栃木県におけるイネ縞葉枯病対策

グリーンレポートNo.550(2015年4月号)
栃木県 発
現地レポート
福島県
群馬県
栃木県におけるイネ縞葉枯病対策
栃木県
∼関係機関との連携で、
現場の課題にすばやく対応∼
関東地区ではここ数年、ヒメトビウンカが媒介するイ
茨城県
250
虫数/ 株
ネ縞葉枯病(写真− 1 )の被害が多発して問題となって
慣行箱粒剤
300
3∼4齢幼虫
1∼2齢幼虫
いる。各県でさまざまな防除対策が実施されているが、
200
ここでは、行政、JA、JA全農とちぎ、メーカー、共
済組合などが連携して取り組んでいる栃木県のイネ縞葉
虫数/ 株
100
枯病対策を紹介する。
60 150
ロングリーチ箱粒剤
100
50
50
60
イネ縞葉枯病の多発と、関係機関と連携した試験の設定
0
5月
6月
6月
7月
30日 12、13日 26、27日 9、10日
0
5月
6月
6月
7月
30日 12、13日 26、27日 9、10日
図−1 「ロングリーチ箱粒剤」のヒメトビウンカに対する
効果試験結果
栃木県では平成24年以降、県中南部を中心にイネ縞葉
(5月4日移植、移植直前に箱粒剤を処理、品種:コシヒカリ)
枯病が多発するようになった。収量が激減した地区もあ
り、県の指導機関、JAや生産者、共済組合などからウ
降の防除が重要と思われた。
ンカ対策が急務であるとの意識が高まった。
箱処理剤の効果試験の結果、 5 月中旬に移植する体系
そこでJA全農
では、慣行箱粒剤処理区、および無処理区は 6 月下旬に
とちぎは、これら
発生する第二世代幼虫、 7 月上旬の第二世代成虫が急増
関係機関と連携を
したが、
「ロングリーチ箱粒剤」処理区はこれらの密度
とり、より効果の
を低く抑えることができた(図− 1 )
。異なる作期の複数
高い防除方法を検
圃場での試験を行ったが、
「スターダム箱粒剤」
「ロング
討するために現地
リーチ箱粒剤」の効果は優れていた。
試験を行った。試
験の目的は、水稲
前作の麦作から水
現場への指導と対応
写真−1 イネ縞葉枯病に感染すると葉および
葉鞘に黄緑色∼黄白色の病斑が生じる
これらの試験結果をふまえて県と協議した結果、基本
稲本田でのヒメトビウンカの発生消長が以前と変わって
的には移植時の箱処理剤使用と 2 回の本田防除を指導す
ないかを把握し、防除のタイミングを図ること、さらに、 るが、
「スターダム箱粒剤」
「ロングリーチ箱粒剤」など
効果の高い箱処理剤を選定すること、の 2 点である。
長期残効のある箱処理剤を使用した場合は本田防除を 1
試験は、JA全農とちぎ、メーカー、共済組合の各機
回にできるという指導になった。
関で計17ヵ所の展示圃を設置して行った。箱処理剤には、 また、今回の試験は県、JA、共済組合などと連携し
殺虫成分を多く含有するのでヒメトビウンカに対しても
て取り組んだことから、JAでは次年度の予約注文書に
長期残効が期待できる「スターダム箱粒剤」
「ロングリ
試験薬剤を採用、部会では試験結果と県の方針に基づい
ーチ箱粒剤」を用い、慣行の体系と効果を比較した。な
て有効な防除方法を個別に説明するなど、生産者に防除
お、
「スターダム箱粒剤」と「ロングリーチ箱粒剤」の
方針を広く周知することができた。もちろん、抵抗性品
殺虫成分の種類と量は同一である。
種の作付けなどの耕種的防除も組み合わせた対応を指導
している。
6月初旬以降の防除が重要
イネ縞葉枯病のような虫を媒介して伝染する病害には、
ヒメトビウンカの発生消長を調査した結果、大麦・小
無人ヘリなどを活用して広域で密度を減少させる防除が
麦の圃場で成長、増殖した第一世代成虫が、麦の刈り取
不可欠である。今回紹介した取り組みは、現場の課題に
り後 6 月初旬から水田に飛来すること、また、水田では
すばやく対応するために関係機関と連携して試験を行い、
第二世代幼虫が 6 月下旬から、第二世代成虫が 7 月上旬
その結果に基づき現場への指導と生産者への周知を徹底
から出現することがわかった。この発生消長は昭和55年
した好事例といえる。
当時と同様であり、水田への飛来がみられる 6 月初旬以
【全農 関東肥料農薬事業所 農薬課】
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