埼玉県内企業の2015年度春季賃上げ見通し調査

・・・・・・・・・・・・・・ ぶぎん地域経済研究所 ・・・・・・・・・・・・・・
●調査レポート
埼玉県内企業の 2015 年度春季賃上げ見通し調査
調査対象:県内企業 574 社
調査方法:アンケート方式 (1月下旬 郵送回収)
回答企業:250 社(回答率 43.6%)
業種別内訳:製造業 145 社
非製造業 105 社
要旨
○2015 年度に賃上げを予定している企業の割合は、53.4%と半数を超えたものの、2014 年度
比ほぼ横ばいとなっている。また、3割強の企業が「未定」で、検討中など賃上げ取組方針が
決定に至っていない状況である。
○1人当たり平均賃上げ予定額と賃上げ予定率(両者とも定昇とベースアップ込み加重平均、
以下同じ。)は、全体では金額で 5,093 円、率で 2.07%と、前年度の 5,055 円、2.02%に比べ
若干増加することが見込まれる。業種別では、製造業が 5,005 円、2.05%、非製造業が 5,172
円、2.08%となっている。
1.春季賃上げ取組予定
(1)全体
①賃上げ実施の有無
2015 年度に賃上げ(「定昇、ベースアップとも実施予定」、
「定昇のみ実施予定」及び「ベ
ースアップのみ実施予定」の合計割合」、以下同じ。)を予定している企業の割合は、53.4%
と半数を超えたものの、2014 年度比ほぼ横ばいとなっている。一方、2015 年度は賃上げ
を行わない予定割合は同比 2.2 ㌽増の 11.3%であったほか、
「未定」が同比 1.2 ㌽増の
33.7%と3割強の企業が、検討中など賃上げ取組方針が決定に至っていない状況である。
埼玉県内企業は賃上げに慎重に取り組んでいると見られる。
(図表1)
②定昇とベースアップの取組状況
2015 年度に賃上げを予定している企業の取組状況をみると、「定昇のみ実施予定」の割
合は、2014 年度比 1.5 ㌽減少しているものの、36.8%と最も多い。次いで「定昇、ベー
スアップとも実施予定」は同比 1.4 ㌽減の 10.5%、
「ベースアップのみ実施予定」同比 2.8
㌽増の 6.1%であった。「定昇、ベースアップとも実施予定」及び「ベースアップのみ実
施予定」の合計割合は、2015 年度 16.6%、2014 年度 15.2%と、若干増えているものの依
然少数にとどまり、定昇中心の傾向に変わりはない。 (図表1)
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図表1.2015年度春季賃上げ見通し(業種別定昇・ベースアップ状況)
(単位:%)
全体
10.5
製造業
11.1
非製造業
36.8
31.9
9.7
6.1
6.3
11.3
33.7
12.5
43.7
5.8
36.8
9.7
29.2
定昇、ベースアップとも実施する予定
定昇のみ実施し、ベースアップは実施しない予定
定昇は実施せず、ベースアップのみ実施する予定
定昇、ベースアップとも実施しない予定
未定
その他
1.6
1.4
1.9
(2)業種別
業種別に見ると、賃上げを予定している企業の割合は、製造業で 49.3%と半数程度とな
っているが、非製造業で 59.2%と 6 割程度を占めている。一方、
「賃上げを行わない」企業
が製造業で 12.5%、非製造業で 9.7%となっている。「未定」の割合は、製造業が 36.8%、
非製造業が 29.2%を占めており、両者とも約三分の一の経営者は、自社の実績・業績見通
しのほか、景気や春闘の動向などを見極めた上で決定しようとしている姿勢が窺われる。
(図表1)
2.賃上げ企業に対する優遇税制などを考慮した取り組み
(1)全体
賃上げ企業に対する優遇税制などを考慮して賃上げに取り組むかを尋ねたところ、全体
では、「考慮した」は 7.9%と1割弱に過ぎず、
「考慮していない」は 78.2%と8割弱に上る。
また、13.9%と1割強の企業が特に優遇税制について考慮していないが、今後、賞与支給で
処遇改善に取り組む予定としている。埼玉県内の中小企業経営者は、優遇税制などの活用を
視野に入れた賃上げの取り組みには、慎重な姿勢をとっている。その一方で、従業員の処遇
改善や従業員を確保するため、継続的な固定費となるベースアップではなく、一時金の賞与
で対応しようとする意図も窺われる。
(図表2)
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図表2.賃上げ企業の優遇税制などを考慮した取り組み(業種別)
(単位:%)
7.9
全体
12.0
製造業
非製造業
78.2
13.9
75.0
2.7
13.0
82.2
考慮した
特に考慮していない
15.1
特に考慮していないが、今後、賞与支給で考慮する予定
(2)業種別
優遇税制などを「考慮した」は、製造業が 12.0%と非製造業の 2.7%を 9.3 ㌽上回る一方、
「特に考慮していないが、今後、賞与支給で考慮する予定」は、非製造業が 15.1%と製造業の
13.0%を 2.1 ㌽と若干ながら上回っている。製造業は、優遇税制などの利用に非製造業より
も前向きな対応の違いが窺われる。
(図表2)
3.1人当たり平均賃上げ予定額の方針
(1)全体
賃上げを予定している企業に、1 人当たり平均賃上げ予定額について尋ねたところ、「前
年度比横ばいの見通し」が 2014 年度を 1.2 ㌽上回る 45.5%と最も多く、「前年度比増加見通
し」が 24.0%と同比 1.3 ㌽下回る一方、「前年度比減少見通し」が 5.4%と同比 2.5 ㌽上回っ
た。2015 年度の 1 人当たり平均賃上げ予定額に関する経営者の方針は、前年度並みとする
方針が引き続き最も多いが、前年度よりもやや消極的になっていると見られる。(図表3)
図表3.2015年度春季1人当たり平均賃上げ予定額(業種別)
(単位:%)
全体
製造業
非製造業
24.0
45.5
22.3
5.4
46.8
26.0
前年度比増加見通し
4.3
43.9
前年度比横ばいの見通し
・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
6.8
前年度比減少見通し
25.1
26.6
23.3
未定
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(2)業種別
製造業で、2015 年度は「前年度比横ばいの見通し」が 46.8%と5割弱を占め最も多く、「前
年度比増加見通し」が 22.3%と前年度を 5.1 ㌽下回り、「前年度比減少見通し」が 4.3%と前
年度を 0.1 ㌽上回った。
非製造業で、同様に「前年度比横ばいの見通し」が 43.9%と4割強を占め最も多い状況に
変わりないものの、「前年度比増加見通し」が 26.0%と前年度を 3.2 ㌽上回り、「前年度比減
少見通し」も 6.8%と前年度を 5.5 ㌽上回った。
製造業、非製造業ともに、全体と同様に今年度の 1 人当たり平均賃上げ予定額は、前年度
並みとする方針が中心となっている。
(図表3)
4.1人当たり平均賃上げ予定額及び賃上げ率
(1)全体
全体の 2015 年度平均賃上げ予定額は 5,093 円、平均賃上げ率は 2.07%と、2014 年度実績
(5,055 円、2.02%)に比べ賃上げ額、賃上げ率ともに 38 円、0.05 ㌽と若干増加することが
見込まれる。
(図表4)
(2)業種別
業種別に比較すると、非製造業は、製造業よりも金額で 167 円、率で 0.03 ㌽上回った。
製造業では、金額 5,005 円、率 2.05%と、2014 年度実績の 4,769 円、1.95%に比べ、賃上
げ額、賃上げ率ともに 236 円、0.10 ㌽と若干増加した。一方、非製造業では、金額 5,172
円、率 2.08%と、2014 年度の 5,348 円、2.08%に比べ、賃上げ率は同率ながら、金額では
176 円と若干減少した。
(図表4)
(注)図表4の集計企業数は、1 人当たり平均賃上げ予定額及び賃上げ率が未定などの企業が多
く、図表1・2及び3の集計企業数とは異なる。
区分
全体
製造業
非製造業
規模の大きい企業
規模の小さい企業
図表4.2015年度春季1人当たり平均賃上げ予定額・賃上げ率
(単位:円、%)
1人当たり平均賃上げ額
1人当たり平均賃上げ率
2015年度 2014年度 前年度比増 2015年度 2014年度 前年度比増
予定額 A 実績額 B 減額 A-B 予定率 C 実績率 D 減率 C-D
5,093
5,005
5,172
5,192
4,347
5,055
4,769
5,348
5,150
4,326
38
236
-176
42
21
2.07
2.05
2.08
2.10
1.84
2.02
1.95
2.08
2.04
1.83
0.05
0.10
0.00
0.06
0.01
(注)平均賃上げ予定額及び賃上げ予定率はともに定昇、ベースアップ込み加重平均による。
以上
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