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新商品・ソリューション・サービス解説
業務を革新するドキュメントソリューション
とそれを支える技術
Technology for the Document Solution that Innovates
Work Processes
要
旨
モノ作りを行う企業において、その過程を証明する
【キーワード】
文書情報マネジメント、ドキュメントソリュー
文書情報マネジメントは重要である。しかし、単純に
ション、ダイナミック・ケース・マネジメント、
規則化して証跡の保存・保管を行うのは担当者の負荷
文書管理システム、CSCW、共同作業支援、
が増えるだけになり継続しない。そこで、文書情報マ
SNS 、 ArcSuite
Engineering 、 Apeos
ネジメントにより業務の効率化を図り、結果として保
®
存・保管ができる必要があり、保存・保管の技術に加
PEMaster
EvidenceManager
、 Apeos
えて、業務の効率化の技術を開発した。具体的には、
PEMaster EvidenceTracker
業務の進捗把握、人や役割に合わせたフォルダー構造
のカスタマイズ参照などがある。さらに、文書には組
織の知恵が含まれており、文書情報マネジメントによ
り、組織の知恵を活用できる技術も開発した。ドキュ
メントソリューションのコンセプトは「保存・保管」
、
「業務での活用」、「知識化」と進化する文書情報マネ
ジメントであり、この考えに基づいたシステム構築に
より課題を解決した事例も含めて、技術の紹介を行う。
Abstract
【Keywords】
document information management, document
solution, dynamic case management, document
management
system,
CSCW
(Computer-Supported Cooperative Work ) ,
Cooperative
work
support,
SNS
(Social
Networking Service), ArcSuite Engineering,
®
Apeos PEMaster EvidenceManager , Apeos
PEMaster EvidenceTracker.
執筆者
桂林 浩(Hiroshi Katsurabayashi)*1
広森 順子(Jyunko Hiromorii)*2
*1
*2
ソリューション・サービス開発本部 ソリューション開発部
( Solutions
Development,
Solution
Service
Development Group)
ソリューション・サービス企画管理部
(Solution Service Planning and Administration)
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
It is important for manufacturers to manage
document information as records of their work
processes. Simply making rules for storing documents
only increases the burden of people dealing with
them, however, without developing a continuous
practice. We therefore developed technology that
enables a more efficient workflow as well as storing
documents, so that people can keep and store
documents as part of the work process improved by
using a document information management system.
For instance, this system provides a way to visualize
the work progress and customize the users' own folder
structures by considering their positions and roles. We
also devised a management system to utilize the
knowledge accumulated by each organization and
recorded in documents. The concept of our document
solution consists of three steps: storing documents,
utilizing them for work, and maintaining them as
knowledge. This paper presents the technology with
actual problems that we solved by using systems
based on our document solution concept.
1
新商品・ソリューション・サービス解説
業務を革新するドキュメントソリューションとそれを支える技術
当社の実例では、作成された紙文書を積み上げ
1. はじめに
ると、富士山の5倍もの文書を1年間で出力して
最近、スキャン文書の国税での取り扱いが規
いた。また、膨大な文書の作成や探す手間にか
制緩和されるなど、電子文書の取り扱いを認め
かる人件費は、総人件費の約30%である。この
る方向に世の中は変化している。この変化は、
ようにモノ作りをする企業内で作成される文書
日本は遅れており、すでに米国や韓国では税務
情報量もそれにかかわる人件費も膨大である。
関連の書類の電子保存を広く認めている。また、
さらに、モノ作りの過程の説明責任や権利の主
1)
米国ではディスカバリー制度 により、税務関
張などを考えても、文書情報はモノ作りの活動
係以外でも企業内での活動の証拠としての文書
の基盤となっており、重要な役割を担っている。
情報マネジメントの重要性は認識されている。日
本では、2005年4月に施行されたe-文書法2)や、
電子帳簿保存法3)などがあるが、文書情報マネ
ジメントに関する意識はまだ十分とはいえない。
2. 文書情報マネジメントの進化
文書情報マネジメントの進化を、Step1:保
存・保管、Step2:業務での活用、Step3:知
1.1
非定型業務
識化、と考えている(図2)。
我々が普段行っているオフィスワークは、
20%が定型業務であり80%が非定型業務とい
われている。現在システム化により効率化され
2.1
Step1:保存・保管
最初の段階は、企業活動で重要な文書情報の
ているのは、この20%の定型業務が中心であり、
「保存・保管」である。日本では、まだ文書情
その裏では、手作業により注文書、納品書、契
報マネジメントに対する意識が低いが、電子帳
約書や仕様書などの文書が行きかい、人が時間
簿保存法やe-文書法、ディスカバリー制度など、
をかけて業務をこなしている(図1)
。これによ
企業として必要な文書、電子文書をしっかりマ
り、トータルで見ると効率はよくなっていない。
ネジメントしていくことが国際的には求められ
つまり、基幹システムで処理できる業務のま
ている。つまり、文書情報の電子化・保存・保
わりには、基幹システムでは対応できない文書
管と、各種規制に対応した管理が必要である。
情報と人手による非効率な業務と雑然と導入さ
れたIT機器が存在しており、見えにくい非定型
の領域の問題も共に解決しない限り本当の意味
での生産性向上は実現できない。
2.2
Step2:業務での活用
しかし、いつ使われるかわからない証拠保存
のためだけに、文書情報を管理するのは、作業
者にとってメリットのない負荷作業となり、忙
1.2
企業内の文書情報量
しくなると遅滞する。また、長続きせず、証跡
企業内における文書情報の作成量と、それに
を記録するという本来の目的を達成できなくな
かかわる工数を調べた。企業によって異なるが、
る。これを回避して、
「保存・保管」の仕組みを
高コストな基幹システム
見える
知識化
(定型業務)
業務での
活用
保存・保管
D
D
H
C
H
H
C
z 文書は業務での情報
_ P
_ P
D
D
H
C _ P
C_ P
見えにくい
D
D
(非定型業務)
D
H
H
H
C_ P
C_ P
z 文書情報の電子化・
D
H
C_ P
D
D
H
C
H
C
_ P
_ P
保存・保管
z 各種規制に対応して
管理
基幹システムから分断された
煩雑なドキュメントフロー
図1
2
の伝達/状況の把握
/次工程のトリガー
C_ P
雑然と導入されたIT機器
オフィスワークの状況
Current situation of office work
図2
z 文書情報の保存・保
管技術のうえに、業
務フローを構築する
業務ソリューション
を展開
z 知識を文書情報とし
て、経緯やノウハウ
の表出化/伝播/保
存・保管を支援する
ソリューションを展
開
文書情報マネジメントの進化
Three steps of document information management
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
新商品・ソリューション・サービス解説
業務を革新するドキュメントソリューションとそれを支える技術
活かすためには、文書情報の「業務での活用」
が必要である。もともと、文書情報は業務で活
④ ドキュメント・ライフサイクル・マネジメン
ト(DLM)
用するために作成されるので、一見、当たり前
<業務での活用の機能群>
なことであるが、その文書の存在の有無によっ
⑤ 分類ビュー
て業務の進捗状況を確認するなど、本来、文書
⑥ 進捗(文書の整備)の可視化とダイナミック・
情報が持つ役割以上の働きをさせることが必要
ケース・マネジメント(DCM)
である。つまり、Step2としては、文書による
⑦ タイムライン
業務での情報の伝達、状況の把握、次工程への
<知識化の機能群>
トリガーとなる業務での活用が求められている。
⑧ 過程情報の可視化、共有
そのためには、文書情報の保存・保管技術のう
⑨ 場の盛り上がり情報、参加者の気配の見える化
えに、業務フローを支援する技術を構築し業務
⑩ 暗黙知の発見
ソリューションを展開する必要がある。これに
本稿では、Step1について3章で、Step2に
より、実際に業務を行う中で、気が付いたら自
ついては4章で、Step3については5章で事例を
然に文書情報がマネジメントされている状態を
交えて詳細に説明する。
作り出すことが可能となる。
2.3
Step3:知識化
さらに、業務中で使われた文書情報は、重要
3. 保存・保管(Step1)
3.1
保存・保管の主要機能
なノウハウや知識が含まれている。たとえば、
重要な文書情報が管理できているという状態に
要求仕様書や、機能仕様書、方式検討報告書な
するためには、図3の4つの主要機能が必要である。
ど、モノを作っていく過程で整理された文書や、
z 機能①「一元管理、情報共有」
その文書を作成する過程での打ち合わせ情報な
関係者で情報を共有し、かつ情報が漏れない
どである。しかし、現状では、これらの知識や
ように一元管理し、文書を参照することや印
ノウハウは文書として保存されていても、探す
刷できる人を制限する管理機能である。また、
ことができず、あるいは探せても断片だけでは
その文書を短時間で探し出せる検索機能が重
理解できず有効に再活用できない場合が多い。
要である。さらに、最新の文書情報を管理し、
また、電子メールなどの打ち合わせ情報にも重
間違った古い文書情報で契約したり、モノを
要なノウハウが入っている。よって、電子メー
作ったりすることを防止する版管理機能が必
ルなども含めて広い意味での文書情報を「知識
要である。
化」して、属人化させず組織の知識としてマネ
z 機能②「スキャン(登録)
」
ジメントする必要がある。そして、知識を文書
最近、商取引に関する情報を企業間で電子的
情報として、経緯やノウハウの表出化、伝播、
に交換する電子データ交換が発展しつつある。
保存・保管を支援するソリューションを行う必
しかし、まだ実際の業務の中では紙文書が多
要がある。
く使われており、文書情報を管理するための
基本的な機能として、紙文書をスキャンした
2.4
文書情報マネジメント機能群
文書情報の取り込みが必要である。このとき、
文書情報マネジメントの進化に合わせた、
「保
単純に取り込むだけでなく、基幹システムと
存・保管」、「業務での活用」、「知識化」での文
の連携を取りながら文書情報管理システムに
書情報管理システムに求められる機能を以下に
取り込むことによって、基幹システム(定型
整理する。
業務支援)と文書情報管理システム(非定型
<保存・保管の機能群>
業務支援)の連携を可能とする。
① 一元管理、情報共有
z 機能③「原本性保証、エビデンス」
② スキャン(登録)
e-文書法や電子帳簿保存法などでは、業務の
③ 原本性保証、エビデンス
実行結果のエビデンスとして、文書情報を保
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3
新商品・ソリューション・サービス解説
業務を革新するドキュメントソリューションとそれを支える技術
保存・保管の
4つの主要機能
1 文書情報の一元管理/情報共有
①
3
③ 原本性保証
②
2 スキャン(登録)
4
④ドキュメント・ライフサイクル・マネジメント(DLM)
業務システム
業務システム
業務システム
DB
業務システム
属性情報を取得
格納場所登録
2
登録ツール
スキャン(登録)
1 文書情報の一元管理/情報共有
z 登録時に、基幹シス
z アクセス権制御(印刷、参照、書込
テムのデータと関連 紙のドキュメント
文書とのひもづけを (ファクスを含む)
自動で行う
など)
登録
z 版管理(版、訂)
z 検索(属性、全文)など
4
3
原本性保証
文書情報
管理システム
z 署名(誰が)、タイ
ムスタンプ(いつ) 電子ドキュメント
DLM
z 文書管理ルールの自動化による
管理の効率化
z 文書の自動公開、自動削除/移動
を保証
z 期限到来によるメール自動通知
図3
など
保存・保管の主要機能
Main features for keeping and storing document information
管し、改ざんが行われていないことや存在時
では薬事規制対応の事例を説明する。そのほか
刻を証明することが求められている。よって、
にも、販売部門における契約書管理や、建設・工
誰が、いつ保存したかを明確にする電子署名
事現場における施工図書管理などの事例もある。
やタイムスタンプの付与が必要である。また、
エビデンスを電子的に保存することで、コス
[事例Ⅰ:薬事規制等対応ソリューション(医薬
トの削減も可能である。さらに、文書情報マ
品、医療機器、化粧品業界など)]
ネジメントシステムに格納された署名付き文
【対象業務】
書の署名延長や、署名の検証作業を1文書ご
とに行うのは現実的ではない。そのために、
署名の一括検証機能や自動更新機能などが必
要である。
z 機能④「ドキュメント・ライフサイクル・マ
ネジメント(DLM)
」
z 薬事規制対応文書、記録管理業務
【課題】
z 標準書・手順書の配布や差し替え、版管理
の徹底によるミスの撲滅
z 記録の正確な保管、原本性保証を含めた、
第3者(当局)への適切な説明
さらに、文書情報マネジメントで重要なのは、
z 文書や記録、ワークフローの電子化を進め
文書情報を文書管理システムに登録したあと
たいが、規制対応の進め方がわからない
である。数年後に廃棄したり、公開時期が来
たときに自動的に公開したり非公開にしたり
と、文書は登録したら終わりではなく、登録
【取り組み】
z 規制に適切に対応し、文書や記録、ワークフ
ローの電子化を実現(文書管理ルール変更)
後の状態やアクセス権などを管理していく必
z 文書情報管理システムの活用により、証跡
要がある。これには多くの手間がかかり、専
としての文書管理(改ざん防止)の徹底
門家が法律や会社の規定などをよく理解して
【効果】
管理していく必要があるが、一般の人でも間違
z 業務品質向上と業務効率化の両立
いなく取り扱いができる仕組みが必要である。
z 第3者への説明責任に対応し、品質リスク
を低減
3.2
保存・保管を中心とした事例
これらの文書情報の「保存・保管」要件を満
z 米国FDAをはじめ、輸出先各国の審査に対
応しグローバル進出を促進
たし、業務効率化を実現した事例として、ここ
4
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新商品・ソリューション・サービス解説
業務を革新するドキュメントソリューションとそれを支える技術
GxP文書作成・承認
特定認証局・業者
CAPAシステム連携
GxP文書検索・閲覧
外部企業との情報授受
文書生成ソフトウェア
D
H
C
CAPA
システム
外部認証局
_ P
D
H
C
_ P
D
H
C
_ P
Word
Word®
D
H
C
_ P
電子ペン
手書き
各種記録帳票
文書・記録と
検索キー(属性)の登録
各種手順書
(SOP)
検索キー
(属性)
電子署名と
印 スタンプ付与
治験情報
報告書
D
各種文書
検索・参照
D
電子承認
システム
電子化
Evidence Manager
Work Flow
H
C
_ P
記録文書
管理システム
H
C
_ P
共同研究情報
臨床研究情報
改訂通知
操作ログ
認証ログ
保存
Working Folder
Evidence Manager
Document Space
監査証跡
参照
手書き結果の 手書き結果の
イメージ変換 テキスト抽出
スキャン・
ソリューション
入力数値
データの展開
Evidence Entry
紙帳票スキャン
報告書
電子化
指示書
出力
AI
UEO
13
あい
うえお
123
生産管理
システム
12 3
自動翻訳/差分抽出
図4
生産管理システム連携
外部監査/内部監査対応
薬事規制等対応システムの構成図
Structural diagram of the processes for keeping up
with pharmaceutical regulations
医薬品・医療機器・化粧品業界では、グロー
バル競争に打ち勝つために、商品開発リードタ
4. 業務での活用(Step2)
4.1
業務での活用のための主要機能
イムの短縮やコスト削減に取り組んでいる。そ
文書情報の「業務での活用」を考える前提と
の中で、文書情報の電子化(機能①、②)によ
して、業務の主要な工程間で発生する文書に着
る業務効率化やスピードアップを進めなければ
目する。たとえば、発注業務では発注書、企画・
ならない。しかし一方で、薬事法などの規制要
設計業務では要求仕様書や要件定義書などの文
件に対応する必要がある。たとえば、ログイン
書が発生している。この考えに基づき、図1の
後、承認のときに再認証が必要である、また、
人手と文書で対応している非定型業務領域にお
誰がログインしているかを明確にするために、
いて、人の役割や立場に合わせた表示や、文書
画面上にログインしている人名を表示しないと
情報を活用した業務の進捗状況の把握を可能と
いけないなどの特別な要件もある。さらに、文
する。
書が登録された日時や、登録した人を明確にす
z 機能⑤「分類ビュー」
ることや、改ざんされていないことを証明(機
文書情報を活用する人の役割や立場によって、
能③)しなければならない。
文書情報の見え方や管理の仕方が異なる。通
これらを守るために、現場での負荷が増加す
常、フォルダーは作った人の見方で作られ、
ると、ルールは守られなくなる。よって、成果
見る人によってフォルダーの構造を可変させ
物を決まったフォルダーに格納すれば、自動的
ることはない。しかし、役割や立場、そのと
にタイムスタンプが付くなど、使う人が意識し
きの状況に合わせて見せ方を変えられる機能
なくても処理できる仕組みなども必要である
が必要である。たとえば、図5のように商品
(機能③)。これを実現することで、文書情報の
開発のプロジェクトを推進する立場の人は、
「保存・管理」の運用が形骸化せず、定着させ
商品名、バージョン、文書種類の順でフォル
ることができる(図4)。
ダーを階層化して見えるほうが便利である。
一方で、企画部門の人は、複数の商品にまた
がって企画関連の文書種類を見たいので、文
書種類、年度の順が便利である。このような
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5
新商品・ソリューション・サービス解説
業務を革新するドキュメントソリューションとそれを支える技術
商品名を
基準に
文書種類
を基準に
[商品名]>[バージョン]>[文書種類]
D
H
C
_ P
D
H
C
_ P
D
H
C
_ P
DD H H CC _ _P P
D
H
C
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DD H H CC _ _P P
D D H H C C _ _P P
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_ P
H
C
H
C
_ P
D
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C
_ P
DD H H CC _ _P P
D
H
C
_ P
DD H H CC _ _P P
D D H H C C _ _P P
D
H
C
_ P
D
H
C
_ P
D
D
H
C
_ P
D
D
図5
C
_ P
H
C
_ P
H
C
D
H
C
_ P
D
H
C
_ P
D
H
C
_ P
D
H
C
_ P
DD H H CC _ _P P
D D H H C C _ _P P
D
H
C
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D
H
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D
D
D
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C
_ P
DD H H CC _ _P P
D D H H C C _ _P P
D
H
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D
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C
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C
_ P
DD H H CC _ _P P
D D H H C C _ _P P
D
H
C
_ P
D
H
C
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D
D
H
C
_ P
H
C
_ P
_ P
D
H
[文書種類]>[年度]
H
C
_ P
H
C
_ P
_ P
H
C
_ P
H
C
_ P
柔軟なフォルダー構成の可視化
Customizable folder structure
ニーズに応えるため、文書属性をもとに柔軟
図6
にフォルダー構成を可視化できる機能を提供
進捗可視化の画面例
Screen example of the visualized work progress
るようにすることで、業務の進捗状況の把握
している。
を可能とする。図6の例では、行単位で案件
z 機能⑥「進捗(文書の整備)の可視化」
が示され、見積もり、調達、納品の各工程の
この機能は、業務の主要な工程のあとでは必
中で必要となる文書の種類が定義されている。
ず文書が発生すると考え、文書の有無によっ
それらの文書が入っていれば緑のアイコン、
て進捗を可視化する機能である。また逆に、
納期になっているが入っていなければ赤のア
業務を完了するために必要な文書の整備状況
イコンというように進捗と文書の整備状況を
(そろっているか)を可視化する機能である。
示すことができる。
たとえばあるお客様では、金型を作るときに
型の構造書、磨き度数を示す文書など17種類
情報の整理で最もわかりやすく基本的な方法
の文書をそろえる必要があり、現状ではその
が、時系列で文書を残すことだといわれてい
進捗をうまく可視化できていない。そこで、
る。たとえば、病院の例では、図7のように
必要な文書がどのくらい整っているかを見え
カルテ、検査結果などの患者にかかわる情報
図7
6
z 機能⑦「タイムラインに沿った見える化」
タイムラインの画面例
Screen example of the timeline
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
新商品・ソリューション・サービス解説
業務を革新するドキュメントソリューションとそれを支える技術
を、患者が入院してからの時系列に並べて管
(設計段階の会議開催案内、議事録、検討記
理しておくと、その患者がどういう経緯で治
録から量産開始後の通達、カタログ)まで
療を進めてきたかがわかり、かつ関連する内
管理
z セキュリティーポリシーに沿った動的なア
科、外科、検査科などの科間で共有できる。
クセス制御による海外との技術情報共有
4.2
業務での活用の事例
【効果】
z デザインレビューの納期短縮と、開発ス
このような文書情報の「業務への活用」の考
ピードアップおよび開発品質向上
えを取り入れている事例を以下に説明する。
z 検討業務の徹底で手戻り防止と関連メン
バーのコミュニケーション向上
[事例Ⅱ:図面・技術情報管理]
z 業務効率化の実現(規制強化に伴う追加試
【対象業務】
z 商品企画~発売後の商品評価プロセス
験工数の捻出)
【課題】
この事例では、図8に示すように、従来の図
z デザインレビュー徹底、プロセス管理強化
面管理に加えて図面以外の技術情報も一元管理
とコンカレント開発推進
(機能①)できる図書管理システムとし、さら
z これらを推進するための部門、工程に関連
に進捗状況の可視化(機能⑥)も可能とした。
する技術情報の見える化と円滑なコミュニ
当社では、以前より多くの図面管理ソリュー
ケーション環境の整備
ションを提供してきたが、ここ数年は、対象と
【取り組み】
なる管理文書を図面以外の技術文書に広げ、図
z 設計進捗に合わせ、個人持ち情報の一元管
面を保存・保管するだけでなく、業務の流れに
理徹底と動的なアクセス制御(公開)
応じた見える化にチャレンジする事例が増えて
z 検討過程の仕様や図面の変更情報の可視化
いる。この取り組みにより、設計・開発現場に
と管理の徹底
おけるデザインレビューの徹底とプロセス管理
z 図面のみならず図面に付帯した技術文書
フェーズ管理の
徹底・
コンカレント
開発推進
C
_ P
図面
文書
図面
文書
量産
_ P
D
H
C
_ P
D
H
H
DR
C
_ P
D
生産・
販売準備
DR
H
C
_ P
D
H
C
_ P
D
H
_P
D
C
詳細設計
C
_ P
C
C
H
D
H
D
DR
図面
文書
図面
文書
文書
販売
図書管理システム
適用範囲
進捗可視化システム
適用範囲
_ P
基本設計
H
DR
企画
商品力と
提案力の強化
(業績向上)
開発品質向上と
スピードアップ
D
構築システム
全体像
プロセス進捗に合わせた
情報展開の徹底と
展開状況の俯瞰
の強化が図られるようになり、開発品質向上に
進捗可視化
各種検索システム
お客様
公開情報
プロセスごとの技術情報
の証跡の一元管理徹底
新テーマDB
図書管理システム
商品情報
正式図検索
設計進捗に沿った
アクセス制御
ポリシー・
海外セキュリティー
ポリシーに準拠
E-BOM
ダイス設計
疑似形材参照
図書参照
図書管理システムDB
PDM
形材検討
部品検討
データ転送
ArcSuite Engineering
図8
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
図面・技術情報管理事例の構成図
Structural diagram of managing drawings and technical information
7
新商品・ソリューション・サービス解説
業務を革新するドキュメントソリューションとそれを支える技術
つながっている。またプロセスに関する情報を
z 各種貿易帳票の自動生成
前後の工程の人に見える化・共有化させること
z ワークフローの電子化、自動化
【効果】
で、関連する人の仕事の進捗がわかるようにな
z 65箱/年の帳票の75%を削減し、1,000
り、部門間で調整をしながらコンカレントに設
万円/年のコスト削減
計を行い、先手を打って予測して部品を手配で
きるようになり、開発のスピードアップにつな
z 貿易・物流に関連する工数を45%削減
がっている。我々は、このようにプロセスを見
z 情報伝達や問い合わせ対応時間の短縮
(5分が数秒に)
えるようにすることが大事だと考えている。
z 正確、迅速な回答によるCS向上
4), 5)
[事例Ⅲ:貿易帳票管理]
z 標準化によるガバナンス向上
【対象業務】
貿易業務で発生する膨大な文書を電子化(機
z 輸出入業務
能②)して、進捗が見える(機能⑥)文書管理
【課題】
システムを構築し、電子帳簿保存法に対応した
z 海外販路拡大による業務量の増加と複雑化
事例である。図9にシステム構成時を示す。輸
への対応
出入業務の進捗が見えるようになっただけでな
z 過去5年分の貿易帳票を3つの倉庫で紙保
く、電子化したことで紙の帳票を75%削減し、
管。お客様や通関業者からの問い合わせ対
年間1,000万円のコストを削減できた。
応や監査時の工数効率化と膨大な証憑の保
また、手続きの進捗に対する現場からの問い
管コスト低減
合わせに、その都度書類を探す手間がなくなり、
z 納入後のサポートスピードアップ(船舶の
仕事が邪魔されることとが減っただけでなく、
安全航海に不可欠な商品のため、スピード
対応時間が短縮され、現場や取引先の満足度向
対応が求められる)
上につながっている。
【取り組み】
z 貿易帳票を電子化し、進捗が見える文書管
[事例 Ⅳ:量的カルテ監査]
【対象業務】
理システムで管理
z 診療記録の管理・監査業務
z ERP連携により、貿易や物流に関する情
報・帳票類を一元化
基幹システム連携
基幹システム
各種帳票
WebUI
Drag&Drop操作
プロセス・帳票見える化
Invoice No
担当者
取引先
進捗
4096584
富士一郎
A社
100%
0353965
富士次郎
B社
66%
946254
富士三郎
C社
50%
状態
I/V
P/L
C/O
E/D
不要
DHC_P
属性情報
文書管理システム
輸出
許可書
DHC_P
DHC_P
®
NACCS
連携機能
電子化支援
ツール
DHC_P
DHC_P
®
NACCS 端末
®
QRコード による
スキャン入力
(株)NTTデータ 属性
SimGate ®※1 LJ 情報
DHC_P
輸出申告
文書一式
DHC_P
各種
帳票
DHC_P
各種
帳票
企業間連携
NACCS ® ※2
®
NACCS 連携
輸出申告
図9
8
海貨業者
通関業者
取引先
海外拠点
貿易帳票管理事例の構成図
Structural diagram of managing forms used in trading
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
新商品・ソリューション・サービス解説
業務を革新するドキュメントソリューションとそれを支える技術
作成が必要な文書種が、登録されているかを一覧できる画面
z
医師
z
医局長
z
看護師
z
病棟師長
z
医事課職員
z
診療情報管理士
z
医療秘書、病棟クラーク
z
診療記録管理委員
図10 量的カルテ監査の画面例
Screen example of the quantitative audit of medical records
【課題】
などの記録がないと、診療報酬が適切に得られ
z 期日内に作成すべき文書の確認
ないことがある。病院によっては、これらの記
z 厚生労働省の監査などへの迅速で適切な対応
録類が十分に整備、管理されていないケースも
z 退院清算時の診療記録の確認時間の短縮、
ある。図10に作成が必要な文書類が登録されて
患者の待ち時間の短縮
【取り組み】
z 入力システムの異なる診療記録を収集・整
理・可視化(機能①、②)
いるかを一覧できる画面の例を示す。このよう
なしくみは、病院の業務にも役に立ち、厚生労
働省などからの監査のときの説明にも役立つ。
文書情報の「業務での活用」は、今まさに活
z 患者が入院したときから文書の登録状況を
発に取り組まれており、事例も増えつつある。
把握できるようにし、期日内に作成すべき
従来、単なる「保存・保管」と思われがちな文
文書や、あるべき記録がないことを早期に
書情報マネジメントであるが、業務自体の支援
発見できる(機能⑥)
でも活用できる事例が増えている。
z 医師・看護師などの利用者の利用目的ごと
に必要な文書を患者ごとに一覧表示できる
(機能⑤)
【効果】
z 規制遵守
z 退院サマリーの確実な作成による診療報酬
アップ
5. 知識化のための主要機能(Step3)
今後の方向性として「知識化」についての考
え方を説明する。
文書情報には、ノウハウや知識が詰まってい
る。ただし、文書という形で表出化され、文書
z 精算待ち時間短縮による患者の満足度向上
を配布すれば伝わる知識だけでなく、文書を作
z 監査効率向上
る過程で文書に残せないような議論や、体験の
中でしかわからない暗黙知のような知識もある。
医療機関では、患者が入院したときから、作
成が必要な文書類を確実に残す必要がある。た
これらも含めて組織としてうまく活用できるこ
とを目的に機能の検討を行っている。
とえば、手術の前には必ず患者の同意書が必要
一時期、ナレッジマネジメントやナレッジ
となる。また、入院診療計画書や退院サマリー
データベースの構築がはやったが、結局うまく
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
9
新商品・ソリューション・サービス解説
業務を革新するドキュメントソリューションとそれを支える技術
いかないケースが多かった。その理由の1つは、
られている文書をランキング表示させることで、
表出化された知識だけをデータベース化して検
場や検討の活性度、参加者の関与度もわかる。
索できるようにしていたにすぎないからと考え
z 機能⑩「暗黙知の発見」
ている。表出化された文書情報だけでは、暗黙
経験・ノウハウを持っている人を探す機能と
知を共有できず、意味を理解できず、結局うま
して「Know
6)
Who検索」を提供している。
く活用できない。そこで、SECIモデル の考え
これにより、その人の発言をたどることで、
方を参考に、場の形成ができるような仕組みを
暗黙知の所在と内容も見つけやすくなる。
考えた。以下に、知識化に向けた主要機能を説
「知識化」の考え方は決して新しいものでは
明する。
z 機能⑧「過程情報の可視化・共有」
なく、1990年代の終わりごろから、一部ビジ
成果物である文書情報を作成するまでに行っ
ネスの現場でも試行されてきた。しかし、昨今
た議論や打ち合わせ結果を、その成果物と関
は、モバイル、クラウドに加え、ソーシャルネッ
連づけて管理することが重要である。その実
トワークやビックデータなどの技術が進展した。
現のために、検討経緯を可視化させるタスク
また、従来のヒエラルキー組織に加え、個人の
プレースを、電子掲示板のような形で提供し、
つながりを活用したコミュニティーがアイデア
これと成果物である文書を関連づけるような
の実現やスピード、個別課題対応力の面で、新
仕組みを実現した(図11)
。
たなビジネスの担い手になりうる可能性に企業
これにより、キーワード検索である文書を発
経営者も気づきはじめている。
見した場合、その文書の中身だけでなく、文
このような技術の進歩・社会的な価値観の変化
書が完成する流れの中でどんな文書や情報を
により、
「知識化」の考え方がいよいよビジネス
見て、議論して得られた結論なのか、などの
の現場で活用段階に入ってくるものと思われる。
背景を理解できるようになり、ナレッジの共
有と理解促進につながっている。
z 機能⑨「場の盛り上がり状況、参加者の気配
などの見える化」
6. おわりに
以上、モノ作りを革新するためのドキュメン
場の盛り上がり状況や活性度を自動的に表示
トソリューションとして、
「保管・保存」から「業
し、関連メンバーが文書の中身を読んだかど
務での活用」
、
「知識化」の進化の流れに沿って、
うかをコンテンツの周知度で表示することが
そこでの主要な機能とソリューションの事例を
できる。また、よく発言している人、よく見
紹介した。
タスクプレース
成果物とタスクプレースのリンク
D
H
C
開発
_ P
D
文書
データ
C
_ P
D
文書
H
C
データ
_ P
文書
D
データ
コミュニ
ケーション
H
C
_ P
文書 データ
H
C
_ P
文書 データ
知識
見えていないプロセス
D
データ
H
製造
プロセス
営業
図11 成果物(文書)と検討過程のリンク
Connecting deliverables (documents) to the discussion process
10
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
新商品・ソリューション・サービス解説
業務を革新するドキュメントソリューションとそれを支える技術
/H16HO149.html
e-文書法や電子帳簿保存法、またディスカバ
リー制度や薬事法などの規制要件の対応を考え
3) 電子帳簿保存法について:
ると、企業としてしっかりした文書情報マネジ
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeih
メントを考える時期に来ている。しかし、単純
o-kaishaku/joho-zeikaishaku/denns
に保存や保管だけの目的では、業務でのルール
hichobo/jirei/index.htm
の浸透は困難である。業務での活用や知識化を
4) 前坂学: “「貿易帳票管理システム構築」に
通した、しっかりした文書情報マネジメントが
よる輸出入帳票の電子化と法対応”, 月刊
必要であり、そのためにドキュメントソリュー
IM, 5月号, pp.6-9, 公益社団法人 日本文
ションをベースにした業務を変革する仕組みを
書情報マネジメント協会, (2014).
5) 小池宗之, 宮本隆生: “輸出業務の貿易帳票
構築する必要がある。
これにより、より円滑なコミュニケーション
類を電子化しワークフロー自動化により業
環境の構築や、社会や企業の成長、経営効率改
務を効率化”, 月刊IM, 5月号, pp.10-11,
善に役立つソリューションを提供できると考え
公益社団法人 日本文書情報マネジメント
ている。今回紹介した機能は、富士ゼロックス
協会, (2014).
が提供するArcSuite
®
Engineering、Apeos
6) 妹尾大, 野中郁次郎, 阿久津聡: “知識経営
®
実践論”, 白桃書房, (2001).
PEMaster で実現している。
7. 商標について
z ArcSuite 、 Apeos PEMaster 、 Apeos
PEMaster Evidence Manager 、 Apeos
PEMaster Evidence Tracker、DCMは、
富士ゼロックスの登録商標です。
z ダイナミック・ケース・マネジメントは、富
士ゼロックス株式会社および株式会社エヌ・
ティ・ティ・データの登録商標です。
z NACCSは、輸出入・港湾関連情報処理セン
ター株式会社の登録商標です。
z QRコードは、株式会社デンソーウェーブの登
録商標です。
z Wordは、米国Microsoft Corporationの、
米国、日本および他の国における登録商標ま
たは商標です。
8. 参考文献
1) 西口博之: “米国訴訟と電子情報開示”
http://www.jpaa.or.jp/activity/publica
tion/patent/patent-library/patent-lib
/201207/jpaapatent201207_085-
筆者紹介
089.pdf
桂林
2) 民間事業者等が行う書面の保存等における
浩
ソリューション・サービス開発本部 ソリューション開発部に所属
専門分野:情報処理工学、CSCW、文書管理技術
情報通信の技術の利用に関する法律:
広森
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H16
ソリューション・サービス企画管理部に所属
専門分野:マーケティング、ソリューション・サービス企画
富士ゼロックス テクニカルレポート No.24 2015
順子
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