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LED によるスマート・ライティング
2015/03/25
コラム
山藤 泰
YSエネルギー・リサーチ 代表
北海道ニセコ町が、2015 年度からの 3 年間で町内の照明を発光ダイオード(LED)に切り替えるということ
を 3 月 8 日の報道記事で知った。LED の価格も大きく下がっているから、同じような動きが各地で見られるこ
とも確かだ。筆者が住む奈良県では、エネルギー消費の効率化に先進的な施策を打ち出している大和郡山市と生
駒市が、2012 年 8 月に街灯の LED 化を発表している。設備の調達は行政が行い、大和郡山市の 8,200 灯はリ
ース方式、生駒市は1万灯の一括購入方式だということだった。
街灯を何処が保有して管理するか、消費する電気の料金を誰が払うか、地域によって異なるかも知れないが、
奈良県の 2 つのケースでは、自治会が支払う街灯が消費する電気の料金をこれまで一部あるいは全部補助して
いたのをなくしている。蛍光灯から切り替えると、電気消費量は数分の一になるし、二酸化炭素の排出量も大き
く引き下げることができる。
半導体である LED は、明るさを変える調光だけでなく、調色もできるし、視覚では気がつかない速度で点滅
(発振)させることで通信にも利用できる。街灯は道路に沿った線の上に設置されたものが地域に張り巡らされ
るから、このような LED の特性を生かした利用の仕方があるのではないかと思っていたところ、その事例を3
つ、海外の情報として最近受け取った。
その最初のものは、スペインの事例だ。同国の電力事業者である Enel 社の発表によると、我々にも馴染みの
あるバルセロナを初めとする幾つかの地域にある 8 つの町に、LED の特性を生かすような制御をする街灯を設
置することにより、
コストを下げ、
エネルギー効率を向上させるだけでなく、
環境の改善にも貢献できたという。
LED の街灯は、それぞれ独立した制御がリアルタイムにできるようになっており、スマート・ライティングと
名付けられている。Enel が実施している公共施設向け照明の LED 化は、他の都市でも推進されていて、2009
年から 2014 年の間で 1,600 を超える町に 183,250 の設備を取り付けたという。
それに続く事例は、米国のシカゴを拠点とする ComEd 社が最近始めた 400 ほどのスマート LED 街灯の実証
実験をしようとするプロジェクトである。この実証実験は 6 ヶ月間行われることになっており、その後各市が
その成果を見て、スマート・ライティングに使われた制御プログラムを採用するかどうかを判断することになっ
ている。このスマート化された街灯は遠隔制御ができるようになっていて、例えば、照度を 50%などと自由に
落とすことができる。日単位で点灯をスケジューリングすることもできる。これによって、従来の使用法に比べ
て消費電力が 3 分の一に下がるという。さらには、道路の混雑度をコントロールする目的で点灯することも可
能になっているし、コンサートなどへ集まる群衆の誘導にも使われる。さらには、救急車が現場到着を早めるよ
うな走行誘導(多分色を変えるのだろう)も可能。この街灯は系統管理者ともオンラインで繋がっているため、
停電などの事故にも即座に対応することができる。
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3 つめの事例は、フロリダ州の Florida Power & Light 社が古い街灯をネットワーク化された LED に取り換
えようとするプロジェクトだ。同社によると、このプロジェクトは全米、いや世界でもトップに位置するものだ
という。これが完了すると、同社は、フロリダ州に持つ供給エリア全域でほぼ 50 万の街灯をネットワーク化し
た LED に切り替えることになる。街路の状況に応じて照度を上げたり落としたりすることも可能。光公害も防
止することができるということだ。照明の故障情報も即座に伝達されるために、メンテコストも大幅に下がると
している。
この海外事例は全て電力事業者の主導で実施されている。
日本でこの方式が良いかどうか分からないが、
国土、
社会の特性を反映した標準的制御プログラムを構築し、
それを地域のニーズに則して容易に修正できるようにす
ることが望ましい。街灯の大幅な LED 化は、昼の電力消費には影響せず、夜の電力消費だけ大きく削減できる。
スマート化すれば、電力需給の管理や、夜間に稼動した風力発電などの出力変動対応にも有効だろう。日本でも
促進策が望まれるところだ。
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