 登 2)
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キーワード:スニーカー,ソールの構造,歩行動作,負荷の軽減,膝関節
1
.緒言
増加するとし
近年,スニーカーのソール形状を変化させて従来のス
ニーカーにはない効果を付加することを目的として,多く
のスニーカーが市販されてきている
トレーニングのシューズとして用いること
が有効である可能性が示されたという
しかし他方で¥こ
れと同形状の不安定なソール形状のシューズを用いて歩行
これらのスニーカー
2
0
1
1
) の結果では,身体重心の前
実験を行った Masood (
の中には従来までのスニーカーと比較すると,ソールが特
後方向への移動に滞留が見られなくなり,スムーズに重心
異な形状をしているものがある.ソールはスニーカーの構
移動が行えるようになること,つまりこの形状は,むしろ
造の中で地面に接する部位であり,その形状は履いている
負担を少なくして歩くことが出来る形状であることが示さ
人の動作に影響を及ぼすことが容易に想像できる.
これまでにも,スニーカーやシューズ等の運動用履物の
れていた.これら双方の報告は, ともに不安定なソール形
状を有する同種のシューズを対象としていたにもかかわら
ソール形状を対象とした研究が行われてきている(垣原
ず,導かれた結論は異なっており
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i,2009;Landrye
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,
.
l
ら
, 2006;BoyerandA
に及ぼす影響に関してはまだ議論の余地が残されていると
2
0
1
0
).中でも,特異なソール形状に着目し歩行動作への
考えられる
ソール形状が歩行動作
2
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0
6
) が,ソー
影響を検討した研究として, Nigge
ta
.
l(
一方,市販のスニーカーの中には,腫部が高くなってい
ル部が不安定になるように加工した形状のシューズを用い
るものがある.このような形状のものの多くは婦人向けの
た歩行実験を行っている.その報告によれば,このシュー
スニーカーであり,通常のスニーカーのような履き心地を
ズを着用して歩行を行うと排腹筋と前腔骨筋の筋放電量が
維持しながら,睡部を高くすることによって脚を長く見せ
1)神戸大学大学院人開発達環境学研究科
干6
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7
.
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1 神戸市灘区鶴甲 3
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)神戸大学
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50
(神園・前回)
ることができることを期待したもののようである
伊藤
ら (
2
0
11)によれば,このような腫部を高くした履物で歩
行すると裸足時よりも膝関節がより屈曲した状態となり,
膝関節痛の原因となるといい,長期にわたって使用するこ
とで膝関節痛を引き起こしてしまう可能性があるという.
Curve
しかし理部が高いハイヒールであっても,ヒール部のゴ
ムの装着位置を変化させることにより,歩行時の身体重心
の前後移動の滞留を軽減出来ることが示唆されており(垣
0
0
6
),腫部が高いままであっても腫部の構造を変
原ら, 2
化させることで,歩行動作は変わり得ることが示されてい
る
H
i
g
h
本研究では,陸部が高い婦人用スニーカーを対象に,躍
部がさらに高いだけのスニーカーおよび腫部の高さは同程
度のままで形状が丸いスニーカーが,歩行動作に与える影
響を比較検討することを目的とした
Normal
2
. 研究方法
図1 実験に用いたスニーカー
2-1. 被験者
被験者は,下肢に既往歴のない健常な女子大学生 8名
(年齢 1
9
.
3:
t1
.5歳 , 身 長 1
5
9
.
3:
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.
4
c
m, 体 重5
4.
2:
t4
.
3
k
g
)
とした被験者全員に研究の目的を事前に説明し了承を
得たのちに実験を実施した.なお
被験者には実験に用い
2-3. 歩行実験
8名の被験者に 3種類のスニーカーをそれぞれ着用さ
せ,幅 1m
X 長さ約
6 mの実験用歩行路を各条件で 1
0
るスニーカーを着用した際に期待される効果については説
回,合計3
0回歩かせた.被験者の歩行動作を 3台のハイス
明を加えず,歩行速度や歩幅などには制限をかけずに,自
, P
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n社;
ピードカメラ (FASTCAM-PCIR2: 2台
由な速度で歩行を行わせた
FASTCAM-NetC :1
台
, P
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n社)を用いて 1
2
5
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sで
2-2. 実験に用いた婦人用スニーカー
同期撮影した.ハイスピードカメラは,被験者の右前方
実験に用いたスニーカーは,アッパ一部の色や素材は
すべて統一し,ソール部の瞳部が40mm以上の高さで一
5m,左側方 6mおよび後方 7 mの位置にそれぞれ設置
した
またハイスピードカメラの撮影と同時に,床に埋
般のスニーカーよりも高くかっ形状が異なる 3種類の婦
9
2
8
1
C,KISTLER杜,
設した 2台のフォースプレート (
人用スニーカーとした(図1).すなわち,腫部の高さが
9281E,KISTLER社)を用いてサンプリンク、周波数1kHz
比較的高く丸みをもたせたソール形状のスニーカー(以
で床反力を測定した
u
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),腫部の高さがかなり高く角張っているスニー
下
, C
トを片足ずつ踏んだ試技を有効とし歩行中に歩幅を意図
i
g
h
),および腫部の高さが比較的高く角張っ
カー(以下, H
的に変化させてフォースプレートを踏んだ試技や, 2台の
被験者がそれぞれのフォースプレー
l)の 3種類であった
ているスニーカー(以下, Norma
フォースプレートにわたって接地した試技は無効として,
ighのソール部表面には凹凸がみら
なお,図 1のように H
各条件で規定回数に達するまで行わせた
れるが,実験で用いた 3種類のスニーカーの素材は統ーし
また実験に際しては,被験者にはスニーカーを履き換え
ており,また,本研究がソールの性状を検討するものでは
るごとに慣らすための時間を設け,無理なく自然な動作で
ないことから,結果に著しく影響するものではないものと
フォースプレートに接地できるように十分に練習を行わせ
みなした.
てから,測定を開始することとした
2-4. 分析方法
ハイスピードカメラで撮影された映像をパソコンに取
り込み,三次元動作分析ソフトウェア (Frame-DIASN :
DKH社)を用いて,下肢 1
2点(左右両側の大転子,膝関
節中心,外腺点,腫,揖指球,つま先)をデジタイズし,
各測定点の三次元位置座標を算出した得られた三次元位
5
1
婦人用スニーカーにおけるソール陸部の形状の違いが歩行動作に及ぼす影響
置座標は. W
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r(
19
8
0
) の方法により分析点
歩行における接地中の足部と床面との位置関係により,
の座標成分ごとに最適遮断周波数(1.
6
3~ 8.
13日z
) を決定
接地期を 3つの局面に分割し(図 4).腫が接地してから
し
.B
u
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h型ローパスデジタルフィルタを用いて平
つま先が接地するまでを接地局面,つま先が接地してから
滑化した座標軸は,被験者の左右方向を X軸(右方向
躍が離地するまでをフットフラット局面,そして腫が離地
が正).前後方向を Y軸(前方向が正).上下方向を Z軸
してからつま先が離地するまでを離地局面とした
(鉛直上向きを正)と定義した
なお,キャリブレーショ
ンに用いたポイントの妻女は 7
5点であり,キャリプレーショ
.
3
2
c
m
. Y方向が0
.
2
8
c
m
.Z
ンによる標準誤差は X方向が0
方向が0
.
3
7
c
mであった.
接地中
の足関節の動態として,接地局面とフットフラット局面に
おける足関節の角度変化量を算出した.
膝関節は,図 5に示すように,接地後に一旦屈曲し,身
体が前方に移動するに伴い伸展し,再び屈曲して離地に至
歩行動作の分析から,歩幅と下肢の各関節角度を求め
る
このような膝関節角度の推移を接地時から 1
)
頂に加重期
た歩幅は矢状面内での距離とし,歩幅を構成する要素を
屈曲量,立脚中期伸展量,離地前屈曲量として定義し算出
3つに分割,前方脚の大転子から腫までの水平距離を振り
した
出し距離,脚を前方に振り出すことによる両大転子聞の水
床反力は,測定された上下方向と前後方向の力を被験者
平距離,および後方脚の大転子からつま先までの水平距離
の体重で除した値とし,各方向の力積およびピーク値,接
を送り出し距離とした. したがって,歩幅は振り出し距離
地時間を求めた.
と両大転子間の水平距離および送り出し距離の合計となる
歩行では片脚支持と両脚支持が繰り返されることから,
(
図 2) また,下肢の関節角度として,足関節および膝関
片脚で身体を支持している期間を片脚支持期,両脚で身体
節の角度を算出した(図 3
).関節角度に関しては,矢状
を支持している期聞を両脚支持期とした(図 6
) また,
面上での角度を算出し分析に用いた.
床反力の前後成分が正から負に変わる時点までをブレーキ
局面,それ以降をキック局面としデータの分析を行った.
aのように,上下方向の床反力は二峰性の波形
さらに図 6
両大転子水平距離
を示す(柳田ら. 1
9
8
6
) ことが一般的であり,その極大値
を接地時点に近いものから順に,第一極大値,第二極大値
とした
ノ
戸、
一
、
戸
、
、
戸
、
¥
フットフラット局面
歩幅
図 2 歩幅の各区間の定義
図4 接地中の局面
λ!
LJλλ
180
。膝関節角度
F
①加重期屈曲量
4
制収同属医
図3 下肢関節角度
コ司
¥
nunu
唱ム司よ
回OU)
足関節角度
②立脚中期伸展量
。
。
③離地前屈曲量
90
0
.
2
0
.
4
0
.
6
時 刻(
5
)
図5 接地中の膝関節角度推移
52
(神国・前田)
算出項目に関するすべてのデータは,両脚分のデータを
3
.結 果
加算平均して l試 技 分 の デ ー タ と し そ の 上 で , ス ニ ー
0回分,計8
0試技分の
カー 1種類あたり 8名の被験者の各 1
3-1. 動作時間
平均値および標準偏差を算出し,各スニーカ一条件聞の比
各スニーカ一条件での接地時間を局面ごとに分割して図
7に示す目グラフでは,各局面の値の総和が接地時間を示
較を行った
条件聞の有意差の検定には,まず等分散の検定を行い,
している.各条件間で接地時間を比較すると,接地時間が
等分散が認められたものには Tukeyの多重比較検定を行
urveで あ っ た 各 局 面 の 時 間 に 着 目 す る
最も短いのは C
c
h
e
f
f
,巴のクラス
い,等分散が認められなかったものには S
と,接地局面の時間はいずれの条件聞にも有意な差は認め
なお,有意水準は 5%未満
urveが
られなかったが,フットフラット局面の時間は C
カル・ウォリス検定を行った
Normalや Highよ り も 有 意 に 短 か っ た ま た 離 地 局 面 の
とした.
ighよりも Curveが有意に長かった
時間は, Normalや H
両脚支持期
1
.
5
両脚支持期
~t
ホホ
0.6
(凶)
人
ムA
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¥
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Cu刊 e>H
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)
国
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Curve<H
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)
0
.
2
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n
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Curve
1
三
p<0
.
0
1
H
i
g
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Normal
図 7 接地期における各局面の維持時間
日五
4
ミ
低
時
。
3-2. 歩幅
各スニーカ一条件での歩幅を振り出し距離,両大転子水
。
5
o
0
.
2
0.4
0
.
6
時間(
5
)
平距離と送り出し距離に分割して図 8に示す.図 8では,
振り出し距離,両大転子水平距離および送り出し距離の総
①:第一極大値②:第二極大値
a
. 上下方向の床反力
和が歩幅を示すことになる.歩幅に関しては,いずれの条
件聞においても有意な差は認められなかったが,接地時
i
g
hや
の振り出し距離および離地時の送り出し距離は, H
Normalよりも Curveが有意に小さかった
0
.
3
両大転子水平
距離はいずれの条件聞にも有意な差は認められなかった.
n
u
(
呈
白
老 Z) h凶低
門
50
(EU)山漏出凶山一
0.
4
A斗 、 コ 内 ノ ﹄
0
.
2
E両大転子水平距離
nununU
0.
3
ー
口振り出し距離
E送り出し距離
Curve<H
i
g
h,
Normal(
p<0
.
0
1
)
0
.
6
時間 (
5
)
b
. 前後方向の床反力
図 6 歩行動作における各期および各局面
1
0
nonstg刊行 c
a
n
t
。
Curve
H
i
g
h
Normal
図8 歩幅における振り出し距離,両大転子水平距離,
および送り出し距離
3-3. 関節角度
接地時の膝関節角度を図 9に示す
いずれの条件におい
ても接地時の膝関節角度は約 1
7
5度となっており,スニー
カ一条件間で有意な差は認められなかった
53
婦人用スニーカーにおけるソール陸部の形状の遠いが歩行動作に及ぼす影響
接地中における膝関節の角度変化量を図 1
0に示す.接
180
地期における膝関節の屈曲量は,スニーカ一条件聞で有
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nunu
国由℃)回収短鹿山柏町
urveが H
i
g
hよりも約 5
意な差は認められないものの. C
度. N
ormalよりも約 3度,関節角度変化量が低値を示し
た立脚中期における膝関節の伸展量は,スニーカ一条件
urveの角度変化量
間で有意な差は認められないものの. C
i
g
hよりも約 6度. Normalより約 4度低値を示した
はH
150
C
u
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H
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g
h
N
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高
t
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地前における膝関節の屈曲量は,有意ではないものの
Curveが H
i
g
h
. Normalよりも約 5度角度変化量が低値を
図 9 接地時の膝関節角度
示した.
1に示す
接地時の足関節角度を図 1
接地時の足関節角
urveが有意に H
i
g
hよりも小さく,有意ではない
度は. C
30
(・凶由℃)一附喧臨寂刷
ormalより約 6度小さくなっていた
ものの N
このことは
C
u
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eが接地時に足関節を他の条件よりも背屈させて接地
20
していたことを示している
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白
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図1
0-1 加重期における膝関節屈曲量
円U
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Normal
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図1
1 接地時の足関節角度
10
ー
ー
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C
u
r
v
e
接地中の各局面における足関節の角度変化量を図 1
2に示
urveが
す 接地局面およびフットフラット局面ともに. C
H
i
g
h
Normal
図 10-2 立脚中期における膝関節伸展量
H
i
g
hや Normalよりも有意に小さい値を示した
離地局
面に関しては,角度変化量に有意な差は認められなかった
urveが他の条件よりも小さい値を示した
ものの. C
60
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国 ℃)酬笹回程認糧
ω
O
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<>フットフラット局面
・接地局面
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Normal
図 10-3 離地前における膝関節屈曲量
C
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H
i
g
h
Normal
図1
2 接地中における足関節の角度変化量
54
(神闘・前田)
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積を図 1
3に示す. Curveは Normalよりも有意に小さく,
nunu
接地から離地に至るまでの聞に上下方向に加えられた力
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(豆叩
3-4. 床反力
C
u
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図 13 接地中における上下方向の力積
H
i
g
h
N
o
r
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l
図1
5 接地局面における上下方向と前後方向に加えられた力積
接地から離地に至るまでの聞に前後方向に加えられた力
4に示す.同一
積をブレーキ成分とキック成分に分けて図 1
と正の値として示されるブレーキ成分は同程度の量となっ
ていた目
またスニーカ一条件間で比較すると,キック成
分では C
urveが Highや Normalよりも有意に小さく, ブ
レーキ成分では C
urveが Normalよりも有意に大きく,
1
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(EEhZ) F
個K
思l 掠
スニーカ一条件内では,負の値として示されるキック成分
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1
.1
1.
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図 16 上下方向の床反力の極大値
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巴がキック成分,ブレーキ成分ともに絶対量としては
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図14 接地中における前後方向の力積
4
.考
察
図 7および図 1
5より, Curveは他の条件と比較して接地
局.面の維持時間には有意な差が認められず,接地局面の力
積が高値を示したことから
Curveでは他の条件よりも接
接地局面における各方向の力積を図 1
5に示す. Curveで
地局面に大きな力を加えていることが分かる.接地局面に
は,接地局面の力積が上下,前後方向ともに有意に大き
おいて前方脚に大きな力を加えていることは,他のスニー
く,接地の早期から前方側の脚に加重していた.
カ一条件よりも早期に前方の脚に体重をかけていることを
上下方向の床反力についての極大値を図 1
6に示す.第一
示している.図 8より,各条件間で歩幅全体としては有意
極大値では, C
urveが Highよ り も 有 意 に 小 さ い 値 を 示
な差が認められなかった. しかし歩幅を構成要素ごとに
し,第二極大値では, C
urveが Normalや Highよりも有
みると, C
urveでは送り出し距離が大きく,振り出し距離
意に小さい値を示した
urveでは他の
が小さくなっていた.これらのことから, C
55
婦人用スニーカーにおけるソール腫部の形状の遠いが歩行動作に及ぼす影響
条件よりも前方に振り出した脚を身体重心の直下近くに接
た Curveでの歩行は,他の条件よりも足関節を背屈して
地して,後方脚で身体を送り出している歩行を行っている
いる時聞が短く,足関節を背屈させることなく歩行を行っ
ことが分かる
ていたことが分かる.さらに
このように歩幅を変えずに身体重心の直下
接地中の足関節と膝関節の
近くに接地し後方脚で大きく送り出す歩行を行うと,他
角度変化が小さくなっていたことから, Curveでの歩行動
の条件よりも接地時に身体が前方に移動することになる
作は足関節と膝関節を固定したような,下肢関節角度の変
このために, Curveでは他のスニーカー着用条件よりも早
化が少ない歩行を行っていたことが明らかとなった
期に前方脚に加重していたと考えられる目
l
)
究で用いたスニーカーのヒール高は,低いもの (Norma
本研
歩行動作中の膝関節角度に着目すると,図 9のように,
でも 42.3mmの高さであり,一般に市販されているスニー
いずれのスニーカ一条件聞においても接地時の膝関節角
カーよりも腫部が高くなっていた.瞳部を高くした履物を
0より,接
さらに図 1
着用すると,接地局面全般にわたり膝関節が裸足での歩行
度に有意な差は認められなかった
地中の膝関節角度の変化量については,有意差は認めら
より屈曲した状態となり
れないものの Curveはいずれの区間においても, Highと
0
1
1
)
. Curveではヒール高が
報告されている(伊藤ら, 2
Normalよりも低値を示した
45.5mmで Normalよりもやや高いにもかかわらず,膝関
このことから他の条件と比
膝関節痛の原因となることが
較すると僅かで、はあるものの, Curveでの歩行は接地中に
節角度変化が小さい動作になっていた
膝関節をあまり屈曲および伸展しない歩行動作を行ってい
0より接地中
のスニーカーよりも腫が高くなっており,図 1
たことが分かる.
の膝関節の伸展及び屈曲量は,わずかに大きくなってい
また, Highは他
2の是関節の接地中の角度変化量に着目すると,接地
図1
た.このことから,膝関節の屈曲及び伸展量は腫の高さに
局面とフットフラット局面において Curveの角度変化量が
よる影響を受けると考えられる.また,婦人用スニーカー
他の条件より有意に小さくなっていたー離地局面に関しで
のように腫部が高くても,ソールの腫部の角を落として丸
も,有意な差は認められないものの,他の条件よりも低値
くすることによって,歩行動作における膝関節痛の原因と
1より接地時の足関節角度は Curveが最も背
図1
なる余分な膝関節の屈曲が抑えられる可能性を示している
を示した
屈されていたこれらのことから, Curveでは接地中に足
と考えられる
関節をあまり底屈および背屈させずに,他の条件よりも背
屈した状態で、歩行動作を行っていることを示している.
5
.総 括
Highや Normalのように E
重が角日長っているスニーカー
を着用すると,接地直後に腫が支点となり足関節が底屈さ
れる
本研究では,腫部が高い婦人用スニーカーを対象に,腫
その後,フットフラット局面において身体を前方に
部がさらに高いだけのスニーカーおよび腫部の高さは同程
移動するに伴い足関節は背屈していき,離地局面において
度のままで形状が丸いスニーカーが,歩行動作に与える影
足関節を底屈させながら後方に蹴り出すようにして離地に
響を比較検討することを目的とした
至る.一方, Curveでは接地局面の足関節の角度変化が小
腫部が高いスニーカーを着用した場合と腫部がさらに高
2
).フットフラット局面では全条件
さくなっている(図 1
いスニーカーを着用した場合とを比較しでも歩行動作に著
において足底部が床面に接しているので,接地局面の角度
しい違いは認められなかったが腫部を丸く加工したス
変化が小さいことは,他の条件よりも接地時に床面に対し
ニーカーを着用した際には,歩行動作において以下のよう
てつま先が引き上げられていなかったことを示している.
な特徴がみられた
1より,接地時の足関節角度は Curveが最も小さく,
図1
①歩幅は他の形状のスニーカーと同程度であったが,振り
背屈した状態で接地していることから,接地時に床面に対
出し距離は減少し送り出し距離は増加しており,他の
してつま先が引き上げられていなかったことは,振り出し
形状のスニーカーよりも,身体の近くに接地し後方の脚
距離が他の条件よりも小さかったことが影響していると考
で身体を送り出して歩行していた
えられる.つまり,振り出し距離が短く身体の近くに脚を
②接地中の関節角度の変化量が減少し足関節と膝関節を
接地することによって,足関節を背屈させても床面に対し
固定したような歩行動作を行っていた
てつま先が上がることなく,接地局面の足関節角度変化量
従来の研究では腫部が高い履物を着用して歩行すると,
が低値を示したと考えられる. また,フットフラット局面
接地中の膝関節がより屈曲した状態となり,膝関節痛を引
の足関節角度変化量が減少した背景には,フットフラッ
き起こす一因となることが示されているが,本研究の結果
ト局面維持時間の減少が影響していると考えられる.図
によか腫部が高い履物であっても腫部を丸く加工したも
7より, Curveでは他の条件よりもフットフラット局面の
のとなっていれば,歩行中における余分な膝関節の屈曲を
時聞が短くなっており,より早期に離地局面に移行してい
抑制出来る可能性が示された
56
(神園・前田)
謝辞
本研究の一部は,兵庫体育・スポーツ科学学会平成 2
4年
度学術研究助成によって行われた.また,本研究で用いた
婦人用スニーカーは,株式会社 KEiKAコーポレーション
様よりご提供いただいたものである.
文献
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俊・林満彦・山崎一徳・今泉大地・森田良文・井上真郷
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11)ハイヒール歩行時の腫接地
立脚中期における
膝関節角度の変化,国立大学法人リハビリテーシヨン
コ・メデイカル学術大会誌, Vo
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垣原桂子・磯部真志・西脇剛史 (
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形状が歩行に及ぼす影響,日本機械学会 C
ンポジウム講演論文集, 2
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柳田泰義・吉田正樹・稲垣稔・中田雅子・沖山努・武富由
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) :健常者の歩行特性-3分力およびトルクに
よる個人差一,神戸大学医療技術短期大学部紀要,第2
巻
, 9
1
4
.