プロダクトインフォメーション:MICROSAR

プロダクトインフォメーション:
MICROSAR
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目次
1
MICROSAR - ベクターの AUTOSAR ECU ソフトウェア用ソリューション ................................................................... 3
2
MICROSAR.OS – AUTOSAR 仕様に対応したリアルタイムオペレーティングシステム ............................................. 10
3
MICROSAR.COM – 通信用 AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュール ............................................................. 14
4
5
MICROSAR.CAN – CAN 通信用 AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュール........................................................ 17
MICROSAR.FR – FlexRay 通信用 AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュール ..................................................... 20
6
MICROSAR.LIN – LIN 通信用 AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュール ......................................................... 23
7
8
MICROSAR.ETH – Ethernet 通信用 AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュール .................................................. 26
MICROSAR.V2G – 外部インフラ通信用 AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュール ............................................ 30
9
MICROSAR.AVB – Ethernet 経由のオーディオ/ビデオ用のベーシックソフトウェアモジュール ............................... 33
10
MICROSAR.MEM –メモリー管理用 AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュール .................................................. 36
11
12
MICROSAR.SYS – AUTOSAR 用のシステム関連のベーシックソフトウェアモジュール ............................................ 39
MICROSAR.DIAG – AUTOSAR に対応した UDS プロトコルの実装....................................................................... 43
13
MICROSAR.MCAL –マイクロコントローラー周辺機能制御用 AUTOSAR ドライバー ............................................... 49
14
MICROSAR.EXT – 外付デバイス制御用の AUTOSAR ドライバー ....................................................................... 53
15
16
MICROSAR.IO – AUTOSAR デジタル I/O ハードウェアの抽象化........................................................................ 56
MICROSAR.RTE - AUTOSAR 仕様に対応したソフトウェアコンポーネント用に最適なランタイム環境 ........................ 58
17
MICROSAR.AMD – AUTOSAR のモニターおよびデバッグ ................................................................................. 62
18
MICROSAR Safe – ISO 26262 ASIL D までに準拠した機能安全 ECU 対応 ........................................................... 66
19
20
MICROSAR Security –AUTOSAR ECU のためのアクセスセキュリティー ............................................................... 70
MICROSAR Multi-Core – マルチコアプロセッサー用の AUTOSAR ソリューション .................................................. 74
21
MICROSAR バリアントハンドリング – AUTOSAR の柔軟なコンフィギュレーションのためのソリューション ................. 77
22
MICROSAR.J1939 – 大型車両専用の AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュール ............................................. 81
23
24
AUTOSAR Evaluation Bundle – AUTOSAR ベーシックソフトウェアおよびツールの評価用総合パッケージ ................. 84
その他の情報 ...................................................................................................................................... 88
発行元: ベクター・ジャパン株式会社
www.vector-japan.co.jp
※記述されている内容は予告無く変更されることがあります。( 発行日:2015 年 4 月 9 日)
© 2015 Vector Japan Co., Ltd
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1
MICROSAR - ベクターの AUTOSAR ECU ソフトウェア用ソリューション
MICROSAR は、ECU ソフトウェア用の AUTOSAR ソリューションです。MICROSAR は、MICROSAR.RTE および
MICROSAR ベーシックソフトウェアモジュール (BSW) で構成されており、AUTOSAR 仕様のあらゆる面をカバーし、多く
の拡張機能を備えています。AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュールにはそれぞれ、MICROSAR パッケージが 1
つずつ割り当てられています。各パッケージおよび MICROSAR.RTE についての詳細を以下にご説明していきます。ベ
クターでは、個々の「ソフトウェア統合パッケージ (SIP)」に必要なベーシックソフトウェアモジュールを組み合わせてご提
供しています。
提供可能な MICROSAR パッケージの一覧
1.1
図 1:AUTOSAR 4.2 仕様の全モジュールが含まれている MICROSAR パッケージ
>
MICROSAR.AMD – アプリケーションと MICROSAR ベーシックソフトウェアのモニターおよびデバッグ
>
MICROSAR.AVB – Ethernet 経由の音声/動画通信用ベーシックソフトウェアモジュール
>
MICROSAR.MCAL – マイクロコントローラーの周辺機能操作用 AUTOSAR ドライバー
>
MICROSAR.CAN – CAN 通信用 AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュール
>
MICROSAR.COM –ネットワークに依存しない通信およびゲートウェイ用 AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジ
ュール
>
MICROSAR.EXT – 外付デバイス制御用 AUTOSAR ドライバー
>
MICROSAR.FR – FlexRay 通信用 AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュール
>
MICROSAR.DIAG – 診断用 AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュール
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>
MICROSAR.IO – マイクロコントローラーの周辺機能とそのアプリケーション間のインターフェイス
>
MICROSAR.ETH –Ethernet 通信用 AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュール
>
MICROSAR.LIBS – AUTOSAR ライブラリー
>
MICROSAR.LIN – LIN 通信用 AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュール
>
MICROSAR.MEM – 不揮発性メモリー管理用 AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュール
>
MICROSAR.OS – AUTOSAR 仕様に対応したリアルタイムオペレーティングシステム
>
MICROSAR.RTE – AUTOSAR 仕様に対応したソフトウェアコンポーネント用に最適なランタイム環境
>
MICROSAR Safe – ECU ソフトウェア用の ISO 26262 準拠の ASIL D まで対応可能な機能安全メカニズム
>
MICROSAR.SYS – AUTOSAR ECU 用のシステム関連のベーシックソフトウェアモジュール
>
MICROSAR.V2G – 外部インフラとの通信用ベーシックソフトウェアモジュール
>
XCP – XCP (Ethernet、FlexRay、CAN のトランスポートレイヤー含む) を使用した AUTOSAR ECU の測定と
適合
応用分野
1.2
MICROSAR パッケージに含まれるベーシックソフトウェアモジュールは、ECU の基本機能を提供しています。モジュール
には、アプリケーションソフトウェアに必要な AUTOSAR の標準サービスが実装されています。AUTOSAR アーキテクチ
ャーは、ハードウェア抽象化という方針に一貫して従っているので、ユーザーは機能ソフトウェアプラットフォームを自由に
開発することができます。
MICROSAR.OS や MICROSAR MCAL パッケージに含まれるモジュールはハードウェア依存型です。これらのモジュー
ルについてベクターでは、数多くのさまざまなハードウェアプラットフォームおよびコンパイラー用のモジュールを提供して
いるので、コントローラーデバイスの置換などもスピーディーに実施できます。オペレーティングシステムの
MICROSAR.OS は、シングルコアにもマルチコアプロセッサーにも利用できます。ベクターでは、自動車メーカーとの連
携から得られる経験に基づき、診断モジュールをはじめとする自動車メーカー固有のベーシックソフトウェアモジュールや
拡張機能を数多く提供しています。
必要な MICROSAR ベーシックソフトウェアモジュールはすべて、お客様のプロジェクト要件に基づいて設定でき、作成後、
モジュールをアプリケーションソフトウェアと統合することができます。このようにして、ECU ソフトウェア一式が完成します。
機能ソフトウェアが AUTOSAR 対応ソフトウェアコンポーネントで構成されている場合は、ランタイム環境 (RTE) が必要
になります。MICROSAR.RTE は、ソフトウェアコンポーネント間の通信や、ベーシックソフトウェアモジュールのデータや
サービスへのアクセスを取り扱います。また、MICROSAR.RTE はイベントと情報のフロー全体を制御するのに加え、情
報交換の整合性を保証し、コア間またはメモリー保護領域のアクセス制御も行います。
ソフトウェアコンポーネントによるアーキテクチャーを持たない、すなわち RTE もない ECU プロジェクトは、ベクターの
BRE (Basic Runtime Environment) によりオプションでサポートされます。BRE は設定可能なベーシックソフトウェアの
スケジュール機能やクリティカルセクションを管理する機能を提供するほか、通常は RTE が作成する、サービスレイヤー
のベーシックソフトウェアモジュールのための型定義を作成するなどして統合を容易にします。そのため、RTE を使用して
いない AUTOSAR 4 ベースのプロジェクトの構築作業が加速および簡素化します。
特徴
1.3
MICROSAR ベーシックソフトウェアモジュールの開発は、SPICE をベースとしたベクターの標準モジュール開発プロセス
を基礎としています。MICROSAR パッケージはいずれも以下の機能を提供しています。
>
優れたメモリー利用効率、短い実行時間
>
量産車に使用可能
>
AUTOSAR Release 4.x と 3.x に対応
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>
ベーシックソフトウェアの設定で整合性を保てるよう支援、タイムリーなチェックも実施
>
お客様独自のアプリケーションに合わせた高い拡張性と対応性
>
お客様の開発プロセスに最適な形で統合
>
ECU のテストおよび解析のための AUTOSAR モニター
>
Configuration Variant はユーザーが選択可能 (Pre-Compile Time、Link-Time、Post-Build Time)
>
マルチプル ECU をサポート
>
ソースコードでの提供 (オプション)
>
MICROSAR Safe と共に用いれば、安全関連機能 (ISO 26262) に最適
量産車での使用
1.4
MICROSAR ベーシックソフトウェアモジュールはすでに量産プロジェクトで利用されています。MICROSAR には、標準
組込ソフトウェア実装に関するベクターの長年にわたる経験が生かされています。MICROSAR ソフトウェアモジュールに
対しては、すべて納品前に、お客様アプリケーション固有の条件 (ハードウェアプラットフォーム、コンパイラー、プロセッサ
ーデバイス、自動車メーカー、RTE の有無など) に合わせて体系的な統合テストを実施しています。ご要望に応じ、テスト
対象をサードパーティー製のソフトウェアモジュール (MCAL ドライバーなど) にまで広げることも可能です。
AUTOSAR Release 4.x と 3.x に対応
1.5
AUTOSAR 4.x と 3.x のどちらを使用するかに関わらず、お客様はベーシックソフトウェア全体を、ベクターという 1 つの
供給元から調達できます。プロジェクトを移行しても、AUTOSAR 4.x と 3.x の両方に共通する以下のような開発ワークフ
ローを利用できます。
>
設定ツールの DaVinci Developer と DaVinci Configurator Pro は両方のリリースに対応しています。そのため、
ツールを変更する必要はありません。
>
異なる AUTOSAR リリースの MCAL ドライバーを、MICROSAR に組み込むことができます。
AUTOSAR 3 から 4 に移行する場合、ベクターはお客様が AUTOSAR 4.x 規格で変更されたインターフェイスに合わせ
てアプリケーションソフトウェアを修正する際のサポートを行います。
MICROSAR には他にも、AUTOSAR 4.x で規定されている機能が、AUTOSAR 3.x 用ベーシックソフトウェアモジュール
の拡張機能の形で多数用意されているという強みがあります。たとえばマルチコアオペレーティングシステムのほか、
J1939、XCP、Ethernet/IP などもすでに AUTOSAR 3.x でサポート可能となっています。MICROSAR.MOST バンドル
はベクターがこの規格を補うために提供しているもので、AUTOSAR 4.x および AUTOSAR 3.x と互換性があります。
1.6
一貫性のあるシンプルな設定
AUTOSAR では、ECU ソフトウェア基本機能の開発や適合を手作業ではなく、ベーシックソフトウェアモジュールの設定
で行うことになっています。この設定作業では、直感的で使いやすいベクターの AUTOSAR ツール (DaVinci) が役に立
ちます。DaVinci ツールのマルチユーザーサポートにより、複数ユーザーで 1 つのプロジェクトを同時作業することが可
能です。DaVinci ツールでは、入力に「ECU Extract of System Description」ファイルが必要です。一般に使用されてい
るネットワーク記述ファイル (DBC、FIBEX、LDF など) をベースにして設定を作成することも可能です。
設定プロセスの初期段階では、DaVinci の各ツールが個々のパラメーター、複雑なパラメーターグループ、またそれらの
相互関係の妥当性を確認します。不正な設定があった場合、可能であれば、ツールが修正を提案します。AUTOSAR 手
法をこのように広く用いることで、ベーシックソフトウェアの ECU への統合が簡素化され、統合に要する時間が短縮でき
ます。
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DaVinci ツールは RTE とベーシックソフトウェアモジュールの最適な設定を支援します。たとえばボトムアップ方式のプロ
セスでは、BSW コンフィギュレーションに適合するソフトウェアコンポーネントのサービスポート (ランナブルを含む) が自
動的に生成されます。このような自動処理により、頻繁に発生し、手作業では間違いやすい作業から開発者が解放され
て、時間とコストを節約できます。
図 2:DaVinci Configurator Pro でベーシックソフトウェアモジュールおよび RTE を設定
図 3:機能ソフトウェア (SWCs) は DaVinci Developer で定義
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スケーラビリティー
1.7
MICROSAR ベーシックソフトウェアモジュールは AUTOSAR 要件を満たしているだけではなく、数多くの機能拡張も実
現します。設定オプションを拡張することで、不要な機能を停止し、アプリケーションに合わせて MICROSAR コードを最
適化することができます。このような拡張性がある MICROSAR モジュールは、小規模のアプリケーションにも複雑なアプ
リケーションにも最適なソリューションだと言えます。MICROSAR はすでに、ステアリング角センサーやドア ECU、エンジ
ン ECU、セントラルゲートウェイといったさまざまな ECU で実装されています。また、MICROSAR は Linux や QNX など
のほかのオペレーティングシステムで使用することも可能です。
AUTOSAR のモニターおよびデバッグ (AMD:AUTOSAR Monitoring and Debugging)
1.8
AMD パッケージは、重要なステータス情報や結果を CANape や CANoe.AMD などのツールに送信し、それによってベ
ーシックソフトウェアやアプリケーション機能のテストと解析を簡素化します。また、AMD を使用して、ベーシックソフトウェ
アやアプリケーション機能の実行時間を測定することもできます。詳しくは、MICROSAR.AMD のセクションをご覧くださ
い。
ユーザーが選択できる BSW 設定時点
1.9
すべての MICROSAR ベーシックソフトウェアモジュール用の設定時点はユーザーが選択することができます。各モジュ
ールに関して、設定時点としては、Pre-Compile、Link-Time、Post-Build から選択可能です。
1.10 ECU バリアントおよび BSW コンフィギュレーションのリロード
AUTOSAR ECU の物流コストを減らすため、MICROSAR モジュールには Identity Manager オプションが付属していま
す。このオプションを使用すれば、複数のコンフィギュレーション (左右のドアなど) を 1 つの ECU に格納することが可能
になります。それによって同一の ECU を 1 つのシリーズのモデル内に、あるいは異なるシリーズのモデルに設置して、
複数の機能を実現できます。
ベーシックソフトウェアの「Post-Build Loadable」オプションを使用すると、BSW コンフィギュレーションの多数のパラメー
ターを後から、ECU ソフトウェアを再コンパイルせずに修正できます。たとえば、ECU のビルド環境がなくても、またサプ
ライヤーに新しい ECU バリアントの作成を依頼しなくても、ルーティングテーブルや送信タイプを修正したり、拡張したり
できます。
詳しくは、「MICROSAR バリアントハンドリング」のセクションをご覧ください。
1.11 ISO 26262 に準拠した機能安全:MICROSAR Safe
MICROSAR ベーシックソフトウェアを安全関連機能に使用できるよう、ベクターは TTTech Automotive と協力して、
AUTOSAR ECU のためのトータルなソリューションを提供しています。詳しくは、MICROSAR Safe の章をご覧ください。
1.12 製品に含まれるもの
以下のものが製品に同梱されています。
>
ソフトウェアモジュール
>
コマンドラインベースのジェネレーター (Windows XP/Windows 7 用)
>
ベーシックソフトウェアモジュールディスクリプション
>
マニュアル類
追 加 ま た は 代 替 の コ ン ポ ー ネ ン ト を 、 モ ジ ュ ー ル 別 に 以 下 に 示 し ま す 。 設 定 に は 、 快 適 に 操 作 で き る DaVinci
Configurator Pro のご利用を推奨します。詳しくは、ベクターまでお問い合わせください。
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7
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
1.13 ソースコードの提供 (オプション)
ご要望に応じて、MICROSAR モジュールをソースコードで提供することもできます。ソースコードの場合、プリコンパイル
による最適化やテストの簡素化が可能です。
1.14 ライセンスおよび保守
ベクターは、お客様のご要望に合わせて個々にカスタマイズした柔軟なライセンスを提供します。保守契約の一環として
ソフトウェアの更新を提供し、常に最新レベルを保てるようにします。
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1.15 その他のサービス
>
システム設計に関するコンサルティング
>
お客様のご希望に合わせた MICROSAR ベーシックソフトウェアモジュールの拡張
>
お客様固有のソフトウェアコンポーネント (SWC) の開発
>
既存の機能ソフトウェアの適合作業をサポート
>
ECU へのソフトウェア統合 (サードパーティー製ソフトウェアを含む)
>
既存ソフトウェアの AUTOSAR ベースコンセプトへの移行
>
組込ソフトウェアと AUTOSAR に関するホットラインサポート、トレーニングコース
1.16 ベクターの AUTOSAR ソリューション
ベクターの AUTOSAR ソリューションは、DaVinci ツール、MICROSAR ベーシックソフトウェア、MICROSAR.RTE から
構成されています。MICROSAR パッケージに含まれるベーシックソフトウェアモジュールの一般的な特性については、以
下の章で説明します。各 DaVinci ツールの機能的な特性については、それぞれのプロダクトインフォメーションをご覧くだ
さい。
1.17 お問い合わせ
MICROSAR ベーシックソフトウェアモジュールは、一般に広く使用されている各種マイクロコントローラーや、自動車メー
カー固有のバリアントでも使用できます。詳しい情報は www.vector-japan.co.jp/vj_availability_microsar_jp.html をご
覧いただくか、ベクター ([email protected]) までお問い合わせください。
1.18 トレーニング
ベクターでは、AUTOSAR に関するトレーニングを開催しております。また、規模やご要望に応じて、お客様ご指定の場
所でのオンサイトトレーニングも実施しております。
ベクターのトレーニングについての詳細は、Web サイトにてご覧ください (www.vector-japan.co.jp/training_schedule)。
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2
MICROSAR.OS – AUTOSAR 仕様に対応したリアルタイムオペレーティングシステム
MICROSAR OS は、マイコン上での利用を目的として設計された、プリエンプティブなリアルタイムマルチタスクオペレー
ティングシステムです。各種マイコン用 OS およびドライバーの開発におけるベクターの長年の経験を生かし、コンパクト
で堅牢な OS コアを実現しました。
図 4:AUTOSAR 4.2 対応の MICROSAR OS モジュール
機能概要
2.1
2.2
>
小型で高速なリソース効率の良いオペレーティングシステム
>
短いブート時間
>
MICROSAR.OS は AUTOSAR 4.x および 3.x に対応
>
オプション:マルチコアオペレーティングシステムに対応
>
オプション:ISO26262/ASIL-D に準拠した安全なコンテキスト切替
>
SPICE レベル 3 の品質プロセス
>
設定が簡単に行えるグラフィカルな設定ツール
>
8 ビット、16 ビット、32 ビットおよび 64 ビットなど、多くのマイコンに使用可能
特徴
MICROSAR OS は、実績のある OSEK/VDX-OS オペレーティングシステム標準を拡張した、AUTOSAR OS 仕様に基
づいています。この標準をもとに、時間監視、メモリー保護、ネットワークの分散アプリケーションをサポートするための機
能が追加されています。
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10
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ベクターの MICROSAR OS は、AUTOSAR OS 仕様に完全対応しており、すべてのスケーラビリティークラスに対応が
可能です。
>
SC1:OSEK/VDX-OS 標準に対応して実装され、さらにスケジュールテーブルが追加された、リアルタイムオペ
レーティングシステム
>
SC2:個々のタスクおよび割込サービスルーチンの時間同期および時間動作のモニターを行う、リアルタイムオ
ペレーティングシステム
>
SC3:マイコンのハードウェア機能を利用したメモリー保護機能を持つ、リアルタイムオペレーティングシステム
>
SC4:SC2 と SC3 を組み合わせた内容
オプションの拡張機能
2.3
2.3.1
グローバルシステムタイムへの同期
スケジュールテーブルは、グローバルシステムタイム (FlexRay バスを介して送信された時間など) に同期させることがで
きます。これによって、分散システム内でのタスクの同期や同時実行が可能です。
2.3.2
メモリー保護 (SC3、SC4)
メモリー領域を保護することにより、他のアプリケーションのデータを破壊することなく、より簡単、確実にアプリケーション
を統合することができます。
2.3.3
タイミング保護 (SC2、SC4)
タイミング保護により、初期設計段階で想定された実行時間の上限を、実行時にも、超過のモニターという形で保証する
ことができます。その結果、あるアプリケーションセクションに不具合が生じたときに、他の実行中のプロセスにおける実
行時間に悪影響を及ぼさないようにします。
2.3.4
実行時間の測定 (SC2、SC4)
スケーラビリティークラス SC2 および SC4 の機能を使用して、アプリケーションの実行時間と割込禁止時間を測定するこ
とが可能です。測定したデータは、後日、将来のアプリケーションを設計して統合する際に、実際の測定値として活用する
ことができます。
2.3.5
High Resolution Timer
High Resolution Timer メカニズムを利用することで、割込負荷を上げることなく 1ms よりも短い時間分解能が可能にな
ります。コントローラーによっては、マイクロ秒単位に設定することができます。
ISO 26262 に準拠したアプリケーションのためのオペレーティングシステム
2.4
ISO 26262 に準拠した安全関連のアプリケーション向けに、ASIL D に即して開発されたベクターのオペレーティングシス
テムのバリアント、MICROSAR.OS SafeContext が用意されています。これは AUTOSAR の Scalability Class のうち
SC3 と SC4 に基づいており、メモリー保護と安全なコンテキスト切替を担当します。メモリー保護における「Freedom
from interference (無干渉)」を維持するには、メモリー保護ユニット (MPU) などを備えた適切なプロセッサーが必要です。
MICROSAR.OS SafeContext は、同じ CPU 上で安全関連アプリケーションのコンポーネントと標準のコンポーネントを
併用する場合に使用できます。
MICROSAR.OS SafeContext に含まれるもの:
>
OS コアのソースコード
>
Windows 7/Windows XP 用のグラフィカルな設定ツール
>
コマンドラインベースのジェネレーター
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>
ベーシックソフトウェアモジュールディスクリプション
>
DaVinci Configurator Pro 用ディスクリプションファイル
>
マニュアル類
>
リードバックツール
>
安全マニュアル
ベクターの安全関連ソリューションについて詳しくは、MICROSAR Safe の章を別途ご覧ください。
2.5
マルチコアオペレーティングシステム
MICROSAR.OS Multi-Core は、ベクターの実績あるリアルタイムオペレーティングシステム、MICROSAR.OS の高度な
発展形です。AUTOSAR 仕様に従ってマルチコアシステムを開発するのであれば、いつでもこれを使用できます。
MICROSAR.OS Multi-Core は AUTOSAR 仕様 4.x に基づいていますが、AUTOSAR 3.x のプロジェクトにも使用でき
ます。
マルチコアオペレーティングシステムの機能
2.5.1
マルチコアオペレーティングシステムでは、複数のプロセッサーコアのそれぞれに個別の AUTOSAR オペレーティングシ
ステムのインスタンスをロードし、それらを並行に、しかも独立して動作させることが可能です。したがって、そのコンフィギ
ュレーションとシステムサービスは、シングルコアのオペレーティングシステムのものと一致し、SC2 から SC4 に対応する
拡張機能と、High Resolution Timer 機能が利用できます。MICROSAR.OS Multi-Core はさらに、異なるコア上で実行
されているタスクを制御および同期するメカニズムも備えています。
2.5.1.1
起動の同期
オペレーティングシステムは、関連付けられているアプリケーションが起動する前に、すべてのコアを起動し、初期化する
ことを保証します。
2.5.1.2
コア間の調停
異なるコア上のプロセスは、タスクのアクティベーション、イベントの設定、アラームの開始と停止、スケジュールテーブル
のいずれかによって同期されます。
2.5.1.3
共有リソースへのアクセス
共有されるリソースに異なるコアがアクセスする場合に備えて、オペレーティングシステムにはスピンロックという調停のメ
カニズムが用意されています。
2.5.1.4
コア間通信
2 コア間でのデータ交換の整合性を保つため、オペレーティングシステムは Inter-OS Application Communicator (IOC)
の形で効率的なインターフェイスを提供します。
2.6
グラフィカルな設定および生成ツール
設定には、快適に操作できる DaVinci Configurator Pro のご利用を推奨します。これには、整合性チェックとジェネレー
ター呼出機能が装備されています。ジェネレーターはコマンドラインツールとして実装されており、自動開発環境への統合
が可能となっています。
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プロダクトインフォメーション:MICROSAR
製品に含まれるもの
2.7
MICROSAR.OS には、以下のものが含まれます。
>
OS コアのソースコード
>
グラフィック設定/生成ツール (Windows XP/7 対応)
>
Basic editor として DaVinci Configurator Base
>
コマンドラインベースのジェネレーター
>
ベーシックソフトウェアモジュールディスクリプション
>
マニュアル類
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3
MICROSAR.COM – 通信用 AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュール
MICROSAR COM のベーシックソフトウェアモジュールには、ECU 通信用の AUTOSAR サービスが含まれています。こ
れらのサービスは、通信チャンネルをいくつでもサポートできるようになっています。バスの種類に依存せず、あらゆる通
信スタックで必要とされるサービスです。AUTOSAR アーキテクチャーに基づき、CAN、CAN-FD、J1939、FR、LIN、
ETH.といった、バス固有の通信モジュールの ECU ソフトウェアの制御と完全統合を担っています。
図 5:AUTOSAR 4.2 対応の MICROSAR.COM モジュール
機能概要
3.1
3.2
>
アプリケーションに合った設定でコードや実行時間を最適化
>
AUTOSAR Release 4.x と 3.x に対応
>
AUTOSAR 仕様の枠を越えた便利な拡張機能を多数搭載 (「機能」の章を参照)
>
NM コーディネーターに関するサポートを拡張 (「機能」の章を参照)
>
NM モジュール:OSEK NM との互換性は設定可能
>
NM 移行プロジェクトにおける AUTOSAR NM および OSEK NM の同時運用をサポート
>
関数マクロによりシグナルアクセスの効率を向上 (AUTOSAR 3 対応)
応用分野
MICROSAR COM を使用することで、バスに全く依存しない手法で機能ソフトウェアを開発することができます。メッセー
ジ送信やバス間ネットワークの管理業務で必要なタスクはすべて、MICROSAR COM に含まれているベーシックソフトウ
ェアモジュールの COM、NM、PDUR、IPDUM によって処理されます (モジュールは設定可能)。
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プロダクトインフォメーション:MICROSAR
ゲートウェイ ECU については、追加のソフトウェアはいりません。シグナルおよび TP のルーティングや、アプリケーショ
ンメッセージのルーティングは MICROSAR COM に含まれるベーシックソフトウェアモジュールの COM および PDUR
が行います。
機能
3.3
MICROSAR COM のベーシックソフトウェアモジュールには AUTOSAR 4.x で定義されている機能が含まれています。
>
COM モジュールのサービスは、メッセージの送信タイプ (サイクリック、イベントトリガーなど) に基づき、メッセー
ジ送信を管理します。主なタスクは、バスに依存しないアプリケーションシグナルを PDU に実装することです。
>
PDU Router (PDUR) は PDU をバス固有の AUTOSAR 通信モジュールに配信し、モジュールが情報を送信で
きるようにします。逆方向においては、PDUR は PDU を受信すると、その PDU を NM、COM、DCM いずれか
のモジュールの該当サービスへ、あるいは別のネットワーク (ゲートウェイ) へとルーティングします。
MICROSAR モジュールの CDD により、TP および IF PDU を以下のように COM スタックに統合できます。
> PDU Router の上または下
> 通信インターフェイスの上
>
Network Management Interface (NM) は、ECU の通信チャンネルすべてのバス間ネットワーク管理機能を提
供します。また、NM コーディネーターとして、通信チャンネルのウェイクアップとスリープの同期を実行します。
>
オプションとして、ECU ソフトウェアの通信スタックで IPDUM (I-PDU Multiplexer) を使用することもできます。
IPDUM は、フレームに対してデータの割付を多重化し、複数の用途で使用できるようにします。これは従来のバ
スシステムの場合は静的なコンフィギュレーションを通じて、あるいは CAN-FD の場合は動的なデータコンテン
ツのマッピングを通じて行われます。
>
LDCOM:大容量のシグナルをネットワーク上で効率的に伝送できるようにします。LDCOM は通常、以下のいず
れかのトランスフォーマーと一緒に使用されます。
COMXF:多数のシグナルから構成された効率的なシグナルグループを使用できます。配置は Extract
of System Description から導出されます。
SOMEIPXF:さまざまなデータタイプに応じたシリアル化の手順を提供します。
E2EXF:AUTOSAR のトランスフォーマーのコンセプト (COMXF または SOMEIPXF によるシリアル化)
を使用して管理されるネットワーク通信を、エンドツーエンドで保護します。
>
SecOC:SecOC (Secured OnBoard Communication) について詳しくは、「MICROSAR.Security」の章を参照
してください。
MICROSAR.COM のベーシックソフトウェアモジュールには他に、以下の機能も備わっています。
>
COM:Rx 信号タイムアウト時の TX 信号の無効宣言
>
COM、PDUR と IPDUM:プリコンパイルおよび Post-build loadable による最適化 (余剰データの検出および除
去など)
>
NM:複数の異なる NM コーディネーターによる、複数ネットワークのスリープとウェイクアップの同期
>
NM:バックアップコーディネーター
下記の機能はオプションで提供可能です。
>
COM:PDU の複製 (AUTOSAR 4.x 対応)
>
COM:COM モジュールへのゲートウェイ機能の付与。シグナルおよびシグナルグループのルーティングが可能
です。COM でのルーティングは、実際のシグナルやシグナルグループが存在しなくても、設定記述により実現で
きます。
>
NM:設定可能な OSEK NM への対応
>
NM:1 つのチャンネル上で OSEK と AUTOSAR-NM の混在運用
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プロダクトインフォメーション:MICROSAR
>
PDUR:以下に対するサポート
> TP およびメッセージのルーティング
> 範囲指定ルーティングの場合のメタデータによるルーティング
> 可変アドレスのルーティング (「動的ゲートウェイ」)
> PDU 長が動的な場合のルーティング
>
3.4
Post-build loadable および Post-build selectable:詳しくは、「MICROSAR バリアントハンドリング」のセクション
をご覧ください。
設定
設定には、簡単で便利なツール DaVinci Configurator Pro のご利用を推奨します。詳しくは、ベクターまでお問い合わせ
ください。
DaVinci Configurator Pro を使用すれば、MICROSAR.COM モジュールの PDUR と、CANIF、LINIF、FRIF、ETHIF
(SOAD) の各モジュールを、設定を使用してお客様自身のコンプレックスドライバーに簡単にリンクできます。
図 6:DaVinci Configurator Pro による MICROSAR.COM モジュールの設定
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16
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
4
MICROSAR.CAN – CAN 通信用 AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュール
MICROSAR.CAN パッケージには、AUTOSAR アーキテクチャーに CAN 通信用に定義されているベーシックソフトウェ
アモジュール CANIF、CANNM、CANTP、CANSM が含まれており、オプションで J1939 や XCP 用モジュールもありま
す。
図 7:AUTOSAR 4.2 対応の MICROSAR.CAN モジュール
機能概要
4.1
4.2
>
AUTOSAR Release 4.x と 3.x に対応
>
便利な拡張機能を多数搭載
>
ニーズに合わせた設定に基づき、コードおよび実行時間を最適化
>
すべての通信関連ソフトウェアモジュールについて、モジュール間設定が可能
>
ECU スタートアップ時の高速ウェイクアップ処理
>
CANTP:ISO 15765-2 への対応は設定可能
>
CANNM と OSEK NM の互換性:OSEK NM は設定可能なモジュールとして利用可能
>
CANNM、CANSM:パーシャルネットワークの状態に応じた通信スタックの制御 (オン/オフ)
>
CAN-FD:帯域幅の拡張により最大 64 バイトのデータをサポートし、多数の CAN-FD コントローラーに対応
応用分野
MICROSAR.CAN は、CAN ネットワーク通信処理に使用されます。また、XCP でのキャリブレーション、ゲートウェイ、フ
ラッシングの基盤としても適しています。MICROSAR.CAN は、別途入手可能な MICROSAR J1939TP パッケージと組
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17
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
み合わせて使用することで、J1939 ネットワークで AUTOSAR ECU を操作することもできます。その場合、BAM および
CMDT トランスポートプロトコルの使用が可能です。
機能
4.3
MICROSAR.CAN のベーシックソフトウェアモジュールには AUTOSAR 4.x で定義されている機能が含まれています。
MICROSAR.CAN には以下の機能があります。
>
CANIF:ダブルハッシュ検索アルゴリズムで受信メッセージをフィルタリング
>
CANNM、CANTP:プリコンパイルによる最適化 (シングルチャンネルシステム用など)
>
CANSM:ECU パッシブモードのサポート
>
CANTP:アドレッシングの混在をサポート (11bit の CAN ID)、主に CAN/LIN ゲートウェイアプリケーション用
>
CANTP:MICORSAR.COM に含まれる PDUR と協調して、ASR 4.0 に対応したルーティングの最適化 (バース
ト伝送など)
>
CANTP:ISO 15765-2 への対応は設定可能
>
CANTSYN:Time Synchronization over CAN (CANTSYN) は IEEE 802.1AS に準拠した Generalized
Precision Time Protocol (gPTP) を実装します。これによって CAN ECU 間のクロック同期が可能になります。
高レベルの時間コーディネーターには MICROSAR.SYS の Synchronized Time-Base Manager (STBM) ベー
シックソフトウェアモジュールを利用できます。
以下の機能はオプションで提供可能です。
>
J1939:Network Manager (J1939NM)、Request Manager (J1939RM)、診断モジュール (J1939DCM)、
J1939 ネットワークに対応した BAM および CMDT プロトコル (J1939TP)
>
CAN ドライバー:複数の CAN コントローラーを 1 つの物理 CAN バス (共通 CAN) 上にまとめることによる FullCAN オブジェクト数の拡大
>
CANIF:外部 CAN コントローラーのサポート
>
Post-build loadable および Post-build selectable:詳しくは、「MICROSAR バリアントハンドリング」のセクション
をご覧ください。
設定
4.4
設定には、簡単で便利なツール DaVinci Configurator Pro のご利用を推奨します。詳しくは、ベクターまでお問い合わせ
ください。
その他の CAN 通信スタック用 MICROSAR 製品
4.5
AUTOSAR アーキテクチャーに基づき、CAN 用の完全な通信スタックは、MICROSAR.CAN および別途入手可能な
MICROSAR.COM、MICROSAR.MCAL、MICROSAR.EXT の各パッケージのベーシックソフトウェアモジュールで構築
されています。MICROSAR.CAN をアプリケーションやハードウェアと接続させるには、以下のベーシックソフトウェアモジ
ュールも必要です。
>
MICROSAR.MCAL のハードウェア固有 CAN ドライバー (CANDRV)
>
MICROSAR.EXT のハードウェア固有トランシーバー制御 (CANTRCV)、パーシャルネットワーキングにも使用
可能
>
MICROSAR.COM の汎用通信モジュール (COM、NM、PDUR、IPDUM)
MICROSAR.MCAL および MICROSAR.EXT のモジュールは、各種マイクロコントローラーやトランシーバーに対応して
います。
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18
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
その他の CAN 用 MICROSAR 関連製品
4.6
>
MICROSAR.DIAG の DCM および DEM
>
MICROSAR.SYS の DET、ECUM、COMM
>
MICROSAR.XCP により、ASAM XCP に準拠した測定とキャリブレーションが可能になります。モジュールは
CANoe.XCP および CANoe.AMD に加え、CANape との併用に特化して最適化されています。CAN ECU 用と
して、MICROSAR.XCP には適切な CANXCP トランスポートレイヤーが含まれています。
MICROSAR.XCP は AUTOSAR 仕様の枠を超えて、測定オブジェクトの汎用的な読出をサポートします。その
ため、a2l ファイルでのアドレスの定義や更新は不要です。あらゆるバージョンおよびバリアントからのデータを、
MCU ビルドから独立して、a2l ファイルを用いて抽出できます。汎用読出機能の使用には、XCP ツールとして
CANoe.AMD または CANape を使用する必要があります。
>
4.7
商用車における J1939 ECU について詳しくは、「MICROSAR.J1939」のセクションをご覧ください。
CAN ECU 開発用ベクターツールチェーン
図 8:ベクターは、CAN プロジェクト用の幅広い製品およびサービスを提供しています
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19
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
5
MICROSAR.FR – FlexRay 通信用 AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュール
ベクターでは、AUTOSAR 対応の FlexRay 通信用パッケージ MICROSAR.FR を提供しています。パッケージには、
AUTOSAR アーキテクチャーに定義されているベーシックソフトウェアモジュールの FRIF、FRNM、FRSM が含まれてお
り、また、FRTP か FRISOTP のどちらかを選択できます。MICROSAR.FR はオプションとして XCP での拡張も可能です。
図 9:AUTOSAR 4.x 対応の MICROSAR.FlexRay モジュール
機能概要
5.1
5.2
>
AUTOSAR Release 4.x と 3.x に対応
>
パーシャルネットワークの状態に応じてパーシャルネットワークを有効/無効にし、データを提供
>
FlexRay インターフェイスのジョブリスト管理を最適化し、コードサイズを縮小、実行時間を短縮
>
FRTP (AUTOSAR) または FRISOTP (ISO 10681) どちらかのトランスポートプロトコルを使用可能
>
FlexRay State Manager で ECU パッシブモードをサポート
>
同期ずれを早期検出
応用分野
MICROSAR FR は、パーシャルネットワークを含む FlexRay ネットワーク通信の処理に使用されます。また、XCP での
キャリブレーション、ゲートウェイ、フラッシングの基盤としても適しています。
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20
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
機能
5.3
MICROSAR.FR のベーシックソフトウェアモジュールには AUTOSAR 4.x で定義されている機能が含まれており、
AUTOSAR 3.x を補足するものとして FRISOTP が提供されています。また、MICROSAR.FR は以下のサービスも提供
しています。
>
FRDRV:最適化された Wakeup During Operation Pattern (WUDOP)
>
FRDRV および FRIF:CancelTransmit および L-PdU 再設定 API のサポート
>
FRIF:冗長フレームを送信するためのチャネルの二重化と、ソフトウェアコンポーネントに対する PDU 固有の多
数決判定機能
>
FRDRV、FRIF、FRNM、FRTP:プリコンパイルによる最適化 (シングルチャンネルシステムの場合など)
>
FRSM:ECU パッシブモードのサポート、パッシブウェイクアップ後の即時起動、State Change Notification によ
るエラー処理の拡張、パッシブウェイクアップ時の FlexRay 起動待機時間の設定が可能、ウェイクアップパター
ン数の設定が可能
>
FRTSYN:Time Synchronization over FlexRay (FRTSYN) は、IEEE 802.1AS に準拠した Generalized
Precision Time Protocol (gPTP) を実装します。これによって FR ECU 間のクロック同期が可能になります。高
レベルの時間コーディネーターには MICROSAR.SYS の Synchronized Time-Base Manager (STBM) ベーシ
ックソフトウェアモジュールを利用できます。
以下の機能はオプションで提供可能です。
>
Post-build loadable および Post-build selectable:詳しくは、「MICROSAR バリアントハンドリング」のセクション
をご覧ください。
オペレーティングシステム
5.4
FlexRay のベーシックソフトウェアモジュールは、オペレーティングシステムがなくても問題なく使用することができます。
ただし、AUTOSAR OS または従来の OSEK-OS ( ベクターの osCAN など) の使用を推奨します。ベクターの
MICROSAR.OS は、FlexRay アプリケーションに最適です。
設定
5.5
設定には、簡単で便利なツール DaVinci Configurator Pro のご利用を推奨します。詳しくは、ベクターまでお問い合わせ
ください。
その他の FlexRay 通信スタック用 MICROSAR 製品
5.6
AUTOSAR ア ーキテ クチ ャーに 基 づ いた FlexRay 用通 信スタック は 、 MICROSAR.FR および別 途入 手 可能な
MICROSAR.COM、MICROSAR.MCAL、MICROSAR.SYS、MICROSAR.EXT の各パッケージのベーシックソフトウェ
アモジュールで構築されています。MICROSAR.FR をアプリケーションやハードウェアと接続させるには、以下のベーシ
ックソフトウェアモジュールも必要です。
>
MICROSAR.MCAL のハードウェア固有 FlexRay ドライバー (FRDRV)
>
MICROSAR.EXT のハードウェア固有トランシーバー制御 (FRTRCV)
>
MICROSAR.COM の汎用通信モジュール (COM、NM、PDUR、IPDUM)
MICROSAR.MCAL および MICROSAR.EXT のモジュールは、各種マイクロコントローラーやトランシーバーに対応して
います。
その他の FlexRay 用 MICROSAR 製品
5.7
>
MICROSAR.DIAG の DCM および DEM
>
MICROSAR.SYS の DET、ECUM、COMM
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21
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
>
MICROSAR.XCP により、ASAM XCP に準拠した測定とキャリブレーションが可能になります。
MICROSAR.XCP は CANoe.XCP および CANoe.AMD に加え、CANape との併用に特化して最適化されてい
ます。FlexRay ECU 用として、MICROSAR.XCP には関連する FRXCP トランスポートレイヤーが含まれていま
す。
MICROSAR.XCP は AUTOSAR 仕様の枠を超えて、測定オブジェクトの汎用的な読出をサポートします。その
ため、a2l ファイルでのアドレスの定義や更新は不要です。あらゆるバージョンおよびバリアントからのデータを、
MCU ビルドから独立して、a2l ファイルを用いて抽出できます。汎用読出機能の使用には、XCP ツールとして
CANoe.AMD または CANape を使用する必要があります。
5.8
FlexRay ECU 開発用ベクターツールチェーン
図 10:ベクターは、FlexRay プロジェクトに適した豊富な製品ラインナップと各種サービスを提供しています
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22
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
6
MICROSAR.LIN – LIN 通信用 AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュール
MICROSAR.LIN には、AUTOSAR アーキテクチャーに定義されている LIN 通信用のベーシックソフトウェアモジュール
LINIF、LINSM、LINNM が含まれています。AUTOSAR に基づき、LINTP は LINIF の 1 コンポーネントになっています。
LIN 通信スタックの中にはトランスポートプロトコルを必要としないものもあるため、LIN トランスポートプロトコルはオプシ
ョンとして提供されています。MICROSAR.LIN Master 用の XCP も、ASAM 拡張機能として用意されています。
図 11:AUTOSAR 4.2 対応の MICROSAR.LIN モジュール
機能概要
6.1
6.2
>
AUTOSAR Release 4.x と 3.x に対応
>
便利な拡張機能を多数搭載
>
マルチチャンネルのマスターに対するスケジューリングのジッターを最小化
>
診断要求の LIN スレーブへのルーティングを最適化
>
LIN チャンネルのクイックスタート
>
スケジュールテーブルの切替に高い信頼性を実現
>
LIN ソフトウェア開発に関するベクターの長年の経験を活用
応用分野
MICROSAR LIN は、LIN ネットワークにおける LIN マスターの通信タスクを処理するのに使用されます。また、ゲートウ
ェイやフラッシングの基盤としても使うことができます。
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23
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
機能
6.3
MICROSAR.LIN のベーシックソフトウェアモジュールには、AUTOSAR 4.x で定義されている機能が含まれています。
また、MICROSAR.LIN のベーシックソフトウェアモジュールは以下のサービスも提供しています。
>
LINIF:設定可能なウェイクアップ遅延
>
LINIF および LINTP:LINIF および LINTP の設定データのメモリーマッピングの個別設定が可能。これは、セグ
メント化したメモリーがあるコントローラーにとっては特に有効な機能です。この機能用として、MICROSAR.LIN
製品には LINIF 用と LINTP 用の 2 つの別々のジェネレーターが搭載されています。
>
LINIF/LINSM:スケジュールテーブル終了の通知
>
LINIF:マルチチャンネルシステムでのタスクの最大実行時間を短縮するための設定可能なスケジュールテーブ
ル
>
LINIF:LIN トランシーバーによるウェイクアップ。この機能により、外部からのウェイクアップの後、マスターによる
2 番目の (不要な) ウェイクアップパルスを除外できます。
>
LINSM:インターフェイスを拡張し、LIN スケジュールテーブルの切替を管理する LINSM サブモードを監視
>
LINSM:スケジュールテーブルの自動選択により、スタートアップ時の動作を最適化 (設定可能)
以下の機能はオプションで提供可能です。
>
LINIF:UDS 診断通信などの伝送のセグメント化に対応するための LINTP の実装
>
LINTP:診断要求および応答でのスケジュールテーブルの正確な切替を目的としたゲートウェイ機能の拡張
>
Post-build loadable および Post-build selectable:詳しくは、「MICROSAR バリアントハンドリング」のセクション
をご覧ください。
設定
6.4
設定には、簡単で便利なツール DaVinci Configurator Pro のご利用を推奨します。詳しくは、ベクターまでお問い合わせ
ください。
その他の LIN 通信スタック用 MICROSAR 製品
6.5
AUTOSAR アーキテクチャーに基づいた LIN 用の完全な通信スタックは、MICROSAR.LIN および別途入手可能な
MICROSAR.COM、MICROSAR.MCAL、MICROSAR.EXT の各パッケージのベーシックソフトウェアモジュールで構成
されています。MICROSAR.LIN をアプリケーションやハードウェアと接続させるには、以下のベーシックソフトウェアモジ
ュールも必要です。
>
MICROSAR.MCAL のハードウェア固有 LIN ドライバー (LINDRV)
>
MICROSAR.EXT のハードウェア固有トランシーバー制御 (LINTRCV)
>
MICROSAR.COM の汎用通信モジュール (COM、PDUR)
MICROSAR.MCAL および MICROSAR.EXT のモジュールは、各種マイクロコントローラーやトランシーバーに対応して
います。
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24
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
その他の LIN 用 MICROSAR 関連製品
6.6
>
MICROSAR.SYS の DET、ECUM、COMM
>
MICROSAR.XCP により、ASAM XCP に準拠した測定とキャリブレーションが可能になります。このモジュール
は CANoe.XCP および CANoe.AMD に加え、CANape との併用に特化して最適化されています。LIN ECU 用
として、MICROSAR.XCP には関連する LINXCP トランスポートレイヤーが含まれています。XCP-on-LIN は公
式には定義されていないため、この XCP-on-LIN 実装は ASAM 規格の拡張となっています。
MICROSAR.XCP は AUTOSAR 仕様の枠を超えて、測定オブジェクトの汎用的な読出をサポートします。その
ため、a2l ファイルでのアドレスの定義や更新は不要です。あらゆるバージョンおよびバリアントからのデータを、
MCU ビルドから独立して、a2l ファイルを用いて抽出できます。汎用読出機能の使用には、XCP ツールとして
CANoe.AMD または CANape を使用する必要があります。
6.7
LIN ECU 開発用ベクターツールチェーン
図 12:ベクターは、LIN プロジェクト用の幅広い製品ラインナップを提供しています
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25
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
7
MICROSAR.ETH – Ethernet 通信用 AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュール
Internet Protocol とその上位層にある UDP および TCP の両トランスポートプロトコルは、Ethernet を介した高速データ
交換を目的として、極めて幅広く使われている規格です。
MICROSAR.ETH (Ethernet) パッケージには、AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュールと、ECU 間の Ethernet 通
信に関する自動車用規格に準拠して開発された TCP/IP スタックが含まれています。AUTOSAR 4.0 は、Ethernet を初
めてネットワークテクノロジーとして規定したバージョンです。AUTOSAR 4.1 では、この仕様が大幅に加筆修正されまし
た 。 AUTOSAR 4.2 で は さ ら に 、 Ethernet ス イ ッ チ の 設 定 や ECU 間 の 時 間 同 期 な ど が 明 記 さ れ て い ま す 。
MICROSAR.ETH のベーシックソフトウェアモジュールは、AUTOSAR 4.x に対応し、さらに AUTOSAR 3.x を補足する
ものとして提供されています。
図 13:AUTOSAR 4.2 対応の MICROSAR.ETH モジュール
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26
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
MICROSAR.ETH の機能概要
7.1
>
ベーシックソフトウェアモジュールは AUTOSAR 4.1 および 4.0 に対応し、さらに AUTOSAR 3.x を補足
>
TCP/IP スタックは自動車用規格に準拠して開発され、Fraunhofer ESK によってテスト済み
>
オープンソースソフトウェアは不使用
>
Vehicle-to-Grid 通信 (MICROSAR.V2G) や Audio/Video Bridging (MICROSAR.AVB) などを AUTOSAR
Ethernet および TCP/IP スタックにシームレスに統合
>
お客様固有の機能/モジュールをあらゆるレベルでシンプルに統合
応用分野
7.2
MICROSAR.ETH を組み込んだ ECU をサーバーとし、従来の PC または診断テスターをクライアントとした構成により、
以下が可能になります。
>
ISO 13400-2 (DoIP) に準拠した車両診断
>
迅速かつ並行した ECU の再プログラミング
Ethernet のデータスループットが上がれば、ソフトウェアのダウンロードと診断の総所要時間も大幅に短縮されます。車
内にゲートウェイが置かれていれば、それを使用して診断リクエストを車載ネットワークにルーティングできます。これによ
っ て 、 た と え ば 複 数 の CAN ECU を 、 DoIP 経 由 で 並 行 し て 再 プ ロ グ ラ ミ ン グ す る こ と が 可 能 と な り ま す 。
MICROSAR.ETH は他の MICROSAR パッケージと連携して、これに必要になるゲートウェイ機能を実装します。フラッ
シュブートローダー (FBL) で MICROSAR.ETH を使用していれば、Ethernet ネットワークに相互接続されている ECU
(ゲートウェイ本体など) を DoIP 経由で直接再プログラミングできます。
Ethernet ECU の測定およびキャリブレーション用に提供される MICROSAR.XCP on Ethernet を使用すれば、帯域幅
を余裕を持って利用できるようになります。XCP ルーティングによりゲートウェイが拡張され、CAN および FlexRay の
ECU も (車載) Ethernet ポート経由で XCP により測定することが可能になります。
MICROSAR.ETH は、診断、測定、キャリブレーションなどの応用分野で、外部インフラストラクチャーと車両を結ぶ
Ethernet ベースの通信を可能にするだけでなく、車内の Ethernet ネットワークを効率的に利用することも可能にします。
たとえば、データをサービス指向で送信できます。これには AUTOSAR 4.1.1 で導入された Service Discovery ベーシッ
クソフトウェアモジュールの使用が必要になります。シリアル化プロトコルの SOME/IP も、サービス指向通信と併せて使
用されます。SOME/IP の実装は RTE トランスフォーマーとして提供されています。SOME/IP トランスフォーマーについて
詳しくは、MICROSAR.RTE および MICROSAR.COM の各章をご覧ください。
Ethernet 上でのシグナルベースおよび PDU ベースのデータ送信ももちろん可能です。
MICROSAR.ETH の一部は、Vehicle-to-Grid 通信や Audio/Video Bridging の基盤としても機能します。これらの応用
分野について詳しくは、MICROSAR.V2G および MICROSAR.AVB の各セクションをご覧ください。
機能
7.3
以下に示す MICROSAR.ETH のベーシックソフトウェアモジュールには、AUTOSAR 4.1.x で定義されている機能が含
まれています。AUTOSAR 4.0 または AUTOSAR 3.x ソフトウェアスタックで使用できるよう、これらには適切な互換イン
ターフェイスが用意されています。
>
ETHIF:Ethernet Interface (ETHIF) は、Ethernet ドライバー (ETHDRV) と Ethernet トランシーバードライバー
(ETHTRCV) に対する、ハードウェアの種類に依存しないアクセスを可能にします。AUTOSAR 4.1 より、このモ
ジュールは VLAN の処理も担当しています。Ethernet スイッチドライバー (ETHSWTDRV および
ETHSWTEXT) のハードウェアに依存しない制御は、AUTOSAR 4.2 より ETHIF に含まれています。
>
ETHSM:Ethernet State Manager (ETHSM) は、Ethernet クラスターで通信を起動または終了するための、
Communication Manager (COMM) に対する抽象化されたインターフェイスを提供します。ETHSM は ETHIF
を介して Ethernet ハードウェアにアクセスします。
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27
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
>
ETHTSYN:Time Synchronization over Ethernet (ETHTSYN) は、IEEE 802.1AS に準拠した Generalized
Precision Time Protocol (gPTP) を実装します。これによって Ethernet ECU 間のクロック同期が可能になりま
す。高レベルの時間コーディネーターには MICROSAR.SYS の Synchronized Time-Base Manager (STBM)
ベーシックソフトウェアモジュールを利用できます。
>
TCPIP:このモジュールには、UDP ベースおよび TCP ベースの通信に利用されるすべてのプロトコルが含まれ
ています。これは IPv4 と IPv6 に対応し、1 つの ECU での IPv4 と IPv6 の並行動作をサポートします。これには
以下のプロトコルが含まれています。
> IPv4、ICMPv4、ARP
> IPv6、ICMPv6、NDP
> UDP、TCP、DHCPv4 (クライアント)、DHCPv6 (クライアント)
TCPIP モジュールには、AUTOSAR 4.2 での Ethernet スイッチのサポートと併せて、スイッチポートに基づいて
IP アドレスを割り当てる DHCP サーバーが追加されました。
>
SOAD:Socket Adapter (SOAD) は、AUTOSAR で定義されている PDU 単位の通信をソケット指向の通信に
変換します。AUTOSAR 4.0 では、SOAD には ISO 13400-2 で定義されている診断機能 (DoIP) も含まれてい
ます。AUTOSAR 4.1 ではこのプラグインは切り離され、独立したモジュールとして規定されています (DOIP)。さ
らに、SOAD には XCP ルーティング用の拡張が実装されています。
>
DOIP:Diagnostics over IP (DOIP) モジュールは AUTOSAR 4.1.1 で有効になったモジュールで、これにはこ
れと同じ名前の、ISO 13400-2 に準拠した診断機能が含まれています。AUTOSAR 4.0.3 以前は、この機能は
SOAD の一部でした。
>
SD:Service Discovery (SD) は、AUTOSAR 4.1.1 で初めて規定されたものです。ECU はこのモジュールによ
って実装されるプロトコルを介して、自身のサービスの利用可能性を通信相手に伝えます。さらに、シグナル更
新時などに自動通知を受信するために ECU はそのようなサービスを登録できます。
>
UDPNM:UDP (UDPNM) 経由でのネットワークマネージメントにより、Ethernet ECU のスリープ同期を実装で
きます。
以下はオプションです。
>
Post-build loadable/Post-build selectable:Ethernet 通信スタックの場合、これらの機能はご要望に応じて提供
されます。
設定
7.4
設定には、簡単で便利なツール DaVinci Configurator Pro のご利用を推奨します。詳しくは、ベクターまでお問い合わせ
ください。
Ethernet および TCP/IP 固有の設定パラメーターは、AUTOSAR 3.x の「ECU Configuration Description (ECUC)」の
拡張として保存されます。これは AUTOSAR 4.x 内で規定されていない設定パラメーターについても同様です。
その他の MICROSAR 関連製品
7.5
MICROSAR.ETH に、別途入手可能な MICROSAR.MCAL と MICROSAR.EXT のベーシックソフトウェアモジュールを
併用することにより、AUTOSAR アーキテクチャーに基づいた Ethernet および TCP/IP 用の完全な通信スタックを構成
できます。
>
MICROSAR.ETH をハードウェアと接続させるには、以下のベーシックソフトウェアモジュールも必要です。
> ハードウェア固有 Ethernet ドライバー (MICROSAR.MCAL の ETHDRV)
> ハードウェア固有トランシーバードライバー (MICROSAR.EXT の ETHTRCV)
> オプション:ハードウェア固有 Ethernet スイッチドライバー (MICROSAR.MCAL の ETHSWTDRV お
よび MICROSAR.EXT の ETHSWTEXT)
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28
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
>
MICROSAR.MCAL および MICROSAR.EXT のモジュールは、数多くのマイクロコントローラーやトランシーバ
ーに対応しています。
>
PDU を AUTOSAR スタックの他のソフトウェアモジュールに渡す必要がある場合は、MICROSAR.COM パッケ
ージの PDU Router (PDUR) モジュールも必要になります。
>
以下に示す MICROSAR.SYS パッケージのモジュールは、Ethernet スタックや TCP/IP スタックの制御に使用
できます。
> COMM:通信スタックの起動と終了を制御する際の中心となるモジュール
> NM:ネットワークマネージメントを制御する際の中心となるモジュール
> DET:開発期間中にエラーを検出および評価
7.6
>
DEM:検出されたシステムイベント (エラーおよび環境データ) は、MICROSAR.DIAG パッケージの DEM モジュ
ールを使用して管理できます。
>
MICROSAR.XCP により、ASAM XCP に準拠した測定とキャリブレーションが可能になります。モジュールは
CANoe.XCP および CANoe.AMD に加え、CANape との併用に特化して最適化されています。Ethernet ECU
用として、MICROSAR.XCP には関連する ETHXCP トランスポートレイヤーが含まれています。
>
Vehicle-to-Grid のアプリケーションには MICROSAR.V2G パッケージのモジュールで対応できます。同じく、
Audio/Video Bridging に用いられる MICROSAR.AVB のモジュールも、MICROSAR.ETH に基づいて構築さ
れています。
その他の Ethernet 用関連製品
CANoe のオプション、「.Ethernet」を使用すれば、既存の CANoe インストール環境を手軽に拡張し、Ethernet 通信を解
析およびシミュレーションする機能を追加できます。
ハードウェアインターフェイスには、物理層に BroadR-Reach®を使用する場合は特に、VN5610 ネットワークインターフ
ェイスのご利用を推奨します。これには 2 つの Ethernet チャンネル (BroadR-Reach®または 100BASE-TX で個別に設
定可能) のほか、2 つの High-Speed CAN チャンネルも装備されています。
7.7
Ethernet ECU 開発用ベクターツールチェーン
図 14:ベクターは、Ethernet プロジェクト用の幅広い製品ラインナップを提供しています
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29
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
8
MICROSAR.V2G – 外部インフラ通信用 AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュール
Ethernet とその上位層にある TCP/IP スタックは、車外のインフラストラクチャーとの通信に必要な基本的なテクノロジー
を提供します。
MICROSAR.V2G (Vehicle-to-Grid) パッケージには、電気自動車およびハイブリッド自動車のインテリジェント充電と、
HTTP などのインターネットテクノロジーを介したインフラストラクチャーとの通信に用いられるベーシックソフトウェアモジ
ュールが含まれています。このパッケージに含まれているモジュールはいずれも、AUTOSAR では規定されていません。
ただし、これらはベクターの AUTOSAR ソリューションに統合されています。これらの拡張機能は、AUTOSAR 4.x と
AUTOSAR 3.x の両方を対象として提供されています。MICROSAR.V2G の基盤としては、MICROSAR.ETH パッケー
ジのモジュールが必要になります。詳しくは、セクション 8.5 を参照してください。
図 15:AUTOSAR 4.2 対応の MICROSAR.V2G モジュール
MICROSAR.V2G の機能概要
8.1
>
Smart-Charge-Communication (SCC) に必要なすべてのプロトコルを実装
>
インターネットのメカニズムおよびプロトコルを介した通信をサポート
>
すべてのベーシックソフトウェアを AUTOSAR 環境にシームレスに統合
>
汎用インターフェイスにより、お客様固有の機能の組込が容易
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30
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
応用分野
8.2
MICROSAR.V2G を使用すれば、電気自動車とハイブリッド自動車に、適切な充電ステーションでインテリジェント充電を
実行できます。対応する規格は以下の通りです。
>
ISO 15118
>
DIN 70121
これらには、交流または直流での充電に対応するオプションが必要です。
MICROSAR.V2G パッケージのモジュールを使用すれば、一般的に使われているインターネットプロトコルを介して、
ECU にサーバーと通信させることもできます。
必要に応じて、この通信を暗号化することもできます。
機能
8.3
MICROSAR.V2G には、以下のベーシックソフトウェアモジュールが含まれています。
>
DNS:DNS モジュールには DNS リゾルバーが含まれています。これにはたとえば Vector.com などのドメインを、
有効な IP アドレスに解決する役割があります。
>
TLS:このモジュールには Transport Layer Security クライアントが含まれています。TCP ベースの通信は TLS
で暗号化されます。使用する暗号化アルゴリズムは選択可能です。
>
HTTP:Hypertext Transfer Protocol のアプリケーションの 1 つとして、サーバーへのブラウザー要求の送信が
挙げられます。このモジュールには HTTP クライアントが含まれています。
>
XML Security:このモジュールは、W3C XML Security 規格に基づいて EXI 形式でエンコードされる XML シグ
ネチャーを生成し検証します。
>
EXI:EXI モジュールは XML ドキュメントを解釈し、それらをバイナリ形式に変換するのに使用されます。これに
よって、ファイルの処理と伝送の効率が高まり、通信帯域幅を節約できます。
>
SCC:このモジュールが担当するのは ISO 15118 または DIN 70121 に準拠した Smart Charge
Communication で、これにはそのための V2GTP トランスポートプロトコルが含まれています。直流および交流
での充電のほか、関連する Plug-and-Charge (PnC) や External Identification Means (EIM) プロファイルをサ
ポートします。
さらに、AUTOSAR 3.x の環境用には以下のモジュールがあります。
8.4
>
XML Engine:XML Engine モジュールには、XML 1.0 ドキュメントを処理するためのパーサーと、有効な XML
1.0 ドキュメントを作成するためのジェネレーターが含まれています。このモジュールは Vehicle2Grid 分野で使
用されます。
>
JSON:このモジュールには JSON パーサーが含まれています。JSON は JavaScript ベースのデータ交換形式
で、XML の代わりに使用できます。
設定
MICROSAR.V2G パッケージのモジュールは、DaVinci Configurator で設定できます。詳しくは、ベクターまでお問い合
わせください。
固有の設定パラメーターは、「ECU Configuration Description」の拡張として保存されます。
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31
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
その他の MICROSAR 関連製品
8.5
MICROSAR.V2G は MICROSAR.ETH パッケージに基づいており、通信の基盤として Ethernet スタックと TCP/IP スタ
ックを必要とします。これは以下のモジュールから構成されています。
>
基盤となるハードウェアを抽象化する Ethernet Interface (ETHIF)
>
Ethernet 通信のオン/オフを切り替える Ethernet State Manager (ETHSM)
>
TCP/IP スタック (TCPIP) とそれに関連する IP バージョン (IPv4 および IPv6 またはそのいずれか)
この他に、MICROSAR.MCAL の Ethernet ドライバー (ETHDRV) と、MICROSAR.EXT の Ethernet トランシーバードラ
イバー (ETHTRCV) も必要です。これには、Smart Charge Communication 用として、電力線通信 (PLC) 専用のドライ
バーとトランシーバードライバーが用意されています。
Smart Charge Communication の制御を AUTOSAR ソフトウェアコンポーネントで実装する場合は、MICROSAR.RTE
のご利用を推奨します。
開発期間中のエラーの検出および評価には、MICROSAR.SYS の DET モジュールが利用できます。
MICROSAR.DIAG パッケージの DEM モジュールは、検出されたシステムイベント (エラーおよび環境データ) を管理す
るのに使用できます。
8.6
その他の Ethernet 用関連製品
Ethernet 用の CANoe の関連オプションを使用すれば、既存の CANoe インストール環境を手軽に拡張し、Ethernet ベ
ースの通信を解析およびシミュレーションする機能を追加できます。無料の Smart-Charge-Communication アドオンを
使用しても、SCC データトラフィックを CANoe で解析できます。これによって、車両と充電ステーションの複雑なシミュレ
ーションを、DIN 規格に基づいてセットアップできます。
ベクターでは、VT システムに対応した電力線通信用のプラグインカードを用意しています。
8.7
Ethernet/V2G ECU 開発用ベクターツールチェーン
図 16:ベクターは、Ethernet/V2G プロジェクト用の幅広い製品ラインナップを提供しています
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32
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
9
MICROSAR.AVB – Ethernet 経由のオーディオ/ビデオ用のベーシックソフトウェアモジュール
Ethernet 上で MICROSAR.AVB (Audio/Video Bridging) を使用することにより、音声/動画を迅速かつ確実に転送でき
るようになります。MICROSAR.AVB パッケージには、MICROSAR.ETH などの Ethernet インターフェイスを下敷きとす
る、多様なベーシックソフトウェアが含まれています。AUTOSAR 4.x に基づくソリューションは AVTP (Audio/Video
Transport Protocol) と PTP (Precision Time Protocol) の ほ か 、 ご 要 望 に 応 じ て BMCA (Best Master Clock
Algorithm) もサポートします。これによって、AVB エンドポイントだけでなく、簡単なブリッジ機能の実装も可能になります。
図 17:AUTOSAR 4.2 対応の MICROSAR.AVB モジュール
MICROSAR.AVB の機能概要
9.1
>
ベーシックソフトウェアモジュールは AUTOSAR 用に最適化されているものの、他の環境にも統合可能
>
Ethernet スタックである MICROSAR.ETH に円滑に統合。そのため、AVB、DoIP、TCP/IP などの並行利用が
可能
>
お客様固有の機能やモジュールの組込が容易
>
多数の Ethernet コントローラーをサポート
>
音声、動画、診断などのためのデータを分離し、優先度を設定するための VLAN をサポート
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33
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
応用分野
9.2
9.2.1
オーディオ/ビデオ ストリーミング
MICROSAR.AVTP により、音声/動画データを、そのタイムスタンプも含めて、異なるエンドポイント間で交換することが
可能になります。これは以下の仕様に従って実装されます。
>
9.2.2
IEEE 1722/1722a
最も正確なクロックの選択
システム全体に正確なクロックを提示するには、まず、最も正確なクロックを持つデバイスを定義しなければなりません。
多くの場合、それはブリッジです。これは静的に、または BMCA を通じて動的に設定できます。この際、以下の仕様が使
われます。
>
9.2.3
IEEE 802.1AS
同期的なシステムタイムの提示
ネットワークには、最も正確な時間を把握している ECU から時間が配信されます。つまり、すべてのエンドポイントとブリ
ッジが、グランドマスターよって指定された同一の時間に従って動作するということです。これによって、A/V データストリー
ムの送信と再生を、時間を同期させて行うことが可能になります。タイムスタンプを配信するためのプロトコルは、PTP モ
ジュールによって、以下の仕様に従って実装されます。
>
IEEE 802.1AS
正確な時間測定を有効にするには、拡張ハードウェアサポートの使用が必要になる可能性があります。これは多くの場
合、Ethernet ドライバーの「ハイエンド機能」に実装されています。
機能
9.3
以下に示す MICROSAR.AVB のベーシックソフトウェアモジュールには、上記の IEEE 仕様で定義されている機能が含
まれています。また、AUTOSAR 環境へのシームレスな統合を可能にするソフトウェアプロパティーも必要になります。
9.4
>
AVTP: - AVTP フレームを送受信するための、ETHIF モジュールへのインターフェイス
-ストリームチャンネルと制御チャンネルの識別
- タイムスタンプの表示と検証
- 伝送されたデータストリームの検出
>
PTP: - 必要なすべてのハードウェアインターフェイスの初期化
- Ethertype が 0x88F7 の Ethernet フレームを ETHIF から PTP にルーティング
- 一般メッセージとイベントメッセージのサポート
- Pdelay_Req、Pdelay_Resp、Pdelay_Resp_Follow_Up といった伝播遅延時間の計算のサポート
- Sync、Follow_Up などの同期タイムスタンプの転送のサポート
>
BMCA: - PortAnnounceReceive、PortAnnounceInformation、PortRoleSelection、PortAnnounceTransmit
のサポート
設定
設定には、簡単で便利なツール DaVinci Configurator Pro のご利用を推奨します。詳しくは、ベクターまでお問い合わせ
ください。
AVB 固有の設定パラメーターは、「ECU Configuration Description」の拡張として保存されます。
9.5
関連 MICROSAR 製品用インターフェイス
MICROSAR.AVB に、別途入手可能な MICROSAR.MCAL、MICROSAR.EXT、MICROSAR.ETH の各パッケージの
ベーシックソフトウェアモジュールを併用することにより、MICROSAR アーキテクチャーに基づいた車載 AVB 用の完全な
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34
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
通信スタックを構成できます。MICROSAR.AVB をハードウェアと接続させるには、以下のベーシックソフトウェアモジュー
ルも必要です。
>
ハードウェア固有 Ethernet ドライバー (MICROSAR.MCAL の ETHDRV)
>
ハードウェア固有トランシーバードライバー (MICROSAR.EXT の ETHTRCV)
>
Ethernet ドライバー抽象レイヤーおよびコントロールレイヤー (MICROSAR.ETH の ETHIF、ETHSM)
MICROSAR.MCAL および MICROSAR.EXT 内のモジュールはすでに多くのマイクロコントローラーやトランシーバーに
対応していますが、必要に応じて、新しいマイクロコントローラーやトランシーバー用のモジュールが開発される場合もあ
ります。
追加の Ethernet 用関連 MICROSAR モジュール
9.6
9.7
>
MICROSAR.ETH の TCPIP、SOAD、DOIP、SOME/IP
>
MICROSAR.DIAG の DCM および DEM
>
MICROSAR.SYS の DET、ECUM、COMM、NM
>
MICROSAR.XCP
その他の Ethenet 用関連製品
CANoe のオプション、「.Ethernet」を使用すれば、既存の CANoe インストール環境を手軽に拡張し、Ethernet および
AVB ベースの通信を解析およびシミュレーションする機能を追加できます。
物理層に BroadR-Reach®を使用する場合は特に、VN5610 ネットワークインターフェイスのご利用を推奨します。これに
は 2 つの Ethernet チャンネル (BroadR-Reach®または 100BASE-TX で個別に設定可能) のほか、2 つの HighSpeed CAN チャンネルも装備されています。
9.8
Ethernet/AVB ECU 開発用ベクターツールチェーン
図 18:ベクターは、Ethernet/AVB プロジェクト用の幅広い製品ラインナップを提供しています
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35
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
10 MICROSAR.MEM –メモリー管理用 AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュール
MICROSAR.MEM パッケージには、メモリー管理に関する AUTOSAR モジュール NVM、MEMIF、EA、FEE がすべて
含まれています。これらのモジュールは、不揮発性メモリー (フラッシュメモリーまたは EEPROM) のデータの管理、チェッ
ク、復元をサポートします。MICROSAR.MEM のベーシックソフトウェアモジュールは、高速で信頼性が高く、堅牢です。
図 19:AUTOSAR 4.2 対応の MICROSAR.MEM モジュール
10.1 機能概要
>
AUTOSAR Release 4.x と 3.x に対応
>
極めて安全で確実なデータトランザクション
>
効率のよいデータアクセス
>
効率的で堅牢な不揮発性メモリー管理
>
管理データを冗長化してストレージすることにより、データアクセスの信頼性を向上
>
メモリースタック全体のモジュール間設定が可能
>
プラットフォームに最適化されたメモリースタックソリューションを 1 つの供給元から提供
10.2 応用分野
MICROSAR.MEM には、フラッシュメモリーや EEPROM メモリー内の永続的なアプリケーションデータの読み書きや消
去を行う AUTOSAR サービスが含まれています。これによって、アプリケーションソフトウェアはハードウェアに依存しな
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36
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
いメモリーアクセスを行うことができます。アプリケーション側は、プラットフォームに存在するメモリーのタイプが何か、あ
るいはこのメモリーはコントローラー内部のメモリーなのか、それとも外部メモリーなのかを把握する必要はありません。
10.3 機能
MICROSAR.MEM のベーシックソフトウェアモジュールには、AUTOSAR 4.x で定義されている機能が含まれています。
各メモリースタックには、MICROSAR.MEM のベーシックソフトウェアモジュールの NVM と MEMIF が必要です。これら
のモジュールは、メモリー領域へのアクセス (ブロック単位、テクノロジー非依存) を処理します。その際、メモリー属性に
関する事前情報は要求しません。メモリースタックは使用メモリーに応じて、他のベーシックソフトウェアモジュールを必要
とします。
>
フラッシュメモリー使用時:MICROSAR.MEM などの FEE (Flash EEPROM Emulation) モジュールと、MCAL
統合パッケージのサービスに含まれる、使用するハードウェアに合った FLSDRV (Flash Driver) が必要。また、
外部メモリーについては、MICROSAR.EXT の DRVEXT モジュールが必要。データを管理するには、FEE モジ
ュールには少なくとも 2 つの物理フラッシュセクターが必要。
>
EEPROM 使用時:MICROSAR.MEM の EA (EEPROM Abstraction) モジュールのほか、たとえば外部メモリ
ー用の MICROSAR.EXT の DRVEXT をはじめとする EEPROM ドライバー (EEPDRV) が必要。
1つのECUで複数のフラッシュまたはEEPROMチップを混在させることが可能です。
ベクターは、たとえばデータのフラッシングにベーシックソフトウェアモジュールの EA を使用する場合や、FEE モジュール
を特定のハードウェア用に最適化する場合などの特殊な要件に応じ、プラットフォームに合わせて最適化したソリューショ
ンを提供します。
また、MICROSAR.MEM は以下のサービスも提供しています。
>
すべての MICROSAR.MEM 機能に対する、あらかじめ定義された固定の最大実行時間。これによってアクセス
時間が短縮され、システムの最適化が実現されます。
>
NVM:RAM を CRC メモリーストレージに割当
>
NVM:データブロックの直接読出および変更用の DCM 診断モジュール専用インターフェイス
>
NVM および EA:設定可能なトランザクションセキュリティー (FEE モジュールの標準機能) の追加
>
FEE:格納したメモリーデータの高性能管理
>
FEE:フラッシュブートローダー (FBL) とアプリケーションによる FEE モジュールの共用に加え、共通メモリーブロ
ックの使用も可能。FBL を調整しなくても ECU ソフトウェアの更新が可能です。
>
FEE/EA:管理データを冗長化してストレージすることにより、データアクセスの信頼性が向上
>
FEE:DataFlash 内に FEE セクターを柔軟に配置
>
FEE:電圧不足の状態に対応するためのサービス
>
FEE:パーティションを導入し、頻繁に使用されるデータを重要度が特に高いデータと分離。これによって障害時
のデータの可用性 (データの書込または消去中のリセットなど) がさらに向上します。
以下の機能はオプションで提供可能です。
>
NVM:複数の ROM ブロックを持つブロックタイプ「DATASET_ROM」
>
FEE:ECU の再プログラミング後に不揮発性メモリーを調整するための更新のサポート。これは新しいコンフィギ
ュレーションテーブル (内容とサイズ) で実行されます。
10.4 設定
設定には、簡単で便利なツール DaVinci Configurator Pro のご利用を推奨します。これには、最適化支援やフラッシュ
使用状況のビジュアル表示など、作業を簡素化するための機能が装備されています。詳しくは、ベクターまでお問い合わ
せください。
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37
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
図 20:DaVinci Configurator Pro による MICROSAR.MEM モジュールの設定
10.5 その他のメモリースタック用 MICROSAR 製品
AUTOSAR アーキテクチャーに基づいた ECU 用の完全なメモリースタックは、MICROSAR.MEM のメモリーサービスお
よび別途入手可能な MICROSAR.MCAL、MICROSAR.EXT の各パッケージのプラットフォーム固有ベーシックソフトウ
ェアモジュールで構成されています。
>
MCAL 統合パッケージの FLSDRV および EEPDRV またはそのいずれか
>
外部メモリーチップ用の MICROSAR.EXT の DRVEXT
また、半導体メーカー製の MCAL ドライバーは、MICROSAR メモリースタックへ簡単に統合できます。
メモリーデータは、チェックサムモジュール (CRC) にて、ご希望のセキュリティーレベルで保護することが可能です。その
場合は、MICROSAR.SYS の LIBS モジュール (CRC) が必要です。
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38
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
11 MICROSAR.SYS – AUTOSAR 用のシステム関連のベーシックソフトウェアモジュール
MICROSAR.SYS のベーシックソフトウェアモジュールが提供するサービスは、AUTOSAR ECU の基本機能の重要な
部分を取り扱っています。これらのサービスはアプリケーションソフトウェアから呼び出されるだけではなく (RTE 経由) 、
他のベーシックソフトウェアモジュールからも呼び出されます。MICROSAR.SYS のモジュールには、ECU の状態処理に
用いられる主要機能がすべて含まれています。
図 21:AUTOSAR 4.2 対応の MICROSAR.SYS モジュール
11.1 機能概要
>
AUTOSAR Release 4.x と 3.x に対応
>
ECUM モジュールは、リソース効率がよいプリコンパイル、または柔軟性が高いポストビルドのどちらかのコンフ
ィギュレーションバリアントで組込可能
>
DaVinci Configurator Pro の支援機能により、BSWM および ECUM の初期設定が容易
初期化シーケンスを作成
ECU ステートマシンを設定 (起動、シャットダウンなど)
>
通信モードの管理
11.2 応用分野
システムサービスには、電源およびモードの管理や、すべての通信チャンネルおよびパーシャルネットワークの制御、機
能ソフトウェアを構成する各個別のソフトウェアコンポーネントのモニターのほか、AUTOSAR 3.x 内の全ベーシックソフト
ウェアモジュールのスケジューリングを行う機能が含まれています。
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39
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
11.3 機能
MICROSAR.SYS のベーシックソフトウェアモジュールには、AUTOSAR 4.x で定義されている機能が含まれています。
>
BSWM:Basic Software Mode Manager (ベーシックソフトウェアモードマネージャー) は、ベーシックソフトウェア
モジュールとソフトウェアコンポーネントからのモード変更要求を管理し、標準化されたアクションリストに従ってそ
れらを実行します。たとえば BSWM モジュールは、診断用の PDU グループおよび NM-PDU の有効化/無効化
を行います。
>
COMM:Communication Manger (通信マネージャー) が、ECU に接続されているすべての通信チャンネルと
ECU に設定されたサブネットワークの状態をチェックします。必要に応じて、ECU の Awake ステータスを維持し、
通信の継続を行います。すべてのソフトウェアコンポーネントによる通信チャンネルおよびサブネットワークへの
アクセスの調整も行います。また、オプションで、「Internal」バスタイプもサポートします。
>
BSWM および COMM:パーシャルネットワーキングのサポート
>
DET:Development Error Tracer (開発時エラートレーサー) は、ソフトウェアコンポーネントやベーシックソフトウ
ェアモジュールの開発時エラーを収集します。オプションで、DET 用サービスポートのサポートもあります。
>
ECUM:ECU State Manager (ECU ステートマネージャー) は、ベーシックソフトウェアモジュールの起動、終了、
ウェイクアップを実行します。AUTOSAR 3.x では、ECUM が管理できない事前に固定的に定義された動作状態
が存在します。AUTOSAR 4.x では、これらの動作状態をユーザーが BSWM で柔軟に定義できます。これによ
って、個別の省エネルギー状態や電源投入時の多様な挙動を実装することが可能になります。
>
SCHM:Schedule Manager (スケジュールマネージャー)/BSW Scheduler (ベーシックソフトウェアスケジューラ
ー) は、ベーシックソフトウェアモジュールの実行を制御します。ユーザーの設定では、ベーシックソフトウェアモジ
ュールのタスクと周期時間のみならず、各モジュール間の排他エリアを一元的に定義できます。AUTOSAR 3.x
では、SCHM は MICROSAR.SYS の一部です。AUTOSAR 4.x では、MICROSAR.RTE が SCHM の機能を
提供しています。
>
WDGM および WDGIF:Watchdog Manager (ウォッチドッグマネージャー) は、MICROSAR.MCAL の WDGIF
と WDGDRV で、機能ソフトウェアが正常に動作しているかをモニターします。
また、MICROSAR.SYS は以下のサービスも提供しています。
>
COMM:OSEK NM との互換性 (AUTOSAR 3.x)
>
WDGM、WDGIF:ウォッチドッグ (高分解能ウィンドウウォッチドッグも含む) を対象として、定義済みの時間ウィ
ンドウを正確に監視します。
>
ECUM:ECUM モジュールは AUTOSAR ECUM Fixed 仕様に準拠して実装されるため、複雑な状態遷移にも
対応可能な、高いレベルの設定オプションが提供されます。状態管理の要件が少ない ECU を開発している場合
は、ECUM モジュールを使用して、AUTOSAR ECUM Fixed 仕様と互換性のある動作をさせることもオプション
で可能です。この場合、ECUM モジュールでは以下の機能が利用できます。
ECUM 実行要求プロトコル
ECUM 状態管理
ECUM Fixed 互換サービスのソフトウェアコンポーネントとのインターフェイス
以下のベーシックソフトウェアモジュールは、オプションで提供可能です。
>
CSM:Crypto Service Manager (暗号サービスマネージャー) により、ソフトウェアコンポーネントとベーシックソ
フトウェアモジュールは、一様に AES 128 (Advanced Encryption Standard) などの暗号化機能にアクセスでき
ます。
>
STBM:Synchronized Time-Base Manager (同期タイムベースマネージャー) により、ECU ソフトウェアの各部
分での正確な時間同期が可能になります。これは、ベーシックソフトウェアモジュールとソフトウェアコンポーネン
トに、1 つ以上の共通の基準時間を与えることで実現されます。CAN、FR、ETH の各バスシステムに対応する
Tsyn モジュールが用意されており、これらが ECU を車両全体で時間同期するための通信サービスを提供しま
す。
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40
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
>
WDGM:ソフトウェアコンポーネントを観察するためのプログラムフローとデッドラインのモニター
>
Post-build loadable および Post-build selectable:詳しくは、「MICROSAR バリアントハンドリング」のセクション
をご覧ください。
11.4 ベーシックソフトウェアマネージャー (BSWM)
BSWM はモード管理の中心となるモジュールで、AUTOSAR 4 の仕様に準拠して実装されています。ただし、この仕様
に留まらない便利な機能が多数装備されているため、これを使用することで、ECU ソフトウェアの設定をさらに快適に行
うことができます。
AUTOSAR 4 の BSWM モジュールでは、他のベーシックソフトウェアモジュールのモード変更に対応したり、そのような
モード変更を要求したりするために、調停規則、論理式、アクションなどを自由に設定できるようになっています。
AUTOSAR で指定されているコンフィギュレーションの構成では、ごく単純な設定にも以下のような多大な相互関連設定
が求められます。そのため、コンフィギュレーションがまたたく間に複雑化してしまうことがあります。
>
アクションをアクションリストにまとめる
>
それらのリストを、事前定義済みの論理式の結果 (True または False) に規則別にリンクする
>
この論理式の本体は、受信されるモード (要求ポート) に基づいた、1 つ以上の条件から構成されている
また、たとえば AUTOSAR 3 の ECUM Fixed 様式に基づいてステートマシンを設定したり、対応するベーシックソフトウ
ェアモジュールの初期化関数を適切なパラメーターとともに呼び出す、あるいは PDU グループ (I-PDU) のオン/オフを切
り替えるといった標準的なタスクも、熟練した開発者にすら難しいものとなっています。
DaVinci Configurator Pro は、インテリジェントかつ強力な支援機能を通じてユーザーをサポートします。これによって上
記のようなタスクの多くを自動的に解決できるほか、クリックするだけで後からそれらを設定することも可能です。これは
以下の場合に特に有効です。
>
ECU ステートマシン (ECU 状態処理、下図を参照)
>
ベーシックソフトウェアモジュールの初期化 (モジュール初期化)
>
PDU グループの切替 (通信制御)
図 22:DaVinci Configurator Pro による事前設定済みのステートマシン/BSWM の自動設定。モジュール初期化および通信制御の自
動設定のほか、プロジェクトに関連した BSWM の設定 ([Custom Configuration]) の領域も表示
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41
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
これは静的な設定ではなく、必要なパラメーターはすべて考慮に入れられます。新しい PDU グループが作成されるなど
してパラメーターに変更があれば、DaVinci Configurator Pro はこれをただちに把握し、再設定が必要であることをユー
ザーに通知します。
DaVinci Configurator Pro に組み込まれている支援機能は、規則やアクションリストの作成といった自由な設定作業にも
対応します。これらの機能は、手順に沿った設定の支援や、必須または任意のパラメーターに関するノウハウの提供の
ほか、ミスの検出と考えられる修正の提案を行います。ただし、ユーザーが意図的にそれとは異なる設定を行うことも可
能です。
MICROSAR BSWM は AUTOSAR で規定されているものよりもはるかに多くの機能を備えています。たとえば、実行時
に規則の解析のオン/オフを切り替えることもできます。満了のタイミングを BSWM で解析できるようなタイマーも作成で
きます。このタイマーはアクションによって開始/停止できます。接続するソフトウェアコンポーネントの中に、まだ使用でき
ないものがあっても、必要なすべてのモード宣言を BSWM で作成し、ボトムアップ式で設定を行うことができます。
11.5 ISO 26262 アプリケーションのためのウォッチドッグ
ウォッチドッグモジュールはいずれも、ISO 26262/ASIL D に即した安全関連機能のための SEooC (Safety Element
out of Context) としても利用できます。これらは実行時のタスク監視の検証のほか、ソフトウェアコンポーネントのフロー
制御にも適しています。詳しくは、MICROSAR Safe の章を参照してください。
11.6 設定
設定には、簡単で便利なツール DaVinci Configurator Pro のご利用を推奨します。詳しくは、ベクターまでお問い合わせ
ください。
図 23:DaVinci Configurator Pro による COM モジュールの設定
11.7 その他の MICROSAR 関連製品
>
DIAG:診断用システムサービスは、MICROSAR.DIAG パッケージから別途利用できます。
>
OS:オペレーティングシステムには、別途入手可能な MICROSAR.OS を使用できます。
>
LIBS:LIBS パッケージには Cyclic Redundancy Check Library (CRC)、Crypto Abstraction Library (CAL)、
E2ELIB が含まれています。AUTOSAR 4.x については、別途入手可能なパッケージが用意されています
(AUTOSAR 3.x では、LIBS は MICROSAR.SYS に含まれています)。
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プロダクトインフォメーション:MICROSAR
12 MICROSAR.DIAG – AUTOSAR に対応した UDS プロトコルの実装
MICROSAR.DIAG には、AUTOSAR に対応した UDS プロトコル ISO 14229-1:2006 (ISO 14229-1:2013 も対応) を実
装するためのベーシックソフトウェアモジュールが含まれており、自動車プロジェクト用の診断ソフトウェアとして活用でき
ます。MICROSAR.DIAG はさまざまなタスクを扱います。
>
フォールトメモリーおよびフォールト管理を自動車メーカー別に実装
>
診断テスターと ECU 間通信用の診断プロトコルを自動車メーカー別に実装
>
アクティブなエラーエントリーによって特定の機能を無効化
診断データの作成に広く用いられている設定ツール CANdelaStudio と組み合わせて使用すれば、1 つの供給元からす
べてがそろった診断ソリューションを享受することができます。
図 24:AUTOSAR 4.2 対応の MICROSAR.DIAG モジュール
12.1 機能概要
>
自動車メーカーに依存しない AUTOSAR Release 4.x と 3.x 対応ソリューション
>
さまざまな自動車メーカーに対応できるカスタマイズされたソリューション
>
診断の分野におけるベクターの長年の経験を活用
>
OBDII および WWH-OBD (Euro VI) に対応
>
診断コンフィギュレーションに関して、バリアントハンドリングはすでに組込済み
>
CANdela および ODX 形式で設定可能
>
アプリケーションコードテンプレートを最適化して生成
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43
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
12.2 応用分野
各自動車メーカーは、AUTOSAR 仕様の枠を超えた独自の診断要件を定めています。このため、ベクターでは、
MICROSAR.DIAG に自動車メーカー固有の拡張機能を付加して提供しています。この方法は量産に適しており、すでに
多くの自動車メーカーに対応済みです。特定の診断仕様がない ECU については、MICROSAR.DIAG の、自動車メーカ
ーに依存しないバンドルをご利用いただけます。
MICORSAR.DIAG は、EURO VI などの現行および将来の法的要件に使用可能です。OBDII (ISO 15031/SAE J1979)
および WWH-OBD (ISO 27145) に対するサポートは、オプションとして提供しています。
ECU の診断コンフィギュレーションにバリアントが必要な場合、MICROSAR.DIAG はこれに対応した高性能ソリューショ
ンを提供します。最大 31 個の異なるパラメーター化を定義でき、これらをリソース的に最適な方法で ECU に保存します。
これによって、同じデータやサービス、DTC への同一インターフェイスは、生成された診断コード内でまとめられるので、
ECU ソフトウェア内での重複を防ぐことができます。
12.3 機能
MICROSAR.DIAG のベーシックソフトウェアモジュールには、AUTOSAR 4.x および 3.x で定義されている 3 つのベーシ
ックソフトウェアモジュール (DCM、DEM、FIM) の機能が含まれています。
12.3.1 DEM (Diagnostic Event Manager) の機能
自動車メーカー固有の DEM モジュールには、それぞれの自動車メーカーの ECU フォールトメモリーに関する要求が実
装されています。AUTOSAR 3.x だけでなく、AUTOSAR 4.x にも対応した自動車メーカーに依存しないバリアントもあり
ます。このバリアントでは、下記の機能を標準機能として提供しています。
>
UDS 規格に基づく、全 DTC ステータスビットの管理
>
個々のスナップショットおよび拡張レコードの定義
>
あらかじめ定義された拡張レコード (OccurenceCounter など)
>
カウンターおよびタイムベースのエラーデバウンスアルゴリズム
>
メモリーがフルのとき、優先度の低いエラーを抑制
>
エラーの柔軟なアンラーニング (エイジング)
>
診断コンフィギュレーションのバリアントハンドリング
>
Link Time コンフィギュレーションバリアント
>
設定データを圧縮してコードサイズを最適化
>
複合エラーのサポート
>
AUTOSAR3.x と 4.x 仕様の混在した(AUTOSAR 混在型)のプロジェクトに最適
下記の機能はオプションで提供可能です。
>
OBDII (ISO 15031 / SAE J1979)
>
WWH-OBD (ISO 27145)
>
Post-build loadable および Post-build selectable:詳しくは、「MICROSAR バリアントハンドリング」のセクション
をご覧ください。
DEM の基本機能は、インターフェイスの定義を除き、AUTOSAR 3.x と 4.x の間でわずかながら異なります。このため、
ベクターでは移行用のソリューションを提供しています。これにより、AUTOSAR 3.x 対応のソフトウェアコンポーネントを
AUTOSAR 4.x のプロジェクトに簡単に移行することができます。
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44
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
12.3.2 DCM (Diagnostic Communication Manager) の機能
DCM は、UDS および OBDII のサービスを ECU に実装します。
AUTOSAR Release 4.x と 3.x のどちらの DCM にも、自動車メーカーに依存しないバリアントがあります。サポートされ
ている全サービスのリストについては、本章の最後にある MICROSAR.DIAG についてのテーブルをご参照ください。
特定の自動車メーカーの DCM モジュールには、特定の自動車メーカーの仕様が実装されます。このため、サポートされ
ているサービスのリストはさまざまです (たとえば、ResponseOnEvent や LinkControl のサポート追加など)。これについ
ては、より詳しい情報をご用意しています。DCM はこの他、下記の拡張機能を標準機能として提供しています。
>
診断コンフィギュレーションに関するバリアントハンドリング
>
ベクターのフラッシュブートローダーと容易に統合可能
>
ECU ソフトウェア用アプリケーションコードテンプレートの生成 (AUTOSAR 3.x)
>
J1939DCM:大型車両専用の DCM モジュール
下記の機能はオプションで提供可能です。
>
OBDII (ISO15031-5) のサポート
>
WWH-OBD (ISO 27145)
12.3.3 FIM (Function Inhibition Manager) の機能
MICORSAR FIM には、AUTOSAR 3.x および 4.x の機能が標準機能として含まれています。
12.4 設定およびパラメーター化
MICROSAR.DIAG に含まれるベーシックソフトウェアモジュールは、DaVinci Configurator Pro を使用して設定すること
で、お客様のアプリケーションのニーズに簡単に合わせることができます。これは CANdela や ODX ファイルまたは
「ECU Configuration Description」のいずれかを使用して実施できます。
AUTOSAR 3.x の場合、DCM の診断固有のパラメーター化は、CANdela ファイルでのみ実行します。「診断オーサリン
グツール」として定評ある CANdelaStudio を使えば、パラメーターを素早く簡単に作成したり、一般によく使用されている
ODX ダイアレクトからインポートすることもできます。
図 25:MICROSAR.DIAG モジュールのパラメーター化は CandelaStudio で実行
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45
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
図 26:MICROSAR.DIAG のパラメーター化は、CANdelaStudio と DaVinci Configurator Pro で実行
12.5 製品に含まれるもの
標準コンポーネントに加え、CANdela diagnostic descriptions 用コンバーターも提供されます。
12.6 診断アプリケーションに関するサービス
>
お客様固有の MICROSAR DIAG 拡張機能
>
お客様固有の診断アプリケーションの作成
>
お客様の ECU ソフトウェアに診断機能を統合
12.7 その他の関連するベクター製品
特定の ISO 規格を満たすため、MICROSAR.DIAG を下記の MICROSAR 製品と組み合わせて使用することができま
す。
>
MICROSAR.CAN (ISO 15765-3 または ISO/DIS 14229-3)
>
MICROSAR.FR (ISO/DIS 14229-4)
>
MICROSAR.IP (ISO/DIS 14229-5)
CANdelaStudio を使用すると、CANdela または ODX ファイルをパラメーター化して MICROSAR.DIAG を設定すること
ができます。詳しくは、ベクターまでお問い合わせください。
大型車両の診断には、MICROSAR.CAN の J1939 固有のモジュールが必要になります。
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46
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
12.8 サポートしている診断サービス
MICROSAR.DIAG の DCM モジュールは、下記の UDS 診断サービスをデフォルトでサポートしています。
診断サービス名
(ISO 14229-1)
サービス AUTOSAR 4.x:SWC に求め AUTOSAR 3.x:SWC に求め
ID
られる対処
られる対処
(hex)
診断および通信管理機能ユニット
DiagnosticSessionCo
ntrol
10
- (DCM で内部的に処理)
… サービス実行を許可
ECUReset
11
- (DCM/BSWM で処理)
- (DCM/BSWM で処理)
SecurityAccess
27
… セキュリティーレベルごとに … セキュリティーレベルごとに
シード/キーを計算
シード/キーを計算
CommunicationContr
ol
28
- (DCM/BSWM で処理)
- (DCM/BSWM で処理)
TesterPresent
3E
-
-
ControlDTCSetting
85
- (DEM モジュールで処理)
- (DEM モジュールで処理)
データ転送機能ユニット
ReadDataByIdentifier
22
… 各 DataElement のデータ … 各 DataId のデータ取得処
取得処理
理
ReadMemoryByAddr
ess
23
コールアウトを使用
コールアウトを使用
ReadDataByPeriodic
Identifier
2A
-
-
DynamicallyDefineDa
ta
Identifier
2C
-
-
WriteDataByIdentifier
2E
… 各 DataElement のデータ … 各 DataId のデータアクセス
アクセス処理
処理
WriteMemoryByAddre
ss
3D
コールアウトを使用
コールアウトを使用
格納データ転送機能ユニット
ReadDTCInformation
19
- (DEM モジュールで処理)
- (DEM モジュールで処理)
ClearDiagnosticInfor
mation
14
- (DEM モジュールで処理)
- (DEM モジュールで処理)
入出力制御機能ユニット
InputOutputControlBy
Identifier
2F
… 各 DataElement の I/O 制 … 各 DataId の I/O 制御
御
ルーチン遠隔起動機能ユニット
RoutineControl
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31
...各 RoutineId の開始 (停止/ ...各 RoutineId の開始 (停止/
結果要求)
結果要求)
47
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
MICROSAR.DIAG の DCM モジュールは、下記の OBD II 診断サービスをオプションでサポートします。
診断サービス名
(ISO 15031-5)
サービ SWC に求められる対処
ス ID
(hex)
CAN の診断サービス定義
Request Current Powertrain Diagnostic Data
01
…「サポートされている ID」と DEM の ID 以外
の各 PID のデータ取得処理
Request Powertrain Freeze Frame Data
02
- (DEM モジュールで処理)
Request Emission-Related Diagnostic Trouble
Codes
03
- (DEM モジュールで処理)
Clear/Reset Emission-Related Diagnostic
Information
04
- (DEM モジュールで処理)
Request On-Board Monitoring Test Results for
Specific Monitored Systems
06
… MonitorId の各 TestId のデータ取得処理
Request Emission-Related Diagnostic Trouble
Codes Detected During Current or Last
Completed Driving Cycle
07
- (DEM モジュールで処理)
Request Control of On-Board System, Test or
Component
08
… 各 TestId を処理
Request Vehicle Information
09
…「 サポートされている ID」と DEM の ID 以外
の各 InfoType ID のデータ取得処理
Request Emission-Related Diagnostic Trouble
Codes with Permanent Status
0A
- (DEM モジュールで処理)
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48
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
13 MICROSAR.MCAL –マイクロコントローラー周辺機能制御用 AUTOSAR ドライバー
MICROSAR.MCAL パッケージには、マイクロコントローラーの周辺機能を制御するドライバーが含まれています。このパ
ッ ケ ー ジ は 、 AUTOSAR 仕 様 の マ イ ク ロ コ ン ト ロ ー ラ ー 抽 象 レ イ ヤ ー (MCAL) に 完 全 に 対 応 し て い ま す 。 各
MICROSAR.MCAL ドライバーは、コントローラー固有のドライバーとして最適化されています。
図 27:AUTOSAR 4.2 対応の MICROSAR.MCAL モジュール
13.1 機能概要
>
AUTOSAR Release 4.x と 3.x に対応
>
マイクロコントローラー周辺機能を完全にサポート
>
パラメーターの依存関係は設定ツールが考慮するため設定が簡単
>
設定ツールによる妥当性テストおよび完全性テストにより、開発がスピードアップ
>
機能を無効にすることができるため、リソースを節約
>
ハードウェアバッファー利用の最適化で、ハードウェア要件が緩和
>
効率的な補助機能がゲートウェイ開発をサポート
13.2 応用分野
MICROSAR.MCAL はマイクロコントローラー周辺機能用のターンキーソリューションです。別のハードウェアに切り替え
る際は、機能ソフトウェアに変更を加える必要はなく、MICROSAR.MCAL を入れ替えて新しいドライバーを取り込むだけ
で完了です。
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49
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
MICROSAR.MCAL ドライバーは、MICROSAR パッケージ全体に完全に適合します。あとはお客様のアプリケーション
に必要な他のパッケージ (MICROSAR.CAN、MICROSAR.MEM など) をただ追加するだけでよく、こうすることで
AUTOSAR 仕様に対応した完全な通信スタックやメモリー管理などを用意できます。
13.3 機能
MICROSAR.MCAL パッケージに含まれているドライバーモジュールは、CAN、ETH、FR、LIN、IIC と、AUTOSAR 4.x
対応バージョンでは PamTst テストモジュールです。これらのモジュールは AUTOSAR 4.x に対応しており、入手可能な
各種マイクロコントローラーで使用できます。AUTOSAR 4.2 により、Ethernet スイッチドライバーが同梱されるようになり
ました。
さらに MICROSAR.MCAL には、以下の拡張機能があります。
>
CANDRV:メッセージの受信時およびメッセージ送信成功後に通知 (コールバック)。これによってアプリケーショ
ン固有コードを自動実行することが可能
>
FRDRV:バスの自己診断。FlexRay コントローラーは、アプリケーションでエラーステータスを呼び出すために、
エラーを検出するとアプリケーションにエラーを通知
以下の機能またはモジュールは、オプションで提供可能です。
>
CANDRV:「HighEnd」オプションにより、複数のベーシック CAN オブジェクトに対するフィルターオプションの拡
張、受信時の割込時間を短縮するための RX キュー、データの整合性確保と割込による負荷の軽減を目的とし
たメールボックスの個別ポーリング機能が提供されます。
>
IICDRV:IICDRV には、Inter-Integrated Circuit Bus (I C) を介して外部周辺機能チップに接続するためのイン
ターフェイス用ドライバーが含まれています (AUTOSAR の拡張)。
>
Post-build loadable/Post-build selectable:これらの機能は所定の MCAL でオプションで提供可能です。
2
13.4 設定
設定には、簡単で便利なツール DaVinci Configurator Pro のご利用を推奨します。詳しくは、ベクターまでお問い合わせ
ください。
図 28:DaVinci Configurator による設定:Freescale MPC560xB (Bolero) を例としたクロック設定
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50
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
13.5 MICROSAR MCAL 統合パッケージ
MICROSAR MCAL 統合パッケージは、サードパーティーの MCAL をお客様用の MICROSAR ベーシックソフトウェアス
タックに統合する部分をカバーします。ベクターはお客様や半導体メーカーから提供された MCAL をセットアップし、
MICROSAR ベーシックソフトウェアとの統合に必要なものを補足した後、ベクターツールチェーンの構成に適合するパッ
ケージを作成します。MCAL 統合パッケージには以下のサービスが含まれています。
13.5.1
お客様へのサポート
>
MCAL ベンダーのスケジュールに関する助言
>
コンパイラーのバージョンや AUTOSAR のバージョンといった基本的なパラメーターの確認
>
互換性などの技術的な問題の早期発見
>
ベーシックソフトウェアと MCAL のインタラクションに関する連絡窓口
13.5.2 組込モジュールの統合
>
検収および統合可能性の実証:適切な評価ボードでの MCAL の起動と、MICROSAR ベーシックソフトウェアと
の統合テストの実施
>
上位ソフトウェアレイヤーに対するコンパイル/リンクテスト
>
ベーシックソフトウェアに関連する MCAL 基本機能のテスト (CAN 通信、NV データストレージなど)
>
ベーシックソフトウェアと MCAL の間の組込インターフェイス (MemMap、Compiler Config、Make-Files) の作
成/サービス
>
「AUTOSAR 混在型」プロジェクト向けのラッパーの開発
>
サードパーティーのソフトウェアのベクターの製品構成への統合。MCAL 自体は変更せず、上記のような補足を
行います。そのためお客様はいつでも、MCAL を独立して更新できます。
提供された MCAL に対するこのような一連のサービスによって、現場での MCAL のセットアップが大幅に簡素化し、開
発チームはアプリケーションの開発に集中できます。使用中の MCAL を更新した場合は、MCAL 統合パッケージのサー
ビスを改めてご依頼ください。
図 29:MCAL 統合パッケージのサービスプロファイル
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51
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
13.5.3 ツールの統合
選択した MCAL をベクターのツールチェーンに統合する場合は、その特性に応じて複数の方法が考えられます。ベクタ
ーが特に重視するのは、お客様にとって最適で、最も使いやすいソリューションの実現です。したがって、MCAL コンポー
ネントを BSW コンフィギュレーションに組み込むための基本的な条件としては以下が挙げられます。
>
AUTOSAR に準拠した記述ファイルがある
>
MCAL の妥当性検査/設定の担当者が AUTOSAR に準拠したコンフィギュレーションファイルを操作できる
これらの事前条件が満たされれば、設定ツールの DaVinci Configurator Pro に MCAL を統合し、モジュールを生成でき
ます。
独自開発のフォーマットが使用されている場合や、設定の作成と検証を簡単に行うために、MCAL 設定ツールで複雑な
抽象化を扱う必要がある場合、ベクターは多様なコンフィギュレーションファイルやツールをスムーズに併用できるよう、
適切な手段を提供します。
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52
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
14 MICROSAR.EXT – 外付デバイス制御用の AUTOSAR ドライバー
MICROSAR.EXT には、CAN 用 (CANTRCV)、FlexRay 用 (FRTRCV)、LIN 用 (LINTRCV)、Ethernet 用 (ETHTRCV)
それぞれの、通信関連の AUTOSAR トランシーバードライバーが含まれています。さらにそれ以外にも、EEPROM、フラ
ッシュメモリー、watchdog (DRVEXT) などの外付デバイス用ドライバーも含まれています。ドライバーに搭載されている
機能は、AUTOSAR の「ECU Abstraction Layer」に規定されている機能で、AUTOSAR 4.x に対応しています。それぞ
れの機能は該当デバイスに合わせて最適化されており、一般に普及している各種デバイスで使用可能です。
図 30:AUTOSAR 4.2 対応の MICROSAR.EXT モジュール
14.1 機能概要
>
外付のトランシーバーデバイスおよびメモリーデバイスの制御に最適
>
AUTOSAR Release 4.x と 3.x に対応
>
パーシャルネットワーキングに対するトランシーバーのサポート
>
LIN および Ethernet トランシーバーに対するサポートも追加
>
他のモジュールとのパラメーター依存関係が考慮されているので設定が簡単
>
設定ツールによる妥当性および完全性チェックにより、開発がスピードアップ
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53
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
14.2 応用分野
MICROSAR.EXT は、外付周辺機能のデバイス用のターンキーソリューションです。したがって、外付ハードウェアを切り
替えるときにアプリケーションソフトウェアに変更を加える必要はなく、MICROSAR.EXT の該当ドライバーを切り離せば
よいだけです。
あとはお客様のアプリケーションに必要な他のパッケージ (MICROSAR.CAN、MICROSAR.MEM など) をただ追加する
だけでよく、こうすることで AUTOSAR 仕様に対応した通信スタックやメモリー管理を用意できます。
CAN ネットワークのパーシャルネットワーキングには専用のトランシーバーが必要です。MICROSAR.EXT には、これら
のトランシーバーの多くに適したドライバー (CANTRCV) がすでに用意されています。
14.3 機能
MICROSAR.EXT のベーシックソフトウェアモジュールには、AUTOSAR 4.x で定義されている機能と下記の拡張機能が
含まれています。
>
FlexRay のバスエラー検出
>
LIN トランシーバードライバー (AUTOSAR 3.x にも対応)
>
Ethernet トランシーバードライバー (AUTOSAR 3.x にも対応)
>
Ethernet スイッチドライバー
MICROSAR SBC ドライバーは、オプションとして提供されています。これは、使用する特定のハードウェアに応じて、トラ
ンシーバーやウォッチドッグなどの各種の周辺機器をサポートし、外付周辺機器と MICROSAR ソフトウェアのリンクを簡
単に行えるようにします。ご使用のハードウェアに対する SBC ドライバーの正確な機能の範囲については、ベクターまで
お問い合わせください。
14.4 設定
設定には、簡単で便利なツール DaVinci Configurator Pro のご利用を推奨します。詳しくは、ベクターまでお問い合わせ
ください。
図 31:DaVinci Configurator Pro による MICROSAR.EXT の設定
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54
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
14.5 その他の MICROSAR 関連製品
外付デバイスは、SPI、DIO、ポートのいずれかで物理的に駆動されます。したがって、それに対応するドライバー
(SPIDRV、DIODRV、PORTDRV) が必要で、これらは MICROSAR.CAL に含まれています。
14.6 その他のサービス
ベ ク タ ー で は 、 お 客 様 独 自の ド ラ イ バ ー や サ ード パ ーテ ィ ー 製 ( 半 導体 メ ー カーな ど ) の ド ラ イ バ ー を DaVinci
Configurator Pro に統合するサービスを提供しています。これにより、単一のツールでシームレスかつ迅速に ECU ソフト
ウェアのすべてを設定できます。
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プロダクトインフォメーション:MICROSAR
15 MICROSAR.IO – AUTOSAR デジタル I/O ハードウェアの抽象化
Digital Input Output Hardware Abstraction (DIOHWAB:デジタル I/O ハードウェア抽象化) の主な仕事は、ソフトウェア
コンポーネントと MCAL の DIO との間で、AUTOSAR インターフェイス経由で接続を確立することです。これにより、アプ
リケーションやソフトウェアコンポーネントに、RTE を通したベーシックソフトウェアへのアクセスが与えられます。
MICROSAR.IO は、ECU 周辺からの物理的な I/O シグナルを設定、読出、操作できるよう、クライアント/サーバーおよび
送信者/受信者のあらゆるインターフェイスを、その規模を問わずフルサポートします。その一方で、ユーザーが構造や配
列を引数やデータ要素として定義することも可能となっています。MICROSAR.IO では、AUTOSAR で規定されている機
能に加えて、独自のシグナル定義を作成することもできるため、ユーザーはアプリケーション固有のシグナル処理を簡単
に実装できます。
図 32:AUTOSAR 4.2 対応の MICROSAR.IO モジュール
15.1 機能概要
>
ECU シグナルの取得や供給を行うユーザー固有コードを素早く実装
>
コード例の生成:ユーザーはデジタルシグナルの読出/書込用テンプレートと拡張可能な C コードを選択可能
>
必要なインターフェイスがすべて定義された SWC Description を提供
>
AUTOSAR Release 4.x と 3.x に対応
15.2 応用分野
MICROSAR.IO は、「DIO Hardware Abstraction」開発の基盤として有用です。MICROSAR.CAL に含まれるマイクロコ
ントローラー周辺機器用の適切なドライバーと組み合わせて使用することで、ECU ソフトウェアの完全な I/O スタックを用
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56
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
意することができます。接続されている周辺機器の IO シグナルと機能ソフトウェアを相互接続することによって、アプリケ
ーションソフトウェアをハードウェア非依存にすることができます。
MICROSAR.IO の設定では、個々のシグナルを定義します。その際、任意の数のポートプロトタイプを、1 つのポートイン
ターフェイスから導出できます。送信者/受信者インターフェイスでは、ポートプロトタイプ対ランナブルエンティティーが 1:n
になるような分配が可能です。RTE のランナブルエンティティーと、SchM のスケジューラブルエンティティーは、ユーザー
設定可能です。MICROSAR.IO には、機能ソフトウェアが RTE 経由で I/O シグナルにアクセスするのに必要な、クライア
ント/サーバーインターフェイスやコードテンプレートがすべて備わっています。これらを使い、シグナルの条件設定やフィ
ルタリングを行うことができます。
15.3 設定
設定には、簡単で便利なツール DaVinci Configurator Pro のご利用を推奨します。
設定/生成ツール「DaVinci Configurator Pro」では、MICROSAR.MCAL や MICROSAR.IO の設定パラメーターの妥当
性チェックを行うことができます。次のような「ボトムアップ」方式を推奨します。
>
MCAL ドライバーを設定
>
MICROSAR.IO を設定
>
MICROSAR.IO モデリング用のソフトウェアコンポーネントディスクリプションを生成
図 33:DaVinci Configurator Pro による DIOHWAB モジュールの設定
15.4 その他の MICROSAR 関連製品
外付デバイスで I/O シグナルにアクセスする場合、I/O スタックには MICROSAR.EXT のドライバーも必要になります。
15.5 その他のサービス
ベクターでは、プロジェクトワークの一環として、特殊な ECU の「DIO Hardware Abstraction Layer」の開発をサポートい
たします。ベクターが持つ AUTOSAR の仕様や手法に関する詳しい知識や、ECU ソフトウェアの統合における豊富な経
験を是非ご活用ください。
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プロダクトインフォメーション:MICROSAR
16 MICROSAR.RTE - AUTOSAR 仕様に対応したソフトウェアコンポーネント用に最適なランタイ
ム環境
ベクターの MICROSAR.RTE (ランタイム環境) は、スケーラブルで高度に最適化された AUTOSAR ランタイム環境です。
RTE は AUTOSAR によって導入されたモジュールの 1 つで、ソフトウェアコンポーネント間の通信を管理します。情報フ
ロー全体の整合性を確認し、アプリケーションソフトウェアおよびベーシックソフトウェア、複合デバイスドライバー (CDD)
の間のインターフェイスを提供します。
図 34:AUTOSAR 4.2 対応の MICROSAR.RTE モジュール
16.1 機能概要
>
設定が容易でスケーラブル
>
AUTOSAR Release 4.x と 3.x に対応
>
設定の整合性を徹底的にチェック
>
インテリジェントな同期メカニズムでコードを最適化
>
ソフトウェアコンポーネント用に生成されたコードテンプレートなどが用意されているので、AUTOSAR 対応作業
がすぐに開始可能
>
移行プロジェクトに最適
>
S/R ポート、InterRunnable (ランナブル間で共通に使用できる) 変数、PerInstance (インスタンスごとの) メモリ
ーに XCP でアクセスできるため、アプリケーションのテストが簡素化
16.2 応用分野
ある ECU の機能ソフトウェアを AUTOSAR 対応ソフトウェアコンポーネントで実装するときには、ランタイム環境として
RTE が必要です。ECU ソフトウェアはモジュール構成になっているため、高い柔軟性があります。つまり、人手を使って
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プロダクトインフォメーション:MICROSAR
開発したソフトウェアコンポーネントや、モデルベースのツールを使って設計したソフトウェアコンポーネントを、複数の
ECU プロジェクトで使い回すことができます。RTE は、その特定の ECU に合わせて (場合によってはベーシックソフトウ
ェアモジュールにも合わせて) 再設定、再生成すればよいだけです。また、ソフトウェアコンポーネントについても、1 つの
ECU 上で複数のインスタンスに使用することが可能です。
MICROSAR.RTE を生成する際、ユーザーは 2 つのモードのどちらかを選ぶことができます。
>
初期段階の個々のソフトウェアコンポーネント開発に適した、コントラクトフェーズ生成。この場合、ジェネレーター
からは、RTE 全体ではなく、個々のソフトウェアコンポーネント用のヘッダーファイルだけが生成されます。ソフト
ウェアコンポーネントは個別にコンパイルして、たとえば、オブジェクトコードとして開発パートナーに転送するなど
できます。
>
ECU ソフトウェア全体用の RTE 生成。このモードで生成されたコードは、非常に効率がよく、必要とするメモリー
スペースもわずかです。ECU 全体の設定に適しており、また、実行時間が短く、割込無効時間も最小限なのでシ
ステムリソースもほとんど必要としません。この特性は、使用するハードウェアのプロパティーに合ったインテリジ
ェントな同期メカニズムなどによるものです。
16.3 機能
MICROSAR.RTE には、AUTOSAR 4.x と 3.x に対応した、下記の機能が含まれています。
>
送信者/受信者間通信、クライアント/サーバー間通信
>
モード管理
>
ランナブル間で共通に使用される変数と排他エリア
>
送信者/受信者ポートを介した不揮発メモリーブロックソフトウェアコンポーネントへのアクセス
>
ランナブルのトリガー
>
ソフトウェアコンポーネントのオンライン/オフラインのキャリブレーションだけでなく、XCP プロトコルを使用した、
S/R ポート、InterRunnable 変数、Per-Instance メモリーの測定もサポートされています。
>
ソフトウェアコンポーネントの複数インスタンス化、Per-Instance (インスタンスごとの) メモリーのサポート
>
Schedule Manager/BSW Scheduler (SCHM):AUTOSAR 4.0 以来、SCHM モジュールの機能は RTE が提
供しています。以前、これは MICROSAR.SYS に含まれていました。SCHM モジュールについて詳しくは、
MICROSAR.SYS の章を参照してください。
>
COMXF、SOMEIPXF、E2EXF に対するトランスフォーマーインターフェイスのサポート。詳しくは、
MICROSAR.COM の章を参照してください。
オプシ ョンの SOMEIPXF を通じ た外部クライアント /サーバー通信 (ECU 間) 。このほか、 MICROSAR.RTE は
AUTOSAR 3.x 対応の下記機能も備えています。
>
「SWC Description」に基づいた、ソフトウェアコンポーネント用コードテンプレートの生成。このテンプレートには
RTE の API がすべて含まれています。
>
AUTOSAR オペレーティングシステムに定められた、メモリー保護メカニズムの使用。この機能は、ベクターが提
供する AUTOSAR オペレーティングシステムの MICROSAR.OS を使用している場合に特に適しています。
>
AUTOSAR のコンセプトである「モード依存ランナブル」のための初期化ランナブルの設定
>
RTE のプロパティーを表示する HTML レポートの生成。レポートには、計算された RTE リソース負荷 (RAM+コ
ンスタント) などの情報が含まれています。
>
既存のキャリブレーションおよび診断基準へ簡単にリンクできる、A2L ファイルの生成
以下の機能はオプションで提供可能です。
>
メモリー保護のための MPU のサポート
>
マルチコアのサポート
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59
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
>
Post-build selectable:この機能は MICROSAR 製品ファミリー内の「Identity Manager」で利用できます。.詳しく
は、「MICROSAR バリアントハンドリング」のセクションをご覧ください。
ご要望があれば、下記のオプションもご提供可能です。
>
内部/外部/バックグラウンドからのランナブルのトリガーのサポート (AUTOSAR 4.x 対応)
>
ポートおよびシグナルのスケーリング (AUTOSAR 4.x 対応)
>
値の範囲チェック (AUTOSAR 4.x 対応)
図 35:MICROSAR.RTE によりソフトウェアコンポーネント用のコードテンプレートが生成可能
16.4 Basic Runtime Environment (BRE)
Basic Runtime Environment (BRE) を使用することにより、AUTOSAR に対応していないアプリケーションと、実績ある
MICROSAR ベーシックソフトウェアとの統合が可能になります。BRE を使用すれば、AUTOSAR で定義されている正式
なソフトウェアコンポーネントの設計は要求されません。既存のアプリケーションアーキテクチャーの使用を可能にすると
いう点で、BRE の使用は ECU プロジェクトを AUTOSAR アーキテクチャーに移行する最初の一歩となります。
アプリケーションは AUTOSAR のソフトウェアコンポーネントを定義しなくても、BRE を使用してベーシックソフトウェアの
機能に直接アクセスできます。ソフトウェアコンポーネントとベーシックソフトウェアを仲介するミドルウェアの RTE の代わ
りに、アプリケーションコードが使用されます。
アプリケーションと MICROSAR ベーシックソフトウェアとの統合を手軽に行えるよう、BRE は、通常は RTE が実装する
以下のような基本機能を備えています。
>
サービスレイヤーのベーシックソフトウェアモジュールのための型定義の生成
>
設定可能なタスクマッピングに基づく、ベーシックソフトウェアの main 関数の呼出
>
ベーシックソフトウェアモジュールの排他エリアの管理
ベーシックソフトウェアは AUTOSAR に準拠したインターフェイスを使用します。そのため BRE を使用する場合は、通常
は RTE がベーシックソフトウェアに提供するインターフェイス機能を、アプリケーションが代わって提供する必要がありま
す。
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60
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
BRE では機能が足りないという場合は、MICROSAR RTE を使用するのが適切です。熟練した MICROSAR の指導者
が、AUTOSAR 互換アプリケーションとベーシックソフトウェアアーキテクチャーに移行するお客様の作業を支援します。
16.5 設定
RTE は、DaVinci Configurator Pro オプション RTE、もしくは DaVinci Developer で設定することができます。詳しくは、
ベクターまでお問い合わせください。
16.6 製品に含まれるもの
標準の製品コンポーネントに加えて、サンプルプログラムと make ファイルも同梱されています。
16.7 その他の MICROSAR 関連製品
RTE には、MICROSAR.OS や osCAN などのオペレーティングシステムが必要です。
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61
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
17 MICROSAR.AMD – AUTOSAR のモニターおよびデバッグ
MICROSAR.AMD には、ECU の開発とテストを大幅に簡素化する便利な機能が多数含まれています。AMD はコア機
能として、アプリケーションや MICROSAR ベーシックソフトウェアのエラーとイベントをレポートする機能のほか、特定時
点での CPU 負荷やソフトウェア実行時間の情報を提供する機能を備えています。
図 36:AUTOSAR 4.2 対応の MICROSAR.AMD モジュール
17.1 機能概要
>
ECU 内部データを取得することにより、ECU のテストを簡素化 (AUTOSAR 3 用に実装済み)
>
起動および go-to-sleep 動作の測定が容易
>
アプリケーションおよびベーシックソフトウェアの CPU 負荷と実行時間を測定
>
必要な A2L ファイルの自動生成
>
ベーシックソフトウェアのエラー状態とプログラムフローのトレースメッセージをレポート
>
ASAM によって規格化された、広く普及している XCP プロトコルを使用
17.2 応用分野
MICROSAR.AMD パッケージは AUTOSAR ECU ソフトウェアの効率的なテストを支援します。MICROSAR.AMD のベ
ーシックソフトウェアモジュールは、MICROSAR ベーシックソフトウェアの重要な内部変数、状態、エラーメッセージのす
べてにアクセスできます。
XCP プロトコル (Universal Calibration Protocol) は測定やキャリブレーションの分野でよく使われていますが、これは
ECU 内 部 の パ ラ メ ー タ ー を 転 送 す る の に 非 常 に 適 し て い ま す 。 ベ ク タ ー は そ れ を 踏 ま え 、 XCP に 基 づ い て
MICROSAR.AMD を開発しました。
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62
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
図 37:MICROSAR.AMD は CANoe.AMD と連携し、ECU 内部情報へのアクセスを容易にします
17.3 機能
DBG (Debugging) および DLT (Diagnostic Log and Trace) の両モジュールの機能は AUTOSAR 4.x で規定されてい
ますが、ベクターはすでに AUTOSAR 3 でこれに対応しています。MICROSAR.AMD には、AUTOSAR 仕様に加えて、
CPU 負荷と任意の実行時間を測定する機能が装備されています。
MICROSAR.AMD で読み出された値は、XCP Slave を介して XCP Master に送られ、表示や解析が行われます。
PC 側の XCP Master には、ベクターの以下のいずれかのツールを使用できます。
>
CANape – MICROSAR の DLT および DBG モジュールを併用
>
CANoe.AMD (バージョン 8.1 以降) – MICROSAR の DLT、DBG、RTM モジュールを併用
これらのツールと、測定オブジェクトを記述した ASAM A2L ファイルがあれば、ECU 内部データを選択し、そのフローを
解析できます。CANape は AMD 用に拡張され、「デジタル Window」とシグナル表示の「ステータス」が追加されていま
す。CANoe.AMD は、専用の「ステートトラッカー」Window が追加されて拡張されています。これによって、個別の状態
やバイナリシグナルを 1 つの Window に見やすく表示できます。
図 38:CANoe.AMD のステートトラッカーWindow を使用した状態変化の評価
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63
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
17.3.1 AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュールからの内部変数の取得
ECU テ ス ト で は 、 ベ ー シ ッ ク ソ フ ト ウ ェ ア モ ジ ュ ー ル の 状 態 変 化 の 原 因 と な っ た 外 部 / 内 部 の ア ク シ ョ ン を 、
MICROSAR.AMD の DBG ベーシックソフトウェアモジュールを使用して判別できます。DBG モジュールは必要な
MICROSAR ベーシックソフトウェアモジュールの内部変数を、XCP 経由でマスターに送ります。
17.3.2 MICROSAR.RTE からの内部変数の取得
ECU ソフトウェアのランタイム環境に MICROSAR.RTE を使用している場合は、ソフトウェアコンポーネント間のデータフ
ローを XCP 経由でモニターできます。RTE 設定の「測定支援」オプションを有効にすると、以下に示す RTE の内部オブ
ジェクトが取得されます。
>
InterRunnable 変数
>
送信者/受信者ポート
>
モードポート
>
Per-Instance メモリー
これらを利用して、ECU 内および ECU 間の通信のモニターや、接続されていない送信者/受信者ポートの測定および刺
激入力を行うことができます。
17.3.3 内部エラーメッセージおよび警告の取得
実行中、DLT ベーシックソフトウェアモジュールは XCP を介して、ベーシックソフトウェアからレポートされるエラーメッセ
ージと警告をすべて取得し、DET モジュールに送信します。DLT モジュールはさらに、エラーメモリー (DEM) 宛ての通知
を、能動的に XCP Master に転送します。
DLT モジュールは、プログラムフローとアプリケーションの状態のモニターのため、必要なトレースメッセージをプレーンテ
キストでレポートできます。これは、必要なテキストを実行時に送信できる、「WriteLine」のような API を通じて行われます。
その他に、実行時間に対して最適化した、事前定義済みのテキストブロックを送信する方法もあります。
17.3.4 CPU 負荷と実行時間の測定
MICROSAR.AMD と CANoe.AMD を使用すると、アプリケーションソフトウェアやベーシックソフトウェアモジュールの任
意のコードのセクションを選択し、その実行時間を測定できます。測定結果は CANoe テスト機能セットによって、HTML
や CSV のレポートとして生成されます。
17.3.5 XCP Master 用 A2L ファイルの生成
XCP Master 用の A2L ディスクリプションファイルは、ECU コンフィギュレーションファイル (ECUC) の設定データに基づ
き、DaVinci ツールを使用して生成します。測定可能なオブジェクトの値にシンボル名が存在する場合はそれらも格納さ
れ、後から表示に利用されます。また、アプリケーション固有の他の A2L フラグメントも、Master の A2L ファイルに組み
込むことが可能です。測定を開始する前に、ASAP2 Updater を使用して、A2L ファイルを変数の実際のアドレスを用いて
更新します。ASAP2 Updater は CANape および CANoe.AMD に付属しています。
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64
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
図 39:XCP Master 用の A2L ファイルの作成
17.4 設定
簡単に設定を行うには、DaVinci Configurator Pro のご利用を推奨します。詳しくは、ベクターまでお問い合わせください。
17.5 製品に含まれるもの
MICROSAR.AMD には、以下のコンポーネントが含まれています。
>
ソースコードとしてのソフトウェアモジュール
>
A2L ジェネレーター (Windows XP/Windows 7 用)
>
ベーシックソフトウェアモジュールディスクリプションファイル
>
マニュアル類
17.6 その他の関連製品
MICROSAR.AMD を使用するには、前提条件としてベクターの以下のソフトウェアモジュールが必要です。
>
CAN、FlexRay、Ethernet については MICROSAR.XCP を併用
>
ベクターの VX1000 システム。スループットを最大化し、実行時間への影響を最小限に抑えるために、これらの
ご利用を推奨します。VX1000 に関する情報は、ベクターWeb サイトに掲載しております (www.vectorjapan.co.jp/vx1000)。
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65
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
18 MICROSAR Safe – ISO 26262 ASIL D までに準拠した機能安全 ECU 対応
安全規格である ISO 26262 には、自動車分野の安全関連 ECU を開発する際に従うべき基準が定義されています。ベ
クターの MICROSAR Safe は、AUTOSAR で最高位 (ASIL-D) までの安全性レベルを実装するためのソリューションで
す。
図 40:AUTOSAR 4.x 対応の MICROSAR Safe モジュール
18.1 機能概要
>
Automotive Safety Integrity Level (ASIL) の全レベル (ASIL A から ASIL D) に対応する認定済みソリューショ
ン
>
安全メカニズムにより、ソフトウェアフロー中の無干渉を保証
>
ソフトウェアの ASIL および QM のセクションを、1 つのマイクロコントローラー上で実行 (ASIL の混在)
>
品質保証コストの削減
>
ランタイム用に最適化されたコンテキスト管理の実装
>
フロー制御およびデッドラインのモニター
>
外部通信の検証
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66
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
18.2 応用分野
MICROSAR Safe モジュールは、ISO 26262/ASIL D に従って開発された SEooC (Safety Elements out of Context)
で、ECU への安全関連機能の統合を支援します。
MICROSAR Safe により、異なる部分で構成された安全関連ソフトウェアを、ASIL が異なる部分や、安全に関連しない
(QM ソフトウェア) 部分を同じ ECU 上で、無干渉を保ちながら実行することが可能になります (ASIL 混在システム)。
MICROSAR Safe は、機能安全の分野で長くパートナー関係にある TTTech とのコラボレーションの成果であり、これを
使用することで、ISO 26262 に準拠した、ASIL D までのレベルの、AUTOSAR に基づく ECU アプリケーションを開発で
きます。
18.3 機能
MICROSAR Safe の SafeWatchdog、SafeContext、SafeCom パッケージは AUTOSAR 仕様に従って実装されており、
他の MICROSAR モジュールと互換性があります。これには以下の機能が含まれています。
18.3.1 SafeWatchdog - 安全関連ソフトウェアコンポーネントのフロー制御
SafeWatchdog の WDGM モジュールは、安全関連機能の正しいタイミングと実行時の動作をモニターします。これには、
AUTOSAR 4.x で安全関連アプリケーション用に特に定義されている、「Program Flow Monitoring (プログラムフローの
モニター)」が含まれています。
SafeWatchdog パッケージは、WDGIF、WDGDRV、WDGEXT の各モジュールを使用して、内蔵または外付ハードウェ
アのウォッチドッグへのインターフェイスを実装します。
18.3.2 SafeContext - メモリー保護と安全なコンテキスト切替
MICROSAR オペレーティングシステムの SafeContext オプションは、ECU が安全関連アプリケーションを適切なマイク
ロプロセッサー、たとえば MPU (Memory Protection Unit) を持つマイクロプロセッサー上で処理する際のメモリー保護を
保証します。MICROSAR.OS (SC3/SC4) を使用することにより、ソフトウェアの多様なパーティションを相互に分離でき
ます。これによって、ソフトウェアコンポーネントが他のソフトウェアコンポーネントのメモリーを不正に書き換えてデータを
破壊するのを防止できるほか、タスクの切替や割込の間、正しくコンテキストが切り替えられることを保証します。
SafeContext には、MPU によるパーティショニングを支援する、特権レジスターへのアクセスの保護、MPU テスト機能、
パーティション間でのデータ交換の保護といった追加の機能が含まれています。
18.3.3 SafeCom - 安全な ECU 内および ECU 間通信
異なる ECU 上の安全関連アプリケーション間でデータを交換する場合は、そのデータが正しく伝達されたかをチェックし
なければなりません。データの内容はチェックサムで保護され、データの正しいシーケンスはメッセージカウンターでモニ
ターされます。これらのチェックのいずれかが失敗すると、アプリケーションに通知が送られ、それに応じた処理が行われ
ます。これで、なりすまし、障害、データ反転といったエラーが検出されます。
SafeCom に含まれている Protection Wrapper は、AUTOSAR に準拠したシグナルベースのインターフェイスです。これ
によって、RTE より上のアプリケーションで、E2E 検証を簡単に実施できます。
18.3.4 SafeRTE – 安全な ECU 内部通信
MICROSAR.RTE は、オペレーティングシステムの「SafeContext」オプションを介して、メモリーセクションのパーティショ
ニングをサポートします。これによって ISO 26262 の「デコンポジション」が可能になります。ISO 26262 では、ECU 内の
アプリケーション間で安全な通信を確立するために、RTE の認定の取得が必要となっています。そのために提供される
オプションツールの「RTEverify」には、さらに詳しい機能と手引きが用意されています。
18.3.5 SafeCRC – 安全なチェックサムの計算
関連するユーザーデータを保護するため、AUTOSAR で規定されている、ISO 26262 準拠の CRC ライブラリーが、
ASIL D のレベルまで提供されます。
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67
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
18.3.6 SilentBSW
安全関連 ECU では、その ECU をそれぞれの要件が最高位の ASIL (Automotive Safety Integrity Level) を完全に満
たすように開発するか、あるいは望ましくない相互作用が以下の間で生じないことを確認するかのいずれかが求められま
す。
>
QM ソフトウェアと ASIL が設定されているソフトウェアとの間
>
ASIL レベルが異なるソフトウェアコンポーネントの間
こ の 「 Freedom from interference 」 と い う 要 件 に は 、メ モ リー ア クセ ス に よる 影響 を 受 け な い こ と も 含 ま れま す 。
MICROSAR SilentBSW はこれを、ベーシックソフトウェアを QM レベルに保つことで実現します。さらに、ASIL ソフトウェ
アとの干渉のない共存は、MPU (Memory Protection Unit) を使用せずに済む方法で保証されます。
MICROSAR SilentBSW は、ベーシックソフトウェアが書込コマンドを実行する際は必ず、許可されたメモリー範囲にアク
セスを制限します。これはツールを用いた静的な解析に、ベーシックソフトウェア内での個別の実行時チェックを併せて実
施する方法で行われ、これによって QM ソフトウェアが ASIL ソフトウェアのメモリーセルを上書きする事態を防止できま
す。
18.3.7 ハードウェアの検証
MICROSAR Safe のモジュールは、安全ハードウェアの存在を仮定しています。使用するハードウェアがこの要件を満た
さない場合は、ソフトウェアによる適切なテスト機能でそれに対応することもできます。このためには、具体的な安全目標
を考慮しなければなりません。
SafeContext には、MPU に関連する補助機能がすでに用意されています。RAM、Flash、MPU、I/O などを検証するた
めのその他の機能は、プロジェクト作業に応じてベクターや TTTech から提供されます。
18.3.8 安全関連機能のための RTE
MICROSAR.RTE は、オペレーティングシステムの SafeContext オプションを介して、メモリー領域のパーティショニング
をサポートします。これによって、ISO 26262 の「デコンポジション」が可能になります。RTE の認定取得のための追加の
機能やマニュアルは、ベクターから入手できます。
18.4 設定
MICROSAR Safe のベーシックソフトウェアモジュールの設定には、ベクターのツール「DaVinci Configurator Pro」のご
利用を推奨します。
18.5 製品に含まれるもの
MICROSAR Safe には、標準のコンポーネントに加えて、Safety Elements out of Context (SEooC) ごとのセーフティー
ケース文書とセーフティーマニュアルが付属しています。
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68
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
18.6 実装
安全関連の機能は、MICROSAR Safe の Safety Elements out of Context (SEooC) によってサポートされます。これら
は、安全関連以外のソフトウェア層での潜在的なエラーを検出し、処理します。SEooC は AUTOSAR 仕様に適合し、
ISO 26262/ASIL D に準拠して開発されています。
MICROSAR Safe には以下の SEooC が含まれています。
SafeCom:
>
E2ELIB:エンドツーエンドのライブラリー
>
Protection Wrapper:エンドツーエンドの保護ラッパー
SafeContext:
>
メモリー保護と安全なコンテキスト切替 (MICROSAR.OS のオプション)
SafeWatchdog
>
WDGM:Watchdog Manager (ウォッチドッグマネージャー)
>
WDGIF:Watchdog Interface (ウォッチドッグインターフェイス)
>
WDGDRV:内部ウォッチドッグデバイス用のドライバー
>
WDGEXT:外部ウォッチドッグデバイス用のドライバー
SafeCRC
>
CRC:ISO 26262 に準拠した AUTOSAR ライブラリー
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69
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
19 MICROSAR Security –AUTOSAR ECU のためのアクセスセキュリティー
車両内の安全関連情報や個人データの増加に伴い、意図的なデータの改竄やデータの窃盗に対する防御が重要度を増
しています。情報の完全性、信頼性、機密性を保護するために使われるのが、セキュリティーのメカニズムです。ベクター
はこの分野向けに、AUTOSAR 4.2 で規定されているコンポーネントを提供できます。
図 41:AUTOSAR 4.2 に準拠したセキュリティーモジュール:CSM を介して、Secure Hardware Extension (SHE) 規格に適合したハ
ードウェアの使用が可能です
19.1 MICROSAR Security の機能概要
>
1 つの供給元による、規格に準拠した安全機能の実装
>
確立された暗号化アルゴリズム
>
重要なデータの改竄に対する防御
>
通信エンドポイントの認証
>
データの不正読取に対する防御
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70
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
19.2 機能
セキュリティー機能は 2 つのモジュールで配布されています。Crypto Abstraction Library (CAL) は AUTOSAR ライブラ
リーを提供しますが、Crypto Service Manager (CSM) はシステムサービスレイヤーで使用できます。
どちらのモジュールにもほぼ同じサービスを提供しますが、技術的な特性はそれぞれ異なり、使われ方も異なります。ど
ちらのモジュールもラッパーモジュールとして作成されているため、抽象インターフェイスしか備えておらず、したがって対
称暗号化のような論理サービスしか提供しません。使用される実際のアルゴリズム (AES-128 など) は ECU 設定で設定
されます。
CAL および CSM はいずれも下記の機能を備えています。
>
暗号サービスへのアクセス。
>
暗号サービスごとに、最大 32 種類のサービスコンフィギュレーションを作成可能。これによって、サービスを実施
するためのアルゴリズムが定義されます。
>
サービスを同期的に実行
>
大量のデータストリームを段階的に処理可能 (「ストリーミング」)
19.2.1 Crypto Abstraction Library (CAL):
>
CAL は AUTOSAR ライブラリーであるためステートレスです。つまり、計算のコンテキストは呼出側が管理しな
ければなりません。サービスは呼出側のタスクで処理され、任意の数の呼出側が並行して要求を送信できます。
>
すべてのサービスはソフトウェアで実現されます。
>
このアルゴリズムの実装は、補助モジュールの Cryptographic Primitive Library (CPL) に入っています。CAL
を選択した場合は、実行が対称的であるか非対称的であるかを問わず、MICROSAR.LIBS クラスターの CPL
補助モジュールは必須です。
19.2.2 Crypto Service Manager (CSM):
>
このモジュールはサービスレイヤーの一部です。
>
RTE ポートのメカニズムを介して暗号サービスへのアクセスを提供します。その他には、ベーシックソフトウェア
モジュールまたは CDD でサービスに直接アクセスする方法もあります。
>
同期的または非同期的に実行されるように設定できます。
>
このアルゴリズムの実装は、補助モジュールの Cryptographic Library Module (CRY) に入っています。CSM
を選択した場合は、実行が対称的であるか非対称的であるかを問わず、MICROSAR.SYS クラスターの CRY
補助モジュールは必須です。
>
サービスは CRY モジュールのソフトウェアに直接実装するか、セキュリティーハードウェアの制御に使われるド
ライバーに渡すことが可能です。
ベクターはお客様の要望に応じて、パッケージ化されていないサービスを別途提供します。お気軽にご相談ください。
19.2.3 Secured OnBoard Communication (SecOC)
このモジュールは 2 つの ECU 間で安全な通信を行うために使用されます。これによって無関係の ECU が割り込んだり、
正しい通信相手とすり替わったりするなどの事態を防ぎ、他者からの介入による操作を防止できます。SecOC は PDU
ルーターと相互作用し、アプリケーションからの制御が可能です。このモジュールは以下の機能を備えています。
>
完全な状態に保護された、認証済みの I-PDU の伝送。CSM または CAL のいずれかのモジュールが、選択した
バリアントに応じて真正性を検証します。
>
反射攻撃の防止。カウンターを使用して、シグナルが最新であるかを MAC アドレスまたはシグネチャーから調
べ、攻撃を防ぎます。
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71
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
19.3 サポートされるアルゴリズム
サービス
API <サービス> 名
データ
ストリ
ーム
CS
M
CAL
アルゴリズム
Hash functions
Hash
Yes
Yes
Yes
Yes
Checksum
Checksum
Yes
Yes
Yes
CRC-16, CRC-32
Random
numbers
RandomGenerate
No
Yes
Yes
FIPS-186
RandomSeed
Yes
Yes
Yes
Message
Authentication
Code
MacGenerate
Yes
Yes
Yes
Yes
Yes
Yes
Yes
Yes
Yes
Yes
Yes
Yes
ECB Mode
CBC Mode
Key
generation
Key
management
Asymmetrical
encryption
Signature
Key exchange
Wrapping
symmetric Key
using public
Key
Key Update
MacVerify
SymBlockEncrypt
SymBlockDecrypt
SymEncrypt
SymDecrypt
Yes
Yes
Yes
KeyDerive
Yes
Yes
Yes
SymKeyGenerate
No
Yes
No
KeyDeriveSymKey
No
Yes
No
SymKeyUpdate
Yes
Yes
No
SymKeyExtract
Yes
Yes
Yes
SymKeyWrapSym
Yes
Yes
Yes
AsymPrivateKeyWrapSy
m
Yes
Yes
Yes
AsymEncrypt
Yes
Yes
Yes
AsymDecrypt
Yes
Yes
Yes
SignatureGenerate
Yes
Yes
Yes
SignatureVerify
Yes
Yes
Yes
KeyExchanageCalcPubV
al
No
Yes
Yes
KeyExchangeCalcSecret
Yes
Yes
Yes
KeyExchangeCalcSymKe
y
Yes
Yes
No
SymKeyWrapAsym
Yes
Yes
Yes
AsymPrivateKeyUpdate
Yes
Yes
No
AsymPublicKeyUpdate
Yes
Yes
No
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パッケージ
ベーシック
HMAC-RIPEMD-160,
HMAC-SHA-1,
HMAC-SHA-256
AES, DES,
Triple DES, RC2
対称アルゴリ
ズム
AES, DES,
Triple DES, RC2
PKCS #5 V2.0
X9.63
ご要望に応じ
て
RSA (512, 1024, 1536,
2048 bit)
RSA (512, 1024, 1536,
2048)
ECC (160, 192, 224,
256)
非対称アルゴ
リズム
EDHC
ご要望に応じ
て
72
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
Key Extraction
Wrapping
asymmetric
private Key
using public
Key
Compression
AsymPublicKeyExtract
Yes
Yes
Yes
AsymPrivateKeyExtract
Yes
Yes
Yes
AsymPrivateKeyWrapAsy
m
Yes
Yes
Yes
Compress
Yes
Yes
Yes
Decompress
Yes
Yes
Yes
ご要望に応じ
て
19.4 設定
MICROSAR Security のモジュールの設定には、簡単で便利なツール DaVinci Configurator Pro のご利用を推奨しま
す。詳しくは、ベクターまでお問い合わせください。
19.5 実装
>
個別のニーズに応じて、Crypto Abstraction Library か Crypto Service Manager のいずれかが提供されます。
>
必要なセキュリティーのアルゴリズムは、CPL と CRY のどちらでも、ソフトウェア実装として提供されています。
>
ご要望に応じて、内蔵または外付セキュリティー用ハードウェア(HIS-SHE 準拠など)のサポートが可能です。
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73
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
20 MICROSAR Multi-Core – マルチコアプロセッサー用の AUTOSAR ソリューション
マルチコアプロセッサーの導入は、そのダウンストリームにあたる AUTOSAR ソフトウェアの設計にも変化をもたらしまし
た。今日では、個々の AUTOSAR アプリケーションを各プロセッサーに分配し、同時に操作することが可能となっていま
す。これを効果的に行うには、待機時間などによる同期のロスを最小限に抑えた、的確な分配が何よりも大切です。この
作業を包括的に支援するのが、MICROSAR Multi-Core です。
20.1 MICROSAR Multi-Core の機能概要
>
以下の利用を通じて MICROSAR.OS と MICROSAR.RTE の効率的な橋渡しを行う、MICROSAR パッケージ
に完全に統合可能なソリューション
すべてのプロセッサーコアに対応できる単一の OS 設定
RTE での実行時間の短縮とメモリー使用量の削減に有効な、効率的なスピンロックとメモリー共有
>
MICROSAR Safe ソリューションとの緊密な連携:すべてのマルチコア機能が MICROSAR の安全コンセプトと
シームレスに適合
>
ベーシックソフトウェアのサテライトをスレーブのプロセッサーコアに実装し、最適な時間配分でサービス機能を
処理。これは個々のモジュールで使用できます。
>
設定の手間が非常に少ない
20.2 応用分野
MICROSAR Multi-Core は、既存のプロセッサーコアを以下のようなアプリケーションで動作させるために使われます。
>
ベーシックソフトウェアは既存のコアのいずれか 1 つの上で実行される
>
アプリケーションソフトウェアは利用可能などのコア上にも任意に分配できる
この手法の目的は、複数のプロセッサーコアにアプリケーションを分配し、CPU の使用効率を最大化することにあります。
MICROSAR Multi-Core は、以下の機能を通じてこれを実現します。
>
すべてのプロセッサーコアがベーシックソフトウェアのサービスを利用できるようにする効率的なメカニズム
>
必要に応じて、スレーブのプロセッサーコアにベーシックソフトウェアのサテライトを実装
>
RTE の標準のメカニズムを使用してベーシックソフトウェアのサービスを共有し、それによって実行時間の最適
化とメモリー使用量の最小化を図る
このマルチコアの手法は、MICROSAR Safe ソリューションでも利用できます。
20.3 機能
20.3.1 RTE
マルチコア環境では、実行時間とメモリー使用量を最小限に抑えられるという点で、共有メモリーの使用は
MICROSAR.RTE にとって有利です。データの整合性の保証には、必要に応じてスピンロックが使用されます。そのため、
プロセッサーコアの待機時間は同じメモリー範囲に同じタイミングでアクセスが発生した場合にしか生じません。
20.3.2 オペレーティングシステム
関与するすべてのプロセッサーコアに対し、必要な OS 設定は 1 つのみです。MICROSAR Multi-Core が持つ、
AUTOSAR 仕様に含まれていない機能の 1 つに、効果的なスピンロックがあります。この機能により、データをどこから
でもアクセス可能なメモリー領域に置くことができます。
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74
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
20.3.3 ECU Manager (ECU マネージャー)
ECU Manager (ECU マネージャー) はメインのプロセッサーコア上で動作します。コア間の調整はその他の各コア上に
あるサテライトが処理します。すなわち、ECUM についても必要な設定は 1 つのみで、その設定はどのプロセッサーコア
でも有効です。
20.3.4 Watchdog Manager (ウォッチドッグマネージャー)
Watchdog Manager (ウォッチドッグマネージャー) もメインのプロセッサーコア上で動作します。その他すべてのコア上に
はサテライトが置かれており、それがアプリケーションの「チェックポイント到達済み」の機能を処理するとともに、そのステ
ータスをマスターと同期します。こうすることにより、WDGM のサービス機能が、最適な実行時間で処理されます。
20.4 設定
20.4.1 OS の設定
コンフィギュレーションでは、オペレーティングシステムは 1 つのプロセッサーコアに静的に割り当てられます。これによっ
て、どのプロセッサーコアがマスターとして、またどのプロセッサーコアがスレーブとしてそれぞれ動作するかが決まります。
図 42:DaVinci Configurator Pro によるプロセッサーコアの割当
20.4.2 RTE の設定
RTE はどのソフトウェアがどのプロセッサーコアで動作しているかを知る必要があります。それが把握できたうえで、RTE
は以下を実行できます。
>
データ交換における整合性の保証
>
必要に応じて、複数のプロセッサーコア上のランナブルをアクティブ化
設定プロセスでは、個別のランナブルを OS タスクにマッピングした後、それらのタスクを OS アプリケーションに割り振り
ます。これらの OS アプリケーションがそれぞれ、特定のプロセッサーコアに改めてマッピングされます。
図 43:ソフトウェアコンポーネント、タスク、OS インスタンスのプロセッサーコアへのマッピング - 概念図
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75
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
ECU の設定には、簡単で便利なツール DaVinci Configurator Pro のご利用を推奨します。このプロセスについて詳しく
は、ベクターまでお問い合わせください。
図 44:DaVinci Configurator Pro による機能と OS タスクのマッピング
20.5 その他の MICROSAR Multi-Core 用関連製品
>
MICROSAR.RTE:プロセッサーコア間の通信を制御します。
>
MICROSAR Safe の WDGIF および WDGM:これら 2 つのウォッチドッグモジュールのインスタンスがプロセッ
サーごとに独立して動作し、効率的な API アクセスを実現します。
>
MICROSAR.SYS の ECUM:ECU Manager が、すべてのプロセッサーコア上での正確かつ同期の取れたシス
テムの起動を保証します。
>
その他に、MICROSAR.OS オペレーティングシステムや WDG ドライバーなどの、ハードウェア固有のモジュー
ルも必要になります。
20.6 製品に含まれるもの
MICROSAR パッケージに含まれるモジュールのうち、マルチコアのプロジェクトに関連するモジュールがすべて同梱され
ています。
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76
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
21 MICROSAR バリアントハンドリング – AUTOSAR の柔軟なコンフィギュレーションのためのソリ
ューション
ECU 開発における従来の作業分担では、自動車メーカーが通信と診断のインターフェイスを定義し、サプライヤーがそ
れらの要件に従って、ECU を実装およびビルドします。ECU の納入後にパラメーターの変更が必要になれば、サプライ
ヤーは新しいバージョンの ECU を開発しなければなりません。変更が些細なものである場合、この開発チェーンによって
時間と経費が無駄に費やされることになります。比較的変更の多いベーシックソフトウェアを用いる ECU の開発では特
に、Post-Build Loadable がもたらす柔軟性の向上は効果的です。
また、車載 ECU 開発において、多種多様なバリアントで実装される ECU の数は増加しており、それらはマルチプル
ECU として知られています。こうした状況のなかでユーザーにとってメリットとなるのは、1 台でさまざまな応用分野で使
用できるハードウェアを備えることです。こうしてハードウェアのコストや管理の手間を減らし、その分、ソフトウェア開発お
よび生産やサービスのためのソフトウェアバリアント管理に力を注ぐことができます。このようなユースケースには、オプシ
ョンの MICROSAR Identity Manager に付属する、適切な Post-build selectable ソリューションを使用できます。
21.1 Post-Build Loadable – ベーシックソフトウェア特性のポストビルド修正
21.1.1 機能概要
>
ベーシックソフトウェアの多くのパラメーターを、自動車メーカーが直接修正可能
>
開発とテストの枠組みの中で、ベーシックソフトウェアを柔軟かつ自発的に修正
>
コンパイラー (コンパイラーのライセンス) の使用が不要なポストビルド更新
>
リソースを集中管理することにより、他の要素を追加してベーシックソフトウェアの設定を柔軟に拡張可能
>
DaVinci Configurator Pro の専用の拡張機能が、円滑なポストビルド設定を約束
>
MICROSAR ベーシックソフトウェアと DaVinci Configurator Pro の整合性チェックにより安全性を最大化
>
AUTOSAR に準拠した、実績ある MICROSAR ベーシックソフトウェアを広範に活用し、アプリケーションのアー
キテクチャーの変更は不要
>
Post-Build Loadable は、多数のベーシックソフトウェアモジュールおよび機能のオプションとして提供可能です。
21.1.2 応用分野
Post-Build Loadable では、診断および通信分野に関わるベーシックソフトウェアの特定の特性を、ECU のビルド後に修
正することが可能です。ポストビルド時に CAN ID、送信タイプ、デフォルト値などのパラメーターを修正するほか、ECU
に新しいオブジェクトを導入することもできます。たとえば、新しいメッセージやシグナルを追加してゲートウェイのルーティ
ングテーブルを拡張できます。
ポストビルドの時点でベーシックソフトウェアのパラメーターを適合する場合、必要になるのは MICROSAR 製品のみです。
ビルド後の更新には、アプリケーションやコンパイラー/コンパイラーのライセンスは必要ありません。また、アプリケーショ
ン層の適合も不要です。ベーシックソフトウェアに対する修正は、自動車メーカーが直接、シンプルな方法で実施できます。
21.1.3 親しみやすい設定プロセス
ポストビルド時点の設定プロセスは、標準の設定ツールである Da Vinci Configurator Pro で実行します。これは、多種
多様なデータベース (DBC、システム記述、ODX、CDD など) との円滑な同期が可能な、高機能のツールです。
MICROSAR Post-Build Loadable のツールチェーンで、更新した BSW コンフィギュレーションの HEX ファイルをワンス
テップで生成できます。そしてそのファイルを、標準のフラッシュツールを使用して ECU に読み込ませることができます。
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プロダクトインフォメーション:MICROSAR
図 45:MICROSAR Post-Build Loadable のワークフロー
21.1.4 「Post-Build Loadable」に含まれるもの
>
このオプションを設定ツールで有効にするためのライセンス
>
読込が可能なビルド更新を作成するためのツール
>
マニュアル類
21.2 MICROSAR Identity Manager – マルチプル ECU 用 Post-Build Selectable ソリューション
21.2.1 機能概要
>
より効率的な ECU バリアント管理
>
管理工数の低減
>
在庫管理コストの削減
>
リソースを最適化した BSW コンフィギュレーションの実装
21.2.2 応用分野
Identity Manger は、以下のそれぞれの役目を果たすことができます。
「ドア用 ECU」の例:ほぼ同一のタスクを実行する ECU で、それらの相違が Rx および Tx PDU、診断、ネットワークアド
レスのいずれかにしか存在しない場合、それらの ECU は 1 つの型番を持つ 1 つの部品として車両に実装できます。こ
の場合、開発および生産される ECU は 1 つであり、それが起動時に、自身がどの ECU で、どこに装着されているのか、
そして結果として、自身がどの機能を実現すべきなのかを併せて把握します。レイアウトが同一の場合、PDU のバッファ
ーは完全にオーバーレイされます。アプリケーションは、Identity に関係なく信号やデータエレメントにアクセスします。し
たがって、コード上で Identity を区別する必要はありません。
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78
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
「キャリーオーバーECU」の例:複数のシリーズのモデルにおいて機能が似ている ECU を、1 つの部品として開発し、製
造できます。これらの ECU に含まれるソフトウェアは、それを使用する車両ラインの全部に対応するソフトウェアであり、
個々のシリーズモデル間の通信記述が大幅に異なる場合でも、それらをサポートすることが可能です。この場合、
AUTOSAR ECU のソフトウェア設定の基になる ECU Extract は、シグナルのレイアウトがまったく違っていたり、サポー
トするバスの数が変わっていたりするなど、バリアントごとに大きく異なります。
図 46:Identity Manager の使用により、1 つの ECU が異なる機能を実行
21.2.3 親しみやすい設定プロセス
複数のバリアントをサポートする ECU プロジェクトの設定プロセスは、バリアントのない従来のプロジェクトとほぼ同じで
す。ただし、Extract of System Description、あるいは従来の形式である DBC や診断記述 (CDD、ODX) などのシステ
ム記述がバリアントごとに別途必要になります。
21.2.4 バリアントの選択
ECU が複数のコンフィギュレーションのバリアントに対応している場合、使用されるバリアントは ECU の初期化時に選択
されます。バリアント情報のソースはユーザーが定義でき、その実装はアプリケーションが行います。このような情報は、
コネクターコーディングやフラッシュによるメモリーコーディングで提供される場合もあります。
21.2.5 リソースの節約
1 つの ECU に複数のバリアントを含めることで、実際に開発、生産、そして在庫すべき ECU の数を減らすことができま
す。ただし、ECU に複数のバリアントが格納されるため、ECU が必要とするリソースも増大します。
MICROSAR ベーシックソフトウェアのコード生成には、RAM や ROM での最も効率的なメモリー使用に特化した最適化
のオプションが複数用意されています。
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プロダクトインフォメーション:MICROSAR
21.2.6 「Post-Build Selectable」に含まれるもの
>
設定ツールで有効にするためのライセンス
>
Identity Manager 機能を持つベーシックソフトウェアモジュール
>
マニュアル類
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80
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
22 MICROSAR.J1939 – 大型車両専用の AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュール
このセクションでは、AUTOSAR アーキテクチャーで定義されている J1939 ネットワーク通信用のベーシックソフトウェア
モ ジ ュ ー ル 、 す な わ ち J1939NM (Network Manager) 、 J1939RM (Request Manager) 、 J1939TP (Transport
Protocol)、J1939DCM (Diagonostic Module) について説明します。これらのモジュールは MICROSAR.CAN および
MICROSAR.DIAG の一部です。
図 47:AUTOSAR 4.2 対応の MICROSAR.J1939 モジュール
22.1 J1939 固有の MICROSAR モジュールの機能概要
>
AUTOSAR Release 4.x に対応
>
J1939NM:SAE J1939-81 に準拠してアドレス調停および通信制御に対処。完全に動的なアドレス指定と自己
設定 ECU のアドレス監視のサポートはオプションで提供可能です。
>
J1939NM を CANNM と併用し、アドレス調停とスリープ/ウェイクアップを組み合わせることが可能
>
J1939RM:J1939NM、J1939DCM、COM、RTE の各モジュールと CDD へのダイレクトなインターフェイス。タイ
ムアウト監視および確認応答を含む要求へのフルアクセス (SAE J1939-21)。
>
J1939TP:
> SAE J1939-81 に準拠した J1939 トランスポートプロトコルを完全に実装し、BAM および CMDT
(RTS/CTS) のバリアントを用意。ISO 11783-3 (ETP) に準拠した拡張トランスポートプロトコルと、
NMEA200 に準拠した FastPacket トランスポートプロトコルに対応するよう拡張されています。
>メッセージのサイズと宛先アドレスに基づいた適切なトランスポートプロトコル (ダイレクト、BAM、
CMDT、ETP) の自動選択と、任意のトランスポートプロトコルによるメッセージの受信
> J1939TP (BAM および CMDT) は AUTOSAR 3.x にも対応
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プロダクトインフォメーション:MICROSAR
>
J1939DCM:大型車両を診断するための、SAE J1939-73 に準拠した診断モジュール。保存されている DEM の
診断データを、J1939 と UDS の診断で共有する完全統合型のソリューション。
>
連続メッセージの場合も含め、メッセージを送信元や宛先アドレスに依存せず、PGN に基づいてルーティング
>
CDD 内のメッセージアドレスにアクセス
>
ニーズに応じた設定により、コードおよびランタイムを最適化
>
すべての通信固有のソフトウェアモジュールについて、モジュール間設定が可能
22.2 応用分野
J1939 モジュールの応用分野は、SAE J1939 規格で規定されている専用の機能を用いた、大型車両における CAN ネッ
トワーク経由の通信処理です。これらは J1939 固有のベーシックソフトウェアモジュールで実装され、近傍のモジュール
の拡張によってサポートされます。さらに、MICROSAR.CAN は、農業用車両および器具に含まれる ISOBUS ECU
(ISO 11783 に準拠) の実装にも使用できます。それを可能にするため、J1939NM と CANIF は完全に動的なアドレス調
停とアドレストラッキングの機能によって拡張されたほか、J1939TP には ETP および FastPacket トランスポートプロトコ
ルが実装されました。NMEA2000 に準拠した船舶でのユースケースも、FastPacket および完全に動的なアドレス調停で
サポート可能です。
22.3 機能
J1939 用のベーシックソフトウェアモジュールには、AUTOSAR 4.1 で定義されている機能が含まれています。以下に詳
細を示します。
>
J1939NM:変更不能なアドレスを持つ J1939 ネットワークのための、SAE J1939-81 に準拠したアドレス調停
>
J1939RM:SAE J1939-21 に準拠した要求/確認応答プロトコルをサポート
>
J1939TP:SAE J1939-21 に準拠したブロードキャスト (BAM) と一対一通信 (CMDT、RTS/CTS) をサポートす
る、J1939 トランスポートレイヤー
>
J1939DCM:DCM と並行して動作し、SAE J1939-73 の最も重要な診断メッセージをサポート
以下の機能がオプションで提供可能です。
>
J1939NM/CANIF:完全に動的なアドレス指定、自身のアドレスの競合時の自動変更、現在の変更に対する使
用中の全アドレスの自動適応などの機能を追加する拡張機能
>
J1939TP:ETP (ISO11783-3 および-7 に準拠) と FastPacket (NMEA200 に準拠) のトランスポートプロトコル
を追加する拡張機能
>
Post-build loadable および Post-build selectable:詳しくは、「MICROSAR バリアントハンドリング」のセクション
をご覧ください。
22.4 設定
設定には、簡単で便利なツール DaVinci Configurator Pro のご利用を推奨します。詳しくは、ベクターまでお問い合わせ
ください。
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プロダクトインフォメーション:MICROSAR
22.5 その他の J1939 用 MICROSAR 関連製品
>
MICROSAR.DIAG の DEM
>
MICROSAR.SYS の DET、BSWM、ECUM、COMM
>
MICROSAR.XCP により、ASAM XCP に準拠した測定とキャリブレーションが可能になります。このモジュール
は CANoe.XCP、CANoe.AMD、CANape との併用に特化して最適化されています。MICROSAR.XCP には、
CAN ECU 用として、関連する CANXCP トランスポートレイヤーが含まれています。
MICROSAR.XCP は AUTOSAR 仕様の枠を超えて、測定オブジェクトの汎用的な読出をサポートします。その
ため、a2l ファイルでのアドレスの定義や更新は不要です。あらゆるバージョンおよびバリアントからのデータを、
MCU ビルドから独立して、a2l ファイルを用いて抽出できます。汎用読出機能の使用には、XCP ツールとして
CANoe.AMD または CANape を使用する必要があります。
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83
プロダクトインフォメーション:MICROSAR
23 AUTOSAR Evaluation Bundle – AUTOSAR ベーシックソフトウェアおよびツールの評価用
総合パッケージ
AUTOSAR Evaluation Bundle は、自動車メーカー仕様に依存しない AUTOSAR ベーシックソフトウェア (MICROSAR)、
設計ツール (DaVinci Developer)、設定ツール (DaVinci Configurator Pro) を統合した、ベクターの総合パッケージです。
お客様は、このパッケージを用いることで AUTOSAR のソフトウェアアーキテクチャーに対応した ECU ソフトウェアを開
発することが可能です。実際のベーシックソフトウェアの設計からその設定プロセス、そして実装に至るまで、AUTOSAR
の世界を深く知ることができます。診断などの、自動車メーカー固有のベーシックソフトウェアモジュールについては、
MICROSAR Prototype SIP (本章の最後を参照) を提供しています。
23.1.1 機能概要
>
AUTOSAR 4.x および 3.x に対応した、量産品質のツールおよびベーシックソフトウェアを提供
>
お客様の ECU プロジェクトの実行時間やメモリー使用量を現実的に評価
>
多種多様なマイクロコントローラーで使用可能
>
詳しいサンプルプロジェクトを使って AUTOSAR について素早く学べる
>
AUTOSAR 対応ファイルと従来のディスクリプションファイルの両方をサポート
23.1.2 応用分野
AUTOSAR Evaluation Bundle は、自動車メーカーが AUTOSAR の開発プロセスと方法を評価する場合や、ECU サプ
ライヤーが AUTOSAR 対応の初の試作 ECU を作成する場合にも役立ちます。ツールもベーシックソフトウェアも量産レ
ベルに達しているので、次のような観点からの AUTOSAR 評価に安心してお使いいただけます。
>
ベーシックソフトウェアの有効性
>
お客様の開発環境へのツールの統合
>
お客様のアプリケーション分野における AUTOSAR コンセプトの将来利用
また、AUTOSAR Evaluation Bundle は、アプリケーションに的を絞っているサービスプロバイダー向けの AUTOSAR 対
応ソフトウェアコンポーネントの、初期開発用の基盤としても最適です。
23.1.3 機能
AUTOSAR Evaluation Bundle には、ソフトウェアコンポーネント、ランタイム環境、ベーシックソフトウェアで構成される
AUTOSAR ECU ソフトウェア一式を作成するための、ベクターのすべてのツールとソフトウェアが含まれています。
DaVinci ツールは AUTOSAR に対応し、複雑な AUTOSAR アプリケーションの設計を簡素化します。MICROSAR ソフ
トウェア設定の入力として「ECU Extract of System Description」(AUTOSAR XML)、またはそれに代えて、従来ネットワ
ークディスクリプションファイル (DBC、FIBEX、LDF) も使用可能です。
>
DaVinci Developer ツールは、AUTOSAR 対応 ECU の開発を容易にします。グラフィカルなエディターを使用し
て、AUTOSAR ソフトウェアコンポーネントの記述やそのインターフェイスの定義を迅速かつ明確に行うことがで
きます。このソフトウェアコンポーネントを基にして、RTE 設定も DaVinci Developer で実行します。
>
DaVinci Configurator Pro は、ベーシックソフトウェアモジュールおよび RTE を設定するツールです。簡単で直
感的なユーザーインターフェイスを使って、ECU プロジェクトに適した値にパラメーターを設定することができます。
>
CANdelaStudio は、お客様のネットワークや ECU の診断データを定義する際に使用するツールです。この診
断データは標準フォーマットでエクスポートできるので、MICROSAR 診断ベーシックソフトウェアの自動設定に使
用することができます。
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プロダクトインフォメーション:MICROSAR
図 48:DaVinci Developer によるソフトウェアコンポーネントの設計
図 49:DaVinci Configurator Pro によるベーシックソフトウェアおよび RTE の設定
AUTOSAR Evaluation Bundle は、AUTOSAR 4.x および 3.x に対応しています。同梱される MICROSAR ベーシックソ
フトウェアモジュールでは、関連する AUTOSAR Release のすべての機能を効率よく柔軟に実装しています。また、数多
くの拡張機能も提供しています。
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プロダクトインフォメーション:MICROSAR
23.1.4 ベーシックソフトウェアパッケージに含まれるもの
下記の表は、AUTOSAR Evaluation bundle に含まれる個々の MICROSAR bundle の概要を示しています。個々の
bundle についての詳細は、本資料の該当する章をご参照ください。
Evaluation Bundle
利用可能なオプション
の内容
MICROSAR.OS
>
スケーラビリティークラス SC1 を標準実装
>
スケーラビリティークラス SC2~4 は、プロセッサーがサポートしていればオプションで使
用可能
>
Multi-core はオプションとして提供可能
>
お客様が選択する製品セグメントのモジュール
>
CAN/LIN/FR/ETH 上で測定およびキャリブレーションを行うための XCP
>
内蔵 EEPROM 用 MICROSAR EA モジュール
>
内蔵フラッシュメモリー用 MICROSAR FEE モジュール
>
外部メモリーチップ制御用のドライバーを MICROSAR.EXT で使用可能
>
AUTOSAR 4.x 対応の MICROSAR CSM (Crypto Service Manager)
>
AUTOSAR 4.x 対応の MICROSAR STBM (Synchronized Time-Base Manager)
>
外部メモリーチップ制御用のドライバー (MICROSAR.EXT を参照)
>
IICDRV (Inter-Integrated Circuit Bus I2C を使用する外部周辺機能チップへのインター
フェイス用ドライバー)
>
FLASHTST、RAMTST、CORETST
MICROSAR.COM
MICROSAR.CAN
MICROSAR.LIN
MICROSAR.FR
MICROSAR.ETH
MICROSAR.MEM
MICROSAR.SYS
MICROSAR.DIAG
MICROSAR.MCAL
MICROSAR.IO
MICROSAR.RTE
AUTOSAR Evaluation bundle と一緒に下記オプションを付けてご注文することも可能です。
モジュール
説明
MICROSAR.EXT
外部チップの制御用の AUTOSAR ベーシックソフトウェアモジュール
MICROSAR Safe
ISO 26262 に準拠した安全関連のアプリケーションソフトウェア用のソリューション
23.1.5 特殊機能
DaVinci Developer には、AUTOSAR XML ファイル用のインポート/エクスポートインターフェイスが用意されています。
このインターフェイスにより、設計データおよび設定データをやりとりすることができます。たとえば、このインターフェイス
を使用して、MATLAB® Simulink®などのツールによるモデルベースの開発手法で開発した ECU に、AUTOSAR ソフト
ウェアコンポーネントを統合することもできます。
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プロダクトインフォメーション:MICROSAR
すべての MICROSAR 製品は以下を満たします。
>
実装コンフォーマンスクラス:ICC3
>
設定コンフォーマンスクラス:CCC2
23.1.6 その他の特徴
>
ソースコードを含んだサンプルアプリケーションと、その使い方に関する詳細なガイドライン
>
ベクターの AUTOSAR トレーニング
23.1.7 その他オプション
AUTOSAR Evaluation Bundle CAN/LIN/IP/FlexRay は、任意の組み合わせでご利用になれます (ただし、発注時点で
の構成に固定されます)。
ご要望があれば、ベクターは MICROSAR トレーニングを拡張して、初期導入時や、アプリケーションに MICROSAR ベ
ーシックソフトウェアを統合する際のサポートを行います。トレーニングはお客様のサイトでも実施可能です。
23.1.8 使用可能なハードウェアプラットフォーム
AUTOSAR Evaluation Bundle は、今日最も広く使われている 16bit および 32bit ハードウェアプラットフォームに使用で
きます。MICROSAR.MCAL ソフトウェアモジュールおよび MICROSAR.OS はハードウェアに依存します。このことによ
る制約については、プロセッサーデバイスの型番に基づいて情報をご提供いたします。ベクターまでお問い合わせくださ
い。
23.1.9 MICROSAR Prototype SIP
単なる評価目的を越えて、特定の自動車メーカー向けプロジェクトの試作フェーズにソフトウェアが必要な場合、ベクター
の MICROSAR Prototype SIP (Software Integration Package) のご利用を推奨します。詳しくは、ベクターまでお問い
合わせください。
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プロダクトインフォメーション:MICROSAR
24 その他の情報
ベクターの設定用ツール「DaVinci Configurator Pro」やその他製品に関する情報は、ベクターWeb サイトに掲載してお
りますので是非ご覧ください。www.vector-japan.co.jp
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Produktinformation MICROSAR
www.vector-japan.co.jp
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