2−1 ゲインの周波数特性

ゲイン / 通過 / 反射の周波数特性 / 最大入出力レベル
第2章
市川 裕一
高周波アナログ回路
Yuichi Ichikawa
図 X に示すのは,設計した 500 MHz で使える高
(1)ゲインの周波数特性(∼ 2000 MHz)
周波アンプの回路,写真 X が基板の外観です.本章
(2)反射特性(∼ 2000 MHz)
(f = 500 MHz)
(3)P 1dB
では,この回路を例にして,次の重要な測定項目の
(4)高調波(f = 500 MHz,P in = 0 dBm)
正しい測り方を説明します.
(5)IP(
3 f 1 = 500 MHz,f 2 = 501 MHz)
ゲインと反射特性は,500 MHz のワンポイント
ではなく,∼ 2000 MHz という広い周波数帯域で測
定します.
VCC(+5V)
R3
200Ω
R4
C2
1000p
10Ω
R2
6.2k
入力
R1
L2
18nH
RF入力
300Ω
(JPW)
C1
C 3 6p
L1
13p
VCE =2V
12nH
Tr1
BFS17P
インフィニオン・
テクノロジー
RF出力
R5
出力
I C =15mA
図 X 測定ターゲットはコレ!(500 MHz のロー・ノイズ・アン
プ回路)
トランジスタ
写真 X 試作した基板(500 MHz のロー・ノイズ・アンプ)
2−1 ゲインの周波数特性
■ 基礎知識
● 高周波用のアンプのゲインといったら電力ゲイン
「高周波用アンプのゲインを知りたい」と言われた
ら,電力のゲイン
(出力電力と入力電力の比)を測りま
す.単位は[dB]で,[倍]は使いません.
受信回路で使われるような,汎用の小信号アンプや
低雑音増幅器(LNA:Low Noise Amplifier)のゲイン
は,そのアンプの出力信号がひずまないレベルの信号
を入力して測定します.
● 信号源の出力レベルを大きくしすぎないこと
ベクトル・ネットワーク・アナライザは,測定ター
ゲットに加える高周波信号を発生する周波数可変の信
号源を内蔵しています.ターゲット回路に信号を加え
るときは,評価対象の回路で信号が飽和したり,ひず
んだりしないように,出力レベルを調整する必要があ
ります.
信号レベルの調整は, PORT Power で設定します.
フィルタのような受動回路は初期設定でも問題ありま
せんが,アンプのような能動回路を評価するときは調
整が必要です.高ゲイン / 高出力のアンプに必要以上
102
点検
9
にレベルの大きい信号を入力すると,振幅の大きい信
号がアンプから出力されて,高価なベクトル・ネット
ワーク・アナライザが壊れます(写真 1).
● 高周波回路の入出力特性はS パラメータで表す
S 11,S 21,S 12,S 22 をS パラメータと呼びます.次の
ような意味です.
S 11:ポート 1 側の反射特性
S 21:ポート 1 からポート 2 への通過特性.アン
プならゲイン,フィルタなら通過特性や減
衰特性
●S
:ポート
2 からポート 1 への通過特性.アン
12
プならアイソレーション特性,フィルタな
ら通過特性や減衰特性
●S
22:ポート 2 側の反射特性
●
●
写 真 1 ネ ッ ト ワ ー
ク・アナライザの最大
入力レベルをチェック
する
入力できるRF信
号の上限レベル
加えることができ
る直流電圧の上限
2015 年 4 月号