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平成 26 年度スマートコミュニティ構想普及支援事業 成果報告書(要約版)
Ⅰ.補助事業者名
三菱電機株式会社、株式会社F-Power、士幌町農業協同組合
Ⅲ.補助事業名
JA 士幌町における需要家 PPS の事業化調査
Ⅱ.対象地域
北海道士幌町
Ⅳ.内容
1.補助事業の背景と目的
(1)JA 士幌町の電力需給には以下の特徴がある。
①電力使用について、酪農業特有の需要の偏りがある(収
穫時期の短期間に特異ピークが発生する、など)
②乳牛糞尿バイオガスによるバイオ発電の必然性がある
③広大な土地・比較的少ない降雪量等 PV の適地である
④エネルギーコスト増大が農業の六次化経営に打撃を与え
ており、酪農業由来のエネルギーの地産地消によるコス
ト低減が喫緊の課題である。
(2)JA 士幌町の課題解決策に「需要家 PPS」スキームが考え
られる。需要家 PPS(地域電源を持つ地域の新電力)単独
では電力需給の調整が困難であるが、需要家 PPS を束ねる
代表 PPS による需給調整の傘下に入ること(バランシン
ググループ)により、エネルギーの地産地消を目指すもの
である。本 FS で、このスキームでエネルギーコストメリッ
トを見出せるかを調査する。
(図 1)
。
JEPX(日本卸電力取引所)
代表PPS(本FSではF-Power)
代表PPS
電気の
調達
需給調整能力を持つ代表PPSが、自分の分と
併せて需要家PPSの分も調達・需給調整
需要家PPS
JA士幌パワー
(仮称)
地域電源
地域電源
地域電源
○○市
電力
需要家
・・・
BEMS
食品工場
高圧施設
F-Power保有電源
北海道電力(常時バックアップ)
乳牛舎
HEMS
高圧需要家
低圧自由化後
図 1.需要家 PPS の事業スキームイメージ
同時同量・
市場価格ベースの調整
コンビナート
自家発電
酪農家
バイオプラント
718kW
11,000kW
PV
988kW
常時
バックアップ
F-Power
(電力市場)
2,142kW
JA士幌パワー(仮称)
試算対象
10,000kW
1,940kW
(特高)
食品コンビナート
1,200kW
(高圧)
本部オフィス・Acoop
(高圧)
乳牛舎
図 2.今回 FS の試算対象
2.FS での検討内容
(1)JA 士幌町の電源(コンビナート用自家発・酪農家バイオプ
10
億
円
ラント・系統電力(特高・高圧)等)の使用状況等を調査し、
9
需要家 PPS(JA 士幌パワー(仮称)
)を設立した際のコスト
8
クラウド利用料
試算の対象とする電源と需要家を設定した。
(図 2)
7
外部委託費
特高電気代
市場調達・インバラ関連
(2)JA 士幌パワーを設立した場合と現状との経済性比較を行った。
6
託送費
太陽光
尚、卸電力取引所(市場)活用影響や JA 士幌パワーとしての
5
バイオマス
常時バックアップ
収入(小売料金設定次第で変動)を除外し、コストのみで比較
常時バックアップ
4
高圧電気代
特高(4000kW)
する。その際、かかる人件費等は JA 士幌パワー設立後も現状
3
高圧(1940kW+1200kW)
自家発(C重油)市場売却用分
とほぼ同等と見込める為、
「現状形態」は「北電への支払い電
2
自家発(C重油)コンビナート使用分
自家発重
自家発重油
気代と自家発重油代」のみとし、
「JA 士幌パワー」のコスト
1
にも人件費等を含まずに比較した。
(図 3)
0
JA士幌パワー
現状
現状
JA士幌パワー
( 自家発余剰の活用無し)
( (値上げ後)
値上げ後)
(3)その結果、JA 士幌パワー設立時のコストは、現状形態(北電
(自家発余剰の活用無し)
図 3.現状形態と、JA 士幌パワーの自家消費運営(自家発
から購入+自家発)よりも安くなる可能性が高い。
の余剰電力を活用しない場合)との比較
その定性的要因として、以下が考えられる。
①最も稼働率の高い自家発(食品コンビナート用)の運転コストは、現状形態と JA 士幌パワー設立時も同等
②JA 士幌パワーが調達する電力単価(託送費込み)は、北電の値上げ後の特高・高圧料金単価(基本料金考慮済み)より安い
③繁忙期に運転する自家発は、運転コストよりも市場価格の方が安い時には、運転を縮退させて、市場から安い電気を調
10月(平日)の需給状況
達できる(市場調達の規模は自家発全体の 10%程度)
。
即ち、JA 士幌パワーは需要量の変化に応じて各種電源を
充てて需給のバランスを取るが、市場価格の方が自家発
コストよりも安価な場合は、自家発の運転を縮退させて、
市場からの調達を増やすことでコスト削減が図れる。
(図 4)
9,000 kWh
常時バックアップ
バイオマス
太陽光
自家発C_3500kW
自家発B_3500kW
自家発A_4000kW
F-Power
使用電力量(接続対象電力量)
8,000 kWh
7,000 kWh
6,000 kWh
5,000 kWh
4,000 kWh
3,000 kWh
2,000 kWh
1,000 kWh
00:00~00:30
00:30~01:00
01:00~01:30
01:30~02:00
02:00~02:30
02:30~03:00
03:00~03:30
03:30~04:00
04:00~04:30
04:30~05:00
05:00~05:30
05:30~06:00
06:00~06:30
06:30~07:00
07:00~07:30
07:30~08:00
08:00~08:30
08:30~09:00
09:00~09:30
09:30~10:00
10:00~10:30
10:30~11:00
11:00~11:30
11:30~12:00
12:00~12:30
12:30~13:00
13:00~13:30
13:30~14:00
14:00~14:30
14:30~15:00
15:00~15:30
15:30~16:00
16:00~16:30
16:30~17:00
17:00~17:30
17:30~18:00
18:00~18:30
18:30~19:00
19:00~19:30
19:30~20:00
20:00~20:30
20:30~21:00
21:00~21:30
21:30~22:00
22:00~22:30
22:30~23:00
23:00~23:30
23:30~24:00
0 kWh
図 4.JA 士幌パワーの需給イメージ(自家発の余剰
電力を活用しない。市場が安い時の購入のみ)
平成 26 年度スマートコミュニティ構想普及支援事業 成果報告書(要約版)
(4)JA 士幌町の酪農家が運営する乳牛糞尿バイオプラントは「個別型」
が特徴で、地域に分散配置され、今後も増設の建設・計画がある。
これらバイオプラントは安価な電源であり、どれだけ多く獲得でき
るかは JA 士幌パワーの電源調達コストに影響する。
(5)今後増設される士幌町近隣のバイオプラントを JA 士幌パワーの電
源とする為には、各バイオプラントが系統接続する必要があるが、
士幌町周辺の系統が脆弱なことが判明。JA 士幌町以外の事業者が
既にメガソーラーを接続候補線に繋げる権利を獲得しており、士幌
幌町近隣で準備中のバイオプラントの接続には制約条件が課される
状況にある。新たに連系線を敷設する費用は受益者負担となるが、
JA 士幌パワーのコスト悪化要因となる。
(図 5)
図 5.士幌町周辺の系統図(補助事業者による推定)
3.事業化に向けて
(1)JA 士幌パワーを設立した場合の電源コストは、現状形態(北電から購入+自家発)よりも安くなる可能性が高い。
(2)安価な電源として地域の酪農業由来のエネルギー(バイオプラント)を増やせれば、電源コストは更に低減する。
(3)バイオ電源を増やしていくためには系統連系が必要だが、現状は士幌町周辺の系統の脆弱性がネックである。
(4)地域に安価な電源を持ち、その電気を地域で(自らの為に)消費することを第一義とする「地産地消型需要家 PPS」は
バランシンググループを組み、代表 PPS に需給調整を支援して貰うことで成立し得る。
(5)市場価格が安い時には自家発を停めて市場から電気を調達する等、選択肢を持ち、上手く活用することで、需要家 PPS
のメリットが 更に増大する可能性がある。事業化に向けては、需要家 PPS 運営の詳細な検討が必要である。