平成27年3月12日 熊 本 地 方 気 象 台 気象ひとくちメモ 「阿蘇山の風向の特徴」について 昨年 11 月から阿蘇山中岳第一火口は噴火活動が活発化し現在も継続しています。 噴煙は広範囲に流れ周辺地域では降灰により住民生活に様々な影響がでています。今 回は噴煙が流れる方向の目安になる阿蘇山の風向の特徴について紹介します。 阿蘇山特別地域気象観測所は、中岳第一火口の西南西約 1 キロメートルの標高 1142.3 メートルの地点にあり無人で気象観測を行っています(図 1)。標高が高いため 風は一般の観測所(接地層内)と上空の大気(自由大気)の性質を持っています。また、 観測所の東に中岳、高岳があり東の風が吹 きにくい特徴があります。 はじめに年間を通した風向の出現率の図 (図 2 風配図という)を見てみましょう。こ の風配図から風向には概ね4つの卓越した 方向があることがわかります。一つは北か ら北北東の方向、つぎに南東の方向、そし て南南西から南西の方向、最後に西から西 北西の方向です。つぎにこれらの風向の風 がどの時期に吹くのか季節ごとの風配図 (図 3)で見てみましょう。 春(3~5月)は年間の図(図 2)と似てい 図 1 阿蘇山特別地域気象観測所の位置 (地図 国土地理院) ますが西の風の出現率が高くなっています。 夏(6~8月)は太平洋高気圧の影響を受 北 15.0 北北西 北北東 けて夏の季節風である南西の風が増えます。 北西 北東 秋(9~11 月)は、移動性高気圧の影響に 10.0 よる北から北東の風が増えてきます。 西北西 東北東 5.0 冬(12~翌2月)は、冷たい季節風が卓越 西 0.0 東 する時期です。西高東低の冬型気圧配置が 多くなり西北西を中心に風が吹きます。ま 西南西 東南東 た、春から秋にかけては南東の風が見られ 南西 南東 ます。この風は低気圧や台風が九州に接近 南南西 南南東 南 してくるときに吹く風です。 Calm : 0.3% 阿蘇山 2005年-2014年 すべて 3.0 m/s以上 図 2 阿蘇山特別地域気象観測所の風配図 出現率(%) (2005 年~2014 年の 10 年間) 春 北 北北西 15.0 北西 北北東 北東 10.0 西北西 西 北北東 15.0 北西 東北東 5.0 北東 10.0 西北西 東北東 5.0 0.0 西南西 南西 東 西 東南東 西南西 南東 南南西 東 0.0 東南東 南西 南南東 南東 南南西 南南東 南 南 Calm : 0.2% 阿蘇山 2005年-2014年 すべて すべて 秋 北 北北東 3.0 m/s以上 冬 北 北北西 25.0 北東 10.0 西北西 Calm : 0.3% 阿蘇山 2005年-2014年 3.0 m/s以上 北北西 15.0 北西 夏 北 北北西 20.0 北北東 20.0 北西 北東 15.0 東北東 5.0 10.0 西北西 東北東 5.0 西 0.0 西南西 南西 東 西 東南東 西南西 南東 南南西 東 0.0 東南東 南西 南南東 南東 南南西 南 南南東 南 Calm : 0.3% 阿蘇山 2005年-2014年 すべて 3.0 m/s以上 図3 Calm : 0.3% 阿蘇山 2005年-2014年 すべて 3.0 m/s以上 阿蘇山特別地域気象観測所の風配図(季節別) 出現率(%) (2005 年から 2014 年の 10 年間) このように風向は季節や天候によって卓越する方向が異なる特徴があります。つま り、季節によって降灰が発生し易い方向が変わることになります。噴煙は、中岳火口 から見て春は東を筆頭に北東や南西の方向へ、夏は北東方向へ、秋は南西方向へ、冬 は東南東方向へ流れることが多くなります。また、低気圧が接近する場合は北西方向 へ流れます。さらに低気圧の中心が九州の南を通るような場合には西の方向へ流れる こともあります。 阿蘇山の風向の特徴、熊本地方気象台ホームページで提供している「阿蘇山(中岳) と新燃岳上空の風向き予報」を降灰対策の計画や日々の降灰対応にご活用ください。 (阿蘇山(中岳)と新燃岳上空の風向き予報 URL=http://www.jma-net.go.jp/kumamoto/volcano/index.html) 本件に関する問い合わせ先:熊本地方気象台 (096-352-0345) ※バックナンバーは熊本地方気象台ホームページに掲載しています。 (http://www.jma-net.go.jp/kumamoto/kishoumemo/kishoumemo.htm)
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