2014 年度の円安倒産、前年度の 2.2 倍に急増

2015/4/6
東京都新宿区本塩町 22-8
TEL: 03-5919-9341
URL:http://www.tdb.co.jp/
第 6 回 : 「円安関連倒産」の動向調査
2014 年度の円安倒産、前年度の 2.2 倍に急増
~食料品、繊維・アパレル関連の倒産目立つ~
はじめに
昨年 3 月末に 103 円前後だった円ドル相場は、この 1 年で約 17 円も円安が進んだ。4 月 2 日の
円相場は 1 ドル=119 円台半ばにとどまるなど、年明け以降、急速な円安進行には歯止めがかかっ
たものの、依然として円安基調が続いている。この間、各種食料品や繊維・アパレル関係の業者
を中心に影響が広がっており、「円安関連倒産」は年度下半期にかけて増加基調を強めている。
帝国データバンクは、2013 年 1 月から 2015 年 3 月までの倒産企業(負債 1000 万円以上、法的
整理のみ)の中から、円安の影響を受けて倒産した企業を抽出し、件数・負債推移、地域別、業
種別、負債規模別に集計・分析した。
なお、「円安関連倒産」に関する調査は 2015 年 3 月 5 日に続き 6 回目となる。
調査結果(要旨)
1. 2014 年度の「円安関連倒産」は 401 件判明し、前年度の 178 件に比べて 223 件上回り、125.3%
の大幅増加。また、3 月単月でも 48 件判明し、15 カ月連続の前年同月比増加で、2014 年 12
月の 44 件を上回り、2013 年 1 月の集計開始以降で月間最多件数を更新
2. 地域別では、2014 年度は「関東」が 140 件(構成比 34.9%)で、前年度比 154.5%の大幅増
加。以下、「近畿」(69 件)、「中部」(60 件)、「九州」(41 件)の順となり、全国各地で判明
3. 業種別に見ると、2014 年度は「卸売業」が 105 件(構成比 26.2%)で最も多い。このうち、
繊維・衣服・繊維製品卸売(39 件)と飲食料品卸売(24 件)の 2 業種で 6 割。次いで「運輸・
通信業」(99 件=すべて運輸業、構成比 24.7%)
、「製造業」
(91 件、同 22.7%)が続いた
4. 負債規模別に見ると、2014 年度は「1 億円以上 5 億円未満」が 178 件(構成比 44.4%)で最
も多く、全体でも負債 5 億円未満の中小企業が約 4 分の 3 を占める結果となった
主な 「円安関連倒産」 (2014年度)
TDB
企業コード
商号
業種
負債
(百万円)
態様
所在地
倒産年月
71,088
民事再生法
東京都
1月
1
987544705
スカイマーク(株)
定期航空運送
2
580276307
五鈴精工硝子(株)
光学機械レンズ製造
4,300
民事再生法
大阪府
11月
3
100727300
(株)REAL LIFE JAPAN
家電輸入販売
3,129
破産
宮城県
1月
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1
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第 6 回 : 「円安関連倒産」の動向調査
1. 件数・負債推移
2013年度
2014 年度の「円安関連倒産」は 401 件判明し、前年度の 178
件に比べて 223 件上回り、125.3%の大幅増加となった。
また、3 月単月でも 48 件判明し、15 カ月連続の前年同月比
増加。この結果、2014 年 12 月の 44 件を上回り、2013 年 1 月
の集計開始以降で月間最多件数を更新した。
円安の影響を受けた関連倒産は、年度下半期にかけて増加
基調を強めており、中小・零細企業を中心に全国各地で判明
している。
(件数)
月
2014年度
4
5
6
7
8
9
3
10
8
12
12
10
負債総額
(百万円)
1,080
8,542
3,039
2,200
4,142
1,838
23
27
27
22
22
31
負債総額
(百万円)
14,629
7,023
7,966
9,873
15,258
12,883
小計
55
10
11
12
1
2
3
17
18
20
25
26
17
20,841
152
67,632
14,254
7,096
7,694
15,246
8,841
5,741
39
42
44
34
42
48
24,539
15,866
25,531
81,852
22,960
24,129
小計
合計
123
58,872
249
194,877
178
79,713
401
262,509
件数
件数
「円安関連倒産」の推移 (年度半期ベース)
300
249
250
200
150
152
123
100
55
50
0
上半期
下半期
上半期
2013年度
下半期
2014年度
2. 地域別
順位
地域別に見ると、2014 年度は「関東」が東京都を中心に 140 件
(構成比 34.9%)となり、前年度比 154.5%の大幅増加となった。
業種的には、運輸業や繊維・衣服・繊維製品卸売業、食料品・飼
料・飲料製造業などが目立つ。
次いで、
「近畿」
(69 件)、
「中部」
(60 件)、
「九州」
(41 件)の順
となっており、いずれの地域でも前年度を大きく上回っている。
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
都道府県別
2014年度
東京都
大阪府
愛知県
北海道
兵庫県
福岡県
静岡県
神奈川県
埼玉県
広島県
93
36
30
22
19
18
16
13
11
9
構成比
(%)
23.2
9.0
7.5
5.5
4.7
4.5
4.0
3.2
2.7
2.2
(%)
地域別
2013年度
2014年度
前年度比
(%)
2013年度
構成比
2014年度
対前年度
構成比 (ポイント)
北海道
14
22
57.1
7.9
5.5
▲ 2.4
東北
10
18
80.0
5.6
4.5
▲ 1.1
関東
55
140
154.5
30.9
34.9
4.0
北陸
8
17
112.5
4.5
4.2
▲ 0.3
中部
22
60
172.7
12.4
15.0
2.6
近畿
26
69
165.4
14.6
17.2
2.6
中国
16
22
37.5
9.0
5.5
▲ 3.5
四国
9
12
33.3
5.1
3.0
▲ 2.1
九州
18
41
127.8
10.1
10.2
0.1
178
401
125.3
100.0
100.0
―
合計
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2
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第 6 回 : 「円安関連倒産」の動向調査
3. 業種別
業種別に見ると、2014 年度は「卸売業」が 105 件(構
順位
業種細分類別
1
2
3
4
5
5
5
8
8
10
11
11
11
14
14
運輸業
繊維・衣服・繊維製品卸売業
食料品・飼料・飲料製造業
飲食料品卸売業
職別工事業
総合工事業
農業・林業・漁業
鉄鋼業、非鉄金属・金属製品製造業
出版・印刷・同関連産業
飲食料品小売業
一般機械器具製造業
繊維工業、繊維製品製造業
織物・衣服・身のまわり品小売業
設備工事業
パルプ・紙・紙加工品製造業
成比 26.2%)で最も多い。このうち、繊維・衣服・繊
維製品卸売(39 件)と飲食料品卸売(24 件)の 2 業
種で 6 割を占めるなど、とくに発生が目立った。
次いで、
「運輸・通信業」(99 件=すべて運輸業、構
成比 24.7%)
、
「製造業」
(91 件、同 22.7%)が続いた。
各業種で前年度の 2 倍超の件数となるなか、年度下半
期にかけての原油価格下落の影響もあり、「運輸業」
の前年度比増加率が唯一 20%台にとどまった。
2014年度
99
39
30
24
17
17
17
9
9
7
6
6
6
5
5
構成比
(%)
24.7
9.7
7.5
6.0
4.2
4.2
4.2
2.2
2.2
1.7
1.5
1.5
1.5
1.2
1.2
(%)
業種別
2013年度
前年度比
(%)
2014年度
2013年度
構成比
2014年度
対前年度
構成比 (ポイント)
建設業
11
39
254.5
6.2
9.7
3.5
製造業
32
91
184.4
18.0
22.7
4.7
卸売業
37
105
183.8
20.8
26.2
5.4
小売業
9
31
244.4
5.1
7.7
2.6
78
5
99
17
26.9
240.0
43.8
2.8
24.7
4.2
▲ 19.1
1.4
運輸・通信業
サービス業
不動産業
0
1
―
0.0
0.2
0.2
その他
6
18
200.0
3.4
4.5
1.1
178
401
125.3
100.0
100.0
―
合計
4. 負債規模別
負債規模別に見ると、2014 年度は「1 億円以上 5 億円未満」が 178 件(構成比 44.4%)で最も
多く、「5000 万円以上 1 億円未満」
(61 件、構成比 15.2%)と「5000 万円未満」
(60 件、同 15.0%)
と合わせて、負債 5 億円未満の中小企業が全体の約 4 分の 3 を占める結果となった。
このほか、「100 億円以上」は 1 件にとどまり、1 月に民事再生法の適用を申請したスカイマー
ク(負債 710 億 8800 万円)が最大の倒産となった。
(%)
負債規模別
2013年度
前年度比
(%)
2014年度
2013年度
構成比
2014年度
対前年度
構成比 (ポイント)
5000万円未満
20
60
200.0
11.2
15.0
5000万円以上1億円未満
24
61
154.2
13.5
15.2
3.8
1.7
1億円以上5億円未満
94
178
89.4
52.8
44.4
▲ 8.4
5億円以上10億円未満
18
53
194.4
10.1
13.2
3.1
10億円以上50億円未満
21
46
119.0
11.8
11.5
▲ 0.3
50億円以上100億円未満
1
2
100.0
0.6
0.5
▲ 0.1
100億円以上
0
1
―
0.0
0.2
0.2
178
401
125.3
100.0
100.0
―
合計
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3
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第 6 回 : 「円安関連倒産」の動向調査
5. 主な倒産事例 (2014 年度)
① 東証 1 部上場の新興航空会社、スカイマーク(東京都、負債 710 億 8800 万円)は近年、複数の
国内LCCの台頭により価格競争が激化するなか、急激な円安の進行により航空機導入にとも
なうドル建てリース料の支払いが大きな負担となっていた。加えて、同業他社との競争激化、
想定を超える円安の進行、燃料費の高止まりなどで業績は著しく悪化。この間、コスト削減に
努めたものの業績の抜本的な改善には至らず、エアバス社との違約金問題も暗礁に乗り上げる
なか、ここにきて資金繰りが急速に悪化し、1 月 28 日に民事再生法の適用を申請した。
② 光学機械レンズ製造の五鈴精工硝子(大阪府、負債 43 億円)は、2006 年には経済産業省より
「元気なモノづくり中小企業 300 社」の 1 社に選定されていたが、その後は得意先の国内家電
メーカーの業績不振で国内の光学機械レンズの市場は縮小傾向をたどるなか、主力製品の受注
も伸び悩み、年売上高も落ち込んでいた。収益面でもメーカー各社のコストダウン要請が強く、
一方で原材料購入コストがかさむなどジリ貧状況となっていた。加えて、設備投資や海外現地
法人設立に伴う負担も重く資金繰りが悪化し、11 月 20 日に民事再生法の適用を申請した。
6. 今後の見通し
日銀による追加の金融緩和を受けて、昨年 10 月から年末にかけて進んだ急速な円安。2012 年末
から続く円安局面において経営体力を奪われていた中小・零細企業にとっては、最後の追い討ち
となるケースが相次いだ。業種的には、当初は、ガソリン・軽油価格の高止まりによる運送業者
の倒産が多くを占めていたが、年明け以降は輸入コスト上昇による食品や繊維・アパレル関係の
倒産が目立つ。これら「円安関連倒産」は年度下半期にかけて増加基調を強めるなか、3 月は集計
開始後最多の件数を記録した。現在の円安傾向は当面続くとみられるなか、4 月以降も引き続き、
円安の影響を受けた関連倒産は高水準で推移する可能性が高い。
【 内容に関する問い合わせ先 】
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内藤 修
FAX 03-5919-9348
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