【2015視察予定先と視察テーマ(同行コーディネイター紹介)】[PDF]

<評価され続ける街並みのデザインとは?>
シーサイド
1980年、フロリダ州の北西部、パン・ハンドルと呼ばれるメキシコ湾を望む風光明媚
な地に開発されたシーサイドは、
「歩行者中心の街づくり」
「オープン・スペースの創出によ
るコミュニケーション機会の提供」
「省エネ、省資源、持続可能性の追求」などのニュー・
アーバニズムの基本理念を基に、ピクチャレスクなランド・スケープを意識してデザインさ
れた伝統的近隣住区開発。
これは自動車に過度に依存しスプロール化した郊外型都市に代表されるアーバニズム理
念により消失した人間的な都市要素を再構築することで「古き良き時代の米国の街並みを創
出」し、住民たちが相互に往来しあえる範囲に日常生活圏をもち、住民皆がその街への帰属
意識を強く持つことを目的としている。
東西800メートル、南北400メートル、32ヘクタールの広さにチャールストンやキ
ー・ウェストなどの古き良き時代の安全でウォーカブルな街を規範として開発され、350
の戸建て、200のアパートメント、ハネムーン・コテージと呼ばれる200室のプチ・ホ
テル群、商業施設、スポーツ施設、教会、多目的広場などから構成される。
基本的に植栽は開発以前から自生する植物のみを使用(芝生はコモン・スペースのみ)、
建築物の下を自然風が通り抜けることができる高床式の採用、合成建材ではなく木材など時
の経過が更なる輝きを生み出すような建築資材の使用などのサステイナビリティーも重視
している。
厳格なデザイン・コードにより統一された美しい街並みに、徒歩圏内に住民たちが交流し
あうスペース(広場)とフット・パスを配し、適度な密度で住宅などの建築物を計画的に配
置したシーサイドは、販売開始後33年を経過した今なお色あせることなく輝き続けている。
シーサイドの街並み
<DPZがデザインしたピクチャリスクでチャーミングな街並みを見る>
ローズマリー・ビーチ
シーサイドの東10キロのメキシコ湾沿いに1996年より開発されたリゾート・ビレッ
ジ・スタイルの伝統的近隣住区開発事例。
開発面積42ヘクタールに戸建住宅、リブ/ワーク、1階に店舗が入る3~4階建て集合
住宅の合計480戸に加え、商業施設、スポーツ施設、教会、集会場などのコモン・スペ
ース、メキシコ湾へと続くボード・ウォークなどで構成されている。
住戸サイズは30~50坪程度の米国としては小規模な住宅が中心で、こちらもシーサイ
ド同様高密度に建築されている。
またシーサイドとの比較という点では、パステル・カラーの外観のシーサイドに対し、こ
ちらではスタッコ、ウッドの仕上げ、ガレージは基本的にバック・アレーからという点が大
きく異なっている。
「このプロジェクトの規範にした街並みは、フロリダ州の古都セント・オーガスティン」
とデザイナーのE.P.ザイバークは語っている。
ローズマリー・ビーチの街並み
アリス・ビーチ
ローズマリー・ビーチにほぼ隣接する64ヘクタールの土地にDPZによりデザインされ
開発された自然との調和をテーマにしたリゾート・ビレッジ。
ここで採り入れられた建築様式は、バミューダ諸島周辺で多く見られる漆喰を中心とした
白い塗料を使用した外壁が特徴のバミューダ・スタイル。グアテマラ南部の街アンティグ
アに端を発するといわれるパティオ・ハウス・スタイルとカリフォルニアのコートヤード
建築の融合によるピクチャリスクなコミュニティーに仕上がっている。
アリス・ビーチの街並み
<米国における住宅地開発を、時系列で考察する>
今回訪れるフロリダ、ルイジアナ、テキサスの各州では、さまざまな時代の住宅開発事例
を見ることができる。
フロリダ州最西部の街ペンサコーラは、ニュー・アーバニスト達が規範とした“古き良き
時代の米国の街並み”が残り、ルイジアナ州ニュー・オーリンズではフランスおよびスペイ
ンが統治した名残である“アイアン・レース(鋳鉄製レース飾り)”を巡らしたバルコニー
が特徴のギャラリー付き都市型住宅(リブ/ワーク・スタイルの原型)や、ガーデン・ディ
ストリクト地区においてはグリーク・リバイバル様式のなどの邸宅群を見ることができる。
一方テキサス州ダラスとその周辺地域では、カリフォルニアのアーバインとともにエッ
ジ・シティーの代表的事例であるラス・コリーナスに加え、オフィスビルの住宅へのコンバ
ージョンを含めた都市再開発事例として有名な“サンダンス・スクエア”
、大和ハウス工業
がダラス郊外で現在開発中の湖畔に建つアッパー・ミドル向けの最新賃貸住宅地“ウォータ
ーズ・エッジ”などを同社の協力で視察する。
ペンサコーラの歴史的街並み保存地区
ニュー・オーリンズ中心部の街並み
ニュー・オーリンズ、ガーデン・ディストリクトの街並み
ラス・コリーナス
<同行コーディネイター>
佐々木宏幸氏
明治大学理工学部建築学科 准教授
合同会社FTS Urban Design社 代表
博士(芸術工学) 一級建築士 宅地建物取引主任者 米国公認都市計画家(AICP)
横浜市出身 東京大学工学部建築学科卒業
カリフォルニア大学バークレー校大学院都市地域計画学科修士課程修了
(株)フジタ勤務を経て、ピーター・カルソープ事務所へ駐在し、数々のニュー・
アーバニズム思想によるプロジェクトに携わったのち、在サン・フランシスコのア
-バン・デザイン会社 Freedman Tung and Bottomley(2007 年に Freedman Tung + Sasaki
に社名変更)入社
2005 年 7 月より同社の共同代表を務める
2008 年 8 月、FTS Urban Design 日本事務所設立、主宰
2010 年度より本財団主催海外視察団においてコーディネイターを担当し、その深い造詣
と行動力で団員はじめ関係者の高い評価を得る
アメリカにおいて「住民参加型まちづくり」
「ダウンタウン活性化」などを専門に
手がけたのち、現在は「戦略的アーバン・デザインによる都市の再構築」を中心に
活動中