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編集・発行 三井住友銀行グループ・SMBCコンサルティング株式会社
2015.3.23 第 1461 号
SMBC経営懇話会
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【企業も労働者も活性化!】
「特別な休暇制度」導入のメリットと制度運営上のポイント
石川社会保険労務事務所
社会保険労務士 石川 志郎
1. 近年、労働者の健康の保持・増進や仕事と生活の調和、モチベーションの向上のために、病気休暇、リフレッ
シュ休暇、裁判員休暇などの「特別な休暇制度」を導入する企業が増加しています。
2. 「特別な休暇制度」の導入後は、制度が十分に活用されるように、複数の業務をこなせる「多能工」を育成す
るなど、安心して休暇が取得できる環境を整えることが大切です。
1.「特別な休暇制度」の導入が増加している背景
企業で働く労働者は、それぞれ異なる事情を抱えています。すべての労働者が長時間労働をできるわけでは
ありません。長時間労働が困難な労働者、短期間の休暇を必要とする労働者、長期間のまとまった休暇を必要と
する労働者などさまざまな労働者がいますが、これらの労働者を排除していたら、そのうち働き手がいなくなってし
まいかねません。また、いくら元気な労働者でも長時間労働を続けていれば、心身の健康を保持できなくなりま
す。
企業には、労働者が仕事と生活を両方バランスよくこなし、心身ともに充実した状態で意欲と能力を十分発揮で
きる環境を整備していくことが求められています。そのために、法律で定められた休日・休暇だけではなく、「特別
な休暇制度」の導入を検討する企業が増えています。
2.「特別な休暇制度」とは
「特別な休暇制度」とは、正式名称を、「特に配慮を必要とする労働者に対する休暇制度」といい、「休暇の目的
や取得形態を企業と労働者による話し合いにおいて設定できる法定外休暇」であって、法律で定められている休
暇以外の休暇を指します。「特に配慮を必要とする労働者」とは、次のような労働者です。
・ 特に健康保持に努める必要があると認められる労働者
・ 子の養育または家族の介護を行う労働者
・ 妊娠中及び出産後の女性労働者
・ 単身赴任者
・ 自発的な職業能力開発を図る労働者
・ 地域活動等を行う労働者 等
法律で定められている休暇とは、年次有給休暇や産前産後休暇、生理休暇、育児休業、介護休業といった休
暇です。
「特別な休暇制度」を設けることは企業の義務ではありませんが、労働者の健康の保持・増進や仕事と生活の
調和、モチベーションの向上に有効です。
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3.「特別な休暇制度」を導入するメリット
企業が「特別な休暇制度」を導入するメリットとしては、次の 4 点が挙げられます。
・ 福利厚生の充実により企業イメージがアップし、人材が安定的に確保でき定着率がよくなる。
・ 労働者の健康保持増進を行うことにより、企業の活力そのものが向上する。
・ 労働者が社会参加の機会等を得て自己実現ができるようになり、仕事の質や効率が向上する。
・ 企業の社会的責任(CSR)を果たすことにつながる。
4.「特別な休暇制度」の例
代表的な「特別な休暇制度」について解説します。
(1)病気休暇
長期の療養のための病気休職とは別に、治療のために取得する休暇です。通常、病気休暇の方が病気
休職より取得できる日数は短く設定されます。連続取得に限らず、「年間で通算○日取得できる」という制度
にするとよいでしょう。年間の取得日数に上限がない企業もありますが、休暇を有給とする場合は、上限を設
ける方がよいでしょう。上限を設ける場合は「61 日から 90 日」とする企業が多いようです。
(2)リフレッシュ休暇
「特別な配休暇制度」で最も活用されている休暇で、厚生労働省では「職業生涯の長期化・職務の高度化
に対応したリフレッシュのための休暇」と定義されています。身体をしっかりと休めるとともに、リフレッシュして
気持ちを新たにすることで、次の現場への意欲と集中力を養うのを目的として導入する企業が多いようです。
(3)裁判員休暇
平成 16 年から始まった「裁判員制度」において、裁判員に選任された労働者に対して、その職務を果たす
ために必要な期間について付与される休暇です。いつ、誰が裁判員になるか分からないため、労働者が裁
判員に選任された場合に、年次有給休暇を使わなくて済むように配慮したものです。
ほかにも、ボランティア休暇(災害等のボランティア活動のための休暇)や記念日休暇(誕生日や結婚記念日
等)、配偶者出産休暇等があります。
5.制度運営上のポイント
平成 25 年に 7,000 社を対象に実施されたアンケートによると、「特別な休暇制度」を導入したきっかけは、半数
以上が「経営陣の発案」(53.0%)と回答しています。
また、「特別な休暇制度」の取得を促進するために効果的なこととして、「職場の雰囲気、上司・同僚の理解」
(30.7%)、「休暇中の業務代替処理が可能な人事的余裕」(29.0%)、「経営陣による休暇取得の勧奨」(15.1%)が
他の項目と比較して割合が高く、経営層、上司、同僚等の周りの理解と協力が必要と考えられます。
また、労働者側からの回答では、「特別な休暇制度」の取得を促進するために効果的なことは「職場の雰囲気、
上司・同僚の理解」が 66.5%で最も割合が高く、以下「休暇中の業務代替処理が可能な人事的余裕」(52.2%)、
「経営陣による休暇取得の勧奨」(43.5%)と続き、周りからの理解や支援が必要とされています。
休暇を取得しやすい制度にするためには安心して休めるようにしなければなりませんが、よく、「その業務は、担
当者が休んでは回らないので担当者は休めない」という話を聞きます。それは、一つの業務を一人の労働者で処
理するから起こる問題ではないでしょうか。一人の労働者が複数の業務を処理し、結果的に複数の労働者で一つ
の業務を処理するようにすれば、誰かが休んでも他の人間でフォローできるようになります。要するに、「多能工」
が増えれば、休暇を取得しやすい企業になるのではないでしょうか。
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