平成 27 年 3 月 4 日 文理開成高等学校 卒業式 祝辞 (理事長 兼 校長 鈴木 淳) めでたく卒業を迎えた生徒の皆さん、本当におめでとうございます。 また卒業される皆さんを支えてこられたご家族や関係者の皆様にも、卒業式へのご列 席を感謝いたしますとともに、心からお慶び申し上げます。 この学校が経営の失敗により瀕死の重傷を負って最悪解散という危機に瀕していた 約 2 年半前、皆さんはまだ 1 年生でした。この 3 年間は本当に激動だったと思います。 その間、皆さん、色々な思いを抱き、色々な経験をされてきたことと思います。本当に よく頑張りましたね。私はそんな皆さんを誇りに思います。 さて、このめでたい門出にあたり、私から皆さんへの祝辞として、これからたった1 つだけメッセージを伝えたいと思います。 それは、 「自ら考え、自ら行動し、自らの人生を切り拓いてほしい」ということです。 これは、当校の教育目標に他なりません。ぜひそれを継続してもらいたいのです。 今、世界の情勢は非常に難しい状態となっています。地球上、あちこちどこを見ても 問題だらけ、課題だらけという感じです。そして、残念ながらこの状況はこれから長き に亘り続いていくことでしょう。 象徴的なものは ISIS に代表されるイスラム原理主義を掲げたテロ集団です。これは 宗教が関わっており、本当に難しい問題です。主要国地域に目を転じると、米国は景気 が堅調に推移しておりますが、オバマ大統領の賞味期限も切れつつあり、外交において 積極的なリーダーシップを発揮しにくい状況にありますし、欧州もウクライナを巡るロ シアとの対立、そしてギリシャのユーロ離脱の可能性といった難問を抱え、今ひとつ元 気がありません。また世界第2位の経済大国になった中国も、大規模な汚職摘発を巡る 内政の動揺に加え、PM2.5 の公害問題は相変わらずですし、貧富の差はますます拡大 しています。 一方、わが国も厳しい状況にあります。人口減少と超高齢化の時代に突入し、年間の 国家予算約 100 兆円は、その約 25%(25 兆円)が借金の返済と利払い、そして約 30% (30 兆円)が年金や医療、介護等の社会保障費で占められており、その合計 55 兆円は ほぼ固定されてしまっている状態です。もちろんこれだけでは国家運営はできないので、 他のおカネもかかりますから、これからも毎年最低 100 兆円は必要となります。税収 だけで 100 兆円は集まらないため、約半分を国債発行による借入でなんとか賄ってい る。その結果、借金がドンドン増えて続け、2004 年に 900 兆円だった政府債務はわず か 10 年で 1200 兆円近くまで膨張しています。そしてこの膨張は加速することが予想 されています。こういうことを考えますと、わが国も、これまでの延長線上には未来を 描くことができないのは明らかです。 1 平成 27 年 3 月 4 日 文理開成高等学校 卒業式 祝辞 (理事長 兼 校長 鈴木 淳) もう一度言いますと、地球上、あちこちどこを見ても問題だらけ、課題だらけという ことです。要するに、全てが流動的であり、変化を余儀なくされているということです。 そういう社会に皆さんはこれから船出することになります。 でも、決して悲観することはありません。 大きく社会が変化するときこそ、実は大きなチャンスなのです。私は今、皆さんの前 には数百年に一度のチャンスが到来していると考えてほしいと思います。 では、そのチャンスを掴むために必要なものは何か? それこそ、 「自ら考え、自ら行動すること」なのです。 じゃあ、そのためには何が必要となるか? 私は二つのことを皆さんにお伝えしたいと思います。 一つは、たくさん学ぶことです。たくさん学ぶことで、考える力を鍛えることです。 そして、「知性」を身に付けることです。 もう一つは、 「志」を立てることです。志を立てることは、即ち、自分のこの世に生 まれてきた意味を見つけることでもあります。 「知性」と「志」 。この二つが、これからの皆さんを支える武器であり、大きなチャ ンスをモノにする必要条件だと私は考えます。知性を磨き、志を立て、そして行動して ください。 まずは、これまで人類が後世に伝えてきた「知」をぜひ学ぶことから始めてもらいた いと思います。世界各国において古典と言われる名作や歴史書を学び、自らの血と肉に してもらいたいのです。書物だけでなくても構いません。名作と言われる映画や TV ド ラマから学ぶことも沢山あります。そして、そのようにして皆さんが知性を磨くなかで、 自ら「志」も見つかることでしょう。 そして、社会の皮相的な世論やマスコミ報道に流されることなく、自分の頭で本質を 考え、本質を見抜き、先を見通し、そして志に基づき行動してもらいたいのです。 私は、皆さんが「志ある知性行動主義者」として新しい時代を切り拓き、社会で大活 躍されることを切に願っております。 大きな期待を込めて、改めて皆さんの卒業と、大きく開かれた前途を祝し、私からの お祝いの言葉といたします。 平成27年3月4日 文理開成高等学校 理事長 兼 校長 鈴木 淳 2
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