人間がもつ技能データの計測・解析および制御技術への活用

人間がもつ技能データの計測・解析および制御技術への活用に関する調査専門委員会
設置趣意書
制御技術委員会
1.目的
本調査専門委員会では,大学,高専,企業,スポーツ現場などに所属する研究者・技術者・指導者が
集まり,産業界やスポーツ界など様々な分野における熟練者・上級者がもつ技能データを計測・解析し
定量化することで,それらの技術を他者に伝承するための教育や,技能データに基づいた新たな制御技
術の開発に応用することを主たる目的とする。
2.背景および内外機関における調査活動
産業界における実際の作業現場での各種プラント,機械システムの等の運転操作技術やスポーツの分
野における各種競技での上級者の動作技術など,様々な分野において熟練者や上級者と呼ばれる人には,
一般に情報としての知識ではなく,練習や繰り返しの経験を通して体が覚える「経験知」と呼ばれる知
識として'感'や'コツ'と呼ばれるものをそれぞれ有していると言われている。これら「経験知」の中に
は体では覚えているが,定量的に第三者に伝えるということが困難な技能も含まれており,これらのデ
ータを,定量化することが出来きれば,個人が有する技能を他者に伝承する事や,技能を利用した制御
則の設計に応用できると考えられており,延いては昨今の団塊の世代の大量退職にともなう技術現場に
おける技術・技能伝承の問題にも対応できるのではと考えられている。一方近年では,モーションキャ
プチャリング技術や筋電位計,脳波計等,様々な生体計測機器の発達により,従来に比べより安価かつ
容易に人間の動作における様々な情報を数値データとして測定することが出来るようになっており,ま
た計算機の計算容量の膨大な発達により,技能データを計測し,それらのデータを関連付けて処理する
環境が整ってきている。
そこで本研究会では,人間が長年の経験や練習で習得した’感’や’コツ’
といった特徴的な技能の有効利用をめざし,その特徴的な技能を様々な観点から技能データとして計測
する手法やそれらの評価方法,またそれらの結果に基づいた制御技術について幅広く調査し,熟練者や
上級者がもつ個々人の技能を他者に伝承するための教育方法の確立や,技能データに基づいた新たな制
御技術の開発のための調査研究を行う。
本研究会に関連する内外の研究調査活動状況としては,委員長や就任予定の委員らで構成する研究グ
ループにより,スポーツ選手の動作解析による特徴量の抽出やそれを制御則や技術伝承への応用に関す
る調査・研究を先行的に行っており,2013 年度より科研費基盤研究Cにおいて「動作解析による熟練者
のもつ暗黙知のディジタル化と解析データに基づく指導方法の確立(課題番号:25350804)」を研究題
目とした研究も行われている。また,本研究会に先立ち,2014 年度の電気学会 電子情報システム部門
大会にて,関連する分野のオーガナイズセッションを企画し,制御工学だけでなく,故障診断・スポー
ツ・福祉の分野も含めた幅広い分野に関する講演が行われた。
3.調査検討事項
本調査専門委員会では,以下の調査検討事項を主要な検討課題とする。
(1)生体計測機器を用いた人間の動作データ計測ならびにデータ解析に関する研究の最新動向の調査
モーションキャプチャリング技術や筋電位計,脳波計等,様々な生体計測機器を利用した人間の動
作解析ならびにそれらのデータを利用した技能の定量化に関する研究の最新動向を調査する。
ているかを調べる。
(2)技能データにもとづいた技術伝承のための教育方法に関する調査
(1)の調査研究結果を踏まえて,定量化されたデータにもとづいた,各種装置の操作やスポーツ
動作時の技術伝承のための教育方法に関する調査を行う。
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(3)技能データに基づいた制御系設計に関する調査
(1)の調査研究結果を踏まえて,定量化されたデータにもとづいた各種制御系設計に関する研究の
最新動向の調査を行う。具体的にどのようなデータが制御に応用可能かを検証し,検証結果に基づい
た制御則の設計を目指す。
(4)今後の展望と諸課題の総括
上述の(1)~(2)を受けて,人間の技能に基づいた技術伝承のための教育方法の確立ならびに
制御系設計への応用技術に関する今後の展望と諸課題を総括する。
4.予想される効果
人間がもつ技能データの計測・解析および制御技術への活用に関する調査研究をおこない,関連研究
者の発表の機会を部門発表会の企画セッションなどで用意する。調査結果や研究発表の内容を,技術報
告書または技術報告単行本の形で作成・公表することにより,今後の当該研究分野の発展,ならびに産
業界に寄与することを目指す。
5.調査期間(予定)
平成 26 年(2014 年)10 月~平成 28 年(2016 年)10 月(2 年間)
6.活動予定
委員会
3 回程度/年
研究会
3 回程度/年
部門大会での企画セッション 1 回/年
7.報告形態
部門大会での企画セッションをもって,最終報告とする。
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