エイワ税理士法人 株式会社英和経営ブレーン

2 01 5 年 4 月 9 日 № 16 3
エイワ税理士法人
株式会社英和経営ブレーン
小諸事務所
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東京本店
東京都港区西新橋 1-22-14 10F
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http://homepage3.nifty.com/SATOUKAIKEI/
I.
所長より
∼「1500 万人の働き手が消える 2040 年問題
(野口悠紀雄
II.
P 1
」
著)を読んで∼
企業の社会保険加入の厳格化について
P 3
∼社会保険を未加入のままでいたら、年金事務所がきました∼
III. 役員報酬の変更のタイミングについて
P 5
IV. 相続対策としての贈与の活用
P 8
V. 会社法シリーズ 3 監査役の登記事項の変更について
∼会計監査のみの監査役は登記が必要に∼
P11
VI. 在職老齢年金の支給停止基準額の変更について
P14
発行元:エイワ税理士法人
Ⅰ.「1500 万人の働き手が消える 2040 年問題 」
(野口悠紀雄 著)を読んで
所長 佐藤 英人
前号の人口急減の続きとして、3 月にダイヤモンド社から発刊された「2040 年問題」のうち、私が関心
をもった部分を一緒に見ていきたいと思います。
1 . 2040 年とは
今から 25 年後の 2040 年は、日本の人口問題について現在と比較する大切な年です。
① まず、65 歳以上の人口増がこの年まで続きます。つまり老齢化人口の増加が 25 年間続きます。
(野口悠紀雄氏指摘、以下「野口氏」とします)その結果、65 歳以上の割合が 36%と 3 人に1人を
占めるようになります。
② また、日本創生会議での指摘のように、地方において出産可能年齢の女性が 50%を切り、「消滅し
かなくなる地方都市が 326 都市も顕在化する年」として指定している年でもあります。ここまでに人
口減少率を 50%未満にできるところが、何とか生き残れる都市と言われています。
③ さらに労働人口は、現在より 1,500 万人減少して約 5,400 万人になります。この減少する 1,500 万人
というのは現在の製造業の全就労者に匹敵する大幅な人数です。
2 . 介護従事者の大幅増加
① 現在 75 歳以上の 31%が要支援・要介護となっています。したがって、年金の場合は 65 歳以上の
増加が問題ですが、介護では 75 歳以上の人口が問題です。
介護認定者は 2000 年には 256 万人であったものが、2012 年には 561 万人と、約 2.2 倍になっ
ています。65 歳以上は 2040 年から減少に入りますが、75 歳以上はそこからさらに 10 年後の 2050
年までは増加を続けるわけです。その 3 割以上が要介護となった場合の「日本の社会は全く異質
の社会になる。」という野口氏の指摘は当然です。
② これは平均余命の延長と核家族化がもたらした深刻な問題であり、本来家族が介護していた地域
社会の復活が見えない以上、この増加し続ける要介護者のための医療・介護の仕事の従事者の
増加は避けられず、ピークの 2050 年には全就労者の 25%、つまり働いている方の 4 人に 1 人が
非生産的な介護労働に従事することを意味しています。
ただ、厚生労働省は今後も在宅介護を中心とする方針です。しかし、それは労働力不足を女性
や高齢者の労働参加率を高めることで補おうとしていますが、その足かせにはなります。
3 . 労働力不足経済に突入
① 日本の有効求人倍率はリーマンショック以降 1.00 を下回る状況が続いていました。しかし 2013 年
11 月に 1.00 を超え、現在は 1.66 となっています。
安倍首相はアベノミクスの成果と強調していますが、野口氏は確かに有効求人数=企業が増え
ていることは事実だが、それ以上に有効求職者数=職を求めている人が 2010 年から 2013 年にか
- 1 -
けて 41 万人も減少していることのほうが重要だとしています。つまり、「求職者が減ることによって有
効求人倍率が上昇している」というのは安倍さんのいう「雇用情勢の好転」という歓迎すべきことで
はなく、「人手不足」という、憂慮すべき、そして対策が必要なことと指摘しています。
② 「人手不足」が急に言われるようになったのは 2014 年の初め頃で、あまりに唐突に生じたためにそ
の背後にあった長期的な労働人口の減少に気づかず、有効求人倍率が 1.00 を上回って初めて顕
在化したということです。そしてこの経済の停滞の大きな原因が人手不足によるものだということで
す。
4 . 非正規労働者の増加
① さらに問題なのが、安倍さんのいう「アベノミクスで雇用が 100 万人以上増えた」の中身は、正規労
働者が 38 万人減少し、非正規労働者が 157 万人増加となっている点です。内訳はパートが 53 万
人、アルバイトが 35 万人と契約社員が 53 万人の増加です。
② 厚生労働省の統計では、一般の給与月額が 33.9 万円、パートが 9.5 万円と著しく低く、また賃金ア
ップが一般は 1.1%に対して、パートは 0.5%しかありません。新聞をにぎわす賃金アップは一部上
場企業に限られるようです。これでは消費が増えるわけがありません。
5 . 年金の破綻
① 野口さんは以前より日本の公的年金は 2030 年頃に年金積立金が枯渇するとの予測を公表してい
ます。本書でも以前の検証から時間がたっていることもあり再検証していますが、結論に変化はな
いとのこと。つまり「日本の公的年金は 2040 年問題を克服できない」ということです。
② 厚生年金基金制度は、3 階建ての部分を全くもらえずに解散一時金だけを負担させられる基金が
続出し、その破綻ははっきりしました。他国なら暴動が起きてもおかしくない、掛金だけ払わさせら
れ続ける詐欺的状況でも、粛々と現状を飲み込み声高に叫ばない日本人に私は感心しています
が、公的年金についても誰もが諦めきっているようですね。
6 . ではどうすればいいのか
(1) 野口さんの提言でうなずけること
① 生産拠点を日本に回帰させるな
工場を海外に移転させることは、国内雇用を減らすのでよくないことといわれてきました。ただ、
現実には日本で生産しても売れないので、市場のあるアジアへの進出はむしろ積極的に行わ
れてきました。これは労働力不足経済において、海外移転はむしろ国内労働力の不足解消に
役立つものとして歓迎されるべきことと言えます。
② 高度サービス業に特化を
アメリカ、イギリスにみならい、輸出立国は放棄し雇用吸収が高くない産業に特化。製造業も
アップルのように開発と製造の切り離しを。
(2) まだ理解できないこと
③ 消費税を 30%に
昨年の消費税増税の平成 29 年 4 月まで延期にどの党も反対しなかった。これは「財政再建
- 2 -
という困難な課題からすべての党が目を背けた」ということ。
金利高騰による国債の破綻を防ぐための、財政収支を均衡させるためには、消費税を EU
と同一レベルに引き上げて、EU 加入条件レベルにまで国家財政を再建すべき。
他にもいくつかの提言がありますが、ここで止めさせていただきます。今の人手不足を安倍さんとは
全く違う目線で読ませていただいた本でした。
中小企業の私たちにとっては、人口減少と高齢化がもたらす、あまりに過酷な将来にむかい自分の
会社を一体どうするのか?を毎日毎日、自問自答することで変化を見極めて、動くべき時に動くしか道
は開けないと思います。現実を知ること・知ろうとすることをやめれば、会社の将来はありません。それ
が経営者の責務です。
Ⅱ.企業の社会保険加入の厳格化について
∼社会保険を未加入のままでいたら、年金事務所がきました∼
このところ、年金事務所から、厚生年金保険・健康保険の未加入事業所に対しての加入要請が大変
厳しくなっております。
平成 26 年 6 月 23 日開催の、第 2 回社会保障審議会年金事業管理部会の厚生労働省年金局事業
管理課の資料によると、厚生年金保険の適用状況は以下の通りです。表中の「適用調査対象事業所」
は未加入の事業所を指し、社会保険の適用事業所となる可能性のある事業所をいいます。
厚生年金保険の適用状況(適用対策の実施状況の推移)
単位
適用事業所数
(年度末現在)
被保険者数
(年度末現在)
適用調査対象事業所数
(年度末現在)
外部委託による文書・電
話勧奨事業所数
適
外部委託による訪問
用
加入勧奨事業所数
対
来所要請による重点
策
加入指導実施事業所数
戸別訪問による重点
加入指導実施事業所数
適用対策を講じた結果、適
用した事業所数
平成 18 年度
平成 21 年度
平成 22 年度
平成 23 年度
平成 24 年度
事業所
1,681,355
1,753,964
1,748,578
1,745,027
1,758,192
人
33,794,056
34,247,566
34,411,013
34,514,836
34,717,319
事業所
97,427
111,990
107,935
246,165
387,840
事業所
70,973
42,765
80,741
276,540
137,675
事業所
43,755
18,953
65,957
120,344
69,690
事業所
8,657
1,575
2,894
1,424
947
事業所
6,786
3,390
10,556
20,736
22,414
事業所
10,833
2,567
4,808
6,685
8,322
- 3 -
適用調査対象事業所への調査が平成 18 年度に比べ、4 倍に増えています。年金事務所が外部に発
注し調査させる件数は、平成 23 年度に対し平成 24 年度は減っているのですが、年金事務所による戸
別訪問による重点加入指導実施事業所数は、平成 22 年度に対し、平成 23 年度・平成 24 年度とも平成
22 年度の倍に増えています。
また、厚生年金保険の適用促進策に対する平成 26 年度予算は、
99.6 億円(平成 25 年度 22.1 億円)
にものぼり、対策にこれだけの予算が組まれているのです。
戸別訪問で実際にあったやり取り
ある未加入の事業主に対する戸別訪問は大変厳しいものでした。
年金事務所 : 「社会保険に加入してください」
事業主 : 「うちのような小さな儲けもない会社は、保険料は払えない…」
年金事務所 : 「みなさんそうおっしゃいます」
事業主 : 「社会保険に加入したらうちはつぶれてしまいます」
年金事務所 : 「つぶれてもかまいません」
加入した場合、事業主は当然社会保険料を納付しなければなりません。
社会保険料を滞納している事業所数は、平成 23 年度で 186,806 事業所にも上っています。
この数は「延滞金のみ滞納している事業所」「差し押さえを受けた事業所」の数は含まれていないので、
これらを含めるとさらに数が増します。
社会保険料を滞納するとどうなるのでしょうか?
厚生年金の場合、毎月 20 日頃に各事業所へ「保険料の納入告知書」が送付されます。そして、納付
期限は月末です。
納付期限を過ぎても、直ちに財産の差し押さえが行われたり、延滞金を課せられることはありません。
納付期限までに納付できなかった場合に、納付日から 1 週間程度経過した時点で年金事務所から督
促状が送付されます。この督促状に記された期日までに納付をしないと、延滞金が発生します。督促状
が送付されると、年金事務所から納付を求める電話がかかってきます。
事業所として資金繰りが苦しくて保険料を払えない場合は、年金事務所に出向いて事情を説明し、納
付計画を立てます。分納が認めてもらえることもあります。
さらにこの督促を無視すると、財務調査、その後に強制調査が行われ、滞納者やその関係者の住所
や会社を徹底的に調べ、滞納金に充てる財産があれば、差し押さえ処分がなされます。売掛金を差し
押さえ処分の対象とすることもあります。会社として拒否する権利はありません。
何年か前に、未加入の事業所から「年金事務所に、社会保険に加入するように言われているんだけど、
どうしても保険料が払えない・・」と相談されました。とても経営状況の苦しいところで、「保険料を払えな
いのであれば、入らない方がいいと思います。入ってしまえば、保険料を払えないからといって、やめる
ことはできません。やめることができるのは、会社が登記上倒産した時だけです。」と答えたことがありま
- 4 -
す。 どうしても、「義務ですから加入してください。」とはいえませんでした。確かに従業員にとっては国
民健康保険と国民年金を自分で負担するよりも、会社で社会保険に加入してもらった方が本人負担は
少なくなります。また年金も、国民年金だけに加入している人の倍以上になります。
これから予想されること
加入に応じなければ、強制的に社会保険料の過去 2 年にまで遡り保険料を徴収される可能性もでて
きます。また、悪質な場合は、厚生年金保険法 102 条「事業主に対し、6 ヶ月以下の懲役または 50 万円
以下の罰金」を適用されるかもしれません。
これからは、社会保険料をいかに抑えて加入させるか、あるいは加入している事業所の社会保険料を
いかに抑えていくかという考えに切り替えなければなりません。
Ⅲ.役員報酬の変更のタイミングについて
月日の流れは早いもので、平成 27 年も 4 月となり、3 月決算の企業では決算へ向けての準備に本腰
を入れられた頃かと思います。本稿は、税務との関係上、決算直後に行われることが多い役員報酬の
改定について取り上げます。
会社が稼いだ利益の処分という視点からみると、役員へ支払われる給与(現物支給等も含む)は、法
人税の計算上、経費とすることができない配当金の支払いより魅力的です。しかし役員給与を際限なく
経費と認めてしまうと、例えば、事業年度末に多額の給与を役員へ支払うことにより、法人税を任意に圧
縮できることとなってしまいます。
そこで、法人税の計算上、経費とするためには、「①定期同額給与」「②事前確定届出給与「」③利益
連動給与」のいずれかの要件に該当する必要があるとの規定が設けられています。以下では実務上取
り扱うことの多い①の定期同額給与について、3 月決算の法人を例に解説いたします。
3 月決算法人は決算終了後の 5 月中に定時株主総会を開催されることが多いかと思われます。
役員報酬の支給額を改定する場合には、通常、この定時株主総会で決議することとなります。このよ
うな定時改定を行った場合に、改定された報酬額はいつから支給できることとなるのでしょうか。
1 .役員報酬(定期同額給与)の定時改定の要件
役員報酬の支給額を、事業年度の途中で改定(増額・減額)したときには、原則的には一部が法人税
の計算上、経費とすることができません。ただし、上記のような定時株主総会など毎年所定の時期に行う
改定(定時改定)で、
(1) 期首から原則 3 ヶ月以内(3 月決算法人の場合 6 月末まで)に行う改定であること
(2) 事業年度内において、改定前の毎月の支給額が同額であり、かつ、改定後の毎月の支給額が
同額であること
- 5 -
といった要件を満たせば、改定前と改定後の支給額はいずれも定期同額給与として法人税の計算上、
経費とすることができます(税務署長への届出は不要)。
2 .改定した報酬額はいつから支給可能か?
ケーススタディ:役員への給与の支給日が毎月月末の場合
(1) 3 月決算企業で、定時株主総会を 5 月 25 日に開催し、役員の定期給与を月額 40 万円から 60
万円へと増額する定時改定を決議しました。通常想定されるケースは次のとおりと思われます。
5 月支給分からとしたケース
→
5/25 定時株主総会で改定決議
5/31 支給分から増額
全額損金算入
4
5
6
7
8
9
10
11
12
1
2
3
12
1
2
3
6 月支給分からとしたケース
→
5/25 定時株主総会で改定決議
→
6/30 支給分から増額
全額損金算入
4
5
6
7
8
9
10
11
(2) 3 月決算企業で、定時株主総会を 6 月 5 日に開催し、役員の定期給与を月額 40 万円から 60
万円に増額する定時改定を決議しました。6 月支給分からといった増額の他、下記ケースも全額
損金算入となります。
7 月支給分からとしたケース
→
6/5 定時株主総会で改定決議
→
7/31 支給分から増額
全額損金算入
4
5
6
7
8
9
10
11
12
1
2
3
(3) 3 月決算企業で、定時株主総会を 4 月 25 日に開催し、役員の定期給与を月額 40 万円から 60
万円に増額する定時改定を決議しました。なかなか稀なケースと考えられますが、この場合も全
額損金算入となります。
- 6 -
4 月支給分からとしたケース
→
4/25 定時株主総会で改定決議
4/30 支給分から増額
全額損金算入
4
5
6
7
8
9
10
11
12
1
2
3
まとめとして、役員報酬は従業員の給料とは異なり、原則として期中に変更すると税法上の費用(損
金)となりません。ただし、「臨時改定」や「業績悪化改定」など、例外的に定期同額給与の類型として認
められる場合もありますのでご注意ください。
3 .役員報酬の改定に関連して
前記のとおり、定時株主総会で決議を行った場合、記録として定時株主総会議事録が作成・保存さ
れることとなります。
株主総会議事録や取締役会議事録の作成は、会社法で定められており義務付けられています。税
務調査や万が一にでも裁判に訴えられた場合には証拠書類ともなります。中小企業であっても必ず作
成するようにしましょう。
また、役員報酬の改定に伴い、社会保険の標準報酬月額の変更届の提出が必要となることがあり、
その際には株主総会議事録が必要となることがありますので、ご注意ください。
(出典:事務所通信 5 月号)
- 7 -
Ⅳ.相続対策としての贈与の活用
平成 27 年 1 月 1 日から相続税の基礎控除が 4 割引下げになり、この改正による納税対象者が今ま
での 1.5 倍に急拡大したといわれています。今回、同時に改正された贈与税とあわせて、相続対策とし
ての贈与のポイントを取り上げます。
1 .贈与税の改正点
贈与税について下記の改正がされました。親や祖父母からの贈与であれば税率が緩和されるほか、
相続時精算課税制度については子供に加え、孫も対象となりました。これにより、多くの資産をもつ親や
祖父母からの生前贈与を行いやすくなります。また、住宅取得資金や教育資金の贈与税の非課税枠に
ついても平成 27 年度税制改正にて延長・拡充されることとなりました。
(1) 暦年贈与(一般的な贈与)の改正
暦年贈与は 1 月 1 日∼12 月 31 日までの 1 年区切りで贈与税額を計算する贈与です。こちらは
以下のような適用税率及び控除額が改正されました。
改正後
改正前
(H27.1.1∼)
通常の贈与の場合
(∼H26.12.31)
特例(注 2)による場合
税率
控除額
課税価格(注 1)
税率
控除額
税率
控除額
10%
―
200 万円以下
10%
―
10%
―
15%
10 万円
300 万円以下
15%
10 万円
20%
25 万円
400 万円以下
20%
25 万円
15%
10 万円
30%
65 万円
600 万円以下
30%
65 万円
20%
30 万円
40%
125 万円
1,000 万円以下
40%
125 万円
30%
90 万円
1,500 万円以下
45%
175 万円
40%
190 万円
3,000 万円以下
50%
250 万円
45%
265 万円
55%
400 万円
50%
415 万円
55%
640 万円
50%
225 万円
4,500 万円以下
4,500 万円超
注 1 課税価格=贈与額−基礎控除 110 万円
注 2 20 歳以上の人が直系尊属(親・祖父母等)から受ける贈与
(2) 相続時精算課税制度を用いた贈与
相続時精算課税制度とは、上記(1)の暦年課税制度とは異なり、税率は一律 20%、控除額も一
律で 2,500 万円として贈与税を納税し、贈与者の相続税の計算時にその精算を行う贈与税の制
度です。こちらは下記のような改正がされました。
- 8 -
改正前
改正後
(∼H26.12.31)
(H27.1.1∼)
65 歳以上
60 歳以上
20 歳以上で、
20 歳以上で、
贈与者の推定相続人
贈与者の推定相続人及び孫
要件
贈与者
受贈者
2 .贈与税の仕組みを活用した相続対策
一般的には、次のような贈与税の仕組みを活用した相続対策が考えられます。
(1) 相続税の基礎控除額 110 万円を活用した暦年・複数の相続人に対する贈与
基本的な節税の方法は、相続人 1 人当たり 1 年間の非課税枠 110 万円を使い、毎年複数人
に生前贈与を行うことです。10 年で 1,100 万円を非課税で移転することが可能です。もし、同じ
1,100 万円を一括で贈与した場合は、207 万円の贈与税がかかります。また、この 1,100 万円が相
続財産として課税される場合、相続税の基礎控除を超えていれば 115 万円の相続税になりま
す。
ただし、基礎控除の枠内で資産の移転を行っていても、それを長期にわたって行っていると、
多額の贈与を計画的に分割したとみなされ、一括して贈与税が課される場合があります。
例えば、月掛の定期性預金などが名義預金とされる場合があります。こうならないためにも、贈
与を行う際には契約書を作成する、入金の記録を残すなど証拠を残すことや、定期的に贈与を
休むことも有効です。また、あえて基礎控除枠 110 万円を超えて贈与することも税務署に記録が
残ります(例えば 120 万円の贈与税は 1 万円です)。
(2) 相続税の適用税率と贈与税の実効税率差を利用した贈与
相続税の基礎控除額を超えて相続税がかかる場合、最低税率が 10%から始まるため、贈与
者1名につき、贈与額が 530 万円以下であれば実効税率が 10%以下となり節税効果があります
(20 歳以上の人が直系尊属から贈与を受けた場合)。
(3) 贈与税の配偶者控除による、2,000 万円までの居住用不動産または居住用不動産を取得する
ための資金の生前贈与
結婚して 20 年以上経過する夫婦間で、居住用の不動産または不動産購入費用を贈与した
場合には、基礎控除と合計で 2,110 万円まで非課税になります。
摘 用 要 件
1
戸籍上の婚姻が 20 年以上であること
2
居住用財産であること(別荘等は適用なし)
金銭の場合は居住用財産(増築も含む)にあ
てること
3
過去にこの特例の適用を受けていないこと(一生に1回のみ適用)
4
翌年の 3 月 15 日までに居住の用に供すること(あるいは見込みであること)
- 9 -
(4) 生命保険を活用した贈与
毎年 110 万円の贈与の非課税枠を使い、親から贈与された資金で子供が親に生命保険契
約をして、自ら受取人になります。すると、保険金は子供の一時所得になり所得税・住民税が
かかります。
〈保険形態〉 契約者(保険料負担者):子 、被保険者:親、 受取人:子
《一時所得の計算式》 課税対象額 =(保険金−払込保険金総額−50 万円)×1/2
一時所得(保険金との差益)は計算上半分に圧縮されるために、一般的に贈与や相続より節
税になります。しかも、支払った保険料総額より死亡保険金の方が多いので、最終的な受取額
も増やせるメリットもあります。
(5) 一世代飛び越し贈与(孫への贈与)
相続財産が多く、相続した子供にも相続税がかかる場合、孫に贈与することで
税金の負担を軽減することができます。
(6) 20 歳以上(年間所得 2,000 万円以下)の子や孫へ、住宅資金の贈与の特例 2,000 万円を利用
した贈与
〈対象者〉 20 歳以上で年間合計所得が 2,000 万円以下の人が、祖父母または親から受ける贈与
〈期 間〉 平成 27 年 1 月 1 日から平成 31 年 6 月 30 日
〈要 件〉 贈与の翌年 3 月 15 日までに居住用家屋を取得、または一定の増改築を行い、確定申
告を行うこと
消費税率 8%適用契約
住宅用家屋取得等の契約締結期間
良質な住宅
それ以外
消費税率 10%適用契約
良質な住宅
それ以外
∼平成 26 年 12 月 31 日(現行)
1,000 万円
500 万円
−
−
平成 27 年 1 月 1 日∼12 月 31 日
1,500 万円
1,000 万円
−
−
平成 28 年 1 月 1 日∼平成 29 年 9 月 30 日 1,200 万円
700 万円
3,000 万円
2,500 万円
平成 29 年 10 月 1 日∼平成 30 年 9 月 30 日 1,000 万円
500 万円
1,500 万円
1,000 万円
平成 30 年 10 月 1 日∼平成 31 年 9 月 30 日
300 万円
1,200 万円
700 万円
800 万円
良質な住宅 : 一定の基準を満たす省エネまたは免震、バリアフリー性の高い家屋等
(7) 孫への教育資金一括贈与制度(30 歳到達時まで、限度額 1,500 万円限度)
〈対象者〉 30 歳未満の人が、祖父母または親から受ける贈与
〈期 間〉 平成 25 年 4 月 1 日から平成 31 年 3 月 31 日
〈手続き〉 金融機関を経由して非課税申告書を提出し「教育資金管理契約」を締結
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限度額
対象費用
学校関連費用
学校等以外費用
1,500 万円(学校等以外含め)
500 万円
[未就学児施設・学校]
学習塾、スイミングスクール、ピアノ教
保育園・幼稚園・認定こども園、小学校・中学校・
室など習い事
高等学校・大学・大学院・専修専門学校、高等・
習い事に必要な用具などの購入
中等専門学校、特別支援学校
は基本的に塾や教室(個人・法人
[学校で必要な費用]
問わず)などの宛名で領収書発
入学金、授業料、遠足・修学旅行費、受験料、学
行
級会費・生徒会費・学校の寮費・PTA 会費
対象外費用
大学に通うための下宿費用
個人的な専門店・量販店などで
用具の購入
注) 贈与者が 30 歳に達した場合、または受贈者が死亡した場合は契約が終了します。
(8) 結婚・出産・子育て費用の贈与 1,000 万円
〈対象者〉 20 歳以上 50 歳未満の人が、祖父母または親から受ける贈与
〈期 間〉 平成 27 年 4 月 1 日から平成 31 年 3 月 31 日
〈手続き〉 金融機関を経由して非課税申告書を提出し「結婚・子育て資金管理契約」締結
結 婚
限度額
300 万円
対象費用
結婚式・披露宴費用
新居、新居引越し費用
対象外費用
出 産
子育て
1,000 万円(結婚資金も含め)
出産費用・不妊治療費
結婚相談所費用
子供の医療費・保育料
ベビー用品購入
注) 贈与者が 50 歳に達した場合、または受贈者が死亡した場合は契約が終了します。
なお、生前贈与について相続時精算課税制度を選択しても、毎年評価が上がる自社株などは除い
て相続対策としての効果はあまり期待できないようです。
せっかく相続税対策を行っても税務当局から否認される事例もありますので、制度の詳細や実施する
場合の注意点は担当者にご相談ください。
Ⅴ.監査役の登記事項の変更について
∼
会計監査のみの監査役は登記が必要に ∼
改正会社法
シリーズ 3
いよいよ、来月の 5 月 1 日より施行される改正会社法ですが、中小企業にとっての大きな改正点とし
て、監査役の監査の範囲を会計監査に限定する旨の定款の定めについて、登記が要求される点が挙
げられます。
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1 .監査役の監査範囲を登記事項に追加
これまで監査役の監査の範囲については、登記事項ではありませんでしたが、定款で監査役の監査
の範囲を会計に関するものに限定するとしている株式会社では、その旨が登記事項として追加されまし
た。(会社法 911③17)
2 .改正の経緯
監査役の監査には、「会計監査」と「業務監査」がありますが、平成 18 年 5 月 1 日の会社法施行前は、
会社の規模によって、監査役の監査の範囲は法定されていて、小会社(資本金 1 億円以下で負債の総
額が 200 億円未満の会社)の監査役の監査の範囲は、「会計監査」に限定されていました。
平成 18 年 5 月1日の会社法施行後も、経過措置により既存の非公開会社の小会社については、監
査役の監査の範囲を「会計監査」に限定する旨の定めがあるものとみなされました。
ところが、監査役の監査の範囲によって、監査役の業務や株主の権利の内容等に重要な相違がある
にもかかわらず、謄本をみてもその権限の範囲は不明であるため、対処すべきであると指摘されていま
した。
3 .監査役の権限
監査役の業務や権限についてまとめると、以下のとおりです。
限定のない監査役
会計監査限定の監査役
監査権限(会社法 381・389)
取締役の職務執行全般
取締役の職務執行のうち、
会計に関する事項
取締役会への出席及び
意見陳述(会社法 383)
義務
任意
監査報告
会計監査報告
業務監査報告
会計監査報告
取締役による不正行為又は法
令定款違反等がある場合の取
締役(会)への報告(会社法
382)
義務
適用除外
取締役が株主総会に提出し
ようとするすべての議案や書
類
取締役が株主総会に提出しよう
とする会計に関する議案や書類
株主総会議案等についての調
査及び株主総会への報告(会
社法 384)
取締役の違法行為差止請求
権(会社法 385)
(計算書類、自己株取得、配当、減資
等)
有り
無し(株主が行う。会社法 360)
これまでもそうでしたが、権限に限定のない監査役(業務監査権限も含む監査役)は、取締役の業務
についてのチェック機能も果たすため、基本的に取締役会に出席し、監査報告には業務内容について
の監査報告もする必要があります。
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4 .貴社の監査役の権限は?
貴社の監査役の権限はどのようになっているでしょうか。まずは、定款で調べてみます。左から右にた
どっていってみてください。
(株式の譲渡制限) ⇒
(定款の記載)
⇒
(設立時期)
会計監査及び業務
監査の両方
な い
会社の設立は
H18.5.1 以降
登記は不要
定款に記載がない
会計監査のみの登記
あ る
業務監査権限を含む
会社の設立は
H18.5.1 より前
みとしている
会計監査権限のみ
定款に会計監査の
⇒ (権限) ⇒ (登記)
5 .監査役の権限の登記
法律で、監査役の監査の範囲を会計監査に限定している会社は、会社法施行後、最初に監査役が
就任又は退任するまでの間は、この登記をせず、就任又は退任の際に合わせて登記をすることを認め
ています。そのため、5 月 1 日以降で監査役変更の登記をするときに一緒に行えばよいことになってい
ます。(会附則 22 条)
なお、特例有限会社は、整備法(24 条)により当初より会計監査権限のみとされていますので、登記の
必要はありません。
6 .会計監査限定の株式会社の株主の権限
会計監査のみの株式会社では、監査役に代わり、株主が会社の業務に関与しやすくするため、株主
の権限は強化され、以下のような権限を有します。
①取締役会議事録の閲覧やコピーができる。(会社法 371)
②取締役に定款違反行為等(その恐れでも)があるときは、取締役会を招集できる。(会社法 367)
③取締役が会社の目的の範囲外の行為や法令や定款に違反する行為をしたり(その恐れがあり)、
会社に「著しい損害」が生じる恐れがあれば、差止請求ができる。(会社法 360)
④取締役は会社に著しい損害を及ぼす事実があることを発見したときは、直ちに報告しなければな
らないが、その対象は各株主。(会社法 357)
これまで監査役の監査の範囲については、あまり意識してこなかったと思いますが、登記により明確
になります。会計監査のみの監査役について登記されることにより、監査役は権限にあった監査の業務
を行うことが求められ、会計監査のみの監査役の株式会社の株主は、権限の実行がしやすくなるものと
思います。
(参考:税務弘報 2015.3 平成 26 年改正会社法)
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Ⅵ.在職老齢年金の支給停止基準額の変更について
在職老齢年金の支給停止基準額が平成 27 年 4 月 1 日より変更になりました。在職中に受ける老齢
厚生年金の月額と総報酬月額相当額により、年金額が調整されます。
変更内容は以下のとおりです。
60 歳から 64 歳までの方の
46 万円⇒47 万円へ変更
支給停止調整変更額
(28 万円の支給停止調整については変更ありません。)
65 歳以上の方の
支給停止基準額
46 万円⇒47 万円に変更
65 歳以上の方には、厚生年金と給与を足して 46 万円以下ならば年金の受給額に調整はかかりませ
んとご案内していたのですが、厚生年金と給与を足して 47 万円以下ならば、調整がかからないこととな
ります。
≪計算方法≫ (報酬月額+厚生年金月額−支給停止基準額 470,000 円)×0.5 = 調整額
≪計算例≫
年金基本月額
老齢基礎年金
報酬月額(給与)
125,000 円 (厚生年金額 1,500,000 円)
65,741 円 (年額 788,900 円)
380,000 円
【46 万円のとき】
調整額=(125,000 円+380,000 円−460,000 円)×0.5=22,500 円
総収入月額=(125,000 円−22,500 円)+65,741 円+380,000 円=548,241 円
【47 万円のとき】
調整額=(125,000 円+380,000 円−470,000 円)×0.5=17,500 円
総収入月額=(125,000 円−17,500 円)+65,741 円+380,000 円=553,241 円
総収入月額としては、上記の例の場合 5,000 円ですが、年額だと 60,000 円多くもらえることに
なります。
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