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子 どもの想像力 の豊か さ
―創造活動 に焦点 をあてて一
201lHP009
尾藤仁美
本研究では、新 しい もの を作 り出す創造活動 に焦点 をあてて、子 どもの想像力 の特徴 を捉 えてい く。
さらに、子 どもの想 像力 が豊 かであ ると感 じるのは ど う してなのか 明 らかに してい く。
想像力 とは 目には見 えな い もの を思 い浮か べ る能力 の こ とで、新 しい もの を作 り出す 創造活動 をす
るのに必要不可欠 な ものである。子 どもの想 像力 は 1歳 半 ごろか ら、以前 に見た り聞いた りして経験
した ことのあ るモ デル の動作や発話 を、モ デ ルがい な くな つた ときに再現す るとい う延滞模倣 の 中で
見 られ るよ うにな り、4歳 頃 か ら 5歳 以上になる と高度化 してい く。
子 どもが つ ぶや いた言葉や行動 には面 白さや意外性 があ るの で 、私 は子 どもの想像力 は豊かなもの
である と感 じてい る。子 どもの想像力 の特徴 と、そ の豊か さを提 えるために保 育園 で子 どもの創 造活
動 を参与観察 した。子 どもた ちの どの よ うな創造活動 に も想像力 が溢 れてお り、 エ ピソー ドとして記
述 、考察す る こ とで、そ の特徴 を明 らかに した。子 どもた ちは想像力 を媒介 に、模 倣 で獲得 して きた
自分 な らでは の世界 を複雑 に組み合 わせ て新 しい 世界 を作 つてい くとい うこ とが分 か り、想像力 は創
造活動 に欠 かせ な い もので ある とい うことが 明瞭 にな つた。 しか し、なぜ大 人は子 どもの想 像力 を豊
かに感 じるのだ ろ うか 、 と考 えた ときに 、 エ ピソー ドの表面 に見 えた想像世界だけで想 像力 の豊か さ
を捉 えるのでは 、子 どもの表現 を一 部 しか理 解 で きない と感 じた。 そ こで 、イ タ リアの レ ッジ ョ・ エ
ミリア市 の幼児教育 に特 徴的 な子 ども観 を参照 して子 どもの想像力 の豊か さを考察 していった。
レ ッジ ョ 。エ ミリアで子 どもは、素晴 らしい可能性や能力が秘 め られた豊かな存在 、 と捉 え られ て
い る。 そ して大 人は、そ の子 どもの内面 世界 の豊 か さをよく知 ろ うと してい る。子 どもの 内面世界 の
豊か さは音声言語以外 の多様 な表現手段 (子 どもた ちの 100の 言葉)に よって現れ ると考 え られ ていて 、
大人 は見守 る こ とと必要 な支援 を しなが ら、子 どもが どんな意味 をも つて活動 してい るのか、そ の言
葉 をきき とつてい る。
この よ うな レ ッジ ョ・ エ ミリアの子 ども観 で 、子 どもの創造活動 をみて い くと子 どもの 内面世界 を
垣間見 ることがで きた。子 どもの想像力 の豊か さは、大人が子 どもの言葉 を どの よ うに捉 えるか とい
う、「大人が子 どもをみ る眼」で感 じるこ とがで きる と分か つ た。
他者 と 「関 わ る力 」 を育て る授業 につい て の考察
∼ 中学校 にお ける道徳 の授業 の観 察 を観 察 して∼
201lHP047
井坂恵 理子
本論文 で は 、道徳 の授業 において 、子 どもた ちが どの よ うに他者 と 「関わ る力」 を身 に
つ けて い くのか につい て考 えて い く。
先行研 究 では 、道徳教育 の変遷 につい て述 べ た。 従来 は何 らか の徳 目を知識 と して教 え
込む方法 が道徳 の授 業 の 主流 で あ ったが 、近年 では子 ども同 士の対話 を主 に して展 開 され
る授業 が み られ るよ うにな つ て きた。道徳 教育 に 「対話」 を取 り入れ る こ との意義 は大 き
く二つ あ る。 一つ 目は認知的 な道徳性 の発達 を うな が す こ と、 二つ 日は他者 に対す る配慮
や思 いや りについ て深 めてい く こ とがで きる ことである。
研 究方法 と しては 、小集 団活 動 な どの 生 徒 同 士 の 関 わ りを積極的 に取 り入れ て い る道徳
の授業 の観 察、 また授 業者 で あ る教師 へ の イ ンタ ビュー を行 つ た。授 業観 察 においては 、
生 徒 同 士 の 関 わ りを主 として展 開 され てい く道徳 の授 業 を観 察対象 と し、対話活動 を中心
とした生徒 同 士 の 関 わ りの様子 、 また教師 の授業 の展 開 の仕方や発言 、 立 ち居振 る舞 い な
どを観 察 の視 点 と した。 またイ ンタ ビュー にお いて は、授 業 中の 教師 の言動 の意 図や道徳
の授業 を通 して子 どもた ちに学 ばせ たい こ とな どに関 して 半構造化イ ン タ ビュー を行 つた。
他者 との 関 わ りを重 視 した道 徳 の授 業 にお いて 、子 どもた ちは 「題材 か ら」学 んでい る
だ けでな く、「他者 との 関わ りを通 して」学 んでい るこ とが ある と考 えた。学級全体 のや り
と りの場 において 、教師 は、子 どもたちに他者 の意見 と自分 の意 見 とを関連 づ けて考 え さ
せ る こ とがで きる よ うな言葉 が けや授業展 開 を して い た。 この よ うな教 師 の 関わ りに よっ
て 、子 どもた ちは周 りとの 関係 の 中 にい る 自分 を見 る こ とがで きるよ うにな る と考 え られ
る。 また 、小集 団 で の話 し合 いの場 にお いて は、子 ども同 士 をつ な ぐ手助 けをす る教師 の
介入 が少 な くな るため、 よ リー 人ひ と りが他者 の意見 に関心 を もつ こ とや他者 の意 見 を聴
こ うとす る姿勢 を もつ ことが 大切 にな って くる。道徳 の授 業 を通 して 、他者 の意 見 に共感
した り、他者 の意 見 を受容 で きるよ うにな るためには、学級 内や 小集 団 内にお 互いの意見
を聴 き合 う風 土が確 立 され て い る ことが大切 にな つて くる と考 え られ る。
健常児 と障がい児 の相互理解
―統合保育での保育士 に焦点をあてて一
201lHP123阪 本あすか
【は じめに1
現在、多 くの保育園や幼稚園で健 常児 と障がい児が一緒 に保 育 され る統合保育が行われてい
る。統合保育 を行 うこ とは、健常児 、障がい児双方に発達上非常 に意義深 い ものであるとい う
ことが明 らかにされてい る。 しか し、先行研究 によると、健常児 の障がい児 に対す る関わ りは
肯定的なものばか りでなく 「無視Jや 「叱責」といつた否定的なもの も多 くあるとい う。保育
場面にお いて、健常児は保育士の行動を常にモデ リングす るため、健常児 と障がい児 の関わ り
には、保育士が障がい児 とどのよ うな関わ りを行 うかが大きく影響 してい るといえる。そ こで、
本研究では、統合保育において健 常児 と障がい児が肯定的な関係 を築 くために大切 となる保育
士の働 きか けとは どの ようなものであるかを考察す るこ とを目的 としてい る。
研究方法】
【
名古屋市で統合保育を行 ってい る保育園で、週に 1回 フィール ドワー クを行 つた。実際 に子
どもたちの関わ りや、保育士の働 きかけを観察 し、フィール ドノー トに記録 した。
観察を行 つて
い る際に気になつた保育士の働 きか けについては、その意図 を知るためにイ ンフォーマルイ ン
タ ビュー を行 つた。
考察】
【
健常児 と障がい児 の肯定的な関わ りには、同 じクラスの仲間だか らこそ行えるであろ う関わ
りを見ることが出来た。 これには、健常児 の障がい児 に対す る 「自分たちと同 じであるが全 く
一緒ではない」 とい う認識 の形成 も含まれていた。
しか し、一見す ると、肯定的な関係 だ と感 じられ る子 どもたち同士の関係性 も、保育士の視
点か ら見てい くと、発達を阻害 してい る関係 になつてい る場合 もある ことが明 らかになつた。
その ような関係 に対 し保育士は、意図的 に子 どもたちを離 し、双方の成長を見守 つていた。
これ らの考察を通 して、健常児 と障がい児が相互理解 の関係 を築 くためには、保育士が、健
常児、障がい児一人ひ とりのこれか ら先を見据 えて、働 きかけを行 うことが重要であると言 え
る。そ して、子 どもたち一人ひ とりを見る保育には、保育士同士の連携、特 に、担任保育士 と
障 がい児 を担当する加配保育士の密な情報共有が必要不可欠であることが示唆 された。また、
保育士が統合保育を行 い、障が い児 と関わ りを持 つた経験 によ り、健常児、障がい児関係なく
子 どもたち一人ひ とりの気持ちを大切にする保育の姿勢へ と保育者 自身が変化 してい ること
も示唆 された。
卒業論文要 旨
「幼児 の 主体的な活動 を学びへ と展 開す る環境 」
201lHP179
永谷彩乃
【目的】子 どもたちが 自由に好きな ことをす るといつた幼児 の主体的な活動において、子 ども
たち自らがより深 く考え学ぶ ことので きる環境 とはどのよ うなものであるか明 らかにす ることを
目的 とする。
方法 】 レ ッジ ョ 。エ ミリア市 の幼児教育 の理 念 を教育方針 としたプ リス クール で フ ィール ド
【
ワー クを行 つた。 レ ッジ ョ 。エ ミリア市の幼児教育 の理念 とは 、幼児 が興味 。関 心のあ るこ とに
自ら取 り組み学んで い く活動 を積極的 に行 つてい る と考 え られ て い る。参観 は午前
9時 か ら午後
3時 半 ごろまで 、子 どもた ち と共 に過 ご し、 フ ィール ドノー ツを作成 していった。 主な観察対象
は 4歳 ∼6歳 の幼児 10名 (男 子 7名 、女子 3名 )で ある。
考察】本研 究では、周 りの大人 か ら尊重 され なが らも、 よ り深 く学ぶ こ とがで きる環境 には、
【
主体性 と社会性 が 関わ つてい た こ とが明 らか とな つた。Aプ リス クール では 、 主体性 を育 めるプ
ロジェク ト活動 の時間 と、友 だ ち と話 し合 い 、 自分 た ちで決 めた規則 を守 る社会性 とが上手 く機
能 し、幼児 の 主体的な活動 を学び へ と展開で きる環境 が整 って い た。
先 生の子 どもた ちへ の 関わ りは、観 察 か らは じま り、物的環境 を整 えることも重要な意 味 を持
っていた。 さらにそ の こ と以上 に 、子 どもた ち の声 を “聞 く"こ とが最 も大切 な ことであ ること
が 、子 どもた ち とのエ ピソー ドで 明 らか とな つた。子 どもた ちが今 い る 自分 の状況 を どの よ うに
捉 え、 どの よ うな行動 を して い きた いのか 、大人 が 「ど うして 」や 「なに」 と子 どもた ちに “聞
く"こ とに よ り、見つ め直す ことがで き、新 たな発想や豊 かな遊び の 世界 へ 子 どもた ちが引き込
まれ てい つた。
また、Aプ リス クール な らでは の子 どもたちへ の 関 わ り方 は、英語 で ある。Aプ リス クール 内
では 、英語 で生活 す る ことが 求 め られ てい る。 母国語 でな い た めに 、子 どもたちが感 じ、伝 えた
い ことが思 い通 りに表現 で きな い 可能性 があ る。先 生はその ことを考慮 し、I don't knowで 終 わ
らせ な い 関 わ りを していた。
子 どもの 関心 に寄 り添 うこ とで、子 どもの学びが生 まれ る と考 え られ る反面、子 どもたちの 関
心 にメデ ィアの存在 が切 り離せ な い ことがわかつた。子 どもの 関 心 にメデ ィアが強 く影響 を与 え
て い る とい える。 先生や保護者 な ど大人 は、子 どもた ちを 自由に させ つつ も配慮す る必要性 があ
る といえ る。
子 どもた ちが 自由にあそ び生 活す る中で、喧嘩や もめ ご とがた えるこ とはない。 しか し、先 生
が話す場 を設 ける こ とに よ り、 自分 の考 えを発案 した り、他 の子 どもの意見 を聞 き調整 した りす
るこ とで、 自分 た ちで規則 を決 め、それ らを守 る社会性 が 育 まれ てい つた。
以 上 よ り、幼児 の主 体的 な活動 を学びへ と展 開す る環境 とは、幼児 が好 きな ことを行 える時間
や場所 、幼児 の 主体的 な行動 を支 える先生や保護者 の支 え と、みんな で話 し合 い 、 自分 た ちで規
則 を作 ってい ける社会性 を育む場 の存在 が必 要 であ る とい える。 これ らの要素 が絡み合 い 、子 ど
もた ちが協働 で学 ぶ環境 を 自分たち 自身 でつ く りあげ るこ とができる とい える。