建物被災状況の見える化 防災・危機管理のNTTグループ連携ソリューション 導入コストの低減 BCPへの活用 建物安全度判定サポートシステム「揺れモニ」 NTTファシリティーズでは,地震発生時の建物継続使用に関する不安 を解消する建物安全度判定サポートシステム「揺れモニ」を開発しました. 地震直後,即座に建物の安全度を判定し,その結果をコメントで表示, 安全性の把握と適切な避難対応へと導きます.また,後日実施する構造 体などの点検・調査項目を的確に判断し,調査費用・調査期間の縮減を 実現します. さいとう だいすけ 斉藤 大祐 NTTファシリティーズ ニタリング」は,建物,橋梁,トンネ ファシリティーズは建物構造に関する ル等,さまざまな構造物の振動を常時 専門的な知見と,世界最高峰のスペッ 診断し, 地震発生時の損傷自動判定や, クを持つ三次元振動試験システム 地震発生時には建物利用者(建物管 劣化診断による保全対策に活用されて 「DUAL FORCE」での実証試験によ 理者)が建物の被災状況を迅速に把握 います.既存の建物向け構造ヘルスモ り安価な高精度センサを開発し,地震 し,避難指示等のとるべき初動を即座 ニタリングシステムは,地震の揺れを 計を用いる既存類似システムと比較し に判断することが「人命を守る」うえ 計測する地震計が非常に高価なため, て,導入コストの 3 〜 5 割の削減を実 で非常に重要です.ところが,これま 4 〜 5 階層ごとに地震計を設置するこ 現しました. で建物の被災状況は地震計のデータを とが一般的です.そのため地震計を設 構造設計の専門家が分析しなければ分 置していない階層については推定値と からず,一般の建物利用者や建物管理 なり,高精度に被災状況を把握するに 低価格化した高精度センサを建物全 者が,地震直後に建物が安全かどうか は調査が別途必要で,コスト面におい 階に設置(図 1 )し,地震時に 3 つの 判断するすべはありませんでした. ても大きな負担となっています.NTT パラメータ(固有周期 ・ 傾斜 ・ 層間変 地震直後の建物被災状況を即座に 「見える化」 揺れモニの特長 2011年の東日本大震災の際には,建 物被災状況が全く分からず,建物利用 者や建物管理者が初動の判断に迷う ケースが多く発生しました. 揺れモニ RF NTTファシリティーズの「揺れモニ」 微動計センサ 強震計センサ 既存類似システム * ❶変形角(垂直傾斜) ❷傾斜(水平傾斜) ❸固有周期(建物剛性) RF 地震計 *解析結果は,各階での値を 表示します は,こういった問題を解決するために ❶ 開発された建物安全度判定サポートシ ❶変形角(垂直傾斜) ❶ ❷ ステムです.建物の揺れをモニタリン グしリアルタイムに分かりやすく建物 被災状況を表示することで,地震直後 に建物利用者等に対して,迅速かつ適 切な初動対応をとるための客観的デー タを提供します. 導入コストの3〜5割の削減 揺れモニの基となる「構造ヘルスモ 48 NTT技術ジャーナル 2015.3 ❷ 1F B1F 1F 収録装置 変形角が少なくても 傾斜と固有周期も含めた 3 パラメータを解析・判定 B1F 杭や非構造部材の 損傷の可能性も より正確に判断 収録装置 1 パラメータでの判定だと 変型角が少ない場合 正確な判定が難しい 図 1 揺れモニの特長 杭や非構造部材の 損傷の可能性を 見逃しやすい 特 集 システム解析を行った結果をコメントで表示 ◉判定例 1 .この建物は安全です.通常通り執務が可能です. 2 .○階,○階に損傷の可能性があります.注意をしてください. 3 .○階∼○階が損傷しています.状況を見て避難してください. 4 .この建物は危険です.全員至急避難してください. ・ ・ ・ 建物の揺れ具合を リアルタイムに アニメーション 表示 ※実際の表示する判定内容については,事前にお客さまとご相談し決定します. 固有周期と傾斜の 履歴表示 青黄赤の 3 段階で 各階の安全度を表示 見える化イメージ画面 図 2 建物安全度解析結果 複数ビルの建物安全度を一元管理 各ビルの安全度を赤黄青に自動分類して表示 各ビルを赤黄青で地図上に表示 複数のビルを所有するオーナー(管 理者)は,地震後,保有ビルすべての 被害状況を把握し対策を実施する必要 がありますが,地震後の現地確認が必 要で調査や対策の優先付けが大きな課 題となっています.揺れモニの「複数 ビル情報表示機能」は複数ビルの被災 状況を一覧で表示し,地震直後の駆付 け,現地調査を効率的に行えるようサ 複数ビル情報提示機能イメージ画面 駆付け優先度を支援する分析グラフ情報 ポートします(図 3 ) . 図 3 複数ビルの安全度表示 形角)で解析することにより,損傷の BCPへの活用 可能性がある階をピンポイントに把握 が可能で,これまで困難であった杭や 地震後,建物全体の安全確認調査を 非構造部材の損傷の可能性もより正確 するには費用,時間 ・ 稼働面で大きな に判定できます. 負担となります.揺れモニによる各階 建物安全度の解析結果は,各階別に ごとの安全度評価により, 調査の対象, 青 ・ 黄 ・ 赤の 3 段階で表示するととも 内容 ・ 項目の限定,優先付けが可能と に,次に行う行動として具体的なコメ なり建物の安全確認に要する負担を低 ントをモニタに表示します(図 2 ) . 減することができます.安全で損傷が また,本システムはセンサにバッテリ ないことがシステムで判断できれば, を内蔵しており,停電時でも情報を提 調査が不要となり,速やかに事業を再 供し続けることが可能です.さらに, 開することができます.また,揺れモ 衝撃に強いPCの採用や業界初となる ニを用いた建物の災害時運用マニュア システム正常性の24時間遠隔監視等に ルの作成は効果的で,被災時にスムー より,地震時における高い信頼性を確 ズな対応が可能となります. 保しています. 斉藤 大祐 NTTファシリティーズは,「ICT ・ エネル ギー ・ 建築」の融合技術により,限りある エネルギーを効率的に無駄なく使う「スマー トな街づくり」,自然災害などのリスクに対 応できる「安心で安全な街づくり」に貢献 します. ◆問い合わせ先 NTTファシリティーズ コンタクトセンタ 0120-72-73-74 E-mail info ntt-f.co.jp URL http://www.ntt-f.co.jp/ NTT技術ジャーナル 2015.3 49
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