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大阪府における受診率の現状と重点受診勧奨対象者層の設定
(公財)大阪府保健医療財団 大阪がん循環器病予防センター
がん予防検診部門 副所長兼調査室長 山崎 秀男
1.大阪府のがん対策
大阪はがん死亡率が高く 2003 年以前は男女とも都道府県ランキングでワー
スト 1 を独走していた。しかし 2004 年頃より改善傾向がみられている。
大阪府のがん対策推進計画では、2007 年から 2017 年の 10 年間に 75 歳未満
のがん死亡率を 30%減少させることを目標としており、20%は自然減で見込め
る。残りの 10%減を達成するために、喫煙率半減、肝炎ウイルス検診体制の充
実、早期診断の推進、がん医療の均霑化の各分野別施策における死亡率減少の推
計値が示された中で、最も推計値が高かったのは早期診断の推進、すなわちがん
検診の精度向上、受診率向上によるものであった。
2.組織型検診と精度管理センターの設置
組織型検診とは、がん検診・医療の提供体制整備、精度管理、受診勧奨を体系
づけて行うものである。すなわち、ガイドラインや指針が示す正しい検診が正し
く行われるようがん検診や精密検査、治療の提供体制を整備し、要精検と判定さ
れた人が正しい精密検査や治療を受けるよう受診者管理体制を確立し、その上
でがん検診を広く受けてもらうための施策(対象者名簿を確定し個人単位で受
診勧奨を行う、がん検診未受診者を把握し、未受診者には再度の受診勧奨を行う)
を拡大していくという検診体制を指す。
そこで、大阪府は組織型検診推進のため大阪がん循環器病予防センターに精
度管理センターを設置した。精度管理センターでは、大阪府のがん検診の精度管
理体制の確立と精度の均霑化のため、市町村や検診機関に対し、支援や助言を実
施している。
3.大阪府のがん検診の現状
大阪府では、がん検診の精度管理状況を評価するプロセス指標が、大腸がん検
診で精検受診率が低いこと除くと、がん発見率や陽性反応適中度が許容値を大
きく超えるなど良好である。しかし、がん検診受診率は、2012 年地域保健・健
康推進事業報告、国民生活基礎調査のいずれにおいても最下位もしくは、それに
近い状況であった。
4.大阪府における受診率向上への取り組みと重点受診勧奨対象者層の設定
昨年実施した、
「市町村における組織型検診の現状調査」では、ほとんどの市
町村で個別受診勧奨実施されておらず、その障害となっていることは予算やマ
ンパワーの確保であることが明らかになった。また、がん検診提供体制には限り
があるため、個別受診勧奨を行うには最適な対象者を設定する必要がある。そこ
で、大阪府では、75 歳未満のがん死亡率減少を果たす上で最も効果的な対象者
として、重点受診勧奨対象者層を定めた。
特に、60 歳代は国保加入者が多く、国保加入者は受診率が低いことが明らか
になっていることからも、この年齢層に個別受診勧奨を実施することは、限られ
た予算、人員の中で効率的・効果的な個別勧奨につながると考えられる。
5.まとめ
・大阪府のがん検診受診率は、全国最低レベルである。
・大阪府は組織型検診を推進しているが、個別受診勧奨・再勧奨の実施している
市町村は少ない。
・大阪府は効率的・効果的な個別受診勧奨を実施できるように「重点受診勧奨対
象者層」を設定した。
・重点受診勧奨対象者層は国保加入者の割合が多いことから、市町村が実施する
特定健診事業と同時にがん検診の個別受診勧奨を実施することが効率的であ
る。