集合組織金属テープを用いた 低コスト高温超伝導線材 京都大学 大学院エネルギー科学研究科 教授 土井 俊哉 兵庫県立大学 大学院工学研究科 助教 岡井 大祐 電力中央研究所 上席研究員 一瀬 中 1 本日、紹介予定の新技術 (1) 圧延再結晶集合組織金属テープを基材に用いた 低コスト高温超伝導線材 保護層 (エナメル被覆等) 保護層 YBa2Cu3O7 導電性中間層 配向Cu テープ YBa2Cu3O7 或いは Fe 又は ステンレス 中間層 珪素鋼板 Cu(後付け) 鉄の{100}面を圧延面に 平行に揃えた鉄板 0.287 nm (2) {100}<001>集合組織Feの製造方法 圧延方向 2 現状、市販されている高温超伝導線材の問題点 価格が非常に高いため、最終製品価格が高額になる。 市場形成には,2桁の低コスト化が必要と考えられている ・Agが必須 ・ハステロイを使用 Cu Ag(貴金属) 高温超伝導体 RBa2Cu3O7 の単結晶的薄膜 CeO2 CeO2(レアアース) MgO MgO 単結晶的なMgO MgO 単結晶的な Y22O33(レアアース) (希土類) Al2O3 レアメタル ハステロイ Ni基耐熱合金 テープ IBAD線材 ・Agが必須 ・Ni-Wを使用 Cu Ag(貴金属) 高温超伝導体 RBa2Cu3O7 の単結晶的薄膜 2 MgO CeOCeO (レアアース) 2 MgO 単結晶的な YSZ (レアアース) Y32O3 レアメタル Ni-W配向 Ni基耐熱合金 テープ RABiTS線材 3 YBCO高温超伝導線材の断面構造 100 mm YBCO高温超伝導線材の材料費の大部分は,金属部分 材料費の高い順に(単価×使用量) ① ハステロイテープ or Ni-Wテープ ②Ag(スパッタ成膜層) ③Cu(安定化層) Cu ハステロイテープ IBAD線材の断面構造 Ag (5mm) GdBa2Cu3O7 CeO2 エピ-MgO IBAD-MgO Y2O3 Al2O3 Cu Ag (5mm) YBa2Cu3O7 CeO2 Ni-Wテープ RABiTS線材の断面構造 YSZ Y2O3 4 新しく提案する高温超伝導線材の断面構造 保護層 新構造① 配向 Cuテープ YBa2Cu3O7 導電性 中間層 新構造② 配向 Feテープ (珪素鋼板) ステンレステープ Cuテープ Ag不使用 5 配向Cuテープに導電性酸化物中間層を形成することで 安定化層作製を不要にした低コストRE系超伝導線材 保護層 配向 Cuテープ ステンレス テープ 導電性中間層 (NbドープSrTiO3, その他) (エナメル被覆等) YBa2Cu3O7 配向Cu テープ ステンレス テープ 6 {100}<001>Cu/SUS316貼合せテープ上への 導電性中間層の作製 {100}<001>Cu/SUS316 貼合せテープ 表面を研磨 第1中間層 Ni層をめっき 第2中間層 Sr(Ti0.95Nb0.05)3を PLD法で形成 Ni 配向Cu テープ ステンレス テープ 配向Cu テープ ステンレス テープ Ni 配向Cu テープ ステンレス テープ 7 Cu/SUS316テープ上にSr(Ti0.95Nb0.05)O3を中間層として 介して作製したYBa2Cu3O7薄膜の配向性 YBa2Cu3O7 Sr(Ti0.95Nb0.05)3 Ni 配向Cu テープ ステンレス テープ Cu/SUS316テープ上に 導電性中間層としてSr(Ti0.95Nb0.05)O3を 介して作製したYBa2Cu3O7薄膜は 良好な2軸配向性を有している 20 40 120° 90° ⊿φ 60° 150° 60 2θ (degree) 0°RD 210° 80 = 5.7゜ 30° 180° YBCO(009) YBCO(007) Cu (200) + Ni (200) YBCO(005) Nb-SrTiO3(002) YBCO(006) YBCO(004) YBCO(003) intensity (a.u.) TD 330° 240° 270° 300° (102)YBCO pole figure 8 77K、自己磁場中で測定した I – V 曲線 {100}<001>集合組織Cu/SUS316貼合せテープ上(短尺)に 導電性中間層を介して作製したYBCO薄膜の臨界電流密度 Jc=1.2×106 A/cm2 を得た。 at 77 K in S.F. CeO2 YBa2Cu3O7 300 ・Agが必須 ・Ni-Wを使用 Cu Ag(貴金属) 高温超伝導体 RBa2Cu3O7 の単結晶的薄膜 2 MgO CeOCeO (レアアース) 2 単結晶的な YSZ MgO (レアアース) Y32O3 レアメタル Ni-W配向 Ni基耐熱合金 テープ ・Ag不使用 ・W不使用 ・Ni使用量1/100 YBa2Cu3O7 Sr(Ti0.95Nb0.05)3 Ni 配向Cu テープ ステンレス テープ V (μV) Ag, Ni, Wを多量に使用する 高価な線材と同等の性能を 安価な線材で達成 YSZ Ni 配向Cu テープ ステンレス テープ 200 100 YBa2Cu3O7 Sr(Ti0.95Nb0.05)3 Ni 配向Cu テープ ステンレス テープ 0 0 I (A) 10 9 配向Cuテープに導電性酸化物中間層を形成することで 安定化層作製を不要にした低コストRE系超伝導線材 保護層 配向 Cuテープ ステンレス テープ 導電性中間層 (NbドープSrTiO3, その他) (エナメル被覆等) YBa2Cu3O7 配向Cu テープ ステンレス テープ 配向Cuテープ+高強度金属テープ+導電性中間層 の組合せを使った新しい構造を採用することにより、 高温超伝導線材の大幅な低価格化が実現できる。 ここで、純Cu以外の金属は電気抵抗が十分に低くはないので、安 定化層とテンプレート層を兼ねることができる金属は 純Cuのみである。 10 方向性電磁鋼板を基材とした低コストRE系超伝導線材 配向 Feテープ (珪素鋼板) Cuテープ 保護層 最終目標は レアアースフリー導電性中間層 現状は 絶縁性中間層 YBa2Cu3O7 珪素鋼板 Cu(後付け) 11 珪素鋼板上への中間層作製 高い配向度が得られている{110}<001>集合組織珪素鋼テープ上に パルスレーザー蒸着法を用いて中間層候補物質の薄膜を作製 紫外線レーザー光 ガラス窓 酸素管 ロータリーポンプ バルブ 基板ホルダー ヒーター 冷却水 基板 熱電対 バルブ ターゲット 空気弁 コンダクタンスバルブ メインバルブ テープ表面の鉄原子配列 ターボ分子ポンプ 12 YBCO / CeO2 / CSZ /珪素鋼板の2軸配向性 90° 120° 60° 40° 60° 150° 30° 20° 0° 180° 0 9575 19150 28725 38300 47875 57450 67025 76600 YBa2Cu3O7 CeO2 0° 20° 40° 210° CSZ 330° 60° 240° 300° 270° Feの{100}極点図 90° 120° 60° 40° YBCO Δ φ =5~6° 60° 150° 30° 20° 0° 180° 0° 20° 40° 60° 210° 330° 240° 300° 0 7425 14850 22275 29700 37125 44550 51975 59400 Fe CeO2 非常に安価な珪素鋼板上に 高い2軸配向性を有する YBa2Cu3O7層が作製できる ことを実証できた。 270° YBCOの(103)極点図 13 直流四端子法による Jc の測定結果 Ic ~ 0.52A Jc ~ 2.0×104 A/cm2 YBa2Cu3O7 CeO2 CSZ 20 V / μV {110}<001> 鉄テープ 10 Jc向上の為の検討課題 77 K 自己磁場中 成膜条件の最適化 平滑性向上 Fe拡散抑制 O拡散抑制 0 0 0.2 0.4 I/A 0.6 0.8 14 方向性電磁鋼板を基材とした低コストRE系超伝導線材 配向 Feテープ (珪素鋼板) 最終目標は レアアースフリー導電性中間層 現状は 絶縁性中間層 Cuテープ 保護層 YBa2Cu3O7 珪素鋼板 Cu(後付け) ①低価格で市販されている珪素鋼板上に2軸配向したYBa2Cu3O7層 を形成できることを実証した。 ②この結果は、高価なNi基合金テープを基材に用いることなく 安価な基材で高温超伝導線材が作製できることを意味する。 ③珪素鋼板を基材に使用した更なる低コスト高温超伝導線材 の作製には、珪素鋼板上で使用するのに適した導電性中間層 の開発が課題として残っている。 15 配向鉄シートの特徴と製造技術 ・結晶配向した多結晶鉄シート(純鉄)は,付加価値が高い機能性材料である. ・結晶配向鉄シートの製造の難しさは, {100}配向 > {110}配向 >{111}配向 の順である. ・{100}配向鉄シートの製造方法として,交叉圧延法,特殊な熱処理法等が検討 されているが, {100}配向鉄シートの実用化に至っていない. 高付加価値の配向鉄シート 鉄板 (bcc) {100}面 {100}<001> {110}面 {110}<001> {111}面 γ -繊維組織 ・本技術(一般的な圧延と熱処理)により,{100}配向鉄シート の作製を可能にした. 16 {100}配向鉄シートの用途および作製技術 配向鉄シートの用途 •{100}配向鉄シートは,立方晶型疑似単結晶基板材料,軟磁性材料 として応用が期待できる. 結晶配向 {100}<001> 機能性材料 立方晶型疑似単結晶材料 軟磁性材料 {110}<001> 軟磁性材料 γ -繊維組織 塑性加工材料 用途 エピタキシャル膜用大面積鉄基板 Goss方位珪素鋼板(変圧器の鉄 心材料) 自動車ボディーパネル用鋼板 本技術の現状と課題 ・種々の鉄合金において,{100}配向シートの製造を行うには, 製造条件の調整が必要な場合がある. 17 新技術の特徴・従来技術との比較 (高温超伝導線材に関して) • 従来技術において,高材料コストの主因で あった銀とNi基特殊合金を,汎用金属である 銅と鉄に置き換えることに成功した. • 材料コストを2桁程度低減するための新構造 においても,従来技術と同等の性能が得られ ることを確認済み. 18 想定される用途 • 高温超伝導線材は,基本的に全ての電力機 器に使用することが可能で,その機器の効率 を向上させる.比較的近い時期の用途として は,医療用MRIとリニア新幹線車両が有望と 考えている. • {100}<001>集合組織Feテープについては, 結晶配向を必要とする各種の機能性材料 向け基板としての用途も期待できる. 19 実用化に向けた課題 • 高温超伝導線材の開発については,実験室 レベルの技術開発はほぼ完了.今後は既存 の長尺線材製造技術の改良による試作,およ び長尺線材特有の問題の洗い出しとその解 決策の開発が必要であると考えている. • {100}<001>集合組織Feテープについては, 結晶配向度の向上を更に進める必要がある. 20 企業への期待 • 高温超伝導線材の開発については,長尺の 電線形状の線材を製造可能な設備および技 術を有する企業との共同開発を希望. • {100}<001>集合組織Feテープについては, 炭素鋼,合金鋼の製造,加工を実施している 企業,あるいは金属加工設備および技術を有 している企業との共同開発を希望. 21 産学連携の経歴 1987年度-1998年度 ㈱日立製作所日立研究所勤務 1999年度-2014年度 日立,東芝,中部電力, 田中貴金属工業,㈱九州日昌 などと共同研究実施 2011年度-2014年度 JST-ALCA事業に採択 22 本技術に関する知的財産権 発明の名称 出願番号 出願人 発明者 :高温超伝導線材の製造方法および高温超伝導線材 :特願2013-195238 :京都大学 :土井俊哉 お問い合わせ先 関西ティー・エル・オー株式会社 担当:藤ヶ崎諒平 兵庫県立大学 知的財産本部 担当:久保 幸雄 TEL: 075-753-9150 FAX: 075-753-9169 e-mail : [email protected] TEL: 079-283-4560 FAX: 079-283-4561 e-mail : [email protected] 23
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