夏 て く 丸山弘子 あ 今朝生れしオンブバッタの小さきがわが掌にのり来ためらひもなく オンブバッタは紫蘇好みとふかつてわが庭辺にあまた生えてありしが ほ 近寄るを気配に察し浮かび来て瓶の金魚は餌を欲るなり 暑き日のつづきて瓶の水あつしメダカの稚魚のおほよそ死にたり マンションの壁のタイルの目地にゐて油蟬鳴く長く鳴き居り いづへにて暑さ凌ぎゐむ七月の後半猫ら姿を見せず 赤松の木下にことしの山法師花かず多けれど形小さし さま 少年の虫捕り姿も様になり友待つ林の中に入りゆく となり家の少女の育てしミニトマト朝のサラダに加へよと給ぶ スーパーに行く道にして教会の壁沿ひにアナベルとふ白きあぢさゐ 6 展景 No. 83 展景 No. 83 7
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