かゆいところに手が届く!

かゆいところに手が届く!
― 多摩・島しょ自治体お役立ち情報 ―
「かゆいところに手が届く!多摩・島しょ自治体お役立ち情報」は、市町村の職員が
日頃の業務で感じている疑問や他の自治体、民間企業などの動向、今さら聞けない行政
用語など、知りたいと考えている事項について自治調査会が調査し、問題点や課題など
を明らかにすることを目的に実施しています。
大学の研究成果の活用
~ 知的資源を活かした地域の課題解決 ~
調査部研究員 佐 藤 由美子
1.はじめに
活用し、地域の課題の解決へとつなげていくこ
現在、国が設置した「まち・ひと・しごと創
とが、自治体と大学の双方にとって必要になっ
生本部」が総合戦略で地方創生を掲げ、各自治
てくるのではないでしょうか。
体もそれぞれの実情に応じた地域活性化に取り
そこで本稿では、自治体の施策や事業におけ
組んでいます。地域活性化の課題のなかには、
る大学の研究成果の活用をテーマに取り上げ、
自治体の力だけでは解決をすることが難しいも
その現状や参考事例等を見ていきたいと思いま
のもあり、住民や企業、大学等地域の担い手と
す。
連携を行うことが有効な手段です。
に、自治体自身が持ち合わせていない専門的な
2.大学の研究成果の活用に関する
多摩・島しょ地域市町村の現状
知見が必要となることがあります。そのような
まずはじめに、大学の研究成果を活用した事
場合に、大学の研究成果を活用することで、学
業の実施に関する多摩・島しょ地域市町村の現
術的なノウハウや技術を取り入れている事例が
状を見ていきます。現状を把握するため、下記
あります。一例として、将来人口予測に基づく
のとおり、アンケート調査を行いました。
自治体が施策や事業を実施するにあたり、時
総合計画の策定や児童・生徒に対する教育効果
の測定等が挙げられます。
また、国は「地(知)の拠点整備事業」や公
立大学の力を活用した地域活性化策等を展開し
ています。大学側にとっても、研究の成果を地
⃝対 象:多摩・島しょ地域39市町村
⃝実施時期:平成26年10月
求められていると言えるでしょう。
⃝内 容:大学の研究成果を活用した
事業実績の有無、事業内容、
今後の方向性等 このような背景のもと、大学の研究成果を貴
※対象年度:平成24~26年度
域活性化のために積極的に活かしていくことが
重な知的資源ととらえ、自治体の施策や事業に
16
◆ 大学の研究成果の活用に関する
アンケート調査
vol.006 2015. 2
自治調査会 ニュース・レター
⑴ 研究成果の活用の実績
平成24年度から26年度までの3年間で、大学
の研究成果を活用し、事業を実施した(してい
る)自治体は、39自治体中12自治体で、全体の
約3割でした。
● 図2 事業の分野
文化
市民生活
子ども
教育
1件が最も多く(8自治体)、2、3、7、13
件がそれぞれ1自治体でした【図1】。1~3
5
環境
4
行・財政
4
大学の研究成果を活用した事業を実施した
(している)12自治体における事業の件数は、
13
健康・福祉
3
件の自治体が全体の約8割を占めており、まだ
都市基盤
2
それほど積極的に大学の研究成果の活用が行わ
その他
2
れている状況ではありません。
0
● 図1 事業の件数
〈17%〉
13件
(1自治体)
6
8 10 12 14
事業数
(N=12 複数回答)
のような事業が挙げられます。
(1自治体)
3件
(1自治体)
2件
4
なお、具体的な事業としては、以下の【表】
7件
(1自治体)
2
● 表 大学の研究成果を活用した具体的な事業
1件
自治体名
(8自治体)
〈83%〉
(N=12)
⑵ 事業の分野
大学の研究成果を活用した事業を実施した
(している)12自治体における事業の分野は、
「文
化・市民生活」が最も多く(13事業)、次いで「子
ども・教育」(5事業)、「環境」「行・財政」(各
4事業)となりました【図2】。「文化・市民生
活」の分野に係る大学の研究は、フィールドワー
ク等を取り入れ、地域や社会の事象を題材に行
われています。そのため、研究成果をより地域
や社会に還元し易く、他の分野に比べて、自治
体の事業に馴染み易いのではないでしょうか。
主な事業内容
大学・学部名
【南大沢文化会館の認知地図づくり
を支援するサインに関する研究】
経路誘導サインの分かり易く適切な 首都大学東京
システム
八王子市 配置について、視線計測と主観調査
を用いて調査し、調査結果をもとに、 デザイン学部
文化会館内のサイン看板等を作成す
る。 (ほか、6事業)
【第4次長期総合計画策定事業】
長期総合計画の策定にあたり、「10
中央大学
年後の立川市」をテーマに研究を
立 川 市
行っている学生達と意見交換を行 総合政策学部
い、今後のまちづくりや市民参加の
あり方等について研究等を行った。
【計量経済モデルによる
三鷹市経済の長期予測】
豊橋技術科学
計量経済モデルによる地域経済の将
大学
三 鷹 市 来予測の手法を活用し、基本計画策
建築・都市
定の前提となる将来人口や市税等の
システム学系
収入見通し等の長期予測の分析を
行った。 (ほか、12事業)
【不登校対策事業】
児童臨床心理学やスクールカウンセ
調 布 市 リングの実践研究による知見等を活
用し、児童・生徒の不登校等に対す
る対策を行う。
東京学芸大学
教育学部
【お問い合わせデータ分析事業】
市民の声を市政に反映する仕組みづ
くりに関する研究の成果をいかし、 青山学院大学
町 田 市
市のコールセンター等に寄せられた 社会情報学部
問合せを分析し、課題の抽出を行
う。 (ほか、1事業)
vol.006 2015. 2
17