コチラ - 国立大学法人電気通信大学 インキュベーション施設

2015年3月17日電気通信大インキュミーティング
これまでの感謝とインキュ企業への
期待
横浜国立大学 客員教授
電気通信大学 特任教授
創新経営研究所 代表
元㈱ケイエスピー取締役
志茂 武
はじめに(自己紹介と本日の狙い)
・66年神奈川県商工部工業課配属。以来、一貫して中
小工業支援に従事。
・85年KSP構想策定プロジェクトに参加。
92年から、KSPでVB支援、特に創業支援(ビジネス・
インキュベーション)に従事。
・Incubatorとは:孵卵器、保育器、培養器等
・Business Incubationとは:起業・創業支援
・数多くの中小企業、ベンチャー企業に接触。
多くのことを学ぶ。
・05年~横浜国立大学で大学発VBの支援等従事。
・09年~電気通信大学産学官連携センター特任教授。
2
VB(ベンチャー・ビジネス)とは
・VBとは: 「高い志と成功意識の強いアントレプレナ
ー(起業家)を中心に新規事業への挑戦を行う中小
企業。商品、サービスあるいは経営システムにイノ
ベーションに基づく新規性がある。」
・VBは和製英語。明確な定義はない。
・アントレプレナーを中心としてイノベーションへの挑
戦を行う存在・担い手として期待は大きい。
・「Venture」とは「冒険、冒険的な企て、投機等」
・言葉の通り、ベンチャー企業は期待の半面、リスキ
ーな存在である。経験的には成功確率は、1/3。
IPO(Initial Public Offering 新規株式公開)は、
3/1000とも言われる。
3
我が国における年間IPO社数推移
250
ITバブル
200
150
リーマンショック
100
IPO社数
50
0
・りーマンショック以降激減していたIPO件数は漸増傾向にある。
4
VB(ベンチャービジネス)との出会い
・長洲一二知事のこと
75年4月知事当選。
78年6月「頭脳センター構想」提唱
米国のVB(スモールビジネス)に注目
VBとの接触提唱。RADOC(神奈川県研究開発型企業
連絡会議)設立。80年代、第2次VBブームの中で多く
のVBに接触。
「ベンチャー役人たれ!」
KSPの誕生=RADOC等VBの提案
VBと中小企業(下請企業)との相違。“当事者意識”
・リーダーの条件:夢を与える。先見性、戦略性。
5
Innovationとは何か(1)
Joseph Alois Schumpeter
(1883.2~1950.1)オーストリア生まれ。
・1911年7月「経済発展の理論」で新結合(後のイノベ
ーションの概念)として、次の5類型を提示。
1.新しい財貨の生産
2.新しい生産方法の導入
3.新しい販売先の開拓
4.新しい仕入先の獲得
5.新しい組織の実現
また、これらイノベーションの実行者、
担い手をアントレプレナーと呼ぶ。
6
Innovationとは何か(2)
・1942年「資本主義、社会主義、民主主義」、
アントレプレナーによる新企業がイノベーショ
ンを背景に出現し、「創造的破壊」により、経
済の進歩をもたらすと述べている。
・経済の変化は、正、反、合と言う弁証法的な「
創造的破壊」によりもたらされていると説く。
・イノベーションは、新しい価値の創造、幅広い
社会の変革。改良、改善でなく「革新」。
・イノベーションによる経済発展・アントレプレナ
ーの重要性は、21世紀になって輝きを増し
ていると言える。
7
事業(ビジネス)とは何か
8
最近のビジネスの特長
・スピード重視
リーンスタートアップ(仮説、検証の繰返し。資金調達
、設備投資は次の段階。)
・各種SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)活用
消費者行動の仮説:AIDMAからAISAS
(attention-interest-search-action-share)へ
新しいビジネスモデル:事業の場の提供⇒共創
eg)Lang-8
・新しい価値の提供(innovation)
・グローバル化を視野
9
ビジネスモデル(収益モデル)とは(1)
・ビジネスモデルとは「ビジネスの仕組み」
「どの様な製品・サービスを、どの様なニーズに対応し、どの
様な方法で提供し、対価として収益を上げるかの具体的仕
組み」であり、これを「収益モデル」とも呼ぶ。
(新規性の点で特許化されたものが「ビジネスモデル特許」。)
・技術とビジネスの優位性の相違
品質管理の定義(JIS)=「消費者の満足を得るに足る製品を
最も経済的な水準で生産するための計画とその計画達成
のために行う全ての活動」
この定義はビジネスにおけるニーズ・品質を言い当てている。
重要なことは「要求品質」に適うことで、「最高品質」ではない。
これらの相違の認識が重要。⇔大学とビジネスの相違。
10
ビジネスモデル(収益モデル)とは(2)
・対価としての収益の重要性
「収益を上げないビジネスを誇っても、収益を上げ
られないビジネスは恥よ」
(第2代多摩大学学長 中村秀一郎)
・Social Business、社会起業家等の考え方
「社会的課題をビジネスの手法を使って解決
する」
これまで低迷していたSBの成長のカギは事
業性、収益モデルの確立である。
・多くのベンチャー、中小企業は収益を上げるこ
とを目指しながら実現出来ていない。⇒収益モ
デルとしてのしくみの欠落
11
社会的企業(SB)とは
・地域活性化、福祉、教育、環境、産業振興等の社会的課題を
ビジネスの手法で解決しようとする活動。
・社会性、事業性、革新性が重要な要件となっている。
・事業性とともに最も重要なポイントは、社会問題解決の
「志」、「使命感」をもてるかである。
・「全ての人々が社会起業家となる時代」(多摩大学田坂広志)
・SB,SEの成功モデル。
フローレンス
(駒崎弘樹)
マザーハウス
(山口絵里子)
12
KSP全景
13
KSP(かながわサイエンスパーク)
のねらいと概要
・コンセプト:「R&D型企業が生まれ、育ち、集い=交流する
拠点」
・背景:県の「頭脳センター構想」
1978年長洲知事(当時)提唱
・KSPの概要:
1986年12月「民活法」第1号認定、㈱ケイエスピー設立
1987年5月建設着工、89年11月オープン
施設概要:敷地5.5ha、建物延床面積14.6ha
総事業費:650億円
入居者:140社、4,300人
14
(株)ケイエスピー財務実績推移
期
※1
※2
※3
※4
売上高
経常利益
当期純利益
次期繰越利益
第1期
('87.3)
△ 6,449
△ 6,674
△6,675
第2期
('88.3)
9,146
△ 9,034
△ 9,934
△16,609
第3期
('89.3)
9,032
△ 306,575
△ 304,975
△321,585
第4期
('90.3)
781,132
△ 277,972
△ 277,372
△598,957
第5期
('91.3)
1,256,188
△ 87,855
△ 88,755
△687,713
第6期
('92.3)
1,476,773
49,643
48,743
△638,970
第7期
('93.3)
1,563,296
35,436
34,536
△604,433
第8期
('94.3)
1,596,778
13,414
12,514
△591,919
第9期
('95.3)
1,418,948
4,660
3,710
△588,208
第10期
('96.3)
1,274,823
△ 46,092
△ 47,072
△635,251
第11期
('97.3)
1,414,876
51,646
47,994
△587,256
第12期
('98.3)
1,439,067
96,415
60,464
△526,792
第13期
('99.3)
1,421,090
87,137
66,524
△460,267
第14期
('00.3)
1,365,192
46,995
25,537
△424,606
第15期
('01.3)
1,415,726
95,042
41,897
△388,147
第16期
('02.3)
1,454,685
103,263
53,814
△333,744
第17期
('03.3)
1,347,615
46,792
47,228
△285,959
第18期
('04.3)
1,317,840
126,932
84,291
△200,720
第19期
('05.3)
1,366,871
175,571
125,224
△75,495
第20期
('06.3)
1,668,470
556,084
328,267
204,468
第21期
('07.3)
1,959,571
895,390
516,499
725,467
第22期
('08.3)
1,316,655
179,434
107,185
832,653
第23期
('09.3)
1,331,303
204,111
123,516
911,169
第24期
('10.3)
1,241,588
150,266
89,198
941,868
第25期
('11.3)
1,058,730
79,492
42,466
934,835
※1 インキュベート事業の赤字累積
※2 ビル不況で入居率低下。第2の創業(人事、組織、給与見直し、新事業立ち上げ)着手
※3 投資事業に係るキャピタルゲイン3億3千万円が利益に寄与
※4 投資事業成功報酬6億7千万円が利益に寄与
期末人員
社長
14 岡崎 嘉平太
23 〃
23 飛島 章
23 長洲 一ニ
24 〃
26 久保 孝雄
26 〃
26 〃
25 〃
23 〃
20 〃
21 〃
20 〃
18 山野 好章
19 〃
21 〃
21 〃
20 山田長満
19 〃
19 〃
19 〃
20 大北智良
18 〃
19 〃
19 〃
単位:千円
15
16
KSPインキュベーションモデル
①創 業 前
2
研究者
起業家
V
B
人材の輩出
1
技術シーズ
3
V
B
化コ
候ー
補デ
技ィ
術ネ
、ー
人ト
材
の
発
掘
②創 業 後
有望
案件に
ついて 事
業
化
シ
ナ
リ
オ
作
成
4
事業化
可能
案件に
ついて
③成長期
10
5
会社
設立
6
7
8
9
事業立上げ
・研究開発
・試験評価
・特許戦略
・製品開発
事業成長
・事業計画
見直し
・チャネル
構築
・事業提携
事業確立
・製品量産
・資本政策
立案
公開準備
・社内体制
整備
・流動比率
の調整
株
式
公
開
・
事
業
売
却
資金提供
かながわサイエンス
パーク発の
研究成果の提供
・(財)神奈川科学
技術アカデミー(KAST)
・神奈川県地域研究
開発促進拠点支援
(RSP)事業関連大学
からのシーズ発掘
外
部
サ
ポ
ー
ト
資金提供
インキュベーション支援
プレインキュベーション支援
KSP
・人材の発掘、
・コーディネート、
・KSPベンチャー
ビジネススクール
・事業協力者との
個別ミーティング
KSP、KAST、KTF
インキュベーション
ルーム入居、設立準備、
バックオフィス業務、
資金調達支援、
研究室・機器の提供、
人材採用
資金提供
ビジネス支援
KSP
資金提供
(KSP1号・2号
投資事業
有限責任組合)
大学
研究室
大学、研究所、メーカー、
コンサル、金融機関、
ベンチャーキャピタル、
アントレプレナーなど
人材プラットフォーム
各種
専門家
コンサル
タント
ハンズ
オン型
VC
・事業化シナリオの
作成支援
TLO
KSP
・研究開発成果の
製品化
・販路先紹介
・提携先紹介
・資金調達支援
・公開準備支援
ハンズ
オン型
VC
計測・臨床
試験機関
・育成支援
専門家
大手企業
VC
・アクセラレーション
支援
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急成長、有望企業の登場と失敗企業
・これまでの卒業企業248社の成功、失敗率
うち成功77社、失敗70社、現状維持101社
・規模拡大企業
従業員100人以上8社、最大1400人
年商50億円以上8社、最大170億円
株式公開企業6社(㈱テクノメディカ、㈱アップガ
レージ、サイオステクノロジー㈱、㈱メディアグ
ローバルリンクス、㈱エフオーアイ、㈱ダブル・ス
コープ)
直接資本市場からの調達企業多い、最大137億円
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失敗企業の失敗要因
・市場ニーズ把握不足⇔技術オリエンテッド
・製品・事業の完成度:不良品続出、計画の遅
れと資金ショート
・競合分析の不足:キャッチアップは早い、謙虚
さ・大企業の力を侮らない
・事業計画策定段階での自社の優位性検討不
十分
・経営者の能力・資質の問題:正直、感謝、信
頼感醸成努力の欠如
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企業事例2 ㈱テクノメディカ
・代表取締役会長 實吉繁幸、代取社長 實吉政知
・設立:昭和62年9月、医療VBの技術者實吉会長が、
川崎で創業。
・事業内容:採血管準備装置、検体検査装置(血液検
査装置等)、採血管等の消耗品サービス。
・H15年9月 株式店頭登録、H19年3月東証第二部上
場、H20年3月東証第一部上場。
・同社の成功は、ビジネスモデルの成功(採血管準備
装置の開発とターゲット戦略(病院))によるシェア拡
大。現在は国内から海外展開を図っている。
・特筆すべきは、社長の信頼感醸成努力。
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起業成功の決め手
1.起業家の思いの深さ、起業力(資質)
問題意識力(理念、夢、ロマン、先見性、前向き思考)
変革力(チャレンジ力、創造力、柔軟な発想)
実行力(決断力、行動力、信用を勝ち取る力)
マネジメント力(リーダーシップ、統合力、変化対応
力)
2.ビジネスモデル・コアテクノロジーの優位性
3.市場(ニーズへの適合、市場選択)
4.経営システム(ビジネスプラン、組織、販売、ネット
ワーク、企業風土、人材育成等)
5.資金(キャッシュフロー)
6.人材、経営チーム
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起業家精神とは何か(1)
・気概、達成動機、何のために起業するか
「人間の魂には、欲望、理性のほかThymos
(テューモス)(気概、自尊心)がある」
(プラトン)
「欲望・理性を超える気概こそが歴史の原動
力」(ヘーゲル)
「倫理的価値観」(マックスウエーバー)
「単なる営利欲ではないそれを突き抜けた高
い達成動機をもつこと」(中村秀一郎)
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起業家精神とは何か(2)
・夢を持つ事が全ての出発
「夢に描いた以上のことは実現しない」(孫 正義)
「夢を持ち持続する事が実現につながる」(佐々木正)
・チャンスはいつか訪れる。そのチャンスを絶対ものに
する。(学生:今、起業でなく、長期的キャリアパスを
考え、チャンス到来に併せての起業。)
・チャレンジしなければ何も実現しない。(何もしないこ
とのリスク)
・自分の考えることを信じ,勇気を持つ。「Stay hungry
stay foolish !」(Steve Jobs)
・「おもしろき こともなき世を おもしろく」(高杉晋作)
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