FX Weekly 平成 27(2015)年 4 月 10 日 GLOBAL MARKETS RESEARCH チーフアナリスト 内田 稔 三菱東京 UFJ 銀行 A member of MUFG, a global financial group Table of contents 1 今週のトピックス 2 来週の相場見通し 3 来週の経済指標・イベント 4 マーケットカレンダー 1. 今週のトピックス (1) 日本の国際収支は円安を示唆せず チーフアナリスト 内田 稔 (2) 弱かった雇用統計でも米利上げの意向揺るがず シニアマーケットエコノミスト 鈴木 敏之 (3) 4 月 ECB 理事会は無風と予測 アナリスト 天達 泰章 2. 来週の相場見通し (1) ドル円:根強いドル高期待と弱まる円安期待 予想レンジ 119.00 ~ 121.50 (2) ユーロ:米経済指標を睨みつつも、弱含む展開を予測 予想レンジ 対ドル: 1.0550 ~ 1.0900 対円: 127.00 ~ 131.50 (3) 豪ドル:引き続き上値の重い展開が続こう 予想レンジ 対ドル: 0.7500 ~ 0.7850 対円: 90.50 ~ 94.50 (4) 人民元:来週は利下げ後初めての経済指標に注目 予想レンジ 1 FX Weekly | 平成 27(2015)年 4 月 10 日 対ドル: 6.1850 ~ 6.2200 対円: 19.20 ~ 19.60 (1) 日本の国際収支は円安を示唆せず 改善が続く経常収支 今週、本邦では 2 月の経常収支が約 1.4 兆円の黒字(季節調整前) であったと発表された。黒字は、8 ヶ月連続であり、黒字の額も 3 年 5 ヶ月ぶりの高水準なものとなった。日本ではエネルギー価格の 低下により、輸入額が大幅に減少し、貿易赤字が縮小傾向をたどっ ている。例えば、昨年 2014 年は年間で総額約 27 兆円をエネルギー 関係(原油、石油・粗油、天然ガスなど)の購入に費やした(貿易 統計ベース)。エネルギー関連の輸入数量と為替相場を一定と仮定 すると、エネルギー価格が 1 割下がる度に、2.7 兆円の輸入減(貿 易赤字の縮小)要因となる計算だ。昨年の貿易赤字が約 10 兆円で あったことからすれば、2015 年の貿易赤字が半減しても何ら不思 議はない。加えて、対外的な証券投資や直接投資の活発化に伴い日 本全体が有する対外純資産は 2013 年末時点で 325 兆円(14 年末時 点は 5 月発表予定)と世界一の規模を誇る。そこから生じる配当金 などの増加により、第一次所得収支の黒字幅も拡大傾向にあり、こ ちらも経常収支の改善要因だ。2011 年以降、主に貿易収支の悪化 に伴い、昨年にかけ経常収支の悪化(黒字幅の縮小)が続いたが、 この 2015 年は経常収支の黒字幅が 10 兆円程度に迫る可能性も決し て低くない(第 1 図)。為替市場では、教科書通り経常黒字拡大な ら円高圧力、黒字縮小や赤字転化なら円安圧力をもたらすうえ、経 常収支の動向は先々の為替相場に対する期待形成にも影響を及ぼす と考えられる。このため、こうした経常収支の改善が示されるにつ れて、次第に円安期待が和らぐ可能性があるだろう。 第 1 表: 日本の経常収支(単位:兆円) (2000~2010 年の平均) (2013 年) (2014 年) +16.9 +3.2 +2.6 貿易収支 +10.8 ▲8.8 ▲10.4 サービス収支 ▲4.3 ▲3.5 ▲3.1 第 1 次所得収支 +11.4 +16.5 +18.1 第 2 次所得収支 ▲1.0 ▲1.0 ▲2.0 経常収支 (資料)財務省データより、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 金融収支の内、直接投 資は一定の円安材料 2 一方、国際収支による為替市場への影響をみるうえでは、経常収 支のほか、金融収支にも着目する必要がある。特に、為替市場への 影響をみるうえでは、直接投資や証券投資の動向が重要だ。この内、 直接投資は年初来、本邦企業による大型のM&Aなどが相次いで報 じられている通り、年初来 2 月までの実績(対外直接投資のネット) は既に約 2.6 兆円に上る。単純に年率換算すると 15 兆円を超え、 過去最高であった 2013 年の約 14.4 兆円をも凌ぐ勢いだ(第 2 図)。 こうした直接投資は、外貨建てで資金を調達する場合もあるが、多 くの場合、円の売り切りであることが多い。海外市場の成長を取り 込むため、今後とも本邦企業による活発な対外直接投資が続くとみ られ、引き続き円安材料となりそうだ。 今週のトピックス | 平成 27(2015)年 4 月 10 日 証券投資による円安効 果は限定的 対外証券投資も円売りをもたらす役割を担うものとして、市場参 加者の関心が高い。特に、本邦の国債利回りが低位で推移する中、 国内証券から外国証券へのシフトが続くと考えられ、円売り圧力を もたらすだろう。実際、今年 1 月から 2 月まで、中長期債と株式・ 投資ファンド持分をあわせると、本邦の居住者が約 6.6 兆円も外国 証券を取得している(第 3 図)。ただ、足元では米国の 10 年債利 回りも 2%を下回るなど、為替相場の変動リスクに見合うだけのリ ターンを期待する水準ではない。10 年債で比較した場合、為替 ヘッジ付きの米国債投資(円売りと先物の円買い、為替相場への影 響は中立)が日本国債への投資利回りを上回っている。少なくとも 年初来の中長期債投資(約 2.9 兆円)に関して言えば、ヘッジ付き 外債投資が主流であった可能性が高く、円売りを伴った対外証券投 資は、数字よりもかなり控え目にみておく必要があるだろう。実際、 年初来 6.6 兆円もの外国証券の取得が生じたにもかかわらず、年初 来概ね横ばい圏で推移してきたドル円相場の値動きそのものが、こ うした見方を裏付けているとも言えるだろう。無論、こうした対外 証券投資の裏側にある為替ヘッジに関する投資家の行動は、今後の 相場をどう期待するかにも依存する。また、本格的に米国の短期金 利が上昇し始めると、為替ヘッジコストが上昇するため、対外証券 投資は次第に為替ヘッジなし(円売り)へと徐々に移行していこう。 ただ、経常収支の改善と合わせてみれば、国際収支全体から強い円 安圧力が生じるわけでもないだろう。 ドル円相場が勢いよく上昇(ドル高円安)するためには、ドル高 と円安の両輪がタイミングよくかみ合って回転することが必要と考 えられる。しかし、本邦の追加緩和期待が盛り上がりを欠いている ことと合わせ、当面の間、円安材料は期待しづらい。このため、ド ル円は当面の間、ドル高の程度や持続性だけに強く依存する時間帯 が続く見込みだ。 第 2 図: 日本の対外直接投資(ネット) 第 3 図:日本の対外証券投資(ネット) (兆円) 4 (兆円) 16 株式・投資ファンド持分 14 3 中長期債 12 2 10 1 8 0 6 -1 4 -2 2 0 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) (資料)財務省データより、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 -3 14/1 14/4 14/7 14/10 今週のトピックス | 平成 27(2015)年 4 月 10 日 (年/月) (資料)財務省データより、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 チーフアナリスト 3 15/1 内田 稔 (2) 弱かった雇用統計でも米利上げの意向揺るがず 3 月の雇用者増加数が 12.6 万 人 と い う 弱 い 数字に落ちたが、Fed 利上げ開始の意向保持 4 月 3 日に発表された 3 月の米国統計の雇用者増加数の数字は弱 いものであった。2 月、3 月の米国の経済指標に弱いものが多く、 雇用だけが強い状態であった。その最後の砦の雇用統計も弱かった ことで、米国経済の成長の強さを絶対視できなくなった。はたして、 この状況で利上げに進むことができるのか? その不安もある中で、 4 月 6 日に、連邦公開市場委員会(FOMC)副議長でもあるニュー ヨーク連銀のダドリー総裁が講演を行った。その講演では、弱かっ た雇用統計にひるむことなく、利上げ開始の意向はしっかりと保持 しながら、同時に、先行きの利上げの進め方について柔軟であるこ とを言って、利上げに進んでも引き締めをする意図がないことを明 確にした。以下、こうして得られた情報をもとに、米国の金融政策 がどう進められそうかをみておきたい。 ① 弱いとは言い切れない雇用統計 雇用統計は、弱いとは 言い切れない。 雇用増加数の減少には 荒天要因による一時性 がある。 4 月 3 日に発表された 3 月の雇用統計の非農業部門雇用者数は、 12.6 万人という弱い増加にとどまり、1 月分、2 月分の数字も下方 改訂された。3 ヶ月で 100 万人の雇用を創出していたことが話題と なったはずだが、この 1-3 月の 3 ヶ月では、59.1 万人という数字に 減ってしまった。しかし、この落ち込みで、米国雇用の状態が悪化 したという短絡的な判断はなされないであろう。 第一に、雇用者増加数の減少では、業種の偏りがある。住宅建設 関連のスペシャリティ(特殊技能者)と外食業で数字が落ちている。 ともに、悪天候の影響を大きめに受けた仕事とみられる。 第 1 図:雇用者増加数減少をもたらした住宅建設関連の落ち込みは一時的の可能性 2,500 (千人) (千件) 50 荒天で落ち込んだ住宅着工 同様に関連雇用が減少 40 30 2,000 20 10 1,500 0 -10 1,000 -20 -30 500 -40 -50 0 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) 住宅着工〈左目盛〉 雇用 居住用スペシャリティ〈右目盛〉 (資料)米労働省、商務省のデータにより、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチで作成 失業率の低下トレンド は継続、賃金も上昇 4 第二に、失業率は低下している。一般に参照されるU3 という失 業率は 2 月も 3 月も 5.5%であるが、小数点以下第 3 位までみると、 2 月は 5.545%、3 月は 5.465%で、低下している。また、U3 よりも 今週のトピックス | 平成 27(2015)年 4 月 10 日 広義で、イエレン議長が関心を寄せることの多いU6 失業率は 11.0%から 10.9%に低下している。 第 2 図:失業率の低下トレンドは持続 (%) 20 U3失業率(一般の失業率) 18 U6失業率(広義の失業率) U3の自然失業率 16 U6の自然失業率 14 12 10 8 6 4 2 0 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) (資料)米労働省のデータにより、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチで作成 第三に、賃金が、平均時給でみて、前月比 0.3%の上昇をみた。 失業率が賃金に影響するまでに時間を要する。労働需給が引き締ま りだした結果として、それが賃金上昇にあらわれだしているという 見方ができる。 悪天候、西海岸の港湾ストの影響による一時的な要因があるとし ても、最近の経済指標の多くが軟化している。このため、雇用につ いても動きが鈍ったという心配はあるが、次の数字を待つ余裕はあ るといってよいであろう。 ② 利上げ開始の意向は堅固 、その後の利上げは極めて緩やか 利上げは開始するが、 その後の利上げパスの 期待への働きかけで緩 和姿勢を継続 5 3 月 27 日にイエレンFRB議長が講演を行った。FRB議長が、その 金融政策の進め方を説明する講演は稀でしかない。このイエレン議 長講演は、その重い位置づけのものである。それが示したことは、 金融政策を正常化させるために利上げを開始する意向が強いことと、 金融政策として利上げ開始のタイミングとともに、その後の利上げ の進め方の一般の予想が重要であるとして、その点も深く言及した ことである。すなわち、前回の 2004-2006 年の毎回のFOMCで 0.25%ずつよりも、さらに緩やかな「徐々に(Gradual)」上げると いう利上げペースを議長は示唆した。どこまで利上げするかについ ても中立金利を、実質FF金利 1.75%、インフレ目標 2%と言って、 3.75%を示唆した。その拠りどころは、2017 年には、Fedが任務を 達成しているといえる経済状態になるという経済見通しを持ってい ることである。ちなみに、ニューヨーク連銀のダドリー総裁は 3.5%を言っている。 ここまで踏み込んだ発言を行うのは、ゼロ金利のもとで、金融政 策の手段が一般の予想形成へのはたらきかけ、広義のフォワードガ イダンスになっているからであろう(注:「フォワードガイダンス」 今週のトピックス | 平成 27(2015)年 4 月 10 日 については、次回のFOMCで政策決定をどうするかを告知すること についてだけの狭義の意味で言われることがある)。 ③ FOMC 議事要旨 4 月 3 日の雇用統計発表後、4 月 6 日に、ニューヨーク連銀のダ ドリー総裁、続いて 4 月 8 日にパウエル理事が講演を行い、3 月の 雇用統計が弱いものだったが、利上げは行う、その後の利上げペー スは極めて緩やかに行う意向が保持されていることが伝えられた。 利上げ開始には、ひるんでいない。雇用はじめ、指標の弱い動きは 一時的とみられることが、その判断の根底にある。 4 月 8 日に、3 月 17-18 日のFOMC議事要旨が公開された。それで 注目されるのは、次の点である。 (イ)利上げ開始のタイミング 利上げ開始のタイミン グを巡って意見は伯仲 これまで曖昧にされていた利上げ開始のタイミングについて、議 事要旨は、5-6 人をいうとみられる“Several”が 6 月利上げ開始論、 他はそれ以降であるが、2016 年開始論が 2 人(a couple of)である としている。参加していたFOMCメンバーは、14 人であるので、67 人が、7 月以降年内を言っていることになる。伯仲しているが、6 月と、年内(Later This Year)が区別されており、イエレン議長を 核とする中心メンバーは、その講演での発言から、年内の立場であ ろう。利上げ開始は、おそらく 9 月 16-17 日のFOMCに傾斜してい ることになる。 (ロ)予想インフレ率の低下 予想インフレ率をおし はかる指標の低下をみ ても、予想インフレは 安定していると判断 FOMCが特に注意を向けている対象がふたつある。そのひとつは 予想インフレ率の低下である。Fedは、額面通りの予想インフレ率 の低下をみていない。第一に、原油価格の低下という今後は小さく なる要因があるからである。第二に、債券市場のみるブレークイー ブンインフレ率が低下したのは、地政学や規制など債券買いの需要 を高める情勢変化があったという要因があり、人々のインフレ予想 が低下したとは言い難いからである。予想インフレ率が安定してい るから利上げ開始に進めるというのが、Fedの立場である。 ただし、その判断でよいのか、確たる自信があるわけでもなさそ うである。その自信のなさは、議論の中でひとりのメンバーが、指 標にあらわれている予想インフレ率の低下は、経済が弱っているこ との反映と主張していることが、わざわざ特筆されていることにあ らわれている。 (ハ)ドル高 ドル高の米経済への悪 影響は懸念されている 6 この 3 月のFOMC後の記者会見で、ドル高が複数回話題になった が、議事要旨でもドル高への関心は高い。特に、注目されるのは、 事務局(Staff)が中期の経済見通しを引き下げたことについて、そ 今週のトピックス | 平成 27(2015)年 4 月 10 日 の理由をドル高としていることである(FOMCの議事要旨の記述: The staff's medium-term forecast for real GDP growth also was revised down, mostly because of the effects of a higher projected path for the foreign exchange value of the dollar.)。ちなみに、ダドリー総裁は、 その講演で、2014 年央からドルは 15%上昇し、それが今年にかけ てGDP成長率を 0.6%押し下げるという数字を言っている。 第 3 図:ドル高の米経済への影響に関心 50 ‐15 (%) 40 ‐10 30 ‐5 20 10 0 0 5 ‐10 ‐20 10 ‐30 ↓ ドル高 15 ‐40 耐久財受注 前年同月比<左目盛> 実質実効為替相場 前年同月比<右目盛> 15/01 14/01 13/01 12/01 11/01 10/01 09/01 08/01 07/01 06/01 05/01 04/01 03/01 02/01 01/01 00/01 99/01 98/01 97/01 96/01 20 95/01 ‐50 (年) (資料)米商務省、BIS のデータにより、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチで作成 FOMCが強いとみていた雇用の今後が不透明になり、原油価格の 下落の経済への好影響の手ごたえは感じられず、ドル高の米国経済 への悪影響をみて行かなければならいということで、米国経済の見 方はやや重苦しくなっている。 結び 弱い雇用統計が出て、利上げに進むのに上記の重苦しさがあって も、Fedが年内に利上げを開始する意向は、強く保持されている。 経済に弱めの動きがみえ続けるとしても、なかなか利上げ開始の方 針は譲らず、利上げの進め方の予測形成への働きかけで、弱いペー スでの利上げサイクルを見込ませ、金融緩和をやめるわけではない ことが強調されそうである。 シニアマーケットエコノミスト 7 今週のトピックス | 平成 27(2015)年 4 月 10 日 鈴木 敏之 (3) 4 月 ECB 理事会は無風と予測 ECBは、4 月 15 日にECB理事会を開催する。本稿では、景気・物 価動向から 4 月ECB理事会を予測する。 ① ユーロ圏景気は一部に弱さもののみられるものの持ち直し 個人消費は堅調に推移 し、輸出は持ち直しの 動き 最近の経済指標は、ユーロ圏景気は一部に弱さがみられるものの 持ち直していることを示している。個人消費については、実質小 売売上高はドイツを中心に増加傾向にある。労働組合の反発で労働 市場改革が進展せず、景気後退しているイタリアでも、底堅く推移 している(第 1 図)。加えて、輸出については、ユーロ安を受けて ドイツの輸出が昨年秋以降、高水準で推移しており、ドイツが牽引 する形で持ち直しの動きを続けている(第 2 図)。内外需要が持ち 直す中で、供給サイドでも独 2 月鉱工業生産が良好な結果となる (前月比+0.2%)など、ドイツを中心にユーロ圏の生産は底堅く 推移している。 ドラギECB総裁は「ユーロ圏の短期的な経済見通しは改善した」、 クーレECB理事は「ユーロ圏で景気の回復がみられる」と発言して いる。 1 第 1 図 :実質小売売上高 第 2 図:ドイツ輸出と製造業受注(除くユーロ圏) (2010年=100) (2010年=100) (2005年=100) 110 120 105 110 180 (2005年=100) 140 160 120 140 100 120 80 100 60 100 100 90 95 80 90 08/1 09/1 ドイツ 10/1 フランス 11/1 12/1 イタリア 13/1 ユーロ圏 14/1 スペイン(右軸) 80 15/1 (年/月) (資料)Eurostat より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 08/1 09/1 10/1 独輸出(名目除くユーロ圏) 11/1 12/1 13/1 14/1 40 15/1 (年/月) 独製造業受注(実質除くユーロ圏)〈右目盛〉 (資料)欧州自動車工業会より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 ② 物価はマイナス圏で推移、期待物価も低水準 物価は予断を許さない 状況 1 8 このようにユーロ圏景気は一部に弱さがみられるものの、持ち直 していることから、コア消費者物価指数(HICP)は概ね横這いで 推移しているが、エネルギー等物価のマイナス寄与が大きくHICP 全体(エネルギー等を含む)は 3 月に前年比▲0.1%とマイナス圏で している(第 4 図)。原油価格が 2 月以降小幅に反発していること (北海ブレント 1 月安値 45.19 ドル→3 月高値 62.50 ドル)や、食料 品価格が天候不順から高騰していること(野菜価格 12 月前年比 ▲5.2%→2 月同+2.3%)から、HICPは前年比マイナス幅を幾分縮 住宅投資と設備投資は弱い。 今週のトピックス | 平成 27(2015)年 4 月 10 日 小させているが、当方試算ではHICPは今秋まで前年比▲0%台半ば で推移することが見込まれ、期待物価の下落が懸念される。実際に、 消費者期待物価DIは下落超幅を縮めたものの、0 近辺で推移してお り、予断を許さない状況にある(第 5 図)。 第 3 図: ユーロ圏消費者物価指数(前年比) 第 4 図: ユーロ圏消費者物価 DI (%) 3 80 60 2 40 上昇超 1 20 0 0 下落超 -20 -1 12/1 12/7 13/1 コアHICP 13/7 エネルギー等物価 14/1 14/7 15/1 (年/月) 99/1 01/1 ユーロ圏HICP (資料)Eurostat より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 03/1 05/1 消費者物価DI 07/1 09/1 11/1 13/1 15/1 消費者期待物価DI (資料)欧州委員会より三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 ③ 結語 このように、ユーロ圏景気は持ち直している一方、物価はマイナ ス圏で推移し、期待物価の下落が引き続き懸念されることから、4 月ECB理事会では、マイナス金利と国債買入の継続が強調されよう。 3 月 9 日から始まったECBによる国債買入は、公的部門買入プロ グラム(PSPP)の残高が 4 月 3 日に 525 億ユーロに達しており、順 調である2 。ドラギECB総裁は「市場からのフィードバックの分析 で、資産買入の実行に何の困難もないと分かった」と発言しており、 4 月ECB理事会での国債買入方法のテクニカルな変更もないと考え られる。 従って、4 月ECB理事会では政策変更等はなく、無風になると予 測する。 アナリスト 2 9 当方は資産買入額の月間 600 億ユーロのうち PSPP 分を 460 億ユーロと試算。 今週のトピックス | 平成 27(2015)年 4 月 10 日 天達 泰章 (1) ドル円:根強いドル高期待と弱まる円安期待 今週のドル円相場は予想を下回った前週の雇用統計後の安値 118.71 から約 2 円もの反発となる 120.74(9 日の海外時間)を記録 し、週末も 120 円台半ばで推移している。こうしたドル円の反発は、 雇用統計が一度、予想を下回っただけでは、米国の正常化(利上げ 開始)への期待そのものが何ら崩れていないことを示している。実 際、ドル円と相関が高い期間 1 年の通貨オプション市場でのリスク リバーサルは、依然としてドルコール高となっている。短期的には ドル円相場の不安定化や下落(ドル安円高)があっても、いずれ米 国の利上げ開始が近づくに連れ、ドル円は上昇するとの期待の表れ と言えるだろう(第 1 図)。とは言え、今週発表された本邦の国際 収支は 8 ヶ月連続しての黒字を記録(第 2 図)。また、日銀も金融 政策決定会合を開催し、金融政策の現状維持を決定。記者会見で黒 田総裁はデフレ脱却に向けた基調に変化はみられていないと従来の 見方を繰り返し、追加金融緩和への期待がすぐに高まる状況ではな い。即ち昨年来、円安圧力や円安期待を高めてきた日本の国際収支、 金融政策といった材料は足元では円安を示唆しているわけではない。 主要 3 通貨の強弱も、強い順にドル、円、ユーロとなっており、 ユーロ円など多くのクロス円で今週は円高が進んだ。足元のドル円 120 円台回復は、その主因が円安ではなくドル高である点に留意が 必要だ。 今週のレビュー 第 1 図: ドル円と通貨オプションのリスクリバーサル(1 年) 第 2 図:本邦経常収支と貿易収支(国際収支ベース) (%) 1.5 (10億円) (円) 125 3,000 ドルコール高 (ドル円上昇期待) 1.0 120 2,000 0.5 115 1,000 0.0 110 0 105 -1,000 100 -2,000 -0.5 リスクリバーサル ドル円〈右目盛〉 -1.0 経常収支 貿易収支 ドルプット高 (ドル円下落期待) -1.5 14/1 14/4 14/7 14/10 15/1 95 15/4 (年/月) -3,000 10/1 11/1 12/1 13/1 14/1 15/1 (年/月) (資料) Bloomberg より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 もっとも、そのドル高に関しては、公表されたFOMC議事要旨 (3 月 17~18 日開催)の中で、米国の成長率に対する下押し要因 との警戒が示されている。為替報告書でこそ、一部で警戒されたド ル高へのけん制めいた記述はみられなかったとは言え、今週から本 格化する米国の企業決算および今後の経済指標などにおいて、ドル 高の悪影響が出ていないかどうかを今後見極めていくことになるだ ろう。特に、ドル高は物価上昇圧力を押し下げ、経済活動に対して いくらかの逆風となるなど、金融引き締めに似た効果も有する。こ のため、ドル高が進めば進むほど結果的に利上げがやりづらくなっ 10 来週の相場見通し | 平成 27(2015)年 4 月 10 日 たり、利上げペースを鈍化させることになるなど、自ずと利上げ期 待から強まるドル高期待に歯止めをかける経路を意識しておく必要 がありそうだ。実際、3 月以降不安定化した米国の株式市場ではそ の一因としてドル高も挙げられている(第 3 図)。急速にドル高が 進む場面では市場全体の緊張が高まり、これがいわゆる「リスク回 避の円買い」を誘発しやすい。そうなれば、ドル高と円高とが併走 するため、ドル円という通貨ペアだけは上昇が阻まれる。来週以降 も、米経済が利上げやドル高に十分耐えうるほど強いかどうかを見 極めていくことになってこよう(第 4 図、正午のドル円スポット相 場:120.54~56)。 第 3 図: 米国の S&P500 指数と米ドル指数 第 4 図: 今週のドル円相場の値動き 104 2,130 (ドル高) 2,110 102 2,090 100 2,070 98 2,050 96 2,030 94 2,010 92 (円) 121.0 ↑円安 120.5 120.0 米S&P500指数〈右目盛〉 1,990 ドル指数 90 119.5 119.0 88 1,970 (ドル安) 86 1,950 14/12 15/1 15/2 15/3 15/4 (年/月) (資料) Bloomberg および Intercontinental Exchange より、三菱東京 UFJ 銀行グ ↓円高 118.5 4/6 4/7 4/8 4/9 4/10 (月/日) (資料) Bloomberg より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 ローバルマーケットリサーチ作成 来週の見通し 来週は、米経済の現状をみるうえで重要な多くの経済指標を控え ている。単純ではあるが、事前の予想を上回るか下回るかに応じて、 米ドル金利とともにドル相場も上下に振れるだろう。ただ、ドル円 という通貨ペアに限ると、これにリスクオンかリスクオフかといっ た要素も考慮する必要がある。このため、指標が予想を上回った場 合も、米ドル金利の上昇やそれに伴うドル高により、米国の株式相 場が不安定化するのであれば、円にも相応の上昇圧力が加わる為、 ドル円の上値が重くなるだろう。とは言え、予想を下回った雇用統 計後もドル円は 118 円台で踏み止まり、120 円台を回復したプライ スアクションをみた後だ。ドル円は「上がらないが下がりもしない」 との残像が意識されている時間帯と言え、来週のドル円は上値が重 いながらも底堅い推移が見込まれる。 来週のいくつかの米経済指標の中でも、特に小売売上高に注目が 集まる。昨年来の原油価格の下落は、エネルギーセクターの設備投 資や雇用抑制といったマイナスをもたらす一方、ガソリン価格の下 落を通じた消費への追い風となることが期待され、全体としてみれ ば米経済にはプラスというのが市場のコンセンサスだ。ただ、その 小売売上高にこれまでのところさほど力強さはみられていない(第 11 来週の相場見通し | 平成 27(2015)年 4 月 10 日 5 図)。また、年初来低調な数字が並ぶ鉱工業生産のほか、イエレ ン議長が回復が不十分と警戒する住宅関連の指標も重要だろう。加 えて、今後の金融政策をみる上では、ミシガン大学調査による期待 インフレ率や消費者物価指数といった物価に関する指標も重要だ (第 6 図)。3 月のFOMC声明では、利上げが適切となる条件とし て、労働市場の一段の改善と、物価上昇圧力が 2%に向かって強ま るとの確信を挙げているためだ(FOMCが参照するのは消費者物価 指数ではなく、PCEデフレーター)。もっとも、4 月下旬から 5 月 にかけ、米国の第 1 四半期GDP統計(29 日)やFOMC(30 日)、4 月分の雇用統計(5 月 8 日)を控えている。来週に関しては、一連 の指標が予想から極端に乖離しない限り、ドル円も直近の値幅を超 えることは容易ではないと予想する。 第 5 図:米国の小売売上高(前月比) 第 6 図:米国の消費者物価指数の伸び(前年比) (%) 1.5 (%) 2.5 2.0 1.0 1.5 1.0 0.5 0.5 0.0 0.0 -0.5 -1.0 -0.5 -1.5 -2.0 -1.0 13/1 前月比 同(除、自動車・ガソリン) 食品 輸送サービス その他 -1.5 14/1 14/3 14/5 14/7 14/9 14/11 15/1 (年/月) (資料) 米国勢調査局より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 予想レンジ 13/7 14/1 14/7 家賃 エネルギー 全品目 15/1 (年/月) 衣類 医療関係 コア (資料) 米労働統計局より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 ドル円:119.00 ~ 121.50 チーフアナリスト 12 来週の相場見通し | 平成 27(2015)年 4 月 10 日 内田 稔 (2) ユーロ:米経済指標を睨みつつも、弱含む展開を予測 今週のレビュー 今週のユーロドル相場は、米 3 月雇用統計が寒波の影響等から一 時的に悪化したものとの見方が広がり、ドル買い戻しによって下落 した(第 1 図)。 第 1 図: 今週の為替相場推移 (ドル) 1.110 ↑ユーロ高 1.100 1.090 1.080 1.070 ↓ユーロ安 1.060 4/6 4/7 4/8 4/9 4/10 (月/日) (資料) Bloomberg より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 週初にユーロドルは 1.10 ドル付近で寄り付いた。米 3 月雇用統 計が大幅に悪化したことを受けたドル売りの流れから、6 日にユー ロドルは 1.1036 まで上昇した。 しかし、米 3 月ISM非製造業景気指数が良好な結果となったこと や、ダドリーNY連銀総裁による「最近の弱い経済指標は寒波の影 響である」との発言から、米国債利回りが反発、ドル買いが強まっ た。加えて、7 日には、ロックハート・アトランタ連銀総裁による 「米 3 月雇用統計の結果は天候のような一時的な理由による」との 発言から、ユーロドルは 1.0803 まで下落した。 更に、8 日には、(イ)ダドリーNY連銀総裁による「冴えない 結果となった米 3 月雇用統計を、深読みしない」との発言や、(ロ) 3 月FOMC議事要旨において、数人(Several participants)が 6 月の 利上げが正当化される可能性が十分にあると判断したことが明記さ れていたことから、米国債利回りが上昇、ドルが買われた。9 日に は、米 4 月 4 日週新規失業保険申請件数が良好な結果となり、4 週 平均が 2000 年以来の低水準となったことから、ユーロドルは 1.0637 まで下落した。 総じてみれば、ユーロドルは、米 3 月雇用統計は寒波の影響等か ら一時的に悪化したものとの見方が広がり、ドル買い戻しによって 下落した。 第 2 表: 相場に影響した主な経済指標 発表日 経済指標名 結果 市場予想 前回 4/6 米 3 月 ISM 非製造業景況指数 56.5 56.5 56.9 4/9 米 4/4 週新規失業保険申請件数 28.1 万件 28.3 万件 26.7 万件(下方修正) (資料) Bloombeg より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 来週の見通し 来週は、ユーロ圏 2 月鉱工業生産(4/14)、ユーロ圏 3 月新車登 録台数(4/16)等の経済指標が発表される。今週発表された独 2 月 輸出や独 2 月鉱工業生産等はユーロ安を受けて良好な結果となった。 13 来週の相場見通し | 平成 27(2015)年 4 月 10 日 ドイツが牽引する形で、ユーロ圏景気が持ち直していることを示し ている。そのため、来週発表される経済指標も引き続き良好な結果 となることが見込まれる。 しかし、物価については、消費者物価(HICP)はマイナス圏で 推移している(3 月前年比▲0.1%)。 そのため、来週開催される 4 月ECB理事会(4/15)は、ユーロ圏 景気が持ち直す一方、物価が低水準で推移していることから、マイ ナス金利や国債買入等の現行の金融政策を継続することを強調する のみで、特段の政策変更はないと考えられる(詳細は週報トピック ス「4 月ECB理事会は無風と予測」)。 米国では、米 3 月雇用統計は寒波の影響等から悪化したとの見方 が広がりつつある中で、米 3 月小売売上(4/14)、米 3 月鉱工業生 産(4/15)、米 3 月住宅着工件数(4/16)等の経済指標が注目され る。 来週のユーロドルは、良好なユーロ圏経済指標がユーロ買い材料 視される場面もあろうが、ユーロとドルの金利差が注目され、基本 的にドル主導の動きとなろう。もっとも、米 3 月雇用統計は悪化し たが、直近の米新規失業保険申請件数が労働市場の改善を示してい ることから、ドルの買い戻しが進み、ユーロドルは米 3 月雇用統計 前の水準を下回っている。来週は、米経済指標に一喜一憂しながら、 弱含む展開を予想する。 ユーロ円は、米利上げ期待を受けたドル買いに対して、ドル円と ユーロドルの反応差によって大きく変動する。来週はドル円もユー ロドルも大きく変動しないと見ており、ユーロ円は横這い圏内での 推移を予想する。 予想レンジ ユーロドル:1.0550 ~ 1.0900 ユーロ円:127.00 ~ 131.50 アナリスト 14 来週の相場見通し | 平成 27(2015)年 4 月 10 日 天達 泰章 (3) 豪ドル:引き続き上値の重い展開が続こう 今週のレビューと 来週の見通し 今週の豪ドルは 0.764 近辺で寄り付いた。その後発表された米 ISM非製造業景気指数が前月比横ばいとなり、この結果を受けた安 心感からドル買い優勢となると、豪ドルは 0.75 台後半まで下落す る場面がみられた。7 日に開催されたオーストラリア準備銀行(以 下、RBA)定例理事会では、政策金利の据え置きを決定。市場の約 75%が今回の理事会での利下げを織り込んでいたため、豪ドルは据 え置き発表前の 0.76 台後半から、0.77 近辺へ急反発した。その後、 市場は先週の米雇用統計の結果を消化したとみられ、ドルが買い戻 されると、豪ドルは再び 0.76 台前半まで下落する場面もみられた。 しかし、その後は 0.76 台後半から 0.77 台前半での値動きが続いて いる。 (10 日正午のスポット相場:0.7702-0.7703、第 1 図) 第 1 図: 今週の為替相場推移 (ドル) 0.780 ↑豪ドル高 0.775 0.770 0.765 0.760 0.755 ↓豪ドル安 0.750 4/6 4/7 4/8 4/9 4/10 (月/日) (資料) Bloomberg より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 今回のRBA理事会の声明文は前回分を踏襲するものがほとんどで あったが、豪ドル水準への言及に違いがみられた。前回までは「特 に、主要商品価格の下落を踏まえると、豪ドルはファンダメンタル から得られる水準を依然として上回っている」としていたが、今回 は「特に、主要商品価格の下落を踏まえると、豪ドルはさらに下落 する可能性がある」と言及。これまでほどの積極的な豪ドル安志向 は窺えず、自然体での豪ドル安を待っている様子が窺えた。住宅価 格の上昇を警戒するRBAにとって、簡単に利下げのカードを切るわ けにもいかないのだろう。4 月 22 日には 2015 年第 1 四半期の消費 者物価指数が発表される。また、今年 2 月の利下げは、四半期報告 書で経済見通しを引き下げるタイミングであったが、次回の四半期 報告書は 5 月 8 日に発表される。このため、5 月のRBA理事会で利 下げの是非を検討するだろう。声明では今後の利下げに含みを残し ており、足元では、金利据え置きを受けて豪ドルは反発しているも のの、5 月の理事会に向けて市場の利下げ観測が強まっていくとみ られる。豪ドルは引き続き上値重く、やや軟調に推移しよう。 予想レンジ 対ドル:0.7500 ~ 0.7850 対円:90.50 ~ 94.50 リサーチアシスタント 15 来週の相場見通し | 平成 27(2015)年 4 月 10 日 福島 由貴 (4) 人民元:来週は利下げ後初めての経済指標に注目 今後のレビュー 今週の人民元は休場明けとなる 7 日に 6.18 台後半で寄り付いた。 対ドル基準値は 7 日に約 7 週間ぶり元高水準となる 6.1305 へ設定さ れた後、徐々に元安方向へ推移。実勢相場も 6.21 台前半へじり安 に推移した。 また、10 日に発表された 3 月の消費者物価指数は 2 月からほぼ横 ばいの前年比+1.4%となった。内訳をみると食品価格が前年比 +2.3%と前月(同+2.4%)から小幅に低下したほか、前月低下に歯 止めがかかった食品・エネルギーを除く物価指数も前年比+1.5%と 2 月の同+1.6%から再び低下するなど、全般的に上昇の鈍化が見ら れた。 第 1 図: 人民元対ドル相場推移 6.30 (元) 6.25 6.20 6.15 6.10 対ドル基準値 一日の変動許容制限 6.05 6.00 5.95 1/1 2/1 3/1 4/1 (資料) Reuters,Bloomberg より、三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 来週の見通し 来週は鉱工業生産や小売売上高など 3 月の経済指標が相次いで発 表される。1、2 月の経済指標は春節による統計の歪みが出ること から、来週発表される経済指標は中国の景気動向を判断する上で注 目だ。特に、社会融資総量は利下げ実施後初めての銀行貸出データ が発表となる。そもそも 3 月は季節要因により 2 月と比べて増加す ることが多いが、利下げ効果が見られなかった場合には早期の追加 利下げも視野に入ってくると見られ、注意が必要だ。 対ドル基準値は 6.13 台での落ち着いた推移となっており、中国 人民銀行は人民元相場を安定させることを望んでいると見られる。 来週の人民元も現水準を中心としたしっかり推移が続こう。 なお、米財務省が半期毎に公表している為替報告書において、人 民元は依然として「著しく過小評価されている」との見方が示され た。ただ、中国政府は為替介入を減らしているようだとも指摘して おり、中国政府の取り組みに一定の理解を示した格好となっている。 人民元相場への影響は限定的となろう。 予想レンジ ドル人民元:6.1850 ~ 6.2200 人民元円:19.20 ~ 19.60 アナリスト 16 来週の相場見通し | 平成 27(2015)年 4 月 10 日 関谷 菜摘 来週の主な経済指標 13 日 (月) 8:50 14 日 (火) 15 日 (水) 16 日 (木) 17 日 (金) 18:00 18:00 21:30 21:30 23:00 11:00 11:00 11:00 11:00 13:30 13:30 18:00 21:30 22:15 22:15 5:00 10:30 10:30 21:30 21:30 21:30 23:00 17:00 18:00 18:00 21:30 23:00 23:00 日 中 ユ ユ 米 米 米 中 中 中 中 日 日 ユ 米 米 米 米 豪 豪 米 米 米 米 ユ ユ ユ 米 米 米 機械受注(前月比、2 月) 貿易収支(3 月・億ドル) 鉱工業生産(前月比、2 月) 鉱工業生産(前年比、2 月) 生産者物価指数(前月比、3 月) 小売売上高(前月比、3 月) 企業在庫(前月比、2 月) 実質 GDP(前年比、1Q) 鉱工業生産(前年比、3 月) 固定資産投資(都市部、前年比、3 月) 小売売上高(前年比、3 月) 鉱工業生産指数(前月比、2 月改定) 鉱工業生産指数(前年比、2 月改定) 貿易収支(季調済、2 月・億ユーロ) ニューヨーク連銀景況指数(4 月) 鉱工業生産(前月比、3 月) 設備稼働率(3 月) 証券投資収支(2 月、億ドル) 雇用者数変化(3 月・万人) 失業率(3 月) 新規失業保険申請件数(4/11・万件) 住宅着工件数(3 月・万件) 建設許可件数(3 月・万件) フィラデルフィア連銀景気動向指数(4 月) 経常収支(2 月・億ユーロ) 消費者物価指数(前年比、3 月確定コア) 消費者物価指数(前年比、3 月確定) 消費者物価指数(前年比、3 月) ミシガン大消費者信頼感指数(4 月速報) 景気先行指数(3 月) 8:50 21:00 15:15 20:45 21:30 22:00 3:00 8:30 日 日 米 日 ユ ユ 米 米 米 2:00 2:10 2:30 4:00 米 米 米 米 黒田・日銀総裁挨拶(支店長会議) 日銀金融政策決定会合議事要旨(3/16, 17 分) コチャラコタ・ミネアポリス連銀総裁講演 黒田・日銀総裁挨拶(第 90 回信託大会) ECB 理事会(政策金利発表) ドラギ・ECB 総裁定例会見 ブラード・セントルイス連銀総裁講演 地区連銀経済報告 ラッカー・セントルイス連銀総裁講演 G20 財務相・中央銀行総裁会議(~17 日) ロックハート・アトランタ連銀総裁講演 メスター・クルーブランド連銀総裁講演 ローゼングレン・ボストン連銀総裁講演 フィッシャー・FRB 副議長講演 中央銀行関連 13 日 (月) 14 日 (火) 15 日 (水) 16 日 (木) 17 日 (金) 17 来週の経済指標・イベント | 平成 27(2015)年 4 月 10 日 予想 ▲ 2.2% 402.0 0.3% 0.7% 0.2% 1.0% 0.2% 7.0% 7.0% 13.9% 10.9% 7.00 ▲ 0.3% 78.7% 1.50 6.3% 104.0 108.0 5.0 0.6% ▲ 0.1% 0.1% 93.7 0.3% 前回 ▲ 1.7% 606.2 ▲ 0.1% 1.2% ▲ 0.5% ▲ 0.6% 0.0% 7.3% 7.9% 13.9% 11.9% ▲ 3.4% ▲ 2.6% 228 6.90 0.1% 78.9% ▲ 272 1.56 6.3% 28.1 89.7 110.2 5.0 88 0.6% ▲ 0.3% 0.0% 93.0 0.2% その他 13 日(月) 14 日(火) 15 日(水) 16 日(木) 18:00 12:45 18:35 12:45 17:30 17:50 18:50 17 日(金) ※市場予想は Bloomberg 調査中央値 時刻は日本時間 ユ 日 ユ 日 ユ ユ ユ 3 年債入札(イタリア) 5 年債入札 10 年債入札(ドイツ) 20 年債入札 国債入札(スペイン) 国債入札(フランス) インフレ連動債入札(フランス) IMF・世界銀行春季総会(~19 日) *印は作成日(4/10)現在で未確定のもの 18 来週の経済指標・イベント | 平成 27(2015)年 4 月 10 日 マーケットカレンダー 月 火 2015/4/13 水 14 中/貿易収支(3 月) 米/小売売上(3 月) 日/日銀金融政策決定会合 生産者物価指数(3 月) 議事要旨(3/16, 17 分) 企業在庫(2 月) 機械受注(2 月) ユーロ圏/鉱工業生産(2 月) 木 15 米/地区連銀経済報告 NY 連銀景況指数(4 月) 鉱工業生産(3 月) 設備稼働率(3 月) 証券投資収支(2 月) ユーロ圏/ECB 理事会 ECB 総裁定例会見 貿易収支(2 月) 中/小売売上(3 月) 鉱工業生産(3 月) 金 16 米/住宅着工件数(3 月) 建設許可件数(3 月) 17 米/消費者物価指数(3 月) フィラデルフィア連銀景況 指数(4 月) 豪/雇用統計(3 月) ミシガン大消費者信頼感 指数速報(4 月) 景気先行指数(3 月) ユーロ圏/経常収支(2 月) 消費者物価指数確報(3 月) 固定資産投資(都市部、3 月) GDP(1Q) 日・黒田日銀総裁挨拶 日・黒田日銀総裁挨拶 米・セントルイス連銀総裁講演 米・リッチモンド連銀総裁講演 米・ミネアポリス連銀総裁講演 20 G20 財務相・中央銀行総裁会議 (~17 日) 米・アトランタ連銀総裁講演 米・クリーブランド連銀総裁講演 米・ボストン連銀総裁講演 IMF・世界銀行春季総会 米・フィッシャーFRB 副議長講演 (~19 日) 21 独/ZEW 景況指数(4 月) 豪/RBA 議事要旨(4/7 分) 22 23 米・5 年 TIPS 債入札 27 24 米/FHFA 住宅価格指数(2 月) 米/新築住宅販売(3 月) 米/耐久財受注(3 月) 中古住宅販売(3 月) ユーロ圏/製造業 PMI 速報 独/Ifo 景況指数(4 月) 英/MPC 議事録(4/8, 9 分) (4 月) 日/貿易収支速報(3 月) サービス業 PMI 速報(4 月) 豪/消費者物価指数(1Q) 28 米/FOMC(~29 日) 29 EU 財務相会合(~25 日) 30 5/1 米/個人所得・消費支出(3 月) 米/建設支出(3 月) シカゴ PM 景況指数(4 月) ISM 製造業景気指数(4 月) ケース・シラー住宅価格指数 ユーロ圏/失業率(3 月) 自動車販売(4 月)* (2 月) ユーロ圏/マネーサプライ M3 消費者物価指数速報(4 月) 中/製造業 PMI(4 月) CB 消費者信頼感指数(4 月) (3 月) 英/GDP 速報(1Q) 欧州委員会景況指数(4 月) 日/日銀金融政策決定会合 日/完全失業率(3 月) 日銀総裁定例会見 消費者物価指数 経済・物価情勢の展望 (東京都区部 4 月、全国 3 月) 鉱工業生産速報(3 月) 家計調査(3 月) 住宅着工件数(3 月) 欧州議会本会議(~30 日) 米・2 年債入札 米・7 年債入札 日・市場休場 米・5 年債入札 4 米/製造業受注指数(3 月) 米/FOMC GDP 速報(1Q) 5 独・市場休場 6 米/貿易収支(3 月) 米/ADP 雇用統計(4 月) 労働生産性速報(1Q) ISM 非製造業景気指数(4 月) ユーロ圏/生産者物価指数(3 月) ユーロ圏/小売売上(3 月) 豪/RBA 理事会 7 8 米/消費者信用残高(3 月) 米/雇用統計(4 月) 英/MPC(BOE 金融政策委員会、 卸売在庫・売上(3 月) ~8 日) 英/MPC(BOE 金融政策委員会) 豪/雇用統計(4 月) 中/貿易収支(4 月) 消費者物価指数(4 月、9 日) 生産者物価指数(4 月、9 日) 日/日銀金融政策決定会合 議事要旨(4/7, 8 分) 米・ミネアポリス連銀総裁講演 日英・市場休場 日・市場休場 *印は作成日(4/9)現在で日程が未確定のもの 19 マーケットカレンダー | 平成 27(2015)年 4 月 10 日 米・クリーブランド連銀総裁講演 日・市場休場 英・総選挙 照会先:三菱東京UFJ銀行 市場企画部 グローバルマーケットリサーチ チーフアナリスト 内田 稔 当資料は一般的な情報提供のみを目的として作成されたものであり、特定のお客様のニーズ、財務状況又は投資対象に対応することを意図しておりませ ん。また、当資料は、適用法令上許容される範囲内でのみ利用可能であり、当資料の頒布を制約する法令が存在する地域の方によって利用されることを意 図しておりません。当資料内のいかなる情報又は意見も、預金、有価証券、デリバティブ取引その他の金融商品の売買、投資、保有などを勧誘又は推奨す るものではありません。 当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが、当行はその正確性、適時性、適切性又は完全性を表明又は保証するものではなく、 当行、その子会社又は関連会社は、お客様による当資料の利用等に関して生じうるいかなる損害についても責任を負いません。ご利用に関しては、すべて お客様御自身でご判断下さいますよう、宜しくお願い申し上げます。 また、過去の結果が必ずしも将来の結果を暗示するものではありません。 当行は、当資料において言及されている会社と関係を有し、又はかかる会社に対して金融サービスを提供している可能性があります。当行のグループ会 社は、当資料において言及されている証券又はこれに関連する証券について権利を有し、又はこれらの証券の引受けを行っている可能性があり、また、こ れらの証券又はそのポジションを保有している可能性があります。 当資料の内容は予告なしに変更することがあり、また、当行、その子会社又は関連会社は、当資料を更新する義務を負っておりません。また、当資料は 著作物であり、著作権法により保護されております。当行の書面による許可なく複製又は第三者、個人顧客もしくは一般投資家への配布をすることはでき ません。 (BTMUロンドン支店のみに適用される情報開示) 株式会社三菱東京UFJ銀行(以下「BTMU」)は、日本で設立され、東京法務局(会社法人等番号 0100-01-008846)において登記された有限責任の株式会 社です。 BTMUの本店は、東京都千代田区丸の内二丁目 7 番 1 号(郵便番号 100-8388)に所在しています。 BTMUロンドン支店は、英国会社登録所において、英国支店として登録されています(登録番号BR002013)。 BTMUは、日本の金融庁によって認可及び規制されています。BTMUロンドン支店は、英国プルーデンス規制機構より認可を受けており(FCA/PRA番号 139189)、英国金融行為監督機構の規制とプルーデンス規制機構の限定された規制の対象となっています。英国プルーデンス規制機構によるBTMUロンド ン支店の規制の範囲の詳細は、ご請求いただいた方にお渡ししております。 20 FX Weekly | 平成 27(2015)年 4 月 10 日
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