畜産環境保全の現状 1 概要 本県の畜産環境の保全については,家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律の 施行以来,関係者が一体となって取組を推進してきた結果,施設整備が進むなど一定程度の成果が 見られたところである。 しかしながら,悪臭や水質汚濁など畜産経営に起因する苦情は依然として散見され,また一方で, 近年の畜産経営の大規模化や偏在化により,地域によっては,生産されたたい肥が有効に活用され ず,耕種農家との連携強化が今後の重要な課題となっている。 このようなことから,将来にわたり本県畜産業が健全に発展していくためには,畜産経営に起因 する苦情等に適切に対応することはもちろん,家畜排せつ物の管理及び有効利用にあたって,県, 市町村,畜産農家,耕種農家,農業関係団体その他関係者が相互に連携を図り,畜産環境の保全の ための取組を推進して地域の環境と調和した畜産経営を実現することが求められている。 2 現況 (1) 家畜排せつ物の利用状況等(平成25年12月調査) 家畜排せつ物の年間発生量は約6,024千トンと推計されている。 そのうち約67%がたい肥化又は液肥化,約25%が浄化処理や産業廃棄物処理委託されており, 全体の約92%は適正な利用又は処理となっている。 一方,生利用による農地還元(約8%)や,依然として野積みによる不適正な保管(約0.03%) が見られ,改善に向けた取組が必要である。 (単位:千トン) 発 生 量 6,024 【100】 放 牧 (20) 【0.3】 浄化処理後放流(1,396)【23.2】 農業利用以外 (1,502) 【24.9】 舎 飼 (6,004) 【99.7】 ※【 】は,利用状況の割合である 農業利用量 (4,502) 【74.7】 焼却処理(73)【1.2】 海洋投入(0) 産廃処理委託 (33) 【0.5】 陸上処理(33) 【0.5】 減量化量 (589) たい肥化 【9.8】 液肥化仕向量 (4,016) たい肥・液肥量 【66.7】 (3,427)【56.9】 適正保管 (484)【8.0】 農地還元等 生利用量 (486) 【8.1】 ※ 野積み ( 2) 【0.03】 素掘り ( 0) 野積み・素掘りについて は,管理基準適用外農家 (2) 畜産経営に起因する苦情発生状況(H25.7.1~H26.6.30) 水質 汚濁 悪臭 発生 害虫 発生 水質 汚濁 と 悪臭 発生 26 2 0 2 11 2 43 15 4 2 6 10 5 42 0 0 0 1 9 0 10 4 0 0 0 1 0 5 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 0 3 0 0 0 0 0 0 0 33.6 32.8 7.8 3.9 0.0 2.3 0.0 事 項 畜種 豚 採卵鶏 ブロイラー 乳用牛 肉用牛 その他 計 (%) 水質 汚濁 と 害虫 発生 悪臭 発生 と 害虫 発生 水質 汚濁 と 悪臭 害虫 そ の 他 5 0 1 2 15 2 25 計 (%) 50 6 3 11 49 9 128 39.1 4.7 2.3 8.6 38.3 7.0 100.0 19.5 100.0 (3) 畜産農家に係る環境保全実態調査・巡回指導状況(H25.7.1~H26.6.30) 区 分 管内飼養戸数※ 管内飼養頭羽数※ 豚 採卵鶏 693 ブロイラー 乳用牛 244 肉用牛 ( 単位 : 戸 ) 計 馬 その他※ 539 230 10,451 76 12,233 1,353,943 12,289,748 27,920,906 16,035 331,021 791 41,912,444 巡回指導戸数 122 20 13 88 569 1 18 831 水質汚濁 28 2 0 1 11 0 1 43 悪 臭 14 4 2 6 11 0 5 42 衛生害虫 0 4 0 1 10 0 0 15 その他※ 12 4 1 2 31 0 2 52 計 54 14 3 10 63 0 8 152 改 善 指 導 ※「管内飼養戸数」及び「管内飼養頭羽数」は,畜有機調査(H25.12.1時点)のデータ(「その他」は未集計) ※「区分」の「その他」は,耕種農家など ※「改善指導」の「その他」は,家畜排せつ物の流出,騒音,粉じん,不法投棄,素掘り跡など 3 関係法令等 (1) 家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律(H11.7.28法律第112号) (2) 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(S45.12.25法律第137号) (3) 水質汚濁防止法(S45.12.25法律第138号) (4) 悪臭防止法(S46.6.1法律第91号) (5) 鹿児島県公害防止条例(S46.10.15条例第41号) 以上のほか,鹿児島県環境影響評価条例などがある。 (参 考) 家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律の概要 (H11.7.28法律第112号) 1 家畜排せつ物の管理の適正化(H16.11完全施行) (1) 管理基準(規則第1条) 施設の構造及び家畜排せつ物の管理の方法に関する基準が定められた。 これにより,いわゆる「野積み」,「素掘り」は禁止となったが,当面は簡易対応として堆肥盤 と上屋(防水シートでも可)の設置による流出防止や,防水シート張りによる地下浸透防止でも よいこととされた。(具体的な基準は次ページ参照) (2) 管理基準適用農家 牛・馬10頭以上,豚100頭以上,鶏2,000羽以上を飼養する畜産農家 (3) 県の役割 畜産農家に対する指導及び助言(法第4条),勧告及び命令(法第5条),報告の徴収及び立入 検査(法第6条) (4) 畜産業者の義務等 管理基準の遵守 なお,管理基準遵守命令に従わなかった場合,罰則が適用されることがある。 ・ 都道府県知事の行った命令に対する違反(50万円以下の罰金) ・ 報告義務違反(虚偽の報告を含む)及び立入検査の拒否・妨害・忌避(20万円以下の罰金) ※ 家畜排せつ物の不法投棄や排水基準の不適合等には,廃棄物処理法や水質汚濁防止法など 各環境関係法令の規制が適用される。 2 家畜排せつ物の利用の促進 (1) 国の役割 基本方針の策定,研究開発の推進など (2) 県の役割 県計画の策定,研究開発の推進及び処理高度化施設整備計画の認定など (3) 畜産業者に対する支援措置 ア 融資支援措置 ・ 処理高度化施設整備計画の認定申請 ・ 計画に基づく施設・装置の取得費,リース料の全額一括払い,法人設立の出資金等につき, 農林漁業金融公庫等が長期かつ低利な資金を融通する。 イ 固定資産税の課税標準の特例措置 家畜排せつ物の堆肥化施設等を取得した場合の課税標準について,一定の軽減措置が設けら れた。 ・ 堆肥化施設(発酵施設)に関する軽減措置は,平成24年4月31日まで実施。 ・ 汚水処理施設に関する軽減措置は,平成28年3月31日まで実施。 (参 考) 鹿児島県における家畜排せつ物の利用の促進を図るための計画概要 近年,畜産経営が大規模化し,一部地域への偏在が顕著となった結果,生産した堆肥をいかに有効 に活用していくかが課題となっている。 還元用農地の不足や高齢化に伴う散布労力の不足など地域の課題に適切に対応し,県,市町村,農 業関係団体等の関係者が一体となって,一層の家畜排せつ物の利用の促進を図る。 1 家畜排せつ物の利用の目標 平成27年度を目標年度として次の取組を実施。 (1) 耕畜連携の強化 ア 地域における堆肥の需給情報の収集・整理及びネットワーク化の推進 イ 堆肥散布受託組織(コントラクター)の育成及び集落営農組織の活用 (2) ニーズに即した堆肥づくり ア 県良質堆肥生産利用推進協議会による良質堆肥の生産技術の普及・啓発 イ 耕種農家等のニーズ(肥料効果,腐塾度,需要時期,価格,取扱性等)の的確な把握及び堆 肥生産技術の向上と安定供給 ウ 県,市町村,農業関係団体等による必要な情報の提供 (3) 家畜排せつ物のエネルギーとしての利用等の推進 家畜排せつ物がその需要量を超えて過剰に発生している地域等においては,炭化・焼却やメタ ン発酵等の高度利用施設の導入の促進 ○ 目標年度における家畜排せつ物排出量の予測及び利用量の目標は次のとおり (H22) ■総 2 排 出 (H27) 量 6,008千t → 6,214千t ■農 業 利 用 量 4,520千t → 4,676千t ■生 利 用 量 率 11.4 % → 3.6 % ■適正処理仕向量率 88.3 % → 96.0 % 整備を行う処理高度化施設の内容その他の処理高度化施設の整備に関する目標 地域の実情に応じて家畜排せつ物の処理の集約化や処理機能の高度化を図り,攪拌装置等を備え た大型の堆肥化施設,家畜排せつ物のエネルギー利用施設等の導入を促進する。 3 家畜排せつ物の利用の促進に関する技術の研修の実施,その他の技術の向上に関する事項 県農業開発総合センターにおける技術開発及び家畜保健衛生所や地域振興局・支庁,市町村,農 業関係団体等の指導体制の整備,畜産農家及び耕種農家の技術習得に努める。 4 その他家畜排せつ物の利用の促進に関し必要な事項 耕畜連携の強化による資源循環型畜産の推進や,畜産体験学習等の積極的な推進による消費者等 への理解の醸成を図る。
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