視点 視 点 社外取締役の戸惑い シンクタンク・ソフィアバンク 代表 藤 沢 久 美 CMA 「社外取締役に何を期待されていますか」。最近、経営者の方々と懇談 するたびに、同じ問いを投げかけている。多くの経営者の方が、戸惑い ながら答えてくださる。中には、まだ社外取締役の必要性を実感してい ないが、社会の流れだから仕方ないのだと本音を漏らされる方もいる。 東京証券取引所が、社外取締役を2名以上選任するようにという上場 規則案をまとめ、日本政府は女性の管理職数の目標設定を義務付ける女 性活躍推進法案を閣議決定した。今後、社外取締役を選任する企業は間 違いなく増加するだろうし、その多くに女性を選任する企業も増えるだ ろう。しかし、この流れの中で、悩める経営者と同様に、当事者である 社外取締役もまた悩んでいるに違いない。筆者も、その悩める社外取締 役の一人として、このエッセーを書いてみたい。 社外取締役の情報管理とIT化 まず、社外取締役になって戸惑ったのは、資料の管理だった。取締役 会で取り扱われる事項は、重要事項ばかり。しかし、多くが紙ベースの 資料で共有されている。社外取締役がいないうちは、それらの紙の資料 は、社内を移動するだけだったが、社外取締役は、その資料を社外に持 ち出すことになる。社外取締役本人にとっても、それは大きなリスクで あり、移動中の紛失など、取締役会資料の漏えいのリスクが大きい。こ 68 証券アナリストジャーナル 2015. 4
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