樹脂の新規環境調和型 ダイレクトめっき技術 甲南大学 フロンティアサイエンス学部 生命化学科 教授 赤松 謙祐 1 電子回路基板における社会ニーズ 携帯電話、自動車 デジタル家電 衛星、医療機器 大量生産・消費時代の終焉 ↓ 少量・他品種への要求 ↓ 電子機器のさらなる高機能化 2 産業・市場ニーズ 小型・軽量化の観点から: サブミクロンスケール配線の回路基板 環境・エネルギー・資源の観点から: 廃棄物を最小にし、かつ工程数の少ない配線描画技術 顧客ニーズの観点から: 小ロット、短納期生産に対応する汎用プロセス 3 従来技術とその問題点 従来製造技術(一例) 基板 レジスト形成 マスク露光 紫外線 現像 エッチング 課題①: 廃液・レジストの廃棄コスト(環境負 荷)大 課題②: 微細化に対応する密着性確保の 手段がない レジスト剥離 4 課題解決に向けた取り組み 課題①:廃棄物による環境負荷が大きい 課題②:微細化に対応する密着性確保の手段がない レジストや薬液を使用しない新技術の開発 (課題①の解決) 無粗化接合を可能にする新原理の提案 (課題②の解決) 5 低環境負荷型めっきプロセスの開発 化学的アプローチによる樹脂の導電化処理 (ダイレクトめっき) Cu ダイレクトめっき法の提案、回路の直接描画 (J. Am. Chem. Soc. 2004他) (特開2005-045236他) 界面構造制御、回路形成手法の開発 (Adv. Funct. Mater. 2007、Langmuir 2010他) (特開2008-218459他) 6 新技術:ダイレクトめっき イオンを含む樹脂を前駆体とし、化学的 還元によりめっきを行う新技術 Cu2+ Cu2+ Cu2+ Cu2+ Cu2+ 金属イオンを樹脂 内部に導入 Cu 表面に金属皮膜を 形成 7 新技術の特徴 ①レジストやエッチングの必要なし (工程数、廃液の大幅削減が可能) ②ナノ構造界面による無粗化接合 (サブミクロン配線へ対応) 低環境負荷、微細化および密着性確保を実現しう る革新的手法 8 ポリイミドフィルムへの応用 樹脂の加水分解を利用したイオン交換基の導入 <未処理のポリイミド樹脂> <表面改質処理後のポリイミド樹脂> KOH処理 イミド環のアルカリ加水分解 K+ K+ K+ K+ + + K+ K K+ K+ K+ K ・アミド結合形成 ・カルボキシル基形成 ↑ カチオン交換基として作用 9 ポリイミドフィルムの表面改質 表面改質層厚さのKOH処理時間依存性 K 0.3 mm 0.5 min 0.6 mm 1 min (5 M KOH at 50 ℃) 3.0 mm 5 min Figure. Effect of initial 5 M KOH treatment time at 50 ℃ on the amount of incorporated ions. 表面改質層 L 未改質ポリイミド L∝t L : 改質層厚さ t : KOH 処理時間 10 ポリイミドフィルムへの応用 Cu2+ Cu2+ Cu2+ Cu2+ Cu2+ Cu DMABによる還元処理 (0.5 M, 50 ℃, 5 min) ポリイミドフィルム 還元処理後 還元前 (Cu2+ イオン導入後) 11 ポリイミドフィルムへの応用 12 めっきプロセスの解析 断面構造 銅イオンの拡散に基づく薄膜形 成プロセス Cu Polyimide 1 mm Figure. SEM images of the fractured section of copper thin film formed on the surface-modified polyimide. Figure. GD-OES depth profiles of the copper iondoped films after NaBH4-induced reduction for various time. 13 めっきメカニズム 最表面 銅イオンの拡散に基づく薄膜形成メカニズム Cu0 Cu0 Cu0 Cu0 Cu0 Cu0 Cu2+ Cu2+ Cu2+ Cu2+ Cu2+ Cu2+ Cu2+ Cu2+ Cu2+ H+ H+ Cu2+ Cu2+ Cu2+ Cu2+ H+ Cu2+ Cu2+ Cu2+ H+ Cu2+ H+ Cu2+ Cu2+ Cu2+ Cu2+ H+ <還元前> ・均一に銅イオンが吸着している。 <還元後①> ・表層部の銅イオンから還元され、Cu2+ → Cu0の反応に伴い、(銅イオンが解離 して生じた)カルボキシルアニオンには H+が吸着する。 <還元後②> ・H+とCu2+の濃度勾配を駆動力として、 イオン交換反応により樹脂深部の銅イオ ンが樹脂表層へと拡散移動してくる。 ・表層部の銅イオンが還元される。 14 めっきメカニズム Figure. Schematic representation of the metallization process and cross-sectional TEM images of metalpolyimide interface after DMAB reduction (A, C). 15 ナノ界面構造評価 DMAB還元処理後 無電解めっき贈膜後 Figure. Cross-sectional TEM images of metal-polyimide interface after DMAB reduction (A) and subsequent electroless Cu deposition (B). (C, D) Enlarged image of A and B, respectively. 16 密着性評価 断面構造 シート抵抗およびピール強度 210 nmol cm-2 400 300 1 0.8 200 0.6 0.4 100 0.2 -1 Sheet resistance / sq 1.2 Peel strength / kgf cm -1 1.4 0 0 200 500 nm 200 nm 420 nmol cm-2 640 nmol cm-2 400 600 800 1000 1200 2+ -2 Cu ion loading / nmol cm Figure. Effect of Cu2+ ion loading on sheet resistance of as-metallized film surface and peel strength of copper film which is electrodeposited onto as-metallized film. Figure. Effect of Cu2+ ion loading on surface morphology and interfacial micro structure of as-metallized film. 17 密着性評価 断面構造 ピール強度 25 °C 50 °C Peel strength / kgf cm -1 1.4 1.2 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 25 Figure. Cross-sectional TEM images of the copper ion-doped precursor polyimide films after DMAB-induced reduction at 25 °C for 20 min (A, B) and at 50 °C for 5 min (C, D). Scale bar = 200 nm. 30 35 40 45 Temperature / °C 50 Figure. Plots of peel strength between electrochemically deposited copper film and surface-modified polyimide substrate as a function of DMAB-induced reduction temperature. 18 回路形成プロセス 光触媒還元 インプリンティング インクジェット 改質層 光還元 Mn+ Mn+ Mn+ Mn+ Mn+ Mn+ Mn+ Mn+ Mn+ 電気化学還元 Mn+ 樹脂 Mn+: 金属イオン 19 技術的優位性 ■新発想に基づくダイレクトめっき レジストを使用せず、廃液のでないフル・ アディティブ法 課題①を解決(低環境負荷) ■ナノ構造界面の創製 金属ナノ粒子連結体によるナノスケールインター ロッキング 課題②を解決(微細化に対応) 20 想定される用途 次世代回路基板 ■サブミクロン幅の微細回路 ■平滑・高密着性の金属配線 電子回路基板の微細化、 製造プロセスの低環境負 荷、高効率化を実現 ■銅張積層版製造(接着剤なし) ■FPC一般(樹脂の構造設計により可能) ■その他回路基板(エポキシ、ポリエステル、PC他) 21 実用化に向けた課題 ■残存金属イオンの除去 ■熱処理に伴う密着力の低下 ■RF遅延等の物性値評価、構造最適化 22 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :装飾皮膜 • 出願番号 :特願2012-49369 • 出願人 :トヨタ自動車(株) 学校法人甲南 • 発明者 :吉永文隆、赤松謙祐 23 お問い合わせ先 甲南大学 フロンティア研究推進機構 産学連携コーディネーター 小林 信義 TEL 078-435- 2754 FAX 078-435- 2324 e-mail [email protected] 24
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