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子ども読書活動とは
子どもにとって読書は、心の成長を支え、豊かな人生を送る助けとなり、読書活動などを通
じて情操を育み、論理的な思考力が養われます。乳幼児期からの読み聞かせの経験は、子ども
にとって生涯を通じて学び続ける大人への準備ともいえます。
改定の背景
社会情勢の変化
○子どもの活字離れ
昭和 58 年度にはじまる全国図書館協会の調査では、1ヶ月に1冊も本を読まない子どもが
年々増えていることが報告されていました。平成 12 年以降、減少傾向にありますが、学齢が
進むにつれて読書離れが進む傾向にあります。
国や都の状況
〈国〉
○平成 13 年 12 月
「子どもの読書活動の推進に関する法律」公布・施行
○平成 14 年8月
「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」閣議決定
○平成 20 年3月
「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画(第二次)」閣議決定
○平成 25 年5月
「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画(第三次)」閣議決定
○平成 26 年6月
「学校図書館法」改正
〈東京都〉
○平成 15 年3月
「東京都子ども読書活動推進計画」策定
○平成 21 年3月
「第二次東京都子供読書活動推進計画」策定
○平成 27 年2月
「第三次東京都子供読書活動推進計画」策定
港区の状況
○平成 18 年3月に、市区町村としては比較的早く「子ども読書活動推進計画」を策定しまし
た。さらに平成 24 年 3 月に「子ども読書活動推進計画(第2次)」を策定し、区立図書館・
学校図書館での取り組みを中心とした施策を進めています。
○平成 14 年度に、区立小・中学校において学校図書館の運営や児童・生徒の読書活動の支援
にあたるリーディングアドバイザリースタッフを配置し、学校図書館の利用や児童・生徒の
読書活動の支援を行っています。
○区立図書館・学校図書館のみならず、幼稚園、保育園、児童館、放課 GO→、子ども中高生
プラザなど、子どもに関わる施設・教育機関で幅広く取組が行われており、区立図書館を中
心として連携を図る必要があります。
○学校図書館法改正などの文部科学省の動向を踏まえた学校図書館のさらなる充実、外国人居
住者の多い区の特性を踏まえた取組の検討が必要です。
○平成 26 年度調査では、1ヶ月に1冊も本を読まない子どもの割合(不読率)は、小5・6
年生 4.5%、中学生 16.9%です。平成 25 年度の東京都による調査では、小学生 4.0%、中学
生 12.7%であり、中学生で都全体よりも不読率が高くなっています。
○「港区教育ビジョン」
(平成 26 年 10 月策定)では、今後 10 年を見据え、港区が目指す教育
の基本理念、目指す人間像を掲げ、その理念に基づく取組の方向性を示しています。
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計画の目的
○区立図書館・学校図書館におけるこれまでの取組と成果を前提として、変化する社会
状況や港区の子どもたちのニーズを踏まえ、取組主体を広げつつ、
「港区教育ビジョン」
に基づく新たな視点を加えて改定するものです。
○乳幼児から学齢期、青年期にいたる子どもの成長を読書という側面から支え、読書に
親しみ、生涯を通じて本をとおして学ぶ大人になる手助けをすることを目指します。
計画改定の方向性
多様な取組主体との連携施策の展開
区⽴図書館による⽀援体制の構築
学校図書館の充実と区⽴図書館による⽀援の確⽴
⼦どもの発達段階に応じた細やかな取組
⾃然に本と触れあう環境の形成
計画の位置付け
本計画は、教育ビジョンの実現に向けて、港区基本計画・港区実施計画の内容等と整
合性を図りながら、子ども読書活動の推進における基本的な考え方や施策を示すもので
計画の期間
平成 27 年度から平成 32 年度までの 6 年間の計画とし、中間年となる平成 29 年度に見
直しを行います。
各施設・教育機関における取組状況
区立図書館における取組
区立小・中学校での取組
○ 児童図書・ヤングアダルト図書の充実
○ 充実した蔵書の学校図書館
○ 館外へのサービスの展開と学校との連携
○ 学校図書館運営・読書活動の支援にあた
○ 年齢に応じたおすすめ本の紹介
るリーディングアドバイザリースタッ
○ 子育て支援としての推進事業
フ(RAS)を全校に配置
○ ボランティア等の人材育成に向けた取組
○ 蔵書管理システムの全校設置
幼稚園・保育園・児童館・放課 GO→・子ども中高生プラザでの取組
○ 幼稚園:絵本コーナーでの自由な読書、 教諭による読み聞かせ
○ 保育園:保育室に本を設置、保育士による日常的な読み聞かせ
○ 児童館・放課 GO→:本棚にある本を自由に読書、職員による日常的な読み聞かせ
○ 子ども中高生プラザ:職員やボランティアによる日常的な読み聞かせ
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港区の子ども読書活動における現状と課題
(1)子ども(年少人口)の増加への対応
課題① 子どもが過ごす施設での本の充実
【現状】
子どもに関わる施設・教育機関は本を所蔵し
ている。図書館は団体貸出を実施し、周知に
より団体貸出件数が増加している。
【課題】
各施設・教育機関の所蔵場所には限界がある
が、一方、子どもによる図書館資料の汚破損
を懸念して団体貸出利用を躊躇している。
課題② 子どもの読書を促す取組の充実
【現状】
子どもや関係施設の増加により事業の情報が
行き届かず、一般利用者も図書館による読書
相談サービスをあまり認知していない。
【課題】
子どもに関わる新規施設に図書館員が赴いて
のサービスの周知、利用者への読書相談サー
ビスの更なる周知を図る。
(2)子どもに関わる施設・教育機関の連携
課題③ 子どもに関わる施設や教育機関の連携
【現状】
大学・民間団体との連携事業は実施している
が、区の各施設・教育機関の所轄部署は多岐
に渡るため把握が容易ではない。
課題④
【課題】
区立図書館と各施設・教育機関の円滑な連携
を図る。子ども読書活動を連携して支援する
新たな民間企業を発掘する。
子どもに関わる施設や教育機関への区立図書館による支援
【現状】
各施設・教育機関で子どもの読書活動が取り
組まれている。区立図書館では年齢に応じた
本を紹介している。
【課題】
各施設・教育機関の管轄部署間での情報共有
を図る。各施設・教育機関のニーズを区立図
書館が把握し、連携を働きかける。
(3)学校図書館の充実
課題⑤
学校図書館の環境整備
【現状】
学校図書館は資料が充実し、教諭・RAS によ
り学校図書館の利用が進んでいる。区立図書
館主催で関係者の研修を実施している。
課題⑥
【課題】
教諭・RAS の間での情報共有、RAS 間の連携
を進める。学校ごとのニーズに応じて資料を
充実させる。
区立図書館による学校図書館の支援
【現状】
授業を支援する資料の収集・提供・相談を実
施している。区立図書館により、学校図書館
関係者の連絡会を実施している。
【課題】
各学校における取組の質をより一層高めるた
めに情報共有を図る。より組織立った支援を
行うための機関を設置する。
(4)障害のある子どもの読書活動の支援
課題⑦
障害に応じた読書の支援
【現状】
区立図書館では多様な障害に応じた本を収集
しているが、障害児の利用は多くなく、障害
福祉施設へのサービスも行き届いていない。
【課題】
障害の特性などに応じた障害児の読書に対す
るニーズを把握する。資料、サービス内容な
どを調査し、適切なサービスを実施する。
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目指すべき姿
⼀⼈ひとりの⼦どもが本に触れ、
親しむことを通じて読む習慣を育む
子どもにとって読書は、心の成長を支え、豊かな人生を送る助けとなるものです。読書
は、子どもにとって生涯を通じて学び続ける大人への準備でもあります。
これらを読書の意義ととらえ、本に親しむことを第一歩と考えます。そして、年齢、障
害の有無や特性、生活環境や居住地域の違いなどを踏まえ、一人ひとりの子どもが本に親
しみ、本を読む習慣を育むことを目指します。
基本目標
1 子どもの多様性を踏まえた取組の展開
3
居住地域や暮らしの状況、心身の状態を子
どもの多様性ととらえ、施設・機関が一体
となって、子ども一人ひとりに細やかに対
応する活動を目指します。
2
学校図書館の充実
小・中学校における読書活動や調べ学習を
支援します。
4
様々な組織との連携の推進
子どもに関わるすべての施設・機関が連携
して子どもの読書活動を推進します。
本と触れあう環境づくり
子どもが日常的に立ち寄ったり、過ごした
りする場所に本を置くことで、本を身近に
感じ、自然と本に触れることのできる環境
づくりを進めます。
5
区立図書館による支援体制の構築
区立図書館の資料・職員の専門性を活か
し、区内の施設・機関を支援します。
し、区内施設・機関を支援します。
施策の体系
基本目標1
施策
一人ひと りの 子どもが 本に触れ、
親しむことを通じて読む習慣を育む
(1)多様性を踏まえた資料の拡充
(2)年齢に応じた取組の推進
(3)地域特性を反映した取組の推進
(4)心身の状態に応じた取組の推進
(5)国際理解を育む取組の推進
基本目標2
施策
(1)本のある環境づくり
基本目標3
施策
本と触れあう環境づくり
(2)子どもと本を結ぶ取組の充実
学校図書館の充実
(1)人材の育成と活用の推進
(2)授業での学校図書館活用の推進
(3)学校図書館の情報化に向けた取組
基本目標4
施策
(1)庁内体制の整備
基本目標5
施策
様々な組織との連携の推進
(2)ボランティア・民間との連携強化
区立図書館による支援体制の構築
子どもの多様性を踏まえた取組の展開
(1)関係団体に対する支援の充実
(2)学校図書館に対する支援体制の構築
4
施策の展開と重点及び新規事業
1 子どもの多様性を踏まえた取組の展開
3 学校図書館の充実
(1)多様性を踏まえた資料の拡充
(1)人材の育成と活用の推進
重点 ①
②
③
④
新規 ⑤
1
外国語資料などの充実
様々な資料の収集
子どもたちのニーズの把握
障害のある子どもに応じた資料の収集
国際理解教育・理科教育などを支援す
る資料の収集
(2)年齢に応じた取組の推進
① 教諭や RAS などを対象とした研修会の
充実
② 教諭や RAS などの情報交換の場の提供
(2)授業での学校図書館活用の推進
重点 ① 調べ学習の支援・促進
② 授業カリキュラムに応じた支援の実施
4
(3)学校図書館の情報化に向けた取組
① ブックスタート事業の推進
② 子どもの年齢に応じた取組の促進
③ 異なる年齢の子どもたちの本を通じた
交流の促進
④ 区立図書館による年齢に応じた図書の
推薦
新規 ①情報システム導入に向けた取組
4 様々な組織との連携の推進
(1)庁内体制の整備
(3)地域特性を反映した取組の推進
新規 ① 関係部署等との連携強化
① 地域特性を反映した資料の収集と調べ
学習の支援
新規 ② オリンピック・パラリンピックに関連
した取組の実施
(2)ボランティア・民間との連携強化
重点 ① ボランティアグループ・NPO との連携
5
の強化
② 民間企業・大学・文化施設との連携の推
進
(4)心身の状態に応じた取組の推進
新規 ① 障害のある子どもに関わる施設・教育
機関との連携
② 障害のある子どもに応じた資料の収集
5 区立図書館による支援体制の構築
(1)関係団体に対する支援の充実
(5)国際理解を育む取組の推進
① 子ども読書活動に関わる相談体制の整
備
② 専門的な知識・能力を持つ職員の資質向
上
③ ボランティアの育成と組織化の推進
新規 ④ 学校支援地域本部事業との連携
⑤ 団体貸出の活用の促進
⑥ 訪問図書館サービスの利用促進
⑦ リサイクル本の活用の促進
新規 ① 外国語資料を用いた読み聞かせの実施
② 大使館と連携した活動の展開
2 本と触れあう環境づくり
(1)本のある環境づくり
2
重点 ① リサイクル本の活用の促進
② 団体貸出の活用の促進
③ 各施設・教育機関や保護者への情報発信
の充実
(2)学校図書館に対する支援体制の構築
重点 ① 国際理解教育・理科教育の資料の充実に
6
向けた支援
新規
(2)子どもと本を結ぶ取組の充実
3
重点 ① みなと子ども読書まつりの充実
② 訪問図書館サービスの利用促進
③ 港区立図書館児童サービスボランティ
アの育成と連携の強化
7
重点 ② 学校図書館支援機能の強化
新規
③ 区立図書館職員を含めた情報共有の充実
重点事業 ① 外国語資料などの充実
目的 外国人が多い港区の特性を踏まえ、外国語の絵本や児童書、ヤングアダルト図書の収集を図ります。
内容 港区は、全国で最も多い 81 カ国(平成 27 年1月現在)の大使館が立地しているなど、多様な文化
を持つ人々が住む都市です。東町小学校に設置した外国人児童に教育の機会の多様化を図る国際学級
の学級数、児童数は、平成 24 年の開設以来、年々増加しています。
また、日本人児童が外国語と接する機会を充実させるため、区立図書館に絵本や児童図書、ヤングア
ダルト図書の蔵書を増やします。
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重点事業 ②
リサイクル本の活用の促進
重点事業 ⑤
目的 施設や教育機関において、今以上に子ども
たちが本を手に取り、楽しめるよう、区立
図書館は資料面での支援を図り、本のある
環境づくりを進めます。
内容 区立図書館では、買い替えや汚破損により
年間約 3,500 冊の資料を除籍します。除籍
された絵本などの児童図書や寄贈を受けた
本はリサイクル本として、本を必要とする
施設へ提供します。本計画の改定のため行
った各施設への調査で、多くの子どもに関
わる施設や教育機関からリサイクル本の希
望がありました。従来廃棄していた汚破損
本は修理を行い、提供可能な冊数を増やし
ます。
重点事業 ③
目的 区立図書館で育成するボランティアの活用
とともに、区内で活動を行っているボラン
ティアグループや NPO との連携を深め、活
動における協力や活動機会の提供を行いま
す。
内容 区立図書館では、児童サービス事業におけ
るボランティアグループとの協働・連携を
更に強化します。新たに区内中高生のボラ
ンティア活動との連携も推進します。また
区内で子どもの読書活動の推進に取り組ん
でいるボランティアグループや NPO の情
報収集と連携を図り、協力体制の構築及び
区内子ども関に関わる施設や教育機関への
周知を進め、活動機会の提供を行います。
みなと子ども読書まつりの充実
目的 国が制定している「読書週間」にちなみ、
家族みんなで楽しく参加しながら、子ども
が本と出会うきっかけづくりを目的とし、
保護者に対し子どもの読書活動の重要性を
啓発する事業として開催します。
内容 区立図書館全館事業として、読み聞かせや
「かたりべ」による民話・昔話のおはなし、
英語のおはなし会や人形劇など、子どもが
保護者とともに楽しむプログラムのほか、
自ら課題を見つけ、問題解決に結びつける
力を養う「調べ学習講座」や理科・科学へ
の興味が持てるプログラムを実施します。
読み聞かせや運営スタッフにボランティア
を活用し、ボランティアの活動機会の場を
提供します。
重点事業 ④
ボランティアグループ・NPO
との連携強化
重点事業 ⑥
国際理解教育・理科教育の資料
の充実に向けた支援
目的 外国人が多い港区の地域特性を踏まえ、重
点的に外国語図書や日本を学ぶための資料
整備を行います。それら資料は、異文化理
解・国際理解にも役立ち、港区学校教育推
進計画において重点事業として位置付けて
いる「国際理解教育の推進」の資料として
も収集します。また、同じく重点事業とし
て位置付けている「理科教育の推進」のた
めの資料の充実も図ります。
内容 港区学校教育推進計画で重点事業に位置付
けている「国際理解教育の推進」、「理科教
育の推進」に対し、授業で活用できる図書
資料を収集し、団体貸出により学校図書館
資料に加えて児童・生徒に必要な資料が十
分に行き届くようにします。
調べ学習の支援・促進
重点事業 ⑦
目的 教諭と RAS が協働し、学校図書館で子ども
たちが分からないことを調べる機会を授業
の中に設けることで、調べ学習を促進しま
す。
内容 教諭や RAS などの学校図書館関係者を対象
に、区立図書館が定期的に行っている連絡
会は、区立図書館からの情報提供と学校間
の情報共有の場として継続します。
区立図書館は学校図書館と連携し、資料を
使って調べる方法を学ぶ機会や、調べ学習
のコンクールへの参加を促進します。同時
に教育委員会は、教諭や RAS など、学校図
書館関係者を対象に、子どもの調べ学習支
援に関する研修会を実施します。
学校図書館支援機能の強化
目的 港区子ども読書活動推進計画に基づき、学
校図書館支援センターを教育委員会内に設
置することを検討し、学校図書館の活動支
援と利活用を進め、学校における子どもの
読書活動を推進します。学校図書館の全体
的なレベルアップ、区立図書館との連携強
化を図る体制や支援のあり方について検討
を行い、学校での子どもの読書活動をより
促進する環境づくりに努めます。
内容 学校図書館訪問、学校図書館活動の現状把
握、必要な助言・支援を行います。学校図
書館運営上必要な実務に関して、教諭や
RAS の個別相談に対応し研修を行います。
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計画の推進体制
各主体が、港区の子ども読書活動の担い手として役割を果たしながら、協働することで、
子どもの豊かな読書を支える環境をつくることができます。
〈推進のイメージ図〉
家 庭
子ども
幼稚園
小学校
中学校
高等学校
障害児
関係機関
民間企業
NPO
ボランティア
保育園
児童館
子ども中高生
プラザ
子ども
関係施設
大学図書館
専門図書館
連携
事業者
専門家
地域
(町会・
自治会)
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ためにイメージを開くことができないか、…
区立図書館
協力
計画の進行管理
管理方法
本計画に計上した施策は、計画【Plan】実行【Do】点検・評価【Check】見直し・改善
【Action】のサイクルで着実に推進します。また、計画全体についても中間年となる平成
29 年度及び最終年度となる平成 32 年度に達成状況を点検・評価し、計画の見直し、改定
を行います。
評価方法
本計画の施策・取組に対する評価は、行政による評価、区民等で構成する検討組織での
意見や、区民を対象としたアンケート調査の結果等を踏まえて総合的に行います。
刊行物発行番号
26250―7541
港区子ども読書活動推進計画【概要版】
平成 27 年(2015 年)2月
発行:港区教育委員会
編集:港区教育委員会事務局 図書・文化財課
港区芝公園三丁目2番25号
電話 03-3437-6621
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