No.11

近 未来 の教 育
幼 稚園 の教 育 ~ 教師 の仕 事~ 園 長 大 友秀 明
* 教育 内容 の改 定
2014 年 11 月に、学校の教育内容などを定めている学習指導要領(幼稚園は教育要領)の在り方について、文部科学大
臣の諮問機関・中央教育審議会に諮問されました。今後、審議会の答申を受けて、学習指導要領の改定、教科書の編集・
検定を経て、東京オリンピック・パラリンピックが開催される 2020 年から順次実施の予定です。
幼児教育については、子どもの発達の早期化などを踏まえて、幼児教育と小学校教育をより円滑に接続させていくため
の見直しが検討されるようです。また、学習・指導については、
「何を教えるか」だけではなく、
「どのように学ぶか」と
いう学びの質や深まりを重視し、課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習、いわゆる「アクティブ・ラーニ
ング」の教材、指導法、評価法について検討されています。
* 求め られ る資 質・ 能 力
これからの社会で求められる資質・能力として、
「何事にも主体的に取り組もうとする意欲」
「多様性を尊重する態度」
「他
者と協働するためのリーダーシップやチームワーク」
「コミュニケーションの能力」「豊かな感性や優しさ、思いやりなど
の豊かな人間性」などが挙げられています。
近未来の社会で働く人は、対人関係を取り結びながら、ことばを武器として、説得力を駆使しながら、相手との合意を
形成する必要があります。これからの人たちには、交渉能力、コミュニケーション能力、相手の感情を敏感に察知する能
力などが、今以上に求められることになります。
他人と対面する時、人は自分のすべてをさらけ出すことになります。そこでは、ことばだけではなく、その語り口、表
情、容貌、人柄、風格、説得力、気迫、身のこなし、すべてがさらけ出されます。
* 育成 の方 法
問題は、求められる資質・能力をどのような方法・場面で育成できるかということです。この資質・能力は、本人の努
力やノウハウとはなじまないものです。個々人の生来の資質か、成長する過程における日常的・持続的な環境要件・家庭
環境に依存する部分が多いと考えられます。
この環境要件とは、家庭の経済的な豊かさや親の社会的地位の高さだけには還元しきれないものです。家族など人との
日常の何気ない相互作用・応答関係が、この資質・能力の形成にとって重要な役割を占めることになります。学校におい
ては、今検討されている「アクティブ・ラーニング」の進め方が重要になりそうです。
1くみ 保育室前にあるプランターに、子どもたちが植えたチューリップの球根の芽が
出ています。とんがった緑色の芽が土の中から顔を出し始めると、友達と一緒に
プランターをのぞき込んで、少しずつ大きくなる芽を人差し指で触りながら芽の
数を数えたり、芽から葉っぱに変化していく様子に気付いて驚いたりしている姿
が見受けられます。 1組の子どもたちにとってのおわかれ会は、予行練習の日まで、未知のもので
した。園全体で行う予行練習の場で、初めて他の学級が取り組む演目を見て、お
わかれ会を実感したようでした。2、3組の劇は、場面が変わったり、役に合っ
た言葉を話したり、動きを見せたりして話が進んでいくことを知りました。また、
自分たちが衣装を着て舞台で歌を歌ったり、劇や合奏をしたりして、2・3組の
子どもたちや先生たちからたくさん拍手をしてもらい、うれしさを感じていまし
た。このように予行練習を経験したことで「おうちの人にも見てもらい、たくさ
ん拍手をもらいたい」と期待を膨らませ、おわかれ会を迎えることができました。
当日は、保育室で準備をしていると「早くやりたいな」
「お客さん、まだいるよ
ね」という声が聞かれました。
「自分も演目を舞台で披露したい」という意欲的
な気持ちでおわかれ会に取り組む姿から、成長を感じることができました。お客
さんの拍手や、やり遂げた気持ち、おうちの方々に褒めてもらった喜びが、これ
からの園生活の自信につながっていくことでしょう。 チューリップが咲く頃、自信に満ちあふれ、生き生きと した2組さんとなって進級していく姿が今から楽しみで す。これまで保護者の方々のご協力に感謝申し上げます。 ありがとうございました。 副 園長 中 村 朋 子 「おわかれ会」では、大勢の保護者の皆様にご参観いただき、ありがとうございました。
「おわかれ会」には、1、2組が
様々な出し物をして3組の子どもたちの卒園を祝い、3組も感謝の気持ちを表すという側面がありますが、本来は「生活発表
会」です。つまり、各組が、この1年間に幼稚園の生活の中で、遊びを通して体験し、その体験を通して学んだことを表現し、
発表する場です。小学校では3学期に「学習発表会」を行う学校がありますが、それに匹敵します。その意味で、今年度は、
プログラムに「学級の取り組み」のページを作り、活動の姿や育っていく様子、教師が意図していることを記載しました。保
護者の皆様に、子どもたちの頑張っている姿や教師の考えをお知らせしたかったのです。 幼稚園教育は、遊びを通しての教育です。しかし、ただ遊ばせているわけではありません。教師は、この遊びを通して、こ
んな体験やこんな学びができるようにしたいと常に考え、子どもたちの姿をよく見ています。Aちゃんの体験がBちゃんにつ
ながり広がりそうだから、こんな援助をしようと、個と全体を見ています。しかし、押しつけ過ぎてはいけないのです。子ど
もの興味や関心に沿い、しかも、教師の意図も交えながら、日々の保育を行っています。こうして過ごした1年間の成果が
「おわかれ会」です。すべてが表現できたわけではありませんが、発表の姿に、幼稚園での生活の履歴があるのです。 私たち、附属幼稚園の職員も一丸となり取り組みました。発表の姿や衣装・道具などをご覧になった保護者の方から「先生
方、大変だったでしょう」と労いのお言葉をいただきました。本当に励まされます。教師の仕事は切りがありません。エンド
レスです。子どもが伸びるのなら、心が豊かになるのなら、幸せになれるのなら、これもやってみこう、あれもつくろうと、
時間も気にせずに進んでしまうこともあります。そういう思いが、教師の真心です。 真心は、真剣に向き合い、相手のことを考え、尊重するところにしか存在しません。真心を込めて子どもに向かうとき、子
どもの心の中に芯ができます。乳幼児期から学童期に大切なのは、芯をつくることです。
「先生とこんな遊びをした、先生が
こう言ってくれた…」という事柄は忘れてしまっても、芯はしっかり残り、真心に出会う度にさらに丈夫に育つのです。芯が
しっかりと育っている人は、困難を乗り越え、強く生きることができるのではないでしょうか。 私たちの願いは、子どもたちが、今をはつらつと生きることであり、未来を自分の力でたくましく生きることです。この思
いを全職員がもち、力を合わせて教育活動を進められた1年間だったと思います。思いやりがあり、笑いが絶えず、互いを尊
重しながら意見を言い合い、チーム力を発揮して進む仲間が附属幼稚園の職員です。この仲間を誇りに思います。 そして、何よりも、いつも幼稚園の教育を見守り、支え、協力してくださった保護者の皆様のご厚意に、心より感謝いたし
ます。本当にありがとうございました。 2くみ 年度末が近づいてきました。1年間のまとめの時期として、日々の記録を紐解
きながら2組と過ごした日々を振り返ることが増えました。一人一人の顔を思い
浮かべながら「心の中に残ったことは何だろう。どんな力が伸びたのだろう」と
考えます。いつも一緒に過ごしていると毎日が当たり前に過ぎてしまいますが、
みんなで口ずさんだ歌、笑いながら読んだ絵本、何度も繰り返し楽しんだリズ
ム・・・思い返すことで子どもが心を動かした場面がいくつもあったことに気付
きます。そして、それらは一緒になって笑い合い、悲しみや悔しさも同じように
共有してきた教師にとっても一つ一つ心に刻まれていることに気付かされます。
「子どもと同じ目線で」「気持ちに寄り添うことが大切」と言葉にするのは簡単
ですが、目には見えない心を読み取り、育てることはそうたやすいことではあり
ません。部分的に場面を切り取ったり、その瞬間を見たりするだけでは、奥にあ
る本心と食い違ってしまうことがあるかもしれません。目の前の姿だけでなく、
それまでの経緯や背景を理解し、
「気持ちを知りたい」
「分かってあげたい」と受
容できる「気持ちの余裕」と、ゆったりと子どもの声に耳を傾けられるだけの「時
間の余裕」が大切です。それは保育における「教師と幼児」という関係や、家庭
における「親と子」という関係の枠にとどまらず、一人の人間として「向き合う」
ということなのだと思います。 「もうすぐ3組だね!」という進級に胸を膨らませる子どもたちの奥にはどん
な心が育っているでしょうか。日々体当たりで子どもたちとかかわり、喜怒哀楽
を共にしながら過ごす時間は、保育する難しさ以上にいとおしさとやりがいに満
ちた宝物であると実感しています。一緒に過ごした2組のみんなとご協力くださ
った保護者の皆様との出会いに感謝の気持ちでいっぱいです。 1年間どうもありがとうございました。 3くみ 春のようなお天気の中、3組の子どもたちにとって幼稚園最後のおわか
れ会を、一人も欠席することなく迎えることができました。合奏から始ま
り、歌、劇…緊張した様子はあったものの、子どもたちの精一杯の頑張り
を見ていただけたのではないでしょうか。おわかれ会が終わった次の日か
ら、「先生、合奏もうやらないの?またやりたい!」「オズ、まだやりた
いから洋服(衣裳)出しておいてね」という声が聞かれました。どの子も
おわかれ会がとても楽しく、満足できるものだったんだなぁと、嬉しくな
ったひとときでした。 おわかれ会ももちろんそうですが、チャレンジカードや版画など、3組
では継続して取り組んできたものがいくつもあります。誰でも簡単にでき
るものではなく、根気や努力、苦労の上に成り立っているものの方が、や
り遂げた時の喜びは何倍も何十倍も大きいのだと思います。これから3組
の子どもたちは小学生になり、新しくチャレンジすることがたくさん出て
くることと思いますが、どんな時もあきらめず全力でぶつかっていってほ
しい、そしてそれをやり遂げるまでの道のりが楽しくやりがいのあるもの
であってほしいと心から思います。 この1年間、保護者の方々にたくさんのお力添え をいただきました。また、いつも明るく、何事にも 一所懸命に取り組んでくれた3組の子どもたちにも、 感謝の気持ちでいっぱいです。 本当にありがとうございました。