Page 1 Page 2 「おにたのぼうし」 研究 国語科教育学研究室 七四七二

Title
「おにたのぼうし」研究(二〇一〇年度卒業論文要旨集)
Author(s)
千葉, 公美子
Citation
札幌国語研究, 16: 26-26
Issue Date
2011
URL
http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/2560
Rights
Hokkaido University of Education
﹁おにたのぼうし﹂研究
国語科教育学研究室 七四七二 千葉公美子
本研究の狙いは、﹁おにたのほうし﹂ の主題を先行研究から
﹁一枚の切符﹂論
近代文学研究室 五一五〇 村上 由香
本研究は、江戸川乱歩の﹁一枚の切符﹂を対象に、他の乱歩
の推理小説に関して薄かれた文章や、r探偵小説四〇年﹄など
作品との共通点や、受け継がれた要素について調査す.る。当時
の乱歩の手記を参考にしながら調査を行い、﹁一枚の切符﹂が
整理し明らかにしたうえで、その主題を生かした指導方法を考
しながら﹁おにたのぼうし﹂がなぜ、第三学年の国語教科書に
たって、重要な位置にある作品であることを明らかにすること
乱歩とその作品の研究、とりわけ初期作品の研究を行うに当
察することをねらいとした。そこで、第一に、先行研究を整理
掲載され続けているのかを考察してゆく。第二に、各教科書会
その結果、﹁一枚の切符﹂ に織り込まれている、物的証拠の
を目的とする。
社や絵本を比較しながら、本文や挿絵が与える影響について明
らかにする。第三に、以上のことを踏まえ、﹁おにたのぼうし﹂
ること、結末間際で大きく物語を覆すことなどが、﹁D坂の殺
分析の結果、﹁おにたのぼうし﹂ の主題は人間の固定観念や
の指導方法を提案する。
人事件﹂や﹁屋根裏の散歩者﹂、﹁人間椅子﹂等を始めとする乱
解釈の幅についての考え方や、有名なトリックを裏返して用い
にたの力強さではないかと結論づけた。逆境を乗り越えようと
偏見の不合理さがありながらも、それを乗り越えようとするお
なトリックを裏返して用いる手や、結末間際で大きく物語を押
歩の他作品に、取り入れられていることがわかった。特に有名
す手などが用いられていることが多く、﹁前人未踏﹂ のものを
する力強さを教育する為に、﹁おにたのぼうし﹂は掲載され続
て読み手側の視点が移り、﹁おにたのぼうし﹂ のクライマック
の切符﹂は先行研究や評が殆ど無く、余り注目されていない作
書こうとする乱歩の創作姿勢を反映していると言える。﹁一枚
けているのではないか。また、挿絵については、その効果によっ
スの捉え方に影響を及ぼすと考えられる。さらに、物語文教材
品だが、多作品に与えた影響は無視できず、乱歩研究を行うに
と、読み物の発展教材との扱いの違いについて、挿絵の枚数や、
使用場面を比較した結果、物語文教材としての扱いの方が、背
当たって﹁一枚の切符﹂の詳細な研究が必ず必要になるだろう。
かった。これらを踏まえて、登場人物の視点や、考察した主題
景描写が少なく、おにたの鬼の描写についても少ないことが分
を意識した指導法を提案した。
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