鬼 打 ち 豆

鬼打ち豆
丸山弘子
水やりが下手で鉢植のシクラメンことしの花もバラけてしまひぬ
植えかへて養生しくれし人病めどヒマラヤユキノシタに桃色の花
つがひ
わが寄るを気づかぬメジロの番ゐてかたみに椿の蜜を吸ひをり
雨あとの日射しに輝れる柿の木にメジロ来て鳴くしばらくを居り
ら
右ひだり瞳の色のちがふ猫けふは親しげに体を寄せ来
の
困るんだと言ひつつ野良猫にすり寄られ満更でもなし老人の顔
あ
生 れ し よ り 見 知 る 隣 家 の 猫 の 尾 の 片 仮 名 「ノ の 字」 は 笑 ひ を 誘 ふ
ビル解体 予告どほりの破壊音仕事はじめの今日より激し
、
としどしに届く鬼打ち豆友が手の一陽来福の言葉添へあり
つくり手の高齢化を言ひ渡されしリリアンの草履ことし最後か
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展景 No. 77
展景 No. 77
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