2013-51 [132KB pdfファイル];pdf

たま
たま
球は霊なり
~野球部だより 51~
12.27.2013
「鉄は何度も熱い火の中に入れられて、何度も固い金槌で叩かれて、はじめて名剣に仕
上がります。すばらしい人生の送り方もよく似ています。何度もくり返されるきわめて不
都合で、ありがたくない経験の数々が、旅路を美しく輝かせてくれるのです。」この言葉は
明治維新の精神的指導者であって、黒船が来航した時には海外から多くのことを学ばなけ
ればと、一人小舟を漕いで黒船に乗り込んだ吉田松陰のものです。
今季5度目の豊顕寺。途中から橘中学校野球部も加わっての階段ダッシュだったのです
が、明らかに差が見られました。走り方、体力、心の体力。同じ中学生であっても、日ご
ろの鍛錬の差というものは苦しい状況にこそ表れてしまいます。芦野選手は「地面を蹴る
という感覚がつかめた。」と黒木先生に話したそうですが、それは何本もバットを振って、
何球も投げて、はじめてバッティングの感覚やピッチングの感覚がつかめるのと同じこと
です。今の時期は量にこだわってトレーニングすることが大切です。
階段ダッシュも「33本」という本数にトレーニング的な根拠はありません。バットの
素振りも例えば1日に1000本と決めてやる場合、その「1000本」自体にはあまり
意味はないのです。ではどこに意味があるか。
「決めた本数をやりきる」ところに意味があ
ります。決めた本数の中で芦野選手のように今まで分からなかったことに気づくことがあ
るかもしれない。またはやりきることで自分に自信を持つことができ、今までできなかっ
たことができるようになるかもしれない。人からもらうことも、お金で買うこともできな
い「自信」というものを手にすることができるのです。先の吉田松陰はこうも言っていま
す。
「やりきるまで手を離してはいけません。たいていの人はまだ序の口で、いよいよこれ
からが本番だというときに、自分の田んぼを放置して人の田んぼの雑草を取りたがるので
す。人の田んぼの雑草を取るというなら、まだいい方かもしれません。一番多いのは、人
が懸命に草を取っている姿をそばで見ているだけで、その取り方がいいとか悪いとか、批
評ばかりしている人です。まずは自分がいるところからはじめましょう。人生の喜びを味
わうために。
」
タイム以内に33本全部入りきった岩木選手。今までは全部入りきることができていま
せんでした。20本の時は6,7本入るか入らなかだったのが、昨日は全部やり切りまし
た。昨日だけ体力があったわけではなく、今までの小さな積み重ねが実を結んだのかもし
れません。それは岩木選手にしかわからないことですが、確実に言えることは走りきった
彼が手にしたものは「自信」に違いないということと、もしかしたら終わった後、階段ダ
ッシュの喜びを味わえたのではないでしょうか。